JP2009077779A - クラッドワイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】 トルク伝達性およびプッシャビリティが良好な医療用ガイドワイヤ等に適したクラッドワイヤを提供する。
【解決手段】 芯材部と、芯材部を覆う被覆部を有するクラッドワイヤにおいて、芯材部はタングステンをはじめとする高ヤング率の材質とし、被覆部はチタンをはじめとする低ヤング率の材質とするクラッドワイヤとすることを特徴とするクラッドワイヤ。また、芯材部と被覆部の境界には厚さ0.1〜100μmの芯材部の成分と被覆部の成分からなる固溶体層が存在することが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】 芯材部と、芯材部を覆う被覆部を有するクラッドワイヤにおいて、芯材部はタングステンをはじめとする高ヤング率の材質とし、被覆部はチタンをはじめとする低ヤング率の材質とするクラッドワイヤとすることを特徴とするクラッドワイヤ。また、芯材部と被覆部の境界には厚さ0.1〜100μmの芯材部の成分と被覆部の成分からなる固溶体層が存在することが好ましい。
【選択図】 図1
Description
本発明は、主に血管等にカテーテルを導入する際に用いる医療用ガイドワイヤまたは工業用ワイヤを作るための素材に好適なクラッドワイヤに関する。
血管造影、冠状動脈の治療等では、血管や治療箇所にカテーテルを挿入し、様々な治療が行われている。カテーテルには極細管形状やバルーン形状のものなどがある。カテーテルを血管等の治療部に挿入を安全に行うために医療用ガイドワイヤ(以下、「ガイドワイヤ」と表記したものは「医療用ガイドワイヤ」を示す)が使用されている。カテーテルは柔軟性に富む材料で形成されているため、複雑に屈曲している血管等にカテーテルのみで挿入することは困難である。そのため医療用ガイドワイヤを血管等に挿入し、その医療用ガイドワイヤに沿ってカテーテルを挿入する方法が用いられている。
医療用ガイドワイヤは、複雑に屈曲した血管内に挿入されるため柔軟性と操作性が必要である。また、10cmから、場合によっては100cm以上の長尺で使用されることから細線であっても断線しない強度が求められている。つまり、複雑形状の血管内に挿入できる柔軟性と細線形状としたときに断線しない強度が求められている。また、当然ではあるが人体に悪影響がないことも重要である。また、ガイドワイヤは回転と前後動を加えながら複雑に屈曲した血管内に挿入されて行くため、トルク伝達性とプッシャビリティが要求される。
従来、医療用ガイドワイヤにはステンレス鋼なる細線あるいはNi−Ti系超弾性合金からなる細線が用いられていた。しかしながら、ステンレス鋼細線では、プッシャビリティが良好なるも、複雑形状の血管内を通したとき、例えば、曲率半径の小さな箇所を通した後に歪が残る、曲率半径の小さい箇所を通す時の抵抗が大きい等の問題が生じ、必ずしも柔軟性が満足いくものではなかった。
またNi−Ti系超弾性合金では柔軟性があり、曲率半径の小さい箇所を通す時の抵抗が小さいという長所はあるものの、ヤング率が低すぎること、応力-歪曲線のヒステリシスが大きいため、トルク伝達性が必ずしも良好とはいえなかった。
医療用ガイドワイヤは、複雑に屈曲した血管内に挿入されるため柔軟性と操作性が必要である。また、10cmから、場合によっては100cm以上の長尺で使用されることから細線であっても断線しない強度が求められている。つまり、複雑形状の血管内に挿入できる柔軟性と細線形状としたときに断線しない強度が求められている。また、当然ではあるが人体に悪影響がないことも重要である。また、ガイドワイヤは回転と前後動を加えながら複雑に屈曲した血管内に挿入されて行くため、トルク伝達性とプッシャビリティが要求される。
従来、医療用ガイドワイヤにはステンレス鋼なる細線あるいはNi−Ti系超弾性合金からなる細線が用いられていた。しかしながら、ステンレス鋼細線では、プッシャビリティが良好なるも、複雑形状の血管内を通したとき、例えば、曲率半径の小さな箇所を通した後に歪が残る、曲率半径の小さい箇所を通す時の抵抗が大きい等の問題が生じ、必ずしも柔軟性が満足いくものではなかった。
またNi−Ti系超弾性合金では柔軟性があり、曲率半径の小さい箇所を通す時の抵抗が小さいという長所はあるものの、ヤング率が低すぎること、応力-歪曲線のヒステリシスが大きいため、トルク伝達性が必ずしも良好とはいえなかった。
このような問題を解決するために、特開2003−111849号公報(以下、特許文献1)ではNi−Ti合金からなる超弾性チタン合金線とステンレス線を一緒に編み込んだ複合細線が提供されている。また、特開2004−337361号公報(以下、特許文献2)では超弾性合金からなるコアワイヤの周囲に塑性的金属を被覆するガイドワイヤが提案されている。具体的には、Ni−Ti合金をコアワイヤとし、銅めっき等により被覆したものである。
特許文献1および特許文献2は共に超弾性合金をコア材(芯材)として用いるタイプである。超弾性合金は材料を大きく変形させても、力の負荷を止めると直ちに元の形状に戻り、変形時の応力が小さいため、柔軟性に富んだガイドワイヤが製造できている。
しかしながら、特許文献1のように編み込んだタイプではガイドワイヤとしての線径を細くすることに限界があった。また、超弾性合金をコア材(芯材)とすることにより柔軟性は向上するものの、操作性という点では必ずしも十分ではなかった。また、超弾性合金の応力−歪曲線は一般的にヒステリシスを持ち、トルク伝達性が十分とはいえなかった。つまり、回転操作として逆回転させた場合に回転角に遊びが生じるという欠点があった。またチタン系の合金の場合、X線透過性があり、血管内の挿入位置をX線透過像で確認することができなかった。
また、複雑形状の血管内を通すと言うことは、ガイドワイヤは屈曲と形状復元の両方を繰り返しながら挿入されていくことになる。従来のガイドワイヤでは、その長さが20cm未満のときは問題なかったが、長さが長くなるにつれて操作性が不十分になり、屈曲と形状復元の両方を繰り返しながら挿入することがスムーズに行えなくなると言った問題が生じていた。
特許文献1および特許文献2は共に超弾性合金をコア材(芯材)として用いるタイプである。超弾性合金は材料を大きく変形させても、力の負荷を止めると直ちに元の形状に戻り、変形時の応力が小さいため、柔軟性に富んだガイドワイヤが製造できている。
