JP2009082944A - 強制加圧給電トーチ - Google Patents

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Abstract

【課題】
給電チップを覆うチップカバーを備えた溶接用トーチにおける給電チップの取替作業を容易に行うことができる強制加圧給電トーチを提供する。
【解決手段】
溶接用トーチ30は、第1チップボディ32と、加圧シャフト43と、第1チップボディ32の先端に着脱自在に連結された第2チップボディ50を備える。第2チップボディ50の収納孔51に収納された給電チップ54は、第2チップボディ50が第1チップボディ32から取り外された状態で収納孔51に対して抜き出し可能である。給電チップ54は、第2チップボディ50が第1チップボディ32に連結された状態では加圧シャフト43に当接されて圧縮バネ44の付勢を受ける。第2チップボディ50の先端には給電チップ54の先端を覆うようにチップホルダ60を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は強制加圧給電トーチに関するものである。
図7は、産業用ロボットとしての多関節ロボットを使用したときの溶接用ロボットの一般的な構成を示すシステムの図である。同図において、複数のアームからなるマニピュレータ11端に設けられた手首部12の先端には、エンドエフェクタである溶接用トーチ13が取付けられ、ワイヤリール14に巻かれた溶接用ワイヤがコンジットパイプ15に挿通されてマニピュレータ11に取付けられたワイヤ送給機16によって溶接用トーチ13に送給される。溶接用ワイヤはワイヤリール14からワイヤ送給機16までは、コンジットパイプ15によってガイドされ、ワイヤ送給機16から溶接用トーチ13までは、一線式パワーケーブル26(すなわち、トーチケーブル)によってガイドされて送給される。
そして、溶接用電源装置17から一線式パワーケーブル26を介して溶接用トーチ13に電力が供給され、ガスボンベ18から溶接用トーチ13に前記シールドガスが供給される。ティーチペンダント19からロボット制御装置10に指令信号が入力され、このロボット制御装置10からの信号がマニピュレータ11に入力されて、マニピュレータ11の第1軸乃至第6軸から成る6つの軸を回転させて、溶接用トーチ13の先端位置が制御される。
従来の一般的な溶接用トーチ13の構造は、図8に示すように構成されている。同図において、溶接用トーチ13のトーチボディ20に装着されたチップボディ21の先端21aに給電チップ22が装着されている。給電チップ22の中心軸部分にはワイヤWを挿通するための断面円形の挿通孔が設けられている。給電チップ22とワイヤWとが内接することによってワイヤWに給電される。ノズル23は給電チップ22とチップボディ21の先端部周面をほぼ覆うように配置されたオリフィス24とを囲繞している。
ガスボンベ18から供給されたシールドガスはチップボディ21の先端部に配設されているオリフィス24の孔を通して噴出され、アーク、溶融池及びその周辺を大気中の窒素及び酸素から遮蔽する。また、チップボディ21の中央部の周りには絶縁ブッシュ25が配設されている。
ところが、このような構成の溶接用トーチにおいては、アーク溶接時に発生するスパッタが給電チップに付着すると、アークの不安定を引き起こす問題がある。このため、アーク溶接時に発生するスパッタが給電チップに付着するのを防止するため、給電チップの周囲をチップカバーで覆うようにしたものが提案されている(特許文献1)。
又、溶接用トーチの給電チップの先端にワイヤ挿通孔を有するカバーを螺合したものも提案されている(特許文献2)。
特開平10−193124号公報 (段落「0008」〜「0009」、「0014」〜「0015」) 特開2003−112261号公報
ところで、給電チップは、ワイヤと相対的に摺接するため、ワイヤと摺接する面の摩耗は避けられず、この場合は、給電チップを交換する必要がある。
ところが、特許文献1や特許文献2では、給電チップがチップボディに螺合連結されるとともに、給電チップにチップカバーが螺合又はかしめ着されている。このため、給電チップの交換時には、給電チップのチップボディに対する螺合を解除した後、給電カバーの螺合又はかしめ着を解除する作業が必要となり、給電チップを覆うチップカバーを備えた溶接用トーチにおける給電チップの取替作業は繁雑で容易に行えない問題がある。
