JP2009077567A - 高熱伝導コイルおよびそれに使用される含浸用黒色ワニス - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた放熱性を有する高熱伝導コイルおよび絶縁性に優れた硬化物を与える高熱伝導コイル用黒色ワニスを提供すること。
【解決手段】熱伝導率が0.3W/mK以上の黒色ワニス硬化物からなる絶縁層が形成された高熱伝導コイルおよび(A)熱硬化性樹脂、(B)黒色顔料および(C)反応性希釈剤を含む組成物からなる高熱伝導コイル用黒色ワニスである。
【選択図】なし
【解決手段】熱伝導率が0.3W/mK以上の黒色ワニス硬化物からなる絶縁層が形成された高熱伝導コイルおよび(A)熱硬化性樹脂、(B)黒色顔料および(C)反応性希釈剤を含む組成物からなる高熱伝導コイル用黒色ワニスである。
【選択図】なし
Description
本発明はハイブリッドカーや電気自動車等に搭載されるモーターや発電機等に組み込まれる高熱伝導コイルおよび同高熱伝導コイルに使用される含浸用黒色ワニスに関するものである。さらに詳しくは、硬化物の熱伝導率が高く放熱性に優れた高熱伝導コイルおよび同高熱伝導コイルに使用される含浸用黒色ワニスに関するものである。
従来、モーターや発電機等に組み込まれるコイルにおいては、巻線を保護するためにワニスによる絶縁処理が行なわれている。この絶縁処理は主目的である巻線と鉄芯(コア)またはスロット壁および巻線相互間の絶縁の他、巻線の物理的支持、巻線からの発熱のスロット壁への伝達、巻線ワイヤーのピンホールや加工傷の被覆等さまざまの機能をコイルに付与するために行なわれている。
近年、環境対策のためにハイブリッドカーや電気自動車等が注目されており、これらに搭載されるモーターや発電機等に組み込まれるコイルの高出力、小型化に伴って従来品以上に巻線からの発熱対策が重要になってきている。巻線からの発熱対策としてコイルからいかに短時間で放熱させるかが重要であるが、従来のコイルにおいて絶縁等に用いられていたワニスの硬化物の熱伝導率は0.2W/mK以下であったため放熱するには不十分であった。
これを改善するために、水酸化アルミニウム等の無機充填剤を多量に含む熱硬化性樹脂組成物で巻線をモールドしたり(特許文献1)、特定の無機充填剤を多量に含む不飽和ポリエステル樹脂組成物で巻線をモールドすることにより、コイルからの放熱性を向上させることが提案されている(特許文献2、3)。
特開2002−97377号公報
特開2001−234050号公報
特開2004−91515号公報
近年、環境対策のためにハイブリッドカーや電気自動車等が注目されており、これらに搭載されるモーターや発電機等に組み込まれるコイルの高出力、小型化に伴って従来品以上に巻線からの発熱対策が重要になってきている。巻線からの発熱対策としてコイルからいかに短時間で放熱させるかが重要であるが、従来のコイルにおいて絶縁等に用いられていたワニスの硬化物の熱伝導率は0.2W/mK以下であったため放熱するには不十分であった。
これを改善するために、水酸化アルミニウム等の無機充填剤を多量に含む熱硬化性樹脂組成物で巻線をモールドしたり(特許文献1)、特定の無機充填剤を多量に含む不飽和ポリエステル樹脂組成物で巻線をモールドすることにより、コイルからの放熱性を向上させることが提案されている(特許文献2、3)。
しかしながら、車載用のモーターや発電機等に組み込まれるコイルは高出力化が進み、高電圧下で使用されるため、巻数が多く、かつ、線積率が高くなるように設計されている。無機充填剤を多量に含む上記提案のワニス(樹脂、無機充填剤および溶剤および/または反応性希釈剤を主成分として含む)では巻線への含浸状態が悪くコイルの信頼性が低下しまうという問題がある。このため、ワニスの巻線への含浸性がよく、かつ、高い熱伝導性および高い信頼性のある絶縁層を形成することのできるワニスが求められている。
本発明は、このような状況下で提案されたものであって、優れた放熱性を有する高熱伝導コイルおよび高熱伝導コイルに使用される含浸用黒色ワニスを提供することを目的とするものである。
本発明は、このような状況下で提案されたものであって、優れた放熱性を有する高熱伝導コイルおよび高熱伝導コイルに使用される含浸用黒色ワニスを提供することを目的とするものである。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(6)
(1)熱伝導率が0.3W/mK以上の黒色ワニス硬化物からなる絶縁層が形成された高熱伝導コイル、
(2)ATF(オートマチックトランスミッションフィールド)用である上記(1)に記載の高熱伝導コイル、
(3)前記黒色ワニス硬化物が、(A)熱硬化性樹脂、(B)黒色顔料および(C)反応性希釈剤を含む組成物から形成された硬化物である上記(1)または(2)のいずれかに記載の高熱伝導コイル、
