<実施形態1>
図1は本発明のステージ装置に係る第1の実施形態の概略図である。
不図示ベースにガイド102が固定され、ガイド102に対して1軸方向(所定方向)に往復滑動自在に工作物を載置するステージ101が支持されている。ステージ101の片サイドにはリニアモータ可動子104が固定され、リニアモータ可動子104にはリニアモータ固定子105が非接触で対面し、リニアモータ固定子105は不図示ベースに固定されている。
リニアモータ103の機構は、前述の従来のリニアモータとほぼ同様であるが、後述する通り、本実施形態のリニアモータは、従来のリニアモータと比べて小さな出力のものでも良い。このリニアモータは制御系においてソフト的またはハード的な電流のリミッタが設けられており発熱が問題になるような電流を流さないようになっている。また後で説明するように制御系が正常に動作していればこのリミッタにたよらずとも発熱が問題になるような電流は流れないように制御される。
さらに、ステージ101のもう片側には磁性体板107が設けられる。この磁性体板107を両側から挟むように対向して、1対の電磁石108が設けられる。1対の電磁石108はナット111上に固定されている。ナット111はモータ112と送りネジ113によってステージ101と略同一方向に移動できる。この結果、ナット111、モータ112および送りネジ113を有する送りネジ系110によって、1対の電磁石108がステージ101と略同一方向に移動できるようになっている。
この電磁石108を移動するための送りネジ系110(移動機構)も、不図示ベースに固定されている。また1対の電磁石を構成する各々の電磁石108と磁性体107の間はわずかな空隙を介して互いに非接触が保たれている。各々の電磁石108は円弧状のヨーク108bとそれに巻きまわしたコイル108aとから構成され、コイル108aに電流を流すと、ヨーク108bと磁性体板107の間に吸引力が働くようになっている。各々の電磁石108のコイル108aは別々に電流を制御出来るようになっている。このため、両コイルに流す電流を調整することにより、各々の電磁石108と磁性体板107の間に働く吸引力を調整することができ、この結果、1対の電磁石から磁性体板に作用する合力とその合力の方向を調整することができるようになっている。
図2は上述のステージ装置を駆動制御するための制御系のブロック図である。
ステージ101の移動目標を発生する移動目標指示手段121、該目標をもとに時間とその時間におけるステージの目標位置との関係を生成する位置プロファイル生成手段122、および該目標をもとに時間とその時間に発生すべき加速度との関係を生成する加速プロファイル生成手段123が設けられている。
位置プロファイル生成手段122の出力は、微動リニアモータ103を制御する微動リニアモータ位置サーボ系125と、送りネジ系110のモータ112をフィードバック制御する移動FB系135に入力される。また加速プロファイル生成手段123の出力は、電磁石108の吸引力をフィードフォワード制御する吸引FF系131に入力される。
微動リニアモータ位置サーボ系125は、演算部126、モータ電流アンプ127、リニアモータ103および干渉計128から構成される。演算部126は、上記位置プロファイル生成手段122による現在いるべきステージの位置(目標位置)と干渉系128で測定したステージ101の現在いる位置との偏差にPID等に代表される制御演算を施し、その結果をアナログ電圧でアンプ127に出力する。モータ電流アンプ127は、該アナログ出力電圧に比例する電流をリニアモータに供給する微動電流アンプである。リニアモータ103は、前述の通りに構成され、該電流によりステージ101に推力を付与する。干渉計128は、ステージ101に設けられた反射ミラー129の位置を計測し、ステージ(またはステージと一体に設けられた可動子)の位置を計測する。微動リニアモータ位置サーボ系125は、位置プロファイル生成手段122の出力を指令値とする通常の位置サーボ系であるが、大推力が必要なときは後述の吸引FF系131が推力を発生するようになっており、リニアモータ103は目標位置とのわずかな位置偏差をとるための小さい推力を発生するだけなので、発熱が問題になるような電流が流れないようになっている。またソフト的またはハード的にリニアモータの電流を制限しており、吸引FF系131との連動が誤動作した場合でも発熱が問題になるような電流が流れないようになっている。
吸引FF系131は、1対の電磁石108と磁性体板107との間に加速プロファイル生成手段123の出力に比例した合成推力を発生させるための制御系である。吸引FF系131は、補正手段132、調整手段133、および2つの電磁石用電流アンプ134とから構成される。電磁石用電流アンプ134は、それぞれの電磁石108のコイル108aをそれぞれ独立に駆動している。
補正手段132は、電磁石108の電流と吸引力との非線型関係を補正するためのものであり、符号を保存する平方根演算器を有している。一般に電磁石の吸引力は電磁石の電流の二乗に比例する。ステージ101を駆動するために発生すべき吸引力は、加速プロファイル生成手段の出力に比例する力であるため、加速プロファイル生成手段123の出力の平方根をとってそれを電流指令とすれば、加速プロファイル生成手段123の出力の平方根の2乗に比例する吸引力が働く。つまり加速プロファイル生成手段123の出力に比例した吸引力が働く。また加速プロファイル生成手段123の出力はプラスまたはマイナスの符号を含んでいるので、平方根演算は出力の絶対値に対して行い、演算後に符号を付加して調整手段にわたすようになっている。
調整手段133は、1対の電磁石108と磁性体板107との間に働く各々の吸引力を調整し、両者の合力の大きさと向きを所望のものにするためのものである。電磁石は電流の向きによらず磁性体板を吸引する力しか出せない。そこで1対の電磁石で磁性体板を挟むように対向して配置し、各々の電磁石が磁性体板に対してそれぞれ逆向きの力を発生するようにし、その2つの力を調整することで磁性体板に働く合力の大きさと方向を制御するようにしている。前記補正手段132の出力の符号により1対の電磁石のうちのどちらに電流を与えるかを選択し、前記補正手段132の出力に比例した値を電流アンプ134に入力し、他方の電磁石108の電流はゼロに制御するようにするのがもっとも簡単な構成である。補正手段132の出力がゼロの場合はどちらの電磁石の電流もゼロに制御される。この結果、1対の電磁石108から磁性体板107に対して加速プロファイル生成手段123の出力の大きさに比例した推力が所望の方向に付与されることになる。
補正手段132の出力がゼロのときに2つの電磁石108に等しいバイアス電流を流しておくこともできる。これは電磁石のBH曲線の動作中心を電流すなわち磁界の強さと磁束密度の関係がより線形にする効果がある。この場合、補正手段132と調整手段133は一体となって、加速プロファイル123の出力をうけて2つの電磁石に適当な電流を指令する動作をする。具体的には加速プロファイル生成手段の出力がプラス移動方向にVa、バイアス電流がIbのとき、プラス移動方向に吸引力を発生する電磁石のコイル電流をIp、マイナス移動方向に吸引力を発生する電磁石のコイル電流をImとすると、あらかじめ定めた比例定数Kに対して
Va=K((Ip−Ib)^2−(Im−Ib)^2)
を満たすようなIp、Imを出力する。
電磁石の吸引力は、リニアモータのローレンツ力と比べて小さいアンペアターンで大きな推力を得ることができるので、従来のリニアモータのみのステージの加減速時の発熱と比較すると、電磁石の発熱はほとんど問題にならない。
また、一定速度で走行中は電磁石108の電流はゼロに制御する。このため床振動等の外乱が電磁石を通してステージ系に伝わることはない。この状態では微動のリニアモータだけがステージを高精度に制御する。
移動FB系135は、1対の電磁石108の位置を位置プロファイルにならうように移動させるものである。電磁石はきわめて小さい発熱で大きな吸引力を発生できる利点があるが、相手の磁性体との空隙を小さい寸法に保たなければならない。電磁石108から磁性体板107ひいてはステージ101に所望の力を与え続けるには、ステージ101の移動に基いて電磁石108を移動させて上記空隙を一定に保つ必要がある。そこで電磁石108の位置をモータ112のエンコーダ138でフィードバックする位置制御系135に位置プロファイルを入力し、モータ112と送りネジ113により電磁石108をステージ101とほぼ同じ位置プロファイルに従うよう移動させ、電磁石108とステージ101の相対位置がほぼ一定になるようにしている。
モータ112は、電磁石108およびネジ系110のナット111を加減速するために必要なトルクに加え、ステージ101の加減速時に電磁石108が発生する吸引力の合力に相当するトルクを発生する必要がある。これは、ステージに対して与えている吸引力が、電磁石を介してナットにも伝達されるためである。
また、ステージ101の加速時に位置制御系125にステージ101の位置偏差が蓄積されると、加速終了後の位置制御(または速度制御)のための制定時間が長くなるため望ましくない。そこで、図2の構成に加えて加速プロファイル生成手段123の出力を制御演算器の出力に加算してモータ電流アンプ137に入れてやれば、加速度をフィードフォワード的にモータ112に指令することができ、ステージ101の加速中に位置偏差をためずに電磁石108を移動できる。いずれにしてもモータ112には相応の発熱があるが、熱源が局所的に集中して存在するので冷却が比較的容易であり、ステージ101やその上に載置される工作物とは距離を離して配置できるので、ステージ101や工作物に発熱の影響が伝わりにくい。ステージ101の加速が終了してステージ101が一定速度で走行している間は、ネジ送り系110は電磁石108と磁性体板107が接触しないようにナット111の位置をステージ101とほぼ同じ速度で走行させる。
以上のように送りネジ系110と電磁石108によりステージ101を加速し、加速が終了したら電磁石108は電流をゼロにして床振動を絶縁すると同時にネジ送り系110で電磁石108と磁性体板107が接触しないようステージの移動に同期して電磁石108の位置を制御し、これらの動作と平行して微動リニアモータ103により常時高精度な位置制御(または速度制御)を行うようにすることにより大推力と低発熱と高精度位置制御を同時に達成するようにした。
