実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図1において、試料、例えばマスクの欠陥を検査する検査装置100は、光学画像取得部と制御系回路を備えている。光学画像取得部は、パルス光源150、シャッタ152、光電素子を利用した光センサ153、XYθテーブル102(ステージ)、光学系103、拡大光学系104、2次元センサアレイ105、センサ回路106、レーザ測長システム122、及びオートローダ130を備えている。制御系回路では、コンピュータとなる制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレシキブルディスク装置(FD)116、CRT117、パターンモニタ118、プリンタ119、パルスコントローラ140に接続されている。また、センサ回路106は、ストライプパターンメモリ142に接続され、ストライプパターンメモリ142は、比較回路108に接続されている。また、XYθテーブル102は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータにより駆動される。XYθテーブル102は、ステージの一例となる。ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成部分について記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。
検査装置100では、パルス光源150、シャッタ152、光電素子を利用した光センサ153、XYθテーブル102、光学系103、拡大光学系104、2次元センサアレイ105、センサ回路106により高倍率の検査光学系が構成されている。パルス光源は40kHzで自動的に発振し、パルスレーザを発生させる。光センサ153は、シャッタ下部に設置され、シャッタが開いてシャッタをレーザパルスが通った時、これを検知し、パルスが発生した旨の信号をパルスコントローラ140に送る。また、XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下にテーブル制御回路114により駆動される。X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。これらの、Xモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。そして、XYθテーブル102の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。また、XYθテーブル102上のフォトマスク101はオートローダ制御回路113により駆動されるオートローダ130から自動的に搬送され、検査終了後に自動的に排出されるものとなっている。
被検査試料となるフォトマスク101は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能に設けられたXYθテーブル102上に載置される。そして、フォトマスク101に形成されたパターンはパルス光源150によってパルス光が光学系103を介して照明される。照明されたパターンは、フォトマスク101を透過し、光は拡大光学系104を介して、2次元センサアレイ105上に光学像として結像し、受光素子が画素毎の光量を測定する。
図2は、実施の形態1における2次元センサアレイの配置状態の一例を示す図である。図2において、2次元センサアレイ105は、2次元配列された複数の受光素子20を有している。そして、これらの複数の受光素子20を用いてパルス光が照射されたフォトマスク101の2次元領域のパターン像を一度に撮像する。このような2次元センサアレイ105を用いて以下のように撮像する。
図3は、実施の形態1における光学画像の取得手順を説明するための概念図である。被検査領域は、図3に示すように、Y方向に長手で、X方向に幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ10に仮想的に分割される。そして、分割された検査ストライプ10毎にステップアンドリピート方式で走査されるようにXYθテーブル102の動作が制御され、Y方向に移動と停止を繰り返し、停止時に光学画像が取得される。そして、第1の検査ストライプにおける画像を取得した後、第2の検査ストライプにおける画像を今度は逆方向にステップアンドリピート方式で移動しながら同様に幅Wの画像を入力する。そして、第3の検査ストライプにおける画像を取得する場合には、第2の検査ストライプにおける画像を取得する方向とは逆方向、すなわち、第1の検査ストライプにおける画像を取得した方向にステップアンドリピート方式で移動しながら画像を取得する。このように、画像を取得していくことで、無駄な処理時間を短縮することができる。1回の2次元撮像領域12は2次元方向に複数の画素14が入る領域となる。
図4は、実施の形態1における光学画像の取得手順を説明するための他の概念図である。ここでは、検査ストライプ10のX方向幅Wを2次元センサアレイ105のX方向の受光素子の配列幅にする場合について示している。例えば、2次元センサアレイ105に2000×2000画素分の受光素子20(例えばフォトダイオード)が配置されているものを用いると、1回の2次元撮像領域12は2000個×2000個の複数の画素が入る領域となる。下記では、ステージを停止した状態で試料上の測定場所を照明する際、パルスレーザを1000回照明するものとする。
まず、ある検査ストライプ10の2次元撮像領域12aのパターン像が2次元センサアレイ105によって撮像できる位置にXYθテーブル102を移動させる。そして、照射工程として、パルス光源150はパルス光を発生し続ける。シャッタ152は、パルス光源150と2次元センサアレイ105との間に配置される。より具体的には、シャッタ152は、パルス光源150の照射口付近に配置される。シャッタ152は、パルスコントローラ140によって開閉が制御される。シャッタが開いている時、光センサはパルスレーザを検知し、そのたびにパルスコントローラに信号を送る。パルスコントローラは受け取った信号の回数をカウントし、1000回のパルス発生を確認した後、シャッタを閉める。このように、シャッタ152は、開閉することで所定のパルス数のパルス光を2次元センサアレイ105側に通過させる。そして、シャッタ152を開いたときに、所定のパルス数のパルスレーザで試料が照明される。シャッタ152は、開閉部の一例となる。