JP2009084542A - 抗菌性水性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】水性組成物に可視光型光触媒と微生物生存阻止剤を配合し、紫外線の乏しい屋内、特に医療機関などの屋内においても、照明状態にかかわらず、形成された塗膜に十分な微生物生存阻止作用を発揮させ得るようにすること。
【解決手段】少なくとも1種の合成樹脂エマルション、珪素化合物、可視光応答型光触媒を含む水性組成物に、光触媒微粒子の懸濁状態を良好にする有機乳化安定・分散剤を配合するとともに、微生物生存阻止剤を適宜配合するようにするようにする。

Description

本発明は、特に、衛生性が重視される医療施設、介護施設、食品取り扱い施設、畜産施設、その他、不特定多数の人間の出入りする施設などにおいて、例えば内装材や機器類に散布若しくは塗布される水性組成物であって、配合された可視光応答型光触媒及び/又は抗菌材の作用により、散布若しくは塗布された部位で微生物の生存を阻害する(静菌〜殺菌、防腐、防かびを行う)ことのできる水性組成物に関するものである。
光触媒は、然るべき波長、強度を備えた光のエネルギーで励起されたとき、その触媒と共存する物質、特に有機物(例えば、光触媒の存在する面に付着若しくは接触した汚染物質や有害/悪臭ガス、微生物など)に対する分解作用を備えているとされている。そのため、光触媒によるそのような分解作用を利用しようとした種々雑多な光触媒応用製品が市場を賑わしている。
しかし、従来の光触媒応用製品については、大体、いわゆる紫外線応答型光触媒が用いられていたため、微生物の生存阻害作用に的を絞って見た場合、従来製品では、その作用が必ずしも納得のいくものではなっかった。というのは、例えば、紫外線応答型光触媒の用いられた塗料やタイルなどの製品が、紫外線源である太陽光の乏しい室内の部分にも漫然と用いられてきたという事実があるからである。もしそのような製品が紫外線の豊富な屋外で使用されるのであれば、光触媒による然るべき諸作用は確かに期待できるかも知れないが、太陽光スペクトルの紫外線には元来強力な殺菌作用があるため、光触媒による微生物生存阻害作用については判然としないということになる。
従来、紫外線応答型光触媒の使用された光触媒応用製品を強引に室内に適用すべく、室内に紫外線灯を態々設置するといったことも往々にして行われてきたようであるが、そのような行為は、昨今、ただでさえ健康に有害な紫外線による被曝を可及的に避けようという社会的機運が高まりつつある中で、はなはだ理不尽な所業と言わざるを得ない。
上記のような背景から、紫外線エネルギーの乏しい場所(太陽光の届きにくい場所や、紫外線遮蔽材で紫外線が積極的に遮断された場所)であっても、紫外線放射量の僅少な可視光源としての白熱灯や蛍光灯の光で物質分解作用、就中、微生物生存阻害作用を発揮できる可視光応答型光触媒、及び、それを用いた応用製品の開発が望まれてきた。可視光応答型光触媒については、最近、それ自体の製造技術や、その応用製品に関する技術が急速に進歩しつつあり、現状技術については、例えば下記参考文献に開示されている。しかし、これら公報では、可視光応答型光触媒自体や応用製品における光触媒の諸作用については開示されているものの、微生物生存阻害作用を発現させ得る応用製品技術については開示されていない。
特開2003−274600号公報 特開2003−334454号公報 特開2004−49969 号公報 特開2005−161211号公報 特開2005−230661号公報 特開2007−167699号公報
現在入手可能な可視光応答型光触媒原料は、大体、主成分が二酸化チタンとされ、構成微粒子の平均径が概ね10〜100nmに調整された粉体状のものか、それが水やアルコールなどの分散媒に概ね5〜50wt%懸濁されたゾル(スラリ)状のものである。したがって、本発明の水性組成物への光触媒の配合においては、光触媒が粉体、ゾルのいずれかの形で配合されることになるが、光触媒原料の形態がどうであれ、水性組成物においては、光触媒微粒子が分散媒に分散相として懸濁されることになる。
