JP3547366B2 - 医療用ガイドワイヤに用いられる広ひずみ範囲高弾性Ni−Ti系合金ワイヤの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用ガイドワイヤに用いられる広ひずみ範囲高弾性Ni−Ti系合金ワイヤの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
医療用ガイドワイヤは、例えば、治療または検査を行うためのカテーテル(細径チューブ)を血管内に案内し患部に留置するために用いられる。従って前記ガイドワイヤには、カテーテルを分岐し蛇行する血管内に血管を傷つけることなく血管形状に順応して送り込めるよう柔軟性と形状復元性が要求される。そして、これらの特性は、近年、カテーテルが血管の末端に近いところまで導入されるようになり、益々強く要求されている。
従来、前記ガイドワイヤには、主にステンレス鋼線が用いられてきたが、ステンレス鋼線はきつく曲がった血管内を通すと永久変形を起こして、線が曲がったままになってしまい、それ以上先に送り込めなくなり、また再挿入もできなくなるという問題がある。またステンレス鋼線は1.5%のひずみで破断し(図2e参照)信頼性に劣る。
【0003】
このため、近年、Ni−Ti系合金の超弾性を利用した超弾性型ワイヤ(特公平2−24550号公報、特公平2−24548号公報、特公平2−24549号公報)、或いはNi−Ti系合金の加工硬化型ワイヤ(特公平6−83726号公報)が提案された。
前記超弾性型ワイヤは、図2dにその応力−ひずみ曲線を示すように、応力誘起マルテンサイト変態によって生じた変形が除荷時に逆変態によって元の形状に戻る性質を利用したもので、従来のステンレス鋼線に比べて非常にしなやかであり、かつ形状復元性が大きい特長(超弾性)を有している。
しかし、前記超弾性型ワイヤは、図2dに示したように、降伏点Fを有し、これを超えるとそれ以上ひずみを負荷しても応力が増加しないためプッシャビリティに劣り、血管の末端に近いところまでワイヤを送り込むことができず、また手元の回転がワイヤ先端に伝わり難く操縦性が悪い(トルク伝達性が悪い)という問題がある。
【0004】
また、冷間加工後低温熱処理を行う加工硬化型ワイヤは、加工率35〜50%のNiTi系合金線に型付処理(350〜450℃で10〜30秒間保持)を施して真直度を高めたもので、図2cにその応力−ひずみ曲線を示す。この加工硬化型ワイヤは、応力差H(ここでは、応力−ひずみ曲線における荷重付加時と除荷時のひずみ2%における応力差を示す)が大きく、また型付処理では十分な真直度が得られないためトルク伝達性に劣るという問題がある。一般に、応力ヒステリシスとは、所定荷重まで荷重を負荷したのち、徐々に荷重を除荷したときの応力−ひずみ曲線の形状のことを言うが、Ni−Ti系合金の場合には、実用的な観点から便宜的に応力−ひずみ曲線における荷重負荷時と除荷時の所定ひずみにおける応力差に着目し、このことを応力ヒステリシスと称することもあり、本発明では、ひずみ2%での応力ひずみ曲線における荷重負荷時と除荷時の応力差を、応力ヒステリシス評価パラメータ、即ち応力差Hと定義する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなことから、本発明者等は、鋭意研究を進めて、応力誘起マルテンサイト変態による超弾性を示さず、広いひずみ範囲に渡って高弾性を示す、プッシャビリティやトルク伝達性などに優れた、全く新しいメカニズムに基づく医療用ガイドワイヤを先に提案した(特願平10−316690号公報)。本発明は医療用ガイドワイヤに用いられる広ひずみ範囲高弾性Ni−Ti系合金ワイヤの製造方法の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、医療用ガイドワイヤの構成要素として用いられるNi−Ti系合金ワイヤの製造方法であって、冷間加工上がりのNi−Ti系合金ワイヤに18kgf/mm2以上の張力を掛けつつ、図1のA(100℃,17.0%)、 B (200℃,2.5%)、 C (260℃,2.5%)、 D (275℃,35.0%)、 E (100℃,35.0%)、A(100℃,17.0%)の点を順に結ぶ線内(斜線部分)のねじり剪断ひずみと温度の条件範囲で機械的矯正加工を施すことを特徴とする医療用ガイドワイヤに用いられる広ひずみ範囲高弾性Ni−Ti系合金ワイヤの製造方法である。