本実施形態によれば、電磁石と磁性体板との間に発生する吸引力を利用してステージを駆動するため、非接触で低い発熱でステージを駆動することができる。
また、電磁石を移動させる送りネジ駆動系を備えることにより、長いストロークにわたって吸引力を利用してステージを駆動することができる。また、送りネジ駆動系により電磁石が移動している時は、電磁石と磁性体板との間に発生する吸引力により送りネジ駆動系の駆動力がステージに伝達されている。そのため、電磁石と磁性体板は、送りネジ駆動系の駆動力をステージに伝達する非接触クラッチの役割を果たしているということができる。
また、リニアモータを並列に設けることにより、電磁石による吸引力を利用したステージの駆動と、リニアモータのローレンツ力によるステージの駆動を併用することができる。そのため、大きな推力を必要とするステージの加減速時は、発熱の少ない電磁石の吸引力を利用したステージの駆動を行い、あまり大きな推力を必要としないステージの定速運動時または位置決め制御時は、リニアモータを用いることが望ましい。
本実施形態によれば、電磁石による吸引力を利用したステージ駆動手段と、リニアモータとを併用しているが、リニアモータはステージの駆動・位置決めに必ずしも必要ない。電磁石と磁性体板および電磁石を移動させる駆動系があれば、ステージの位置決め動作を行うことができる。また、電磁石を移動させる駆動系は、電磁石と磁性体板との間隙をほぼ一定に保つ程度の位置決め精度を有していれば良く、送りネジ駆動系はステージの位置決め精度と同様な高精度な位置決め精度を要求されるものではない。
また、本実施形態によれば、電磁石と磁性体板との間に吸引力を発生させているため、磁性体としては鉄を含んでいることが望ましい。しかし、これに限るものではなく、例えば磁性体に永久磁石や電磁石を利用すれば、吸引力ではなく反発力を用いてステージを駆動することができる。しかし、電磁石による吸引力は反発力よりも効率が良いので、吸引力を利用する方が望ましい。
また、本実施形態によれば、吸引力を利用したステージの駆動を非接触で行えるため、電磁石によるステージの加減速時に、リニアモータを同時に作動させ、加減速中も高精度な位置決め動作を行うことができる。
また、本実施形態では、電磁石を送りネジ側に、磁性体をステージ側に配置しているが、逆に配置しても良い。しかし、本実施形態のように磁性体をステージ側に配置した方が、電磁石をステージ側に配置した場合と比べ、ステージに配線をする必要がないので、ステージへの外乱を減らすことができる。
また、本実施形態では、電磁石の移動に送りネジを用いているが、これに限るものではなく、ステージの移動に同期して電磁石を移動するものならば良く、例えばベルトやシリンダを用いて電磁石を移動させても良い。
<実施形態2>
図3に本発明のステージ装置に係る第2の実施形態を示す。
不図示ベースに平面ガイドが固定され、平面ガイド上を2軸並進(XY)および回転方向(θ)に滑動自在に工作物を載置するステージ201が支持されている。ステージ201の2つの辺にはリニアモータ可動子204が固定され、リニアモータ可動子204にはリニアモータ固定子205が非接触で対面し、リニアモータ固定子205は支持枠206によりナット211Aに固定されている。
リニアモータは少なくとも3組用意される。それぞれのリニアモータの構成は、従来のリニアモータから2極磁石と1つのコイルを取り出したもので、コイル電流と磁石磁束の相互作用でローレンツ力を発生するものである。リニアモータの可動子は2極の磁石とヨークとを一体に構成されたものであり、リニアモータ固定子は長円形状の3個のコイルで構成される。コイルに電流を流すと長円コイルの直線部に直角な方向に推力が発生する。
コイル205Xは、磁石204Xと作用してX方向の力を発生し、ステージ201に力を付与する。また、コイル205Y1、205Y2は、それぞれ磁石204Y1、204Y2と作用して各々Y方向の力を発生し、ステージ201に力を付与する。さらに、コイル205Y1と205Y2により発生する力の向きを互いに逆方向にすれば、ステージ201にθ方向の力を付与することができる。コイル205Y1、205Y2、205Xに流す電流を制御することでステージ201にX方向、Y方向、回転方向の力を制御することができる。ステージ201の重心のX座標はコイル205Y1、205Y2が発生する力の作用線の間にくるように設計され、ステージの重心のY座標はコイルXが発生する力の作用線上にくるように設計されている。コイル205Y1とステージ重心のX座標の間の距離と、コイル205Y2とステージ重心のX座標の間の距離が、等距離であればさらに望ましい。
第1実施形態と異なり、本実施形態はステージ201の回転を機械的に規制するガイドがない。そのため、ステージ201にX、Y方向の並進力を与えるための駆動力の作用線は、ステージの重心を通ることが望ましい。各リニアモータの配置を上記のようにすれば、205Y1、205Y2コイルに同じ電流、Xコイル205Xに適当な電流を与えれば並進力は重心を通り回転力が発生せず、同一並進力に対する発熱が最小に出来る。また、ステージ201に回転力を与えたいときはコイル205Y1,205Y2に大きさが同じで向きが逆の電流を加算して流せばよい。
リニアモータ固定子205は、ナット211Aに固定されている。ナット211Aは送りネジ213Aとモータ212AによりY方向に移動可能になっている。前述の第1の実施形態におけるリニアモータと異なり、本実施形態のリニアモータは、固定子205と可動子204との相対的なストロークが短く、そのままでは長ストロークにわたって可動子に力を付与することができない。そのため、本実施形態では、リニアモータ可動子に対して長ストロークにわたって力を付与することができるように、リニアモータ固定子205を送りネジ系210AでY方向に移動可能にし、ステージ201が移動可能なストローク中において、ステージ201に対してY方向並進力と回転力をリニアモータ固定子205からリニアモータ可動子204に付与できるようになっている。X方向は、リニアモータのストロークでカバーできる微小な距離しか動かさないようになっているので、リニアモータ固定子はX方向には動く機構は設けていない。この構成により、コイルの切換を行わずに、ステージの長ストロークの移動が可能となる。
このリニアモータは、制御系においてソフト的またはハード的に電流のリミッタが設けられており発熱が問題になるような電流を流さないようになっている。また後で説明するように制御系が正常に動作していればこのリミッタにたよらずとも発熱が問題になるような電流は流れないように制御される。
さらに、ステージ201のもう1辺には磁性体板207が設けられる。この磁性体板207をY方向の両側から挟むように対向して、1対の電磁石208が設けられる。1対の電磁石208はナット211B上に固定されている。ナット211Bはモータ212Bと送りネジ213Bによってステージ201と略同一方向に移動できる。この結果、ナット211B、モータ212Bおよび送りネジ213Bを有する送りネジ駆動系210Bによって、1対の電磁石208がステージと略同一方向に移動できるようになっている。送りネジ系210Bによって電磁石208を移動させることで、電磁石208と磁性体板207との空隙をY方向の長いストロークにわたって磁性体207と電磁石208のギャップを保つことができ、Y方向のストロークにわたって磁性体207と電磁石208との吸引力によりステージを駆動することができる。
この電磁石208を移動するための送りネジ系210Bもまた不図示ベースに固定されている。また1対の電磁石を構成する各々の電磁石と磁性体の間はわずかな空隙を介して互いに非接触が保たれている。各々の電磁石208は、円弧状のヨーク208bと、それに巻きまわしたコイル208aとを備えている。コイル208aに電流を流すとヨーク208bと磁性体板207の間に吸引力が働くようになっている。各々の電磁石のコイルは、それぞれ別々に電流を制御できるようになっている。このため、両コイルに流す電流を調整することにより、各々の電磁石と磁性体板の間に働く吸引力を調整することができ、この結果、1対の電磁石から磁性体板に作用する合力とその合力の方向を調整することができるようになっている。
本実施形態は、前述の第1の実施形態と異なり、ステージの回転を機械的に規制するガイドがない。そのため、電磁石の吸引力の合力の作用線がステージの重心からずれていると、ステージに回転力が発生してしまう。そこで、2つの電磁石の吸引力の合力の作用線をステージの重心を通るようにすれば、電磁石でステージをY方向に加速したときにステージに回転力が発生せず、Y1、Y2コイルに無用の回転防止の力を発生させることもない。
また、このような3軸制御系のリニアモータは少なくともステージの2辺あるいは2個所からステージに力を及ぼせるようにするのが望ましい。本実施形態の場合、直交する2辺からステージに力を及ぼすようになっているが、もし1辺から3軸方向の力を発生させようとすると、並進のXまたはY方向の力の作用線のどちらかはステージの重心を通ることができなくなる。その結果、ステージに回転力が発生し、これを押さえるための無用の補正回転力が必要となる。
図4は上述のステージ装置を駆動制御するための制御系のブロック図である。
ステージ201の移動目標を発生する移動目標指示手段221、該目標をもとに時間とその時間におけるステージの目標位置との関係を生成する位置プロファイル生成手段222、および該目標をもとに時間とその時間に発生すべき加速度との関係を生成する加速プロファイル生成手段223が設けられている。
位置プロファイル生成手段222の出力は、微動リニアモータ203を制御する微動リニアモータ位置サーボ系225、リニアモータ固定子205をY方向に移動させる送りネジ系210Aのモータをフィードバック制御する移動FB系235A、および電磁石208をY方向に移動させる送りネジ系210Bのモータをフィードバック制御する移動FB系235Bに入力される。また加速プロファイル生成手段223の出力は、電磁石208の吸引力をフィードフォワード制御する吸引FF系231に入力される。