このような水性組成物においては、長期保存中における光触媒粒子の沈降が少なからず懸念され、もし沈降が進めば、水性組成物中での光触媒粒子濃度に偏りを生ずることになる。そして、もしそのような不具合の生じた水性組成物を不用意に使用して塗付若しくは塗装を行えば、その施工箇所により塗膜中の光触媒濃度が異なってきて、光触媒機能も異なってくることになる。
以上のことから、本発明の目的とするところは、水性組成物を、(1)長期間の保存においても光触媒粒子の沈降を生じにくいものとすること、(2)常温での塗装性、塗着性、塗膜形成性に優れたものとすること、(3)各種性状(強さ、硬さ、透明性、耐湿性、光触媒性、微生物生存阻害性など)に優れた塗膜を形成できるものとすること、(4)波長が380nm未満の紫外線を実質的に含まない可視光のみで照射された場合でも、光触媒による諸作用、特に微生物生存阻害性作用を十分発揮し得る塗膜を形成できるものとすることにある。
本発明者は、上記課題に対処すべく鋭意研究を進め、少なくとも1種の合成樹脂エマルション、珪素化合物、可視光応答型光触媒微粒子を含む水性組成物において光触媒微粒子の沈降防止(結局は、塗膜での光触媒微粒子の不均一分布防止)を図るとともに、この水性組成物で得られた塗膜の各種性状(強さ、硬さ、透明性、耐湿性、微生物生存阻害性など)を卓越したものとするのには、水性組成物に、例えば環状オリゴ糖、糖アルコール、カルボン酸塩・グルコース多糖類、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドンなどの有機乳化安定・分散剤を配合するのが有効であるとの知見を得た。
合成樹脂エマルションは、一種だけが単独で使用されても、二種以上が複合的に使用されてもよく、また、そのエマルションを構成する合成樹脂自体、複数種合成樹脂の共重合体であってもよい。本発明の水性組成物の場合、合成樹脂として、例えばアクリル酸アルキルエステル共重合体、メタクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体、ポリウレタン樹脂、スチレン樹脂、スチレン・アクリル酸エステル共重合樹脂などを用いることができる。
合成樹脂エマルションの製造工程初期においては、まず何らかのモノマー(例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基などをそれぞれ備えたモノマー)、水、界面活性剤などを攪拌混合して乳化液を得た後、乳化液に触媒を添加して加熱乳化重合させてベースエマルションを得るのであるが、本発明の場合、上記モノマーとしては、少なくともメタクリル酸メチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリルニトリルなどの少なくとも1種が用いられる。
珪素化合物としては、コロイダルシリカ、シラン化合物、シロキサン化合物などが用いられる。コロイダルシリカは、粒径が大体10〜100nmのシリカ粒子が分散媒としての水やアルコールに大体20〜40wt%懸濁されたゾルであり、水性組成物の塗膜の硬さ、耐磨耗性の向上などに有用なものである。
シラン化合物としては、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γアミノプロピルトリエトキシシランや、テトラメトキシシランなどを挙げることができる。これらのものはシランカップリング剤として、水性組成物の塗膜の硬さ、耐磨耗性、耐水性の向上などに有用である。
シロキサン化合物としては、例えば、テトラメトキシラン(正珪酸メチル)の縮重合により得られたポリメトキシシロキサンの加水分解生成物を挙げることができる。この加水分解生成物は水、アルコールを溶媒とする粘稠液の形で、一種の無機塗料として水性組成物に配合され、水性組成物の粘性調整、水性組成物で形成される塗膜の硬さ向上などに利用される。なお、この粘稠液は、上記合成樹脂エマルションが概して乳白色を呈しているのに対して殆ど透明であるので、この粘稠液を或る程度の量配合することで、水性組成物で形成される塗膜の透明度を飛躍的に向上させることができる。ちなみに、この粘稠液は、例えば加水分解生成物が1wt%程度の水・アルコール溶液(アルコール量/水量:約1〜5)の形で用いられる。
