JP2005131358A - Ti−Ni系超弾性合金線材 - Google Patents

Ti−Ni系超弾性合金線材 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の超弾性型ガイドワイヤの弱点である曲げ剛性を高めるために、その縦弾性係数を大きくして、高いプッシャビリティーを得ると同時に、柔軟性および形状復元性にも優れるカテーテル用高剛性ガイドワイヤ芯材を提供する。
【解決手段】Ti−Ni系超弾性合金線材において、1%の曲げひずみを付加した時の縦弾性係数Eを曲げモーメントM、線径dと1%曲げひずみを付加した時の曲率半径rとからなる式(6)から算出した値が75000N/mm以上の曲げ剛性を有することを特徴とするTi−Ni系超弾性合金線材と、この超弾性合金線材を用いた1%の曲げひずみを付加した時に式(6)から算出した縦弾性係数が80000N/mm以上の真直度、プッシャビリティー、トルク伝達性並びに形状復元性に優れたカテーテル用ガイドワイヤ芯材、及び高剛性で且つ形状復元性に優れた携帯電話機用アンテナ線芯材である。
E=Mr/(πd/64) (6)
【選択図】 なし

Description

本発明は、曲げ剛性に優れるTi−Ni系超弾性合金線材であって、カテーテル用ガイドワイヤ芯材や携帯電話機用アンテナ線芯材に利用される高剛性のTi−Ni系超弾性合金線材に関する。
Ti−Ni系超弾性合金線材は、十分な強度、柔軟性および形状復元性を有し、且つ耐食性にも優れているために、携帯電話機のポップアップ型アンテナ線の芯材(例えば、特許文献1参照)として利用されている。更に配管内への電線や光ファイバなどの敷設におけるガイドとしての利用なども検討されている。特に、医療分野では、カテーテル用ガイドワイヤの芯材として広く利用されている。
このカテーテル用ガイドワイヤは、治療や検査を行うカテーテル(細径チューブ)を血管内でガイドし、患部に留置する役目を果たす。そのために、前記カテーテル用ガイドワイヤは、蛇行と分岐を繰返す血管の内部を、血管壁を傷つけずに血管形状に順応して進めるような柔軟性と形状復元性が要求されている。
しかしながら、カテーテルが細い末端血管の近くで用いられるようになってくるとガイドワイヤに対する要求も一段と厳しくなってきている。
一般に、カテーテル用ガイドワイヤは、その芯材の線径によって、線径が0.3〜0.4mmのマイクロ用ガイドワイヤ、線径が0.4〜0.6mmの一般用ガイドワイヤ、そして線径が0.6〜1.0mmの消化器用ガイドワイヤに分類され、線径が0.3〜0.4mmのマイクロ用ガイドワイヤ及び線径が0.4〜0.6mmの一般用ガイドワイヤでは、通常、ステンレス線材、或いはステンレス線材の先端にTi−Ni系超弾性合金線材を設けた複合線材が使用されている。そして線径が0.6〜1.0mmの消化器用ガイドワイヤでは、Ti−Ni系超弾性合金線材が主に用いられるが、高剛性の要求が強い場合には、Ti−Ni系加工硬化型合金線材が使用されている。
ところで、Ti−Ni系合金を芯材に使用したカテーテル用ガイドワイヤには、(ア)Ti−Ni系超弾性合金線材を用いた超弾性型ガイドワイヤ(例えば、特許文献2〜4参照)、(イ)Ti−Ni系加工硬化型合金線材を用いた加工硬化型ガイドワイヤ、(ウ)先端部のみTi−Ni系超弾性合金線材を用い、本体部は高剛性のステンレス線材を用いた複合型ガイドワイヤ、(エ)Ti−Ni系合金線材を矯正加工して、高剛性を付加した矯正加工型ワイヤ、等がある。
特開平10−65417号公報 特公平2−24548号公報 特公平2−24549号公報 特公平2−24550号公報 日本塑性加工学会編、「塑性加工技術シリーズ15 矯正加工」、株式会社コロナ社)、1992年1月、10頁
