JP2009074143A - 導電性シートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】開口部における異物の付着が抑制された、光透過性に優れる導電性シートの製造方法を提供する。
【解決手段】パターン形成された導電層を有する透明基板を電気めっき液に浸漬し、前記導電層に通電することにより電気めっき処理すると共に、前記導電層の通電されてない部分を、前記電気めっき液に含まれる酸で溶解させることを特徴とする導電性シートの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、プラズマディスプレイパネルの前面フィルタや、病院などの電磁波シールドを必要とする建築物の窓材料(例えば貼着用フィルム)などに有用な導電性シートの製造方法に関する。
近年、OA機器や通信機器等の普及にともない、これらの機器から発生する電磁波によりもたらされる人体への影響が懸念されている。また、電磁波により精密機器の誤作動等を起こす場合もあり、電磁波が問題視されている。
従来から、OA機器のPDPの前面フィルタとして、電磁波シールド性を有し、かつ光透過性の窓材が開発され、実用に供されている。このような窓材はまた、携帯電話等の電磁波から精密機器を保護するために、病院や研究室等の精密機器設置場所の窓材としても利用されている。
このような電磁波シールド性光透過窓材として、図2に示すように、透明基板210上にメッシュ状などにパターン形成された導電層220が設けられた導電性シートが用いられている。このような導電層220では、導電性のメッシュ部によって電磁波がシールドされ、開口部によって光の透過性が確保されている。
パターン形成された導電層220の作製方法としては、(1)透明基板上に形成した銅箔等の層を所定のパターンにエッチング加工する方法、(2)透明基板上に導電性インクを所定のパターンに印刷する方法などが知られている。この他にも、(3)透明基板上に、溶剤に対して可溶な物質によってドットを形成し、前記透明基板上に前記溶剤に対して不溶な導電材料よりなる導電材料層を形成し、前記透明基板を前記溶剤と接触させて前記ドット及び前記ドット上の導電材料層を除去する方法なども知られている。
従来の導電性シートでは、一般的には、上記した方法により所定のパターンを有する導電層220を形成した後、さらに電気めっき処理が行われる(特許文献1及び2)。このように導電層220上に金属めっき層230を設けることにより、電磁波シールド性を向上させることが可能となる。従来の電気めっき処理では、一般的には、硫酸銅などの銅イオン、硫酸、及び塩素を含む電気めっき液が用いられている。
特開2004−335609号公報 特開2006−144121号公報
従来の導電性シートでは、細線で開口率が高く、且つ開口部の光透過性が高い導電層が必要とされている。しかしながら、従来の製造方法では、透明基板上に所定のパターンを有する導電層を形成する際に、めっき金属、導電性インクなどの導電層形成用材料が開口部にも付着し、開口部に導電層が形成される場合があった。このように所定のパターンとは独立して開口部に導電層が形成されるのは、光透過性の低下を招き望ましくない。
したがって、本発明は、開口部における導電層の形成が抑制された、光透過性に優れる導電性シートの製造方法を提供することを目的とする。
開口部に形成された導電層は、パターン形成された導電層とは別に独立して存在するため、電気めっき処理時にパターン形成された導電層に通電しても、開口部に形成された導電層には電流が流れない。そこで、本発明は、電気めっき処理により導電層上に金属めっき層を設ける際に、開口部に付着した通電されない導電層を電気めっき液に含まれる酸で溶解させることにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、パターン形成された導電層を有する透明基板を電気めっき液に浸漬し、前記導電層に通電することにより電気めっき処理すると共に、前記導電層の通電されていない部分を、前記電気めっき液に含まれる酸で溶解させる導電性シートの製造方法により上記課題を解決する。
以下に、本発明の好適な実施形態を列記する。
(1)前記電気めっき液のpHが、2以下である。
(2)前記電気めっき液が、硝酸を含む。
(3)前記電気めっき液が、硝酸を5〜50質量%含む。
(4)前記電気めっき液の温度が40〜60℃である。
(5)前記電気めっき処理を、0.1〜15A/cm2のカソード電流密度で1〜10分間行う。
本発明の方法により得られる導電性シートは、メッシュ状などにパターン形成された導電層の開口部における導電層の形成がなく、光透過性に優れる。また、本発明の方法によれば、新たな工程を設けずに簡易且つ安価な方法により、光透過性に優れる導電性シートを製造することができる。前記導電性シートは、電磁波シールド性を有し、特に光透過性に優れることから、PDPなどの前面フィルタ用として特に好適な電磁波シールド性光透過窓材として使用することができる。