有機乳化安定・分散剤としては、環状オリゴ糖、糖アルコール、カルボン酸塩の重合体、カルボン酸塩・グルコース含有多糖類、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドンなどを用いることができる。環状オリゴ糖で有機乳化安定剤に特に好適なものはシクロアミローズ(シクロデキストリン)であるが、シクロアミローズにおける乳化性・溶質溶解性向上機能は固有の「包接性」からもたらされる。したがって、シクロアミローズの配合された水性組成物により形成された塗膜は、周囲の悪臭分子に対する吸収能も備えることになる。なお、シクロアミローズの水溶液は酸性を示す(例えば7wt%水溶液のpHは約5である)ので、シクロアミローズは原料液として強アルカリ性のものが用いられる場合にpH調製剤としても利用できる。
有機乳化安定・分散剤は多くの場合水溶液の形で使用されるため、その使用により、水性組成物中で、バインダーとしての樹脂成分や、ポリメトキシシロキサンの加水分解生成物の相対濃度を必要以上に下げ、ひいては水性組成物の塗装性、塗着性、得られた塗膜の耐水性や耐候性を低下させる恐れもあるので注意を要する。
糖アルコール、カルボン酸塩の重合体、カルボン酸塩・グルコース含有多糖類、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドンは、乳化安定剤、分散安定剤、エマルション安定剤として優れたものであるが、水性組成物の増粘剤や塗膜形成剤としても有用なものである。糖アルコールとしては、Dソルビットやマンニットなどを、カルボン酸の重合体としてはカルボキシビニルポリマーを、カルボン酸塩・グルコース含有多糖類としては、セルロースグリコール酸ソーダ(カルボキシメチルセルロースナトリウム)や澱粉グリコール酸ソーダなどを、セルロース誘導体としてはヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどを挙げることができる。
本発明の水性組成物には、有機溶媒として一価アルコール類、グリコール類、グリコール類の誘導体、ケトン類、エステル−アルコ−ル類、シクロアルカン類などを配合することができる。この有機溶媒は、界面活性の向上、成分相互溶解性向上、水性組成物の粘度調整などに効果があり、有機溶媒のうち一価アルコール類にあっては、水性組成物塗付面での水性組成物の乾燥性向上や水性組成物に含まれる有機乳化安定剤の腐敗防止にも効果がある。
一価アルコール類としては、エチルアルコール、メチルアルコール、プロピルアルコールなどを挙げることができる。グリコール類としては、二価アルコールであるエチレングリコールやプロピレングリコール、それらの縮合体であるジエチレングリコールやジプロピレングリコールなどを挙げることができ、グリコール類の誘導体としては、エチルグリコール(2−エトキシエタノール)、エチルジグリコール、エチルトリグリコール、ブチルグリコ−ル(2−ブトキシエタノール)、ブチルジグリコール、プロピレングリコール−n−メチルエーテル、プロピレングリコール−n−エチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテルなどを挙げることができる(ただし上記でn=1,2,3・・・)。ケトン類としては、ジメチルケトン(アセトン)、メチルエチルケトン(メチルアセトン)などを挙げることができ、エステル−アルコール類としては、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートなどを挙げることができ、シクロアルカン類としては、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。
本発明の水性組成物には、さらに微生物生存阻害剤を配合することができる。水性組成物からその塗膜にもたらされた可視光応答型光触媒は、然るべきレベル以上の光エネルギーで励起されたとき、その光エネルギーの途絶えない限り、塗膜面において微生物生存阻害作用を連続的に発揮する。しかし、実際の水性組成物塗布現場においては、光源の状態や塗装部の幾何学的配置状態などにより、光触媒の励起に必要な光エネルギーを十分受けられない塗装部位が生じてくることも懸念されるので、水性組成物には臨機応変に微生物生存阻害剤が補助的に配合される。