本発明の目的は、給電チップを覆うチップカバーを備えた溶接用トーチにおける給電チップの取替作業を容易に行うことができる強制加圧給電トーチを提供することを目的とする。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、トーチボディに連結され、軸心方向に沿った中心部に第1ワイヤ挿通孔を有する導電性の第1チップボディと、前記トーチボディに一端が係止された圧縮バネと、前記第1チップボディの第1ワイヤ挿通孔に挿通されるとともに前記圧縮バネの他端に当接され、第2ワイヤ挿通孔を有する加圧シャフトと、前記第1チップボディの先端に着脱自在に連結され、軸心方向に沿った中心部に収納孔を有する導電性の第2チップボディと、軸心方向に沿った中心部に第3ワイヤ挿通孔を有するとともに前記第2チップボディが第1チップボディから取り外された状態で前記収納孔に対して抜き出し可能に形成され、前記第2チップボディが第1チップボディに連結された状態では前記収納孔に対し軸心方向に沿って配置されるとともに基端が前記加圧シャフトに当接されて前記圧縮バネの付勢を受ける給電チップと、前記第2チップボディの先端に着脱自在に連結されて前記給電チップの先端を覆うように配置され、第4ワイヤ挿通孔を有するチップカバーとを備えた強制加圧給電トーチを要旨とするものである。
請求項2の発明は、請求項1において、前記給電チップが、第2チップボディの収納孔に対し軸心方向に沿った先端側への抜けを防止する抜け防止部を備えたことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2において、抜け防止部は、給電チップに設けられた突起部であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3において、前記突起部は、給電チップの周面に設けられて前記第2チップボディの収納孔に形成された係止段部に係止可能にされ、さらに、前記チップカバーは導電性であって、その第4ワイヤ挿通孔には、テーパ面が形成され、前記給電チップには前記テーパ面に当接するテーパー状の当接面が形成され、前記圧縮バネの付勢により、前記給電チップの当接面が前記テーパ面に当接されることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4において、前記チップカバーが、前記当接面と当接するテーパ面以外の第4ワイヤ挿通孔の内面が給電チップと間隙を介して離間していることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項3において、前記突起部は、給電チップの周面に設けられて前記第2チップボディの収納孔に形成されたテーパ面に係止可能にテーパー状に形成された当接面を有し、前記圧縮バネの付勢により、前記給電チップの当接面が前記テーパ面に当接されることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項6において、前記チップカバーが、セラミックスで形成されていることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項6又は請求項7において、前記チップカバーの第4ワイヤ挿通孔の内面が給電チップと間隙を介して離間していることを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項1乃至請求項8のうちいずれか1項において、前記給電チップが、先端から軸心方向に沿って1つ又はスリットが途中まで切込形成されたすり割り部を有することを特徴とする。
請求項1の発明によれば、給電チップを交換する際に、第2チップボディを第1チップボディから取り外すと、給電チップは、第2チップボディに対して抜き出し可能にされているため、第2チップボディの基端を下方に向ければ、簡単に給電チップを取り出すことができる。この結果、給電チップの取替作業を容易に行うことができる。
請求項2の発明によれば、給電チップが抜け防止部を有することにより、チップカバーがスパッタの付着により交換をする必要があるときに、チップカバーを第2チップボディから取り外した際に、給電チップが軸心方向に沿った先端側へ抜け出ることがない。このようにして、請求項2によれば、チップカバーを取り外した際に、給電チップの脱落がなく、チップカバーの交換も容易に行うことができる。