(4)前記(A)熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂またはエポキシエステル樹脂である上記(3)に記載の高熱伝導コイル、
(5)前記(B)黒色顔料が金属酸化物である上記(3)または(4)に記載の高熱伝導コイル、および
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の高熱伝導コイルに使用されるコイル含浸用黒色ワニスを提供するものである。
(1)熱伝導率が0.3W/mK以上の黒色ワニス硬化物からなる絶縁層が形成された高熱伝導コイル、
(2)ATF(オートマチックトランスミッションフィールド)用である上記(1)に記載の高熱伝導コイル、
(3)前記黒色ワニス硬化物が、(A)熱硬化性樹脂、(B)黒色顔料および(C)反応性希釈剤を含む組成物から形成された硬化物である上記(1)または(2)のいずれかに記載の高熱伝導コイル、
(4)前記(A)熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂またはエポキシエステル樹脂である上記(3)に記載の高熱伝導コイル、
(5)前記(B)黒色顔料が金属酸化物である上記(3)または(4)に記載の高熱伝導コイル、および
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の高熱伝導コイルに使用されるコイル含浸用黒色ワニスを提供するものである。
本発明の黒色ワニスは巻線への含浸性がよく、したがって形成される絶縁層にはボイドが発生することがないので熱伝導性が高く、この絶縁層を有する本発明の高熱伝導コイルは優れた放熱性を有し、高い信頼性を有している。
以下、本発明の高熱伝導コイルおよび高熱伝導コイルに使用される含浸用黒色ワニスを詳細に説明する。
本発明の高熱伝導コイルは主としてATF(オートマチックトランスミッションフィールド)用として、具体的には、トランスミッションオイル中で用いられるものであり、通常、定格電圧500V以上、好ましくは、600V以上で通電しながら使用される機器、具体的には、ハイブリッド車や電気自動車用モーター等に適用される。通電時に発生した熱はオイルを伝わって外部に放熱される。
本発明の高熱伝導コイルは主としてATF(オートマチックトランスミッションフィールド)用として、具体的には、トランスミッションオイル中で用いられるものであり、通常、定格電圧500V以上、好ましくは、600V以上で通電しながら使用される機器、具体的には、ハイブリッド車や電気自動車用モーター等に適用される。通電時に発生した熱はオイルを伝わって外部に放熱される。
本発明の高熱伝導コイルは黒色ワニスから形成された硬化物からなる絶縁層を有しており、この硬化物の熱伝導率は0.3W/mK以上である。熱伝導率はJIS R1611に規定されたレーザーフラッシュ法により25℃において測定された数値である。
本発明の高熱伝導コイルの巻線へ含浸させるために用いられる黒色ワニスはJIS C2105に準拠して25℃において測定された粘度が0.5〜20Pa・sであることが好ましく、1.0〜15Pa・sであることがさらに好ましい。粘度を0.5Pa・s以上とすることにより、コイルエンドへの黒色ワニスの付着量が少なくなるのを防止することができ、20Pa・s以下とすることにより、黒色ワニスが含浸不良を起こして絶縁層にボイドが発生するのを防止することができる。
本発明の高熱伝導コイルに絶縁層を形成させるために用いられる黒色ワニスとしては、溶剤型ワニス、無溶剤型ワニスのいずれでも使用できるが、付着量を考慮すると無溶剤型ワニスを使用するのが好ましい。
用いられる溶剤型ワニスは、(A)熱硬化性樹脂、(B)黒色顔料および(C)反応性希釈剤を含む組成物であることが好ましく、(A)成分の熱硬化性樹脂としては不飽和ポリエステル樹脂またはエポキシエステル樹脂が好ましく用いられる。
本発明の高熱伝導コイルの巻線へ含浸させるために用いられる黒色ワニスはJIS C2105に準拠して25℃において測定された粘度が0.5〜20Pa・sであることが好ましく、1.0〜15Pa・sであることがさらに好ましい。粘度を0.5Pa・s以上とすることにより、コイルエンドへの黒色ワニスの付着量が少なくなるのを防止することができ、20Pa・s以下とすることにより、黒色ワニスが含浸不良を起こして絶縁層にボイドが発生するのを防止することができる。
本発明の高熱伝導コイルに絶縁層を形成させるために用いられる黒色ワニスとしては、溶剤型ワニス、無溶剤型ワニスのいずれでも使用できるが、付着量を考慮すると無溶剤型ワニスを使用するのが好ましい。
用いられる溶剤型ワニスは、(A)熱硬化性樹脂、(B)黒色顔料および(C)反応性希釈剤を含む組成物であることが好ましく、(A)成分の熱硬化性樹脂としては不飽和ポリエステル樹脂またはエポキシエステル樹脂が好ましく用いられる。