試料の照明された部分が、2次元センサアレイ105上で結像する。そして、撮像工程として、XYθテーブル102を停止させた状態で、2次元センサアレイ105は、パルス光が照射されたフォトマスク101の2次元撮像領域12aのパターン像を撮像する。よって、2次元センサアレイ105の各受光素子20には所定のパルス数の光量が蓄積されることになる。所定のパルス数のパルス光が2次元センサアレイ105側に照射されたことをパルスコントローラが確認した後、パルスコントローラはシャッタ152を閉じる。そして、センサで取得した画像データは比較回路に送られ、検査に利用される。これと同時にXYθテーブル102は、Y方向に向かって、次の2次元撮像領域12bの位置に移動する。XYθテーブル102の移動は、テーブル制御回路114によって制御されるが、テーブル制御回路114は、パルスコントローラ140からの送られる照明終了を示す信号によって移動時期を判断する。そして、移動後、(画像データの比較回路への転送終了を確認した後、)XYθテーブル102が停止した状態でシャッタ152が開き、所定のパルス数のパルス光が照射される。2次元センサアレイ105は、パルス光が照射されたフォトマスク101の2次元撮像領域12bのパターン像を撮像する。そして、所定のパルス数のパルス光が2次元センサアレイ105側に照射されるとシャッタ152が閉じる。そしてセンサで取得した画像データは比較回路に送られ、検査に利用される。また、XYθテーブル102は、Y方向に向かって、さらに次の2次元撮像領域12cの位置に移動する。このように、XYθテーブル102は、シャッタ152が開いている間は停止し、シャッタ152が閉じている間に、パルス光が照射される次の2次元撮像領域12の位置に移動する。以上のようにステップアンドリピートを繰り返しながら検査ストライプ10の終端まで撮像を繰り返す。このようにして、フォトマスク101の光学画像を取得していく。
図4では、検査ストライプ10のX方向スキャン幅Wを2次元センサアレイ105のX方向の幅にする場合について示したがこれに限るものではない。例えば、検査ストライプ10のX方向幅Wを2次元センサアレイ105のX方向の幅のN倍に設定しても好適である。
図5は、実施の形態1における光学画像の取得手順を説明するための他の概念図である。ここでは、検査ストライプ10のX方向幅Wを2次元センサアレイ105のX方向の幅の3倍に設定する場合について示している。図4の例では、Y方向にのみステップ&リピート動作を行なったが、図4ではさらにX方向にパルス光源からのパルス光をステップ&リピートさせる動作を行なう。
図6は、実施の形態1におけるパルス光を走査する場合を説明するための概念図である。光源側に、音響光学素子を利用した走査用光学素子を配置し、パルスレーザ光の光路を試料上のX方向に移動できる構成となっており、また、これと連動して、センサ側の走査用光学素子でレーザの光路を変更し、試料上のパターンをセンサに結像させる構造となっている。このふたつの走査用光学素子によって、ステージを停止したまま、X方向に2次元撮像領域12をステップ&リピート移動させることができる。
まず、ある検査ストライプ10の座標(i,j)で示す2次元撮像領域12のパターン像が2次元センサアレイ105によって撮像できる位置にXYθテーブル102を移動させる。パルス光源150はパルス光を発生しつづける。そして、照射工程として、所定のパルス数が照射される間だけシャッタ152を開ける。これは、前述の例と同様、光センサからの情報を利用して、パルスコントローラが制御しておこなう。そして、撮像工程として、XYθテーブル102を停止させた状態で、2次元センサアレイ105は、座標(i,j)の2次元撮像領域12のパターン像を撮像する。よって、2次元センサアレイ105の各受光素子20には所定のパルス数の光量が蓄積されることになる。所定のパルス数のパルス光が2次元センサアレイ105側に照射されるとシャッタ152が閉じる。そして、センサで取得した画像データは比較回路に送られ、検査に利用される。これと同時に、2つの走査用光学素子を用いてレーザ光の光路をX方向に変更し、座標(i+1,j)の2次元撮像領域12の位置が照明され、センサに集光されるようにする。(画像データの比較回路への転送終了を確認した後、)その位置でシャッタ152が開き、所定のパルス数のパルス光が照射される。2次元センサアレイ105は、座標(i+1,j)の2次元撮像領域12のパターン像を撮像する。そして、所定のパルス数のパルス光が2次元センサアレイ105側に照射されるとシャッタ152が閉じ、センサで取得した画像データは比較回路に送られ、検査に利用される。同様に、座標(i+2,j)の2次元撮像領域12のパターン像を撮像し終わると、今度は、シャッタ152が閉じた状態で、センサで取得した画像データは比較回路に送られ、検査に利用される。また同時にXYθテーブル102が、Y方向に向かって、座標(i+2,j+1)の2次元撮像領域12の位置に移動する。そして、−X方向に向かって、同様に、パルス光源151によるステップ&リピート動作により座標(i,j+1)の2次元撮像領域12のパターン像まで撮像し終わると、今度は、シャッタ152が閉じた状態で、XYθテーブル102が、Y方向に向かって、座標(i,j+2)の2次元撮像領域12の位置に移動する。以上のようにX方向とY方向にステップアンドリピートを繰り返しながら検査ストライプ10の終端まで撮像を繰り返す。このようにして、フォトマスク101の光学画像を取得していく。
ここで、検査時間の計算例について述べると以下にようになる。フォトマスク101の検査領域(測定領域)をL×L(cm)とする。また、画素サイズをp×p(nm)とし、X個×Y個の受光素子20(例えばフォトダイオード)が配置された2次元センサアレイ105を用いる。また、1箇所で受光するパルス数をKとする。そして、照明光に例えばN(kHz)のパルスレーザ光を用いた場合、撮像時間t(s)は以下の式(1)で計算することができる。
(1)t=K・L2・1011/(p2・N・X・Y)
例えば、フォトマスク101の検査領域(測定領域)を10cm×10cmとする。また、画素サイズを100nmでピッチp=100nmとし、縦2000個×横2000個(X,Y=2000)の受光素子20(例えばフォトダイオード)が配置された2次元センサアレイ105を用いる。その場合、2次元センサアレイ105によるセンサ領域は0.2mm×0.2mmとなる。また、1箇所で受光するパルス数K=1000とする。そして、照明光に例えば40kHzのパルスレーザ光を用いた場合、撮像時間tは6.25×103(s)≒1.7時間となる。また、上述したように、光量誤差が30%とするとK=1000パルスを受光することで、光量誤差が30/√1000≒1%程度に抑えることができる。また、この条件でのステップ回数(撮像領域を移動する回数)は500×500=2.5×105回となる。