本発明の方法では、パターン形成された導電層を有する透明基板を電気めっき液に浸漬し、前記導電層に通電することにより電気めっき処理する際に、前記導電層の通電されない部分を、前記電気めっき液に含まれる酸で溶解させる。これにより、パターン形成された導電層上に金属めっき層を形成しつつ、開口部に形成された前記パターンとは独立して存在する導電層を溶解除去することができる。したがって、新たな工程を設けずに簡易且つ安価な方法で、光透過性に優れる導電性シートを作製することが可能となる。
本発明の方法に使用する電気めっき液は、導電層の通電されてない部分を除去するための酸を少なくとも含むものを使用し、酸性度が高いものを使用するのが好ましい。したがって、本発明の方法では、透明基板上に所定のパターンで形成された導電層上に電気めっき処理により金属めっき層を形成する際に、酸性度の高い電気めっき液を用いるのが好ましい。このような電気めっき液のpHとして具体的には、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、特に好ましくは−0.9〜0.5である。これにより、導電層の通電されてない部分の高い除去効率が得られる。
前記電気めっき液に含まれる酸として好ましくは、導電層の通電されてない部分の高い除去効率が得られることから、硝酸が挙げられる。前記硝酸の濃度は、電気めっき液に対して、5〜50質量%、特に10〜30質量%であるのが好ましい。
前記電気めっき液は、硝酸の他に、めっき金属イオンと、電気めっき効率を向上させるための酸成分として有機酸及び/又は無機酸とを含むものが好ましく用いられる。
前記めっき金属イオンとしては、得られる金属めっき層が優れた導電性を有するものであればよく、銅、亜鉛、ニッケル、クロム、スズ、銀、及び金などの金属のイオンが好ましく挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上の合金などとして使用してもよい。なかでも、開口部に異物を形成し難く、均一な金属めっき層を形成できることから、銅イオンが好ましい。
前記めっき金属イオン源としては、電気めっき液中で溶解する化合物であれば特に制限されず、前記めっき金属の塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、スルファミン酸塩、アンモニウム塩などを使用することができる。例えば、硫酸銅、硫酸銅五水和塩、酸化銅、塩化銅、炭酸銅、ピロリン銅、メタンスルホン酸銅、プロパンスルホン酸銅などのアルカンスルホン酸銅、プロパノールスルホン酸銅などのアルカノールスルホン酸銅、酢酸銅、クエン酸銅、酒石酸銅などの有機酸銅及びその塩;塩化亜鉛、硫酸亜鉛、亜硫酸亜鉛、ホウフッ化亜鉛、スルファミン酸亜鉛、メタンスルホン酸亜鉛などの亜鉛塩;酢酸ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケルなどのニッケル塩などを使用することができる。これらの金属塩は、1種を単独で使用することもでき、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
前記めっき金属イオン源として、コスト、廃液処理などの観点から、硫酸銅又は硫酸銅五水和塩が好ましく挙げられる。前記電気めっき液は、硫酸銅を50〜140g/L、特に50〜100g/L含むのが好ましい。
前記電気めっき効率を向上させるための酸成分である有機酸としては、メタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、ピロリン酸などを使用できる。また、無機酸としては、硫酸などを使用できる。なかでも、前記電気めっき液は、前記酸成分として、硫酸を使用するのが好ましい。前記電気めっき液の硫酸の濃度は、78.4〜245g/L、特に98〜392g/Lであるのが好ましい。
前記電気めっき液は、優れためっき効率が得られることから、塩素イオンをさらに含むのが好ましい。塩素イオン源としては、塩酸、塩素、塩化ナトリウムなどを使用することができる。なかでも塩酸を含むのが好ましい。前記電気めっき液における塩酸の濃度は、10〜50mg/L、特に15〜45mg/Lであるのが好ましい。
前記電気めっき液は、必要に応じて、界面活性剤、硫黄化合物、及び窒素化合物などをさらに含んでいてもよい。
