JP2009074658A - 車両用制振装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両フレームの低周波大振幅振動に対して優れた制振効果を発揮することが出来る、新規な構造の車両用制振装置を提供することを、目的とする。
【解決手段】車両フレーム22に対する副振動系のマス部分20が、マス収容空所12に独立マス部材14が収容された当接ハウジング16と、かかる当接ハウジング16に設けられたスペアタイヤ取付ブラケット74で支持される車両用スペアタイヤ18とを含んで構成されるようにした。
【選択図】図3

Description

本発明は、制振すべき振動部材に対する副振動系を構成して、主振動系たる振動部材の振動を抑える車両用制御装置に係り、特に車両フレームの低周波大振幅振動に対して優れた制振効果を発揮することが出来る車両用制振装置に関するものである。
自動車の車両フレーム等のように振動が問題となる振動部材において、振動を低減するための制振装置の一種として、従来から、マス−バネ系によって形成されて、主振動系たる振動部材に装着されることにより、副振動系を構成するダイナミックダンパが知られている。
ところが、従来構造のダイナミックダンパにおいては、副振動系のチューニング周波数域を挟んだ低周波側と高周波側の両周波数域において、振動伝達率の大きな周波数域が発生してしまい、振動状態が逆に悪化してしまうことが避け難いという問題があった。
しかも、従来構造のダイナミックダンパでは、有効な制振効果を得るためには、制振対象の質量の10%程度のマス質量を確保しなければならない。そのために、例えば制振対象が自動車の車両フレーム(以下、車両ボデーを含む)等のように重量物である場合には、ダイナミックダンパに大きなマス質量が必要となり、自動車の総重量の増加と、ダイナミックダンパ配設スペースの確保などが新たな問題となり易い。
そこで、本出願人は、先に、特許文献1(特開2003−106370号公報)において、収容空所が内部に形成された中空ハウジングと、かかる中空ハウジングの内部に形成された収容空所に非接着で独立変位可能に収容配置されて、中空ハウジングに対して制振すべき振動が入力される方向で弾性的に当接せしめられる独立マス部材とを含んで構成されたダンパマスを、複数の取付部位で振動部材に固定される金属ばね部材を介して、振動部材に弾性支持せしめた新規な構造の制振装置を提案した。
かかる特許文献1に記載の制振装置においては、ダンパマスをマス系とすると共に金属ばね部材をバネ系として、振動部材である主振動系に対する副振動系としてのダイナミックダンパが構成される。しかも、そのマス系を構成するダンパマス自体において、振動入力に際して中空ハウジングに独立マス部材が打ち当たる当接型制振装置が構成される。その結果、ダイナミックダンパ(共振型制振装置)と当接型制振装置とを組み合わせてなる新規な制振装置構造体が構成されることとなり、前述の如き従来一般のダイナミックダンパに比して、チューニング周波数域を挟んだ低周波側と高周波側の両周波数域に現れる振動伝達率の増大を抑えて、広い周波数域に亘って有効な制振効果を発揮することが出来ると共に、マス系の質量を抑えて有効な制振効果を確保することが可能となるのである。
しかしながら、かくの如き本出願人が先に提案した特許文献1に記載の制振装置においてもなお、車両用制振装置として用いるには、改良すべき余地があった。即ち、例えば自動車のフレームは、非常に重量が大きく且つ長さも大きいことに加えて、段差乗り越え時などに発生する制振すべき振動が数十Hz以下の低周波数域であることから、ダンパマスに対して非常に大きなマス質量を設定する必要がある。
そのために、ダンパマスを構成する独立マス部材の大型化が避けられず、独立マス部材ひいては制振装置が大型化してその配設スペースの確保などが問題となってしまうのである。しかも、当接型制振装置を構成する独立マス部材の質量が大きくなると、独立マス部材の飛び跳ねに必要なエネルギーも大きくなることから、独立マス部材が中空ハウジング内で飛び跳ね難くなってしまい、当接型制振装置としての制振効果が充分に発揮され難くなるおそれもあった。
特開2003−106370号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、車両フレームの低周波大振幅振動に対して優れた制振効果を発揮することが出来る、新規な構造の車両用制振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
本発明に係る車両用制振装置は、 (a)マス収容空所が内部に形成された当接ハウジングと、(b)当接ハウジングのマス収容空所に非接着で独立変位可能に収容配置されて、当接ハウジングに対して制振すべき振動の入力方向で弾性的に当接せしめられる独立マス部材と、(c)車両用スペアタイヤのホイールが取り付けられることにより車両用スペアタイヤをその中心軸が制振すべき振動入力方向となる状態で当接ハウジングに支持せしめる、当接ハウジングに設けられたスペアタイヤ取付ブラケットと、(d)車両フレームに取り付けられる車両フレーム取付部材と、 (e)車両フレーム取付部材に対して当接ハウジングを弾性支持せしめる弾性連結部材とを、有することを、特徴とする。
このような本発明に従う構造とされた車両用制振装置においては、当接ハウジングと独立マス部材によって当接型制振装置が構成されていると共に、かかる当接型制振装置に対して車両用スペアタイヤを加えたマス系を弾性連結部材で弾性支持することでダイナミックダンパ(共振型制振装置)が構成されている。
それ故、当接型制振装置による制振効果を利用して、共振型制振装置における制振効果を、そのチューニング周波数域の前後における振動状態の悪化を抑えつつ、広い周波数域で得ることが出来る。
しかも、共振型制振装置のマスとして、当接型制振装置を利用したことに加えて、自動車に装着されている車両用スペアタイヤも利用したことにより、共振型制振装置に要求されるマス質量を、自動車全体として新たなマス追加を必要とすることなく、車両用スペアタイヤを利用して大きく設定できる。
加えて、当接型制振装置は、共振型制振装置のマス質量として利用されるだけでなく、当接型制振装置における独立マス部材の当接ハウジングへの打ち当たり作用に基づいて、静的なマス質量(車両用スペアタイヤと当接型制振装置の総質量)がより効果的に共振型制振装置のマス質量として機能し得ることとなる。
従って、本発明に従う構造とされた車両用制振装置においては、共振型制振装置のチューニング周波数を低く設定することが可能となり、それによって、車両フレームに発生する低周波大振幅振動に対しても、優れた制振効果を発揮することが出来るのである。
