JP2009062518A - 熱硬化性樹脂組成物およびそれを用いて製造されたコイル - Google Patents
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Abstract
【課題】危険物に該当せず、安全性が高く、輸送、保管、取り扱いが容易で、コイルの含浸用途に好適な熱硬化性樹脂組成物およびそれを用いて製造されたコイルを提供すること。
【解決手段】少なくとも反応性モノマーを含み、非水性で、かつ引火点を持たない熱硬化性樹脂組成物、および該熱硬化性樹脂組成物により含浸処理してなるコイルである。
【選択図】なし
【解決手段】少なくとも反応性モノマーを含み、非水性で、かつ引火点を持たない熱硬化性樹脂組成物、および該熱硬化性樹脂組成物により含浸処理してなるコイルである。
【選択図】なし
Description
本発明は、自動車、車両、電気機器などに搭載されるモーターや発電機等に組み込まれるコイルの含浸用として好適な熱硬化性樹脂組成物およびそれを用いて製造されたコイルに関する。
従来、モーターや発電機等に組み込まれるコイルにおいては、巻線を保護するために絶縁ワニスによる絶縁処理が行われている。この絶縁処理によって、巻線の絶縁の他、巻線の物理的支持、巻線からの発熱のスロット壁への伝達、ワイヤーのピンホールや加工傷の被覆などの様々な機能がコイルに付与されている。
上記絶縁ワニスとしては、コイルへの含浸性を向上させるために、ポリエステル樹脂などを反応性希釈剤や低沸点溶剤で希釈し、低粘度化したものが使用されている。しかしながら、このような絶縁ワニスは危険物であるため、輸送や保管時における容量が制限され、また、作業環境において防爆仕様を必要とするなどコスト的にも大きな負担となっている。さらに、モーターや発電機等に組み込まれるコイルに絶縁ワニスを含浸させ、硬化させる際の乾燥工程では、絶縁ワニスに含まれる揮発成分による防爆を防止するため、コイルの処理数量が限られている。
これらの問題を改善するために、水溶性ワニスが開発されているが、水溶性ワニスは硬化物性能が不十分であるため、特定の用途にしか使用できないという問題がある。また、溶媒である水の蒸発潜熱が大きいために乾燥工程では莫大なエネルギー損失を生じるという問題がある。
一方、粉体塗料をポリマーに分散したコイル含浸用電気絶縁材料(例えば、特許文献1参照)や無溶剤形ワニスなども開発されているが、粉体塗料ではコイルへの含浸が不十分であり、また、上記無溶剤形ワニスは、無溶剤であっても危険物に分類されるものであった。
上記絶縁ワニスとしては、コイルへの含浸性を向上させるために、ポリエステル樹脂などを反応性希釈剤や低沸点溶剤で希釈し、低粘度化したものが使用されている。しかしながら、このような絶縁ワニスは危険物であるため、輸送や保管時における容量が制限され、また、作業環境において防爆仕様を必要とするなどコスト的にも大きな負担となっている。さらに、モーターや発電機等に組み込まれるコイルに絶縁ワニスを含浸させ、硬化させる際の乾燥工程では、絶縁ワニスに含まれる揮発成分による防爆を防止するため、コイルの処理数量が限られている。
これらの問題を改善するために、水溶性ワニスが開発されているが、水溶性ワニスは硬化物性能が不十分であるため、特定の用途にしか使用できないという問題がある。また、溶媒である水の蒸発潜熱が大きいために乾燥工程では莫大なエネルギー損失を生じるという問題がある。
一方、粉体塗料をポリマーに分散したコイル含浸用電気絶縁材料(例えば、特許文献1参照)や無溶剤形ワニスなども開発されているが、粉体塗料ではコイルへの含浸が不十分であり、また、上記無溶剤形ワニスは、無溶剤であっても危険物に分類されるものであった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、危険物に該当せず、安全性が高く、輸送、保管、取り扱いが容易で、コイルの含浸用途に好適な熱硬化性樹脂組成物およびそれを用いて製造されたコイルを提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の性状を有する熱硬化性樹脂組成物が、危険物に該当せず、コイル含浸用として優れた性能を有することを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、以下の熱硬化性樹脂組成物およびコイルを提供するものである。
1.少なくとも反応性モノマーを含み、非水性で、かつ引火点を持たないことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
2.ゲル化点が、反応性モノマーの引火点よりも低い上記1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
3.熱硬化性樹脂組成物における樹脂成分が、不飽和ポリエステル樹脂および/またはエポキシエステル樹脂である上記1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
4.ゲル化点が170℃未満である上記1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
5.分解温度が140℃未満の有機化酸化物を含む上記1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