熱硬化性樹脂として用いられる不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和二塩基酸を含む酸成分とアルコール成分とのエステル化反応によって製造することができる。
酸成分としては、アジピン酸等の脂肪族飽和二塩基酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の脂肪族不飽和二塩基酸またはそれらの無水物、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族二塩基酸、テトラヒドロフタル酸や同無水物等の脂環式不飽和二塩基酸、ヘキサヒドロフタル酸や同無水物等の脂環式飽和二塩基酸が挙げられる。一塩基酸としては、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸等複数種の脂肪酸が混合したものが挙げられる。これらの二塩基酸の中で脂肪族不飽和二塩基酸または芳香族不飽和二塩基酸を必須成分として使用し、適宜、脂肪族飽和二塩基酸や脂環式二塩基酸が混合して使用される。
酸成分としては、アジピン酸等の脂肪族飽和二塩基酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の脂肪族不飽和二塩基酸またはそれらの無水物、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族二塩基酸、テトラヒドロフタル酸や同無水物等の脂環式不飽和二塩基酸、ヘキサヒドロフタル酸や同無水物等の脂環式飽和二塩基酸が挙げられる。一塩基酸としては、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸等複数種の脂肪酸が混合したものが挙げられる。これらの二塩基酸の中で脂肪族不飽和二塩基酸または芳香族不飽和二塩基酸を必須成分として使用し、適宜、脂肪族飽和二塩基酸や脂環式二塩基酸が混合して使用される。
アルコール成分としては、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,6−シクロへキサンジメタノール、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテルなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリス−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールモノアリルエーテルなどの三価以上のアルコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独又は2種類以上混合して使用することができる。
上記の二塩基酸とアルコールをCOOH基/OH基のモル比が約1/1になるように仕込んで反応させることにより不飽和ポリエステル樹脂が得られる。
上記の二塩基酸とアルコールをCOOH基/OH基のモル比が約1/1になるように仕込んで反応させることにより不飽和ポリエステル樹脂が得られる。
一方、前記エポキシエステル樹脂は、酸成分とエポキシ成分をエステル化触媒により反応させて得られるものである。ここで用いる酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸などの不飽和一塩基酸が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。さらに必要に応じてフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、アジピン酸などの二塩基酸を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
エポキシ成分としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであればよく、分子構造、分子量などは特に制限されることなく、各種のものを広く使用することができる。具体的には、ビスフェノール型、ノボラック型、ビフェニル型などの芳香族基を有するエポキシ樹脂、ポリカルボン酸をグリシジルエステル化したエポキシ樹脂、シクロヘキサン誘導体とエポキシが縮合した脂環式のエポキシ樹脂などが挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
上記の二塩基酸とエポキシ樹脂をCOOH基/エポキシ基のモル比が約1/1になるように仕込んで反応させることによりエポキシエステル樹脂が得られる。
エポキシ成分としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであればよく、分子構造、分子量などは特に制限されることなく、各種のものを広く使用することができる。具体的には、ビスフェノール型、ノボラック型、ビフェニル型などの芳香族基を有するエポキシ樹脂、ポリカルボン酸をグリシジルエステル化したエポキシ樹脂、シクロヘキサン誘導体とエポキシが縮合した脂環式のエポキシ樹脂などが挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