また、本発明においては、当接ハウジングの少なくとも一部が、車両用スペアタイヤのホイールのリム内に入り込んで配設されるようになっていることが望ましい。これにより、本来ならデッドスペースとなるリムの内側の領域を巧く利用して、車両用制振装置を配設することが可能となる。その結果、車両用制振装置の配設スペースを有利に確保することが可能となる。
特に、車両用スペアタイヤは、その回転中心軸線を鉛直方向に向けて装着されることが望ましい。より好適には、車両フレームに対して、車両用スペアタイヤは、その回転中心軸線を鉛直方向に向けて吊り下げ状態で装着されることが望ましい。その場合、車両フレームで支持された、本発明に係る車両用制振装置を、車両フレームと車両用スペアタイヤのリム内で、車両用スペアタイヤのハブ部分と車両フレームの間の余剰空間を利用して装着することが可能となる。その結果、車両用制振装置の配設スペースを一層有利に確保することが可能となる。また、本発明に係る車両用制振装置を装着するに際して、大きな改造や特別な構造変更も必要とならない。
さらに、本発明においては、当接ハウジングには、その中央部分にマス収容空所が形成されていると共に、その外周部分において、弾性連結部材を介して車両フレーム取付部材に支持せしめられる弾性支持部が形成されていることが望ましい。これにより、副振動系のマス部分の重心を弾性連結部材の弾性中心軸線上に位置せしめて、車両フレームの振動入力に際しての弾性連結部材の弾性力に基づく当接ハウジングの加振方向、即ち、独立マス部材の変位方向を振動入力方向に略一致させることが可能となる。その結果、独立マス部材の当接ハウジングに対する相対的な変位方向を安定させて、独立マス部材の当接ハウジングに対する当接位置を含む当接状態を安定させることにより、独立マス部材の当接ハウジングへの当接に基づく制振効果を、一層安定して且つ有効に発揮させることが可能となる。
そこにおいて、上述の如き構成を採用する場合、車両フレーム取付部材が、当接ハウジングの弾性支持部の上下方向両側にそれぞれ離隔して対向位置せしめられていると共に、車両フレーム取付部材と上下の弾性支持部の対向面間にそれぞれ弾性連結部材としてのコイルスプリングが配設されていることが望ましい。これにより、車両用制振装置の全体サイズをコンパクトにすることが可能となる。また、当接ハウジングの首振り振動を抑えることも可能となり、当接ハウジングの加振方向の更なる安定化を図ることが可能となる。
また、このような構成を採用する場合、車両フレーム取付部材が一対の環状部材で構成されており、一対の環状部材が軸方向で重ね合わせられることにより、車両フレーム取付部材が当接ハウジングの弾性支持部を上下方向両側から挟み込むようになっていることが望ましい。これにより、目的とする車両フレーム取付部材を、簡単な構造で有利に実現することが可能となる。
また、本発明においては、マス収容空所に独立マス部材が収容された当接ハウジングと、かかる当接ハウジングに設けられたスペアタイヤ取付ブラケットによって支持されているスペアタイヤとを含んで構成されたダンパマスを、車両フレームに対して、弾性連結部材を介して弾性支持せしめることで構成された、車両フレームに対する副振動系のチューニング周波数が、車両フレームの共振周波数よりも低周波側に設定されていることが望ましい。これにより、所期の制振効果が有利に発揮され得ることとなる。
さらに、本発明においては、車両フレーム取付部材に対する当接ハウジングの相対変位量を制限するストッパ機構が設けられていることが望ましい。これにより、過大な振動が入力された際に、当接ハウジングが車両フレーム取付部材に対して大きく変位せしめられて、当接ハウジングが車両フレーム取付部材に衝突することに起因する打音や振動の発生を軽減乃至は回避することが可能となる。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
図1及び図2には、本発明の第一の実施形態としての車両用制振装置10が示されている。この車両用制振装置10は、内部に形成されたマス収容空所12に独立マス部材14を収容した当接ハウジング16と、かかる当接ハウジング16に取り付けられた車両用スペアタイヤ18とを含んで構成されたダンパマス20(図3参照)を、振動部材としての車両フレーム22(図3参照)に取り付けられる車両フレーム取付部材24に対して、弾性連結部材としての複数のコイルスプリング26を介して弾性支持せしめた構造とされている。そして、図3及び図4に示されているように、車両フレーム22に車両フレーム取付部材24が取り付けられて、ダンパマス20が車両フレーム22に対して複数のコイルスプリング26を介して弾性支持せしめられることにより、主振動系たる車両フレーム22に対する副振動系が構成されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、図1中の上下方向をいうものとし、本実施形態では、かかる上下方向が鉛直方向とされている。
より詳細には、本実施形態の当接ハウジング16は、下面に開口する凹所28が形成されたハウジング本体30と、かかるハウジング本体30に形成された凹所28の開口を覆蓋するハウジング下蓋32とによって構成されている。
ハウジング本体30は、全体として円柱ブロックを呈しており、その下端面に略一定の円形断面で開口する凹所28が形成されている。そこにおいて、本実施形態のハウジング本体30には、凹所28が三つ形成されており、特に本実施形態では、これら三つの凹所28,28,28は、ハウジング本体30の中心軸線回りの周方向に等間隔に並んでいる。これにより、ハウジング本体30の重心は、ハウジング本体30の中心軸線上に存在するようにされている。
また、ハウジング本体30には、凹所28が形成されていない位置において、外周面と上端面に開口する切欠部34が形成されている。これにより、ハウジング本体30の下端部には、凹所28が形成されていない位置において、取付片36が形成されている。即ち、本実施形態の取付片36は、ハウジング本体30の筒状外周面よりも外側(軸直角方向外方)に形成されておらず、ハウジング本体30の筒状外周面よりも内側(軸直角方向内方)に形成されているのである。
一方、ハウジング下蓋32は、厚肉の円板形状を呈しており、特に本実施形態では、その外径寸法がハウジング本体30の外径寸法よりも十分に大きくされている。