【0007】
請求項2記載の発明は、Ni−Ti系合金ワイヤが、Niを50.2〜51.5at%含有し、残部がTiからなる合金であることを特徴とする請求項1記載の医療用ガイドワイヤに用いられる広ひずみ範囲高弾性Ni−Ti系合金ワイヤの製造方法である。
【0008】
請求項3記載の発明は、Ni−Ti系合金ワイヤが、Niを49.8〜51.5at%含有し、さらにCr、Fe、V、Al、Cu、Co、Moの中から1種または2種以上を0.1〜2.0at%含有し、残部がTiからなる合金であることを特徴とする請求項1記載の医療用ガイドワイヤに用いられる広ひずみ範囲高弾性Ni−Ti系合金ワイヤの製造方法である。
【0009】
請求項4記載の発明は、Ni−Ti系合金ワイヤが、Niを49.0〜51.0at%、Cuを5〜12at%含有し、さらにCr、Fe、V、Al、Co、Moの中から1種または2種以上を0.1〜2.0at%含有し、残部がTiからなる合金であることを特徴とする請求項1記載の医療用ガイドワイヤに用いられる広ひずみ範囲高弾性Ni−Ti系合金ワイヤの製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で製造される広ひずみ範囲高弾性Ni−Ti系合金ワイヤは、医療用ガイドワイヤの少なくとも一部に用いられる。
【0011】
本発明により製造される医療用ガイドワイヤは、引張試験における応力−ひずみ曲線が
(1)応力誘起マルテンサイト変態を示さない、(2)ひずみ4%における見かけ上の弾性率Eが3000kg/mm2以上、(3)ひずみを4%まで負荷後、除荷したときの残留ひずみZが0.15%以下の条件を満足し、かつ(4)真直度が垂下法で20mm/1.5m以下の広ひずみ範囲高弾性Ni−Ti系合金ワイヤである。
特には、前記(1)〜(4)の条件に加えて、引張試験における応力−ひずみ曲線が(5)ひずみ4%まで降伏点Fや変曲点を持たず応力が単調に増加する、(6)ひずみを4%まで負荷後、除荷したときのひずみ2%における負荷時と除荷時の応力差Hが15kg/mm2以下の条件を満足する広ひずみ範囲高弾性Ni−Ti系合金ワイヤである。
【0012】
前記降伏点F、見かけ上の弾性率E、応力差H、残留ひずみZは、図3に示されるものである。応力差Hは図2に示すようにワイヤのタイプにより相異なるものである。
【0013】
本発明により製造される医療用ガイドワイヤは、プッシャビリティやトルク伝達性などの特性に優れる。そして、これらの特性はガイドワイヤの引張試験での応力−ひずみ曲線における降伏点Fの有無、弾性率Eの大小、応力ヒステリシス評価パラメータHの大小、残留ひずみZの大小、ワイヤの真直度などに左右される。即ち、表1に示すように、降伏点がなく、弾性率が大きい程プッシャビリティが良好になりガイドワイヤを血管の末端近くまで送り込むことができる。また残留ひずみが小さい程弾性的で再挿入が可能になる。さらに応力ヒステリシス評価パラメータ(応力差)Hが小さい程トルク伝達性が良好になりガイドワイヤの操縦性が向上する。さらに真直度の高いものはトルク伝達性が一段と向上する。
【0014】
【表1】
【0015】
本発明では、Ni−Ti系合金鋳塊に熱間加工および冷間伸線加工を施して線材とし、これに機械的矯正加工を施して医療用ガイドワイヤを製造する。前記機械的矯正加工は、得られる医療用ガイドワイヤの特性に最も大きく影響する重要な工程であり、機械的矯正加工を施さない伸線加工上がりの線材では、真直度が低く、また図2bにその応力−ひずみ曲線を示すように、4%のひずみを負荷すると残留ひずみZが大きくなり、きつく曲がった血管を通すと永久変形を起こして、それ以上奥へ挿入できなくなるなどの問題があり、医療用としては使用できない。
【0016】