上記の二塩基酸とエポキシ樹脂をCOOH基/エポキシ基のモル比が約1/1になるように仕込んで反応させることによりエポキシエステル樹脂が得られる。
本発明で用いる黒色ワニスには、上記(A)成分である不飽和ポリエステル樹脂又はエポキシエステル樹脂と共に(B)成分として黒色顔料が配合される。黒色顔料としては、金属酸化物および/または金属硫化物が使用できるが、熱伝導性の観点から金属酸化物が好ましい。
金属酸化物としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マンガン、モリブデン、銀、錫などの酸化物が挙げられるが、好ましくは、酸化ニッケル、酸化鉄(Fe3O4)、マンガン−亜鉛系フェライトのような単一の酸化物、ダイピロキサイド(酸化銅、酸化鉄、酸化マグネシウムのような複合酸化物)、またはそれらの混合物が用いられる。
ちなみに、黒色顔料の中で最も一般的に使用されているカーボンブラックを、単独で上記の黒色顔料よりかなり多量に配合したワニスから形成される硬化物の熱伝導率は0.3W/mK以上にはならない。また、後で述べるシリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等の絶縁性を有する無機材料の粉末だけでも硬化物の熱伝導率を0.3W/mK以上とすることができるが、硬化物の放熱性が低く、信頼性のあるコイルは得られない。
金属酸化物としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マンガン、モリブデン、銀、錫などの酸化物が挙げられるが、好ましくは、酸化ニッケル、酸化鉄(Fe3O4)、マンガン−亜鉛系フェライトのような単一の酸化物、ダイピロキサイド(酸化銅、酸化鉄、酸化マグネシウムのような複合酸化物)、またはそれらの混合物が用いられる。
ちなみに、黒色顔料の中で最も一般的に使用されているカーボンブラックを、単独で上記の黒色顔料よりかなり多量に配合したワニスから形成される硬化物の熱伝導率は0.3W/mK以上にはならない。また、後で述べるシリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等の絶縁性を有する無機材料の粉末だけでも硬化物の熱伝導率を0.3W/mK以上とすることができるが、硬化物の放熱性が低く、信頼性のあるコイルは得られない。
本発明の黒色ワニスは(A)成分および(B)成分とともに、(C)成分として反応性希釈剤を含んでいる。
反応性希釈剤としては、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどの芳香族系のモノマー、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアルキレンオキサイドのジアクリレート誘導体、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアクリル系モノマーまたはオリゴマー等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
反応性希釈剤としては、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどの芳香族系のモノマー、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアルキレンオキサイドのジアクリレート誘導体、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアクリル系モノマーまたはオリゴマー等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本発明で用いる黒色ワニスにおいては、(A)成分および(C)成分からなる樹脂成分を硬化させるために、通常有機過酸化物が配合される。この有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、アシルパーオキサイド、クメンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどが挙げられるが、これらに限定するものではない。また、これらは単独又は2種類以上混合して使用することができる。有機過酸化物は(A)成分および(C)成分の合計量100質量部に対して、通常、0.5〜5質量部、好ましくは1〜3質量部用いられる。有機過酸化物を0.5質量部以上とすることにより、黒色ワニスの適度な硬化性が確保され、また、有機過酸化物を5質量部以下とすることにより、黒色ワニスのポットライフが良好となり、黒色ワニスから形成される硬化物がもろくなるのを防止するとともに、硬化物から過剰の有機過酸化物がブリードするのを防止することができる。