6.反応性モノマー含有量が、組成物全量基準で30〜90質量%である上記1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
7.反応性モノマーのうち80〜100質量%が引火点140℃以上250℃未満のものである上記1〜6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
8.さらに金属石鹸を含む上記1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
9.上記1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物により含浸処理してなるコイル。
10.上記1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物をコイルに含浸させ、乾燥、硬化させてなることを特徴とするコイルの製造方法。
すなわち本発明は、以下の熱硬化性樹脂組成物およびコイルを提供するものである。
1.少なくとも反応性モノマーを含み、非水性で、かつ引火点を持たないことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
2.ゲル化点が、反応性モノマーの引火点よりも低い上記1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
3.熱硬化性樹脂組成物における樹脂成分が、不飽和ポリエステル樹脂および/またはエポキシエステル樹脂である上記1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
4.ゲル化点が170℃未満である上記1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
5.分解温度が140℃未満の有機化酸化物を含む上記1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
6.反応性モノマー含有量が、組成物全量基準で30〜90質量%である上記1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
7.反応性モノマーのうち80〜100質量%が引火点140℃以上250℃未満のものである上記1〜6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
8.さらに金属石鹸を含む上記1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
9.上記1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物により含浸処理してなるコイル。
10.上記1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物をコイルに含浸させ、乾燥、硬化させてなることを特徴とするコイルの製造方法。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、引火点を持たないので、危険物に該当せず、このため輸送や保管時における容量に制限がない。したがって、製造設備や保管設備における取り扱い数量を大幅に増加させることができるため、コイル製品の生産性やコストの低下を図ることができる。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、コイル含浸用として優れた性能を有するので、従来のワニス含浸処理方法により、熱硬化性樹脂組成物をコイルに充分に含浸させることができる。このため、熱硬化性樹脂組成物の硬化物内にボイドの発生がなく、信頼性の高いコイルを効率的に製造することができる。
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物およびそれを用いて製造されたコイルについて説明する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも反応性モノマーを含み、非水性で、かつ引火点を持たないものであり、コイルの含浸用として好適である。
本発明において、熱硬化性樹脂組成物が非水性ということは、それをコイル用ワニスとして使用する際、水または水溶性の有機溶媒を含む水を分散媒とする水分散性または水溶性のワニスとは異なり、反応性モノマーが分散媒としての役割を果たす、すなわち、熱硬化性樹脂組成物が実質的に水分を含まないことを意味する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物における樹脂成分としては、硬化性および硬化物性能の観点から、不飽和ポリエステル樹脂またはエポキシエステル樹脂が好ましい。
上記不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和二塩基酸を含む酸成分と多価アルコール成分とのエステル化反応によって製造することができる。