微動リニアモータ位置サーボ系225は、演算部226、モータ電流アンプ227、リニアモータ203および干渉計228から構成される。演算部226は、上記位置プロファイル生成手段222による現在いるべきステージのX,Y,θ位置(目標位置)と干渉系228で測定したステージ201の現在いるX,Y,θ位置との偏差にPID等に代表される制御演算を施し、その結果をアナログ電圧でアンプ227に出力する。モータ電流アンプ227は、該アナログ出力電圧に比例する電流をリニアモータY1,Y2,Xに供給する微動電流アンプである。リニアモータ203は、前述の通り構成され、該電流によりステージに推力を付与する。干渉計228は、ステージ201に設けられた反射ミラー229の位置を計測し、ステージ(またはステージと一体に設けられた可動子)のX,Y,θ位置を計測する。図4において、干渉計の計測ラインが太い線で書いてあるのは3軸を計測していることを表現している。実際には、Y方向に2本のビーム、X方向1本のビームをもつ3軸の干渉計を設けるのが一般的である。微動リニアモータ位置サーボ系225は、位置プロファイル生成手段222の出力を指令値とする通常の3軸位置サーボ系であるが、大推力が必要なときは後述の吸引FF系231が推力を発生するようになっている。そのため、リニアモータ203は目標位置とのわずかな位置偏差をとるための小さい推力を発生するだけでよく、発熱が問題になるような電流が流れないようになっている。また、吸引FF系231が推力を発生するときは、それに起因する回転力はステージに発生しないようになっている。またソフト的またはハード的にリニアモータの電流を制限しており、吸引FF系231との連動が誤動作した場合でも発熱が問題になるような電流が流れないようになっている。
吸引FF系231は、1対の電磁石208と磁性体板207との間に加速プロファイル生成手段223の出力に比例したY方向の合成推力を発生させるための制御系である。吸引FF系231は、補正手段232、調整手段233、および2つの電磁石用電流アンプ234とから構成される。2つの電磁石用電流アンプ234は、それぞれの電磁石のコイルをそれぞれ独立に駆動している。
補正手段232は、電磁石の電流と吸引力との非線型関係を補正するためのものであり、符号を保存する平方根演算器を有している。一般に電磁石の吸引力は電磁石の電流の二乗に比例する。ステージを駆動するために発生すべき吸引力は、加速プロファイル生成手段の出力に比例する力であるため、加速プロファイル生成手段の出力の平方根をとってそれを電流指令とすれば、加速プロファイル生成手段の出力の平方根の2乗に比例する吸引力が働く。つまり加速プロファイル生成手段の出力に比例した吸引力が働く。また加速プロファイル生成手段223の出力はプラスまたはマイナスの符号を含んでいるので、平方根演算は出力の絶対値に対して行い、演算後に符号を付加して調整手段にわたすようになっている。
調整手段233は、1対の電磁石208と磁性体板207との間に働く各々の吸引力を調整し、両者の合力の大きさと向きを所望のものにするためのものである。電磁石は電流の向きによらず磁性体板を吸引する力しか出せない。そこで1対の電磁石208で磁性体板207を挟むように対向して配置し、各々の電磁石が磁性体板に対してそれぞれ逆向きの力を発生するようにし、その2つの力を調整することで磁性体板207に働く合力の大きさと方向を制御するようにしている。前記補正手段232の出力の符号により1対の電磁石のうちのどちらに電流を与えるかを選択し、前記補正手段232の出力に比例した値を電流アンプ234に入力し、他方の電磁石の電流はゼロに制御するようにするのがもっとも簡単な構成である。補正手段の出力がゼロの場合はどちらの電磁石の電流もゼロに制御される。この結果、1対の電磁石208から磁性体板207に対して加速プロファイル生成手段223の出力の大きさに比例した推力が所望の方向に付与されることになる。
補正手段232の出力がゼロのときに2つの電磁石に等しいバイアス電流を流しておくこともできる。これは電磁石のBH曲線の動作中心を電流すなわち磁界の強さと磁束密度の関係がより線形にする効果がある。この場合、補正手段と調整手段は一体となって、加速プロファイル出力をうけて2つの電磁石に適当な電流を指令する動作をする。具体的には加速プロファイル生成手段の出力がプラス移動方向にVa、バイアス電流がIbのとき、プラス移動方向に吸引力を発生する電磁石のコイル電流をIp、マイナス移動方向に吸引力を発生する電磁石のコイル電流をImとすると、あらかじめ定めた比例定数Kに対して
Va=K((Ip−Ib)^2−(Im−Ib)^2)
を満たすようなIp、Imを出力する。
電磁石の吸引力は、リニアモータのローレンツ力と比べて小さいアンペアターンで大きな推力を得ることができるので、従来のリニアモータのみのステージの加減速時の発熱と比較すると、電磁石の発熱はほとんど問題にならない。
また、一定速度で走行中は電磁石の電流はゼロに制御する。このため床振動等の外乱が電磁石を通してステージ系に伝わることはない。この状態では微動のリニアモータだけがステージを高精度に制御する。
移動FB系235Aは、リニアモータ固定子205の位置を位置プロファイルにならうように移動させるものである。本実施形態のリニアモータは、固定子205と可動子204との相対的な移動範囲が短いので、そのままでは長距離にわたって力を可動子に付与することができない。本実施形態はリニアモータ可動子204をY方向に長距離移動させるため、リニアモータ固定子205を送りネジ駆動系210でY方向に移動可能にし、ステージ201が移動可能なストローク中において、リニアモータ固定子205からステージ201に対してY方向の並進力と回転力を付与できるようになっている。これを実現するために、リニアモータ固定子205の位置をモータ212Aのエンコーダ238Aでフィードバックする位置制御系に位置プロファイルを入力し、リニアモータ固定子205をモータ212と送りネジ213によりステージ201とほぼ同じ位置プロファイルに基いて移動させ、リニアモータ固定子205とステージ201との相対位置がほぼ一定になるようにしている。モータ212は、リニアモータ固定子205および送りネジ系210Aのナット211Aを加速するためのトルクを発生する必要がある。また、加速終了時に位置制御系に位置偏差がたまるのは望ましくない。そこで、図4の構成に加えて加速プロファイル生成手段の出力を制御演算器の出力に加算してモータ電流アンプに入れてやれば、加速度をフィードフォワード的にモータに指令することができ、位置偏差をためずにステージを加速することができる。ステージ201の加速が終了し、ステージ201の位置制御または速度制御を行う間は、ネジ送り系210Aはリニアモータ固定子205をステージとほぼ同じ速度で走行させる。
移動FB系Bは、1対の電磁石の位置を位置プロファイルに基いてY方向に移動させるものである。電磁石208はきわめて小さい発熱で大きな吸引力を発生できる利点があるが、相手の磁性体207との空隙を小さい寸法に保たなければならない。電磁石208から磁性体板207ひいてはステージ201に所望の力を与え続けるには、ステージ201が移動したときに電磁石208も移動させて上記空隙を一定に保つ必要がある。そこで電磁石208の位置をモータ212Bのエンコーダ238Bでフィードバックする位置制御系に位置プロファイルを入力し、モータ212Bと送りネジ213Bにより電磁石208をステージ201とほぼ同じ位置プロファイルに基いて移動させ、電磁石208とステージ201の相対位置がほぼ一定になるようにしている。モータ212Bは、ステージの加減速時に電磁石の合力に相当するトルクに加え、電磁石208および送りネジ駆動系210Bのナット211Bを加減速するためのトルクを発生する必要がある。
また、ステージ201の加速時に位置制御系225にステージの位置偏差が蓄積されると、加速終了後の位置制御(または速度制御)のための制定時間が長くなるため望ましくない。そこで、図4の構成に加えて加速プロファイル生成手段の出力を制御演算器の出力に加算してモータ電流アンプに入力すれば、加速度をフィードフォワード的にモータに指令することができ、ステージの加速中に位置偏差をためずに電磁石を移動できる。いずれにしてもモータには相応の発熱があるが、熱源が局所的に集中して存在するので冷却が比較的容易であり、ステージやその上に載置される工作物とは距離を離して配置できるので、ステージや工作物に発熱の影響が伝わりにくい。ステージの加速が終了してステージが一定速度で走行している間は、ネジ送り系は電磁石と磁性体板が接触しないようにナット位置をステージとほぼ同じ速度で走行させる。
以上のように本実施形態においては、送りネジ系と電磁石によりステージを加速し、加速が終了したら電磁石系は電流をゼロにして床振動を絶縁すると同時にネジ送り系で電磁石と磁性体板が接触しないようステージの移動に同期して電磁石の位置を制御し、これらの動作と平行して微動リニアモータにより常時高精度な位置制御を行うようにすることにより大推力と低発熱と高精度3軸位置制御を同時に達成するようにした。
また、リニアモータの固定子およびステージに設けられた可動子が、位置プロファイルに基いてそれぞれ移動し、固定子と可動子がほぼ同じ位置に制御されるので、リニアモータのコイルを切りかえる必要がなく、推力むらを発生させずにステージを駆動できるので高精度な位置決めを行うことができる。
また、リニアモータが発生する推力の合力の作用線が重心を通るように配置し、また、電磁石による吸引力の合力の作用線が重心を通るように配置すれば、ステージの駆動時に、ステージに無用な回転力が発生しないで済み、効率の良いステージの駆動を行うことができる。
また、本実施形態では、リニアモータの固定子の移動に送りネジを用いているが、これに限るものではなく、ステージの移動に同期してリニアモータ固定子を移動できるものならば良く、例えばベルトやシリンダを用いてリニアモータ固定子を移動させても良い。
また、本実施形態でも、前述の実施形態で述べた効果も得ることができる。
<実施形態3>