本発明で用いる黒色ワニスには、硬化を促進させるために金属石鹸を配合してもよい。この金属石鹸としては、例えばナフテン酸又はオクチル酸の金属塩等が挙げられる。金属塩を構成する金属としてはコバルト、亜鉛、ジルコニウム、マンガン、カルシウム等が挙げられる。これらの金属塩は単独または2種以上混合して使用することができる。金属石鹸は有機過酸化物100質量部に対して、通常、0.1〜1質量部、好ましくは0.2〜0.8質量部用いられる。金属石鹸の配合量を0.1質量部以上とすることにより、黒色ワニスの適度な硬化性が確保され、また、金属石鹸を1質量部以下とすることにより、良好なポットライフを有する黒色ワニスが得られ、硬化物から過剰の金属石鹸がブリードするのを防止することができる。
本発明で用いる黒色ワニスには、さらに重合禁止剤を配合してもよい。この重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、メトキノン、パラターシャリーブチルカテコール、ピロガロール等のフェノール系化合物が挙げられ、これらは単独または2種以上混合して使用することができる。重合禁止剤の配合量は(A)成分および(C)成分の合計量100質量部に対して通常、0.01〜0.1質量部、好ましくは0.02〜0.08質量部、さらに好ましくは0.02〜0.04質量部である。0.01質量部以上であれば、黒色ワニスの硬化性が良好となり、0.1質量部以下であればポットライフが良好となる。
本発明の黒色ワニスには、さらに、黒色顔料の使用量を軽減するとともに、熱伝導性を確保する目的で、絶縁性を有する無機材料の粉末を配合することもできる。この絶縁性を有する無機材料の粉末としては、シリカ粉末、アルミナ粉末、マグネシア粉末、チタニア粉末などの前記金属酸化物以外の金属酸化物粉末、水酸化アルミニウム粉末、水酸化マグネシウム粉末などの金属水酸化物粉末、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム等が使用できる。また、沈降防止剤を混合させることもできる。前記したように、絶縁性を有する無機材料の粉末だけでも硬化物の熱伝導率を0.3W/mK以上とすることができるが、硬化物の放熱性が低く、信頼性のあるコイルは得られない。
絶縁性を有する無機材料の粉末の配合量は(A)成分および(C)成分の合計量100質量部に対して通常、5〜50質量部、好ましくは10〜40質量部である。
絶縁性を有する無機材料の粉末の配合量は(A)成分および(C)成分の合計量100質量部に対して通常、5〜50質量部、好ましくは10〜40質量部である。
次に、コイルの巻線へ黒色ワニスを含浸させ、次いで硬化させて絶縁層を形成させるための方法について説明する。
絶縁層を形成させるための方法は以下に示す工程、すなわち、
(1)前記成分(A)、(B)、(C)および所望により各種添加成分を含む黒色ワニスを調合する工程、
(2)コイルを予熱するコイル予熱工程、
(3)予熱されたコイルの巻線に、前記工程(1)で調合した黒色ワニスを含浸させるワニス含浸(浸漬含浸または滴下含浸)工程、及び
(4)前記工程(3)において巻線に含浸させた黒色ワニスを加熱して硬化させるワニス硬化工程を有する。
絶縁層を形成させるための方法は以下に示す工程、すなわち、
(1)前記成分(A)、(B)、(C)および所望により各種添加成分を含む黒色ワニスを調合する工程、
(2)コイルを予熱するコイル予熱工程、
(3)予熱されたコイルの巻線に、前記工程(1)で調合した黒色ワニスを含浸させるワニス含浸(浸漬含浸または滴下含浸)工程、及び
(4)前記工程(3)において巻線に含浸させた黒色ワニスを加熱して硬化させるワニス硬化工程を有する。
本発明はまた、前述した本発明の高熱伝導コイルに使用されるコイル含浸用黒色ワニスをも提供する。
本発明で使用されるコイル含浸用黒色ワニスにおいては、前記(A)成分の熱硬化性樹脂と(C)成分の反応性希釈剤の含有割合は当該黒色ワニスの25℃における粘度を0.5〜20Pa・s程度に調製する観点から、質量比で40/60〜60/40の範囲であることが好ましく、45/55〜55/45の範囲であることがより好ましい。また、(B)成分の黒色顔料の含有量は当該黒色ワニスの熱伝導率を0.3W/mK以上にする観点から、前記(A)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して0.05〜5質量部であることが好ましく、0.1〜3質量部あることがより好ましい。
