JP2009085237A - 無給油多列チェーン - Google Patents

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Abstract

【課題】プレート強度の低下とチェーン部品点数の増加を回避しつつチェーン製造負担を大幅に軽減するとともに、潤滑油の漏出と外部塵埃の侵入を防止する無給油多列チェーンを提供すること。
【解決手段】内プレート110とブシュ130と中間プレート150と外プレート160と連結ピン170とで構成され、ブシュ130と連結ピン170との間に潤滑油を封入し、潤滑油を外プレート160側で封止する第1油溜り用ラビリンス構造Lが、外プレート160の内側面と該外プレート160に対向する内プレート110の外側面との間に形成され、潤滑油を中間プレート150側で封止する第2油溜り用ラビリンス構造Lが、中間プレート150の内側面と該中間プレート150に対向する内プレート110の外側面との間に形成されている無給油多列チェーン100。
【選択図】図1

Description

本発明は、大きな動力を伝達するために用いられる多列チェーンに係るものであって、特に、左右一対の内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向に中間プレートを介して並列配置されているとともに、前記内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートのピン孔に圧入嵌合する連結ピンにより多数連結され、前記ブシュと連結ピンとの間に潤滑油を封入してなる無給油多列チェーンに関するものである。
一般に、動力伝達負荷の大きな伝動機構には、複数のチェーンをチェーン幅方向に並列配置して一体化するなどして高強度化した多列チェーンが用いられている。
そして、このような従来の高強度化した多列チェーンとして、左右一対の離間した内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合して組み付けた内リンクユニットが左右一対の隣接した中間プレートを介してチェーン幅方向に並列配置されているとともに、前記内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートに圧入嵌合する連結ピンでチェーン長手方向に多数連結されている多列チェーンが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。そして、このような多列チェーンでは、ブシュと連結ピンとの間で生じる摺接摩耗を抑制してチェーン摩耗伸びを防止するために、Oリングなどのシール部材を外プレートと内プレートとの間および中間プレートと内プレートとの間に押圧状態で配設してブシュと連結ピンとの間に注入された潤滑油の外部漏出を防止することが一般に行われている。
特開平11−132295号公報(第4欄、図11参照)
ところが、前述したような従来の多列チェーンでは、シール部材が外プレートと内プレートとの間および中間プレートと内プレートとの間に押圧状態で配置されているために、このような押圧状態の押圧力によって、外プレートと内プレートとの間および中間プレートと内プレートとの間の相対的な屈曲抵抗、すなわち、チェーン自体の屈曲抵抗が大きくなるという問題があった。
また、シール部材が外プレート、内プレート、中間プレートなどに対して摺接摩耗することよって生じるシール効果の低下を防止するために、シール部材と接触する外プレートの内側面、中間プレートの内側面、および、内プレートの外側面の表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があり、その表面仕上げ加工の加工負担が増加するという問題があった。
そして、シール部材を基本的なチェーン構成部品である外プレートと内プレートとの間および中間プレートおよび内プレートとの間に設けているので、チェーンの部品点数、組立工数が多くなり、チェーンの組立性が悪くなるという問題があった。
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、プレート強度の低下とチェーン部品点数の増加を回避しつつチェーン製造負担を大幅に軽減するとともに、チェーン稼動時における潤滑油の漏出と外部塵埃の侵入を防止する無給油多列チェーンを提供することである。
請求項1に係る本発明は、左右一対の内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向に2枚の中間プレートを介して並列配置されているとともに、前記内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートの前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、前記ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に潤滑油を封入してなる無給油多列チェーンにおいて、前記潤滑油を外プレート側で封止する第1油溜り用ラビリンス構造が、前記外プレートの内側面と該外プレートに対向する内プレートの外側面との間に形成されているとともに、前記潤滑油を中間プレート側で封止する第2油溜り用ラビリンス構造が、前記中間プレートの内側面と該中間プレートに対向する内プレートの外側面との間に形成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の構成に加えて、前記第1油溜り用ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記外プレートの内側面を凹陥させて外側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状凹部で囲繞支持することで形成されているとともに、前記第2油溜り用ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記中間プレートの内側面を凹陥させて外側面へ膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状凹部で囲繞支持することで形成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
請求項3に係る本発明は、請求項1記載の構成に加えて、前記第1油溜り用ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記外プレートの外側面を凹陥させて内側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状膨出部で囲繞支持することで形成されているとともに、前記第2油溜り用ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記中間プレートの外側面を凹陥させて内側面へ膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状膨出部で囲繞支持することで形成されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
なお、本発明の無給油多列チェーンで言うところの「オフセット状態」とは、ブシュ軸支用環状凹部およびブシュ軸支用環状膨出部とそれ以外のプレート部分とがプレート厚み方向にずれて段差状を呈している状態を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーンで言うところの「内プレートの内側面」とは、組み込まれた内リンクユニットの内側に面した側面を意味しており、「内プレートの外側面」とは、組み込まれた内リンクユニットの外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーンで言うところの「外プレートの内側面」とは、チェーンの内側に面した側面を意味しており、「外プレートの外側面」とは、チェーンの外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーンで言うところの「中間プレートの内側面」とは、最も近接する内リンクユニット側に面した側面を意味しており、「中間プレートの外側面」とは、隣接配置された中間プレート側に面した側面を意味している。
そこで、本発明は、左右一対の内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向に2枚の中間プレートを介して並列配置されているとともに、内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートの前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に潤滑油を封入してなることにより、外部からの無給油状態で長期にわたってチェーン駆動することができるばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
請求項1に係る本発明の無給油多列チェーンによれば、第1油溜り用ラビリンス構造が外プレートの内側面と該外プレートに対向する内プレートの外側面との間に形成されているとともに、第2油溜り用ラビリンス構造が中間プレートの内側面と該中間プレートに対向する内プレートの外側面との間に形成されていることにより、このような第1油溜り用ラビリンス構造と第2油溜り用ラビリンス構造とが、複雑に屈曲した形状によって油溜り機能を発揮して、チェーン走行時の周回走行によって生じる遠心力などに起因したブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に封入された潤滑油の外部漏出を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制するので、ブシュの内周面と連結ピンの外周面の摩耗損傷を低減してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止できる。
請求項2に係る本発明の無給油多列チェーンによれば、請求項1記載の無給油多列チェーンが奏する効果に加えて、第1油溜り用ラビリンス構造が、内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を外プレートの内側面を凹陥させて外側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状凹部で囲繞支持することで形成されているとともに、第2油溜り用ラビリンス構造が、内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を中間プレートの内側面を凹陥させて外側面へ膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状凹部で囲繞支持することで形成されていることにより、これら第1油溜り用ラビリンス構造および第2油溜り用ラビリンス構造が、複雑に屈曲した形状によって油溜り機能を発揮して、チェーン走行時の周回走行によって生じる遠心力などに起因したブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に封入された潤滑油の外部漏出を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制するので、ブシュの内周面と連結ピンの外周面の摩耗損傷を低減してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止できる。
また、第1ブシュ軸支用環状凹部および第2ブシュ軸支用環状凹部が、外プレートおよび中間プレートの内側面を凹陥させて外側面へ膨出させたオフセット状態で形成されていることにより、第1ブシュ軸支用環状凹部および第2ブシュ軸支用環状凹部の断面係数とそれ以外のプレート部分の断面係数とが同程度となるので、第1ブシュ軸支用環状凹部および第2ブシュ軸支用環状凹部を形成することによる外プレートおよび中間プレートの強度低下を抑制できるとともに、外プレートおよび中間プレートのプレス打ち抜き加工を行う際に、外プレートおよび中間プレートの内側面を凹陥させて外側面へ膨出させる形状の金型を用いるだけで、外プレートおよび中間プレートの打ち抜き加工と第1ブシュ軸支用環状凹部および第2ブシュ軸支用環状凹部の形成加工とを同時に行うことができるので、外プレートおよび中間プレートの打ち抜き加工とは別途に第1ブシュ軸支用環状凹部および第2ブシュ軸支用環状凹部を形成する研削やミーリング等の機械加工を外プレートおよび中間プレートに施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、外プレートと内プレートとの間および中間プレートと内プレートとの間には、従来の多列チェーンのような押圧状態で配置したシール部材を別部品として設けていないので、チェーン稼動時に円滑に屈曲して周回走行するとともにチェーン部品点数の増加を回避できる。
また、従来の多列チェーンでは、シール部材の摺接摩耗を防止して潤滑油の密封性を維持するために、シール部材と接触する外プレートの内側面、中間プレートの内側面、および、内プレートの外側面に表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があったが、本発明の無給油多列チェーンでは、従来のような表面仕上げ加工を施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
請求項3に係る本発明の無給油多列チェーンによれば、請求項1記載の無給油多列チェーンが奏する効果に加えて、第1油溜り用ラビリンス構造が、内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を外プレートの外側面を凹陥させて内側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状膨出部で囲繞支持することで形成されているとともに、第2油溜り用ラビリンス構造が、内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を中間プレートの外側面を凹陥させて内側面へ膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状膨出部で囲繞支持することで形成されていることにより、これら第1油溜り用ラビリンス構造および第2油溜り用ラビリンス構造が、複雑に屈曲した形状によって油溜り機能を発揮して、チェーン走行時の周回走行によって生じる遠心力などに起因したブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に封入された潤滑油の外部漏出を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制するので、ブシュの内周面と連結ピンの外周面の摩耗損傷を低減してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止できる。