図5に本発明のステージ装置に係る第3の実施形態を示す。
本実施形態は、前述の第2の実施形態の変形であり、Y軸方向に長ストローク移動可能で、Xおよびθ方向に微小量だけ移動可能な3軸制御ステージである。
前述の第2の実施形態では、ステージの直交する2辺からリニアモータの力を与えたが、本実施形態では、ステージの対辺から与えるようにしている。
リニアモータ303のコイル305aはY1,Y2およびX1,X2,X3,X4の6個設けられている。[コイルX1とコイルX2]、[コイルX3とコイルX4]、[コイルY1とコイルY2]の2つのコイルの力の作用線は各々同一線上にあり、コイルX1(あるいはコイルX2)の力の作用線とコイルX3(あるいはコイルX4)の力の作用線の両者の中心線、およびコイルY1の力の作用線は、おのおのステージ301の重心を通るようになっている。
単にステージの3軸を制御するため必要なコイルは、図6のようにX1,X2,Yの3つでよく、Yコイルの作用線と、X1,X2コイルの作用線の中心線がステージ重心を通ればよい。しかし、このような構成では、X軸,Y軸、回転軸まわりの質量の対称性が崩れ、図心と重心が一致しないので、冗長なコイルとそれに対応する可動磁石を設けてステージの質量分布を対称にする必要がある。よって、質量分布を対称にするため、図5のように6つのコイルを対称的に配置することが望ましい。ただし,コイルの配置はこれに限るものではない。
[コイルX1,コイルX2]は同一のドライバで駆動するようになっている。また、[コイルX3,コイルX4]も同一のドライバで駆動するようになっている。また、[コイルY1,コイルY2]も同一のドライバで駆動するようになっている。これにより、ステージ301に作用する力の自由度は、X,Yおよびθ方向の3自由度である。
また前述の実施形態では、磁性体板を挟むように対向して1対の電磁石を設けていたが、本実施形態では、磁性体板307をY方向の前後に2つ配置し、ステージ全体を挟むように1対の電磁石308を設けている。これもステージ301の質量分布の対称性を保つためであり、制御演算を容易なものとすることができる。
また、前述の第2の実施形態では、リニアモータ固定子移動用送りネジと電磁石移動用送りネジを別々に設けていたが、本実施例ではリニアモータ固定子と電磁石を共通の支持枠で保持して簡略化を図っている。
このように3軸制御系のリニアモータ303は、少なくともステージ301の2辺あるいは2個所からステージに力を及ぼせるようにするのがよい。本実施形態の場合、対向する2辺からステージ301に力を及ぼすようになっているが、もし1辺から3軸方向の力を発生させようとすると、並進のXまたはY方向の力の作用線のどちらかはステージの重心を通ることができなくなる。その結果、ステージに回転力が発生し、これを押さえるため無用の補正回転力が必要となってしまう。
図7は上述の本実施形態のステージ装置を駆動制御するための制御系のブロック図である。
ステージの移動目標を発生する移動目標指示手段321、該目標をもとに時間とその時間におけるステージの目標位置との関係を生成する位置プロファイル生成手段322、および該目標をもとに時間とその時間に発生すべき加速度との関係を生成する加速プロファイル生成手段323が設けられている。
位置プロファイル生成手段322の出力は、微動リニアモータ303を制御する微動リニアモータ位置サーボ系325と、リニアモータ固定子305および電磁石308を固定する支持枠306をY方向に移動させる送りネジ系310のモータ312をフィードバック制御する移動FB系335に入力される。また加速プロファイル生成手段323の出力は、電磁石308の吸引力をフィードフォワード制御する吸引FF系331に入力される。
微動リニアモータ位置サーボ系325は、演算部326、モータ電流アンプ327、リニアモータ303および干渉計328から構成される。演算部326は、上記位置プロファイル生成手段322による現在いるべきステージのX,Y,θ位置(目標位置)と干渉系328で測定したステージ301の現在いるX,Y,θ位置との偏差にPID等に代表される制御演算を施し、その結果をアナログ電圧でアンプ327に出力する。モータ電流アンプ327は、該アナログ出力電圧に比例する電流を[リニアモータY1とY2],[リニアモータX1とX2]、[リニアモータX3とX4]に供給する微動電流アンプである。リニアモータ303は前述の通り構成され,該電流によりステージに推力を付与する。干渉計328は、ステージ301に設けられた反射ミラー329の位置を計測し,ステージ(またはステージと一体に設けられた可動子)のX,Y,θ位置を計測する。図7において、干渉計の計測ラインが太い線で書いてあるのは、3軸を計測していることを表現している。実際には、Y方向に2本のビーム、X方向1本のビームをもつ3軸の干渉計を設けるのが一般的である。微動リニアモータ位置サーボ系325は、位置プロファイル生成手段322の出力を指令値とする通常の3軸位置サーボ系であるが、大推力が必要なときは後述の吸引FF系331が推力を発生するようになっており、リニアモータ303は目標位置とのわずかな位置偏差をとるための小さい推力を発生するだけなので、発熱が問題になるような電流が流れないようになっている。また、吸引FF系331が推力を発生するときは、それに起因する回転力はステージに発生しないようになっている。またソフト的またはハード的にリニアモータの電流を制限しており、吸引FF系331との連動が誤動作した場合でも発熱が問題になるような電流が流れないようになっている。
吸引FF系331は、1対の電磁石308と磁性体板307との間に加速プロファイル生成手段323の出力に比例したY方向の合成推力を発生させるための制御系である。吸引FF系331は、補正手段332、調整手段333、および2つの電磁石用電流アンプ334とから構成される。電磁石用電流アンプ334は、それぞれの電磁石のコイルをそれぞれ独立に駆動している。
補正手段332は、電磁石の電流と吸引力との非線型関係を補正するためのものであり、符号を保存する平方根演算器を有している。一般に電磁石の吸引力は電磁石の電流の二乗に比例する。ステージを駆動するために発生すべき吸引力は、加速プロファイル生成手段の出力に比例する力であるため、加速プロファイル生成手段の出力の平方根をとってそれを電流指令とすれば、加速プロファイル生成手段の出力の平方根の2乗に比例する吸引力が働く。つまり加速プロファイル生成手段の出力に比例した吸引力が働く。また加速プロファイル生成手段323の出力はプラスまたはマイナスの符号を含んでいるので、平方根演算は出力の絶対値に対して行い、演算後に符号を付加して調整手段332にわたすようになっている。
調整手段332は、1対の電磁石308と磁性体板307との間に働く各々の吸引力を調整し、両者の合力の大きさと向きを所望のものにするためのものである。電磁石は電流の向きによらず磁性体板を吸引する力しか出せない。そこで1対の電磁石でステージをY方向から挟むように配置し、各々の電磁石が対向する磁性体板に対してそれぞれ逆向きの力を発生するようにし、その2つの力を調整することで磁性体板に働く合力の大きさと方向を制御するようにしている。前記補正手段332の出力の符号により1対の電磁石のうちのどちらに電流を与えるかを選択し、前記補正手段332の出力に比例した値を電流アンプ334に入力し、他方の電磁石の電流はゼロに制御するようにするのがもっとも簡単な構成である。補正手段の出力がゼロの場合はどちらの電磁石の電流もゼロに制御される。この結果、1対の電磁石から磁性体板に対して加速プロファイル生成手段の出力の大きさに比例した推力が所望の方向に付与されることになる。
補正手段の出力がゼロのときに2つの電磁石に等しいバイアス電流を流しておくこともできる。これは電磁石のBH曲線の動作中心を電流すなわち磁界の強さ磁束密度の関係がより線形にする効果がある。この場合、補正手段と調整手段は一体となって、加速プロファイル出力をうけて2つの電磁石に適当な電流を指令する動作をする。具体的には加速プロファイル生成手段の出力がプラス移動方向にVa、バイアス電流がIbのとき、プラス移動方向に吸引力を発生する電磁石のコイル電流をIp、マイナス移動方向に吸引力を発生する電磁石のコイル電流をImとすると、あらかじめ定めた比例定数Kに対して
Va=K((Ip−Ib)^2−(Im−Ib)^2)
を満たすようなIp、Imを出力する。
電磁石の吸引力は、リニアモータのローレンツ力と比べて小さいアンペアターンで大きな推力を得ることができるので、従来のリニアモータのみのステージの加減速時の発熱と比較すると、電磁石の発熱はほとんど問題にならない。
また、一定速度で走行中は電磁石の電流はゼロに制御する。このため床振動等の外乱が電磁石を通してステージ系に伝わることはない。この状態では微動のリニアモータだけがステージを高精度に制御する。
移動FB系335は、支持枠306の位置を位置プロファイルにならうように移動させるものである。本実施形態のリニアモータの固定子と可動子との相対的な移動範囲および電磁石と磁性体板との吸引力による相対的な移動範囲は短いので、そのままでは長距離にわたって力を可動子に付与することができない。本実施形態はステージ301をY方向に長距離移動させるため、リニアモータ固定子305と電磁石308とを支持する支持枠306を送りネジ系310でY方向に移動可能にし、ステージ301が移動可能なストローク中において、リニアモータ固定子305および電磁石308からステージ301に対して力を付与できるようになっている。これを実現するために、モータのエンコーダでフィードバックする位置制御系に位置プロファイルを入力し、支持枠をモータと送りネジによりステージとほぼ同じ位置プロファイルに基いて移動させ、リニアモータ固定子305とリニアモータ可動子304、および電磁石308と磁性体板307の相対位置が、ほぼ一定になるようにしている。モータ312は支持枠306および送りネジ駆動系310のナット311を加速するためのトルクを発生する必要がある。また、加速終了時に位置制御系に位置偏差がたまるのは望ましくない。そこで、図7の構成に加えて加速プロファイル生成手段の出力を制御演算器の出力に加算してモータ電流アンプに入力すれば、加速度をフィードフォワード的にモータに指令することができ、位置偏差をためずにステージを加速することができる。ステージの加速が終了し、ステージの位置制御または速度制御を行う間は、ネジ送り系は支持枠をステージとほぼ同じ速度で走行させる。