酸成分としては、アジピン酸等の脂肪族飽和二塩基酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の脂肪族不飽和二塩基酸またはそれらの無水物、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族二塩基酸、テトラヒドロフタル酸や同無水物等の脂環式不飽和二塩基酸、ヘキサヒドロフタル酸や同無水物等の脂環式飽和二塩基酸が挙げられる。一塩基酸としては、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸等複数種の脂肪酸が混合したものが挙げられる。これらの二塩基酸の中で脂肪族不飽和二塩基酸または芳香族二塩基酸を必須成分として使用し、適宜、脂肪族飽和二塩基酸や脂環式二塩基酸が混合して使用される。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも反応性モノマーを含み、非水性で、かつ引火点を持たないものであり、コイルの含浸用として好適である。
本発明において、熱硬化性樹脂組成物が非水性ということは、それをコイル用ワニスとして使用する際、水または水溶性の有機溶媒を含む水を分散媒とする水分散性または水溶性のワニスとは異なり、反応性モノマーが分散媒としての役割を果たす、すなわち、熱硬化性樹脂組成物が実質的に水分を含まないことを意味する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物における樹脂成分としては、硬化性および硬化物性能の観点から、不飽和ポリエステル樹脂またはエポキシエステル樹脂が好ましい。
上記不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和二塩基酸を含む酸成分と多価アルコール成分とのエステル化反応によって製造することができる。
酸成分としては、アジピン酸等の脂肪族飽和二塩基酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の脂肪族不飽和二塩基酸またはそれらの無水物、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族二塩基酸、テトラヒドロフタル酸や同無水物等の脂環式不飽和二塩基酸、ヘキサヒドロフタル酸や同無水物等の脂環式飽和二塩基酸が挙げられる。一塩基酸としては、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸等複数種の脂肪酸が混合したものが挙げられる。これらの二塩基酸の中で脂肪族不飽和二塩基酸または芳香族二塩基酸を必須成分として使用し、適宜、脂肪族飽和二塩基酸や脂環式二塩基酸が混合して使用される。
アルコール成分としては、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタジエンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,6−シクロヘキサンジメタノール、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテルなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリス−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルなどの三価以上のアルコールが挙げられる。これらは単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
上記の二塩基酸とアルコールをCOOH基/OH基のモル比が約1/1になるように仕込んで反応させることにより不飽和ポリエステル樹脂が得られる。本発明においては、樹脂成分として、上記不飽和ポリエステル樹脂のみを用いてもよく、エポキシポリエステル樹脂のみを用いてもよく、あるいはそれらを併用してもよい。
上記の二塩基酸とアルコールをCOOH基/OH基のモル比が約1/1になるように仕込んで反応させることにより不飽和ポリエステル樹脂が得られる。本発明においては、樹脂成分として、上記不飽和ポリエステル樹脂のみを用いてもよく、エポキシポリエステル樹脂のみを用いてもよく、あるいはそれらを併用してもよい。
また、上記エポキシエステル樹脂は、酸成分とエポキシ成分をエステル化触媒により反応させて得られるものである。ここで用いる酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸などの不飽和一塩基酸が挙げられる。これらは単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。さらに必要に応じてフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸およびアジピン酸などの二塩基酸を、単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。
エポキシ成分としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであればよく、分子構造、分子量などは特に制限されることなく、各種のものを広く使用することができる。具体的には、ビスフェノール型、ノボラック型、ビフェニル型などの芳香族基を有するエポキシ樹脂、ポリカルボン酸をグリシジルエステル化したエポキシ樹脂、シクロヘキサン誘導体とエポキシが縮合した脂環式のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらは単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