前記界面活性剤としては、非イオン系ポリエーテル高分子界面活性剤などを使用できる。非イオン系ポリエーテル高分子界面活性剤は、通常、ポリマー成分と称されているものであり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリオキシアルキレングリコール等のポリエーテル化合物等を用いることができる。硫黄化合物は、通常、ブライトナーと称されているものであり、公知の添加剤成分から適宜選択して用いればよい。例えば、3−メルカプトプロパンスルホン酸、そのナトリウム塩、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド、その2ナトリウム塩、N,N−ジメチルジチオカルバミン酸(3−スルホプロピル)エステル、そのナトリウム塩等の硫黄化合物を用いることができる。窒素化合物は、通常、レベラーと称されているものであり、これも公知の添加剤成分から適宜選択して用いればよい。例えば、フェナジン化合物、サフラニン化合物、ポリアルキレンイミン、チオ尿素誘導体、ポリアクリル酸アミド等の窒素化合物を用いることができる。
添加剤の濃度についても特に限定はないが、例えば、界面活性剤は0.01〜10g/L程度、硫黄化合物は0.1〜20mg/L程度、窒素化合物は0.1〜200mg/L程度とすることができる。
本発明の電気めっき処理は、上述した所定の電気めっき液を用いる以外は、公知の方法と同様にして行えばよい。具体的には、パターン形成された導電層を有する透明基板を陰極電極として用い、この陰極電極と、陽極電極とを、上述した電気めっき液中に浸漬させて通電する、従来公知の方法が用いられる。前記方法では、パターン形成された導電層に通電ロールを当接して陰極電圧を印加することにより、前記導電層に通電が行われる。
電気めっき処理は、パターン形成された導電層を有する透明基板として枚葉状のものを用いてバッチ式の電気めっき装置を用いて行ってもよく、パターン形成された導電層を有する透明基板として長尺状のものを用いてロールトゥロール方式の電気めっき装置を用いて行ってもよい。
電気めっき処理する際の電気めっき液の温度は、40〜60℃、特に45〜60℃であるのが好ましい。これにより、異物の除去効率を高くすることができる。
陽極電極の材質としては、白金、銅、銅合金、ニッケル、銀、金、亜鉛又はスズなどの金属を使用することが可能である。また、これらの金属がコーティングされたチタン板などを使用してもよい。
電気めっき処理は、0.1〜15A/cm2、特に5〜10A/cm2のカソード電流密度で1〜10分間、特に1〜5分間行うのが好ましい。
また、電気めっき処理時に電気めっき液を、空気撹拌、ポンプ撹拌、陰極電極の揺動などにより撹拌するのが好ましい。電気めっき処理は、複数の電気めっき槽を設置して、複数回行っても良い。このとき、電気めっき槽ごとに、上記範囲内であれば電気めっき液の組成やカソード電流密度を変えてもよい。
電気めっき処理により通電された導電層上に形成される金属めっき層の厚さは、0.1〜10μm、特に2〜5μmであればよい。金属めっき層の厚さが、0.1μm未満では金属めっき層による十分な導電性の向上ができない恐れがあり、10μmを超えると金属めっき層が幅方向に広がり、開口率が低下する恐れがある。
金属めっき層を形成した後、黒化処理を行っても良い。これにより、導電性シートに防眩性を付与することができる。黒化処理は、例えば、金属めっき層の酸化処理、クロム合金等の黒色メッキなどにより行うことができる。
以下に、本発明の導電性シートの製造方法に使用される材料などについて説明する。
本発明の導電性シートに使用される透明基板としては、透明性(特に、可視光に対して)を有する基板であれば良く、その材料の例として、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート)、アクリル樹脂(例、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる。これらの中で、加工処理(加熱、溶剤、折り曲げ)による劣化が少なく、透明性の高い材料であるPET、PEN、PC、PMMAが好ましい。
この透明基板の厚さは、通常の場合1μm〜5mmの範囲、特に10μm〜1mmの範囲にあることが好ましい。
本発明の導電性シートは、枚葉状フィルムよりなるものであってもよく、ロールから巻き出された連続長尺状のフィルムであってもよい。したがって、透明基板は、枚葉状であってもフィルム状であってもよい。
本発明の方法に使用されるパターン形成された導電層を有する透明基板において、導電層が有するパターンは、メッシュ状であるのが好ましい。メッシュ状の導電層の線幅は、一般に20μm以下、好ましくは5〜15μm、特に5〜12μmである。線のピッチは200μm以下が好ましい。また、開口率は75〜95%であることが好ましく、特に80〜95%である。なお、開口率とはメッシュの線幅と1インチ幅に存在する線の数から計算で求めたものである。