以上のように送りネジ系と電磁石によりステージを加速し、加速が終了したら電磁石系は電流をゼロにして床振動を絶縁すると同時にネジ送り系で電磁石と磁性体板が接触しないよう電磁石の位置を制御し、これらの動作と平行して微動リニアモータにより常時高精度な位置制御を行うようにすることにより大推力と低発熱と高精度3軸位置制御を同時に達成するようにした。
本実施形態では、ステージを駆動する際に必要なリニアモータ固定子の移動量と電磁石の移動量とがほぼ等しいことから、リニアモータ固定子と電磁石を同一の保持枠で支持し、同一の駆動機構によって移動するようにした。これにより、ステージ装置の構成を省略でき、低コスト化や小型化を図ることができる。
また、ステージの重心に対して、対象にリニアモータや電磁石等を設けることで、装置の質量分布を対称にすることができ、ステージの駆動時に無駄な回転方向の力が発生しないようにできる。
また、本実施形態では、前述の実施形態で述べた効果を得ることができる。
また以上の実施形態ではY方向にのみ長ストロークをもつ例を示したが、Y駆動用の送りネジ全体をXに駆動する送りネジ系を設け平面ガイドを略正方形にしてXY両方向に長ストロークを持つようにすることもできる。
<実施形態4>
図8は、本発明の第4の実施形態であり、本発明の基本構成をウエハステージに適用した例の斜視図である。
(XYステージの説明)
ベース定盤502上にYヨーガイド550が固定されている。Yヨーガイド550の側面とベース定盤502の上面でガイドされるYステージ551が、Yステージ551に設けられた不図示エアスライドによりY方向に沿って滑動自在に支持されている。
Yステージ551は、主に2本のXヨーガイド552とYスライダ大553、Yスライダ小554の4部材から構成される。Yスライダ大553は、その側面及び下面に設けた不図示エアパッドを介してYヨーガイド550側面及びベース定盤502上面と対面している。また、Yスライダ小554は、その下面に設けた不図示エアパッドを介してベース定盤502上面と対面している。この結果Yステージ全体としては前述のようにYヨーガイド550の側面とベース定盤502の上面でY方向に滑動自在に支持されることになる。
一方、Xステージ561は、主に2枚のXステージ側板562と、上のXステージ上板563、下のXステージ下板564の4部材から構成され、Yステージ551のXヨーガイド552をX軸まわりに囲むように設けられる。Xステージ561は、X方向に不図示のエアスライドにより滑動自在に支持されている。Xステージ561は、Yステージ551の構成部材である2本のXヨーガイド552の側面とベース定盤502の上面とでガイドされる。Xステージ下板564はその下面に設けた不図示エアパッドを介してベース定盤502上面と対面し、2枚のXステージ側板562はその側面に設けた不図示エアパッドを介してYステージ551の構成部材である2本のXヨーガイド552の側面と対面している。Xステージ上板563の下面とXヨーガイド552の上面、およびXステージ下板564の上面とXヨーガイド552の下面は非接触になっている。この結果、Xステージ561全体としては、前述のように2本のXヨーガイド552の側面とベース定盤502の上面でX方向に滑動自在に支持されることになる。結果的に、Xステージ561は、Yステージ551がY方向に移動するときは共にY方向に移動し、Yステージ551に対してはX方向に移動可能であるため、XYの2次元に滑動自在となる。
XYステージ(移動装置)の駆動機構は、X駆動用に1本、Y駆動用に2本の多相コイル切り替え方式の長距離リニアモータ510が用いられている。X駆動用の長距離Xリニアモータ510Xの固定子512XはYステージ551に設けられ、長距離Xリニアモータ510Xの可動子511XはXステージ561に設けられており、Xステージ561とYステージ551との間でX方向に駆動力を発生する。長距離Yリニアモータ510Yの固定子512Yは、ベース定盤502と一体的に設けても良いし、ベース定盤502と振動的に独立した部材に設けても良い。長距離Yリニアモータ510Yの可動子511Yは、連結板555を介してYステージ551と一体的に設けられている。これにより、Y駆動用の長距離Yリニアモータ510Yは、Yステージ551をベース定盤502に対してY方向に駆動する。
長距離リニアモータ510の固定子512は、ストローク方向に並べた複数個のコイル513をコイル固定枠514に保持した物である。長距離リニアモータ510の可動子511は、磁極ピッチが上記コイルのコイルスパンに等しい4極の磁石をヨーク板の上にならべたもので上記コイルを挟むように対向させて形成した箱形の磁石で構成される。長距離リニアモータは、可動子の位置によって固定子のコイルに選択的に電流を流すことにより推力を発生する。
(ウエハ天板501の説明)
ウエハ天板501(移動可能なステージ)は、工作物であるウエハをウエハチャック571により載置し、並進XYZ方向及び回転ωxωyωz方向の6自由度方向に位置決めするものである。ウエハ天板501は、矩形の板状の形をしており中央に窪み572が設けられ、窪み部分572にウエハを載置するためのウエハチャック571が設けられている。ウエハ天板501の側面には干渉計(第1の計測器)のレーザーを反射するためのミラー529が設けられウエハ天板501の位置を計測できるようになっている。
(位置計測の説明)
次に、図9を用いて、Xステージ561の位置計測とウエハ天板501の位置計測について説明する。
Xステージ561の上板563の側面には、Xステージ561の位置計測を行う干渉計(第2の計測器)の計測光を反射するためのミラーが形成されている。X方向およびY方向からレーザ干渉計の計測光がXステージ側面ミラー539に照射され、Xステージ561のXY方向の位置をレーザ干渉計で精密に計測できるようになっている。
ウエハ天板501の側面には、干渉計のレーザーを反射するためのミラー529が設けられ、ウエハ天板501の位置を計測できるようになっている。ウエハ天板501には6本の光ビームが照射され、ウエハ天板501の6自由度の位置を計測している。X軸に平行でZ位置の異なる2本の干渉計ビームにより、ウエハ天板501のX方向の位置およびωy方向の回転量が計測できる。また、Y軸に平行でX位置およびZ位置の異なる3本の干渉計ビームにより、Y方向の位置およびωxωy方向の回転量が計測できる。さらにウエハチャック571に載置されたウエハに斜めに計測光を入射し、この計測光の反射位置を計測することにより、ウエハのZ方向の位置(つまりウエハ天板のZ方向の位置)が計測できる。
以上のように、Xステージ561及びウエハ天板501の位置を計測することにより、Xステージ561の位置計測とウエハ天板501の位置計測は、互いに独立して位置をレーザ干渉計で精密に計測できるようになっている。
(微動アクチュエータの説明)
次に、図10を用いて、Xステージ561とウエハ天板501との間で駆動力を発生する微動アクチュエータユニットの説明を行う。図10は、Xステージ561とウエハ天板501との間に設けられた微動リニアモータ503および電磁石508等を用いたアクチュエータの分解図を表している。
ウエハ天板501の下方にはウエハ天板501に推力や吸引力を作用する基準となる前述のXYステージが配置される。
ウエハ天板501の下面には8個の微動リニアモータ可動子504が取り付けられている。各可動子504は、厚み方向に着磁された2極の磁石574およびヨーク575を2組み有している。この2組の磁石574およびヨーク575は、側板576で連結して箱状の構造を形成し、後述の微動リニアモータ固定子505を非接触で挟み込むように対面する。
8個の可動子504のうちの4個の可動子505Zは、矩形状天板501の辺のほぼ中央部に配置され、ウエハ天板501をXステージ561に対してZ方向に微動駆動するためのZ可動子を形成する。Z可動子505Zにおいては、前記2極の磁石574ZがZ方向に沿って配列されており、後述のZ方向に直角な直線部をもつZ固定子505Zの長円コイル578Zに流れる電流と相互作用してZ方向の推力を発生する。これをZ1〜Z4可動子と名づける。
残りの4個の可動子504Xのうち矩形状天板の対角の隅部に配置される2個の可動子は、ウエハ天板501をXステージ561に対してX方向に微動駆動するためのX可動子を形成する。X可動子504Xにおいては、前記2極の磁石574XがX方向に沿って配列されており、後述のX方向に直角な直線部をもつX固定子505Xの長円コイル578Xに流れる電流と相互作用してX方向の推力を発生する。これをX1、X2可動子と名づける。
残りの2個の可動子504Yもまた矩形状天板501の対角の隅部に配置され、ウエハ天板501をXステージ561に対してY方向に微動駆動するためのY可動子を形成する。Y可動子504Yにおいては、前記2極の磁石574がY方向に沿って配列されており、後述のY方向に直角な直線部をもつY固定子505Yの長円コイル578Yに流れる電流と相互作用してY方向の推力を発生する。これをY1、Y2可動子と名づける。
また、ウエハ天板501の下面の矩形のほぼ中央部には、円筒形状の磁性体支持筒580が設けられている。そしてこの磁性体支持筒580の外周部には4つの円弧状の磁性体ブロック507が固定されている。このうち2個の円弧状磁性体ブロック507Xは、X方向に沿うように配置され、やはりX方向に沿うように配置された後述のE形状電磁石508Xと非接触で対面し、E形状電磁石508XからX方向の大きな吸引力を受けられるようになっている。この、X方向に沿って配置された円弧状の磁性体ブロック507XをX1、X2ブロックと名づける。
残りの2個の円弧状磁性体ブロック507Yは、Y方向に沿うように配置され、やはりY方向に沿うように配置された後述のE形状電磁石508Yと非接触で対面し、E形状電磁石508YからY方向の大きな吸引力を受けられるようになっている。この、Y方向に沿って配置された円弧状の磁性体ブロック507YをY1、Y2ブロックと名づける。