微生物生存阻害剤としては、安息香酸、安息香酸塩類、パラオキシ安息香酸エステル、サリチル酸、サリチル酸塩類、ソルビン酸、ソルビン酸塩類、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸塩類、ほう酸、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、銀化合物、銀イオン発現剤、ピリジン系剤、スルファミド系剤、イミダゾール系剤、チアゾール系剤、N−ハロアルキルチオ系剤、イソチアゾロン系剤、トリアゾール系剤、フタルイミド系剤、第四アンモニウム塩、グリシン化合物、グルコン酸クロルヘキシジン、ε−ポリリシン、キトサン、カテキン、エチルアルコール、プロピルアルコール、2−フェノキシエタノールなどを挙げることができ、これらは個別に又は組合せで使用される。
なお、本発明の水性組成物には、可視光応答型光触媒原料として、二酸化チタンを主成分とする光触媒が約10wt含まれたpH6.5の水性ゾルが用いられた。水性ゾルが使用されたのは、本発明の水性組成物のように、光触媒が高々数wt%しか配合されない場合には、光触媒微粒子の分散性が悪いと、光触媒微粒子の低濃度部で光触媒微粒子が実質的に存在しなくなる可能性があり、光触媒原料として微粉末状のものを用いるより、微粉末が水やアルコールに懸濁したゾル状のものを用いた方が、水性組成物中での光触媒微粒子の均一分散性の点で有利であると考えられたからである。
なお、水性組成物中の光触媒量は0.3〜10wt%とするのが望ましい。光触媒量が0.3wt%未満であると、絶対量が少ないため、仮に光触媒粒が完全に均一に分散していても、光触媒による固有の効果は得られにくいであろうし、分散状態が悪いと、上記のように光触媒粒子の実質的に存在しない部分も生じてくるからである。また10wtを越えた場合には、光触媒量約10wt%の(水分量約90wt%の)水性ゾルから水性組成物へもたらされる水分が多くなり、水分含有量の多い水性エマルション合成樹脂原料などの配合量に制限を受けるようになってくるからである。実施例に示したような、塗膜における光触媒の滅菌実験では、水性組成物における光触媒量が0.5〜4%の場合に良好な滅菌効果が得られている。
上記可視光応答型光触媒ゾルに含まれる可視光応答型光触媒自体、その光触媒で平坦面の覆われた試料を容積4Lの透明テドラ−バッグに装填し、テドラ−バッグ中のアンモニアガス濃度を約20ppmに調節した後、試料面を照度6000lxの可視光(蛍光灯から発せられる光を紫外線フィルターに通して得た光)で100cmだけ照射した場合、アンモニアガス濃度を50時間以内に0.5ppm以下へ、望ましくは0.2ppm以下へ、さらに望ましくは0.1ppm以下へ低減させ得るだけの物質分解能を備えたものとして特定される。
以上から示唆されるように、本発明の適用により、水性組成物が、(1)長期間の保存においても光触媒粒子の沈降を生じにくいものとなり、(2)常温での塗装性、塗着性、塗膜形成性に優れたものとなり、(3)各種性状(強さ、硬さ、透明性、耐湿性、光触媒性、微生物生存阻害性など)に優れた塗膜を形成できるものとなり、(4)波長が380nm未満の紫外線を実質的に含まない可視光のみで照射された場合でも、光触媒による諸作用、特に微生物生存阻害性作用を十分発揮し得る塗膜を形成できるものとなる。
本発明の、少なくとも1種の合成樹脂エマルションと、珪素化合物、有機乳化安定・分散剤、可視光応答型光触媒を含む水性組成物には、製造時に光触媒などの微粒子が凝集したり、製造後、時間経過とともにその微粒子が沈降したりするのを防ぐべく、製造時に有機乳化安定・分散剤が積極的に配合される。また、水性組成物には、その塗布若しくは塗装で形成された塗膜においてバインダー機能を果たす成分として、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を含む合成樹脂エマルションや、珪素化合物であるポリメトキシシロキサンの加水分解生成物などが配合される。