(ケース1):図4のように、ステージのステップ&リピートのみを使う場合を考える。XYθテーブル102が移動時間0.02(s)/ステップで移動する場合
検査領域全体の検査が終了までのXYθテーブル102の移動時間は、2.5×105回×0.02≒1.4時間程度となる。よって、撮像時間と合わせると検査時間を3.1時間とすることができる。
(ケース2):図5のように、ステージをY方向にステップ&リピートさせ、X方向には、走査用光学素子を利用して、光学的にステップ&リピートさせる場合を考える。XYθテーブル102が移動時間0.1(s)/ステップで移動し、X方向への光学的なステップ時間は1回あたり、0.01(s)であるとする。
検査ストライプ10の幅を2mmとすると、ある検査ストライプ10を撮像する際にX方向に10回走査することになる。よって、XYθテーブル102のステップ回数は、(10cm/2mm)×(10cm/0.2mm)=2.5×104回となる。また、光学的なステップ回数は、500×500=2.5×105回となる。検査領域全体の検査が終了までのXYθテーブル102の移動時間は、2500(s)となる。他方、光学的なステップ時間の総和は、2500(s)となる。よって、検査領域全体の検査が終了までのXYθテーブル102の移動時間とパルス光源151の走査時間の合計は、1.4時間程度となる。よって、撮像時間と合わせると検査時間を3.1時間とすることができる。すなわち、XYθテーブル102のステップあたりの移動時間を遅くしても光学的なステップを組み合わせることで全体の移動時間を短縮することができる。
このように、ステージを静止させた状態で、所定回数、パルスレーザで照明することによって、画素毎の測定誤差を抑え、短時間で検査することが可能となる。
しかしながら、上述した条件に限るものではない。まず、実用化にあたっては光量誤差を5%以下に抑えることが望ましい。1パルスの光量の変動を30%とし、また、パルス数をKとすると、K回のパルス照射による光量の変動は30%/√(K)となるので、この変動を5%とするためには、K=36、回のパルスレーザの照射回数が必要となる。すなわち、K=36パルス程度は2次元センサアレイ105の各受光素子20がパルス光を受光することが必要となる。この条件を前提にして、例えば、次のような条件でも実用化は可能である。例えば、フォトマスク101の検査領域(測定領域)を10cm×10cmとする。また、画素サイズを100nmでピッチp=100nmとし、縦200個×横200個(X,Y=200)の受光素子20(例えばフォトダイオード)が配置された2次元センサアレイ105を用いる。その場合、2次元センサアレイ105によるセンサ領域は0.02mm×0.02mmとなる。また、1箇所で受光するパルス数を簡単のため例えば、K=50とする。そして、照明光に例えば40kHzのパルスレーザ光を用いた場合、撮像時間tは8.68時間となる。確かに撮像時間としては長くなってしまうが、パルス間の光量誤差が30%とするとK=50パルスを受光することで、光量誤差を30/√50≒4.3%程度に抑えることができる。そして、上述したケース2の場合、XYθテーブル102のステップ回数は、(10cm/2mm)×(10cm/0.02mm)=2.5×105回となる。また、パルス光源151の走査回数は、(10cm/0.02mm)×(10cm/0.02mm)=2.5×107回となる。検査領域全体の検査が終了までのXYθテーブル102の移動時間は、25000(s)となる。他方、パルス光源151の走査時間は、25000(s)となる。よって、検査領域全体の検査が終了までのXYθテーブル102の移動時間とパルス光源151の走査時間の合計は、14時間程度となる。よって、撮像時間と合わせると検査時間は22.57時間となる。
以上のようにして2次元センサアレイ105上に結像されたパターンの像は、2次元センサアレイ105の各受光素子20によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。
センサ回路106から出力された測定データ(光学画像)は、ストライプパターンメモリ142に検査ストライプ10毎に格納された後、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるフォトマスク101の位置を示すデータとともに比較回路108に送られる。測定データは例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調を表現している。測定データは、例えば、2000画素×2000画素の画像データ毎に区分けされ、その内部の画素毎に比較される。
また、参照画像作成工程として、die to database検査の場合、まず、参照回路112は、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して設計データを読み出す。そして、読み出されたフォトマスク101の設計データを2値ないしは多値のイメージデータに変換して、参照データ(参照画像)を作成する。die to die検査の場合は、被検査試料と共に撮像された参照試料の測定データ(参照画像)が、ストライプパターンメモリ142に検査ストライプ10毎に格納された後、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上におけるフォトマスク101の位置を示すデータとともに比較回路108に送られる。
そして、比較工程として、比較回路108内にて、まず、測定データと参照データとの位置合わせを行なう。そして、比較部となる比較回路108は、測定データの各画素信号と参照データの参照画素信号とを所定のアルゴリズムに従って比較し、欠陥の有無を判定する。そして、比較された結果は出力される。比較された結果は、例えば、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、FD116、CRT117、パターンモニタ118、或いはプリンタ119に出力される。或いは、外部に出力されても構わない。