前記(ア)〜(エ)のカテーテル用ガイドワイヤの中で、特に、前記(ア)の超弾性型ガイドワイヤを用いたカテーテル用ガイドワイヤは、その特性上の優位性から多く使用されている。
しかし、超弾性型ガイドワイヤは、その芯材のTi−Ni系超弾性合金線材が降伏点を有しており、その降伏点を超えると応力の歪みに対する傾きが著しく減少し、わずかな応力の変化で大きく変形することから、血管内で利用した場合、血管内でのカテーテル用ガイドワイヤの押し込み力が、降伏点の応力に到達するとカテーテル用ガイドワイヤをそれ以上先に押し込めなくなるというプッシャビリティーの低下が生じる。即ち、血管の末端近くまでカテーテル用ガイドワイヤを送り込めるような曲げ剛性が得られないという問題がある。
更に、線径が0.6mm以下の細いカテーテル用ガイドワイヤに前記超弾性型ガイドワイヤを使用する場合、超弾性型ガイドワイヤの縦弾性係数がステンレスの3分の1程度であるために、線径が細いことと相まってその曲げ剛性が小さくなりプッシャビリティーの低下を招き、前記(ウ)の複合型ワイヤのようにカテーテル用ガイドワイヤの本体部に用いることができず、先端部への利用にのみ留まっているという問題も生じている。
このように、前記(ア)の超弾性型ガイドワイヤは、十分な強度、柔軟性および形状復元性に優れているが、曲げ剛性が低いという問題がつきまとい、より広い医療分野で使用するには、その曲げ剛性を高めることが望まれている。
また、携帯電話機用のポップアップ型アンテナ線の芯材に利用した場合、曲げ剛性が低いとアンテナ線の収納途中で、もし引っ掛りが生じるようなことがあると、アンテナ線が大きく撓んでしまい、アンテナ線が完全に直線に戻らなくなる恐れがあり、高い曲げ剛性、良好な真直度及び形状復元性を示す超弾性合金線材が望まれている。
そこで、本発明は、従来利用されているTi−Ni系超弾性合金線材の弱点である曲げ剛性を高めたTi−Ni系超弾性合金線材を提供するもので、その縦弾性係数を大きくして曲げ剛性を高めることで、カテーテル用ガイドワイヤには高いプッシャビリティー、柔軟性および形状復元性を与え、携帯電話機用のアンテナ線芯材には良好な形状復元性を与えることを目的とする。
請求項1記載の発明は、Ti−Ni系合金からなる超弾性線材において、1%の曲げひずみを付加した時の縦弾性係数Eを曲げモーメントM、線径dと1%曲げひずみを付加した時の曲率半径rとからなる式(6)を用いて計算により求めた値が75000N/mm以上の曲げ剛性を有することを特徴とするTi−Ni系超弾性合金線材である。
E=Mr/(πd/64) (6)
請求項2記載の発明は、Niを50.5から52.0mol%含み、残部Tiと不可避不純物からなるTi−Ni系合金からなる超弾性線材において、1%の曲げひずみを付加した時の縦弾性係数Eを曲げモーメントM、線径dと1%曲げひずみを付加した時の曲率半径rとからなる式(6)を用いて計算により求めた値が75000N/mm以上の曲げ剛性を有することを特徴とするTi−Ni系超弾性合金線材である。
E=Mr/(πd/64) (6)
請求項3記載の発明は、Niを50.1から52.0mol%含み、さらにCr、Fe、V、Co、Cuからなる群よりなる1種又は2種以上の元素を0.1から2.0%含み、残部Tiと不可避不純物からなるTi−Ni系合金からなる超弾性線材において、1%の曲げひずみを付加した時の縦弾性係数Eを、曲げモーメントM、線径dと1%曲げひずみを付加した時の曲率半径rとからなる式(6)を用いて計算により求めた値が75000N/mm以上の曲げ剛性を有することを特徴とするTi−Ni系超弾性合金線材である。
E=Mr/(πd/64) (6)