そして、上述の如きハウジング本体30とハウジング下蓋32は、ハウジング本体30の開口端面(下面)にハウジング下蓋32の厚さ方向一方の面(上面)が同一中心軸線上で重ね合わせられて、ハウジング本体30の取付片36においてボルト固定されるようになっている。これにより、各凹所28の開口がハウジング下蓋32で覆蓋されて、外部空間から遮断された三つのマス収容空所12,12,12が当接ハウジング16の内部において中心軸線回りの周方向で等間隔に並んで形成されるようになっている。なお、本実施形態では、三つのマス収容空所12,12,12は、互いに独立している。
そこにおいて、本実施形態では、ハウジング下蓋32の外径寸法がハウジング本体30の外径寸法よりも大きくされていると共に、ハウジング本体30とハウジング下蓋32が同一中心軸線上で重ね合わされた状態で固定されていることから、ハウジング下蓋32の径方向中間部分から外周縁に至る部位が、全周に亘って、ハウジング本体30の外周面よりも軸直角方向外方(径方向外方)に略同じ延出寸法(径方向寸法)で位置せしめられるようになっている。換言すれば、当接ハウジング16の下端部分に対して、円環板状の突出片38が形成されているのである。
なお、ハウジング本体30やハウジング下蓋32は、独立マス部材14の当接によって変形等が発生しないように十分な剛性と強度を有する金属材等で形成されており、成形作業性や製造コスト等を考慮して、例えば、鋳鉄等によって形成されている。
そして、上述の如く当接ハウジング16の内部に形成された三つのマス収容空所12,12,12には、それぞれ、一つの独立マス部材14が収容配置されている。この独立マス部材14は、凹所28の内径寸法よりも一回り小さな外径寸法を有する円形断面で、凹所28の深さ寸法よりも小さな軸方向寸法をもって形成された中実の円柱ブロック形状を呈するマス金具40を備えている。なお、マス金具40は、比重の大きな鉄等によって形成されている。
また、マス金具40の軸方向上端部と軸方向下端部には、上部緩衝カバー42と下部緩衝カバー44が取り付けられている。上部緩衝カバー42は、円環板形状を有する上底部46に対して、その外周縁部から下方に延び出す円筒形状の筒部48が一体形成された形状とされており、薄肉の断面逆L字形で周方向に延びる回転体形状とされている。なお、上部緩衝カバー42は、従来から公知の各種ゴム材料によって形成されている。
また、上底部46の上面には、径方向中間部分を周方向に延びて軸方向上方に向かって突出する環状のリブ突起50が一体形成されている。更にまた、筒部48の外周面には、軸方向中間部分を周方向に延びて径方向外方に向かって突出する環状のリブ突起52が一体形成されている。
このような上部緩衝カバー42は、マス金具40と別体形成されており、筒部48の内径寸法がマス金具40の外径寸法よりも僅かに小さくされている。そして、上部緩衝カバー42は、マス金具40の上端部に対して、必要に応じて接着処理が施されて、外嵌固定されるようになっている。これにより、マス金具40の上端面の外周縁部に上底部46が密接状態で重ね合わされると共に、マス金具40の上端部の外周面に筒部48が密接状態で重ね合わせられて、マス金具40の上端角部分が全体に亘って上部緩衝カバー42で覆われるようになっている。
一方、下部緩衝カバー44は、円筒形状を有する筒部54の軸方向下部に底壁部56が一体形成されており、全体として略有底円筒形状を呈している。なお、下部緩衝カバー44は、上部緩衝カバー42と同様に、従来から公知の各種ゴム材料によって形成されている。
また、筒部54の外周面には、軸方向中間部分を周方向に延びて径方向外方に向かって突出する環状のリブ突起58が一体形成されている。更にまた、底壁部56には、その中央部分において、円形断面で軸方向下方に向かって突出するブロック状の当接部60が一体形成されている。また、底壁部56において、当接部60の径方向外方に位置する部分は、当接部60の上端部分の外周面から軸方向上方に向かって延び出すテーパ形状乃至は漏斗形状の支持脚部62とされており、この支持脚部62の外周縁部が、筒部54の下端周縁部に対して一体的に連結されている。
そして、このような下部緩衝カバー44は、筒部54の内径寸法がマス金具40の外径寸法よりも僅かに小さくされて、マス金具40や上部緩衝カバー42と別体形成されており、マス金具40の下端部分に対して、必要に応じて接着処理が施されて、外嵌固定されるようになっている。
すなわち、マス金具40の下端部の外周面には、筒部54が密着状態で重ね合わされていると共に、底壁部56の支持脚部62がマス金具40の下端面の下方に延び出して配設されており、それによって、マス金具40の下端面を含む下端部分が全体に亘って下部緩衝カバー44で覆われているのである。
また、支持脚部62の外周縁部には、筒部54との接続隅部において内面側に突出する支持突起64が周方向の全周に亘って一体形成されており、この支持突起64によって、支持脚部62の外周縁部がマス金具40の下端面の外周縁部に対して当接せしめられて支持されている。これにより、下部緩衝カバー44のマス金具40への装着状態下、支持脚部62と当接部60の実質的に全体がマス金具40の下端面から下方に離隔位置せしめられている。その結果、支持脚部62及び当接部60と、マス金具40の下端面との軸方向対向面間に、支持脚部62の弾性変形に基づく当接部60の軸方向変位を許容し得る肉抜空所66が形成されている。
更にまた、当接部60は、その突出先端面(軸方向下端面)が、マス金具40の中心軸線上に位置せしめられて、かかる中心軸線に対して直交して広がる円形の当接面68とされており、かかる当接面68には、中心軸線回りで周方向に延びるリブ突起70が一体形成されている。これにより、当接面68のハウジング下蓋32への打ち当たりに際しての初期ばね特性が調節されていると共に、当接面68のハウジング下蓋32への打ち当たりに際しての打音の軽減が図られている。
また、かかるリブ突起70が形成された当接部60は、当接面68において、ASTM規格のショアD硬さが80以下とされると共に、軸方向の圧縮弾性率が1〜104 MPaとされ、更に損失正接が10-3以上とされることが望ましい。
さらに、当接部60の軸方向上端面には、中心軸線回りで周方向に延びるリブ突起72が一体形成されて、肉抜空所66内でマス金具40の軸方向下端面に向かって突設されている。これにより、支持脚部62が過大に変形せしめられた際における当接部60のマス金具40への当接に際しての衝撃や打音が、かかるリブ突起72によって緩和されるようになっている。
なお、図面上では明示されていないが、本実施形態では、支持脚部62のばね特性を調節するために、支持脚部62の内周縁部分には、当接部60を挟んだ両側において、それぞれ所定幅で周方向に略1/4周の長さで延びる円弧状の薄肉部が形成されていると共に、それら薄肉部の各中央部分には、通孔が貫設されており、これらの通孔を通じて、肉抜空所66が外部(マス収容空所12)に連通せしめられている。