また、第1ブシュ軸支用環状膨出部および第2ブシュ軸支用環状膨出部が、外プレートおよび中間プレートの外側面を凹陥させて内側面へ膨出させたオフセット状態で形成されていることにより、第1ブシュ軸支用環状膨出部および第2ブシュ軸支用環状膨出部の断面係数とそれ以外のプレート部分の断面係数とが同程度となるので、第1ブシュ軸支用環状膨出部および第2ブシュ軸支用環状膨出部を形成することによる外プレートおよび中間プレートの強度低下を抑制できるとともに、外プレートおよび中間プレートのプレス打ち抜き加工を行う際に、外プレートおよび中間プレートの外側面を凹陥させて内側面へ膨出させる形状の金型を用いるだけで、外プレートおよび中間プレートの打ち抜き加工と第1ブシュ軸支用環状膨出部および第2ブシュ軸支用環状膨出部の形成加工とを同時に行うことができるので、外プレートおよび中間プレートの打ち抜き加工とは別途に第1ブシュ軸支用環状膨出部および第2ブシュ軸支用環状膨出部を形成する研削やミーリング等の機械加工を外プレートおよび中間プレートに施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、外プレートと内プレートとの間および中間プレートと内プレートとの間には、従来の多列チェーンのような押圧状態で配置したシール部材を別部品として設けていないので、チェーン稼動時に円滑に屈曲して周回走行するとともにチェーン部品点数の増加を回避できる。
また、従来の多列チェーンでは、シール部材の摺接摩耗を防止して潤滑油の密封性を維持するために、シール部材と接触する外プレートの内側面、中間プレートの内側面、および、内プレートの外側面に表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があったが、本発明の無給油多列チェーンでは、従来のような表面仕上げ加工を施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
本発明は、左右一対の内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向に2枚の中間プレートを介して並列配置されているとともに、内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートの前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に潤滑油を封入してなる無給油多列チェーンにおいて、潤滑油を外プレート側で封止する第1油溜り用ラビリンス構造が、外プレートの内側面と該外プレートに対向する内プレートの外側面との間に形成されているとともに、潤滑油を中間プレート側で封止する第2油溜り用ラビリンス構造が、中間プレートの内側面と該中間プレートに対向する内プレートの外側面との間に形成されて、プレート強度の低下とチェーン部品点数の増加を回避しつつチェーン製造負担を大幅に軽減するとともに、チェーン稼動時における潤滑油の漏出と外部塵埃の侵入を防止するものであれば、その具体的な実施の形態は如何なるものであっても何ら構わない。
すなわち、本発明の無給油多列チェーンで用いる内プレート、外プレート、および、中間プレートの具体的な形状については、小判型、ひょうたん型のいずれであっても良い。
また、本発明の無給油多列チェーンにおいてチェーン幅方向に並列配置する内リンクユニットの列数は、通常、2列乃至3列であるが、それ以上であっても差し支えない。
さらに、本発明の無給油多列チェーンは、ブシュチェーン、ローラチェーンのいずれのものがその対象であっても差し支えないが、ブシュチェーンの場合には、比較的動力伝達速度が遅くチェーンに負荷される荷重が小さい動力伝達時に最適であり、ローラチェーンの場合には、スプロケットとの噛み合いが円滑となるため、チェーンの摩耗を防止することができる。
また、本発明の無給油多列チェーンに組み込まれる中間プレートの具体的な組み付け態様については、連結ピンを中間プレートのピン孔に対して圧入嵌合、所謂、シマリ嵌めして組み付けたもの、連結ピンを中間プレートのピン孔に対して遊嵌、所謂、スキマ嵌めして組み付けたものなどのいずれであっても差し支えないが、連結ピンを中間プレートのピン孔に対して圧入嵌合したものを採用した場合には、チェーン強度を向上できるとともに2枚の中間プレートの間から潤滑油が外部に漏出することを防止でき、また、連結ピンを中間プレートのピン孔に対して遊嵌したものを採用した場合には、中間プレートのピン孔径と連結ピンのピン径を高精度に加工する必要がないため、チェーン切り継ぎなどの分解組み付け作業を簡便に達成できる。
また、本発明の無給油多列チェーンに組み込まれる中間プレートの具体的な形状については、内プレートおよび外プレートと同一若しくは小さなプレート幅寸法で形成されていれば良く、中間プレートが内プレートおよび外プレートより小さなプレート幅寸法で形成されている場合には、両側から挟むタイプのチェーンガイドに走行させた場合、内プレートおよび外プレートのみの高さであるので安定して走行でき、しかも、チェーン全体の軽量化に寄与する。
また、本発明の無給油多列チェーンに組み込まれるブシュの具体的な態様については、一般に採用されている円筒形状のもの、あるいは、この円筒形状の内部に無数の気孔を有するように金属粉末を圧縮成形して融解点以下の温度で焼結することで得られた多孔質材に潤滑油を含浸させた焼結含油金属材料からなるものなどのいずれであっても良く、さらに、焼結含油金属材料から成形されたものにあっては、焼結含油金属材料の焼結密度やその原料となる金属粉末の具体的な種類や組み合わせは如何なるものであっても良く、特に、焼結含油金属材料が、鉄、銅、ニッケル、クロムモリブデン鋼などを配合してなる混合金属粉末を圧縮形成するとともに6.0g/cm〜7.0g/cmの焼結密度で焼結することで成形されている場合には、ブシュがチェーン張力に起因する剪断力および衝撃力を受けるための強靱性能や多くの潤滑油を含浸させて長期に亘って連結ピンとブシュとの間に潤滑油を供給する含油性能および徐放性能の両方をバランス良く兼ね備えて充分に発揮できる。
また、本発明の無給油多列チェーンにおいて用いられる潤滑油の具体的な種類については、ポリαオレフィン、ポリオールエステル、フッ素結合オイルにポリテトラフルオロエチレンを配合してなる潤滑油などの潤滑性や耐劣化性を備えたものであれば如何なるものであって良く、特に、ポリαオレフィンやポリオールエステルなどの合成系炭化水素を基油とする合成油を採用した場合には、優れた粘性、潤滑性、耐劣化性を発揮して、ブシュの内部に形成された気孔に目詰まりを生じさせることなくブシュの気孔から長期に亘って連結ピンとブシュとの間に滲み出て摺接摩耗を抑制できる。
また、ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に潤滑油を供給する油溜り溝が連結ピンの外周面に刻設されている場合には、より多くの潤滑油を封入して連結ピンとブシュとの間に潤滑油を継続的に供給するので、連結ピンの外周面とブシュの内周面の摺動摩耗を長期に亘って低減してチェーン摩耗伸びをより一層防止することができる。
以下、本発明の第1実施例である無給油多列チェーン100を図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例である無給油多列チェーンの全体概要図であり、図2は、図1に示す無給油多列チェーンの連結状態を示す斜視図であり、図3は、図1に示す無給油多列チェーンの一部断面図である。
まず、本発明の第1実施例である無給油多列チェーン100は、大きな動力を伝達するために用いられるチェーンであって、図1乃至図3に示すように、左右一対の内プレート110に前後一対のローラ120を回転自在に外嵌した前後一対のブシュ130を圧入嵌合してなる2組の内リンクユニット140がチェーン幅方向に隣接配置した2枚の中間プレート150を介して並列配置されているとともに、このような内リンクユニット140がチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレート160の前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピン170によりチェーン長手方向に多数連結されている。
そして、ブシュ130と連結ピン170との間には、潤滑油が封入されている。
また、前述した中間プレート150はピン孔を介して連結ピン170に圧入嵌合されており、チェーン強度を向上するとともに2枚の中間プレート150の間から潤滑油が外部に漏出することを防止するようになっている。
そこで、本実施例の無給油多列チェーン100が最も特徴とするブシュ130、外プレート160、および中間プレート150の具体的な形態について図2および図3により詳しく説明する。
まず、図2および図3に示すように、外プレート160には、内側面を凹陥させて、すなわち、凹ませて陥らせた外側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状凹部161が形成されている。
そして、内プレート110の外側面から一部突出したブシュ突出端部131を第1ブシュ軸支用環状凹部161でそれぞれ囲繞支持することで、外プレート160の内側面と該外プレート160に対向する内プレート110の外側面との間に第1油溜り用ラビリンス構造Lを形成している。
また、図2および図3に示すように、中間プレート150には、内側面を凹陥させて、すなわち、凹ませて陥らせた外側面に膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状凹部151が形成されている。
そして、内プレート110の外側面から一部突出したブシュ突出端部131を第2ブシュ軸支用環状凹部151でそれぞれ囲繞支持することで、中間プレート150の内側面と該中間プレート150に対向する内プレート110の外側面との間に第2油溜り用ラビリンス構造Lを形成している。
なお、本発明の無給油多列チェーン100で言うところの「オフセット状態」とは、第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151とそれ以外のプレート部分とがずれて段差状を呈している状態を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン100で言うところの「内プレート110の内側面」とは、組み込まれた内リンクユニット140の内側に面した側面を意味しており、「内プレート110の外側面」とは、組み込まれた内リンクユニット140の外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン100で言うところの「外プレート160の内側面」とは、チェーンの内側に面した側面を意味しており、「外プレート160の外側面」とは、チェーンの外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン100で言うところの「中間プレート150の内側面」とは、最も近接する内リンクユニット140側に面した側面を意味しており、「中間プレート150の外側面」とは、隣接配置された中間プレート150側に面した側面を意味している。
このようにして得られた本実施例の無給油多列チェーン100は、第1油溜り用ラビリンス構造Lが、ブシュ突出端部131を第1ブシュ軸支用環状凹部161で囲繞支持することで形成されているとともに、第2油溜り用ラビリンス構造Lが、ブシュ突出端部131を第2ブシュ軸支用環状凹部151で囲繞支持することで形成されている。
したがって、これら第1油溜り用ラビリンス構造Lおよび第2油溜り用ラビリンス構造Lが、複雑に屈曲した形状によって油溜り機能を発揮して、チェーン走行時の周回走行によって生じる遠心力などに起因したブシュ130の内周面と連結ピン170の外周面との間に封入された潤滑油の外部漏出を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制するので、ブシュ130の内周面と連結ピン170の外周面の摩耗損傷を低減してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止できる。
また、第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151が、外プレート160および中間プレート150の内側面を凹陥させて外側面へ膨出させたオフセット状態で形成されている。
したがって、第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151の断面係数とそれ以外のプレート部分の断面係数とが同程度となるので、第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151を形成することによる外プレート160および中間プレート150の強度低下を抑制できるとともに、外プレート160および中間プレート150のプレス打ち抜き加工を行う際に、外プレート160および中間プレート150の内側面を凹陥させて外側面へ膨出させる形状の金型を用いるだけで、外プレート160および中間プレート150の打ち抜き加工と第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151の形成加工とを同時に行うことができるので、外プレート160および中間プレート150の打ち抜き加工とは別途に第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151を形成する研削やミーリング等の機械加工を外プレート160および中間プレート150に施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、外プレート160と内プレート110との間および中間プレート150と内プレート110との間には、従来の多列チェーンのような押圧状態で配置したシール部材を別部品として設けていないので、チェーン稼動時に円滑に屈曲して周回走行するとともにチェーン部品点数の増加を回避できる。