この発明の水性組成物に好適な可視光応答型光触媒は、物質分解能、即ち、光触媒で平坦面が覆われた試料を容積4Lの透明テドラ−バッグに装填し、テドラ−バッグ中のアンモニアガス濃度を10〜30ppmに調節した後、試料面を照度5000〜7000lxの可視光で100cmだけ照射した場合、アンモニアガス濃度を50時間以内に0.3ppm以下まで低減させ得るだけの物質分解能を備えたものである。水性組成物への可視光応答型光触媒の配合は、光触媒微粒子を約10wt%含み、pHが約6.5の水性ゾルにより行われるのが望ましい。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明の技術思想は実施例により限定されるものではない。以下の全ての実施例では、光触媒として、既述したとおりの物質分解能を備えたものが使用された。実施例1では、水性組成物で形成される塗膜での、光触媒による滅菌作用が検証された。その際に必要な病原菌を用いた実験は、本発明の出願人が研究を委託した国立千葉大学大学院医学研究院において、JIS−Z2801(抗菌架構製品−抗菌性試験方法・抗菌効果)に準拠して行われた。
(1)水性組成物の調製
水性組成物としては、それで形成される塗膜での、光触媒のみによる滅菌作用の検証のため、微生物生存阻害剤が意図的に配合されないものが用いられた。ちなみに、水性組成物に存在する滅菌性のエチルアルコールやメチルアルコールは、塗膜の乾燥時に実質的に失われるので、乾燥塗膜では微生物生存阻害剤とはなり得ない。
各種原料の配合で得られた水性組成物の組成(重量比)は以下のとおりである。
アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル重合体 1.4部
ポリメトキシシロキサン加水分解生成物 0.4部
シクロアミローズ 1.0部
二酸化珪素(微粒子状シリカ) 2.5部
可視光応答型光触媒 1.0部
界面活性剤 2.5部
エチルアルコール 15.2部
メチルアルコール 2.2部
水 残部
(pHは約7)
(2)抗菌性試験用試験板の準備
基板としては、厚さ0.5mm、面寸法50mm×50mmの硬質塩化ビニル板を用いた。基板をエチルアルコールで十分洗浄した後、基板に上記水性組成物を筆で丁寧に塗り試験板とした。この試験板を(その塗膜を)常温で約二日間乾燥させた後、紫外線滅菌器で十分滅菌した。
(3)菌液の準備
実験は大腸菌、緑膿菌、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)について行ったが、これらの菌の予備培養はJIS−Z2801に示された要領で実施した。
(4)試験板への(塗膜への)菌液の塗布
殺菌済みの試験板をシャーレに入れて、殺菌灯付き正圧ドラフトチャンバー内で個々の試験板に(塗膜面に)菌液を0.4ml塗布した後、塗膜面に40mm角の透明フィルムを張りつけ、菌液を均一に広げた。
(5)可視光の照射
ドラフトチャンバー内に設けた、白熱灯による可視光照射装置により、試料面に光を所定時間照射した。ただし、試料面での照度は約5000lx、環境温度は約35℃であった。また、ドラフトチャンバーに設けられた殺菌灯は事前に消灯した。
なお、光照射実験では、次の試料についても試験された。
(a)菌数変化への「光触媒の有無の影響」を調べるための、光触媒入り水性組成物が塗 布されず、菌液のみが塗布された対照試料(control)
(b)菌数変化への「光照射の有無の影響」を調べるための、光触媒入り水性組成物は塗 布されたが、遮光材で包まれた試料
(6)実験結果
光照射時間が20時間の場合の実験結果は以下のとおりである。ただし菌数は0.4ml当たりの数値である。
(a)光触媒入り水性組成物が塗布されず、大腸菌々液のみが塗布された対照試料では、 初期菌数約2×10が、20時間後に菌数約9×10へと増加した。
(b)光触媒入り水性組成物は塗布されたが、遮光材で包まれた試料の場合、上記対照試 料の場合とほぼ同様の結果が得られた。
(c)光触媒入り水性組成物が塗布され、大腸菌々液が塗布された試料では、初期菌数約 2×10〜8×10が、20時間後に菌数約10〜8×10へと激減した。 菌数に範囲があるのは実験が複数回行われたためである。
(d)光触媒入り水性組成物が塗布され、緑膿菌々液が塗布された試料では、初期菌数約 4×10が、20時間後に菌数約2×10へと激減した。