そして、上述の如き上下の緩衝カバー42,44がマス金具40に組み付けられることで構成された三つの独立マス部材14,14,14は、それぞれ、ハウジング本体30における三つの凹所28に収容配置されて、その状態で、凹所28の開口がハウジング下蓋32で覆蓋されることにより、当接ハウジング16のマス収容空所12に収容されて組み込まれるようになっている。
また、このようにして独立マス部材14がマス収容空所12に収容されて組み込まれた状態下において、各独立マス部材14は、マス収容空所12内で軸方向に飛び跳ねて、当接ハウジング16に対して独立した往復移動が許容されるようになっている。
そこにおいて、本実施形態では、独立マス部材14において最も外径寸法の大きい上下緩衝カバー42,44の筒部48,54におけるリブ突起52,58の外径寸法が、何れも、ハウジング本体30の凹所28の内径寸法よりも0.1〜1.6mmだけ小さくされていると共に、独立マス部材14において軸方向長さの最大寸法となる上部緩衝カバー42の上底部46におけるリブ突起50の突出先端部と下部緩衝カバー44の当接部60におけるリブ突起70の突出先端部との間の軸方向寸法が、ハウジング本体30の凹所28の上底面とハウジング下蓋32の上面との間の対向面間距離よりも1.0mm以上小さく、好ましくは、1.0〜3.0mmだけ小さく設定されている。なお、上述の如く独立マス部材14の軸方向長さの最大寸法は、独立マス部材14を静置せしめて、独立マス部材14の重量により、下部緩衝カバー44が所定量だけ弾性変形せしめられた状態を基準としている。
蓋し、独立マス部材14と凹所28の間の径方向隙間が小さくなり過ぎると、振動入力時に独立マス部材14が凹所28の内面に摺接しやすくなって、独立マス部材14の当接ハウジング16に対する相対的な軸方向変位とそれに基づく制振効果が有効に発揮されにくくなるからであり、一方、独立マス部材14と凹所28の間の径方向隙間が大きくなり過ぎると、振動入力時に独立マス部材14の傾斜等の不規則な変位が発生しやすくなって、所期の制振効果が安定して発揮され難くなるおそれがあるからである。なお、独立マス部材14の軸方向では、独立マス部材14が当接ハウジング16に対して実質的に独立変位可能な程度に、マス収容空所12の大きさが設定されていれば問題ないが、スペース的に大きいと無駄になる。
また、独立マス部材14の飛び跳ね変位に際して、下部緩衝カバー44の当接面68がハウジング下蓋32から完全に離隔するためには、マス収容空所12の軸方向の内法寸法において、静置状態下における独立マス部材14の軸方向長さに加えて、下部緩衝カバー44が独立マス部材14の自重で弾性変形せしめられている長さ分を確保する必要があるが、独立マス部材14は、当接ハウジング16に対する相対変位によって当接ハウジング16に有効な繰り返し荷重(動的荷重)を及ぼし得るものであれば良く、独立マス部材14の飛び跳ね変位に際して、必ずしも下部緩衝カバー44の当接面68がハウジング下蓋32から物理的に離隔する必要はない。
特に本実施形態では、独立マス部材14の変位方向が重力方向と略一致せしめられており、独立マス部材14が重力作用で定位置に復帰されるようになっていることから、防振すべき振動の入力に際しても、上部緩衝カバー42がハウジング本体30における凹所28の上底面に当接せしめられる必要はなく、下部緩衝カバー44のハウジング下蓋32への当接のみによって有効な繰り返し荷重が及ぼされて、目的とする制振効果を得ることが可能となる。
また、本実施形態では、ハウジング下蓋32の下面(ハウジング本体30が重ね合わせられたほうとは反対側の面)の中央部分において、車両用スペアタイヤ18を取り付けるためのスペアタイヤ取付ブラケット74が設けられている。このスペアタイヤ取付ブラケット74は、鉄鋼等の金属材で形成されたプレートにプレス加工が施されたプレス金具によって形成されており、全体として筒形状を呈している。
また、スペアタイヤ取付ブラケット74の軸方向一端側は径方向外方に曲げられており、それによって、スペアタイヤ取付ブラケット74の軸方向一端に対して、円環板状の取付フランジ76が設けられている。なお、本実施形態では、取付フランジ76の外径寸法は、ハウジング本体30の外径寸法と略同じとされている。
このようなスペアタイヤ取付ブラケット74は、ハウジング下蓋32と同一中心軸線上で軸方向他端がハウジング下蓋32の下面中央部分に重ね合わされた状態で、ハウジング下蓋32に対して溶接されることにより、ハウジング下蓋32の下面に固定されている。即ち、スペアタイヤ取付ブラケット74の軸方向一端側に形成された取付フランジ76が、ハウジング下蓋32に対して軸方向で対向位置せしめられた状態で、スペアタイヤ取付ブラケット74がハウジング下蓋32に固定されているのである。
そして、図3に示されているように、スペアタイヤ取付ブラケット74の取付フランジ76に車両用スペアタイヤ18のホイール78の内面が重ね合わせられてボルト固定されることにより、車両用スペアタイヤ18がスペアタイヤ取付ブラケット74を介して当接ハウジング16に取り付けられるようになっている。その結果、マス収容空所12に独立マス部材14が収容された当接ハウジング16と、かかる当接ハウジング16に取り付けられた車両用スペアタイヤ18とを含んで構成されたダンパマス20が形成されるようになっている。
そこにおいて、本実施形態のダンパマス20は、三つの独立マス部材14,14,14が互いに同じとされていると共に、当接ハウジング16の重心が当接ハウジング16の中心軸線上にあり、更に、当接ハウジング16と車両用スペアタイヤ18が同一中心軸上に位置せしめられていることから、当接ハウジング16の中心軸線上に重心が位置せしめられている。
また、本実施形態では、上述の如く車両用スペアタイヤ18が当接ハウジング16に取り付けられた状態で、当接ハウジング16の軸直角方向外方に車両用スペアタイヤ18のホイール78のリム80が位置せしめられて、当接ハウジング16が車両用スペアタイヤ18に組み付けられたホイール78のリム80によって囲まれているのである。換言すれば、当接ハウジング16が車両用スペアタイヤ18のホイール78のリム80内に入り込んで配設されているのである。
なお、ダンパマス20の全体質量は、車両フレーム22の4〜15%であることが望ましい。蓋し、ダンパマス20の全体質量が車両フレーム22の4%に満たないと、有効な制振効果を得ることが難しい場合があり、一方、ダンパマス20の全体質量が車両フレーム22の15%を越えると、重量化が問題となるからである。