しかしながら、特許文献1のように編み込んだタイプではガイドワイヤとしての線径を細くすることに限界があった。また、超弾性合金をコア材(芯材)とすることにより柔軟性は向上するものの、操作性という点では必ずしも十分ではなかった。また、超弾性合金の応力−歪曲線は一般的にヒステリシスを持ち、トルク伝達性が十分とはいえなかった。つまり、回転操作として逆回転させた場合に回転角に遊びが生じるという欠点があった。またチタン系の合金の場合、X線透過性があり、血管内の挿入位置をX線透過像で確認することができなかった。
また、複雑形状の血管内を通すと言うことは、ガイドワイヤは屈曲と形状復元の両方を繰り返しながら挿入されていくことになる。従来のガイドワイヤでは、その長さが20cm未満のときは問題なかったが、長さが長くなるにつれて操作性が不十分になり、屈曲と形状復元の両方を繰り返しながら挿入することがスムーズに行えなくなると言った問題が生じていた。
また、従来のNi−Ti合金を工業用ワイヤに適用したとしても強度が十分ではなかった。工業用ワイヤとしては、各種機器に用いられるロープやケーブルなどが挙げられ、腐食環境下や高温環境下などの厳しい環境で使用されている。従来の工業用ワイヤでは強度と環境に対する耐性の両方を満足するものは得られていなかった。
以上のように従来の医療用ガイドワイヤ用のワイヤ素材は、柔軟性を向上することを優先するあまり、トルク伝達性が不十分であった。また、ガイドワイヤが長くなるにつれて、そのプッシャビリティ、トルク伝達性共に必ずしも十分とは言えなかった。同様に工業用のワイヤとしても強度等が十分満足するものが得られていなかった。
本発明は、このような問題を解決するためのもので、芯材部と被覆部を所定の材料で構成したクラッドワイヤとすることにより、クラッドワイヤのトルク伝達性を向上させ、また、優れたプッシャビリティをも為し得ることを可能とするものである。
本発明は、このような問題を解決するためのもので、芯材部と被覆部を所定の材料で構成したクラッドワイヤとすることにより、クラッドワイヤのトルク伝達性を向上させ、また、優れたプッシャビリティをも為し得ることを可能とするものである。
本発明のクラッドワイヤ用芯線は、芯材部と、芯材部を覆う被覆部を有するクラッドワイヤにおいて、芯材部はタングステンまたはモリブデンの少なくとも一種を主成分とし、被覆部はチタンを主成分とすることを特徴とするものである。
また、芯材部と被覆部の境界にはタングステンまたはモリブデンの少なくとも一種とチタンを含む固溶体が存在することが好ましい。また、芯材部と被覆部の境界にはタングステンまたはモリブデンの少なくとも一種とチタンを含む固溶体層が存在することが好ましい。また、固溶体層の厚さが1〜100μmの範囲内であることが好ましい。また、固溶体層の厚さがワイヤ外径に対して固溶体層の厚さが3/1000以上であることが好ましい。
また、芯材部と被覆部の境界にはタングステンまたはモリブデンの少なくとも一種とチタンを含む固溶体が存在することが好ましい。また、芯材部と被覆部の境界にはタングステンまたはモリブデンの少なくとも一種とチタンを含む固溶体層が存在することが好ましい。また、固溶体層の厚さが1〜100μmの範囲内であることが好ましい。また、固溶体層の厚さがワイヤ外径に対して固溶体層の厚さが3/1000以上であることが好ましい。
また、芯材部がレニウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウムのうち少なくとも1種を含有するタングステン合金からなることが好ましい。また、被覆部は、超弾性チタン合金、αチタン合金、α+βチタン合金またはβ−チタン合金の少なくとも1種からなるチタン合金であることが好ましい。また、チタンを主成分とする被覆部のヤング率が140GPa以下であることが好ましい。また、タングステンもしくはモリブデンを主成分とする芯材部のヤング率が327GPa以上であることが好ましい。
また、クラッドワイヤ用芯線の線径をD1としたとき、線径D1が0.5mm以下であることものにも好適である。また、クラッドワイヤ用芯線の線径をD1、芯材部の線径をD2としたとき線径比(D2/D1)が0.1〜0.9の範囲内であることが好ましい。また、クラッドワイヤの長さが30cm以上のものにも好適である。
以上のようなクラッドワイヤは医療用ガイドワイヤに好適である。
また、クラッドワイヤ用芯線の線径をD1としたとき、線径D1が0.5mm以下であることものにも好適である。また、クラッドワイヤ用芯線の線径をD1、芯材部の線径をD2としたとき線径比(D2/D1)が0.1〜0.9の範囲内であることが好ましい。また、クラッドワイヤの長さが30cm以上のものにも好適である。
以上のようなクラッドワイヤは医療用ガイドワイヤに好適である。
本発明によれば、芯材部と被覆部に所定の材料を用いたので、トルク伝達性およびプッシャビリティのクラッドワイヤを提供するものである。これにより、細くおよびまたは長い医療用ガイドワイヤを製造したとしても優れた特性を示すことができる。また、強度や高温下での特性も優れることから工業用ワイヤとしても有効である。
本発明のクラッドワイヤは芯材部と、芯材部を覆う被覆部を有するクラッドワイヤにおいて、芯材部はタングステンまたはモリブデンの少なくとも一種を主成分とし、被覆部はチタンを主成分とすることを特徴とするものである。
図1に本発明のクラッドワイヤの一例を示す断面図を示した。図中、1はクラッドワイヤ、2は芯材部、3は被覆部である。また、D1はクラッドワイヤの線径、D2は芯材部の線径である。
本発明のクラッドワイヤは、芯材部2と被覆部3を有するものであり、芯材部の周囲を被覆部で覆った構造を具備している。芯材部2はタングステン(W)またはモリブデン(Mo)の少なくとも1種を主成分とし、被覆部はチタン(Ti)を主成分とすることを特徴とする。
即ち、芯材部に高ヤング率の材料を、被覆部に低ヤング率の材料を持つクラッドワイヤであることを特徴とするものである。芯材部と被覆部のヤング率の差と構成比率を選ぶことで、径方向と軸方向との機械的異方性を任意に設定されたワイヤの製造が可能になる。
図1に本発明のクラッドワイヤの一例を示す断面図を示した。図中、1はクラッドワイヤ、2は芯材部、3は被覆部である。また、D1はクラッドワイヤの線径、D2は芯材部の線径である。
本発明のクラッドワイヤは、芯材部2と被覆部3を有するものであり、芯材部の周囲を被覆部で覆った構造を具備している。芯材部2はタングステン(W)またはモリブデン(Mo)の少なくとも1種を主成分とし、被覆部はチタン(Ti)を主成分とすることを特徴とする。