また、従来の多列チェーンでは、シール部材の摺接摩耗を防止して潤滑油の密封性を維持するために、シール部材と接触する外プレートの内側面、中間プレートの内側面、および、内プレートの外側面に表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があったが、本発明の無給油多列チェーン100では、従来のような表面仕上げ加工を施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、中間プレート150がピン孔を介して連結ピン170に圧入嵌合されていることにより、チェーン強度を向上できるとともに2枚の中間プレート150の間から潤滑油が外部に漏出することを防止できるなど、その効果は甚大である。
つぎに、本発明の第2実施例である無給油チェーン200について、図4および図5に基づいて説明する。
まず、本発明の第2実施例である無給油多列チェーン200は、大きな動力を伝達するために用いられるチェーンであって、図4および図5に示すように、左右一対の内プレート210に前後一対のローラ220を回転自在に外嵌した前後一対のブシュ230を圧入嵌合してなる2組の内リンクユニット240がチェーン幅方向に隣接配置した2枚の中間プレート250を介して並列配置されているとともに、このような内リンクユニット240がチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレート260の前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピン270によりチェーン長手方向に多数連結されている。
そして、ブシュ230と連結ピン270との間には、潤滑油が封入されている。
また、前述した中間プレート250はピン孔を介して連結ピン270に圧入嵌合されており、チェーン強度を向上するとともに2枚の中間プレート250の間から潤滑油が外部に漏出することを防止するようになっている。
そこで、本実施例の無給油多列チェーン200が最も特徴とするブシュ230、外プレート260、および中間プレート250の具体的な形態について図4および図5により詳しく説明する。
まず、図4および図5に示すように、外プレート260には、外側面を凹陥させて、すなわち、凹ませて陥らせた内側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状膨出部261が形成されている。
そして、内プレート210の外側面から一部突出したブシュ突出端部231を第1ブシュ軸支用環状膨出部261でそれぞれ囲繞支持することで、外プレート260の内側面と該外プレート260に対向する内プレート210の外側面との間に第1油溜り用ラビリンス構造Lを形成している。
また、図4および図5に示すように、中間プレート250には、外側面を凹陥させて、すなわち、凹ませて陥らせた内側面に膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状膨出部251が形成されている。
そして、内プレート210の外側面から一部突出したブシュ突出端部231を第2ブシュ軸支用環状膨出部251でそれぞれ囲繞支持することで、中間プレート250の内側面と該中間プレート250に対向する内プレート210の外側面との間に第2油溜り用ラビリンス構造Lを形成している。
なお、本発明の無給油多列チェーン200で言うところの「オフセット状態」とは、第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251とそれ以外のプレート部分とがずれて段差状を呈している状態を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン200で言うところの「内プレート210の内側面」とは、組み込まれた内リンクユニット240の内側に面した側面を意味しており、「内プレート210の外側面」とは、組み込まれた内リンクユニット240の外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン200で言うところの「外プレート260の内側面」とは、チェーンの内側に面した側面を意味しており、「外プレート260の外側面」とは、チェーンの外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン200で言うところの「中間プレート250の内側面」とは、最も近接する内リンクユニット240側に面した側面を意味しており、「中間プレート250の外側面」とは、隣接配置された中間プレート250側に面した側面を意味している。
このようにして得られた本実施例の無給油多列チェーン200は、第1油溜り用ラビリンス構造Lが、ブシュ突出端部231を第1ブシュ軸支用環状膨出部261で囲繞支持することで形成されているとともに、第2油溜り用ラビリンス構造Lが、ブシュ突出端部231を第2ブシュ軸支用環状膨出部251で囲繞支持することで形成されている。
したがって、これら第1油溜り用ラビリンス構造Lおよび第2油溜り用ラビリンス構造Lが、複雑に屈曲した形状によって油溜り機能を発揮して、チェーン走行時の周回走行によって生じる遠心力などに起因したブシュ230の内周面と連結ピン270の外周面との間に封入された潤滑油の外部漏出を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制するので、ブシュ230の内周面と連結ピン270の外周面の摩耗損傷を低減してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止できる。
また、第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251が、外プレート260および中間プレート250の外側面を凹陥させて内側面へ膨出させたオフセット状態で形成されている。
したがって、第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251の断面係数とそれ以外のプレート部分の断面係数とが同程度となるので、第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251を形成することによる外プレート260および中間プレート250の強度低下を抑制できるとともに、外プレート260および中間プレート250のプレス打ち抜き加工を行う際に、外プレート260および中間プレート250の外側面を凹陥させて内側面へ膨出させる形状の金型を用いるだけで、外プレート260および中間プレート250の打ち抜き加工と第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251の形成加工とを同時に行うことができるので、外プレート260および中間プレート250の打ち抜き加工とは別途に第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251を形成する研削やミーリング等の機械加工を外プレート260および中間プレート250に施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、外プレート260と内プレート210との間および中間プレート250と内プレート210との間には、従来の多列チェーンのような押圧状態で配置したシール部材を別部品として設けていないので、チェーン稼動時に円滑に屈曲して周回走行するとともにチェーン部品点数の増加を回避できる。
また、従来の多列チェーンでは、シール部材の摺接摩耗を防止して潤滑油の密封性を維持するために、シール部材と接触する外プレートの内側面、中間プレートの内側面、および、内プレートの外側面に表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があったが、本発明の無給油多列チェーン200では、従来のような表面仕上げ加工を施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、中間プレート250がピン孔を介して連結ピン270に圧入嵌合されていることにより、チェーン強度を向上できるとともに2枚の中間プレート250の間から潤滑油が外部に漏出することを防止できるなど、その効果は甚大である。
本発明の第1実施例である無給油多列チェーンの全体概要図。 図1に示す無給油多列チェーンの連結状態を示す斜視図。 図1に示す無給油多列チェーンの一部断面図。 本発明の第2実施例である無給油多列チェーンの連結状態を示す斜視図。 図4に示す無給油多列チェーンの一部断面図。
符号の説明
100、200 ・・・ 無給油多列チェーン
110、210 ・・・ 内プレート
120、220 ・・・ ローラ
130、230 ・・・ ブシュ
131、231 ・・・ ブシュ突出端部
140、240 ・・・ 内リンクユニット
150、250 ・・・ 中間プレート
151 ・・・ 第2ブシュ軸支用環状凹部
251 ・・・ 第2ブシュ軸支用環状膨出部
160、260 ・・・ 外プレート
161 ・・・ 第1ブシュ軸支用環状凹部
261 ・・・ 第1ブシュ軸支用環状膨出部
170、270 ・・・ 連結ピン
・・・ 第1油溜り用ラビリンス構造
・・・ 第2油溜り用ラビリンス構造
本発明は、大きな動力を伝達するために用いられる多列チェーンに係るものであって、特に、左右一対の内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向に中間プレートを介して並列配置されているとともに、前記内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートのピン孔に圧入嵌合する連結ピンにより多数連結され、前記ブシュと連結ピンとの間に潤滑油を封入してなる無給油多列チェーンに関するものである。
一般に、動力伝達負荷の大きな伝動機構には、複数のチェーンをチェーン幅方向に並列配置して一体化するなどして高強度化した多列チェーンが用いられている。
そして、このような従来の高強度化した多列チェーンとして、左右一対の離間した内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合して組み付けた内リンクユニットが左右一対の隣接した中間プレートを介してチェーン幅方向に並列配置されているとともに、前記内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートに圧入嵌合する連結ピンでチェーン長手方向に多数連結されている多列チェーンが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。そして、このような多列チェーンでは、ブシュと連結ピンとの間で生じる摺接摩耗を抑制してチェーン摩耗伸びを防止するために、Oリングなどのシール部材を外プレートと内プレートとの間および中間プレートと内プレートとの間に押圧状態で配設してブシュと連結ピンとの間に注入された潤滑油の外部漏出を防止することが一般に行われている。
特開平11−132295号公報(第4欄、図11参照)
ところが、前述したような従来の多列チェーンでは、シール部材が外プレートと内プレートとの間および中間プレートと内プレートとの間に押圧状態で配置されているために、このような押圧状態の押圧力によって、外プレートと内プレートとの間および中間プレートと内プレートとの間の相対的な屈曲抵抗、すなわち、チェーン自体の屈曲抵抗が大きくなるという問題があった。
また、シール部材が外プレート、内プレート、中間プレートなどに対して摺接摩耗することよって生じるシール効果の低下を防止するために、シール部材と接触する外プレートの内側面、中間プレートの内側面、および、内プレートの外側面の表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があり、その表面仕上げ加工の加工負担が増加するという問題があった。
そして、シール部材を基本的なチェーン構成部品である外プレートと内プレートとの間および中間プレートおよび内プレートとの間に設けているので、チェーンの部品点数、組立工数が多くなり、チェーンの組立性が悪くなるという問題があった。
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、左右一対の内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向に2枚の中間プレートを介して並列配置されているとともに、内リンクユニットが中間プレートのピン孔とチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートの前後一対のピン孔とにそれぞれ圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に潤滑油を封入してなる無給油多列チェーンにおいて、プレート強度の低下とチェーン部品点数の増加を回避しつつチェーン製造負担を大幅に軽減し、チェーン稼動時にブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に封入された潤滑油を外プレート側と中間プレート側とで封止するとともに潤滑油の漏出と外部塵埃の侵入を防止することである。
請求項1に係る本発明は、左右一対の内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向に2枚の中間プレートを介して並列配置されているとともに、前記内リンクユニットが前記中間プレートのピン孔とチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートの前後一対のピン孔とにそれぞれ圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、前記ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に潤滑油を封入してなる無給油多列チェーンであって、前記潤滑油を外プレート側で封止する第1油溜り用ラビリンス構造が、前記連結ピンを圧入嵌合させた外プレートの内側面と該外プレートに対向してブシュ突出端部を一部突出させた内プレートの外側面との間に形成されているとともに、前記潤滑油を中間プレート側で封止する第2油溜り用ラビリンス構造が、前記連結ピンを圧入嵌合させた中間プレートの内側面と該中間プレートに対向してブシュ突出端部を一部突出させた内プレートの外側面との間に形成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の構成に加えて、前記第1油溜り用ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記外プレートの内側面を凹陥させて外側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状凹部で囲繞支持することで形成されているとともに、前記第2油溜り用ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記中間プレートの内側面を凹陥させて外側面へ膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状凹部で囲繞支持することで形成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