なお、この実施形態では、シャッタを開いている時間の制御はパルスの数を計測しておこなったが、これに限ったものではない。例えば、単純に、1000パルス分の時間だけシャッタを開いておくという制御でも良い。例えば、パルスレーザの発振周波数が40kHzの場合は、この時間は(1/40kHz)×1000=25m秒とすれば良い。
以上のように構成することで、一度に広い領域の画像を撮像することができる。そのため、パルス光を照明光とした場合でも、広い領域の画像を一度に撮像する分だけ撮像時間を短縮することができる。そして、撮像時間を短縮することで節約した時間を使って、受光するパルス数を増やすことができる。よって、短波長のパルス光源を用いた場合でも検査時間の増大化を抑制することができる。さらに、短波長のパルス光源を用いた場合でも光量誤差を低減することができる。
以上のように、ステージがステップアンドリピート移動する検査手法において、短波長のパルス光源を用いた場合でも光量誤差を低減することができる。
以上のように、実施の形態1におけるパターン検査装置100では、試料内の(計測対象の)1部領域と2次元配列された複数の受光素子からなるセンサとを所定の相対位置関係として、パルスレーザを所定回数あるいは所定時間、照射・照明することによって、計測対象の部分からの光信号をセンサで測定する第1の機能を備えている。さらに、測定領域を移動して、試料の全測定対象領域からの光信号を測定する第2の機能を備えている。そして、測定した光信号を用いて試料上の欠陥を識別する。
さらに、パターン検査装置100は、試料内の(計測対象の)1部領域を照射・照明する際、試料内の計測対象の領域と上述したセンサとを所定の相対位置関係に相対的に静止させ、パルスレーザを所定回数あるいは所定時間、照射・照明する。
ここで、検査装置100の光学系の収差・画像ひずみについて補足する。フォトマスク101と2次元センサアレイ105との間の拡大光学系104に配置される対物レンズに非球面レンズを用いると、収差・画像ひずみが充分小さな光学系を構成することができる。対物レンズのひずみによるずれは1/10画素以下、より望ましくは1/64画素以下であることが好適である。なぜなら、ずれによって一つの画素の情報がふたつ以上の画素センサに分配されるために測定上の誤差となるからであり、ずれが1/10画素以下であれば、この誤差は10%程度以下に抑制され、ずれが1/64画素以下であればこの誤差は1.6%程度に抑制されるからである。このような小さなひずみは、対物レンズとして通常用いられる球面レンズに代えて、ひずみの少ない非球面レンズを利用することによって実現できる。よって、拡大光学系104に配置される対物レンズに非球面レンズを用いるのが好適である。但し、非球面レンズを用いると光学系が高価となる。そこで、球面レンズを用いて収差・画像ひずみが発生し、所定の画素以上のずれ(たとえば、1/10画素あるいは1画素以上のずれ)が生じる場合には下記のようにこのひずみを補正することができる。これにより、球面レンズを用いることもでき、装置のコストを抑えることも可能である。収差が発生する場合に次のように補正する。
図7は、実施の形態1におけるひずみ補正を説明するための概念図である。得られた測定画像32は、図7に示すように収差により歪んでいる場合、画素30の位置も歪むことになる。そこで、測定画像32を補正画像34のように補正することで画素30の位置を所望する画素位置に補正することができる。
図8は、実施の形態1におけるひずみの様子を説明するための概念図である。ある画素30が、試料面上では本来、位置(X’,Y’)にあるものとする。また、この画素30の光学情報は、2次元センサアレイ105面上で位置(X,Y)にある画素センサとなる受光素子20で観測されるものとする。光学系のひずみ(より正確には、フォトマスク101と2次元センサアレイ105との間の対物レンズのひずみ)が、この(X,Y)と(X’,Y’)との関係をゆがめる。ここで、その関係が次の式(2−1)及び式(2−2)で表されるものとする。
(2−1) X=a’+b’1・X’+b’2・Y’+c’1・X’2
+c’2・X’Y’+c’3・Y’2
(2−2) Y=p’+q’1・X’+q’2・Y’+r’1・X’2
+r’2・X’Y’+r’3・Y’2
例えば、フォトマスク101に形成されたパターンの元となるパターンデータ(設計データ)を用いて画像をシミュレーションする。そして、実際の測定された画像と比較して欠陥を検出する場合を考える。まず、ひずみがないものとして各画素の光量をシミュレーションして求める。そして、各画素の位置(X’,Y’)がひずみによってどの位置(X,Y)に変化しているかを上記式(2−1)及び式(2−2)で求める。位置(X’,Y’)と位置(X,Y)との対応関係がわかれば、位置(X’,Y’)にある画素の光量が2次元センサアレイ105面上で位置(X,Y)に位置する受光素子で検出されることがわかる。かかる演算は、センサ回路106内で行う。
図9は、実施の形態1におけるテストパターンの一例を示す図である。まず、所定の間隔で敷き詰められたマーク42が形成されたテストマスク40を作成する。そして、このテストマスク40の各マーク42の位置を検査装置100で検査する。これにより、収差による歪み量を把握することができる。ひずむ前と後での位置を上記式(2−1)及び式(2−2)で近似(フィッティング)して各係数a’〜r’3を求める。得られた係数a’〜r’3をセンサ回路106に設定する。センサ回路106は、各係数a’〜r’3が設定された式(2−1)及び式(2−2)を用いて、実際の被検査試料となるフォトマスク101から得られた測定画像を補正すればよい。かかる補正により比較回路108で比較する際に収差による歪み分を排除することができ、検査精度を向上させることができる。また、ひずみによって元の画素がちょうどひずんだ後の画素領域に収まらず、画素間を跨ぐ結果となることもあり得る。その場合には、以下のように補間するとよい。
図10は、実施の形態1における光量補間の手法を説明するための図である。図10において、元の画素がひずんだ後に、画素間を跨ぐ結果となった場合には、画素の境界で分けた場合の面積比で光量を分割し、それぞれの画素に対応する受光素子の光量に分配すれば良い。
また、図2において、X方向とY方向に2次元配列された複数の受光素子20を有している2次元センサアレイ105について説明したが、配列の仕方はこれに限るものではない。
図11は、実施の形態1における2次元センサアレイの配置状態の他の一例を示す図である。例えば、図11に示すように、各受光素子22を6角形に形成して、各辺に合わせて複数の受光素子22を配列するようにしても好適である。
実施の形態2.