更にまた、本実施形態では、当接ハウジング16の突出片38に対して、緩衝ゴム82が設けられている。かかる緩衝ゴム82は、厚肉の円環ブロックの内周面に周方向の全周に亘って略一定の断面形状で延びる凹溝83が形成された形状とされている。なお、緩衝ゴム82は、従来から公知の各種ゴム材料によって形成されている。
このような緩衝ゴム82は、突出片38の略全体が凹溝83に嵌め入れられて組み付けられることにより、突出片38を厚さ方向両側(上下方向両側)から覆い隠すようにして、突出片38に設けられている。即ち、本実施形態では、緩衝ゴム82において突出片38の上下両側に位置せしめられる円環板状部分84,84により、上下の弾性支持部が構成されているのである。なお、緩衝ゴム82は、加硫成形によって突出片38に一体形成されていても良い。また、緩衝ゴム82の突出片38への組み付けに際しては、適当な接着処理を施すようにしても良い。
なお、本実施形態では、緩衝ゴム82の上側の円環板状部分84の内周縁部が、相互にボルト固定されたハウジング本体30とハウジング下蓋32の重ね合わせ面間に圧縮状態で位置せしめられるようになっている。これにより、ハウジング本体30の開口がハウジング下蓋32によって流体密に覆蓋されるようになっている。その結果、当接ハウジング16内に形成された三つのマス収容空所12,12,12に対して、外部から塵や埃等の異物が入らないようにされている。
また、車両フレーム取付部材24は、当接ハウジング16の突出片38を、厚さ方向両側から挟むようにして組み付けられる一対の環状部材86,86によって構成されている。なお、本実施形態では、一対の環状部材86,86は、互いに同じ形状とされていることから、一方の環状部材86についてのみ詳細に説明し、他方の環状部材86についての説明は省略する。
環状部材86は、鉄鋼等の金属材で形成されたプレートに対してプレス加工が施されたプレス金具によって形成されており、全体として薄肉円筒形状を呈する筒状部88を備えている。
かかる筒状部88は、軸方向中間部分において径方向外方に広がる段差部90が形成された段付円筒形状とされており、段差部90を挟んで軸方向一方の側が小径部92とされている一方、軸方向他方の側が大径部94とされている。特に本実施形態では、小径部92の外径寸法が当接ハウジング16の突出片38の外径寸法よりも小さくされている一方、大径部94の内径寸法が当接ハウジング16の突出片38の外径寸法よりも大きくされている。
また、小径部92の軸方向一端(段差部90とは反対側の端)には、全周に亘って径方向内方に延び出す内側フランジ96が設けられている。更にまた、内側フランジ96の内周縁部は、全周に亘って、軸方向他端側へ曲げられている。これにより、小径部92の軸方向一端には、軸方向他方の側に向かって開口する浅底の環状凹溝98が形成されている。そこにおいて、本実施形態では、環状凹溝98における内側の側壁の内径寸法が、ハウジング本体30の外径寸法よりも大きくされている。換言すれば、環状部材86の軸方向一端に形成された開口の内径寸法が、ハウジング本体30の外径寸法よりも大きくされている。
一方、大径部94の軸方向他端側には、全周に亘って径方向外方に延び出す外側フランジ100が設けられている。
このような形状とされた一対の環状部材86,86は、当接ハウジング16と同一中心軸線上で大径側端同士が向き合うように配置されて、外側フランジ100,100同士が相互に重ね合わせられた状態で、外側フランジ100,100において4箇所でボルト固定されることにより、内側フランジ96と段差部90が当接ハウジング16の突出片38を厚さ方向両側から挟むように位置せしめられるようになっている。換言すれば、内側フランジ96と段差部90が、当接ハウジング16の突出片38、延いては、突出片38に設けられた緩衝ゴム82の円環板状部分84,84に対して、厚さ方向に離隔位置せしめられた状態で、当接ハウジング16の軸方向で対向位置せしめられている。なお、図1及び図2では、一対の環状部材86,86が重ね合わせられただけで、ボルト固定されていない状態が示されている。また、図3に示されているように、本実施形態では、一対の環状部材86,86を固定するボルトを利用して、後述する取付ブラケット112が車両フレーム取付部材24(一対の環状部材86,86)に固定されるようになっている。
そして、上述の如き位置関係で配置された当接ハウジング16と車両フレーム取付部材24(一対の環状部材86,86)において、内側フランジ96、即ち、環状凹溝98の底壁部分と当接ハウジング16の突出片38との間には、突出片38の厚さ方向一方の側(ハウジング本体30が突出している上側)に四つのコイルスプリング26が周方向に等間隔に配設されていると共に、突出片38の厚さ方向他方の側(スペアタイヤ取付ブラケット74が突出している下側)にも四つのコイルスプリング26が周方向に等間隔に配設されている。特に本実施形態では、突出片38の厚さ方向一方の側に配設された四つのコイルスプリング26と、突出片38の厚さ方向他方の側に配設された四つのコイルスプリング26は、同じ周方向位置に配設されている。これにより、当接ハウジング16が、複数(合計8つ)のコイルスプリング26によって、車両フレーム取付部材24(一対の環状部材86,86)に対して弾性支持せしめられている。
なお、各コイルスプリング26は、熱間成形又は冷間成形によって成形された円筒形状の圧縮コイルばねとされており、特に本実施形態では、損失係数が0.07以下の金属材によって形成されている。
また、各コイルスプリング26は、突出片38側の端部が、緩衝ゴム82の円環板状部分84,84に開口形成された円環状の位置決め凹溝102に嵌め込まれている一方、内側フランジ96側の端部が、環状凹溝98内に固着された位置決めゴム104に形成された円環状の位置決め凹溝106に嵌め込まれており、それによって、各コイルスプリング26の軸直角方向での位置ずれが防止されている。
特に本実施形態では、各コイルスプリング26の突出片38側の端部が嵌め込まれている位置決め凹溝102と、各コイルスプリング26の内側フランジ96側の端部が嵌め込まれている位置決め凹溝106が、何れも、内周側の側壁のほうが外周側の側壁よりも高くされていることから、各コイルスプリング26の軸直角方向での位置ずれを一層有利に防止することが可能となる。