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3記載の線材において、さらに4%までの引張歪みを付与した後、荷重除荷後の残留歪みが0.4%以下であることを特徴とするTi−Ni系超弾性合金線材である。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の線材において、さらに長さ1500mmの線材の真直度が1.5mm以下であることを特徴とするTi−Ni系超弾性合金線材である。
請求項6記載の発明は、請求項5記載のTi−Ni系超弾性合金線材を用いたガイドワイヤで、さらにプッシャビリティー(Ls/Lpの比)が0.9以上であり、トルク伝達性(パイプ中の線材の一端に所定条件の捻りを付与した時の他端の追従角度)が80°以上であることを特徴とするカテーテル用ガイドワイヤである。
請求項7記載の発明は、線径が0.4mm以上1.0mm以下であることを特徴とする請求項6記載のカテーテル用ガイドワイヤである。
請求項8記載の発明は、線径が0.3mm以上0.4mm未満であることを特徴とする請求項6記載のカテーテル用ガイドワイヤである。
請求項9記載の発明は、請求項5記載のTi−Ni系超弾性合金線材を用いた、携帯電話機用アンテナ線芯材である。
請求項10記載の発明は、曲げモーメントM、線径dと1%曲げひずみを付加した時の曲率半径rとからなる式(6)から計算により求めた1%の曲げひずみを付加した時の縦弾性係数Eが、80000N/mm以上の曲げ剛性を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5記載のTi−Ni系超弾性合金線材である。
E=Mr/(πd/64) (6)
請求項11記載の発明は、曲げモーメントM、線径dと1%曲げひずみを付加した時の曲率半径rとからなる式(6)から計算により求めた1%の曲げひずみを付加した時の縦弾性係数Eが、80000N/mm以上の曲げ剛性を有することを特徴とする請求項6乃至請求項8記載のカテーテル用ガイドワイヤである。
E=Mr/(πd/64) (6)
請求項12記載の発明は、曲げモーメントM、線径dと1%曲げひずみを付加した時の曲率半径rとからなる式(6)から計算により求めた1%の曲げひずみを付加した時の縦弾性係数Eが、80000N/mm以上の曲げ剛性を有することを特徴とする請求項9記載の携帯電話機用アンテナ線芯材である。
E=Mr/(πd/64) (6)
請求項13記載の発明は、所定寸法に冷間伸線されたTi−Ni系合金線材を、一定張力を80〜200N/mmの範囲で付与しながら、550から680℃の温度で、1〜10分間連続で熱処理することを特徴とする請求項1乃至請求項5記載の超弾性Ti−Ni系超金線材の製造方法である。
請求項14記載の発明は、所定寸法に冷間伸線されたTi−Ni系合金線材を、一定張力を80〜200N/mmの範囲で付与しながら、550から680℃の温度で、1〜10分間連続で熱処理することを特徴とする請求項6乃至請求項8記載のカテーテル用ガイドワイヤの製造方法である。
請求項15記載の発明は、所定寸法に冷間伸線されたTi−Ni系合金線材を、一定張力を80〜200N/mmの範囲で付与しながら、550から680℃の温度で、1〜10分間連続で熱処理することを特徴とする請求項9記載の携帯電話機用アンテナ線芯材の製造方法である。
請求項16記載の発明は、線径が0.3mm以上0.4mm未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項5記載のTi−Ni系超弾性合金線材である。