請求項3に係る本発明は、請求項1記載の構成に加えて、前記第1油溜り用ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記外プレートの外側面を凹陥させて内側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状膨出部で囲繞支持することで形成されているとともに、前記第2油溜り用ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記中間プレートの外側面を凹陥させて内側面へ膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状膨出部で囲繞支持することで形成されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
なお、本発明の無給油多列チェーンで言うところの「オフセット状態」とは、ブシュ軸支用環状凹部およびブシュ軸支用環状膨出部とそれ以外のプレート部分とがプレート厚み方向にずれて段差状を呈している状態を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーンで言うところの「内プレートの内側面」とは、組み込まれた内リンクユニットの内側に面した側面を意味しており、「内プレートの外側面」とは、組み込まれた内リンクユニットの外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーンで言うところの「外プレートの内側面」とは、チェーンの内側に面した側面を意味しており、「外プレートの外側面」とは、チェーンの外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーンで言うところの「中間プレートの内側面」とは、最も近接する内リンクユニット側に面した側面を意味しており、「中間プレートの外側面」とは、隣接配置された中間プレート側に面した側面を意味している。
そこで、本発明は、左右一対の内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向に2枚の中間プレートを介して並列配置されているとともに、内リンクユニットが中間プレートのピン孔とチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートの前後一対のピン孔とにそれぞれ圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に潤滑油を封入してなることにより、外部からの無給油状態で長期にわたってチェーン駆動することができるばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
請求項1に係る本発明の無給油多列チェーンによれば、潤滑油を外プレート側で封止する第1油溜り用ラビリンス構造が、前記連結ピンを圧入嵌合させた外プレートの内側面と該外プレートに対向してブシュ突出端部を一部突出させた内プレートの外側面との間に形成されているとともに、前記潤滑油を中間プレート側で封止する第2油溜り用ラビリンス構造が、前記連結ピンを圧入嵌合させた中間プレートの内側面と該中間プレートに対向してブシュ突出端部を一部突出させた内プレートの外側面との間に形成されていることにより、このような第1油溜り用ラビリンス構造と第2油溜り用ラビリンス構造とが、複雑に屈曲した形状によって油溜り機能を発揮して、チェーン走行時の周回走行によって生じる遠心力などに起因したブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に封入された潤滑油の外部漏出を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制するので、ブシュの内周面と連結ピンの外周面の摩耗損傷を低減してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止できる。
そして、連結ピンを中間プレートのピン孔に対して圧入嵌合、所謂、シマリ嵌めして組み付けたことにより、チェーン強度を向上できるとともに2枚の中間プレートの間から潤滑油が外部に漏出することを防止できる。
請求項2に係る本発明の無給油多列チェーンによれば、請求項1記載の無給油多列チェーンが奏する効果に加えて、第1油溜り用ラビリンス構造が、内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を外プレートの内側面を凹陥させて外側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状凹部で囲繞支持することで形成されているとともに、第2油溜り用ラビリンス構造が、内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を中間プレートの内側面を凹陥させて外側面へ膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状凹部で囲繞支持することで形成されていることにより、これら第1油溜り用ラビリンス構造および第2油溜り用ラビリンス構造が、複雑に屈曲した形状によって油溜り機能を発揮して、チェーン走行時の周回走行によって生じる遠心力などに起因したブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に封入された潤滑油の外部漏出を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制するので、ブシュの内周面と連結ピンの外周面の摩耗損傷を低減してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止できる。
また、第1ブシュ軸支用環状凹部および第2ブシュ軸支用環状凹部が、外プレートおよび中間プレートの内側面を凹陥させて外側面へ膨出させたオフセット状態で形成されていることにより、第1ブシュ軸支用環状凹部および第2ブシュ軸支用環状凹部の断面係数とそれ以外のプレート部分の断面係数とが同程度となるので、第1ブシュ軸支用環状凹部および第2ブシュ軸支用環状凹部を形成することによる外プレートおよび中間プレートの強度低下を抑制できるとともに、外プレートおよび中間プレートのプレス打ち抜き加工を行う際に、外プレートおよび中間プレートの内側面を凹陥させて外側面へ膨出させる形状の金型を用いるだけで、外プレートおよび中間プレートの打ち抜き加工と第1ブシュ軸支用環状凹部および第2ブシュ軸支用環状凹部の形成加工とを同時に行うことができるので、外プレートおよび中間プレートの打ち抜き加工とは別途に第1ブシュ軸支用環状凹部および第2ブシュ軸支用環状凹部を形成する研削やミーリング等の機械加工を外プレートおよび中間プレートに施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、外プレートと内プレートとの間および中間プレートと内プレートとの間には、従来の多列チェーンのような押圧状態で配置したシール部材を別部品として設けていないので、チェーン稼動時に円滑に屈曲して周回走行するとともにチェーン部品点数の増加を回避できる。
また、従来の多列チェーンでは、シール部材の摺接摩耗を防止して潤滑油の密封性を維持するために、シール部材と接触する外プレートの内側面、中間プレートの内側面、および、内プレートの外側面に表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があったが、本発明の無給油多列チェーンでは、従来のような表面仕上げ加工を施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
請求項3に係る本発明の無給油多列チェーンによれば、請求項1記載の無給油多列チェーンが奏する効果に加えて、第1油溜り用ラビリンス構造が、内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を外プレートの外側面を凹陥させて内側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状膨出部で囲繞支持することで形成されているとともに、第2油溜り用ラビリンス構造が、内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を中間プレートの外側面を凹陥させて内側面へ膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状膨出部で囲繞支持することで形成されていることにより、これら第1油溜り用ラビリンス構造および第2油溜り用ラビリンス構造が、複雑に屈曲した形状によって油溜り機能を発揮して、チェーン走行時の周回走行によって生じる遠心力などに起因したブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に封入された潤滑油の外部漏出を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制するので、ブシュの内周面と連結ピンの外周面の摩耗損傷を低減してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止できる。
また、第1ブシュ軸支用環状膨出部および第2ブシュ軸支用環状膨出部が、外プレートおよび中間プレートの外側面を凹陥させて内側面へ膨出させたオフセット状態で形成されていることにより、第1ブシュ軸支用環状膨出部および第2ブシュ軸支用環状膨出部の断面係数とそれ以外のプレート部分の断面係数とが同程度となるので、第1ブシュ軸支用環状膨出部および第2ブシュ軸支用環状膨出部を形成することによる外プレートおよび中間プレートの強度低下を抑制できるとともに、外プレートおよび中間プレートのプレス打ち抜き加工を行う際に、外プレートおよび中間プレートの外側面を凹陥させて内側面へ膨出させる形状の金型を用いるだけで、外プレートおよび中間プレートの打ち抜き加工と第1ブシュ軸支用環状膨出部および第2ブシュ軸支用環状膨出部の形成加工とを同時に行うことができるので、外プレートおよび中間プレートの打ち抜き加工とは別途に第1ブシュ軸支用環状膨出部および第2ブシュ軸支用環状膨出部を形成する研削やミーリング等の機械加工を外プレートおよび中間プレートに施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、外プレートと内プレートとの間および中間プレートと内プレートとの間には、従来の多列チェーンのような押圧状態で配置したシール部材を別部品として設けていないので、チェーン稼動時に円滑に屈曲して周回走行するとともにチェーン部品点数の増加を回避できる。
また、従来の多列チェーンでは、シール部材の摺接摩耗を防止して潤滑油の密封性を維持するために、シール部材と接触する外プレートの内側面、中間プレートの内側面、および、内プレートの外側面に表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があったが、本発明の無給油多列チェーンでは、従来のような表面仕上げ加工を施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
本発明は、左右一対の内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向に2枚の中間プレートを介して並列配置されているとともに、内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートの前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に潤滑油を封入してなる無給油多列チェーンにおいて、潤滑油を外プレート側で封止する第1油溜り用ラビリンス構造が、外プレートの内側面と該外プレートに対向する内プレートの外側面との間に形成されているとともに、潤滑油を中間プレート側で封止する第2油溜り用ラビリンス構造が、中間プレートの内側面と該中間プレートに対向する内プレートの外側面との間に形成されて、プレート強度の低下とチェーン部品点数の増加を回避しつつチェーン製造負担を大幅に軽減し、チェーン稼動時にブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に封入された潤滑油を外プレート側と中間プレート側とで封止するとともに潤滑油の漏出と外部塵埃の侵入を防止するものであれば、その具体的な実施の形態は如何なるものであっても何ら構わない。
すなわち、本発明の無給油多列チェーンで用いる内プレート、外プレート、および、中間プレートの具体的な形状については、小判型、ひょうたん型のいずれであっても良い。
また、本発明の無給油多列チェーンにおいてチェーン幅方向に並列配置する内リンクユニットの列数は、通常、2列乃至3列であるが、それ以上であっても差し支えない。
さらに、本発明の無給油多列チェーンは、ブシュチェーン、ローラチェーンのいずれのものがその対象であっても差し支えないが、ブシュチェーンの場合には、比較的動力伝達速度が遅くチェーンに負荷される荷重が小さい動力伝達時に最適であり、ローラチェーンの場合には、スプロケットとの噛み合いが円滑となるため、チェーンの摩耗を防止することができる。
また、本発明の無給油多列チェーンに組み込まれる中間プレートの具体的な形状については、内プレートおよび外プレートと同一若しくは小さなプレート幅寸法で形成されていれば良く、中間プレートが内プレートおよび外プレートより小さなプレート幅寸法で形成されている場合には、両側から挟むタイプのチェーンガイドに走行させた場合、内プレートおよび外プレートのみの高さであるので安定して走行でき、しかも、チェーン全体の軽量化に寄与する。