上記の二塩基酸とエポキシ樹脂をCOOH基/エポキシ基のモル比が約1/1になるように仕込んで反応させることによりエポキシエステル樹脂が得られる。
上記の二塩基酸とエポキシ樹脂をCOOH基/エポキシ基のモル比が約1/1になるように仕込んで反応させることによりエポキシエステル樹脂が得られる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれる反応性モノマーは、反応性希釈剤としての役割をも果たす。反応性モノマーとしては、不飽和基を1分子中に1個以上有するモノマーであれば制限なく使用することができる。反応性モノマーは、熱硬化性樹脂組成物における含有量の80〜100質量%が引火点140℃以上250℃未満のものであることが好ましい。
このような引火点を有する反応性モノマーとして具体的には、芳香族系アクリルモノマー、アルキルメタクリレート誘導体、アルキルアクリレート誘導体およびポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート誘導体などが挙げられる。ポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート誘導体としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートおよびポリプロピレングリコールジメタクリレートなどが挙げられ、テトラエチレングリコールジメタクリレートおよびトリエチレングリコールジメタクリレートなどが好ましい。これらの反応性モノマーは単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
反応性モノマーの含有量は、熱硬化性樹脂組成物全量基準で通常30〜90質量%程度、好ましくは37〜70質量%である。反応性モノマーの含有量が30質量%以上であると、熱硬化性樹脂組成物の粘度が適正となるためコイル含浸性が良好であり、また、90質量%以下であると、硬化物の機械強度が十分なものとなる。
このような引火点を有する反応性モノマーとして具体的には、芳香族系アクリルモノマー、アルキルメタクリレート誘導体、アルキルアクリレート誘導体およびポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート誘導体などが挙げられる。ポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート誘導体としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートおよびポリプロピレングリコールジメタクリレートなどが挙げられ、テトラエチレングリコールジメタクリレートおよびトリエチレングリコールジメタクリレートなどが好ましい。これらの反応性モノマーは単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
反応性モノマーの含有量は、熱硬化性樹脂組成物全量基準で通常30〜90質量%程度、好ましくは37〜70質量%である。反応性モノマーの含有量が30質量%以上であると、熱硬化性樹脂組成物の粘度が適正となるためコイル含浸性が良好であり、また、90質量%以下であると、硬化物の機械強度が十分なものとなる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、そのゲル化点が、それに含まれる反応性モノマーの引火点よりも低いことが好ましい。このような条件が満たされると、本発明の熱硬化性樹脂組成物をコイルに含浸し、乾燥、硬化工程における熱処理時に、爆発の危険性が大幅に低下する。このため、コイルの処理量を大幅に向上させることができる。熱硬化性樹脂組成物のゲル化点が、反応性モノマーの引火点よりも低ければ、引火点140℃未満の反応性モノマーを、反応性モノマー含有量の20質量%を限度として混合して使用することができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物のゲル化点と反応性モノマーの引火点との差は、5℃以上であることが好ましく、より好ましくは10〜60℃である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ゲル化点が170℃未満であることが好ましく、140℃未満であることがより好ましい。ゲル化点が170℃未満であれば引火点がなくなり、消防法上非危険物に分類される。
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、そのゲル化点を反応性モノマーの引火点より低いものとする観点から、熱硬化性樹脂組成物にさらに分解温度が140℃未満の有機過酸化物及び/または金属石鹸を含むことが好ましく、両者を併用することがより好ましい。
有機過酸化物及び金属石鹸を含むことにより、反応性モノマーの反応開始温度を低下させ、熱硬化性樹脂組成物のゲル化を促進させることができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ゲル化点が170℃未満であることが好ましく、140℃未満であることがより好ましい。ゲル化点が170℃未満であれば引火点がなくなり、消防法上非危険物に分類される。