本発明に係る高剛性のTi−Ni系超弾性合金線材は、1%の曲げひずみを付加したときに75000N/mm以上、若しくは用途によっては80000N/mm以上の計算により求めた縦弾性係数を有し、且つ形状復元性、柔軟性および操作性に優れ、カテーテル用ガイドワイヤ芯材ならびに携帯電話機用アンテナ線芯材に好適である。更に、前記カテーテル用ガイドワイヤ芯材や携帯電話機用アンテナ芯材は、Ti−Ni系合金からなる所定寸法の冷間伸線材に一定張力を付与しつつ所定の温度、時間条件で連続熱処理を施すことにより容易に製造できる。依って、工業上顕著な効果を奏するものである。
以下に本発明に係るTi−Ni系超弾性合金線材およびその製造方法について、実施の形態を説明する。
先ず、本発明の曲げ剛性と縦弾性係数との関係を、下記式(1)と式(2)から求めた式(3)に示す。
G=E×I・・・(1)
I=πd/64・・・(2)
G=E×πd/64・・・(3)
ここで、G:曲げ剛性(Nmm)、E:縦弾性係数(N/mm)、I:断面2次モーメント(mm)、d:線径(mm)である。
次に、曲げひずみは、線径の半分を曲率半径で割った値であるから、曲げひずみは下記式(4)になる。
e=d/(2r) ・・・(4)
ここで、e:曲げひずみ、r:曲率半径(mm)である。
本発明によるTi−Ni系超弾性合金線材は、プッシャビリティーやトルク伝達性などのカテーテル用ガイドワイヤ芯材および携帯電話機用アンテナ線芯材に必要な特性に優れており、これらの特性は、表1に示すようにTi−Ni系超弾性合金線材の縦弾性係数、残留ひずみの大きさ及びその真直度に左右される。
Figure 2005131358
本発明のTi-Ni系超弾性合金線材には、Niを50.5〜52.0mol%を含み、残部Tiと不可避不純物とからなるTi−Ni系合金、またはNiを50.1〜52.0mol%を含み、さらにCr、Fe、V、Co、Cuからなる群より1種または2種以上を0.1〜2.0mol%含み、残部Tiと不可避不純物とからなるTi−Ni系合金が用いられる。
1%の曲げひずみを付加した時の計算により求めた縦弾性係数が、75000N/mm以上、若しくは用途、線径によっては、80000N/mm以上である場合に、プッシャビリティーが著しく高められ、線径0.3mmと極細径線材の場合でも、カテーテル用ガイドワイヤ芯材として、その本体部にも利用できるものである。
次に、本発明に係る高い剛性を有するカテーテル用ガイドワイヤ芯材や携帯電話機用アンテナ線芯材などのTi-Ni系超弾性合金線材は、Ti−Ni系合金鋳塊に熱間加工及び冷間加工(中間焼鈍を含む)を行い線材とし、その線材を熱処理することにより作製する。
前記熱処理は、本発明の合金線材の特性を大きく左右する工程であって、80〜200N/mmの範囲内の一定張力を与えながら、550〜680℃の温度で1〜10分間の熱処理を行うことにより1%の曲げひずみを付加した時の見かけ上の縦弾性係数を75000N/mm以上とすることができる。
前記条件で熱処理することにより、曲げひずみが1%の時にTi−Ni系超弾性合金線材は大きな縦弾性係数を得ることができ、カテーテル用ガイドワイヤ芯材に用いると血管内でのプッシャビリティーを高めて、血管の末端まで難なくカテーテルを送ることができ、更に従来のステンレスワイヤの代わりに本体部にも利用され、プッシャビリティー、トルク伝達性および形状復元性という超弾性型ワイヤの優れた特徴を、極細径のガイドワイヤにも利用することができる。
(実施例1)
以下に請求項1乃至6記載の発明を実施例1により説明する。
表2の本発明例No.1〜No.4、比較例No.50、No.51及び従来例No.100に示す成分組成のTi−Ni系合金鋳塊を熱間加工、冷間伸線(中間焼鈍を含む)、40%の減面率での仕上げ冷間伸線を行い、線径0.6mmの線材を作製した。この線材に本発明例No.1〜No.4および比較例No.50、No.51では620℃の温度で1分間の熱処理を施し、従来例No.100は本発明例No.1の線径0.6mmの線材を温度400℃で1時間熱処理して供試材とした。この供試材を用いて1%の曲げひずみ時の縦弾性係数を測定した。その結果を表2に記した。