円筒形状の磁性体支持筒580の中空部分には、自重補償ばね581が配置され、その上端がウエハ天板501の下面中央部と結合され、ウエハ天板501の自重を支持するようになっている。自重補償ばね581は自重支持方向および他の5自由度方向のばね定数が極めて小さく設計されており、ばね581を介してXステージ561からウエハ天板501への振動伝達がほぼ無視できるようになっている。
X1X2可動子504Xが発生する力の作用線のZ座標は概ね一致している。X1X2可動子504Xが発生する力の作用線のZ座標は、X1X2可動子504X、Y1Y2可動子504Y、Z1Z2Z3Z4可動子504Zおよび磁性体支持筒580および4つの円弧状磁性体ブロック507を含むウエハ天板501の重心のZ座標と概ね一致するようになっている。このためX1X2可動子504Xに発生するX方向の推力によって、Y軸まわりの回転力がほとんどウエハ天板501に作用しないようになっている。
Y1Y2可動子504Yが発生する力の作用線のZ座標は概ね一致している。Y1Y2可動子504Yが発生する力の作用線のZ座標は、X1X2可動子504Y、Y1Y2可動子504Y、Z1Z2Z3Z4可動子504Zおよび磁性体支持筒580および4つの円弧状磁性体ブロック507を含むウエハ天板501の重心のZ座標と概ね一致するようになっている。このためY1Y2可動子504Yに発生するY方向の推力によって、X軸まわりの回転力がほとんどウエハ天板501に作用しないようになっている。
X1X2ブロック507Xに作用する吸引力の作用線のZ座標は概ね一致している。X1X2ブロック507Xに作用する吸引力の作用線のZ座標は、X1X2可動子504X、Y1Y2可動子504Y、Z1Z2Z3Z4可動子504Zおよび磁性体支持筒580および4つの円弧状磁性体ブロック507を含むウエハ天板501の重心のZ座標と概ね一致するようになっている。このためX1X2ブロック507Xに作用するX方向の吸引力によって、Y軸まわりの回転力がほとんどウエハ天板501に作用しないようになっている。
また、このX1X2ブロック507Xに作用するX方向の吸引力の作用線のX座標は、X1X2可動子504X、Y1Y2可動子504Y、Z1Z2Z3Z4可動子504Zおよび磁性体支持筒580および4つの円弧状磁性体ブロック507を含むウエハ天板501の重心のX座標と概ね一致するようになっている。このためX1X2ブロックに作用するX方向の吸引力によって、Z軸まわりの回転力がほとんどウエハ天板501に作用しないようになっている。
Y1Y2ブロック507Yに作用する吸引力の作用線のZ座標は概ね一致している。Y1Y2ブロック507Yに作用する吸引力の作用線のZ座標は、X1X2可動子504X、Y1Y2可動子504Y、Z1Z2Z3Z4可動子504Zおよび磁性体支持筒580および4つの円弧状磁性体ブロック507を含むウエハ天板501の重心のZ座標と概ね一致するようになっている。このためY1Y2ブロック507Yに作用するY方向の吸引力によって、X軸まわりの回転力がほとんどウエハ天板501に作用しないようになっている。
また、このY1Y2ブロック507Yに作用するY方向の吸引力の作用線のX座標は、X1X2可動子504X、Y1Y2可動子504Y、Z1Z2Z3Z4可動子504Zおよび磁性体支持筒580および4つの円弧状磁性体ブロック507を含むウエハ天板501の重心のX座標と概ね一致するようになっている。このためY1Y2ブロック507Yに作用するY方向の吸引力によって、Z軸まわりの回転力がほとんどウエハ天板501に作用しないようになっている。
Xステージ上板563の上部には、ウエハ天板501を6軸方向に位置制御するための8個の微動リニアモータ503の固定子505、ウエハ天板501にXY方向の加速度を与えるための電磁石支持円筒583に支持された4個のE形電磁石508、ウエハ天板501の自重を支持するための自重支持ばねの一端が固定されている。
各固定子505は、長円形のコイル578をコイル固定枠579で支持する構造になっており、前述のウエハ天板501下面に固定されたリニアモータ可動子504と非接触で対面するようになっている。
8個の固定子505のうちの4個の固定子505Zは、矩形状のXステージ上板563の辺のほぼ中央部に配置され、ウエハ天板501をXステージ561に対してZ方向に微動駆動するためのZ固定子を形成する。Z固定子505Zは、前記長円コイル578Zの直線部がZ方向と直角になるように配置されており、前記Z可動子504ZのZ方向に沿って配置された2極の磁石574ZにZ方向の推力を作用できるようになっている。このコイルをZ1〜Z4コイルと名づける。
残りの4個の固定子のうち2個の固定子505Xは、矩形状のXステージ上板563の対角の隅部に配置され、X固定子を形成する。X固定子505Xでは、前記長円コイル578Xの2つの直線部がX方向と直角になり、2つの直線部がX方向に沿うように配置されており、前記X可動子504XのX方向に沿って配置された2極の磁石574XにX方向の推力を作用できるようになっている。このコイルをX1X2コイルと名づける。
残りの2個の固定子505Yも矩形状のXステージ上板563の対角の隅部に配置され、Y固定子を形成する。Y固定子505Yでは、前記長円コイル578Yの2つの直線部がY方向と直角になり、2つの直線部がY方向に沿うように配置されており、前記Y可動子504YのY方向に沿って配置された2極の磁石504YにY方向の推力を作用できるようになっている。このコイルをY1Y2コイルと名づける。
また、電磁石支持円筒583は、矩形状のXステージ上板563のほぼ中央部に配置され、電磁石支持円筒583の内部には4つのE形電磁石508が設けられている。E形電磁石508は、Z方向からみたとき概ねE形の断面を有する磁性体ブロック585と、コイル586とを具備している。コイル585は、Eの字の中央の突起の周りに巻きまわされる。Eの字の3つの突起部の端面は、直線ではなく円弧になっている。このE形電磁石508の3つの突起部の端面は、前記ウエハ天板501に固定された円弧状磁性体ブロック507と数十ミクロン程度以上の空隙を介して非接触で対面し、コイルに電流を流すことによって円弧状磁性体ブロック585に吸引力を作用するようになっている。
4個のE形電磁石508のうち2個は、X1X2ブロック507Xに対面するようにX方向に沿って配置され、X1X2ブロック507XにそれぞれX方向および−X方向の吸引力を与える。これをX1X2電磁石508Xと名づける。
E形電磁石508のうち残りの2個は、Y1Y2ブロック507Yに対面するようにY方向に沿って配置され、Y1Y2ブロック507YにそれぞれY方向および−Y方向の吸引力を与える。これをY1Y2電磁石508Yと名づける。
電磁石508は吸引力しか発生できないので、XYそれぞれの駆動方向について+方向に吸引力を発生する電磁石508と−方向に吸引力を発生する電磁石508を設けているのである。
また、磁性体ブロック507およびE形電磁石の各々の対向面をZ軸まわりの円筒面とし、4つの磁性体ブロックと4つのE形電磁石508が、Z軸周り(ωx方向)に互いに接触することなく、自由に回転できるようにしている。つまり、ウエハ天板501とXステージ561が、ωx方向に相対移動可能となる。また、ωx方向に回転しても、E形電磁石508の端面と磁性体ブロック507との間の空隙に変化がなく、同一電流に対して電磁石508の発生する吸引力が変化しない。
本実施形態では、4つの磁性体ブロックと4つのE形電磁石の各々の対向面は円筒面としたが、これに対向面の形状はこれに限るものではなく、球面形状や、椀形状にしても良い。磁性体ブロックと電磁石の対抗面を球面形状や椀形状にしても、ωxωyωzの回転3軸方向について相対回転自在となり、相対回転しても対向する面の空隙に変化がなく、電磁石の吸引力が変化することもない。
また、円弧状磁性体ブロック507およびE形磁性体ブロック585は層間が電気的に絶縁された薄板を積層して形成されており、磁束変化にともなってブロック内に渦電流が流れることを防止しており、E形電磁石508の吸引力を高い周波数まで制御することができる。
以上の構成により、Xステージ561からウエハ天板501に対して、リニアモータにより6軸方向の推力を与えることができ、電磁石508によりXY方向の大きな吸引力を与えることができる。
並進Z方向および回転ωxωyωz方向は長いストロークを動かす必要はないが、XY方向は長いストロークにわたって推力や吸引力を作用させる必要がある。しかし、リニアモータ503も電磁石508もXY方向のストロークが極めて短い。一方、Xステージ561はXY方向に長いストロークを有する。そこで、Xステージ561をXY方向に移動させながらウエハ天板501にXY方向の推力や吸引力を作用させることにより、XY方向の長きにわたってウエハ天板501にXY方向の推力や吸引力を作用させるようにしている。
(制御系の説明)
一例として、図11に、Y方向にのみ長距離移動し、他の5軸方向は現在位置に保持するような動作を行う場合の制御ブロック図を示す。
移動目標指示手段521は、ウエハ天板501の6軸方向の位置等の目標値を位置プロファイル生成手段522と加速プロファイル生成手段523に出力する。位置プロファイル生成手段522は、目標指示手段521からの目標値に基いて、時間とウエハ天板501がいるべき位置との関係を、並進XYZ方向および回転ωxωyωz方向の6軸方向についてそれぞれ生成する。加速プロファイル生成手段523は、目標指示手段521からの目標値に基いて、時間と発生すべき加速度の関係を、並進XY方向の2軸についてそれぞれ生成する。これらのプロファイルは、ウエハ天板501を剛体とみなしてその代表位置に対して与えられる。代表位置としては、ウエハ天板501の重心を用いるのが一般的である。
つまり本実施形態の場合、時間とウエハ天板501がいるべき重心の位置および重心周りの回転の関係が位置プロファイル生成手段522により与えられ、ウエハ天板501の重心のXY方向の加速プロファイルについては加速プロファイル生成手段523により与えられる。