また、本発明の無給油多列チェーンに組み込まれるブシュの具体的な態様については、一般に採用されている円筒形状のもの、あるいは、この円筒形状の内部に無数の気孔を有するように金属粉末を圧縮成形して融解点以下の温度で焼結することで得られた多孔質材に潤滑油を含浸させた焼結含油金属材料からなるものなどのいずれであっても良く、さらに、焼結含油金属材料から成形されたものにあっては、焼結含油金属材料の焼結密度やその原料となる金属粉末の具体的な種類や組み合わせは如何なるものであっても良く、特に、焼結含油金属材料が、鉄、銅、ニッケル、クロムモリブデン鋼などを配合してなる混合金属粉末を圧縮形成するとともに6.0g/cm3〜7.0g/cm3の焼結密度で焼結することで成形されている場合には、ブシュがチェーン張力に起因する剪断力および衝撃力を受けるための強靱性能や多くの潤滑油を含浸させて長期に亘って連結ピンとブシュとの間に潤滑油を供給する含油性能および徐放性能の両方をバランス良く兼ね備えて充分に発揮できる。
また、本発明の無給油多列チェーンにおいて用いられる潤滑油の具体的な種類については、ポリαオレフィン、ポリオールエステル、フッ素結合オイルにポリテトラフルオロエチレンを配合してなる潤滑油などの潤滑性や耐劣化性を備えたものであれば如何なるものであって良く、特に、ポリαオレフィンやポリオールエステルなどの合成系炭化水素を基油とする合成油を採用した場合には、優れた粘性、潤滑性、耐劣化性を発揮して、ブシュの内部に形成された気孔に目詰まりを生じさせることなくブシュの気孔から長期に亘って連結ピンとブシュとの間に滲み出て摺接摩耗を抑制できる。
また、ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に潤滑油を供給する油溜り溝が連結ピンの外周面に刻設されている場合には、より多くの潤滑油を封入して連結ピンとブシュとの間に潤滑油を継続的に供給するので、連結ピンの外周面とブシュの内周面の摺動摩耗を長期に亘って低減してチェーン摩耗伸びをより一層防止することができる。
以下、本発明の第1実施例である無給油多列チェーン100を、図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例である無給油多列チェーンの全体概要図であり、図2は、図1に示す無給油多列チェーンの連結状態を示す斜視図であり、図3は、図1に示す無給油多列チェーンの一部断面図である。
まず、本発明の第1実施例である無給油多列チェーン100は、大きな動力を伝達するために用いられるチェーンであって、図1乃至図3に示すように、左右一対の内プレート110に前後一対のローラ120を回転自在に外嵌した前後一対のブシュ130を圧入嵌合してなる2組の内リンクユニット140がチェーン幅方向に隣接配置した2枚の中間プレート150を介して並列配置されているとともに、このような内リンクユニット140がチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレート160の前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピン170によりチェーン長手方向に多数連結されている。
そして、ブシュ130と連結ピン170との間には、潤滑油が封入されている。
また、前述した中間プレート150はピン孔を介して連結ピン170に圧入嵌合されており、チェーン強度を向上するとともに2枚の中間プレート150の間から潤滑油が外部に漏出することを防止するようになっている。
そこで、本実施例の無給油多列チェーン100が最も特徴とするブシュ130、外プレート160、および中間プレート150の具体的な形態について図2および図3により詳しく説明する。
まず、図2および図3に示すように、外プレート160には、内側面を凹陥させて、すなわち、凹ませて陥らせた外側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状凹部161が形成されている。
そして、内プレート110の外側面から一部突出したブシュ突出端部131を第1ブシュ軸支用環状凹部161でそれぞれ囲繞支持することで、外プレート160の内側面と該外プレート160に対向する内プレート110の外側面との間に第1油溜り用ラビリンス構造L1を形成している。
また、図2および図3に示すように、中間プレート150には、内側面を凹陥させて、すなわち、凹ませて陥らせた外側面に膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状凹部151が形成されている。
そして、内プレート110の外側面から一部突出したブシュ突出端部131を第2ブシュ軸支用環状凹部151でそれぞれ囲繞支持することで、中間プレート150の内側面と該中間プレート150に対向する内プレート110の外側面との間に第2油溜り用ラビリンス構造L2を形成している。
なお、本発明の無給油多列チェーン100で言うところの「オフセット状態」とは、第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151とそれ以外のプレート部分とがずれて段差状を呈している状態を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン100で言うところの「内プレート110の内側面」とは、組み込まれた内リンクユニット140の内側に面した側面を意味しており、「内プレート110の外側面」とは、組み込まれた内リンクユニット140の外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン100で言うところの「外プレート160の内側面」とは、チェーンの内側に面した側面を意味しており、「外プレート160の外側面」とは、チェーンの外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン100で言うところの「中間プレート150の内側面」とは、最も近接する内リンクユニット140側に面した側面を意味しており、「中間プレート150の外側面」とは、隣接配置された中間プレート150側に面した側面を意味している。
このようにして得られた本実施例の無給油多列チェーン100は、第1油溜り用ラビリンス構造L1が、ブシュ突出端部131を第1ブシュ軸支用環状凹部161で囲繞支持することで形成されているとともに、第2油溜り用ラビリンス構造L2が、ブシュ突出端部131を第2ブシュ軸支用環状凹部151で囲繞支持することで形成されている。
したがって、これら第1油溜り用ラビリンス構造L1および第2油溜り用ラビリンス構造L2が、複雑に屈曲した形状によって油溜り機能を発揮して、チェーン走行時の周回走行によって生じる遠心力などに起因したブシュ130の内周面と連結ピン170の外周面との間に封入された潤滑油の外部漏出を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制するので、ブシュ130の内周面と連結ピン170の外周面の摩耗損傷を低減してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止できる。
また、第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151が、外プレート160および中間プレート150の内側面を凹陥させて外側面へ膨出させたオフセット状態で形成されている。
したがって、第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151の断面係数とそれ以外のプレート部分の断面係数とが同程度となるので、第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151を形成することによる外プレート160および中間プレート150の強度低下を抑制できるとともに、外プレート160および中間プレート150のプレス打ち抜き加工を行う際に、外プレート160および中間プレート150の内側面を凹陥させて外側面へ膨出させる形状の金型を用いるだけで、外プレート160および中間プレート150の打ち抜き加工と第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151の形成加工とを同時に行うことができるので、外プレート160および中間プレート150の打ち抜き加工とは別途に第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151を形成する研削やミーリング等の機械加工を外プレート160および中間プレート150に施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、外プレート160と内プレート110との間および中間プレート150と内プレート110との間には、従来の多列チェーンのような押圧状態で配置したシール部材を別部品として設けていないので、チェーン稼動時に円滑に屈曲して周回走行するとともにチェーン部品点数の増加を回避できる。
また、従来の多列チェーンでは、シール部材の摺接摩耗を防止して潤滑油の密封性を維持するために、シール部材と接触する外プレートの内側面、中間プレートの内側面、および、内プレートの外側面に表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があったが、本発明の無給油多列チェーン100では、従来のような表面仕上げ加工を施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、中間プレート150がピン孔を介して連結ピン170に圧入嵌合されていることにより、チェーン強度を向上できるとともに2枚の中間プレート150の間から潤滑油が外部に漏出することを防止できるなど、その効果は甚大である。
つぎに、本発明の第2実施例である無給油チェーン200について、図4および図5に基づいて説明する。
まず、本発明の第2実施例である無給油多列チェーン200は、大きな動力を伝達するために用いられるチェーンであって、図4および図5に示すように、左右一対の内プレート210に前後一対のローラ220を回転自在に外嵌した前後一対のブシュ230を圧入嵌合してなる2組の内リンクユニット240がチェーン幅方向に隣接配置した2枚の中間プレート250を介して並列配置されているとともに、このような内リンクユニット240がチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレート260の前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピン270によりチェーン長手方向に多数連結されている。
そして、ブシュ230と連結ピン270との間には、潤滑油が封入されている。
また、前述した中間プレート250はピン孔を介して連結ピン270に圧入嵌合されており、チェーン強度を向上するとともに2枚の中間プレート250の間から潤滑油が外部に漏出することを防止するようになっている。
そこで、本実施例の無給油多列チェーン200が最も特徴とするブシュ230、外プレート260、および中間プレート250の具体的な形態について図4および図5により詳しく説明する。
まず、図4および図5に示すように、外プレート260には、外側面を凹陥させて、すなわち、凹ませて陥らせた内側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状膨出部261が形成されている。
そして、内プレート210の外側面から一部突出したブシュ突出端部231を第1ブシュ軸支用環状膨出部261でそれぞれ囲繞支持することで、外プレート260の内側面と該外プレート260に対向する内プレート210の外側面との間に第1油溜り用ラビリンス構造L1を形成している。
また、図4および図5に示すように、中間プレート250には、外側面を凹陥させて、すなわち、凹ませて陥らせた内側面に膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状膨出部251が形成されている。
そして、内プレート210の外側面から一部突出したブシュ突出端部231を第2ブシュ軸支用環状膨出部251でそれぞれ囲繞支持することで、中間プレート250の内側面と該中間プレート250に対向する内プレート210の外側面との間に第2油溜り用ラビリンス構造L2を形成している。
なお、本発明の無給油多列チェーン200で言うところの「オフセット状態」とは、第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251とそれ以外のプレート部分とがずれて段差状を呈している状態を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン200で言うところの「内プレート210の内側面」とは、組み込まれた内リンクユニット240の内側に面した側面を意味しており、「内プレート210の外側面」とは、組み込まれた内リンクユニット240の外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン200で言うところの「外プレート260の内側面」とは、チェーンの内側に面した側面を意味しており、「外プレート260の外側面」とは、チェーンの外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン200で言うところの「中間プレート250の内側面」とは、最も近接する内リンクユニット240側に面した側面を意味しており、「中間プレート250の外側面」とは、隣接配置された中間プレート250側に面した側面を意味している。
このようにして得られた本実施例の無給油多列チェーン200は、第1油溜り用ラビリンス構造L1が、ブシュ突出端部231を第1ブシュ軸支用環状膨出部261で囲繞支持することで形成されているとともに、第2油溜り用ラビリンス構造L2が、ブシュ突出端部231を第2ブシュ軸支用環状膨出部251で囲繞支持することで形成されている。
したがって、これら第1油溜り用ラビリンス構造L1および第2油溜り用ラビリンス構造L2が、複雑に屈曲した形状によって油溜り機能を発揮して、チェーン走行時の周回走行によって生じる遠心力などに起因したブシュ230の内周面と連結ピン270の外周面との間に封入された潤滑油の外部漏出を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制するので、ブシュ230の内周面と連結ピン270の外周面の摩耗損傷を低減してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止できる。
また、第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251が、外プレート260および中間プレート250の外側面を凹陥させて内側面へ膨出させたオフセット状態で形成されている。