本発明において、前記機械的矯正加工は、線材に張力を掛けつつ、所定温度でねじり剪断ひずみを負荷して施される。本発明において、前記張力を18kgf/mm2以上とし、前記ねじり剪断ひずみを図1の斜線部分内の温度条件で負荷する理由は、前記張力が18kgf/mm2未満でも、またねじり剪断ひずみを図1の斜線部分外の温度条件で施しても、前記段落番号0007、0016に記載した(1)〜(4)または前記段落番号0008、0017に記載した(1)〜(6)の特性が得られないためである。前記ねじり加工時のワイヤ温度は大変重要な因子であり、275℃より高温では応力誘起マルテンサイト変態による降伏点が出現してプッシャビリティやトルク伝達性などの特性が低下してしまい、100℃未満では十分な真直度が得られない。前記冷間伸線加工では適宜中間焼鈍が施されるが、最終の冷間伸線加工率は15〜60%にするのが、機械的矯正加工による効果が十分に得られ望ましい。なお、本発明で施す機械的矯正加工と、線材に数kgf/mm2オーダーの張力を掛けつつ行う通常の低温焼鈍処理とは、負荷するひずみの大きさや応力誘起マルテンサイト変態の有無により区別される。即ち、前者は応力誘起マルテンサイト変態を生じないのに対し、後者は応力誘起マルテンサイト変態を生じる点で相違する。
【0017】
本発明では、実質的に記憶処理工程を含まず、従って応力誘起マルテンサイト変態による超弾性を示さない医療用ガイドワイヤが得られ、本発明はこれまでにない全く新しいメカニズムに基づく製造方法である。本発明により、前記(1)〜(4)または(1)〜(6)の特性を満足する医療用ガイドワイヤが得られる理由は、伸線加工時に導入される転位は線の長さ方向に配向し、機械的矯正加工時に導入される転位は線の径方向(曲げ、ねじり方向)に配向し、両転位は共存が可能で、機械的矯正加工後において転位密度が著しく増大するためである。
【0018】
本発明で得られる医療用ガイドワイヤは、従来の超弾性型ワイヤとは異なり、ガイドワイヤの先端部を60℃のお湯につけるだけで血管内に送り込み易い形状に手で自由に塑性変形させることができる。
【0019】
以下に、本発明の製造方法を図を参照して具体的に説明する。図4は本発明で施す機械的矯正加工方法の第1の実施形態を示す縦断面説明図である。この方法は、線材1の上端を固定具2に固定し、下端に錘3を取付けて線材1を張力を掛けて垂直に保持し、この線材1の中間部分を熱処理槽4により所定温度に加熱しつつ、錘3を回転させて線材1に所定のねじり剪断ひずみを負荷する方法である。
【0020】
図5は本発明で施す機械的矯正加工方法の第2の実施形態を示す縦断面説明図である。この方法は、線材1の一端を固定具2に固定し、他端側をプーリー5に配し、その先に錘3を取付けて線材1を張力を掛けて水平に保持し、この線材1の中間部分を熱処理槽4により所定の温度に加熱しつつ、固定具2を回転させて線材1にねじり剪断ひずみを負荷する方法である。
【0021】
図6は本発明で施す機械的矯正加工方法の第3の実施形態を示す縦断面説明図である。この方法は、ボビン6に巻かれた線材1をピンチロール7により連続的に引き出し、熱処理槽4にて所定の温度に加熱しつつ、ボビン6を回転させて線材1にねじり剪断ひずみを負荷する方法で、量産を考慮したものである。
ねじり剪断ひずみを負荷された線材1はキャプスタン8に巻付けられ、次いでピンチロール9により引き出され所望の長さに切断される。線材1は切断せずに巻取っても良い。
【0022】
本発明では、Ni−Ti系合金ワイヤには、Niを50.2〜51.5at%含有し、残部がTiからなる合金、Niを49.8〜51.5at%含有し、さらにCr、Fe、V、Al、Cu、Co、Moの中から1種または2種以上を0.1〜2.0at%含有し残部がTiからなる合金、Niを49.0〜51.0at%、Cuを5〜12at%含有し、さらにCr、Fe、V、Al、Co、Moの中から1種または2種以上を0.1〜2.0at%含有し残部がTiからなる合金などが含まれる。
【0023】
【実施例】
以下に本発明を実施例により詳細に説明する。
(実施例1)
Niを51at%含有し残部がTiからなるNi−Ti系合金鋳塊に熱間加工および冷間伸線加工を施して直径0.35mmの線材とし、これを図6に示した方法により機械的矯正加工を施して医療用ガイドワイヤを製造した。前記冷間伸線加工では最終焼鈍後の伸線加工率は55%とし、前記機械的矯正加工では、張力は75kgf/mm2に設定し、ねじり剪断ひずみと温度は、両者の関係が図1に示す斜線部分内に納まるように設定した。
本発明の矯正加工条件を明確にするため、図1に、本発明の試料No.1〜12をプロットした。これら試料はすべて本発明規定条件(斜線部分内)にある。