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、そのゲル化点を反応性モノマーの引火点より低いものとする観点から、熱硬化性樹脂組成物にさらに分解温度が140℃未満の有機過酸化物及び/または金属石鹸を含むことが好ましく、両者を併用することがより好ましい。
有機過酸化物及び金属石鹸を含むことにより、反応性モノマーの反応開始温度を低下させ、熱硬化性樹脂組成物のゲル化を促進させることができる。
有機過酸化物の分解温度は140℃未満であることが好ましく、このような有機過酸化物としては、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイドおよびジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、アシルパーオキサイドおよびクメンパーオキサイド、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサンなどのパーオキシケタール、t-ブチルパーオキシベンゾエートなどのパーオキシエステルなど、さらには、いわゆる常温硬化型の有機過酸化物、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイドなどが挙げられる。これらは単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
これらの中で、ジクミルパーオキサイドやメチルエチルケトンパーオキサイドが好ましい。
この有機過酸化物の含有量は、樹脂成分100質量部当たり0.001質量部以上5.0質量部未満が好ましく、より好ましくは0.01〜2.0質量部である。有機過酸化物の含有量が0.001質量部以上であると、熱硬化性樹脂組成物において、引火点よりもゲル化点が低くなるため、熱硬化性樹脂組成物が引火する危険性がない。また、5.0質量部未満であると、ゲル化点が低くなりすぎることがないので、コイルへ含浸している間に熱硬化性樹脂組成物がゲル化することがない。したがって、コイルへの含浸が十分なものとなる。
これらの中で、ジクミルパーオキサイドやメチルエチルケトンパーオキサイドが好ましい。
この有機過酸化物の含有量は、樹脂成分100質量部当たり0.001質量部以上5.0質量部未満が好ましく、より好ましくは0.01〜2.0質量部である。有機過酸化物の含有量が0.001質量部以上であると、熱硬化性樹脂組成物において、引火点よりもゲル化点が低くなるため、熱硬化性樹脂組成物が引火する危険性がない。また、5.0質量部未満であると、ゲル化点が低くなりすぎることがないので、コイルへ含浸している間に熱硬化性樹脂組成物がゲル化することがない。したがって、コイルへの含浸が十分なものとなる。
本発明で使用される金属石鹸は「油性ドライヤー」の名称で市販されているものが用いられる。金属石鹸の具体例としては、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、ナフテン酸マンガンなどがあり、2種類以上混合して使用してもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて絶縁粉末を配合することができる。この絶縁粉末としては、シリカ粉末、アルミナ粉末、マグネシア粉末およびチタニア粉末などの黒色以外の金属酸化物粉末、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物粉末、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素および硫酸バリウムなどが挙げられる。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、ナフテン酸またはオクチル酸の金属塩などの硬化促進剤、ハイドロキノン、メトキノン、p−t−ブチルカテコールおよびピロガロールなどの重合禁止剤、着色剤および沈降防止剤などを配合することもできる。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、ナフテン酸またはオクチル酸の金属塩などの硬化促進剤、ハイドロキノン、メトキノン、p−t−ブチルカテコールおよびピロガロールなどの重合禁止剤、着色剤および沈降防止剤などを配合することもできる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、JIS C2105に準拠して25℃において測定された粘度が0.5〜30dPa・sであることが好ましく、1〜17dPa・sであることがより好ましい。この粘度を0.5dPa・s以上とすることにより、コイルエンドへの熱硬化性樹脂組成物の付着量が少なくなるのを防止することができ、30dPa・s以下とすることにより、熱硬化性樹脂組成物の含浸不良が抑制されるので、熱硬化性樹脂組成物の層内におけるボイドの発生を防止することができる。
本発明は、熱硬化性樹脂組成物をコイルに含浸させ、乾燥、硬化させてなることを特徴とするコイルの製造方法をも提供する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物をコイルに含浸させる方法としては、特に限定されるものではなく、従来方法を適用することができる。図面を参照して従来の含浸方法の一例を説明する。図1は、熱硬化性樹脂組成物によるコイルの含浸処理方法を説明する図である。