即ち、芯材部に高ヤング率の材料を、被覆部に低ヤング率の材料を持つクラッドワイヤであることを特徴とするものである。芯材部と被覆部のヤング率の差と構成比率を選ぶことで、径方向と軸方向との機械的異方性を任意に設定されたワイヤの製造が可能になる。
芯材部を構成する材料としてはタングステンまたはモリブデンの少なくとも一種を主成分とするものが挙げられ、タングステン単体、ドープタングステンまたはタングステン合金もしくは、モリブデン単体、ドープモリブデンまたはモリブデン合金が挙げられる。なお、本発明の「タングステンを主成分」とは重量比で最も多くタングステンを含有していることを示すものである。「モリブデンを主成分」も同様である。タングステン合金としてはレニウムを含有したタングステン合金(Re−W合金)が好ましく、Re含有量0.2〜30wt%のRe−W合金が好ましい。Re−W合金はタングステン単体よりも延性に優れることから強度を向上させることができる。延性向上という点ではRe含有量2〜27wt%がより好ましい。また、これ以外のタングステン合金としてはイリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)の少なくとも一種を0.2〜30wt%含有したものが挙げられる。イリジウム、ロジウム、ルテニウムのうち少なくとも1種は弾性率を向上させることができる。これら成分は30wt%を越えると加工性を損なうおそれがある。
また、ドープタングステンはAl(アルミニウム),Si(ケイ素),K(カリウム)等のドープ剤を含有したタングステンのことで、高温での耐久性が向上するので、後述する線引き加工等の細線化加工が容易である。なお、タングステンを主成分とするものとしては、不可避不純物が1wt%以下含有されていてもよいものとする。
また、ドープタングステンはAl(アルミニウム),Si(ケイ素),K(カリウム)等のドープ剤を含有したタングステンのことで、高温での耐久性が向上するので、後述する線引き加工等の細線化加工が容易である。なお、タングステンを主成分とするものとしては、不可避不純物が1wt%以下含有されていてもよいものとする。
また、モリブデン合金としては錫(Sn)やコバルト(Co)等の遷移金属の少なくとも一種を0.05〜1wt%含有したものが挙げられる。また、ドープモリブデンはK(カリウム)等のドープ剤を含有したモリブデンのことで高温での耐久性に優れ、再結晶熱処理を施すことにより延性が向上する。なお、モリブデンを主成分とするものとしては、不可避不純物が0.05wt%未満含有されていても良いものとする。
また、タングステンとモリブデンの両方を含む合金も適用可能である。タングステンとモリブデンの両方を含有する場合は、その合計が50wt%以上となることが好ましい。
被覆部を構成する材料としてはチタンを主成分とするものが挙げられ、チタン単体、チタン合金が挙げられる。なお、本発明の「チタンを主成分」とは重量比で最も多くチタンを含有していることを示すものである。チタン合金としては、超弾性チタン合金または、α−チタン合金、β−チタン合金、α+β−チタン合金の少なくとも1種が挙げられる。超弾性チタン合金としてはニッケルを含有するチタン合金(Ni−Ti合金)が挙げられ、α−チタン合金、β−チタン合金、α+β−チタン合金としては、Al(6wt%)−V(4wt%)−Ti(残部)などのチタン合金が一例として示される。また、チタンを主成分とするものとしては、不可避不純物が1wt%以下含有されていてもよいものとする。
また、タングステンとモリブデンの両方を含む合金も適用可能である。タングステンとモリブデンの両方を含有する場合は、その合計が50wt%以上となることが好ましい。
被覆部を構成する材料としてはチタンを主成分とするものが挙げられ、チタン単体、チタン合金が挙げられる。なお、本発明の「チタンを主成分」とは重量比で最も多くチタンを含有していることを示すものである。チタン合金としては、超弾性チタン合金または、α−チタン合金、β−チタン合金、α+β−チタン合金の少なくとも1種が挙げられる。超弾性チタン合金としてはニッケルを含有するチタン合金(Ni−Ti合金)が挙げられ、α−チタン合金、β−チタン合金、α+β−チタン合金としては、Al(6wt%)−V(4wt%)−Ti(残部)などのチタン合金が一例として示される。また、チタンを主成分とするものとしては、不可避不純物が1wt%以下含有されていてもよいものとする。
好ましいチタン合金としては、Ni−Ti合金、またはβ−チタン合金が挙げられる。いずれも優れた加工性を有し、芯材部とのクラッド加工が容易である。Ni−Ti合金はTiを主成分とし、残部Ni(10〜50wt%未満)の2元系、さらにMg(マンガン),Co(コバルト),Cu(銅)等を1〜20wt%添加した3元系などが挙げられる。また、β−チタン合金はβ相を主とする合金のことである。
Ni−Ti合金と一部のβ−チタン合金は超弾性を示すチタン合金である。「超弾性」とは、ある特定の温度域で応力によって変形しても、応力を除荷すると原形にもどる現象のことである(「岩波理化学辞典(第5版)」参照)。
超弾性合金は一般的に弾性率(ヤング率)が100GPa以下と低く、被覆部の材質として好ましい素材であるが、その応力−歪曲線に大きなヒステリシスを持つことから、トルク伝達性に悪影響を与えるため、被覆部の相対厚みをあまり大きくすることは好ましくない。
超弾性合金は一般的に弾性率(ヤング率)が100GPa以下と低く、被覆部の材質として好ましい素材であるが、その応力−歪曲線に大きなヒステリシスを持つことから、トルク伝達性に悪影響を与えるため、被覆部の相対厚みをあまり大きくすることは好ましくない。
また、後述するようにチタンと、タングステンもしくはモリブデンの固溶体を形成する場合は、チタン合金としてチタンとタングステンもしくはモリブデンの固溶体を用いても良い。固溶体はチタンが主成分でなくてもチタン合金の一種とし、被覆部の一部としてカウントするものとする。
以上のようにタングステンを主成分とする芯材部とチタンを主成分とする被覆部を有することにより、トルク伝達性とプッシャビリティを向上させることができる。純タングステンのヤング率は403GPa、純モリブデンのヤング率は327GPaであり、純チタンのヤング率は114GPaである。弾性率の高いタングステンもしくはモリブデンもしくはその合金を芯材部とし、弾性率の低いチタンを被覆部とすることによりトルク伝達性とプッシャビリティを向上させることができるのである。望ましくは芯材部のヤング率300GPa以上、被覆部のヤング率は140GPa以下が好ましく、芯材部と被覆部のヤング率の差が120GPa以上あった方が効果的である。より好ましくは200GPa以上あった方が効果的である。