導電層の線で囲まれた開口部の形状は、円、楕円、角形(4角形、6角形)など任意の形状とすることができるが、一般に角形であり、特に正方形であることが好ましい。また線は網状であるが、格子状とすることが好ましい。
透明基板上にメッシュ状などのパターンを有する導電層を形成する方法は、特に制限されないが、細線で開口率が高いメッシュ状の導電層を形成できることから以下の第1〜第4の方法が好ましく挙げられる。
(第1の導電層形成方法)
メッシュ状など、所定のパターンを有する導電層の第1の形成方法として、
透明基板上に、溶剤に対して可溶な材料を含む印刷インクをドット状に印刷してドット状のパターンを形成する工程、
前記パターンを有する透明基板上に、前記溶剤に対して不溶な導電材料を含む導電材料層を形成する工程、次いで
前記溶剤により、前記パターン及び前記パターン上の導電材料層を除去することによりメッシュ状の導電層を形成する工程、
を含む方法が好ましく用いられる。
図1に本発明で好適な導電層の第一の形成方法を説明する概略図を示す。
まず(1)、(2)に示すように透明フィルム等の透明基板110上に水等の溶剤に対して可溶な材料を含む印刷インクを用いてドット121を印刷する。次に、(3)に示すように、透明基板110のドット121の上及びドット121の間の透明基板110の露出面のすべてを覆うように金属の蒸着等により導電材料層122を形成する。ドット上にも導電材料層122が設けられるが、余り厚すぎると後の洗浄でドットを除去できなくなる。次に、この透明基板110を水等の溶剤によって洗浄する。この際、必要に応じ、超音波照射やブラシ、スポンジ等で擦るなどの溶解促進手段を併用してもよい。
上記洗浄により、(4)に示すように可溶性のドット121が溶解し、このドット121上の導電材料層122も透明基板110上から剥れて除去される。そして、ドット同士の間の領域に形成された導電材料よりなる導電層(導電性パターン)120が透明基板110上に残る。この導電性パターン120は、ドット121間の領域を占めるものであるから、全体としてはメッシュ状(格子状)となる。
したがって、ドット121間の間隙を狭くしておくことにより、線幅の小さい格子状の導電性パターン122が形成される。また、各ドット121の面積を広くすることにより、開口率の大きなメッシュ状の導電層105が形成される。ドット121を形成するための前記水等に対して可溶な印刷インクは、一般に樹脂、顔料等を含むものであり、低粘性のものでも使用できる。このような印刷インクを用いて、透明基板110上にドット状に印刷することにより、微細なドットパターンを形成可能なドットを形成することができる。なお、上記(4)の工程後、必要に応じ仕上げ洗浄(リンス)し、乾燥することにより、メッシュ状の導電層が得られる。
前記第1の方法において、透明基板上にドット状のパターンを形成する際に、透明基板上にアンカーコート層が設けられていてもよい。これにより透明基板とメッシュ状の導電層との接着性を向上させることができる。
アンカーコート層は、透明基板に、例えば、少なくとも合成樹脂(一般に熱硬化性樹脂)を含む塗布液を、ロールコータ等により塗布し、加熱硬化することにより形成される。
前記アンカーコート層は、活性水素を含む基を有する合成樹脂、少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを含む組成物の硬化層であるのが好ましい。
活性水素を含む基を有する合成樹脂としては、ポリオール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、アクリル樹脂及び酢酸ビニル樹脂を挙げることができ、なかでもポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂及び酢酸ビニル樹脂が好ましく、ポリエステルポリウレタン樹脂が特に好ましい。これらは単独で使用しても、2種以上混合して使用しても良い。また他の樹脂を少量(20質量%以下程度)併用しても良い。
上記活性水素を含む基としては、ヒドロキシル基、1級アミノ基、2級アミノ基、カルボキシル基等を挙げることができ、ヒドロキシル基が好ましい。活性水素を含む基の当量(例、ヒドロキシル価)は、樹脂(1g)に対して10〜300mgKOH/g、特に30〜100mgKOH/gの範囲が好ましい。
上記ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4’−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2’,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを挙げることができる。またトリメチロールプロパンのTDI付加体等の3官能以上のイソシアネート化合物等のポリイソシアネートも使用することができる。これらの中で芳香族系ポリイソシアネートが好ましい。