請求項3の発明によれば、突起部により給電チップが軸心方向に沿った先端側へ抜け出ることがなく、請求項2の効果を容易に実現することができる。
請求項4の発明によれば、前記圧縮バネの付勢により、給電チップは押圧されて、当接面がチップカバーのテーパ面に当接する。この結果、給電チップに対しては、第1,第2チップボディ、チップカバーを介して電流を供給できる。
請求項5の発明によれば、前記チップカバーにおいて、当接面と当接するテーパ面以外の第4ワイヤ挿通孔の内面が給電チップと間隙を介して離間されていることから、給電チップはアーク熱を直接的に受けることがなくなり、給電チップの軟化が抑制される。この結果、給電チップの摩耗が抑制され、給電チップの寿命を伸ばすことができる。又、給電チップが高温になることを抑制できるため、給電チップの酸化を抑制することができる。
請求項6の発明によれば、前記圧縮バネの付勢により、給電チップは押圧されて、当接面が第2チップボディのテーパ面に当接する。この結果、給電チップに対しては、第1,第2チップボディを介して電流を供給できる。
請求項7の発明によれば、チップカバーがセラミックスで形成されているため、スパッタの付着、熱影響による給電チップの変形を抑制でき、結果として、寿命を延ばして、交換の回数を抑制して、交換部品を少なくすることができる。
請求項8の発明によれば、チップカバーの第4ワイヤ挿通孔の内面が給電チップと間隙を介して離間されていることから、給電チップはアーク熱を直接的に受けることがなくなり、給電チップの軟化が抑制される。この結果、給電チップの摩耗が抑制され、給電チップの寿命を伸ばすことができる。又、給電チップが高温になることを抑制できるため、給電チップの酸化を抑制することができる。
請求項9の発明によれば、給電チップが、すり割り部を有するコレット方式となっていることから、ワイヤが常にセンタリングされて、ワイヤのねらいずれ防止に効果がある。又、スリットが設けられていることから、ワイヤの供給時にすれてできたワイヤの削り粉は、スリットから外部へ排出され、つまり送給不良を抑制できる。
以下、本発明を具体化した溶接用トーチの一実施形態を図1〜3を参照して説明する。
本実施形態の溶接用トーチ30は、消耗電極ガスシールドアーク溶接用トーチであって、図1に示すように溶接用トーチ30のトーチボディ31の先端(図1において下端)には、管状の第1チップボディ32が連結されている。トーチボディ31及び第1チップボディ32は、銅等の導電性材料からなる。第1チップボディ32の先端には、雄ネジ32aが形成され、第2チップボディ50が着脱自在に螺合されている。
第1チップボディ32の軸心方向に沿った中心部には、トーチボディ31のワイヤ挿通孔31aと同軸となるように第1ワイヤ挿通孔32bが形成されている。第1ワイヤ挿通孔32bの基端側寄りの部位は、拡径されて係止段部32cが設けられている。又、第1チップボディ32内には、トーチボディ31内に挿通されたコイルライナ33が係止段部32c付近まで延出されている。第1チップボディ32の長手方向の中央部外周は、絶縁ブッシュ34が螺合されて同絶縁ブッシュ34により覆われている。第1チップボディ32において、絶縁ブッシュ34で覆われていない上端はトーチボディ31を覆う絶縁チューブ35が延出されることにより覆われている。
絶縁ブッシュ34外周の中央部から下端にかけては口金36が固定されている。口金36に形成された雄ネジ36aには、ノズル37が着脱自在に螺合されている。ノズル37は、第2チップボディ50、第2チップボディ50の先端に取り付けされたチップカバーとしてのチップホルダ60及び絶縁ブッシュ34の先端とを囲繞するように設けられている。
又、第1チップボディ32の第1ワイヤ挿通孔32b内には、加圧シャフト43が挿通されている。加圧シャフト43の基端は、拡径されて係止段部32cに対して当接係止可能になっている。トーチボディ31の先端面と加圧シャフト43の基端面間にはコイルスプリングからなる圧縮バネ44が配置され、圧縮バネ44により、加圧シャフト43が、第2チップボディ50側へ付勢されている。加圧シャフト43の軸心方向に沿った中心部には、第2ワイヤ挿通孔45がトーチボディ31のワイヤ挿通孔31a、第1チップボディ32の第1ワイヤ挿通孔32bと同軸となるように形成されている。又、第2ワイヤ挿通孔45は、連通孔45aを介して外部と連通可能である。