以上のようにタングステンを主成分とする芯材部とチタンを主成分とする被覆部を有することにより、トルク伝達性とプッシャビリティを向上させることができる。純タングステンのヤング率は403GPa、純モリブデンのヤング率は327GPaであり、純チタンのヤング率は114GPaである。弾性率の高いタングステンもしくはモリブデンもしくはその合金を芯材部とし、弾性率の低いチタンを被覆部とすることによりトルク伝達性とプッシャビリティを向上させることができるのである。望ましくは芯材部のヤング率300GPa以上、被覆部のヤング率は140GPa以下が好ましく、芯材部と被覆部のヤング率の差が120GPa以上あった方が効果的である。より好ましくは200GPa以上あった方が効果的である。
また、芯材部と被覆部の境界にはタングステンまたはモリブデンもしくはその両方とチタンを含む固溶体が存在することが好ましい。また固溶体はβ相となっていることが好ましい。β相となることで弾性変形能が改善され、接合部の信頼性が向上する。また、その固溶体が固溶体層として存在することが好ましい。図2にタングステンまたはモリブデンとチタンの固溶体が層状つまりは固溶体層として存在する形態の一例となる断面図を示す。図中、2は芯材部、3は被覆部、4は固溶体層である。
タングステンまたはモリブデンとチタンは全率固溶する金属である。WとTi、MoとTiの状態図は「The Moffatt Collection Handbook of Binary Phase Diagrams(Genium Publishing Corporation出版)」を参照。
クラッドワイヤを製造する際に一定温度で保持することにより固溶体を形成することができる。固溶体を形成すると、より延性が増すので強度及び加工性が向上する。また、固溶体が層状に形成され、実質的に芯材部/固溶体層/被覆部の3層構造を具備していると傾斜組成となり、より延性が向上される。
クラッドワイヤを製造する際に一定温度で保持することにより固溶体を形成することができる。固溶体を形成すると、より延性が増すので強度及び加工性が向上する。また、固溶体が層状に形成され、実質的に芯材部/固溶体層/被覆部の3層構造を具備していると傾斜組成となり、より延性が向上される。
固溶体層の厚さは特に限定されるものではないが、その厚さは0.1〜100μmの範囲内で、且つワイヤ外径に対して固溶体層の厚さが3/1000以上であることが好ましい。最終線径に加工する前に、芯材部と被覆部の接合を行うが、工程の途中でワイヤ外径が0.5mmの時に少なくとも固溶体層の厚さが1μm未満では界面の接合強度が小さく、好ましくない。固溶体層の厚さが100μmを超えても良いが、芯材部の表面の凹凸が大きくなり、強度と信頼性が低下し、また固溶体層を形成するための製造工程の管理が煩雑になるという点では100μm以下が好ましい。
また、クラッドワイヤを製造する際に被覆部として純チタンもしくは低ヤング率チタン合金を用い、クラッド加工をした後、熱処理により純チタンもしくは低ヤング率チタン合金層に芯材部のタングステンもしくはモリブデンを拡散、合金化させ、被覆部の一部もしくは全部をβ相に変態させることでも本発明の機能を持つクラッドワイヤを作製することが出来る。
また、クラッドワイヤを製造する際に被覆部として純チタンもしくは低ヤング率チタン合金を用い、クラッド加工をした後、熱処理により純チタンもしくは低ヤング率チタン合金層に芯材部のタングステンもしくはモリブデンを拡散、合金化させ、被覆部の一部もしくは全部をβ相に変態させることでも本発明の機能を持つクラッドワイヤを作製することが出来る。
また、固溶体の組成は、α−Ti、β−Tiなど様々なものがあるが、好ましくはβ−Ti単相である。β−Ti単相であると化学的にも安定であり、延性に優れた固溶体となる。また、固溶体の有無はクラッドワイヤの断面をEPMAにより面分析することにより特定可能である。なお、固溶体が形成された場合、芯材部の外径D2は芯線の線径方向の断面をEPMA面分析することにより、チタンの存在しない領域を特定し、その最も長い対角線を芯材部の外径D2とするものとする。
以上の構成を具備するクラッドワイヤは、クラッドワイヤの線径をD1が0.5mm以下の細線、さらには0.3mm以下の極細線としたとしても優れたトルク伝達性及びプッシャビリティを示すことができる。言い換えれば、線径D1が0.5mm以下の細線状、さらには0.3mm以下の極細線状のクラッドワイヤに有効である。なお、線径D1の下限は特に限定されるものではないが、製造性を考慮すると、線径D1は0.01mm以上が好ましい。
また、同様にクラッドワイヤの長さLが30cm以上、さらには100cm以上と長尺のガイドワイヤに適用したとしても優れたトルク伝達性及びプッシャビリティを示すことができる。
また、同様にクラッドワイヤの長さLが30cm以上、さらには100cm以上と長尺のガイドワイヤに適用したとしても優れたトルク伝達性及びプッシャビリティを示すことができる。
このように本発明のクラッドワイヤは細くおよびまたは長くしたとしても優れたトルク伝達性およびプッシャビリティを有するので医療用ガイドワイヤに好適である。
また、芯材部にタングステンまたはモリブデン主成分として用いているため強度も優れている。そのため、工業用ワイヤとしても適用できる。また、高温環境下での強度も優れている。また、被覆部にチタンを主成分としているため腐食環境下にも強い。工業用の用途としては、各種固定用ワイヤ、炉内等の高温環境下で使われるワイヤ、海水や腐食ガス等の腐食環境下で使用されるワイヤ等が挙げられる。
また、芯材部にタングステンまたはモリブデン主成分として用いているため強度も優れている。そのため、工業用ワイヤとしても適用できる。また、高温環境下での強度も優れている。また、被覆部にチタンを主成分としているため腐食環境下にも強い。工業用の用途としては、各種固定用ワイヤ、炉内等の高温環境下で使われるワイヤ、海水や腐食ガス等の腐食環境下で使用されるワイヤ等が挙げられる。
発明のクラッドワイヤの一例を示す。図3は先端部と胴体部が同じ形状のものである。この形状のまま医療用ガイドワイヤとして使える場合は使っても良い。