実施の形態1では、ステップアンドリピート方式で撮像する場合について説明したが、実施の形態2では、XYθテーブル102を連続移動させながら撮像する場合について説明する。
図12は、実施の形態2におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図12において、シャッタ152、光センサ153及びパルスコントローラ140の代わりに同期回路146が配置された点以外は図1の構成と同様である。ここで、図12では、実施の形態2を説明する上で必要な構成部分について記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。ここでは簡単のため、光学系は非球面レンズを利用し収差、歪がないものとする。
図13は、実施の形態2における光学画像の取得手順を説明するための概念図である。フォトマスク101の被検査領域は、図13に示すように、X方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ10に仮想的に分割される。そして、更にその分割された各検査ストライプ10が連続的に走査されるようにXYθテーブル102の動作が制御される。そして、Y方向に移動しながら光学画像が取得される。2次元センサアレイ105では、図13に示されるようなスキャン幅Wの画像を連続的に入力される。そして、第1の検査ストライプにおける画像を取得した後、第2の検査ストライプにおける画像を今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの画像を連続的に入力する。そして、第3の検査ストライプにおける画像を取得する場合には、第2の検査ストライプにおける画像を取得する方向とは逆方向、すなわち、第1の検査ストライプにおける画像を取得した方向に移動しながら画像を取得する。
図14は、実施の形態2における光学画像の取得手順を説明するための他の概念図である。ここでは、検査ストライプ10のX方向幅Wを2次元センサアレイ105のX方向の受光素子の配列幅にする場合について示している。例えば、2次元センサアレイ105に2000×2000画素分の受光素子20が配置されているものを用いる。そして、XYθテーブル102は、パルス光のパルス間に所定の画素数だけずれるように連続移動する。
まず、検査対象のストライプの撮像開始位置の手前にXYθテーブル102を移動させる。そして、ステージを加速させ、撮像領域が検査領域に入った時には、所定の一定スピードでステージを走行させる。また同時に、照射工程として、同期回路から信号が送られ、パルス光源150がパルス光を発生する。この時のXYθテーブル102の連続移動速度は、パルス光のパルス間隔1回あたりに、Y方向に所定の画素数(1画素の自然数倍の画素数:例えば図14の例では4画素)だけずれる速度とする。これは、レーザ測長システムで計測されたステージの位置情報を位置回路107を経由して同期回路146が取得し、位置にあわせて、パルス光源150に発光指示の信号を送ることによって行う。この時、パルスレーザの照射と同時に行われる撮像工程は、2次元センサアレイ105が、パルス光が照射されたフォトマスク101の2次元撮像領域18のパターン像を撮像するものである。具体的には、XYθテーブル102を連続移動させながら、kパルス目のパルスレーザで、2次元撮像領域18を撮像し、その後もXYθテーブル102は一定速度で走行して、これによって所定画素数分移動した時、k+1パルス目のパルスレーザで照明を行い、は所定の画素数分だけ移動した2次元撮像領域18の撮像を行う。図14の例では、2次元撮像領域18が非撮像領域16側に4画素進む場合を示している。
図15は、図14に示す場合の、2次元センサアレイ側から見た画素の移動の様子を示す図である。例えば、試料上のある場所・画素Aの情報はkパルス目の照明である受光素子B1で測定され、次の(k+1)パルス目の照明では4つ隣の受光素子B2で測定され、さらに次のパルスの照明では、さらに4つ隣の受光素子で測定され、・・・と繰り返し測定される。この画素Aの光量測定は、移動方向の受光素子数(2000)/1パルス間隔で移動する画素数(4)=500回行われることになる。2次元センサアレイ105はこれに対応して、内部で次の式(3)に示すように、画素Aからの全光学情報・光量を積算する。
(3)画素Aからの全光量=kパルス目の照明の際、受光素子B1で得られた光量
+(k+1)パルス目の照明の際、受光素子B2で得られた光量
+(k+2)パルス目の照明の際、受光素子B3で得られた光量
+・・・・・・
このような動作を行う2次元センサアレイ105とその制御の一例を以下で説明する。2次元センサアレイ105はほぼ従来のTDIセンサと同じである。2次元センサアレイ105には、外部から画素位置のシフト量を与えられる構造となっている。2次元センサアレイ105はそのシフト量を与えられた時、内部の各受光素子に蓄えられた測定光量情報を、すべて、(ステージ連続移動方向に)外部から指示されたシフト量だけ離れた受光素子に移動させる。例えば、シフト量として4を与えられた時、図15の受光素子B1にたくわえられた測定光量情報は、B2に移動される。他の受光素子に蓄えられた測定光量の情報も同様に4つ離れた受光素子に移動される。また、この時、2次元センサアレイ105の(測定光量を移動させる方向の)最終のn段に存在する受光素子(上記の例では2000画素/段×4段=)8000画素分)に蓄えられた測定光量情報は外部に出力される。
この2次元センサアレイ105を利用した制御法は次のように行う。画素のシフト量は4とし、センサは2000×2000の受光素子よりなるものとする。同期回路146はステージが所定の位置に到達したことを認識して、パルス光源150に発光を指示し、パルス光源150がパルスレーザを発光し、フォトマスク101を照明し、2次元センサアレイ105で光量を測定する。その直後、同期回路146はシフト量“4”を2次元センサアレイ105に送る。2次元センサアレイ105は、これを受けて、各受光素子に蓄えられた測定光量情報を4つ離れた受光素子に移動させる。また、2次元センサアレイ105は、最終4段の8000個の受光素子に蓄えられた測定光量情報を出力し、それは、比較回路におくられて欠陥検査に利用される。ここで、2次元センサアレイ105や信号伝達系の動作速度は、“2次元センサアレイ105にシフト量を与え2次元センサアレイ105が最終4段分の光量情報をすべて出力するまでの全動作が、パルスレーザの周期(40kHz発振の場合は0.025秒)以内で終わる”ものとしておく。このような速度にしておくことによって、2次元センサアレイ105にシフト量を与え最終4段分の光量情報がすべて出力されるまでの間には、パルスレーザによる照明は行われず、2次元センサアレイ105内部の各受光素子は新たな光量を計測しない。その後、XYθテーブル102が4画素分移動したことを同期回路146が検知し、パルス光源150に発光の指示を与え、パルス光源150が発光し、2次元センサアレイ105がフォトマスク101からの各画素の光量を測定する。以上のことを繰り返すことによって、式(3)のように、各画素での光量が計測され、検査に利用されることになる。