したがって、第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251の断面係数とそれ以外のプレート部分の断面係数とが同程度となるので、第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251を形成することによる外プレート260および中間プレート250の強度低下を抑制できるとともに、外プレート260および中間プレート250のプレス打ち抜き加工を行う際に、外プレート260および中間プレート250の外側面を凹陥させて内側面へ膨出させる形状の金型を用いるだけで、外プレート260および中間プレート250の打ち抜き加工と第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251の形成加工とを同時に行うことができるので、外プレート260および中間プレート250の打ち抜き加工とは別途に第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251を形成する研削やミーリング等の機械加工を外プレート260および中間プレート250に施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、外プレート260と内プレート210との間および中間プレート250と内プレート210との間には、従来の多列チェーンのような押圧状態で配置したシール部材を別部品として設けていないので、チェーン稼動時に円滑に屈曲して周回走行するとともにチェーン部品点数の増加を回避できる。
また、従来の多列チェーンでは、シール部材の摺接摩耗を防止して潤滑油の密封性を維持するために、シール部材と接触する外プレートの内側面、中間プレートの内側面、および、内プレートの外側面に表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があったが、本発明の無給油多列チェーン200では、従来のような表面仕上げ加工を施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、中間プレート250がピン孔を介して連結ピン270に圧入嵌合されていることにより、チェーン強度を向上できるとともに2枚の中間プレート250の間から潤滑油が外部に漏出することを防止できるなど、その効果は甚大である。
本発明の第1実施例である無給油多列チェーンの全体概要図。 図1に示す無給油多列チェーンの連結状態を示す斜視図。 図1に示す無給油多列チェーンの一部断面図。 本発明の第2実施例である無給油多列チェーンの連結状態を示す斜視図。 図4に示す無給油多列チェーンの一部断面図。
符号の説明
100、200 ・・・ 無給油多列チェーン
110、210 ・・・ 内プレート
120、220 ・・・ ローラ
130、230 ・・・ ブシュ
131、231 ・・・ ブシュ突出端部
140、240 ・・・ 内リンクユニット
150、250 ・・・ 中間プレート
151 ・・・ 第2ブシュ軸支用環状凹部
251 ・・・ 第2ブシュ軸支用環状膨出部
160、260 ・・・ 外プレート
161 ・・・ 第1ブシュ軸支用環状凹部
261 ・・・ 第1ブシュ軸支用環状膨出部
170、270 ・・・ 連結ピン
L1 ・・・ 第1油溜り用ラビリンス構造
L2 ・・・ 第2油溜り用ラビリンス構造
本発明は、大きな動力を伝達するために用いられる多列チェーンに係るものであって、特に、左右一対の内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向に中間プレートを介して並列配置されているとともに、前記内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートのピン孔に圧入嵌合する連結ピンにより多数連結され、前記ブシュと連結ピンとの間に潤滑油を封入してなる無給油多列チェーンに関するものである。
一般に、動力伝達負荷の大きな伝動機構には、複数のチェーンをチェーン幅方向に並列配置して一体化するなどして高強度化した多列チェーンが用いられている。
そして、このような従来の高強度化した多列チェーンとして、左右一対の離間した内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合して組み付けた内リンクユニットが左右一対の隣接した中間プレートを介してチェーン幅方向に並列配置されているとともに、前記内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートに圧入嵌合する連結ピンでチェーン長手方向に多数連結されている多列チェーンが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。そして、このような多列チェーンでは、ブシュと連結ピンとの間で生じる摺接摩耗を抑制してチェーン摩耗伸びを防止するために、Oリングなどのシール部材を外プレートと内プレートとの間および中間プレートと内プレートとの間に押圧状態で配設してブシュと連結ピンとの間に注入された潤滑油の外部漏出を防止することが一般に行われている。
特開平11−132295号公報(第4欄、図11参照)
ところが、前述したような従来の多列チェーンでは、シール部材が外プレートと内プレートとの間および中間プレートと内プレートとの間に押圧状態で配置されているために、このような押圧状態の押圧力によって、外プレートと内プレートとの間および中間プレートと内プレートとの間の相対的な屈曲抵抗、すなわち、チェーン自体の屈曲抵抗が大きくなるという問題があった。
また、シール部材が外プレート、内プレート、中間プレートなどに対して摺接摩耗することよって生じるシール効果の低下を防止するために、シール部材と接触する外プレートの内側面、中間プレートの内側面、および、内プレートの外側面の表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があり、その表面仕上げ加工の加工負担が増加するという問題があった。
そして、シール部材を基本的なチェーン構成部品である外プレートと内プレートとの間および中間プレートおよび内プレートとの間に設けているので、チェーンの部品点数、組立工数が多くなり、チェーンの組立性が悪くなるという問題があった。
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、左右一対の内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向に2枚の中間プレートを介して並列配置されているとともに、内リンクユニットが中間プレートのピン孔とチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートの前後一対のピン孔とにそれぞれ圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に潤滑油を封入してなる無給油多列チェーンにおいて、プレート強度の低下とチェーン部品点数の増加を回避しつつチェーン製造負担を大幅に軽減し、チェーン稼動時にブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に封入された潤滑油を外プレート側と中間プレート側とで封止するとともに潤滑油の漏出と外部塵埃の侵入を抑制することである。
請求項1に係る本発明は、左右一対の内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向に2枚の中間プレートを介して並列配置されているとともに、前記内リンクユニットが前記中間プレートのピン孔とチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートの前後一対のピン孔とにそれぞれ圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、前記ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に潤滑油を封入してなる無給油多列チェーンであって、前記潤滑油を外プレートの内側面と該外プレートに対向する内プレートの外側面との間で漏出抑制する第1油溜り用ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記外プレートの内側面を凹陥させて外側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状凹部で囲繞支持することで形成されているとともに、前記潤滑油を中間プレートの内側面と該中間プレートに対向する内プレートの外側面との間で漏出抑制する第2油溜り用ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記中間プレートの内側面を凹陥させて外側面へ膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状凹部で囲繞支持することで形成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
請求項2に係る本発明は、左右一対の内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向に2枚の中間プレートを介して並列配置されているとともに、前記内リンクユニットが前記中間プレートのピン孔とチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートの前後一対のピン孔とにそれぞれ圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、前記ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に潤滑油を封入してなる無給油多列チェーンであって、前記潤滑油を外プレートの内側面と該外プレートに対向する内プレートの外側面との間で漏出抑制する第1油溜り用ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記外プレートの外側面を凹陥させて内側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状膨出部で囲繞支持することで形成されているとともに、前記潤滑油を中間プレートの内側面と該中間プレートに対向する内プレートの外側面との間で漏出抑制する第2油溜り用ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記中間プレートの外側面を凹陥させて内側面へ膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状膨出部で囲繞支持することで形成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
なお、本発明の無給油多列チェーンで言うところの「オフセット状態」とは、ブシュ軸支用環状凹部およびブシュ軸支用環状膨出部とそれ以外のプレート部分とがプレート厚み方向にずれて段差状を呈している状態を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーンで言うところの「内プレートの内側面」とは、組み込まれた内リンクユニットの内側に面した側面を意味しており、「内プレートの外側面」とは、組み込まれた内リンクユニットの外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーンで言うところの「外プレートの内側面」とは、チェーンの内側に面した側面を意味しており、「外プレートの外側面」とは、チェーンの外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーンで言うところの「中間プレートの内側面」とは、最も近接する内リンクユニット側に面した側面を意味しており、「中間プレートの外側面」とは、隣接配置された中間プレート側に面した側面を意味している。
そこで、本発明は、左右一対の内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向に2枚の中間プレートを介して並列配置されているとともに、内リンクユニットが中間プレートのピン孔とチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートの前後一対のピン孔とにそれぞれ圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に潤滑油を封入してなることにより、外部からの無給油状態で長期にわたってチェーン駆動することができる。
そして、本発明の無給油多列チェーンによれば、潤滑油を外プレート側で封止する第1油溜り用ラビリンス構造が、前記連結ピンを圧入嵌合させた外プレートの内側面と該外プレートに対向してブシュ突出端部を一部突出させた内プレートの外側面との間に形成されているとともに、前記潤滑油を中間プレート側で封止する第2油溜り用ラビリンス構造が、前記連結ピンを圧入嵌合させた中間プレートの内側面と該中間プレートに対向してブシュ突出端部を一部突出させた内プレートの外側面との間に形成されていることにより、このような第1油溜り用ラビリンス構造と第2油溜り用ラビリンス構造とが、複雑に屈曲した形状によって油溜り機能を発揮して、チェーン走行時の周回走行によって生じる遠心力などに起因したブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に封入された潤滑油の外部漏出を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制するので、ブシュの内周面と連結ピンの外周面の摩耗損傷を低減してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止できる。
さらに、連結ピンを中間プレートのピン孔に対して圧入嵌合、所謂、シマリ嵌めして組み付けたことにより、チェーン強度を向上できるとともに2枚の中間プレートの間から潤滑油が外部に漏出することを防止できるばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