また、図4にはクラッドワイヤを用いた医療用ガイドワイヤの一例を示す。図4は先端部を先細り型に加工したものである。図4のように先端部を先細り型にした方が血管等の細い穴に通し易いので好ましい。また、先端部は芯線(胴体部)とは異なる材料で形成しても良い。先端部の材質としては、チタン、チタン合金、ステンレス鋼などの金属部材や親水性樹脂などの樹脂部材も適用できる。
また、図4にはクラッドワイヤを用いた医療用ガイドワイヤの一例を示す。図4は先端部を先細り型に加工したものである。図4のように先端部を先細り型にした方が血管等の細い穴に通し易いので好ましい。また、先端部は芯線(胴体部)とは異なる材料で形成しても良い。先端部の材質としては、チタン、チタン合金、ステンレス鋼などの金属部材や親水性樹脂などの樹脂部材も適用できる。
また、ガイドワイヤの長さLの上限は特に限定されるものではないが、体内に入れることおよび製造性の観点から3m以下が好ましい。
また、本発明の医療用ガイドワイヤは、その芯材部にタングステンを用いているため、X線透過像によりガイドワイヤの位置が検出し易い。タングステンは重金属であることからX線を透過しないため、Tiやステンレス鋼よりはX線透過像に鮮明に写る。そのため、ガイドワイヤ挿入時にガイドワイヤの位置をX線で確認しやすい。
また、ガイドワイヤの線径をD1、芯材部の線径をD2としたとき線径比(D2/D1)が0.1〜0.9の範囲内であることが好ましい。本発明は、前述のようにタングステンもしくはモリブデンもしくはその両方を主とする芯材部とチタンを主とする被覆部を具備するものである。ヤング率の高いタングステン部(またはモリブデン部)とヤング率の小さいチタン部の比率により、操作性に影響する剛性と柔軟性である形状追従性を向上させるものである。言い換えれば、主成分をタングステンもしくはモリブデンもしくはその両方からなる芯材部と主成分をチタンからなる被覆部の割合により、剛性と形状追従性を制御することができる。つまり、弾性率の高いタングステン部の割合を多くすれば剛性がより向上し、チタン部の割合を多くすれば柔軟性が向上する。そのため、ガイドワイヤの線径D1と芯材部の線径D2の割合(D2/D1)を調整することにより、剛性または形状追従性のどちらか一方、またはその両方を向上させることができる。
また、本発明の医療用ガイドワイヤは、その芯材部にタングステンを用いているため、X線透過像によりガイドワイヤの位置が検出し易い。タングステンは重金属であることからX線を透過しないため、Tiやステンレス鋼よりはX線透過像に鮮明に写る。そのため、ガイドワイヤ挿入時にガイドワイヤの位置をX線で確認しやすい。
また、ガイドワイヤの線径をD1、芯材部の線径をD2としたとき線径比(D2/D1)が0.1〜0.9の範囲内であることが好ましい。本発明は、前述のようにタングステンもしくはモリブデンもしくはその両方を主とする芯材部とチタンを主とする被覆部を具備するものである。ヤング率の高いタングステン部(またはモリブデン部)とヤング率の小さいチタン部の比率により、操作性に影響する剛性と柔軟性である形状追従性を向上させるものである。言い換えれば、主成分をタングステンもしくはモリブデンもしくはその両方からなる芯材部と主成分をチタンからなる被覆部の割合により、剛性と形状追従性を制御することができる。つまり、弾性率の高いタングステン部の割合を多くすれば剛性がより向上し、チタン部の割合を多くすれば柔軟性が向上する。そのため、ガイドワイヤの線径D1と芯材部の線径D2の割合(D2/D1)を調整することにより、剛性または形状追従性のどちらか一方、またはその両方を向上させることができる。
剛性をより向上させるには(D2/D1)が0.3を超えて0.9以下の範囲が好ましく、形状追従性をより向上させるには(D2/D1)が0.1以上0.7未満の範囲が好ましい。また、強度と形状追従性の両方の特性が優れたものを得るためには(D2/D1)が0.3〜0.7の範囲が好ましい。なお、前述のチタンとタングステンまたはモリブデンの固溶体は被覆部の一部としてカウントするものとする。
0.1未満もしくは0.9を超える場合、本来の柔軟性と操作性が十分には確保できず、またワイヤを製造する際に歩留が低下する。
また、ガイドワイヤは、必要に応じ、その表面に樹脂被膜を設けても良いものとする。
0.1未満もしくは0.9を超える場合、本来の柔軟性と操作性が十分には確保できず、またワイヤを製造する際に歩留が低下する。
また、ガイドワイヤは、必要に応じ、その表面に樹脂被膜を設けても良いものとする。
次に、医療用ガイドワイヤの少なくとも一端部にコイル部を具備する構造であってもよい。図5に医療用ガイドワイヤの少なくとも一端部にコイル部を具備させた一例を示す。図中、1はガイドワイヤ、5はコイル部、6はキャップ部である。コイル部およびキャップ部を具備することにより、血管等の細い穴への挿入性が良くなる。また、コイル部は芯線(胴体部)よりも細くなった先端部に設けることが好ましい。なお、図5ではキャップ部の断面が台形状の例を示したが、半円状、円錐状等であってもよい。
また、コイル部に用いるワイヤはチタン、白金、金、ステンレス鋼などが挙げられる。その中でも、ガイドワイヤを構成する材質と同じように、タングステンもしくはモリブデンもしくはその両方を主成分とする芯材部と、チタンを主成分とする被覆部を有するワイヤからなることが好ましい。また、キャップ部に用いられる材料は樹脂であってもよいし、コイル部と同じ材料であってもよい。
医療用ガイドワイヤは、コイル部を設けた側から血管等に挿入される。複雑に屈曲した血管等に入り込んで行くには先端部はより挿入性に富む必要がある。そこでコイル部を設けることにより、先端部に弾力性を付与することができ、先端部の操作性を向上させることができる。このコイル部もガイドワイヤ本体部同様にタングステンもしくはモリブデンもしくはその両方を主とする芯材部とチタンを主とする被覆部を具備するワイヤからなることにより、先端部の操作性を向上させることができる。コイル部を形成するワイヤの線径は0.01〜0.1mm程度が好ましい。
また、コイル部に用いるワイヤはチタン、白金、金、ステンレス鋼などが挙げられる。その中でも、ガイドワイヤを構成する材質と同じように、タングステンもしくはモリブデンもしくはその両方を主成分とする芯材部と、チタンを主成分とする被覆部を有するワイヤからなることが好ましい。また、キャップ部に用いられる材料は樹脂であってもよいし、コイル部と同じ材料であってもよい。