1%の曲げひずみ時の縦弾性係数は、室温で図1に示す3点曲げ試験法を用いて測定した。図1は、3点曲げ試験法の説明図で、支点間距離を25mmとし、供試材の中央部を押し込み、曲げひずみが1%に到達したときの曲げ荷重値を測定し、その時の曲げモーメントを算出し、下記式(9)から曲げによる縦弾性係数を求めた。図1において、1は供試材、2は金属性支点を示す。
この3点曲げ試験の結果から曲げひずみを1%付与した時の縦弾性係数を以下のように計算して求めることができる。
先ず、曲げ剛性Gを曲げモーメントと曲率半径の積である式(5)で表す。
G=Mr・・・(5)
ここで、M:曲げモーメント(Nmm)、r:曲率半径(mm)である。
一方、曲げ剛性Gは、前記式(1)のように縦弾性係数Eと断面2次モーメントIの積として表せ、式(1)および式(5)が等しいことから、式(6)を求められる。
この(6)式により、計算により縦弾性係数を求めることができる。
E=Mr/(πd/64)・・・(6)
ここで、曲げモーメントは、2点支持の曲げであることから各支持点が受け持つ荷重は曲げ荷重の半分であり、これに支点間距離の1/2をかけた値となり、式(7)になる。
M=(P/2)×(25/2)・・・(7)
P:曲げ荷重値(N)である。
この式(7)を式(5)および式(6)に代入すると、曲げ剛性は式(8)、縦弾性係数は式(9)で表される。
G={(P/2)×(25/2)}×r・・・(8)
E={(P/2)×(25/2)}×r/(πd/64)・・・(9)
このように3点曲げ試験から曲げ荷重値を求めることにより、式(9)から縦弾性係数が求められる。そこで、1%曲げひずみ時の曲げ荷重値を求めるために、1%の曲げひずみ時の押し込み量を計算により求め、準備した3点曲げ試験用小型試験治具をインストロン型引張試験機に備え、3点曲げ試験を行う。
押し込み量hの算出は、非特許文献1の図1.14を参照して、幾何学から求めた近似式に基づいた曲率半径と押し込み量と支点間距離との関係を示す式(10)と、曲げひずみ,曲率半径と線径の関係を示す式(4)とから導いた式(11)を用いて算出する。
1/r=8h/L・・・(10)
h=L×e/(4×d)・・・(11)
ここで、h:押し込み量(mm)、L:支点間距離(mm)、e:曲げひずみ、d:線径(mm)、r:曲率半径(mm)である。
式(11)において、曲げひずみe=0.01とすると1%の曲げひずみにおける押し込み量hが、式(12)として求められる。
h=L×e/(4×d)=0.01L/(4×d)・・・(12)
従って、線径0.6mmの線材を使用した場合の支点間距離Lが25mmの3点曲げ試験の押し込み量は、式(12)より2.6mmとなる。なお、3点曲げ試験時の曲率半径は式(4)より30mmとなる。
(実施例2)
次に請求項7乃至16記載の発明を実施例2、3、4、5により説明する。
Niを51.0mol%含み、残部Tiと不可避不純物とからなるTi−Ni合金鋳塊を熱間加工、冷間伸線(中間焼鈍を含む)、40%の減面率での仕上げ冷間伸線を行い、線径0.6mmの線材を作製した。この線材を張力150N/mmと一定とした表3に示す条件で熱処理して供試材を作製した。この供試材を用い、1%の曲げひずみ時の縦弾性係数Eとカテーテル用ガイドワイヤの要求特性である真直度、プッシャビリティー、トルク伝達性および残留ひずみを測定し、その結果を表3の本発明例のNo.5〜No.15に記した。従来例No.100として、表2の本発明例No.1の線径0.6mmの線材を温度400℃で60分間、張力なしの条件で熱処理した従来のTi−Ni系超弾性合金線材を作製し、同様に各特性を測定し表3に記した。