本実施形態では、Y軸方向のみ長距離移動するので、Y軸に関してのみ目標位置まで移動する位置プロファイルが与えられ、他の軸に関しては現在位置にとどまるよう一定値の位置プロファイルがあたえられる。また加速プロファイルもY軸は移動に伴う加減速パターンが加速プロファイル生成手段により与えられ、移動のないX軸は常にゼロである。
6軸方向のウエハ天板501の重心位置および重心周りの回転の位置プロファイル生成手段522の出力は、微動リニアモータ503を制御する微動LM位置サーボ系に入力される。このうちの重心のX位置プロファイル生成手段522Xの出力とY位置プロファイル生成手段522Yの出力は、Xステージ561をXY方向に移動させるXYステージの長距離リニアモータ510の電流をフィードバック制御する長距離LM位置サーボ系535にも入力される。
またX加速プロファイル生成手段523Xの出力とY加速プロファイル生成手段523Yの出力は、電磁石508の吸引力をフィードフォワード制御する吸引FF系531に入力される。
微動LM位置サーボ系525は、差分器541と、演算部526と、出力座標変換部542と、微動電流アンプ527と、ウエハ天板位置計測系528と、入力座標変換部543とを有する。差分器541は、上記位置プロファイル生成手段522が出力するウエハ天板501の重心の現在いるべきXYZωxωyωz位置(目標位置)とウエハ天板501の重心が実際にいるXYZωxωyωz位置(計測位置)との偏差を出力する。演算部526は、差分器541からの偏差信号に基いて、PID等に代表される制御演算を施し、6軸分の駆動指令を計算する。出力座標変換部542は、6軸分の駆動指令をX1X2Y1Y2Z1Z2Z3Z4リニアモータ503に分配する演算を行い、その結果をアナログ電圧で出力する。微動電流アンプ527は、該アナログ出力電圧に比例する電流をX1X2Y1Y2Z1Z2Z3Z4リニアモータ503に供給する。ウエハ天板501位置計測系は、ウエハ天板501の概ね露光点のXYZωxωyωzの位置を計測する干渉計等を備えた前述の計測手段を有する。入力座標変換部543は、ウエハ天板位置計測系からの信号に基いて、ウエハ天板501の概ね露光点のXYZωxωyωzの位置をウエハ天板501の重心のXYZωxωyωz位置に換算する。
微動LM位置サーボ系525は、各軸ごとにみると、位置プロファイル生成手段522の出力を指令値とする通常の位置サーボ系であるが、大推力が必要なときは、後述の吸引FF系531から力をもらうようになっている。また、上述のように電磁石508の吸引力は、その作用線とウエハ天板501の重心を一致させることにより、ウエハ天板501に回転力を発生しないように構成されている。そのため、微動リニアモータ503は、目標位置とのわずかな位置偏差を解消するための小さい推力を発生するだけでよいので、発熱が問題になるような電流が流れないようになっている。またソフト的またはハード的にリニアモータの電流を制限して吸引FF系531との連動が誤動作した場合でも発熱が問題になるような電流が流れないようにすることもできる。
吸引FF系531は、1対のX1X2電磁石508XとX1X2ブロック507Xとの間に加速プロファイル生成手段523の出力に比例したX方向の合成推力を発生させるための制御系と、1対のY1Y2電磁石508YとY1Y2ブロック507Yとの間に加速プロファイル生成手段523の出力に比例したY方向の合成推力を発生させるための制御系とを有する。各制御系は、補正手段532と、調整手段533と、1対の電磁石508のコイル586を各々独立に駆動する2つの電磁石用電流アンプ534とから構成される。
補正手段532は、電磁石508の電流と推力の非線型関係を補正するためのものである。多くの場合、補正手段532は符号を保存する平方根演算器である。一般に電磁石の吸引力は電磁石の電流の二乗に比例する。要求される力は、加速プロファイル生成手段523の出力に比例する力であるから、この出力の平方根をとってそれを電流指令とすれば、加速プロファイル生成手段523の出力の平方根の2乗に比例する吸引力が働く。つまり加速プロファイル生成手段523の出力に比例した吸引力が働く。また、加速プロファイル生成手段523の出力は、符号を含んでいるが、平方根演算は出力の絶対値に対して行い、演算後に符号を付加して調整手段に出力するようになっている。
また、調整手段533は、1対の電磁石508を構成する各々の電磁石508と磁性体507の間に働く吸引力を調整し、両者の合力の大きさと向きを所望のものにするためのものである。電磁石508は電流の向きによらず磁性体507を吸引する力しか出せない。そこで、1対の電磁石508で磁性体507を挟み、各々の電磁石508で磁性体板に対して逆向きの力を発生するようにし、その2つの力を調整することで磁性体507に働く合力の大きさと方向を制御するようにしている。前記補正手段532の出力の符号に基いて、1対の電磁石508のうちのどちらに電流を与えるかを選択し、前記補正手段532の出力に比例した値を電流アンプ534に入力し、他方の電磁石508の電流はゼロに制御するようにするのがもっとも簡単な構成である。補正手段532の出力がゼロの場合は、どちらの電磁石508の電流もゼロに制御される。この結果、1対の電磁石508から磁性体507に対して、加速プロファイル生成手段523の出力の大きさに比例した推力が所望の方向に付与されることになる。また、補正手段532の出力がゼロのときに2つの電磁石508に等しいバイアス電流を流しておくこともできる。これは電磁石508のBH曲線の動作中心を電流すなわち磁界の強さと磁束密度の関係をより線形にする効果がある。この場合、補正手段と調整手段は一体となって、加速プロファイル出力に基いて、2つの電磁石508に適当な電流を指令する動作をする。
具体的には加速プロファイル生成手段523の出力がプラス移動方向にVa、バイアス電流がIbのとき、プラス移動方向に吸引力を発生する電磁石508のコイル電流をIp、マイナス移動方向に吸引力を発生する電磁石508のコイル電流をImとすると、あらかじめ定めた比例定数Kに対して
Va=K((Ip−Ib)^2−(Im−Ib)^2)
を満たすようなIp、Imを出力する動をする。電磁石508は小さいアンペアターンで大きな推力を得ることができ発熱はほとんど問題にならない。
また、一定速度で走行中は電磁石508の電流はゼロに制御する。このため床振動等の外乱が電磁石508を通してウエハ天板501側に伝わることはない。この状態においては、微動リニアモータを用いてウエハ天板501の6軸方向の位置決めを高精度に制御する。
本実施形態において、ウエハ天板501に連結された微動リニアモータおよび電磁石508はストロークが短いので、そのままでは長距離にわたって力を付与することができない。そこで、ウエハ天板501に力を付与する基準となるXステージ561をXY方向に移動させながらウエハ天板501にXY方向の推力や吸引力を作用させることにより、XY方向の長きにわたってウエハ天板501にXY方向の推力や吸引力を作用させるようにしている。これを実現するために、長距離LM位置サーボ系と、それに接続される2本のYリニアモータおよび1本のXリニアモータが設けられている。
長距離LM位置サーボ系535は、X制御系とY制御系とを有する。X制御系は、1本のXリニアモータによってXステージ561のX位置をX位置プロファイルにならうように制御する。Y制御系は、2本のYリニアモータによってXステージ561およびYステージ551のY位置をY位置プロファイルに基いて制御する。
長距離LM位置サーボ系535のXおよびY制御系は、XまたはY方向の位置プロファイルと、Xステージ上板563の側面に構成された反射ミラーに照射した干渉計ビームにより計測されるXまたはY方向のXステージ561の現在位置との差分を出力し、この偏差信号にPID等に代表される制御演算を施し、XまたはY方向の加速指令を計算し、これをXまたはYリニアモータ電流アンプ537を介してXリニアモータ510XまたはYリニアモータ510Yに出力するようになっている。
この結果、Yリニアモータ510YはYステージ551、Xステージ561、およびウエハ天板501等の全体質量をY方向に加速するための推力を発生し、Xリニアモータ510XはXステージ561およびウエハ天板501等の全体質量をX方向に加速するための推力を発生する。
本実施形態では、加速プロファイル生成手段522の出力を、長距離LM位置サーボ系の制御演算器の出力に加算してモータ電流アンプに入力することによって、加速度をフィードフォワード的に長距離リニアモータ510に指令し、加速中に位置偏差がたまらないようにしている。
本実施形態では、加速プロファイルは吸引FF系531と長距離LM位置サーボ系535にフィードフォワード的に与えているが、これに加えて、微動LM位置サーボ系525にフィードフォワード的に与えるようにしてもよい。また、加速プロファイルをXY方向だけでなく6軸方向すべて生成し、微動LM位置サーボ系525にフィードフォワード的に与えるようにしてもよい。
Xステージ561やウエハ天板501の加速終了後も、Xステージ561およびYステージ551はX位置およびY位置プロファイルに基いて移動する。加速終了後は2本のYリニアモータと1本のXリニアモータはX1X2Y1Y2の微動リニアモータが発生する推力の反力を発生しているだけである。
以上のように本実施形態によれば、リニアモータで移動されるXステージ561およびYステージ551とXステージ561を基準とする電磁石508の吸引力によってウエハ天板501を加速し、ウエハ天板501の加速が終了したら電磁石は電流をゼロにして床振動を絶縁し、長距離LM位置サーボ系はXステージ561およびYステージ551をXおよびYの位置プロファイルに基いて移動させ、電磁石508や微動リニアモータの可動子固定子が接触しないようにしつつ、これらの動作と平行して微動リニアモータによって常時高精度な位置制御を行うようにすることにより、大推力と低発熱とウエハ天板501に対する高精度6軸位置制御を同時に達成するようにした。
(独立計測独立制御の利点)
本実施形態では、電磁石508や微動リニアモータの推力発生の基準であるXステージ561の位置をウエハ天板501の位置とは全く独立に計測し、全く独立した制御系で位置制御している。