(e)光触媒入り水性組成物が塗布され、MRSA菌液が塗布された試料では、初期菌数 約9×10が、20時間後に菌数約10へと激減した。
以上より、本実施例の可視光応答型光触媒入り水性組成物の場合、それで形成される塗膜が、少なくともこの実験に用いられた菌(大腸菌、緑農菌、MRSA)対し、かなり強い光触媒性滅菌作用を示すことが明らかである。
なお、この実施例の水性組成物の場合、乳化安定・分散剤としてシクロアミローズが配合されたが、このものは、水性組成物中で他の成分と問題なく馴染むことが確認された。シクロアミローズの配合により、光触媒微粒子の沈降が抑えられ、例えば数カ月にわたる放置でも沈降は実質的に認め見られなくなる。この実施例の水性組成物は、金属、プラスチック、ガラスなどの平滑面でも、刷毛塗り、吹きつけ塗装などを「はじき」や「だれ」を生じることなく容易に行えるほど塗装性に優れており、また、常温でも比較的短時間に実質的に「べとつき」のない、殆ど透明な塗膜を形成する。
別の乳化安定・分散剤(ポリビニルピロリドン)の挙動を調べるため下記の水性組成物を調製した。その組成(重量比)は以下のとおりである。
アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル重合体 1.6部
ポリメトキシシロキサン加水分解生成物 0.4部
ポリビニルピロリドン 5.0部
二酸化珪素(微粒子状シリカ) 2.9部
可視光応答型光触媒 1.0部
界面活性剤 2.6部
エチルアルコール 17.6部
メチルアルコール 2.6部
水 残部
(pHは約8)
この実施例の水性組成物の場合、乳化安定・分散剤としてポリビニルピロリドンが配合されたが、このものは、水性組成物中で他の成分と問題なく馴染むことが確認された。ポリビニルピロリドンの配合により、光触媒微粒子の沈降が抑えられ、例えば数カ月にわたる放置でも沈降は実質的に認め見られなくなる。この実施例の水性組成物は、金属、プラスチック、ガラスなどの平滑面でも、刷毛塗り、吹きつけ塗装などを「はじき」や「だれ」を生じることなく容易に行えるほど塗装性に優れており、また、常温でも比較的短時間に実質的に「べとつき」のない、殆ど透明な塗膜を形成する。
実施例1,2とは別の成分系の水性組成物において、微生物生存阻害剤としてのホウ酸の挙動を調べるため、下記の水性組成物を調製した。その組成(重量比)は以下のとおりである。
アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル重合体 11.3部
シクロアミローズ 1.0部
二酸化珪素(微粒子状シリカ) 2.5部
ホウ酸 0.5部
可視光応答型光触媒 1.0部
界面活性剤 2.6部
水 残部
(pHは約7)
この実施例の水性組成物の場合、酸性(pHが約5)のポリメトキシシロキサン加水分解生成物や、シクロアミローズの腐敗を防ぐエチルアルコールがが含まれないため、微生物生存阻害性を備えた酸性のホウ酸が配合された。ホウ酸は、水性組成物中で他の成分と問題なく馴染み、少量でもpHの調製に有効なことが確認された。この実施例の水性組成物は、金属、プラスチック、ガラスなどの平滑面でも、刷毛塗り、吹きつけ塗装などを「はじき」や「だれ」を生じることなく容易に行えるほど塗装性に優れており、また、常温でも比較的短時間に実質的に「べとつき」のない、殆ど透明な塗膜を形成する。
実施例3とは同様の成分系の水性組成物において、微生物生存阻害剤としての安息香酸ソーダの挙動を調べるため、下記の水性組成物を調製した。その組成(重量比)は以下のとおりである。
アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル重合体 11.3部
シクロアミローズ 1.0部
二酸化珪素(微粒子状シリカ) 2.5部
安息香酸ソーダ 0.5部
可視光応答型光触媒 1.0部
界面活性剤 2.6部
水 残部
(pHは約8.5)
この実施例の水性組成物の場合、シクロアミローズの腐敗を防ぐエチルアルコールがが含まれないため、微生物生存阻害性を備えた酸性の安息香酸ソーダが配合された。安息香酸ソーダは、水性組成物中で他の成分と問題なく馴染み、微量であればpHをそれ程高めないことが確認された。この実施例の水性組成物は、金属、プラスチック、ガラスなどの平滑面でも、刷毛塗り、吹きつけ塗装などを「はじき」や「だれ」を生じることなく容易に行えるほど塗装性に優れており、また、常温でも比較的短時間に実質的に「べとつき」のない、殆ど透明な塗膜を形成する。