合成樹脂に対するポリイソシアネートの使用量は、2〜30質量%、特に5〜20質量%が好ましい。
本発明のアンカーコート層は、さらに、シリコーンオイルを含有しているのが好ましい。含有量は0.0005〜5質量%、特に0.0005〜0.5質量%が好ましい。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、及びエポキシ変性シリコーンオイルを挙げることができる。
ジメチルシリコーンオイルは、一般に、末端、側鎖がメチル基のジメチルポリシロキサンであり、メチルフェニルシリコーンオイルは、末端、側鎖がメチル基のジメチルポリシロキサンの側基のメチル基の一部がフェニル基に置き換わったフェニル化ポリシロキサンであり、メチルハイドロジェンシリコーンオイルは末端、側鎖がメチル基のジメチルポリシロキサンの側基のメチル基の一部が水素に置き換わった水素化ポリシロキサンであり、これらは一般に直鎖状シリコーンオイルである。
アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、及びエポキシ変性シリコーンオイルは、一般に、上記ポリシロキサンの末端又は側鎖の一部が有機基(ポリエーテル基、アルキル基又はエポキシ基)に置き換わった変性ポリシロキサンである。
上記シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイルが好ましい。
アンカーコート層は、上記シリコーンオイル、合成樹脂等を含む塗布液を塗布、硬化することにより得ることができる。その塗布方法としては、グラビアコート、マイクログラビアコート、ダイコート、リップコート、ロールリバースコート、ワイヤーバーコート、キスコート等既存のコーティング法のいずれでも採用することができる。硬化は、常温でも可能であり、その場合、例えば1〜5日(特に2〜4日)の間放置する。加熱すれば、その温度に応じて加熱時間は短縮される。
透明基板上に塗工した塗布液は、60〜120℃、特に90〜110℃に加熱して、硬化させるのが好ましい。この際の加熱時間は、1〜5分程度であればよい。
アンカーコート層には、さらにフィラー、界面活性剤などを添加することができる。
また、前記塗布液には、上述した各成分の他にも、溶剤として、水、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフランなどをさらに含んでいてもよい。また、これらは1種単独で用いられてもよい他、2種以上を混合して用いてもよい。
アンカーコート層の厚さは、0.05〜5μm、特に0.05〜1μmが好ましい。このアンカーコート層は、その厚さが薄過ぎると基板等との表面張力の相違による塗布ムラが発生し易くなり、厚過ぎるとブロッキングが発生しやすくなり好ましくない。
前記第1の方法では、透明基板上、好ましくはアンカーコート層を有する透明基板上に、溶剤に対して可溶な材料を含む印刷インクをドット状に印刷してドット状のパターンを形成する工程を実施する。
前記印刷インクの材料は、後の除去に用いる溶剤に応じて選択される。例えば、溶剤として水系溶剤を用いる場合には水溶性物質が用いられ、溶剤として油系溶剤を用いる場合には油溶性物質が用いられる。前記溶剤としては、公知の有機溶媒等も挙げられるが、安価で、環境への影響を考慮すると、水が特に好ましい。水は、通常の水のほか、水に可溶な有機溶剤(例、メタノール、エタノール等のアルコール)、酸、アルカリ又は界面活性剤を含んだ水溶液であってもよい。水とメタノールとの組見合わせが好ましく、その割合は質量比で5:95〜50:50が好ましい。
前記溶剤が水である場合、前記ドットパターンの形成に使用する材料としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂などの水溶性高分子材料が好ましく、特に、良好な水溶性を有する点で、ポリビニルアルコールが好ましい。水溶性樹脂の分子量としては、一般に10000〜100000(GPCによる数平均分子量)、特に29000〜40000が好ましい。特に、ポリビニルアルコールを用いる場合、その重合度は一般に300〜1500、特に500〜1000であることが好ましく、また鹸化度は85〜90であることが好ましい。
前記印刷インクには、所望により、仕上がり状況を確認し易くするために顔料や染料等を混合してもよい。顔料として、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、マイカ、クレー等を挙げることができるが、硫酸バリウムが好ましい。顔料は水溶性樹脂に対して20〜200質量%の範囲、20〜150質量%の範囲が好ましい。