図1に示すように、コイル1が水平になるように内部治具(チャック)5で保持する。両方のコイルエンド部分2には、熱硬化性樹脂組成物4をノズル3から滴下する滴下含浸法で処理を行う。巻線相互間および巻線とスロット壁(不図示)の間に熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、次いで、120〜180℃で15〜60分間、好ましくは140〜160℃で20〜40分間加熱して乾燥硬化させ、絶縁層(不図示)を形成させる。なお、図1において、コイル1は矢印6の方向に回転している。また、7は鉄心(コア)である。このような含浸処理により、熱硬化性樹脂組成物が十分に含浸したコイルを得ることができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物をコイルに含浸させる方法としては、特に限定されるものではなく、従来方法を適用することができる。図面を参照して従来の含浸方法の一例を説明する。図1は、熱硬化性樹脂組成物によるコイルの含浸処理方法を説明する図である。
図1に示すように、コイル1が水平になるように内部治具(チャック)5で保持する。両方のコイルエンド部分2には、熱硬化性樹脂組成物4をノズル3から滴下する滴下含浸法で処理を行う。巻線相互間および巻線とスロット壁(不図示)の間に熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、次いで、120〜180℃で15〜60分間、好ましくは140〜160℃で20〜40分間加熱して乾燥硬化させ、絶縁層(不図示)を形成させる。なお、図1において、コイル1は矢印6の方向に回転している。また、7は鉄心(コア)である。このような含浸処理により、熱硬化性樹脂組成物が十分に含浸したコイルを得ることができる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
フラスコ中にテトラヒドロフタル酸6g、イソフタル酸13g、無水マレイン酸11g、プロピレングリコール22gおよびハイドロキノン0.01gを加え、180〜220℃で反応させ、酸価10mgKOH/gのポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂にハイドロキノン0.01gを加え、樹脂Aを製造した。
この樹脂Aにトリエチレングリコールジメタクリレート(ブレンマーPDE150、日本油脂社製)44gとトリメチロールプロパンメタクリレート(SR−350、サートマー社製)を2.5g加え、さらにナフテン酸コバルト(Co-NAPHTHENATE、大日本インキ化学工業社製の金属石鹸)0.1gとジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂社製)0.03gを加え、均一になるまで攪拌混合して熱硬化性樹脂組成物を得た。
次に、ステータコアにボビンを介して絶縁被覆を有するステータ巻線を巻線加工し、ステータ巻線付きステータコアを製造した。なお、絶縁被覆を有するステータ巻線は直径が0.8mmのものを用い、ステータコアのスロット内におけるステータ巻線の占有率は70%となるように調整した。製造されたステータ巻線付きステータコア全体の質量は20kgfであった。
実施例1
フラスコ中にテトラヒドロフタル酸6g、イソフタル酸13g、無水マレイン酸11g、プロピレングリコール22gおよびハイドロキノン0.01gを加え、180〜220℃で反応させ、酸価10mgKOH/gのポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂にハイドロキノン0.01gを加え、樹脂Aを製造した。
この樹脂Aにトリエチレングリコールジメタクリレート(ブレンマーPDE150、日本油脂社製)44gとトリメチロールプロパンメタクリレート(SR−350、サートマー社製)を2.5g加え、さらにナフテン酸コバルト(Co-NAPHTHENATE、大日本インキ化学工業社製の金属石鹸)0.1gとジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂社製)0.03gを加え、均一になるまで攪拌混合して熱硬化性樹脂組成物を得た。
次に、ステータコアにボビンを介して絶縁被覆を有するステータ巻線を巻線加工し、ステータ巻線付きステータコアを製造した。なお、絶縁被覆を有するステータ巻線は直径が0.8mmのものを用い、ステータコアのスロット内におけるステータ巻線の占有率は70%となるように調整した。製造されたステータ巻線付きステータコア全体の質量は20kgfであった。
さらに、図1に示すように、コイル1を水平に保持して、両方のコイルエンド部分2には、熱硬化性樹脂組成物4をノズル3から滴下する滴下含浸法で処理を行った。巻線相互間および巻線とスロット壁の間に熱硬化性樹脂組成物を含浸させた。次いで、160℃で30分間加熱して乾燥硬化させて絶縁層を形成させることにより、熱硬化性樹脂組成物含浸コイルを得た。熱硬化性樹脂組成物組成物等の特性について下記の方法により評価した。結果を第1表に示す。
(1)引火点
反応性モノマーおよび熱硬化性樹脂組成物の引火点を、クリーブランド開放法により測定した。
(2)ゲル化点
クリーブランド開放法に従い、熱硬化性樹脂組成物がゲル化した温度をゲル化点とした。
(3)曲げ強度および弾性率
JIS C2105に準拠して測定した。
(4)乾燥個数