医療用ガイドワイヤは、コイル部を設けた側から血管等に挿入される。複雑に屈曲した血管等に入り込んで行くには先端部はより挿入性に富む必要がある。そこでコイル部を設けることにより、先端部に弾力性を付与することができ、先端部の操作性を向上させることができる。このコイル部もガイドワイヤ本体部同様にタングステンもしくはモリブデンもしくはその両方を主とする芯材部とチタンを主とする被覆部を具備するワイヤからなることにより、先端部の操作性を向上させることができる。コイル部を形成するワイヤの線径は0.01〜0.1mm程度が好ましい。
次に製造方法について説明する。本発明の医療用ガイドワイヤは前述の構成を具備していれば製造方法は限定されるものではないが、好ましい製造方法としては以下のものが挙げられる。
まず、所定の線径を有するタングステンもしくはモリブデンもしくはその両方を主成分とした棒を用意する。次に、タングステンもしくはモリブデンもしくはその両方を主成分とした棒を挿入可能なチタン管もしくはチタン合金管を用意する。
チタン管もしくはチタン合金管内にタングステンもしくはモリブデンもしくはその両方を主成分とした棒を挿入し、熱間スエージ加工工程により、チタン管とタングステン棒を一体化する。このときロータリースエージングマシンを用いると一体化と細線化の両方の工程を行うことができる。また、タングステン棒の外径は1〜5mm、チタン管の内径はタングステン棒の外径に対して+0.1〜2mm程度が好ましい。また、チタン管の肉厚は、最終的な芯材部と被覆部の厚さ比に応じて選択するものとする。スエージ加工工程により外径D1が0.8〜1.5mm程度のワイヤを形成することが好ましい。スエージ加工工程により外径0.5mm以下まで加工しても良いが、スエージ加工のみで細線化していくと断線が発生し易くなるので歩留が低下する。
まず、所定の線径を有するタングステンもしくはモリブデンもしくはその両方を主成分とした棒を用意する。次に、タングステンもしくはモリブデンもしくはその両方を主成分とした棒を挿入可能なチタン管もしくはチタン合金管を用意する。
チタン管もしくはチタン合金管内にタングステンもしくはモリブデンもしくはその両方を主成分とした棒を挿入し、熱間スエージ加工工程により、チタン管とタングステン棒を一体化する。このときロータリースエージングマシンを用いると一体化と細線化の両方の工程を行うことができる。また、タングステン棒の外径は1〜5mm、チタン管の内径はタングステン棒の外径に対して+0.1〜2mm程度が好ましい。また、チタン管の肉厚は、最終的な芯材部と被覆部の厚さ比に応じて選択するものとする。スエージ加工工程により外径D1が0.8〜1.5mm程度のワイヤを形成することが好ましい。スエージ加工工程により外径0.5mm以下まで加工しても良いが、スエージ加工のみで細線化していくと断線が発生し易くなるので歩留が低下する。
このスエージ加工工程のときに所定の熱を付与することにより、チタンとタングステンもしくはモリブデンもしくはその両方からなる固溶体を形成することができる。また、スエージ加工工程後に熱を加えて固溶体を形成する固溶体形成熱処理工程を施してもよい。チタンとタングステンもしくはモリブデンもしくはその両方からなる固溶体を形成するには高温のほうが成分の拡散が早く短時間で処理が出来、良いが、芯材の脆化が起きやすくなるため、例えば゛タングステンを主とする場合、熱処理温度740〜1200℃の範囲、モリブデンを主とする場合、熱処理温度675〜1000℃の範囲で加熱することが好ましい。また、熱処理前の線径、加工度及び処理温度にもよるが、この温度で5分以上加熱することにより固溶体を層状に形成することができる。
次に、スエージ加工工程後または固溶体形成熱処理工程後のワイヤを線引き加工工程により外径0.5mm以下、さらには0.3mm以下の細線を得ることができる。また、この線引き加工工程は複数のダイスを使用して細線化してもよい。
得られた細線を必要な長さに切断して、医療用ガイドワイヤ用芯線を得ることができる。また、ガイドワイヤとする際に、図4のように先端を細くする場合は必要に応じ切削加工工程を施す。また、図5のように先端にコイル部を設けるときはコイル部やキャップ部を溶接などにより接合する接合工程を行うものとする。また、先端の細い部分は別に製造した先端部を接合しても良いものとする。また、必要に応じ、樹脂被覆やめっき等のコーティング膜を設けるものとする。
以上のような製造方法によれば本発明の医療用ガイドワイヤを歩留まり良く製造することが可能である。
得られた細線を必要な長さに切断して、医療用ガイドワイヤ用芯線を得ることができる。また、ガイドワイヤとする際に、図4のように先端を細くする場合は必要に応じ切削加工工程を施す。また、図5のように先端にコイル部を設けるときはコイル部やキャップ部を溶接などにより接合する接合工程を行うものとする。また、先端の細い部分は別に製造した先端部を接合しても良いものとする。また、必要に応じ、樹脂被覆やめっき等のコーティング膜を設けるものとする。
以上のような製造方法によれば本発明の医療用ガイドワイヤを歩留まり良く製造することが可能である。
(実施例)
図6に試験評価装置を示した。図中、1はクラッドワイヤからなるガイドワイヤ、7は内径0.6mmの樹脂チューブ(PTFE製)、8は出力部、9は入力部である。また、樹脂チューブ7は、図に示したように1080mmの直線部、半径R100mmの円形部、560mmの直線部、半径R40の曲線部、20mmの直線部を設けた。
このような試験評価装置を用いてトルク伝達性およびプッシャビリティを測定した。形状追従性の評価としてトルク伝達性及びプッシャビリティについて測定した。トルク伝達性は、樹脂チューブ7にガイドワイヤ1を通し、入力部9にて90°回転させたとき出力部8でどれだけ回転したかを測定したものである。これを+90°から−90°の角度で往復回転操作を10回行い、同様の操作を10サンプル(n=10)について行い、その平均値、ばらつき(最大値と最小値の差)、不連続回転の頻度、ヒステリシス幅を測定した。
また、プッシャビリティとして入力部9を10mm前後させたときの出力部の移動量を測定した。プッシャビリティについても1サンプル10回×10サンプル行い、その平均値を示した。これら測定には光学式角度検出装置及び光学式位置変位検出装置により行った。