ノズル37内の基端側内周面には係止段部38が設けられている。係止段部38には第1チップボディ32の軸心方向に摺動自在に外嵌されたオリフィス39が上端のフランジ40により係止されている。そして、図示しないガスボンベから供給されたシールドガスは、トーチボディ31のワイヤ挿通孔31a、加圧シャフト43の第2ワイヤ挿通孔45,連通孔45a、第1チップボディ32の第1ワイヤ挿通孔32b、連通孔32dを通り、さらにオリフィス39の連通孔39aを通り、ノズル先端41から噴出されて溶融池を空気から遮蔽する。なお、ノズル37と口金36間にはワッシャ42が介装されている。
第2チップボディ50は銅等の導電性材料から形成されている。第2チップボディ50の先端の雌ネジ51dにはチップホルダ60が着脱自在に螺合されている。
第2チップボディ50の軸心方向に沿った中心部には、収納孔51が形成されている。収納孔51は、基端部から先端部間には順に雌ネジ51a、大径部51b、小径の挿通部51c,及び雌ネジ51dを有する。大径部51bと挿通部51c間には係止段部51eが形成されている。第2チップボディ50は、雌ネジ51aが第1チップボディ32の雄ネジ32aに対して着脱自在に螺合されている。
収納孔51内には、給電チップ54が収納されている。給電チップ54の基端部は第1チップボディ32の第1ワイヤ挿通孔32bの先端開口に対して軸方向に移動自在に嵌入され、加圧シャフト43の先端面が当接されている。
給電チップ54は、銅等の導電性材料からなり、その軸心方向に沿った中心部には第3ワイヤ挿通孔55が形成されている。給電チップ54は銅タングステン等の硬度の高い焼結材や、クローム銅、ベリリウム銅等の銅合金、或いは導電性のセラミックス等を使用してもよい。本実施形態では、銅タングステンから給電チップ54が形成されている。又、給電チップ54には先端から軸心方向に沿ってスリット56が途中まで切込形成されて複数のすり割り部58(すなわち、複数の分割片)を備えている。本実施形態では、すり割り部58は、図3(a)に示すように十字状にスリット56が切込みされることにより、4個形成されているが、4個に限定されるものではなく、1個のスリット又は等間隔にスリットを入れて1つ又は複数個設ければよい。
給電チップ54の中央部から基端側寄りの部位の外周面には、抜け防止部及び突起部としての係止フランジ57が突出されて、係止段部51eに係止可能となっており、給電チップ54の先端側への移動、すなわち、抜けを防止する。又、給電チップ54は、収納孔51に対しては、基端側へ移動する際には、抜き出し可能に形成されている。なお、突起部としては係止フランジ57に限定されるものではなく、突出されて係止段部51eに当接係止できるものであれば、形状は限定されない。すり割り部58の軸心方向に沿った外周面の略中央部は、先端部の外径よりも外径が長くなるように膨出された膨出部59とされ、その下面は先端へ行くほど小径となるテーパ状の当接面59aが形成されている(図3(b)参照)。
チップホルダ60は、ステンレスや、クローム銅の導電性材料から円筒状に形成され、その基端部の雄ネジ60aにより前記雌ネジ51dに着脱自在に螺合されている。この螺合により、チップホルダ60と第2チップボディ50間の通電が可能となっている。又、チップホルダ60の軸心方向に沿った中心部には第4ワイヤ挿通孔61が形成されている。図1に示すように第4ワイヤ挿通孔61の内径は、給電チップ54のすり割り部58において、膨出部59から先端側に位置する部位の外周面に対して間隙Sを有するようにすり割り部58の外径よりも大径となるように設定されている。
又、第4ワイヤ挿通孔61の基端側の開口周縁は面取りされたテーパ面61aが形成され、圧縮バネ44の付勢によって加圧シャフト43を介して給電チップ54が押圧されることにより同テーパ面61aがすり割り部58の当接面59aに当接されている。このことにより、チップホルダ60と給電チップ54間の通電が可能となっている。
又、前述のように、給電チップ54が押圧されて当接面59aがチップホルダ60のテーパ面61aに当接されると、各すり割り部58が内方(軸心)に向かって変位されてスリット56が狭められ、第3ワイヤ挿通孔55に挿通されたワイヤWの周面に接触する。各すり割り部58は、ワイヤWを中心とした360度の周囲全体にほぼ配置されているため、すり割り部58間に挿通されたワイヤWはほぼ全周面が好適に接触する。