乾燥機一台当たりに収納することができた、熱硬化性樹脂組成物含浸コイルの個数を示す。熱硬化性樹脂組成物が非危険物である場合、多数のコイルを一度に乾燥させることができる。
反応性モノマーおよび熱硬化性樹脂組成物の引火点を、クリーブランド開放法により測定した。
(2)ゲル化点
クリーブランド開放法に従い、熱硬化性樹脂組成物がゲル化した温度をゲル化点とした。
(3)曲げ強度および弾性率
JIS C2105に準拠して測定した。
(4)乾燥個数
乾燥機一台当たりに収納することができた、熱硬化性樹脂組成物含浸コイルの個数を示す。熱硬化性樹脂組成物が非危険物である場合、多数のコイルを一度に乾燥させることができる。
実施例2〜9および比較例1〜4
第1表に示す配合成分を用い、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を調製し、これを用いて熱硬化性樹脂組成物含浸コイルを製造し、実施例1と同様の評価を行った。結果を第1表に示す。なお、実施例1で用いた配合成分以外の配合成分の商品名等は以下のとおりである。
なお、比較例1〜3においては、使用直前にジクミルパーオキサイドをワニス100gに対して0.03g添加して硬化物およびコイルを作製した。
第1表に示す配合成分を用い、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を調製し、これを用いて熱硬化性樹脂組成物含浸コイルを製造し、実施例1と同様の評価を行った。結果を第1表に示す。なお、実施例1で用いた配合成分以外の配合成分の商品名等は以下のとおりである。
なお、比較例1〜3においては、使用直前にジクミルパーオキサイドをワニス100gに対して0.03g添加して硬化物およびコイルを作製した。
(1)テトラエチレングリコールジメタクリレート:ブレンマーPDE200、日本油脂社製
(2)ポリエチレングリコールジアクリレート:ブレンマーADE200、日本油脂社製
(3)ポリプロピレングリコールジアクリレート:ブレンマーADP200、日本油脂社製
(4)フェノキシエチルアクリレート:ビスコート#192、大阪有機化学工業社製
(5)2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA):日本触媒化学社製
(6)スチレン:三菱化学社製
(2)ポリエチレングリコールジアクリレート:ブレンマーADE200、日本油脂社製
(3)ポリプロピレングリコールジアクリレート:ブレンマーADP200、日本油脂社製
(4)フェノキシエチルアクリレート:ビスコート#192、大阪有機化学工業社製
(5)2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA):日本触媒化学社製
(6)スチレン:三菱化学社製
本発明の熱硬化性樹脂組成物およびそれを用いて製造されたコイルは、自動車用、車両用、電気機器用全般に広く適用し得る。
1:コイル
2:コイルエンド部分
3:ノズル
4:熱硬化性樹脂組成物
2:コイルエンド部分
3:ノズル
4:熱硬化性樹脂組成物
Claims (10)
- 少なくとも反応性モノマーを含み、非水性で、かつ引火点を持たないことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
- ゲル化点が、反応性モノマーの引火点よりも低い請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 熱硬化性樹脂組成物における樹脂成分が、不飽和ポリエステル樹脂および/またはエポキシエステル樹脂である請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- ゲル化点が170℃未満である請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 分解温度が140℃未満の有機化酸化物を含む請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 反応性モノマー含有量が、組成物全量基準で30〜90質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 反応性モノマーのうち80〜100質量%が引火点140℃以上250℃未満のものである請求項1〜6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
- さらに金属石鹸を含む請求項1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物により含浸処理してなるコイル。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物をコイルに含浸させ、乾燥、硬化させてなることを特徴とするコイルの製造方法。
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Citations (5)
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-
2008
- 2008-07-24 JP JP2008190683A patent/JP2009062518A/ja active Pending
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