熱処理温度や時間が本発明の範囲から外れる条件で熱処理した供試材を作製して同様に各特性を測定したが、熱処理温度が低すぎたり高すぎたりすると75000N/mm以上の大きな縦弾性係数を得ることができなかった。また、熱処理時間が範囲外の時間で行われた場合では、75000N/mm以上の縦弾性係数を有する高剛性Ti−Ni系超弾性合金線材は得られたが、カテーテル用ガイドワイヤ芯材や携帯電話機用アンテナ線芯材にとって重要な特性である真直度、トルク伝達性や形状復元性が劣ってしまい、これらの用途には利用できなかった。
真直度は、図2に示す垂下法により測定した。
図2で、長さ方向が、床面に対して垂直に成るように支持したSUS製チューブ3(内径0.63mm、外径0.75mm、長さ50mm)に、長さ1500mmの供試材1を固定し、前記供試材1の先端位置と完全に真直な線材の先端位置との床面に平行な距離を真直度測定チャート4で測定した。
プッシャビリティーは押込み性であり、プッシャビリティーの評価は、図3に示すウエーブ状のポリエチレンチューブ5(内径3mm、外径4mm)に供試材1を通した際の通過した供試材の長さLsとポリエチレンチューブの長さLpとの比Ls/Lpで評価した。Ls/Lpが1.0以上を「◎」、0.9〜1.0を「○」、0.7〜0.9を「△」、0.7未満を「×」とした。
トルク伝達性は、パイプ中の線材の一端に所定条件の捻りを付与した時の他端の追従角度で、具体的には図4に示す直径127mmのループ状にしたポリエチレンチューブ5(内径3mm、外径4mm)に通した供試材1の一端を90°ねじった時の他端の追従角度を測定して求めた。追従角度が85°以上の場合を「◎」、85°〜80°の場合を「○」、80°〜75°の場合を「△」とし、75°未満を「×」で評価した。図4において、6aは駆動側ロータリーエンコーダー、6bは追従側ロータリーエンコーダー、7は駆動部を表す。
残留ひずみは、JIS H7103−2002に基づいて、試験温度23℃で、4%のひずみまでの引張試験を行い、その残留ひずみを測定した。残留ひずみが0.3%以下の場合を「◎」、0.3〜0.4%の場合を「○」、0.4〜0.5%の場合を「△」、0.5%を超える場合を「×」とした。
(実施例3)
Niを51.0mol%含み、残部Tiと不可避不純物とからなるTi−Ni合金鋳塊を熱間加工、冷間伸線(中間焼鈍を含む)および40%の減面率での仕上げ冷間伸線を行い、線径0.6mmの線材を作製した。この線材を表4の張力を変えた条件で熱処理して供試材を作製した。この供試材を用いて実施例1と同様に、各特性を測定し、結果を表4の本発明例のNo.16〜No.18に記した。
なお、熱処理時に付加する張力が弱い場合は、前記熱処理時間と同じように75000N/mm以上の縦弾性係数を有する高剛性Ti−Ni系超弾性合金線材は得られたが、カテーテル用ガイドワイヤ芯材や携帯電話機用アンテナ芯材にとって重要な特性である真直度、トルク伝達性や形状復元性が低下してしまい利用できない、また張力を強く付加すると、縦弾性係数のみならず真直度、プッシャビリティーや形状復元性などの特性が大きく低下してしまった。
(実施例4)
表5の合金組成のTi−Ni合金鋳塊を熱間加工、冷間伸線(中間焼鈍を含む)および40%の減面率での仕上げ冷間伸線を行い、線径0.6mmの線材を作製した。この線材に、温度が620℃、時間が1分間、張力が150N/mmの条件で熱処理して供試材を作製した。この供試材を用いて実施例1と同様に、各特性を測定し、結果を表5の本発明例のNo.19〜No.21に記した。