又、チップホルダ60は、第4ワイヤ挿通孔61の先端が、図1に示すようにすり割り部58の先端よりもさらに軸心方向に沿って延出されることにより、すり割り部58を覆うように配置され、その延出された第4ワイヤ挿通孔61の先端側の内面には、溶着防止部材65が固定されている。溶着防止部材65はセラミックス等の耐熱性材料から形成され、その軸心方向に沿った中心部にはワイヤ挿通孔66が給電チップ54の第3ワイヤ挿通孔55と同軸となるように形成されている。チップホルダ60の先端は、円錐台に形成され、第2チップボディ50の雌ネジ51dに螺合された部分を除いて第2チップボディ50から露出された面には(例えば、前記円錐台のテーパ面及び先端面)にはメッキ処理がされ、スパッタ付着の抑制が図られている。
(第1実施形態の作用)
上記のように構成された溶接用トーチ30の作用について説明する。
図1に示すように溶接用トーチ30は、コイルライナ33でトーチボディ31、第1チップボディ32、加圧シャフト43内をガイドされたワイヤWは、給電チップ54の第3ワイヤ挿通孔55に挿通されている。さらにワイヤWは、すり割り部58で略全周が接触された状態で軸心方向に沿って延出され、溶着防止部材65のワイヤ挿通孔66を通って、ノズル37から先に突出して配置される。
この状態では、図示しない溶接用電源装置から供給された電力は、トーチボディ31、第1チップボディ32、第2チップボディ50、チップホルダ60、及びすり割り部58の経路を経てすり割り部58からワイヤWに供給される。
ここで、給電チップ54のすり割り部58とチップホルダ60間には、間隙Sが形成されているため、この間隙Sにより、溶接時に発生する熱は、給電チップ54には直接伝わらない。この間隙Sにより、熱伝導が悪いため、給電チップ54自体の温度上昇を抑制できる。又、チップホルダ60を熱伝導性の悪い導電性材料から形成した場合には、さらに、熱の伝わり方が鈍くなり、チップ摩耗軽減の効果を発揮し、給電チップ54の寿命を延ばすことができる。
又、圧縮バネ44によるワイヤ強制加圧が行われているため、複数のすり割り部58がワイヤWの略全周に亘って接触することにより常にワイヤWに対して、安定給電を行うことができ、チップ内部でのアーキングを防止できる。この結果、チップ摩耗等も軽減され、チップ寿命も向上することができる。
給電チップ54を交換する必要が生じた場合、ノズル37を絶縁ブッシュ34から螺退して外す。そして、第2チップボディ50を第1チップボディ32の雄ネジ32aから螺退させて取り外す。このとき、チップホルダ60は第2チップボディ50と一体にして取り外される。そして、第2チップボディ50の基端を下方にすると、第2チップボディ50の収納孔51内に収納されていた給電チップ54は第2チップボディ50から落下して簡単に取り外される。この後、新しい給電チップ54を第2チップボディ50の収納孔51に入れ、第2チップボディ50を第1チップボディ32の雄ネジ32aに螺合させる。この後、ノズル37を絶縁ブッシュ34の雄ネジ36aに螺合して取付する。
又、チップホルダ60を交換する必要がある場合、前述のようにノズル37を絶縁ブッシュ34から取り外した状態で、第2チップボディ50を第1チップボディ32に取付された状態のまま、チップホルダ60を螺退させて第2チップボディ50から取り外せばよい。チップホルダ60が取り外された状態では、給電チップ54は、係止フランジ57が係止段部51eに当接されるため、収納孔51から給電チップ54が抜け出ることはない。新しいチップホルダ60を第1チップボディ32の雄ネジ32aに螺合した後、ノズル37を絶縁ブッシュ34の雄ネジ36aに螺合して取付する。
さて、上記のように構成された溶接用トーチ30は、下記の特徴がある。
(1) 本実施形態の溶接用トーチ30は、第1ワイヤ挿通孔32bを有する導電性の第1チップボディ32と、トーチボディ31に一端が係止された圧縮バネ44と、第1チップボディ32の第1ワイヤ挿通孔32bに挿通されるとともに圧縮バネ44の他端に当接され、第2ワイヤ挿通孔45を有する加圧シャフト43とを備える。又、溶接用トーチ30は、第1チップボディ32の先端に着脱自在に連結され、軸心方向に沿った中心部に収納孔51を有する導電性の第2チップボディ50を備える。そして、第2チップボディ50の収納孔51には、軸心方向に沿った中心部に第3ワイヤ挿通孔55を有する給電チップ54が収納され、給電チップ54は、第2チップボディ50が第1チップボディ32から取り外された状態で収納孔51に対して抜き出し可能に形成されている。さらに、給電チップ54は、第2チップボディ50が第1チップボディ32に連結された状態では収納孔51に対し軸心方向に沿って配置されるとともに基端が加圧シャフト43に当接されて圧縮バネ44の付勢を受けるようにされている。又、第2チップボディ50の先端には着脱自在に連結されて給電チップ54の先端を覆うように配置され、第4ワイヤ挿通孔61を有するチップホルダ60を備える。