特に、請求項1に係る本発明の無給油多列チェーンによれば、第1油溜り用ラビリンス構造が、内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を外プレートの内側面を凹陥させて外側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状凹部で囲繞支持することで形成されているとともに、第2油溜り用ラビリンス構造が、内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を中間プレートの内側面を凹陥させて外側面へ膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状凹部で囲繞支持することで形成されていることにより、これら第1油溜り用ラビリンス構造および第2油溜り用ラビリンス構造が、複雑に屈曲した形状によって油溜り機能を発揮して、チェーン走行時の周回走行によって生じる遠心力などに起因したブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に封入された潤滑油の外部漏出を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制するので、ブシュの内周面と連結ピンの外周面の摩耗損傷を低減してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止できる。
また、第1ブシュ軸支用環状凹部および第2ブシュ軸支用環状凹部が、外プレートおよび中間プレートの内側面を凹陥させて外側面へ膨出させたオフセット状態で形成されていることにより、第1ブシュ軸支用環状凹部および第2ブシュ軸支用環状凹部の断面係数とそれ以外のプレート部分の断面係数とが同程度となるので、第1ブシュ軸支用環状凹部および第2ブシュ軸支用環状凹部を形成することによる外プレートおよび中間プレートの強度低下を抑制できるとともに、外プレートおよび中間プレートのプレス打ち抜き加工を行う際に、外プレートおよび中間プレートの内側面を凹陥させて外側面へ膨出させる形状の金型を用いるだけで、外プレートおよび中間プレートの打ち抜き加工と第1ブシュ軸支用環状凹部および第2ブシュ軸支用環状凹部の形成加工とを同時に行うことができるので、外プレートおよび中間プレートの打ち抜き加工とは別途に第1ブシュ軸支用環状凹部および第2ブシュ軸支用環状凹部を形成する研削やミーリング等の機械加工を外プレートおよび中間プレートに施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、外プレートと内プレートとの間および中間プレートと内プレートとの間には、従来の多列チェーンのような押圧状態で配置したシール部材を別部品として設けていないので、チェーン稼動時に円滑に屈曲して周回走行するとともにチェーン部品点数の増加を回避できる。
また、従来の多列チェーンでは、シール部材の摺接摩耗を防止して潤滑油の密封性を維持するために、シール部材と接触する外プレートの内側面、中間プレートの内側面、および、内プレートの外側面に表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があったが、本発明の無給油多列チェーンでは、従来のような表面仕上げ加工を施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、請求項2に係る本発明の無給油多列チェーンによれば、第1油溜り用ラビリンス構造が、内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を外プレートの外側面を凹陥させて内側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状膨出部で囲繞支持することで形成されているとともに、第2油溜り用ラビリンス構造が、内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を中間プレートの外側面を凹陥させて内側面へ膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状膨出部で囲繞支持することで形成されていることにより、これら第1油溜り用ラビリンス構造および第2油溜り用ラビリンス構造が、複雑に屈曲した形状によって油溜り機能を発揮して、チェーン走行時の周回走行によって生じる遠心力などに起因したブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に封入された潤滑油の外部漏出を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制するので、ブシュの内周面と連結ピンの外周面の摩耗損傷を低減してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止できる。
また、第1ブシュ軸支用環状膨出部および第2ブシュ軸支用環状膨出部が、外プレートおよび中間プレートの外側面を凹陥させて内側面へ膨出させたオフセット状態で形成されていることにより、第1ブシュ軸支用環状膨出部および第2ブシュ軸支用環状膨出部の断面係数とそれ以外のプレート部分の断面係数とが同程度となるので、第1ブシュ軸支用環状膨出部および第2ブシュ軸支用環状膨出部を形成することによる外プレートおよび中間プレートの強度低下を抑制できるとともに、外プレートおよび中間プレートのプレス打ち抜き加工を行う際に、外プレートおよび中間プレートの外側面を凹陥させて内側面へ膨出させる形状の金型を用いるだけで、外プレートおよび中間プレートの打ち抜き加工と第1ブシュ軸支用環状膨出部および第2ブシュ軸支用環状膨出部の形成加工とを同時に行うことができるので、外プレートおよび中間プレートの打ち抜き加工とは別途に第1ブシュ軸支用環状膨出部および第2ブシュ軸支用環状膨出部を形成する研削やミーリング等の機械加工を外プレートおよび中間プレートに施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、外プレートと内プレートとの間および中間プレートと内プレートとの間には、従来の多列チェーンのような押圧状態で配置したシール部材を別部品として設けていないので、チェーン稼動時に円滑に屈曲して周回走行するとともにチェーン部品点数の増加を回避できる。
また、従来の多列チェーンでは、シール部材の摺接摩耗を防止して潤滑油の密封性を維持するために、シール部材と接触する外プレートの内側面、中間プレートの内側面、および、内プレートの外側面に表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があったが、本発明の無給油多列チェーンでは、従来のような表面仕上げ加工を施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
本発明は、左右一対の内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向に2枚の中間プレートを介して並列配置されているとともに、内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートの前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に潤滑油を封入してなる無給油多列チェーンにおいて、潤滑油を外プレート側で封止する第1油溜り用ラビリンス構造が、外プレートの内側面と該外プレートに対向する内プレートの外側面との間に形成されているとともに、潤滑油を中間プレート側で封止する第2油溜り用ラビリンス構造が、中間プレートの内側面と該中間プレートに対向する内プレートの外側面との間に形成されて、プレート強度の低下とチェーン部品点数の増加を回避しつつチェーン製造負担を大幅に軽減し、チェーン稼動時にブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に封入された潤滑油を外プレート側と中間プレート側とで封止するとともに潤滑油の漏出と外部塵埃の侵入を抑制するものであれば、その具体的な実施の形態は如何なるものであっても何ら構わない。
すなわち、本発明の無給油多列チェーンで用いる内プレート、外プレート、および、中間プレートの具体的な形状については、小判型、ひょうたん型のいずれであっても良い。
また、本発明の無給油多列チェーンにおいてチェーン幅方向に並列配置する内リンクユニットの列数は、通常、2列乃至3列であるが、それ以上であっても差し支えない。
さらに、本発明の無給油多列チェーンは、ブシュチェーン、ローラチェーンのいずれのものがその対象であっても差し支えないが、ブシュチェーンの場合には、比較的動力伝達速度が遅くチェーンに負荷される荷重が小さい動力伝達時に最適であり、ローラチェーンの場合には、スプロケットとの噛み合いが円滑となるため、チェーンの摩耗を防止することができる。
また、本発明の無給油多列チェーンに組み込まれる中間プレートの具体的な形状については、内プレートおよび外プレートと同一若しくは小さなプレート幅寸法で形成されていれば良く、中間プレートが内プレートおよび外プレートより小さなプレート幅寸法で形成されている場合には、両側から挟むタイプのチェーンガイドに走行させた場合、内プレートおよび外プレートのみの高さであるので安定して走行でき、しかも、チェーン全体の軽量化に寄与する。
また、本発明の無給油多列チェーンに組み込まれるブシュの具体的な態様については、一般に採用されている円筒形状のもの、あるいは、この円筒形状の内部に無数の気孔を有するように金属粉末を圧縮成形して融解点以下の温度で焼結することで得られた多孔質材に潤滑油を含浸させた焼結含油金属材料からなるものなどのいずれであっても良く、さらに、焼結含油金属材料から成形されたものにあっては、焼結含油金属材料の焼結密度やその原料となる金属粉末の具体的な種類や組み合わせは如何なるものであっても良く、特に、焼結含油金属材料が、鉄、銅、ニッケル、クロムモリブデン鋼などを配合してなる混合金属粉末を圧縮形成するとともに6.0g/cm〜7.0g/cmの焼結密度で焼結することで成形されている場合には、ブシュがチェーン張力に起因する剪断力および衝撃力を受けるための強靱性能や多くの潤滑油を含浸させて長期に亘って連結ピンとブシュとの間に潤滑油を供給する含油性能および徐放性能の両方をバランス良く兼ね備えて充分に発揮できる。
また、本発明の無給油多列チェーンにおいて用いられる潤滑油の具体的な種類については、ポリαオレフィン、ポリオールエステル、フッ素結合オイルにポリテトラフルオロエチレンを配合してなる潤滑油などの潤滑性や耐劣化性を備えたものであれば如何なるものであって良く、特に、ポリαオレフィンやポリオールエステルなどの合成系炭化水素を基油とする合成油を採用した場合には、優れた粘性、潤滑性、耐劣化性を発揮して、ブシュの内部に形成された気孔に目詰まりを生じさせることなくブシュの気孔から長期に亘って連結ピンとブシュとの間に滲み出て摺接摩耗を抑制できる。
また、ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に潤滑油を供給する油溜り溝が連結ピンの外周面に刻設されている場合には、より多くの潤滑油を封入して連結ピンとブシュとの間に潤滑油を継続的に供給するので、連結ピンの外周面とブシュの内周面の摺動摩耗を長期に亘って低減してチェーン摩耗伸びをより一層防止することができる。
以下、本発明の第1実施例である無給油多列チェーン100を、図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例である無給油多列チェーンの全体概要図であり、図2は、図1に示す無給油多列チェーンの連結状態を示す斜視図であり、図3は、図1に示す無給油多列チェーンの一部断面図である。
まず、本発明の第1実施例である無給油多列チェーン100は、大きな動力を伝達するために用いられるチェーンであって、図1乃至図3に示すように、左右一対の内プレート110に前後一対のローラ120を回転自在に外嵌した前後一対のブシュ130を圧入嵌合してなる2組の内リンクユニット140がチェーン幅方向に隣接配置した2枚の中間プレート150を介して並列配置されているとともに、このような内リンクユニット140がチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレート160の前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピン170によりチェーン長手方向に多数連結されている。
そして、ブシュ130と連結ピン170との間には、潤滑油が封入されている。
また、前述した中間プレート150はピン孔を介して連結ピン170に圧入嵌合されており、チェーン強度を向上するとともに2枚の中間プレート150の間から潤滑油が外部に漏出することを防止するようになっている。
そこで、本実施例の無給油多列チェーン100が最も特徴とするブシュ130、外プレート160、および中間プレート150の具体的な形態について図2および図3により詳しく説明する。
まず、図2および図3に示すように、外プレート160には、内側面を凹陥させて、すなわち、凹ませて陥らせた外側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状凹部161が形成されている。
そして、内プレート110の外側面から一部突出したブシュ突出端部131を第1ブシュ軸支用環状凹部161でそれぞれ囲繞支持することで、外プレート160の内側面と該外プレート160に対向する内プレート110の外側面との間に第1油溜り用ラビリンス構造L1を形成している。
また、図2および図3に示すように、中間プレート150には、内側面を凹陥させて、すなわち、凹ませて陥らせた外側面に膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状凹部151が形成されている。
そして、内プレート110の外側面から一部突出したブシュ突出端部131を第2ブシュ軸支用環状凹部151でそれぞれ囲繞支持することで、中間プレート150の内側面と該中間プレート150に対向する内プレート110の外側面との間に第2油溜り用ラビリンス構造L2を形成している。
なお、本発明の無給油多列チェーン100で言うところの「オフセット状態」とは、第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151とそれ以外のプレート部分とがずれて段差状を呈している状態を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン100で言うところの「内プレート110の内側面」とは、組み込まれた内リンクユニット140の内側に面した側面を意味しており、「内プレート110の外側面」とは、組み込まれた内リンクユニット140の外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン100で言うところの「外プレート160の内側面」とは、チェーンの内側に面した側面を意味しており、「外プレート160の外側面」とは、チェーンの外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン100で言うところの「中間プレート150の内側面」とは、最も近接する内リンクユニット140側に面した側面を意味しており、「中間プレート150の外側面」とは、隣接配置された中間プレート150側に面した側面を意味している。