この実施例の水性組成物は実施例1〜4の水性組成物と全く別の成分系を備えている。組成(重量比)は以下のとおりである。
アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル重合体 1.6部
アクリル・スチレン樹脂 12.0部
二酸化珪素(微粒子状シリカ) 4.0部
プロピルアルコール 4.0部
アセトン 5.0部
可視光応答型光触媒 1.0部
界面活性剤 3.2部
水 残部
この実施例の水性組成物は、樹脂分を多く含んでいるので、耐湿性、耐候性に優れた塗膜を形成するし、プロピルアルコールやアセトンを含んでいるので、特に既塗装面などへの塗着性に優れている。

Claims (12)

  1. 少なくとも1種の合成樹脂エマルションと、珪素化合物、有機乳化安定・分散剤、可視光応答型光触媒を含むことを特徴とする水性組成物。
  2. 成分として、さらに有機溶媒が配合された請求項1に記載の水性組成物。
  3. 成分として、さらに微生物生存阻害剤が配合された請求項1又は2に記載の水性組成物。
  4. 合成樹脂エマルションが、少なくともアクリル酸エステルを出発原料群の1種とする乳化重合工程を含む工程で調製されたものとされた請求項1から3のいずれかに記載の水性組成物。
  5. 合成樹脂エマルションが、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を含むものとされた請求項1から4のいずれかに記載の水性組成物。
  6. 珪素化合物がコロイダルシリカ、シラン化合物、シロキサン化合物から選ばれる少なくとも1種とされた請求項1から5のいずれかに記載の水性組成物。
  7. 有機乳化安定・分散剤が環状オリゴ糖、糖アルコール、カルボン酸の重合体、カルボン酸塩・グルコース含有多糖類、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種とされた請求項1から6のいずれかに記載の水性組成物。
  8. 有機溶媒が1価アルコ−ル類、グリコール類、グリコール類の誘導体、ケトン類、エステル−アルコール類、シクロアルカン類から選ばれる少なくとも1種とされた請求項2から7のいずれかに記載の水性組成物。
  9. 微生物生存阻害剤が、安息香酸、安息香酸塩類、パラオキシ安息香酸エステル、サリチル酸、サリチル酸塩類、ソルビン酸、ソルビン酸塩類、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸塩類、ほう酸、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、銀化合物、銀イオン発現剤、ピリジン系剤、スルファミド系剤、イミダゾール系剤、チアゾール系剤、N−ハロアルキルチオ系剤、イソチアゾロン系剤、トリアゾール系剤、フタルイミド系剤、第四アンモニウム塩、グリシン化合物、グルコン酸クロルヘキシジン、ε−ポリリシン、キトサン、カテキン、エチルアルコール、プロピルアルコール、2−フェノキシエタノールから選ばれる少なくとも1種とされた請求項3から8のいずれかに記載の水性組成物。
  10. 可視光応答型光触媒が、それで平坦面が覆われた試料を容積4Lの透明テドラ−バッグに装填し、テドラ−バッグ中のアンモニアガス濃度を10〜30ppmに調節した後、試料面を照度5000〜7000lxの可視光で100cmだけ照射した場合、アンモニアガス濃度を50時間以内に0.3ppm以下まで低減させ得るだけの物質分解能を備えたものとされた請求項1から9のいずれかに記載の水性組成物。
  11. 波長が380nm未満の紫外線を実質的に含まない可視光のみで照射された場合でも、光触媒による諸作用を十分発揮し得る塗膜を形成する請求項1から10のいずれかに記載の水性組成物。
  12. 光触媒による作用が微生物生存阻害作用である請求項11に記載の水性組成物。
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