この結果、給電チップ54を交換する際に、第2チップボディ50を第1チップボディ32から取り外すと、給電チップ54は、第2チップボディ50に対して抜き出し可能にされているため、第2チップボディ50の基端を下方に向ければ、簡単に給電チップ54を取り出すことができる。この結果、給電チップ54の取替作業を容易に行うことができ、作業性が向上する。
(2) 本実施形態の溶接用トーチ30は、給電チップ54が、第2チップボディ50の収納孔51に対し軸心方向に沿った先端側への抜けを防止する抜け防止部及び突起部としての係止フランジ57が設けられている。この結果、本実施形態の溶接用トーチ30は、チップホルダ60がスパッタの付着により交換をする必要があるときに、チップホルダ60を第2チップボディ50から取り外した際に、給電チップ54が軸心方向に沿った先端側へ抜け出ることがない。このようにして、チップホルダ60を取り外した際に、給電チップ54の脱落がなく、チップホルダ60の交換も容易に行うことができ、作業性が向上する。
(3) 本実施形態では、突起部としての係止フランジ57は、給電チップ54の周面に設けられて第2チップボディ50の収納孔51に形成された係止段部51eに係止可能にされている。さらに、チップホルダ60は導電性であって、その第4ワイヤ挿通孔61には、テーパ面61aが形成されている。一方、給電チップ54にはテーパ面61aに当接するテーパー状の当接面59aが形成され、圧縮バネ44の付勢により、給電チップ54の当接面59aがテーパ面61aに当接されるようにされている。
この結果、本実施形態の溶接用トーチ30は、圧縮バネ44の付勢により、給電チップ54は押圧されて、当接面59aがチップホルダ60のテーパ面61aに当接するため、給電チップ54に対しては、第1チップボディ32,第2チップボディ50及びチップホルダ60を介して電流を供給できる。
(4) 本実施形態の溶接用トーチ30は、チップホルダ60が、当接面59aと当接するテーパ面61a以外の第4ワイヤ挿通孔61の内面が給電チップ54と間隙Sを介して離間している。この結果、給電チップ54はアーク熱を直接的に受けることがなくなり、給電チップ54の軟化が抑制され、給電チップ54の摩耗が抑制され、給電チップ54の寿命を伸ばすことができる。又、給電チップ54が高温になることを抑制できるため、給電チップ54の酸化を抑制することができる。
(5) 本実施形態の溶接用トーチ30は、給電チップ54が、先端から軸心方向に沿って複数のスリット56が途中まで切込形成されたすり割り部58を有する。このように本実施形態では、給電チップ54が、すり割り部58を有するコレット方式となっていることから、ワイヤWが常にセンタリングされて、ワイヤWのねらいずれ防止に効果がある。又、スリット56が設けられていることから、ワイヤWの供給時にすれてできたワイヤWの削り粉は、スリット56から外部へ排出され、つまり送給不良を抑制できる。
(6) 本実施形態の給電チップ54は、クローム銅や銅タングステンからなる。銅タングステン等の焼結材は、加工が困難であるが、本実施形態では、給電チップ54の基端部は第1チップボディ32に対して、嵌合するだけであるため、ネジ加工をする必要がなく、焼結材を金型で容易に加圧成型することができ、材料費や、加工コストを低減できる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図4〜図6を参照して説明する。なお、前記実施形態と同一構成又は相当する構成については、同一符号を付してその説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