上記ドットは、それらの間の透明基板の、好ましくは透明基板上のアンカーコート層の露出領域がメッシュ状、好ましくはこの露出領域の線幅が30μm以下のメッシュ状となるように印刷される。透明基板上に印刷インクを用いてドットパターンを形成する方法としては、線幅が小さくかつ開口率の高い導電性パターンを形成可能な点で、印刷法が採用される。印刷手法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、静電印刷等が挙げられ、これらの中でも、より導電性パターンの細線化が可能な点で、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷が特に好ましい。
ドットの形状は、円、楕円、角形(4角形、6角形)など任意であるが、角形とくに正方形であることが好ましい。ドットの印刷厚さは、特に限定されるものではないが、一般には0.1〜5μm程度である。
前記第1の方法では、次に、前記パターンを有する透明基板上に、前記溶剤に対して不溶な導電材料を含む導電材料層を形成する工程を実施する。ドットの印刷後、好ましくは乾燥し、次いで導電材料層を形成する工程を実施する。
前記導電材料としては、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、すず、カドミウム、銀、プラチナ、銅、チタン、コバルト、鉛等の金属又は合金或いはITO等の導電性金属酸化物が好適である。
前記導電材料層の厚さは、薄過ぎると電磁波シールド性能が不足するので好ましくなく、厚過ぎると得られる導電性シートの厚さに影響を及ぼすと共に、視野角を狭くしてしまうことから、0.5〜100μm程度とするのが好ましい。
導電材料層の形成手法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、化学蒸着などの蒸着法(気相メッキ法)や、液相メッキ(電解メッキ、無電解メッキ等)、印刷、塗布などが例示されるが、広義の気相メッキ(スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、化学蒸着)又は液相メッキが好適である。
導電材料層を塗布で形成する場合、不溶な導電材料として、粒径が1μm以下の金属及び/又は金属化合物粒子(好ましくは、金属及び/又は金属化合物粒子が、特に酸化銀粒子又は有機銀粒子)を用い、これらを含む塗布液を塗布、乾燥することにより得られる。
本発明の方法では、導電材料層の形成後、前記溶剤、好ましくは水により、前記パターン及び前記パターン上の導電材料層を除去することによりメッシュ状の導電層を形成する工程を実施する。
前記溶剤などで前記パターン及び前記パターン上の導電材料層を除去する際には、必要に応じ、超音波照射やブラシ、スポンジ等で擦るなどの溶解促進手段を併用してもよい。
導電層の線で囲まれた開口部の形状は、前述のドットと同様に、円、楕円、角形(4角形、6角形)など任意の形状とすることができる。
(第2の導電層形成方法)
メッシュ状など、所定のパターンを有する導電層の第2の形成方法として、
透明基板上に、導電性粒子及びバインダ樹脂を含む導電性インキをメッシュ状など所定のパターンに印刷して導電層を形成する工程、を含む方法が好ましく用いられる。
前記第2の方法においても、透明基板上に導電性インキを所定のパターンに印刷する際に、透明基板上にアンカーコート層が設けられていてもよい。これにより透明基板と導電層との接着性を向上させることができる。なお、前記アンカーコート層については、第1の方法において上述したアンカーコート層と同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
前記導電性インキに使用される導電性粒子としては、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、スズ、カドミウム、銀、プラチナ、銅、チタン、コバルト、鉛等の金属、合金;或いはITO、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム−酸化スズ(ITO、いわゆるインジウムドープ酸化スズ)、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO、いわゆるアンチモンドープ酸化スズ)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZAO;いわゆるアルミニウムドープ酸化亜鉛)等の導電性酸化物などを挙げることができる。これらは一種段独で用いられてもよい他、二種以上を混合して用いてもよい。
なかでも、前記導電性粒子としては、銀、銅、金、ニッケル、インジウム及びスズが好ましく挙げられる。