これによって、500回のパルスレーザの照明でえられた画素群の全光量が得られる。上述のように、2次元センサアレイ105はこれらの積算情報を、1パルス毎に1回、2000画素/段×4段の画素分を出力し、出力データは比較回路108に送られ欠陥の検査に用いられる。このパルスレーザによる1画素あたり500回の照明と測定により、光量の誤差は30%/√(500)=1.34%に抑えられる。
2次元センサアレイ105とその制御の他の例を以下で説明する。2次元センサアレイ105の動作は上述の例に類似である。2次元センサアレイ105には、外部から命令信号Cを与えられる構造となっている。この命令信号Cを受けると、2次元センサアレイ105は内部の各受光素子に蓄えられた測定光量情報を、すべて、ステージ連続移動方向に1つ離れた受光素子に移動させる。また、この時、2次元センサアレイ105の測定光量を移動させる方向の最終段に存在する受光素子(上記の例では2000画素分)に蓄えられた測定光量情報は外部に出力される。また、2次元センサアレイ105は、外部に出力し終わった時、出力終了した旨の信号を外部に伝える。
この2次元センサアレイ105を利用した制御法は次のように行う。画素のシフト量は4とし、2次元センサアレイ105は2000×2000の受光素子よりなるものとする。同期回路146はステージが所定の位置に到達したことを認識して、パルスレーザ光源に発光を指示し、光源がパルスレーザを発光し、マスクを照明、2次元センサアレイ105が光量を測定する。言い換えれば、同期回路146はステージの位置にあわせて、光源に発光指示の信号を送る。その直後、同期回路146は命令信号Cをセンサに送る。2次元センサアレイ105は、これを受けて、各受光素子に蓄えられた測定光量情報を、ステージ連続移動方向に1つ離れた受光素子に移動させる。また、2次元センサアレイ105は、最終段の2000個の受光素子に蓄えられた測定光量情報を出力し、それは、比較回路108におくられて欠陥検査に利用される。2次元センサアレイ105は、この2000個の測定光量情報を出力し終えると、同期回路146に出力終了信号を送る。同期回路146はこの出力終了信号を受けた後、再度2次元センサアレイ105に命令信号Cを送り、2次元センサアレイ105は測定光量情報の移動と出力を行い、終了信号を2次元センサアレイ105に送る。このような動作を繰り返し、命令信号Cと終了信号のやり取りを計4回行う。これによって、2次元センサアレイ105内の受光素子に蓄えられた測定光量情報は、ステージ連続移動方向に4つ離れた受光素子に移動し、また、ステージ連続移動方向側端部、最終の4段分の受光素子に蓄えられた測定光量情報は比較回路108におくられて欠陥検査に利用されることになる。ここで、2次元センサアレイ105や信号伝達系の動作速度は、“1パルスレーザ照射後、同期回路146がセンサに最初の命令信号Cを与えてから、2次元センサアレイ105が最終4段分の光量情報をすべて出力するまでの全動作が、パルスレーザの周期(40kHz発振の場合は0.025秒)以内で終わる”ものとしておく。すなわち、2次元センサアレイ105は、撮像した所定の画素数列分の光量情報をパルス光の周期以内に出力を終了させる。2次元センサアレイ105には受光素子が2次元配列されているので、ステージの移動方向と直交する方向にも受光素子が並んでいる。そのため、ずれる画素数×ずれる方向と直交する方向の画素数の光量情報が画素数列分の光量情報となる。このような速度にしておくことによって、1パルスレーザ照射後、同期回路146が2次元センサアレイ105に最初の命令信号Cを送って、シフト量を与え最終4段分の光量情報がすべて出力されるまでの間には、(パルスレーザによる)照明は行われないので、2次元センサアレイ105内部の各受光素子は新たな光量を計測しない。その後、XYθテーブル102が4画素分移動したことを同期回路146が検知し、パルスレーザ光源に発光の指示を与え、光源が発光、2次元センサアレイ105が試料からの各画素の光量を測定する。以上のことを繰り返すことによって、式(3)のように、各画素での光量が計測され、検査に利用されることになる。
ここで、検査時間の計算例について述べると以下にようになる。フォトマスク101の検査領域(測定領域)をL×L(cm)とする。また、画素サイズをp×p(nm)とし、X方向の素子数X個×Y方向の素子数Y個の受光素子20が配置された2次元センサアレイ105を用いる。また、1箇所で受光するパルス数をKとする。但し、実施の形態2ではK=1となる。また、画素のずらす数をSとする。そして、照明光に例えばN(kHz)のパルスレーザ光を用いた場合、撮像時間t(s)は以下の式(4)で計算することができる。
(4)t=K・L2・1011/(p2・N・X・S)
実施の形態1と同様、例えば、フォトマスク101の検査領域(測定領域)を10cm×10cmとする。また、画素サイズを100nmでピッチp=100nmとし、縦2000個×横2000個(X,Y=2000)の受光素子20(例えばフォトダイオード)が配置された2次元センサアレイ105を用いる。この条件でパルス間に4画素ずつ進む場合、各受光素子20には500パルス分の光量が蓄積されることになる。よって、光量誤差を30/√500≒1.3%程度に抑えることができる。そして、照明光に例えば40kHzのパルスレーザ光を用いた場合、撮像時間tは0.87時間となる。
検査には、あるフレームを検査して、次のフレームを検査するために、ステージを連続移動と直角方向にステップ移動させる時間が必要となるが、それはこの撮像時間に比べると無視できるほど小さい。これを以下で示す。フレームの巾(ステージ連続移動と直角方向の巾)は200μm=0.2mmであり、フレームの数は500となる。あるフレームを検査し終わり、次のフレームに移動する際の1回あたりのステージのステップ移動時間を0.1秒とすると、全ステップ移動時間は50秒となる。 このように、ステージを連続移動させて検査する場合は、ステップ移動時間は、全検査時間に比べて無視できるほど小さい。
また、この条件でパルス間に2画素ずつ進む場合、各受光素子20には1000パルス分の光量が蓄積されることになる。よって、光量誤差を30/√1000≒0.95%程度に抑えることができる。そして、照明光に例えば40kHzのパルスレーザ光を用いた場合、撮像時間tは1.76時間となる。また、この条件でパルス間に1画素ずつ進む場合、各受光素子20には2000パルス分の光量が蓄積されることになる。よって、光量誤差を30/√2000≒0.67%程度に抑えることができる。そして、照明光に例えば40kHzのパルスレーザ光を用いた場合、撮像時間tは3.47時間となる。