本発明で使用されるコイル含浸用黒色ワニスにおいては、前記(A)成分の熱硬化性樹脂と(C)成分の反応性希釈剤の含有割合は当該黒色ワニスの25℃における粘度を0.5〜20Pa・s程度に調製する観点から、質量比で40/60〜60/40の範囲であることが好ましく、45/55〜55/45の範囲であることがより好ましい。また、(B)成分の黒色顔料の含有量は当該黒色ワニスの熱伝導率を0.3W/mK以上にする観点から、前記(A)成分と(C)成分との合計量100質量部に対して0.05〜5質量部であることが好ましく、0.1〜3質量部あることがより好ましい。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
<実施例1>
温度計、撹拌機、原料仕込みノズルを備えた反応容器中にテトラヒドロフタル酸6質量部、イソフタル酸13質量部、無水マレイン酸11質量部、プロピレングリコール22質量部、ハイドロキノン0.01質量部を加え、180〜220℃で反応させて酸価10のポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂にハイドロキノン0.01質量部とスチレン48質量部を加えて均一な溶液になるまで撹拌しながら混合して樹脂溶液を製造した。
この樹脂溶液にダイピロキサイド#9550を2質量部、シリカ18質量部を加えて均一な溶液になるまで撹拌しながら混合して黒色ワニスを製造した。
温度計、撹拌機、原料仕込みノズルを備えた反応容器中にテトラヒドロフタル酸6質量部、イソフタル酸13質量部、無水マレイン酸11質量部、プロピレングリコール22質量部、ハイドロキノン0.01質量部を加え、180〜220℃で反応させて酸価10のポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂にハイドロキノン0.01質量部とスチレン48質量部を加えて均一な溶液になるまで撹拌しながら混合して樹脂溶液を製造した。
この樹脂溶液にダイピロキサイド#9550を2質量部、シリカ18質量部を加えて均一な溶液になるまで撹拌しながら混合して黒色ワニスを製造した。
次に、ステータコアにボビンを介して絶縁被覆を有するステータ巻線を巻線加工し、ステータ巻線付きステータコアを製造した。なお、絶縁被覆を有するステータ巻線は直径が0.8mmのものを用い、ステータコアのスロット内の占積率が70%となるように調整した。製造されたステータ巻線付きステータコア全体の質量は20kgであった。
さらに、図1に示すようにコイルを水平に保持して、両方のコイルエンド部分に上記ワニスを滴下含浸させ、ついで、150℃で0.5時間加熱してワニスを硬化させて絶縁層を形成させることにより、本発明の高熱伝導コイルを得た。絶縁層およびコイルの特性を測定した結果を併せて表1に示す。
使用した材料の特性や品番等は以下の通りである。
《黒色顔料》
ダイピロキサイド[#9550、大日精化(株)製、平均粒径1μm]
マンガン−亜鉛系フェライト[BSF−547、戸田工業(株)製、平均粒径
3.2μm]
酸化ニッケル[Ni2O3、三津和化学試薬(株)製、平均粒径1μm]
《比較用黒色顔料》
カーボンブラック[CF9、三菱化学(株)製、平均粒径40nm]
《白色顔料》
酸化チタン[CR−EL、石原産業(株)製、平均粒径0.2μm]
水酸化アルミニウム[H−42、昭和電工(株)製、平均粒径1μm]
シリカ[クリスタライト5X、龍森(株)製、平均粒径1μm]
炭酸カルシウム[ソフトン2200、白石カルシウム(株)製、平均粒径1μm]
アルミナ[A32、日本軽金属(株)製、平均粒径1μm]
《黒色顔料》
ダイピロキサイド[#9550、大日精化(株)製、平均粒径1μm]
マンガン−亜鉛系フェライト[BSF−547、戸田工業(株)製、平均粒径
3.2μm]
酸化ニッケル[Ni2O3、三津和化学試薬(株)製、平均粒径1μm]
《比較用黒色顔料》
カーボンブラック[CF9、三菱化学(株)製、平均粒径40nm]
《白色顔料》
酸化チタン[CR−EL、石原産業(株)製、平均粒径0.2μm]
水酸化アルミニウム[H−42、昭和電工(株)製、平均粒径1μm]
シリカ[クリスタライト5X、龍森(株)製、平均粒径1μm]
炭酸カルシウム[ソフトン2200、白石カルシウム(株)製、平均粒径1μm]
アルミナ[A32、日本軽金属(株)製、平均粒径1μm]
各特性は下記の方法で測定した。
1)熱伝導率:ワニスをブリキ板に塗布して硬化させることを複数回繰り返して厚さ1mmの塗膜とし、レーザーフラッシュ法により測定した。
2)曲げ強度:JISC2105に準拠して測定した。
3)弾性率:JISC2105に準拠して測定した。
4)通電評価:交流三相コイル(径280mm、積厚50mm)をATFオイル5kg中、80Aで4分間通電後のコイル温度を測定した。
5)信頼性評価:コイルを−60〜200℃で1000サイクル処理後のクラック発生の有無を目視観察して評価した。OKはクラック発生無し。NGはクラック発生あり。
6)含浸性:硬化物をカットして断面を目視観察して評価した。○は95%以上含浸、△は90〜95%未満含浸、×は90%未満含浸