また、本実施形態では、各コイルスプリング26の突出片38側の端部が嵌め込まれている位置決め凹溝102の内周側の側壁は、当接ハウジング16の突出片38に突設された位置決め筒部108の外周面を被覆していると共に、各コイルスプリング26の内側フランジ96側の端部が嵌め込まれている位置決め凹溝106の内周側の側壁は、環状凹溝98の底壁に突設された位置決め筒部110の外周面を被覆している。これにより、各コイルスプリング26の突出片38側の端部が嵌め込まれている位置決め凹溝102の内周側の側壁と、各コイルスプリング26の内側フランジ96側の端部が嵌め込まれている位置決め凹溝106の内周側の側壁とが、それぞれ、径方向で倒れるように変形することが阻止されている。その結果、各コイルスプリング26の軸直角方向での位置ずれをより一層有利に防止することが可能となる。
そして、本実施形態では、上述の如く配設された複数のコイルスプリング26は、何れも、その軸方向が、独立マス部材14の変位方向、即ち、振動入力方向に略一致せしめられている。即ち、本実施形態では、複数のコイルスプリング26の弾性中心軸線は、振動入力方向となる当接ハウジング16の中心軸線、延いては、当接ハウジング16に取り付けられた車両用スペアタイヤ18の中心軸線が延びる方向と略一致しているのである。そして、このような複数のコイルスプリング26の全体的な弾性中心軸線上に、ダンパマス20の重心が位置せしめられている。
更にまた、上述の如く複数のコイルスプリング26が配置された状態で、段差部90と当接ハウジング16の突出片38に設けられた緩衝ゴム82との離隔距離よりも内側フランジ96と当接ハウジング16の突出片38に設けられた緩衝ゴム82との離隔距離のほうが大きく設定されている。
また、上述の如く複数のコイルスプリング26が配置された状態で、当接ハウジング16における突出片38に設けられた緩衝ゴム82と環状部材86における大径部94の内周面との間には隙間が形成されており、特に本実施形態では、かかる隙間は、当接ハウジング16の突出片38に設けられた緩衝ゴム82と段差部90との離隔距離よりも小さくされている。
なお、本実施形態では、スペアタイヤ取付ブラケット74に車両用スペアタイヤ18が取り付けられた状態で、当接ハウジング16の突出片38に設けられた緩衝ゴム82のうち上側(ハウジング本体30が位置する側)の円環板状部分84と上側の環状部材86における段差部90との離隔距離と、当接ハウジング16の突出片38に設けられた緩衝ゴム82のうち下側(スペアタイヤ取付ブラケット74が位置する側)の円環板状部分84と下側の環状部材86における段差部90との離隔距離とが、略同じ大きさで図示されている。しかし、これら上側と下側の離隔距離は互いに異なっていても良い。それに応じて、上側のコイルスプリング26のばね定数と、下側のコイルスプリング26のばね定数は、適宜に設定される。
また、本実施形態では、上述の如く配設された上下各複数のコイルスプリング26が、何れも圧縮コイルスプリングとされており、ダンパマス20に対して制振すべき振動入力方向両側からそれぞれ圧縮の静的な初期弾性力が及ぼされており、相互の釣り合い位置で弾性保持されている。そして、車両フレーム22からの入力振動が、上下各複数のコイルスプリング26を介して、当接ハウジング16に伝達されることにより、独立マス部材14が飛び跳ね変位せしめられるようになっている。
ここにおいて、独立マス部材14の当接部分のゴムのばねとマス金具40で構成される共振系と、上下各複数のコイルスプリング26と独立マス部材14が収容された当接ハウジング16で構成される他の共振系は、共振周波数が同じとなるように設定されていることが望ましい。それによって、独立マス部材14の当接ハウジング16への打ち当たり作用に基づく制振効果が一層効果的に発揮され得ることとなる。
さらに、本実施形態では、上述の如く当接ハウジング16と車両フレーム取付部材24(一対の環状部材86,86)との間に複数のコイルスプリング26が配置された状態下において、上側の環状部材86における小径部92側の開口端からのハウジング本体30の突出高さと、下側の環状部材86における小径部92側の開口端からのスペアタイヤ取付ブラケット74の突出高さとが、略同じ大きさとされている。
上述の如き構造とされた車両用制振装置10は、当接ハウジング16と、かかる当接ハウジング16に形成されたマス収容空所12に収容されている独立マス部材14とによって、当接型制振装置が構成されていると共に、かかる当接型制振装置(当接ハウジング16と独立マス部材14)に対して車両用スペアタイヤ18を加えて構成されたダンパマス20を複数のコイルスプリング26で弾性支持することでダイナミックダンパ(共振型制振装置)が構成されている。
また、上述の如き構造とされた車両用制振装置10は、図3及び図4示されているように、複数のコイルスプリング26の全体的な弾性中心軸線が鉛直方向に略一致するようにして、車両フレーム取付部材24が適当な取付ブラケット112を介して車両フレーム22に取り付けられることにより、ダンパマス20が、車両フレーム22に対して複数のコイルスプリング26を介して弾性支持せしめられて、主振動系たる車両フレーム22に対する副振動系が構成されるようになっている。なお、本実施形態では、副振動系のチューニング周波数が、車両フレーム22の共振周波数である15Hzよりも低周波側に設定されている。
そして、車両フレーム22の振動が複数のコイルスプリング26とダンパマス20からなる副振動系に入力されて、ダンパマス20が加振変位せしめられることに伴い、当接ハウジング16に対して独立マス部材14が相対的に変位せしめられることとなる。
そこにおいて、特に、副振動系のチューニング周波数域の振動入力時には、ダンパマス20の振幅が大きくなることから、独立マス部材14の当接ハウジング16に対する相対変位も大きくなって、独立マス部材14が当接ハウジング16に対して飛び跳ね的に変位せしめられて、独立マス部材14が当接ハウジング16に対して直接的且つ弾性的に当接せしめられることとなる。
その結果、独立マス部材14の当接ハウジング16への打ち当たり当接に基づいて、車両フレーム22に対する振幅抑制効果が発揮されるのであり、結果的に、ダンパマス20と複数のコイルスプリング26からなる副振動系において、見かけ上の損失係数が大きくなったのと同じ状態が発現される。
従って、上述の如き構造とされた車両用制振装置10においては、独立マス部材14の当接ハウジング16への打ち当たり当接に基づいて、車両フレーム22の振動が抑えられることから、コイルスプリング26自体の損失係数が小さくても、副振動系を構成するダンパマス20の変位量が抑えられて、共振ピーク値が下げられることとなり、それによって、副振動系の付加によって主振動系たる車両フレーム22の固有振動数(副振動系のチューニング周波数)を挟んだ低周波側と高周波側にそれぞれ生ぜしめられる新たな振動のピーク値を抑えることが可能となり、全体として広い周波数域に亘って良好なる制振効果が安定して発揮され得るのである。