第2実施形態では、第1実施形態の構成中、給電チップ54の係止フランジ57、第2チップボディ50の大径部51b,及び係止段部51eが省略され、第2チップボディ50の挿通部51cのワイヤ送給方向側の端部に、ワイヤ送給方向に行くほど小径となるようにテーパ面51fが接続されている(図6(a)〜(b)参照)。そして、給電チップ54は、圧縮バネ44の付勢により、当接面59aがテーパ面51fに押圧して当接されているところが異なっている。この構成により、図示しない溶接用電源装置から供給された電力は、トーチボディ31、第1チップボディ32、第2チップボディ50、及びすり割り部58の経路を経てすり割り部58からワイヤWに供給される。第2実施形態では、給電チップ54の膨出部59は、抜け防止部及び突起部に相当する。
又、第2実施形態では、チップホルダ60の代わりに、チップカバー70が、第2チップボディ50の雌ネジ51dに取り外し可能に螺合されている。チップカバー70は、絶縁性のセラミックスからチップカバー70と略同じ外形形状に形成されるとともに、第4ワイヤ挿通孔61を有している。なお、第2実施形態では、溶着防止部材65は省略され、その代わりに、第4ワイヤ挿通孔61の先端開口は絞られている。又、給電チップ54はチップカバー70とは接触しないように第4ワイヤ挿通孔61の内周面とすり割り部58との間には間隙Sを有する。
さて、上記のように構成された第2実施形態の溶接用トーチ30は、第1実施形態で述べた(1)、(4)、(5)、(6)の効果と同様の効果を有するほか、下記の特徴がある。
(1) 本実施形態の溶接用トーチ30では、給電チップ54に対して抜け防止部及び突起部としての膨出部59が設けられ、膨出部59には第2チップボディ50の収納孔51に形成されたテーパ面51fに係止可能にテーパー状に形成された当接面59aを有する。そして、圧縮バネ44の付勢により、給電チップ54の当接面59aがテーパ面51fに当接される。この結果、給電チップ54に対しては、第1チップボディ32,第2チップボディ50を介して電流を供給できる。
(2) 本実施形態の溶接用トーチ30では、チップカバー70が、セラミックスで形成されている。この結果、スパッタの付着、熱影響による給電チップ54の変形を抑制でき、結果として、給電チップ54の寿命を延ばして、交換の回数を抑制して、交換部品を少なくすることができる。
(3) 又、本実施形態の溶接用トーチ30は、チップカバー70がスパッタの付着や熱影響により交換をする必要があるときに、チップカバー70を第2チップボディ50から取り外した際に、給電チップ54がテーパ面51fに当接係止されて先端側へ抜け出ることがない。このようにして、チップカバー70を取り外した際に、給電チップ54の脱落がなく、チップカバー70の交換も容易に行うことができ、作業性が向上する。
(4) 本実施形態の溶接用トーチ30では、チップカバー70の第4ワイヤ挿通孔61の内面が給電チップ54と間隙Sを介して離間していることから、給電チップ54はアーク熱を直接的に受けることがなくなり、給電チップ54の軟化が抑制される。この結果、給電チップ54の摩耗が抑制され、給電チップ54の寿命を伸ばすことができる。又、給電チップ54が高温になることを抑制できるため、給電チップ54の酸化を抑制することができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように構成してもよい。
○ 前記実施形態の溶接用トーチを水冷トーチや或いは半自動トーチに変更してもよい。
○ 前記各実施形態では、第2チップボディ50を第1チップボディ32に対して螺合により、着脱自在にしたが、螺合に限定されるものではなく、かしめ等の他の手段により、着脱自在に構成されていてもよい。
○ 第1実施形態では、チップホルダ60は第2チップボディ50に対して螺合により、着脱自在にしたが、螺合に限定されるものではなく、かしめ等の他の手段により、着脱自在に構成されていてもよい。
○ 前記第1実施形態では、チップホルダ60の露出された面には(例えば、前記円錐台のテーパ面及び先端面)にはメッキ処理を施したが、全部の面にメッキ処理を施してもよい。
○ 前記チップホルダ60は、熱伝導性の悪いステンレス等の熱性のものがよく、例えば、導電性セラミックスであってもよい。
本発明を具体化した第1実施形態の溶接用トーチの縦断面図。 同じく溶接用トーチの分解断面図。 第1実施形態の(a)は給電チップの正面図、(b)は側面図、(c)は背面図。 第2実施形態の溶接用トーチの縦断面図。 同じく溶接用トーチの分解断面図。 第2実施形態の(a)は給電チップの正面図、(b)は側面図、(c)は背面図。 溶接用ロボットの一般的な構成を示すシステムの図。 従来の溶接トーチの断面図。