また、光量誤差を5%以下に抑えることを前提とすると、各受光素子20には50パルス分の光量が蓄積されればよい。そこで、縦1000個×横50個(X=1000,Y=50)の受光素子20が配置された2次元センサアレイ105を用いる。この条件でパルス間に1画素ずつ進む場合、照明光に例えば40kHzのパルスレーザ光を用いた場合の撮像時間tは6.9時間となる。
また、同様に、光量誤差を5%以下に抑えることを前提とすると、各受光素子20には50パルス分の光量が蓄積されればよいので、縦100個×横1000個(X=100,Y=1000)の受光素子20が配置された2次元センサアレイ105を用いて、パルス間に20画素ずつ進めばよい。この条件で照明光に例えば40kHzのパルスレーザ光を用いた場合の撮像時間tは3.47時間となる。
また、同様に、光量誤差を5%以下に抑えることを前提とすると、各受光素子20には50パルス分の光量が蓄積されればよいので、縦100個×横100個(X=100,Y=100)の受光素子20が配置された2次元センサアレイ105を用いて、パルス間に2画素ずつ進めばよい。この条件で照明光に例えば40kHzのパルスレーザ光を用いた場合の撮像時間tは34.7時間となる。このように、ステージの走行速度制御によるステージ位置制御とパルスレーザによる照明とのタイミングを制御することによって、画素毎の測定誤差を抑制することが可能となる。
上述のように、ステージを“パルス光のパルス間に所定の画素数(1画素の自然数倍の画素数)だけずれるように連続移動させる”ことによって、測定誤差を少なくすることができる。特に、ずらす画素数を2以上にすることにより、上述の例のように、測定時間を大幅に短縮することができる。このように短縮できる背景は、各ステージ位置では1パルス分の照明しか行わないが、ステージ移動方向の受光素子の数を充分に確保することで、1画素あたりのパルスレーザ照明回数を増やして、測定誤差を低減していることがある。また短縮できる理由は、パルス間にずらす画素数を2以上の値とすることで、画素のサイズそのものとステージ速度とを直接の連携をなくしたことにある。すなわち、パルス間隔で1画素しかずらさないとすれば、1パルス間隔に1画素分しかステージが進めないが、2画素以上の移動をゆるすことで、ステージ速度を2倍以上とすることが可能となる。この時、1画素あたりの測定回数は少なくなるが、ステージ連続方向の受光素子の数を確保してあるので、測定精度の劣化は許容レベルに抑えることが可能となっている。この方式は、将来より欠陥判定精度を高めるために画素のサイズをより小さくした時にさらに効果的なものとなる。例えば、画素サイズを100×100nmから50×50nmや25×25nmとする場合、1パルス間隔で1画素分しかステージを移動できないとすると、ステージ速度はそれぞれ、1/2及び1/4となり、対応して、検査時間はそれぞれ2倍及び4倍となる。しかし、2画素以上ずらす手法によれば、前者については、パルス間隔で2画素ずらすことでステージスピードと測定時間を(画素サイズ100x100nmの時と)同じにすることができる。また、後者については4画素ずらすことで、ステージスピードと測定時間を(画素サイズ100×100nmの時と)同じにすることができる。このように、画素のサイズを小さくしても、2画素以上ずらす本手法によって測定時間の増大を抑えることが可能となる。
実施の形態2では、パルス光の照射タイミングと2次元センサアレイ105からの信号を処理するセンサ回路106とを同期させる必要があり、上述の例では、ステージの位置にあわせて、同期回路146がレーザの発光を制御し、タイミングを制御した。しかし、タイミングの制御は、この方法に限ったものではない。パルスレーザ光源が自動的に発振する場合でも、発振した旨の信号を光源から同期回路146に送り、同期回路146がステージ速度を制御する形で、パルスレーザの発振とステージ連続移動速度を連動させても良い。あるいは、光センサでパルス発光を検知し、それを同期回路146に送って、同期回路146がステージ速度を制御する形で、パルスレーザの発振とステージ連続移動速度を連動させても良い。
図12の構成では、同期回路146からパルス光源150へ信号が出力されているが、これに限るものではない。パルス光源150から発振毎に信号を同期回路146に送信しても好適である。
そして、センサ回路106から測定データ(光学画像)が出力されてから比較回路による検査結果の出力までの検査装置100の動作は、実施の形態1と同様である。また、歪み補正や2次元センサアレイ105の受光素子の配列の仕方等、実施の形態2で説明されていない部分は、実施の形態1と同様である。
以上のように、実施の形態2におけるパターン検査装置100は、試料内の(計測対象の)1部領域と2次元配列された複数の受光素子からなる撮像するセンサとを所定の相対位置関係として、パルスレーザを所定回数あるいは所定時間、照射・照明することによって、計測対象の部分からの光信号をセンサで測定する第1の機能を備えている。さらに、測定領域を移動して、試料の全測定対象領域からの光信号を測定する第2の機能を備えている。そして、測定した光信号を用いて試料上の欠陥を識別する。
そして、パターン検査装置100は、ステージを、連続移動させながら試料からの光量を計測するものであり、上記試料内の(計測対象の)1部領域とセンサとを所定の相対位置関係として行うパルスレーザの照射を1回のみとし、ステージの連続移動はパルス間に所定の画素数(1画素の自然数倍の画素数)だけずれるようにする。
ここで、実施の形態1で記載したように、フォトマスク101と2次元センサアレイ105との間の拡大光学系104に配置される対物レンズに非球面レンズを用いると、収差・画像ひずみが充分小さな光学系を構成することができる。対物レンズのひずみによるずれは1画素以下、より望ましくは1/64画素以下であることが好適である。これは、対物レンズとして通常用いられる球面レンズに代えて、ひずみの少ない非球面レンズを利用することによって実現できる。よって、拡大光学系104に配置される対物レンズに非球面レンズを用いるのが好適である。但し、非球面レンズを用いると光学系が高価となる。そこで、球面レンズを用いると収差・画像ひずみが発生する。
歪がある場合は、光学歪を補正して検査に利用してもよい。この場合は、1パルス毎の画像情報を取得後、実施の形態1で説明したように、歪を補正した光学像を作成、これをパルス毎の全画像情報に施し、得られた画像情報から元に、式(3)によって、各画素の光量を算出し、これを元に、欠陥の判定を行ってもよい。以下、具体的に説明する。