そこにおいて、上述の如き構造とされた車両用制振装置10においては、既存の車両用スペアタイヤ18を利用してダンパマス20を構成するようになっていることから、当接ハウジング16や独立マス部材14の質量を大きくしなくても、ダンパマス20の質量を大きくすることが容易になる。これにより、副振動系のチューニング周波数を低く設定することが簡単に出来る。その結果、車両の段差乗り越え時等において車両フレーム22に発生する低周波大振幅振動に対して、優れた制振効果を発揮することが出来るのである。
また、本実施形態では、当接ハウジング16が車両用スペアタイヤ18のホイール78のリム80内に入り込んで配設されていることから、デッドスペースとなる、車両用スペアタイヤ18に組み付けられたホイール78のリム80内の領域を巧く利用して、車両用制振装置10を配設することが可能となる。その結果、車両用制振装置10の配設スペースを有利に確保することが可能となる。
さらに、本実施形態では、当接ハウジング16の中央部分において、三つのマス収容空所12,12,12が形成されていると共に、当接ハウジング16の外周部分において、当接ハウジング16が、複数のコイルスプリング26を介して、車両フレーム取付部材24に対して弾性支持せしめられていることから、複数のコイルスプリング26の全体的な弾性中心軸線上にダンパマス20の重心を位置せしめることが容易になる。これにより、車両フレーム22の振動入力に際しての複数のコイルスプリング26の弾性力に基づくダンパマス20の加振方向、即ち、独立マス部材14の変位方向を振動入力方向に略一致した直線方向とすることが出来る。その結果、独立マス部材14の当接ハウジング16に対する相対変位方向が極めて安定して、独立マス部材14の当接ハウジング16に対する当接位置を含む当接状態が安定化することにより、独立マス部材14の当接ハウジング16への当接に基づいて発揮される制振効果が一層安定して且つ有効に発揮され得るのである。
更にまた、本実施形態では、当接ハウジング16が、その外周部分において、複数のコイルスプリング26を介して、車両フレーム取付部材24に対して弾性支持せしめられていることにより、複数のコイルスプリング26によるダンパマス20の支持状態の安定化を図ることが可能となる。特に本実施形態では、複数のコイルスプリング26が周方向に等間隔に並ぶように配設されていることから、ダンパマス20の支持状態の更なる安定化を図ることが可能となる。
また、本実施形態では、上側の環状部材86の段差部90と当接ハウジング16の突出片38に設けられた緩衝ゴム82における上側の円環板状部分84の外周縁部が振動入力方向で対向位置せしめられていると共に、下側の環状部材86の段差部90と当接ハウジング16の突出片38に設けられた緩衝ゴム82における下側の円環板状部分84の外周縁部が振動入力方向で対向位置せしめられていることから、過大な振動が入力された際に、当接ハウジング16の突出片38が、緩衝ゴム82を介して、環状部材86の段差部90に打ち当たるようになっている。その結果、過大な振動が入力されることに起因する、当接ハウジング16の環状部材86への打ち当たり音を軽減乃至は回避することが可能となる。なお、このことから明らかなように、本実施形態では、当接ハウジング16の突出片38に設けられた緩衝ゴム82と車両フレーム取付部材24を構成する環状部材86の段差部90によって、ストッパ機構が構成されている。
さらに、本実施形態では、当接ハウジング16の突出片38を厚さ方向両側から挟むようにして複数のコイルスプリング26が配設されていることから、ダンパマス20の首振り振動を抑えることが可能となる。特に本実施形態では、環状部材86の大径部94と当接ハウジング16の突出片38に設けられた緩衝ゴム82との間に形成された隙間が小さくされていることから、ダンパマス20の首振り振動を有利に抑えることが可能となる。また、ダンパマス20の首振り振動が発生した場合、当接ハウジング16の突出片38が、緩衝ゴム82を介して、環状部材86の大径部94に当接するようになっていることから、当接音を軽減乃至は回避することが可能となる。
また、本実施形態においては、複数のコイルスプリング26によって副振動系のバネを構成したことにより、板ばねや皿ばねによって副振動系のバネを構成する場合に比して、ばね定数を小さくすることが出来ると共に、耐久性の向上を図ることが可能となる。
即ち、コイルスプリング26は、素線が螺旋状に巻き回された構造とされていることから、板ばねや皿ばねに比して、自由長が大きくなって、応力が小さくなるのであり、それによって、コンパクトなサイズを確保しつつ、耐荷重性能が向上され得るのである。
また、コイルスプリング26は、板ばねや皿ばねに比して、自由長が大きくなっていることから、ばね定数が小さくなり、それによって、例えば、1G(重力加速度)以下の振動エネルギーの小さな低振動が入力された場合においても、独立マス部材14を当接ハウジング16に対して容易に飛び跳ね変位せしめることが可能となる。
更にまた、コイルスプリング26は、設計,製造及び管理が容易であることから、製品におけるばね定数が安定するという利点もある。
また、本実施形態では、金属製のコイルスプリング26によって副振動系のバネ部分が構成されていることから、ゴム弾性体によって副振動系のバネが構成されている場合に比して、経時劣化によるばね特性の変化や耐久性の低下を一層有利に防止することが出来るのであり、それによって、長期間に亘ってより安定した制振効果を発揮することが出来る。
更にまた、金属製のコイルスプリング26は、各種技術分野で広く用いられていることから、製造コストを抑えることが出来ると共に、多くの種類が提供されている中から適当な適当なコイルスプリング26を選択乃至は変更することにより、ばね特性を容易に変更調節することが出来るから、チューニング自由度を向上することが出来る。
また、金属製のコイルスプリング26を採用していることにより、ばね特性の温度依存性が殆どなくなる。特に本実施形態では、損失係数が0.07以下の金属材で形成されたコイルスプリング26が採用されていることから、温度依存性が小さくて安定した制振効果を発揮することが出来る。
また、損失係数が0.07以下の金属材で形成されたコイルスプリング26を採用したことにより、ダンパマス20に対して大きな振動振幅が生ぜしめられる。その結果、独立マス部材14が当接ハウジング16に対してより効率的に飛び跳ね変位して当接せしめられることとなって、目的とする制振効果をより効果的に発揮することが出来る。