前記導電性粒子の平均粒子径は、10nm〜10μm、特に10nm〜5μmであるのが好ましい。
前記導電性インキにおける導電性粒子の含有量は、前記バインダ樹脂の100質量部に対して、400〜1000質量部、特に400〜800質量部とするのが好ましい。これにより、導電性粒子同士の接触性に優れる導電層を形成することができる。
前記導電性インキに用いられるバインダ樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、含ケイ素樹脂等を挙げることができる。さらに、これらの樹脂のうち熱硬化性樹脂であることが好ましい。
前記導電性インキには、適度な粘度に調整するため、さらに溶剤を含んでいてもよい。前記溶剤としては、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、セリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール等のアルコール;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のアルキルエーテルが挙げられる。
前記導電性インキは、さらに、黒色着色剤をさらに含有していてもよい。これにより、印刷精度の向上とともに、導電性シートにおいて透明基板側から見た際の防眩効果を付与することができる。
前記黒色着色剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、黒色酸化鉄、黒鉛、および活性炭などが好ましく挙げられる。これらは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なかでも、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等が挙げられる。カーボンブラックの平均粒径は、好ましくは0.1〜1,000nm、特に好ましくは5〜500nmである。
前記導電性インキにおける黒色着色剤の含有量は、前記バインダ樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に1〜5質量部とするのが好ましい。
導電性インキは、さらに、界面活性剤などの分散剤、可塑剤、消泡剤、硬化剤など、従来公知の助剤を含んでいてもよい。
アンカーコート層上に導電性インキを印刷するには、グラビア印刷、フレキソ印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、静電印刷など公知の方法を用いて行えばよい。これにより、透明基板上にメッシュ状の導電層を形成することができる。これらの中でも、より導電性パターンの細線化が可能な点で、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷が特に好ましい。
透明基板上にメッシュ状に印刷した導電性インキは、通常は、室温〜250℃で乾燥させることにより硬化させる。
(第3の導電層形成方法)
メッシュ状など、所定のパターンを有する導電層の第3の形成方法として、
透明基板上に、シランカップリング剤とアゾール系化合物との混合物又は反応生成物、及び貴金属化合物を含む無電解めっき前処理剤をメッシュ状など所定のパターンに印刷して、前処理層を形成する工程、及び
前記前処理層上に無電解めっき処理により、導電層を形成する工程、を含む方法が好ましく用いられる。
前記無電解めっき前処理剤を用いた第3の形成方法によれば、シランカップリング剤、アゾール系化合物、および貴金属化合物を、前処理層において原子レベルで分散させることができる。したがって、スジやカブリの発生がない、メッシュ状などの微細なパターンを有する前処理層を精度よく形成することが可能となる。このような前処理層上に無電解めっき処理を行うことで、メッシュ状などの線幅の小さい微細なパターンを有する導電層を形成することが可能となる。
前記第3の方法においても、透明基板上に無電解めっき前処理剤をメッシュ状などに印刷する際に、透明基板上にアンカーコート層が設けられていてもよい。これにより透明基板と導電層との接着性を向上させることができる。なお、前記アンカーコート層については、第1の方法において上述したアンカーコート層と同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
前記第3の方法において、透明基板上、好ましくはアンカーコート層を有する透明基板上に、シランカップリング剤とアゾール系化合物との混合物又は反応生成物、及び貴金属化合物を含む無電解めっき前処理剤を所定のパターンに印刷して、前処理層を形成する工程を実施する。