【0024】
(実施例2)
Ni−Ti系合金鋳塊に、Ni−48.9at%Ti−0.2at%Cr合金、またはNi−50.0at%Ti−8.0at%Cu−0.2at%Fe合金を用いた他は、実施例1と同じ方法により医療用ガイドワイヤを製造した。
【0025】
(比較例1)
ねじり剪断ひずみと温度が図1に示す斜線部分外になるように設定した他は、実施例1と同じ方法によりガイドワイヤを製造した。
図1に、比較例の試料No.20をプロットした。試料No.20が本発明規定条件外(斜線部分外)にあることは明確である。
【0026】
実施例1、2、および比較例1で得られた各々のガイドワイヤについて、真直度、見かけ上の弾性率E、応力ヒステリシス評価パラメータ(応力差)H、残留ひずみZを測定した。前記真直度は、垂下法により測定した。即ち、図7に示すように長さ方向が床面に垂直になるように配置したSUS製チューブ(内径0.38mm、外径0.5mm、長さ50mm)10に、所定長さの試験線11の一端を固定し、試験線11の先端の位置と、完全に真直な線12の先端の位置との床面に平行な距離b(mm)を測定して判定した。医療用ガイドワイヤには操縦性(トルク伝達性)を考慮して、前記距離bが20mm以下になる真直度が要求される。結果を表2に示す。表2には矯正加工条件を併記した。また図8に真直度(距離b)とねじり剪断ひずみとの関係を示した。矯正加工条件のうちねじり剪断ひずみは線に与える回転数と、ねじりを与えられる線の長さとから計算により求めた。
【0027】
【表2】
【0028】
表2より明らかなように、本発明例のNo.1〜12は、いずれも真直度が高く(距離bが20mm以下)、引張試験での応力−ひずみ曲線が図2aに示したものと同じで前記(1)〜(4)の規定値を満足し、医療用ガイドワイヤとして有用である。これに対して比較例は、ねじり剪断ひずみと温度の関係が図1の斜線部分外であったため、No.13〜15ではいずれも残留ひずみZと応力ヒステリシス評価パラメータ(応力差)Hが大きくなり、真直度が低下し、No.16〜22ではいずれも真直度が低下し、医療用ガイドワイヤとして不適当である。図8から、真直度は、矯正加工時の温度が高温なほど、ねじり剪断ひずみが大きいほど向上することが判る。
【0029】
ここで、本発明例のNo.1について、示差走査熱測定(DSC)を高感度装置を用いて精密に行った。その結果、図10(a)に示すようにマルテンサイト相と母相間の変態を示す吸熱または発熱のピークは全く現れなかった。即ち、本発明のワイヤは応力誘起マルテンサイト変態が全く生じないことが確認された。同じ測定を、特公平6−83726号公報に記載された従来の加工硬化型ワイヤ(応力−ひずみ曲線が図2cのワイヤ)についても行ったが、図10(b)に示すようにブロードではあるが変態を示すピークが現れ、前記加工硬化型ワイヤには応力誘起マルテンサイト変態が生じることが確認された。つまり、本発明のワイヤは応力誘起マルテンサイト変態を全く示さず、従来の加工硬化型ワイヤは応力誘起マルテンサイト変態を示す。この点で両者は相違する。
【0030】
(実施例3)
Niを51at%含有し、残部がTiからなるNi−Ti系合金鋳塊に熱間加工と冷間伸線加工を順に施して直径0.35mmの線材とし、この線材に図6に示した方法により機械的矯正加工を施して医療用ガイドワイヤを製造した。前記冷間伸線加工では、最終焼鈍後の伸線加工率を55%とし、前記機械的矯正加工では、張力を18〜170kgf/mm2、温度を100または200℃、ねじり剪断ひずみを20または30%とした。
【0031】
(比較例2)
張力を18kgf/mm2未満とした他は、実施例2と同じ方法により医療用ガイドワイヤを製造した。
【0032】
実施例3および比較例2で得られた各々の医療用ガイドワイヤについて、真直度、見かけ上の弾性率E、応力ヒステリシス評価パラメータ(応力差)H、残留ひずみZを測定した。結果を表3に示す。表3には矯正加工条件を併記した。また図9に真直度(距離b)と張力の関係を示した。
【0033】
【表3】
【0034】