図16は、実施の形態2におけるひずみの様子を説明するための概念図である。あるひとつの画素30について注目する。ステージを連続移動させながら、その画素の光量を測定するので、2次元センサアレイ105面上でみれば、その画素30は対物レンズのひずみのために、図17のように曲線上を移動することになる。すなわち、2次元センサアレイ105面上で、試料上の画素は直線的には移動しない。この直線からのずれが受光素子1画素分以上にのぼれば、この画素の光量は2つ以上の画素に分散されることになる。これによって光量情報が分散され、検出精度が劣化することになる。よって、上記対物レンズのひずみによる直線からのずれは1画素以下であることが好適である。より望ましくは1/64画素以下であることが好適である。そこで、球面レンズを用いて収差・画像ひずみが発生することにより1画素以上のずれが生じる場合には下記のように補正する。これにより、球面レンズを用いることもでき、装置のコストを抑えることも可能である。収差が発生する場合に次のように補正する。
上述した例では、2次元センサアレイ105にTDIセンサを用いる場合について説明したが、ひずみ補正を行う場合にはTDIセンサではなく、単なるエリアセンサーを用いる。そして、センサ回路106は、1パルス毎に2次元に配置された全ての受光素子の取得データをとりこむ。そして、センサ回路106は、1パルスの照射により受光素子で取り込まれたデータからひずみがない場合のデータを算出する。ある画素30が、試料面上では本来、位置(X’,Y’)にあるものとし、また、この画素の光学情報は、2次元センサアレイ105面上で位置(X,Y)にある受光素子で観測されるものとする。この(X,Y)と(X’,Y’)とはひずみの影響により、以下の式(5−1)及び式(5−2)で示す関係で表すことができる。
(5−1) X’=a+b1・X+b2・Y+c’1・X2
+c2・XY+c3・Y2
(5−2) Y’=p+q1・X+q2・Y+r1・X2
+r2・XY+r3・Y2
図9で示したテストマスク40の各マーク42の位置を検査装置100で検査する。これにより、収差による歪み量を把握することができる。ひずむ前と後での位置を上記式(5−1)及び式(5−2)で近似(フィッティング)して各係数a〜r3を求める。得られた係数a〜r3をセンサ回路106に設定する。
そして、センサ回路106は、式(5−1)及び式(5−2)によって、光量を測定した画素の位置からひずみのない場合の画素の位置への対応のさせ方が決まるので、ひずみがない場合の各画素の光量を算出できる。
また、測定した画素を、ひずみの無い画素に当てはめる場合、図10で示した場合と同様、測定した画素の位置がひずみの無い画素のいくつかをまたぐ場合があるが、その場合は、図10で示したように、画素の境界で分けた場合の面積比で光量を分割し、ひずみの無い画素にかかる面積で光量をそれぞれの画素に対応する受光素子の光量に分配すれば良い。
そして、式(3)を用いて、補正された各画素の光量データを所定パルス回数分積算する。これによって、ひずみがない場合の各画素の光量のデータを所定回数のパルス照射によって得られたものとして取得することができる。
以上のように、ステージが連続移動する検査手法において、短波長のパルス光源を用いた場合でも光量誤差を低減することができる。
実施の形態3.
実施の形態2では、ステージが一定速度で移動する場合について説明したが、実施の形態3では、ステージ速度が可変速である場合について説明する。
図17は、実施の形態3におけるパターン検査装置の構成を示す概念図である。図17において、光量センサ154が追加された点以外は図12の構成と同様である。ここで、図17では、実施の形態3を説明する上で必要な構成部分について記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。ここでは簡単のため、光学系は非球面レンズを利用し収差、歪がないものとする。
実施の形態2では、XYθテーブル102(ステージ)を一定速度で、“パルス光のパルス間に所定の画素数(1画素の自然数倍の画素数)だけずれるように連続移動させる”。そして、さらに、各受光素子20には例えば500パルスという複数回のパルス光が照射される。パルス毎の光量が変動することに対しては,複数回のパルス光が照射されるために光量の総和としては誤差が軽減されるという考えに基づいている。
しかしながら、光量変動は、被検査マスク上のガラス透過部分の半透明欠陥の検出や、コンタクトホールパターン寸法誤差を透過光の光量で判別するといった欠陥検出方法の感度に影響する。
このため、実施の形態3では、上述した複数パルスを照射することによる誤差軽減に加えて、それでも残る光量変動誤差について、以下のように補正する。光量センサ154(光量測定部)が、パルス光源150から照射されたパルス光の光量を測定する。ここでは、光量センサ154が、パルス毎に光量を測定し、その結果を同期回路146に出力する。同期回路146では、各画素に照射される複数パルス分の回数毎の合計光量を演算する。例えば、各受光素子20に1000パルスという複数回のパルス光が照射される場合には、パルス光源150から照射された1000パルス分のパルス光の合計光量を演算する。そして、次の1000パルス分のパルス光の合計光量を演算する。このようにして、所定パルス毎の合計光量を演算し、その合計光量の変動をモニタする。その結果、合計光量が小さくなった場合には、その分だけ各画素に照射されるパルス光の回数を増やすようにステージ速度を遅くすることで合計光量を一定量に近づけることができる。逆に、合計光量が大きくなった場合には、その分だけ各画素に照射されるパルス光の回数を減らすようにステージ速度を早くすることで合計光量を一定量に近づけることができる。XYθテーブル102は、パルス間に1画素の自然数倍の画素数だけずれるように連続移動させているので、この自然数の値を可変にすることで各画素に照射される合計光量の光量変動誤差を補正することができる。そこで、同期回路146は、ステージの連続移動中に、合計光量に基づいて自然数を変更する指示をテーブル制御回路114に出力する。テーブル制御回路114は、変更された自然数を用いて、ステージの連続移動中にステージ速度を変更する。移動方向の受光素子数が例えば4000個で、1パルス間に移動する画素数が例えば4画素であった場合、ある画素に照射されるパルス光のパルス数=4000/4=1000回となる。ここで、モニタされた合計光量が大きくなった場合には、画素数を5に変更して、次の画素に照射されるパルス光のパルス数=4000/5=800回に変更する。実施の形態3の補正は、画素に本来照射されるパルス光のパルス数が多くなればなるほど有効である。
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、上述の例では受光素子1つは試料面上で100×100nmを検出するものとしたが、50×50nmをカバーするものでも良いし、また、パルスレーザの発振周波数は40kHzで説明したが、より低い周波数、例えば10kHzを利用しても良いし、逆に高い周波数、例えば100kHzを利用しても良い。
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、検査装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置及びパターン検査方法は、本発明の範囲に包含される。