1)熱伝導率:ワニスをブリキ板に塗布して硬化させることを複数回繰り返して厚さ1mmの塗膜とし、レーザーフラッシュ法により測定した。
2)曲げ強度:JISC2105に準拠して測定した。
3)弾性率:JISC2105に準拠して測定した。
4)通電評価:交流三相コイル(径280mm、積厚50mm)をATFオイル5kg中、80Aで4分間通電後のコイル温度を測定した。
5)信頼性評価:コイルを−60〜200℃で1000サイクル処理後のクラック発生の有無を目視観察して評価した。OKはクラック発生無し。NGはクラック発生あり。
6)含浸性:硬化物をカットして断面を目視観察して評価した。○は95%以上含浸、△は90〜95%未満含浸、×は90%未満含浸
<実施例2〜7および比較例1〜6>
表1に示す配合組成にした以外は実施例1と同様にして本発明の高熱伝導コイルおよび比較用のコイルを得て絶縁層およびコイルの特性を測定した。結果を併せて表1に示す。
実施例および比較例で製造された各コイルのサイズ等は以下の通りである。
コイルの種類:ステーター(固定子)
巻線方式:乱巻き
コア直径:250〜350mm
積厚:30〜100mm
質量:5〜30kg
表1に示す配合組成にした以外は実施例1と同様にして本発明の高熱伝導コイルおよび比較用のコイルを得て絶縁層およびコイルの特性を測定した。結果を併せて表1に示す。
実施例および比較例で製造された各コイルのサイズ等は以下の通りである。
コイルの種類:ステーター(固定子)
巻線方式:乱巻き
コア直径:250〜350mm
積厚:30〜100mm
質量:5〜30kg
表1から明らかなように、黒色の金属酸化物を含まないワニスを用いた比較例2〜6における硬化物では熱伝導率が0.3W/mK以上であるにもかかわらず放熱性が劣っている(通電評価における温度が高い)。また、代表的な黒色顔料であるカーボンブラックを含み、黒色の金属酸化物を含まないワニスを用いた比較例7における硬化物では熱伝導率が0.3W/mK未満であるため放熱性に劣っている。黒色顔料等を何も含まないワニスを用いた比較例1における硬化物では熱伝導率も低く、かつ、機械的強度においても劣っている。
本発明の高熱伝導コイルは放熱性に優れたおり、ハイブリッドカーや電気自動車等に搭載されるモーターや発電機等に組み込めば信頼性の高いコイルとして使用することができる。
Claims (6)
- 熱伝導率が0.3W/mK以上の黒色ワニス硬化物からなる絶縁層が形成された高熱伝導コイル。
- ATF(オートマチックトランスミッションフィールド)用である請求項1に記載の高熱伝導コイル。
- 前記黒色ワニス硬化物が、(A)熱硬化性樹脂、(B)黒色顔料および(C)反応性希釈剤を含む組成物から形成された硬化物である請求項1または2に記載の高熱伝導コイル。
- 前記(A)熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂またはエポキシエステル樹脂である請求項3に記載の高熱伝導コイル。
- 前記(B)黒色顔料が金属酸化物である請求項3または4に記載の高熱伝導コイル。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の高熱伝導コイルに使用されるコイル含浸用黒色ワニス。
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JP2007245009A JP2009077567A (ja) | 2007-09-21 | 2007-09-21 | 高熱伝導コイルおよびそれに使用される含浸用黒色ワニス |
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Citations (3)
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---|---|---|---|---|
JP2003089710A (ja) * | 2001-09-18 | 2003-03-28 | Kyocera Chemical Corp | 含浸用不飽和ポリエステル樹脂組成物 |
JP2004357432A (ja) * | 2003-05-29 | 2004-12-16 | Toyota Motor Corp | 電動機ユニットおよびこれを備える車両 |
JP2005006389A (ja) * | 2003-06-11 | 2005-01-06 | Mitsubishi Electric Corp | 絶縁コイルの製造方法 |
-
2007
- 2007-09-21 JP JP2007245009A patent/JP2009077567A/ja active Pending
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