図6に試験評価装置を示した。図中、1はクラッドワイヤからなるガイドワイヤ、7は内径0.6mmの樹脂チューブ(PTFE製)、8は出力部、9は入力部である。また、樹脂チューブ7は、図に示したように1080mmの直線部、半径R100mmの円形部、560mmの直線部、半径R40の曲線部、20mmの直線部を設けた。
このような試験評価装置を用いてトルク伝達性およびプッシャビリティを測定した。形状追従性の評価としてトルク伝達性及びプッシャビリティについて測定した。トルク伝達性は、樹脂チューブ7にガイドワイヤ1を通し、入力部9にて90°回転させたとき出力部8でどれだけ回転したかを測定したものである。これを+90°から−90°の角度で往復回転操作を10回行い、同様の操作を10サンプル(n=10)について行い、その平均値、ばらつき(最大値と最小値の差)、不連続回転の頻度、ヒステリシス幅を測定した。
また、プッシャビリティとして入力部9を10mm前後させたときの出力部の移動量を測定した。プッシャビリティについても1サンプル10回×10サンプル行い、その平均値を示した。これら測定には光学式角度検出装置及び光学式位置変位検出装置により行った。
(実施例1〜29、比較例1〜4)
表1に示したクラッドワイヤからなる医療用ガイドワイヤを用意した。表中、
(1)純W(純タングステン)とはWの割合が99.9wt%以上のタングステンを示す。
(2)ドープW(ドープタングステン)とは、ドープ剤を30〜100ppm含有した純タングステンを示す。
(3)純Mo(純モリブデン)とはMoの割合が99.9wt%以上のモリブデンを示す。
(4)ドープMo(ドープモリブデン)とはドープ剤を50〜100ppm含有した純モリブデンを示す。
(5)純Ti(純チタン)として、JIS−H−4600の1種に相当するものを示す。
(6)タングステン合金、モリブデン合金、チタン合金は表1に示した組成(wt%)を具備する合金を示す。
また、実施例22〜24の被覆部はニチノール(NiTi合金)、実施例25〜28は13%Ta−29%Nb−4.6%Zr−Ti合金(各数字はwt%)、実施例29は6%Al−4%V−Ti合金(各数字はwt%)である。
また、実施例25〜28のTi合金はβ−Tiを主相とする合金であり、ヤング率は50〜80GPaの低ヤング率合金である。また、実施例29のTi合金はα+β−Tiを主相とする合金であり、ヤング率は113GPaである。また、ニチノールのヤング率は100〜110GPa、純Tiのヤング率は106GPa程度である。
また、純W、ドープW、純Mo、ドープMo、各種W合金、Mo合金のヤング率はいずれも380GPa以上であった。
表1に示したクラッドワイヤからなる医療用ガイドワイヤを用意した。表中、
(1)純W(純タングステン)とはWの割合が99.9wt%以上のタングステンを示す。
(2)ドープW(ドープタングステン)とは、ドープ剤を30〜100ppm含有した純タングステンを示す。
(3)純Mo(純モリブデン)とはMoの割合が99.9wt%以上のモリブデンを示す。
(4)ドープMo(ドープモリブデン)とはドープ剤を50〜100ppm含有した純モリブデンを示す。
(5)純Ti(純チタン)として、JIS−H−4600の1種に相当するものを示す。
(6)タングステン合金、モリブデン合金、チタン合金は表1に示した組成(wt%)を具備する合金を示す。
また、実施例22〜24の被覆部はニチノール(NiTi合金)、実施例25〜28は13%Ta−29%Nb−4.6%Zr−Ti合金(各数字はwt%)、実施例29は6%Al−4%V−Ti合金(各数字はwt%)である。
また、実施例25〜28のTi合金はβ−Tiを主相とする合金であり、ヤング率は50〜80GPaの低ヤング率合金である。また、実施例29のTi合金はα+β−Tiを主相とする合金であり、ヤング率は113GPaである。また、ニチノールのヤング率は100〜110GPa、純Tiのヤング率は106GPa程度である。
また、純W、ドープW、純Mo、ドープMo、各種W合金、Mo合金のヤング率はいずれも380GPa以上であった。
芯材部(線径1mm)を構成するための棒と被覆部を構成するための管を用意し、スエージ加工によりクラッドワイヤを製造する。次に、必要に応じ、熱処理を加えることにより固溶体層を形成した。その後、線引き加工を施すことにより線径D1が0.34mmのガイドワイヤ用芯線を調整した。なお、各実施例にかかるクラッドワイヤは医療用ガイドワイヤとして、そのまま使えるものである。
また、比較のために、純Wのみからなるものを比較例1、純Tiのみからなるものを比較例2、ニチノール(NiTi合金)のみからなるものを比較例3とした。また、ニチノールを芯材部とし銅めっきにより被覆部を形成したものを比較例4とした。
各実施例および各比較例にかかるガイドワイヤのトルク伝達性およびプッシャビリティを上記方法により測定した。その結果を表1に示す。
また、比較のために、純Wのみからなるものを比較例1、純Tiのみからなるものを比較例2、ニチノール(NiTi合金)のみからなるものを比較例3とした。また、ニチノールを芯材部とし銅めっきにより被覆部を形成したものを比較例4とした。
各実施例および各比較例にかかるガイドワイヤのトルク伝達性およびプッシャビリティを上記方法により測定した。その結果を表1に示す。
表から分かる通り、本実施例にかかるガイドワイヤは優れたトルク伝達性およびプッシャビリティを示した。
また、図7に実施例1のトルク伝達性評価結果、図8に実施例17のトルク伝達性評価結果を示す。
図7および図8は、横軸を入力部の回転角度、縦軸を出力部の回転角度で示した。図7は、原点O点から回転を行い、入力部の角度が+90°になるA点まで回転した後、回転方向を逆転し、B点を通過し、入力部の角度が−90°のC点まで回転し、再度逆回転し、D点を通過し、入力部の角度が+90°のA点間で回転する。図は(1)入力部の角度が90°の時の出力部の角度θ'、(2)不連続回転の頻度、(3)ヒステリシス幅(図7のB点とD点の間隔に相当する角度幅)である。
また、図7に実施例1のトルク伝達性評価結果、図8に実施例17のトルク伝達性評価結果を示す。
図7および図8は、横軸を入力部の回転角度、縦軸を出力部の回転角度で示した。図7は、原点O点から回転を行い、入力部の角度が+90°になるA点まで回転した後、回転方向を逆転し、B点を通過し、入力部の角度が−90°のC点まで回転し、再度逆回転し、D点を通過し、入力部の角度が+90°のA点間で回転する。図は(1)入力部の角度が90°の時の出力部の角度θ'、(2)不連続回転の頻度、(3)ヒステリシス幅(図7のB点とD点の間隔に相当する角度幅)である。