比較に合金組成が本発明範囲外であるTi−50.3mol%Ni合金とTi−52.5mol%Niを前記製造条件で供試材の作製を行い各特性の測定を行ったが、Ti−52.5mol%Ni合金材は、加工が困難で供試材を作製できなかった。また、Ti−50.3mol%Ni合金材では、計算により求めた縦弾性係数として満足な結果が得られなかった。
(実施例5)
Niを51.0mol%含み、残部Tiと不可避不純物とからなるTi−Ni合金鋳塊を熱間加工、冷間伸線(中間焼鈍を含む)、40%の減面率での仕上げ冷間伸線を行い、線径0.3mmの線材を作製した。この線材に、温度が620℃、時間が1分間、張力が150N/mmの条件で熱処理し、本発明の高剛性ガイドワイヤ芯材を作製した。
従来例として、前記線径0.3mmの線材を、400℃の温度で60分間、張力なしの条件で熱処理した従来の超弾性型ガイドワイヤ芯材を作製した。更に、縦弾性係数が140000N/mmのステンレス線材と前記従来の超弾性型ガイドワイヤ芯材からなる線径0.3mmの複合型ガイドワイヤ芯材を作製した。
前記ガイドワイヤ芯材を用いて、曲げ剛性、プッシャビリティー、および残留ひずみを測定した。
結果を表6の本発明例のNo.22、従来例のNo.101、No.102に記した。
曲げ剛性は、前記3点曲げ試験法により求めた縦弾性係数から前記(5)式を用いて算出した。
Figure 2005131358
Figure 2005131358
Figure 2005131358
Figure 2005131358
Figure 2005131358
表2〜5から明らかなように、本発明例No.1〜No.4はいずれも、縦弾性係数が75000N/mm以上もしくは、縦弾性係数が80000N/mm以上と高く、更に本発明例No.5〜No.21も縦弾性係数が高くプッシャビリティーに優れているのが判る。又、真直度、トルク伝達性および形状復元性に関しても良好な特性を示している。
表6からわかるように、カテーテル用ガイドワイヤ芯材として本発明例No.22の高剛性ガイドワイヤ芯材は、従来例No.101の従来の超弾性型ガイドワイヤ芯材に比べて、曲げ剛性率が50%近く向上しており、プッシャビリティーも優れ、更に形状復元性に劣る従来例No.102の複合型ガイドワイヤと比べても、カテーテル用ガイドワイヤ芯材として有用であることがわかる。
3点曲げ試験法の説明図である。 真直度の測定方法の説明図である。 プッシャビリティーの測定方法の説明図である。 トルク伝達性の測定方法の説明図である。
符号の説明
1 供試材
2 金属性支点
3 SUS製チューブ
4 真直度測定チャート
5 ポリエチレンチューブ
6a 駆動側ロータリーエンゴーダー
6b 追従側ロータリーエンコーダー
7 駆動部

Claims (16)

  1. Ti−Ni系合金からなる超弾性線材において、1%の曲げひずみを付加した時の縦弾性係数Eを曲げモーメントM、線径dと1%曲げひずみを付加した時の曲率半径rとからなる式(6)を用いて計算により求めた値が75000N/mm以上の曲げ剛性を有することを特徴とするTi−Ni系超弾性合金線材。
    E=Mr/(πd/64) (6)
  2. Niを50.5から52.0mol%含み、残部Tiと不可避不純物からなるTi−Ni系合金からなる超弾性線材において、1%の曲げひずみを付加した時の縦弾性係数Eを曲げモーメントM、線径dと1%曲げひずみを付加した時の曲率半径rとからなる式(6)を用いて計算により求めた値が75000N/mm以上の曲げ剛性を有することを特徴とするTi−Ni系超弾性合金線材。
    E=Mr/(πd/64) (6)