符号の説明
30…溶接用トーチ、31…トーチボディ、32…第1チップボディ、
32a…雄ネジ、32b…第1ワイヤ挿通孔、32c…係止段部、
32d…連通孔、33…コイルライナ、34…絶縁ブッシュ、
35…絶縁チューブ、36…口金、36a…雄ネジ、
37…ノズル、38…係止段部、39…オリフィス、39a…連通孔、
40…フランジ、41…ノズル先端、42…ワッシャ、43…加圧シャフト、
44…圧縮バネ、45…第2ワイヤ挿通孔、45a…連通孔、
50…第2チップボディ、
51…収納孔、51e…係止段部、51f…テーパ面、
54…給電チップ、55…第3ワイヤ挿通孔、56…スリット、
57…係止フランジ(抜け防止部,突起部)、58…すり割り部、
59…膨出部(抜け防止部,突起部)、59a…当接面
60…チップホルダ(チップカバー)、60a…雄ネジ、
61…第4ワイヤ挿通孔、61a…テーパ面
70…チップカバー、S…間隙。

Claims (9)

  1. トーチボディに連結され、軸心方向に沿った中心部に第1ワイヤ挿通孔を有する導電性の第1チップボディと、
    前記トーチボディに一端が係止された圧縮バネと、
    前記第1チップボディの第1ワイヤ挿通孔に挿通されるとともに前記圧縮バネの他端に当接され、第2ワイヤ挿通孔を有する加圧シャフトと、
    前記第1チップボディの先端に着脱自在に連結され、軸心方向に沿った中心部に収納孔を有する導電性の第2チップボディと、
    軸心方向に沿った中心部に第3ワイヤ挿通孔を有するとともに前記第2チップボディが第1チップボディから取り外された状態で前記収納孔に対して抜き出し可能に形成され、前記第2チップボディが第1チップボディに連結された状態では前記収納孔に対し軸心方向に沿って配置されるとともに基端が前記加圧シャフトに当接されて前記圧縮バネの付勢を受ける給電チップと、
    前記第2チップボディの先端に着脱自在に連結されて前記給電チップの先端を覆うように配置され、第4ワイヤ挿通孔を有するチップカバーとを備えた強制加圧給電トーチ。
  2. 前記給電チップが、第2チップボディの収納孔に対し軸心方向に沿った先端側への抜けを防止する抜け防止部を備えたこと特徴とする請求項1に記載の強制加圧給電トーチ。
  3. 抜け防止部は、給電チップに設けられた突起部であることを特徴とする請求項2に記載の強制加圧給電トーチ。
  4. 前記突起部は、給電チップの周面に設けられて前記第2チップボディの収納孔に形成された係止段部に係止可能にされ、
    さらに、前記チップカバーは導電性であって、その第4ワイヤ挿通孔には、テーパ面が形成され、前記給電チップには前記テーパ面に当接するテーパー状の当接面が形成され、前記圧縮バネの付勢により、前記給電チップの当接面が前記テーパ面に当接されることを特徴とする請求項3に記載の強制加圧給電トーチ。
  5. 前記チップカバーが、前記当接面と当接するテーパ面以外の第4ワイヤ挿通孔の内面が給電チップと間隙を介して離間していることを特徴とする請求項4に記載の強制加圧給電トーチ。
  6. 前記突起部は、給電チップの周面に設けられて前記第2チップボディの収納孔に形成されたテーパ面に係止可能にテーパー状に形成された当接面を有し、
    前記圧縮バネの付勢により、前記給電チップの当接面が前記テーパ面に当接されることを特徴とする請求項3に記載の強制加圧給電トーチ。
  7. 前記チップカバーが、セラミックスで形成されていることを特徴とする請求項6に記載の強制加圧給電トーチ。
  8. 前記チップカバーの第4ワイヤ挿通孔の内面が給電チップと間隙を介して離間していることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の強制加圧給電トーチ。
  9. 前記給電チップが、先端から軸心方向に沿って1つ又はスリットが途中まで切込形成されたすり割り部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のうちいずれか1項に記載の強制加圧給電トーチ。
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