不連続回転の頻度とは以下のことを言う。入力部に回転が加わえたとき、PTFEチューブとガイドワイヤ用芯線との摩擦等によって回転運動に拘束力が発生すると、入力部の回転がそのまま出力部に伝達されない場合がある。入力部の回転によって生じる応力が拘束力等に勝って初めて回転運動が、出力部に伝達される。そのため、トルク伝達性が悪いと出力部は不連続な回転動作となり、図8に示したようヒステリシス曲線(現象)を示す。不連続回転であるかどうかの指標は出力角で3°以上の段差がある場合、1回とカウントしヒステリシス曲線が1サイクルするときに何回不連続回転が起きるかを示したものである。
なお、図8は不連続回転が6回起きたときの例である。実施例17は表1で不連続回転の頻度「9」となっているのは10サンプルの平均を示したためである。
また、線引き加工時の歩留まりを見て分かる通り、本実施例のガイドワイヤは強度が優れており断線し難いことが分かる。
なお、図8は不連続回転が6回起きたときの例である。実施例17は表1で不連続回転の頻度「9」となっているのは10サンプルの平均を示したためである。
また、線引き加工時の歩留まりを見て分かる通り、本実施例のガイドワイヤは強度が優れており断線し難いことが分かる。
1…クラッドワイヤ(またはクラッドワイヤからなる医療用ガイドワイヤ)
2…芯材部
3…被覆部
4…固溶体層
5…コイル部
6…キャップ部
7…樹脂チューブ
8…出力部
9…入力部
2…芯材部
3…被覆部
4…固溶体層
5…コイル部
6…キャップ部
7…樹脂チューブ
8…出力部
9…入力部
Claims (13)
- 芯材部と、芯材部を覆う被覆部を有するクラッドワイヤにおいて、芯材部はタングステンまたはモリブデンの少なくとも一種を主成分とし、被覆部はチタンを主成分とすることを特徴とするクラッドワイヤ。
- 芯材部と被覆部の境界にはタングステンまたはモリブデンの少なくとも一種とチタンを含む固溶体が存在することを特徴とする請求項1記載のクラッドワイヤ。
- 芯材部と被覆部の境界にはタングステンまたはモリブデンの少なくとも一種とチタンを含む固溶体層が存在することを特徴とする請求項1記載のクラッドワイヤ。
- 固溶体層の厚さが0.1〜100μmの範囲内であることを特徴とする請求項3記載のクラッドワイヤ。
- 固溶体層の厚さがワイヤ外径に対して固溶体層の厚さが3/1000以上であることを特徴とする請求項4記載のクラッドワイヤ。
- 芯材部がレニウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウムのうち少なくとも1種を含有するタングステン合金からなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のクラッドワイヤ。
- 被覆部は、超弾性チタン合金、αチタン合金、α+βチタン合金またはβ−チタン合金の少なくとも1種からなるチタン合金であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のクラッドワイヤ。
- チタンを主成分とする被覆部のヤング率が140GPa以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のクラッドワイヤ。
- タングステンもしくはモリブデンを主成分とする芯材部のヤング率が327GPa以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のクラッドワイヤ。
- クラッドワイヤの線径をD1としたとき、線径D1が0.5mm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のクラッドワイヤ。
- クラッドワイヤの線径をD1、芯材部の線径をD2としたとき線径比(D2/D1)が0.1〜0.9の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のクラッドワイヤ。
- クタッドワイヤの長さが30cm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のクラッドワイヤ。
- 医療用ガイドワイヤに用いられることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載のクラッドワイヤ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007247578A JP2009077779A (ja) | 2007-09-25 | 2007-09-25 | クラッドワイヤ |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012115408A (ja) * | 2010-11-30 | 2012-06-21 | Patentstra Co Ltd | 医療用ガイドワイヤ、その製造方法、及び医療用ガイドワイヤとマイクロカテーテルとの組立体 |
JP2018187741A (ja) * | 2017-05-10 | 2018-11-29 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | ソーワイヤー及び切断装置 |
-
2007
- 2007-09-25 JP JP2007247578A patent/JP2009077779A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2012115408A (ja) * | 2010-11-30 | 2012-06-21 | Patentstra Co Ltd | 医療用ガイドワイヤ、その製造方法、及び医療用ガイドワイヤとマイクロカテーテルとの組立体 |
JP2018187741A (ja) * | 2017-05-10 | 2018-11-29 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | ソーワイヤー及び切断装置 |
JP2022082552A (ja) * | 2017-05-10 | 2022-06-02 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | ソーワイヤー及び切断装置 |
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