このようにして得られた本実施例の無給油多列チェーン100は、第1油溜り用ラビリンス構造L1が、ブシュ突出端部131を第1ブシュ軸支用環状凹部161で囲繞支持することで形成されているとともに、第2油溜り用ラビリンス構造L2が、ブシュ突出端部131を第2ブシュ軸支用環状凹部151で囲繞支持することで形成されている。
したがって、これら第1油溜り用ラビリンス構造L1および第2油溜り用ラビリンス構造L2が、複雑に屈曲した形状によって油溜り機能を発揮して、チェーン走行時の周回走行によって生じる遠心力などに起因したブシュ130の内周面と連結ピン170の外周面との間に封入された潤滑油の外部漏出を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制するので、ブシュ130の内周面と連結ピン170の外周面の摩耗損傷を低減してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止できる。
また、第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151が、外プレート160および中間プレート150の内側面を凹陥させて外側面へ膨出させたオフセット状態で形成されている。
したがって、第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151の断面係数とそれ以外のプレート部分の断面係数とが同程度となるので、第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151を形成することによる外プレート160および中間プレート150の強度低下を抑制できるとともに、外プレート160および中間プレート150のプレス打ち抜き加工を行う際に、外プレート160および中間プレート150の内側面を凹陥させて外側面へ膨出させる形状の金型を用いるだけで、外プレート160および中間プレート150の打ち抜き加工と第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151の形成加工とを同時に行うことができるので、外プレート160および中間プレート150の打ち抜き加工とは別途に第1ブシュ軸支用環状凹部161および第2ブシュ軸支用環状凹部151を形成する研削やミーリング等の機械加工を外プレート160および中間プレート150に施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、外プレート160と内プレート110との間および中間プレート150と内プレート110との間には、従来の多列チェーンのような押圧状態で配置したシール部材を別部品として設けていないので、チェーン稼動時に円滑に屈曲して周回走行するとともにチェーン部品点数の増加を回避できる。
また、従来の多列チェーンでは、シール部材の摺接摩耗を防止して潤滑油の密封性を維持するために、シール部材と接触する外プレートの内側面、中間プレートの内側面、および、内プレートの外側面に表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があったが、本発明の無給油多列チェーン100では、従来のような表面仕上げ加工を施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、中間プレート150がピン孔を介して連結ピン170に圧入嵌合されていることにより、チェーン強度を向上できるとともに2枚の中間プレート150の間から潤滑油が外部に漏出することを防止できるなど、その効果は甚大である。
つぎに、本発明の第2実施例である無給油チェーン200について、図4および図5に基づいて説明する。
まず、本発明の第2実施例である無給油多列チェーン200は、大きな動力を伝達するために用いられるチェーンであって、図4および図5に示すように、左右一対の内プレート210に前後一対のローラ220を回転自在に外嵌した前後一対のブシュ230を圧入嵌合してなる2組の内リンクユニット240がチェーン幅方向に隣接配置した2枚の中間プレート250を介して並列配置されているとともに、このような内リンクユニット240がチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレート260の前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピン270によりチェーン長手方向に多数連結されている。
そして、ブシュ230と連結ピン270との間には、潤滑油が封入されている。
また、前述した中間プレート250はピン孔を介して連結ピン270に圧入嵌合されており、チェーン強度を向上するとともに2枚の中間プレート250の間から潤滑油が外部に漏出することを防止するようになっている。
そこで、本実施例の無給油多列チェーン200が最も特徴とするブシュ230、外プレート260、および中間プレート250の具体的な形態について図4および図5により詳しく説明する。
まず、図4および図5に示すように、外プレート260には、外側面を凹陥させて、すなわち、凹ませて陥らせた内側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状膨出部261が形成されている。
そして、内プレート210の外側面から一部突出したブシュ突出端部231を第1ブシュ軸支用環状膨出部261でそれぞれ囲繞支持することで、外プレート260の内側面と該外プレート260に対向する内プレート210の外側面との間に第1油溜り用ラビリンス構造L1を形成している。
また、図4および図5に示すように、中間プレート250には、外側面を凹陥させて、すなわち、凹ませて陥らせた内側面に膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状膨出部251が形成されている。
そして、内プレート210の外側面から一部突出したブシュ突出端部231を第2ブシュ軸支用環状膨出部251でそれぞれ囲繞支持することで、中間プレート250の内側面と該中間プレート250に対向する内プレート210の外側面との間に第2油溜り用ラビリンス構造L2を形成している。
なお、本発明の無給油多列チェーン200で言うところの「オフセット状態」とは、第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251とそれ以外のプレート部分とがずれて段差状を呈している状態を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン200で言うところの「内プレート210の内側面」とは、組み込まれた内リンクユニット240の内側に面した側面を意味しており、「内プレート210の外側面」とは、組み込まれた内リンクユニット240の外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン200で言うところの「外プレート260の内側面」とは、チェーンの内側に面した側面を意味しており、「外プレート260の外側面」とは、チェーンの外側に面した側面を意味している。
また、本発明の無給油多列チェーン200で言うところの「中間プレート250の内側面」とは、最も近接する内リンクユニット240側に面した側面を意味しており、「中間プレート250の外側面」とは、隣接配置された中間プレート250側に面した側面を意味している。
このようにして得られた本実施例の無給油多列チェーン200は、第1油溜り用ラビリンス構造L1が、ブシュ突出端部231を第1ブシュ軸支用環状膨出部261で囲繞支持することで形成されているとともに、第2油溜り用ラビリンス構造L2が、ブシュ突出端部231を第2ブシュ軸支用環状膨出部251で囲繞支持することで形成されている。
したがって、これら第1油溜り用ラビリンス構造L1および第2油溜り用ラビリンス構造L2が、複雑に屈曲した形状によって油溜り機能を発揮して、チェーン走行時の周回走行によって生じる遠心力などに起因したブシュ230の内周面と連結ピン270の外周面との間に封入された潤滑油の外部漏出を抑制するとともに外部塵埃の侵入を抑制するので、ブシュ230の内周面と連結ピン270の外周面の摩耗損傷を低減してチェーン摩耗伸びを長期に亘って防止できる。
また、第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251が、外プレート260および中間プレート250の外側面を凹陥させて内側面へ膨出させたオフセット状態で形成されている。
したがって、第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251の断面係数とそれ以外のプレート部分の断面係数とが同程度となるので、第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251を形成することによる外プレート260および中間プレート250の強度低下を抑制できるとともに、外プレート260および中間プレート250のプレス打ち抜き加工を行う際に、外プレート260および中間プレート250の外側面を凹陥させて内側面へ膨出させる形状の金型を用いるだけで、外プレート260および中間プレート250の打ち抜き加工と第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251の形成加工とを同時に行うことができるので、外プレート260および中間プレート250の打ち抜き加工とは別途に第1ブシュ軸支用環状膨出部261および第2ブシュ軸支用環状膨出部251を形成する研削やミーリング等の機械加工を外プレート260および中間プレート250に施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、外プレート260と内プレート210との間および中間プレート250と内プレート210との間には、従来の多列チェーンのような押圧状態で配置したシール部材を別部品として設けていないので、チェーン稼動時に円滑に屈曲して周回走行するとともにチェーン部品点数の増加を回避できる。
また、従来の多列チェーンでは、シール部材の摺接摩耗を防止して潤滑油の密封性を維持するために、シール部材と接触する外プレートの内側面、中間プレートの内側面、および、内プレートの外側面に表面粗さを小さくする表面仕上げ加工を施す必要があったが、本発明の無給油多列チェーン200では、従来のような表面仕上げ加工を施す必要がなく、チェーンの製造負担を軽減できる。
また、中間プレート250がピン孔を介して連結ピン270に圧入嵌合されていることにより、チェーン強度を向上できるとともに2枚の中間プレート250の間から潤滑油が外部に漏出することを防止できるなど、その効果は甚大である。
本発明の第1実施例である無給油多列チェーンの全体概要図。 図1に示す無給油多列チェーンの連結状態を示す斜視図。 図1に示す無給油多列チェーンの一部断面図。 本発明の第2実施例である無給油多列チェーンの連結状態を示す斜視図。 図4に示す無給油多列チェーンの一部断面図。
符号の説明
100、200 ・・・ 無給油多列チェーン
110、210 ・・・ 内プレート
120、220 ・・・ ローラ
130、230 ・・・ ブシュ
131、231 ・・・ ブシュ突出端部
140、240 ・・・ 内リンクユニット
150、250 ・・・ 中間プレート
151 ・・・ 第2ブシュ軸支用環状凹部
251 ・・・ 第2ブシュ軸支用環状膨出部
160、260 ・・・ 外プレート
161 ・・・ 第1ブシュ軸支用環状凹部
261 ・・・ 第1ブシュ軸支用環状膨出部
170、270 ・・・ 連結ピン
L1 ・・・ 第1油溜り用ラビリンス構造
L2 ・・・ 第2油溜り用ラビリンス構造

Claims (3)

  1. 左右一対の内プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがチェーン幅方向に2枚の中間プレートを介して並列配置されているとともに、前記内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置された外プレートの前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、前記ブシュの内周面と連結ピンの外周面との間に潤滑油を封入してなる無給油多列チェーンにおいて、
    前記潤滑油を外プレート側で封止する第1油溜り用ラビリンス構造が、前記外プレートの内側面と該外プレートに対向する内プレートの外側面との間に形成されているとともに、
    前記潤滑油を中間プレート側で封止する第2油溜り用ラビリンス構造が、前記中間プレートの内側面と該中間プレートに対向する内プレートの外側面との間に形成されていることを特徴とする無給油多列チェーン。
  2. 前記第1油溜り用ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記外プレートの内側面を凹陥させて外側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状凹部で囲繞支持することで形成されているとともに、
    前記第2油溜り用ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記中間プレートの内側面を凹陥させて外側面へ膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状凹部で囲繞支持することで形成されていることを特徴とする請求項1記載の無給油多列チェーン。
  3. 前記第1油溜り用ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記外プレートの外側面を凹陥させて内側面に膨出させたオフセット状態の第1ブシュ軸支用環状膨出部で囲繞支持することで形成されているとともに、
    前記第2油溜り用ラビリンス構造が、前記内プレートの外側面から一部突出したブシュ突出端部を前記中間プレートの外側面を凹陥させて内側面へ膨出させたオフセット状態の第2ブシュ軸支用環状膨出部で囲繞支持することで形成されていることを特徴とする請求項1記載の無給油多列チェーン。
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