表3より明らかなように、本発明例のNo.31〜39は、いずれも、真直度が高く(距離bが20mm以下)、かつ引張試験での応力−ひずみ曲線が図2aに示したものと同じで前記(1)〜(4)の規定値を満足し、医療用ガイドワイヤとして有用である。これに対し比較例のNo.40〜42は矯正加工時の張力が低かったため、いずれも真直度が低くなり、医療用ガイドワイヤとして不適当である。図9から、真直度は矯正加工時の張力が18kgf/mm2未満(比較例)では低いが、18kgf/mm2以上(本発明例)になると急激に向上することが判る。また真直度は矯正加工時の張力が高いほど、また温度が高いほど向上することが判る。
【0035】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明では、Ni−Ti系合金ワイヤに、真直度を高めるための機械的矯正加工を、18kgf/mm2以上の張力を掛けつつ、図1のA(100℃,17.0%)、 B (200℃,2.5%)、 C (260℃,2.5%)、 D (275℃,35.0%)、 E (100℃,35.0%)、A(100℃,17.0%)の点を順に結ぶ線内(斜線部分)のねじり剪断ひずみと温度の条件範囲で機械的矯正加工を施すので、転位密度の増大が可能となり、プッシャビリティやトルク伝達性などに優れた医療用ガイドワイヤが製造される。依って、工業上顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で施す機械的矯正加工におけるねじり剪断ひずみと温度の条件範囲を示す図である。
【図2】(a)は本発明で製造される医療用ガイドワイヤの応力−ひずみ曲線図、(b)〜(e)は従来の医療用ガイドワイヤの応力−ひずみ曲線図である。
【図3】図2に示した応力−ひずみ曲線を説明するための補足図である。
【図4】本発明にて施す機械的矯正加工方法の第1の実施形態を示す縦断面説明図である。
【図5】本発明にて施す機械的矯正加工方法の第2の実施形態を示す縦断面説明図である。
【図6】本発明にて施す機械的矯正加工方法の第3の実施形態を示す縦断面説明図である。
【図7】医療用ガイドワイヤの真直度の求め方の説明図である。
【図8】真直度とねじり剪断ひずみとの関係図である。
【図9】真直度と張力との関係図である。
【図10】(a)は本発明の医療用ガイドワイヤの熱量変化図、(b)は従来の医療用ガイドワイヤの熱量変化図である。
【符号の説明】
1 線材
2 固定具
3 錘
4 熱処理槽
5 プーリー
6 ボビン
7 ピンチロール
8 キャプスタン
9 ピンチロール
10 SUS製チューブ
11 真直度の試験線
12 完全に真直な線
b 真直度を示す距離
Claims (4)
- 医療用ガイドワイヤの構成要素として用いられるNi−Ti系合金ワイヤの製造方法であって、冷間加工上がりのNi−Ti系合金ワイヤに18kgf/mm2以上の張力を掛けつつ、図1のA(100℃,17.0%)、B(200℃,2.5%)、C(260℃,2.5%)、D(275℃,35.0%)、E(100℃,35.0%)、A(100℃,17.0%)の点を順に結ぶ線内(斜線部分)のねじり剪断ひずみと温度の条件範囲で機械的矯正加工を施すことを特徴とする医療用ガイドワイヤに用いられる広ひずみ範囲高弾性Ni−Ti系合金ワイヤの製造方法。
- Ni−Ti系合金ワイヤが、Niを50.2〜51.5at%含有し、残部がTiからなる合金であることを特徴とする請求項1記載の医療用ガイドワイヤに用いられる広ひずみ範囲高弾性Ni−Ti系合金ワイヤの製造方法。
- Ni−Ti系合金ワイヤが、Niを49.8〜51.5at%含有し、さらにCr、Fe、V、Al、Cu、Co、Moの中から1種または2種以上を0.1〜2.0at%含有し、残部がTiからなる合金であることを特徴とする請求項1記載の医療用ガイドワイヤに用いられる広ひずみ範囲高弾性Ni−Ti系合金ワイヤの製造方法。
- Ni−Ti系合金ワイヤが、Niを49.0〜51.0at%、Cuを5〜12at%含有し、さらにCr、Fe、V、Al、Co、Moの中から1種または2種以上を0.1〜2.0at%含有し、残部がTiからなる合金であることを特徴とする請求項1記載の医療用ガイドワイヤに用いられる広ひずみ範囲高弾性Ni−Ti系合金ワイヤの製造方法。
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