このようなXステージ561位置の独立計測独立制御は、相対センサを用いた制御と比較して、以下のような利点がある。
まず第1の利点は、実装上の不利益が多い相対位置センサを用いないで済むことが挙げられる。Xステージ561とウエハ天板501の相対位置を計測する相対位置センサを設ける場合、Xステージ561またはウエハ天板501に固定しなければならない。センサ取り付け部が振動しないように強固に固定しようとすると、取り付け部の寸法が増加し、周囲の部品との干渉や質量の増加が懸念される。またプリアンプも近くに搭載する必要があり、これも周囲の空間を圧迫し質量増加を招く。また、センサのケーブルをXステージ561やウエハ天板501がひきずることになり、ケーブルの引き回しによる外乱力が増加する。つまり、本実施形態のXステージ561とウエハ天板501の計測および制御を独立にすることによって、ウエハ天板501の質量を軽減させることができるので、ウエハ天板501に駆動力を与えたときの応答が速くなり、ウエハ天板501の高速な位置決めに有利である。また、ケーブルの引き回しがなく、高精度な位置決めに適している。
第2の利点は、演算の負荷が減ることである。これは、上記の実装の問題とも関わっている。ギャップセンサ等の相対位置センサでXY方向だけの相対変位を計測しようとした場合、ウエハ天板501の重心に相当する位置をXステージ561から相対的に測定できるようにセンサを配置するのは困難である。例えば、本実施形態では重心の付近には電磁石508や磁性体ブロックがあり、相対位置センサを設けるとするとこれを避けて配置しなければならない。すると、ウエハ天板501の回転に起因するいわゆるアッベ誤差が相対センサに入ってくる。この誤差を取り除くためには、前記ウエハ天板501の重心位置計測結果のωxωyωxの値と、相対位置センサの取付位置とウエハ天板501の重心位置との隔たり量からXY方向の変位を計算し、または相対位置センサを6個設けて座標変換を行うことによりXY方向の変位を計算したりしなければならず、演算の負荷が増える。本実施形態では、このような演算の負荷が軽減されているため、高速な位置決めには非常に適している。
第3の利点は、Xステージ561およびウエハ天板501の制御系に入る外乱を減らすことができる。相対位置センサを用いた制御方式では、長距離LM位置サーボ系に入る外乱が増える。相対位置センサを用いた制御方式では、長距離LM位置サーボ系に対する位置指令は常にゼロであり、ウエハ天板501とXステージ561が相対変位するとそれが外乱となる。つまり、ウエハ天板501の応答遅れがあると外乱がふえる。さらに、相対位置センサを用いた制御方式では、ウエハ天板501の微動LMサーボが有効でないとXYステージを駆動することができない。そのため相対位置センサを用いた制御方式では、例えば試験のためにXYステージ位置のみを移動させることはできない。一方、本実施形態の独立計測独立制御方式では、Xステージ561の位置計測に干渉計を用いており、これはXステージ561の側面にミラーを形成するだけですむ。
つまり、本実施形態の独立計測独立制御により、ウエハ天板501周辺の空間を圧迫したり、ケーブルを引きまわしたり、相対位置センサのアンプを搭載することによって質量が増加することもない。また、本実施形態の独立計測独立制御方式では、干渉計で計測したXYの位置信号に、ウエハ天板501の回転量は混入してこないので、位置信号に対して複雑な演算を施す必要もない。また、ウエハ天板501に応答遅れがあっても長距離LM位置サーボ系には混入してこないので無用の外乱が増えることもない。また、ウエハ天板501の微動LMサーボ系を立ち上げることなく長距離LM位置サーボ系に位置指令を与えることでXステージ561を任意位置に移動させることができる。
本実施形態では、ウエハ天板501の6軸方向の微動制御に8個の微動リニアモータを用いる例を示したが、これに限るものではなく、微動リニアモータは6軸方向の推力が出せるように最低6個のアクチュエータがあればよい。アクチュエータの配置も本実施形態のものに限定されないことは言うまでもない。
電磁石508は吸引力しか出せないので、本実施形態ではXY方向の加速減速を行うのに4個の電磁石508を必要とした。しかし、電磁石508の数も、XY方向に区別することを考慮に入れなければ、少なくとも3個の電磁石508があればXY方向の駆動を行うことができる。また、電磁石508は、コイルに電流を流したとき磁性体に吸引力を発生できるものであればなんでもよく、本実施形態のようなE形状に限定されるものではない。
また独立計測独立制御において、Xステージ561位置計測を行うのにXステージ561の側面ミラーを利用して干渉計で計測したが、これに限るものではなく、XおよびYリニアモータにリニアエンコーダを設け、これによりXステージ561位置を計測してもよい。また、リニアエンコーダのかわりに長尺を測定できる任意のセンサを使うこともできる。
また、本実施形態では、Xステージ561をXY方向に長ストローク駆動するためにリニアモータを用いたが、これに限るものではなく、ボールネジ、ピストン、ロボットアーム等を用いても良い。
また、本実施形態では、ウエハ天板501の自重支持に自重補償ばねを用いたが、これに限るものではなく、エアによる浮上力を利用したり、磁石の反発力を利用したり、Z方向に力を発生するアクチュエータを利用しても良い。Z方向に力を発生させるアクチュエータとして、前述の微動リニアモータを用いても良いが、リニアモータの発熱は大きいため、発熱の小さなアクチュエータを微動リニアモータとは別に設けても良い。
<実施形態5>
次に前述した実施形態のステージ装置をウエハステージまたはレチクルステージとして搭載した走査型露光装置の実施形態を、図12を用いて説明する。
鏡筒定盤696は床または基盤691からダンパ698を介して支持されている。また鏡筒定盤696は、レチクルステージベース694を支持すると共に、レチクルステージ695とウエハステージ693の間に位置する投影光学系497を支持している。
ウエハステージ693は、床または基盤から支持されたステージ定盤上に支持され、ウエハを載置して位置決めを行う。また、レチクルステージ695は、鏡筒定盤696に支持されたレチクルステージベース上に支持され、回路パターンが形成されたレチクルを搭載して移動可能である。レチクルステージ695上に搭載されたレチクルをウエハステージ693上のウエハを露光する露光光は、照明光学系699から発生される。
なお、ウエハステージ693は、レチクルステージ695と同期して走査される。レチクルステージ695とウエハステージ693の走査中、両者の位置はそれぞれ干渉計によって継続的に検出され、レチクルステージ695とウエハステージ693の駆動部にそれぞれフィードバックされる。これによって、両者の走査開始位置を正確に同期させるとともに、定速走査領域の走査速度を高精度で制御することができる。投影光学系に対して両者が走査している間に、ウエハ上にはレチクルパターンが露光され、回路パターンが転写される。
本実施形態では、前述の実施形態のステージ装置をウエハステージおよびレチクルステージとして用いているため、大きな推力でステージを駆動しても発熱を低減することが可能であるとともに、さらに高速・高精度な露光が可能となる。
<実施形態6>
次に上記説明した露光装置を利用した半導体デバイスの製造方法の実施例を説明する。図13は半導体デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、あるいは液晶パネルやCCD等)の製造フローを示す。ステップ1(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行なう。ステップ2(マスク製作)では設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。ステップ3(ウエハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウエハを製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は前工程と呼ばれ、上記用意したマスクとウエハを用いて、リソグラフィ技術によってウエハ上に実際の回路を形成する。ステップ5(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップ14によって作製されたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)ではステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行なう。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップS7)される。
図14は上記ウエハプロセスの詳細なフローを示す。ステップ11(酸化)ではウエハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)ではウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ13(電極形成)ではウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ14(イオン打込み)ではウエハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)ではウエハに感光剤を塗布する。ステップ16(露光)では上記説明した露光装置によってマスクの回路パターンをウエハに焼付露光する。ステップ17(現像)では露光したウエハを現像する。ステップ18(エッチング)では現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)ではエッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行なうことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。本実施例の製造方法を用いれば、従来は製造が難しかった高集積度の半導体デバイスを製造することができる。