また、本実施形態では、ダンパマス20に対して制振すべき振動入力方向両側からそれぞれ圧縮又は引張の静的な初期弾性力が及ぼされるようになっていることから、静的な初期弾性力の大きさを適当に調節することにより、副振動系のチューニング周波数を容易に変更調節することが出来る。
続いて、本発明の第二実施形態としての車両用制振装置114について、図5に基づいて説明する。なお、以下の説明において、第一実施形態と同様な構造とされた部材及び部位については、図中に、第一実施形態と同一の符号を付すことにより、それらの詳細な説明を省略する。
本実施形態の車両用制振装置114は、第一実施形態の車両用制振装置(10)に比して、当接ハウジング116の構造が異なっている。より詳細には、本実施形態の当接ハウジング116は、第一実施形態で採用されていたハウジング本体(30)と同様な構造のハウジング構成部材118,118が互いに開口端側で重ね合わされてボルト固定された構造とされている。即ち、本実施形態の当接ハウジング116は、一対のハウジング構成部材118,118で構成されているのである。なお、スペアタイヤ取付ブラケット74は、一方のハウジング構成部材118の底壁部分に固定されるようになっている。
このような構造とされた車両用制振装置114においても、マス収容空所12に独立マス部材14が収容された内部に形成されたマス収容空所12に独立マス部材14を収容した当接ハウジング116と、かかる当接ハウジング116に取り付けられた車両用スペアタイヤ18とを含んで構成されたダンパマス20を、複数のコイルスプリング26を介して、車両フレーム22に取り付けられる車両フレーム取付部材24に弾性支持せしめた構造とされていることから、第一実施形態と同様な効果を得ることが出来る。
以上、本発明の幾つかの実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記第一及び第二実施形態において、上側に配設された四つのコイルスプリング26と下側に配設された四つのコイルスプリング26の周方向位置はずれていても良い。
また、前記第一及び第二実施形態において、当接ハウジング16を構成する部材の形成材料は、金属材に限定されるものではないが、5×103 MPa以上の弾性率を有する剛性材であることが望ましい。これにより、独立マス部材14の当接ハウジング16に対する繰り返しの打ち当たり当接に基づく制振効果を有利に確保することが出来る。
さらに、独立マス部材は、その全体をゴム弾性体や合成樹脂材,或いはそれらの発泡材で形成したり、補強的に金属等の剛性材を固着するようにしても良い。
更にまた、一つのマス収容空所に複数の独立マス部材を収容配置するようにしても良い。この場合、独立マス部材単体の質量を小さくすることが可能となり、それによって、振動入力に際しての独立マス部材の飛び跳ね変位が容易に生ぜしめられて、目的とする制振効果が一層有効に発揮され得るのである。
また、独立マス部材が当接ハウジングに対して振動入力方向において円筒状外周面乃至は球状外周面で打ち当たるようにしても良い。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
本発明の第一実施形態としての車両用制振装置を示す縦断面図であって、図2のI−I方向の縦断面図。 同車両用制振装置の平面図。 同車両用制振装置の車両フレームへの取付状態を説明するための縦断面図であって、図4のIII=III方向の縦断面図である。 同車両用制振装置が車両フレームに取り付けられた状態を説明するための平面図。 本発明の第二実施形態としての車両用制振装置を示す縦断面図。
符号の説明
10:車両用制振装置,12:マス収容空所,14:独立マス部材,16:当接ハウジング,18:車両用スペアタイヤ,22:車両フレーム,24:車両フレーム取付部材,26:コイルスプリング,74:スペアタイヤ取付ブラケット,78:ホイール

Claims (7)

  1. マス収容空所が内部に形成された当接ハウジングと、
    該当接ハウジングの前記マス収容空所に非接着で独立変位可能に収容配置されて、該当接ハウジングに対して制振すべき振動の入力方向で弾性的に当接せしめられる独立マス部材と、
    車両用スペアタイヤのホイールが取り付けられることにより該車両用スペアタイヤをその中心軸が制振すべき振動入力方向となる状態で前記当接ハウジングに支持せしめる、該当接ハウジングに設けられたスペアタイヤ取付ブラケットと、
    車両フレームに取り付けられる車両フレーム取付部材と、
    該車両フレーム取付部材に対して前記当接ハウジングを弾性支持せしめる弾性連結部材と
    を、有することを特徴とする車両用制振装置。
  2. 前記当接ハウジングの少なくとも一部が、前記車両用スペアタイヤのホイールのリム内に入り込んで配設されるようになっている請求項1に記載の車両用制振装置。
  3. 前記当接ハウジングには、その中央部分に前記マス収容空所が形成されていると共に、その外周部分において、前記弾性連結部材を介して前記車両フレーム取付部材に支持せしめられる弾性支持部が形成されている請求項1又は2に記載の車両用制振装置。
  4. 前記車両フレーム取付部材が、前記当接ハウジングの前記弾性支持部の上下方向両側にそれぞれ離隔して対向位置せしめられていると共に、該車両フレーム取付部材と該上下の弾性支持部の対向面間にそれぞれ前記弾性連結部材としてのコイルスプリングが配設されている請求項3に記載の車両用制振装置。
  5. 前記車両フレーム取付部材が一対の環状部材で構成されており、該一対の環状部材が軸方向で重ね合わせられることにより、該車両フレーム取付部材が前記当接ハウジングの前記弾性支持部を上下方向両側から挟み込むようになっている請求項4に記載の車両用制振装置。
  6. 前記マス収容空所に前記独立マス部材が収容された前記当接ハウジングと、該当接ハウジングに設けられた前記スペアタイヤ取付ブラケットによって支持されている前記スペアタイヤとを含んで構成されたダンパマスを、前記車両フレームに対して、前記弾性連結部材を介して弾性支持せしめることで構成された、該車両フレームに対する副振動系のチューニング周波数が、該車両フレームの共振周波数よりも低周波側に設定されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用制振装置。
  7. 前記車両フレーム取付部材に対する前記当接ハウジングの相対変位量を制限するストッパ機構が設けられている請求項1乃至6の何れか1項に記載の車両用制振装置。
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