  3. Niを50.1から52.0mol%含み、さらにCr、Fe、V、Co、Cuからなる群よりなる1種又は2種以上の元素を0.1から2.0%含み、残部Tiと不可避不純物からなるTi−Ni系合金からなる超弾性線材において、1%の曲げひずみを付加した時の縦弾性係数Eを、曲げモーメントM、線径dと1%曲げひずみを付加した時の曲率半径rとからなる式(6)を用いて計算により求めた値が75000N/mm以上の曲げ剛性を有することを特徴とするTi−Ni系超弾性合金線材。
    E=Mr/(πd/64) (6)
  4. 請求項1乃至請求項3記載の線材において、さらに4%までの引張歪みを付与した後、荷重除荷後の残留歪みが0.4%以下であることを特徴とするTi−Ni系超弾性合金線材。
  5. 請求項4記載の線材において、さらに長さ1500mmの線材の真直度が1.5mm以下であることを特徴とするTi−Ni系超弾性合金線材。
  6. 請求項5記載のTi−Ni系超弾性合金線材を用いたガイドワイヤで、さらにプッシャビリティー(Ls/Lpの比)が0.9以上であり、トルク伝達性が80°以上であることを特徴とするカテーテル用ガイドワイヤ。
  7. 線径が0.4mm以上1.0mm以下であることを特徴とする請求項6記載のカテーテル用ガイドワイヤ。
  8. 線径が0.3mm以上0.4mm未満であることを特徴とする請求項6記載のカテーテル用ガイドワイヤ。
  9. 請求項5記載のTi−Ni系超弾性合金線材を用いた、携帯電話機用アンテナ線芯材。
  10. 曲げモーメントM、線径dと1%曲げひずみを付加した時の曲率半径rとからなる式(6)から計算により求めた1%の曲げひずみを付加した時の縦弾性係数Eが、80000N/mm以上の曲げ剛性を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5記載のTi−Ni系超弾性合金線材。
    E=Mr/(πd/64) (6)
  11. 曲げモーメントM、線径dと1%曲げひずみを付加した時の曲率半径rとからなる式(6)から計算により求めた1%の曲げひずみを付加した時の縦弾性係数Eが、80000N/mm以上の曲げ剛性を有することを特徴とする請求項6乃至請求項8記載のカテーテル用ガイドワイヤ。
    E=Mr/(πd/64) (6)
  12. 曲げモーメントM、線径dと1%曲げひずみを付加した時の曲率半径rとからなる式(6)から計算により求めた1%の曲げひずみを付加した時の縦弾性係数Eが、80000N/mm以上の曲げ剛性を有することを特徴とする請求項9記載の携帯電話機用アンテナ線芯材。
    E=Mr/(πd/64) (6)
  13. 所定寸法に冷間伸線されたTi−Ni系合金線材を、一定張力を80〜200N/mmの範囲で付与しながら、550から680℃の温度で、1〜10分間連続で熱処理することを特徴とする請求項1乃至請求項5記載のTi−Ni系超弾性合金線材の製造方法。
  14. 所定寸法に冷間伸線されたTi−Ni系合金線材を、一定張力を80〜200N/mmの範囲で付与しながら、550から680℃の温度で、1〜10分間連続で熱処理することを特徴とする請求項6乃至請求項8記載のカテーテル用ガイドワイヤの製造方法。
  15. 所定寸法に冷間伸線されたTi−Ni系合金線材を、一定張力を80〜200N/mmの範囲で付与しながら、550から680℃の温度で、1〜10分間連続で熱処理することを特徴とする請求項9記載の携帯電話機用アンテナ線芯材の製造方法。
  16. 線径が0.3mm以上0.4mm未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項5記載のTi−Ni系超弾性合金線材。
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