前記無電解めっき前処理剤に用いられる前記シランカップリング剤は、一分子中に金属補足能を持つ官能基を有するものを用いるのが好ましい。これにより、無電解めっき触媒である貴金属化合物の活性を効果的に発現する電子状態、配向とすることが可能となり、被めっき材との高い密着性が得られる。
前記シランカップリング剤として、エポキシ基含有シラン化合物を挙げることができる。前記エポキシ基含有シラン化合物としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、得られる前処理層が透明基板および導電層と高い密着性を呈することから、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランが好ましく挙げられる。
次に、前記無電解めっき前処理剤に用いられる前記アゾール系化合物としては、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、セレナゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、オキサトリアゾール、チアトリアゾール、ベンダゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、インダゾールなどが挙げられる。これらに制限されるものではないが、シランカップリング剤が有するエポキシ基などの官能基および貴金属化合物との反応性に優れることから、イミダゾールが特に好ましい。
前記無電解めっき前処理剤において、前記シランカップリング剤および前記アゾール系化合物は単に混合されているだけでもよいが、これらを予め反応させて反応生成物を形成してもよい。これにより、貴金属化合物を前処理層中に原子レベルでより高分散できるとともに、得られる前処理層の光透過性を向上させることができる。
前記シランカップリング剤と前記アゾール系化合物とを反応させるには、例えば、80〜200℃でアゾール系化合物1モルに対して0.1〜10モルのシランカップリング剤を混合して5分〜2時間反応させるのが好ましい。その際、溶媒は特に不要であるが、水の他、クロロホルム、ジオキサンメタノール、エタノール等の有機溶媒を用いてもよい。このようにして得られた前記シランカップリング剤と前記アゾール系化合物との反応生成物に、貴金属化合物を混合することで、前記無電解めっき前処理剤が得られる。
次に、前記無電解めっき前処理剤に用いられる前記貴金属化合物は、無電解めっき処理において銅やアルミニウムなどの金属を選択的に析出・成長させることができる触媒効果を示すものである。具体的には、高い触媒活性が得られることから、パラジウム、銀、白金、および金などの金属原子を含む化合物を用いるのが好ましい。前記化合物としては、前記金属原子の塩化物、水酸化物、酸化物、硫酸塩、アンモニウム塩などのアンミン錯体などが用いられるが、特にパラジウム化合物、中でも塩化パラジウムが好ましい。
前記無電解めっき前処理剤は、前記アゾール系化合物および前記シランカップリング剤に対し、前記貴金属化合物を、好ましくは0.001〜50mol%、より好ましくは0.1〜20mol%含むのがよい。前記貴金属化合物の濃度が、0.001mol%未満では十分な触媒活性が得られずに所望する厚さを有する導電層を形成できない恐れがあり、50mol%を超えると添加量の増加に見合った貴金属化合物による触媒効果が得られない恐れがある。
また、前記無電解めっき前処理剤は、適当な溶媒を含んでいてもよい。前記溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール、アセトン、トルエン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサンなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記無電解めっき前処理剤には、必要に応じて体質顔料、界面活性剤、着色剤などの各種添加剤をさらに含有させてもよい。
前記無電解めっき前処理剤の粘度は、印刷により微細な線幅および間隙(ピッチ)を有する前処理層を得るためには、25℃において、好ましくは500〜5000cps、より好ましくは1000〜3000cpsとするのがよい。
前記無電解めっき前処理剤を印刷するには、グラビア印刷、フレキソ印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、静電印刷等の印刷方法を用いることができる。特に、細線化のためには、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷が好適である。グラビア印刷を用いる場合、印刷速度は5〜50m/分とするのがよい。
このように前記無電解めっき前処理剤を印刷した後、好ましくは80〜160℃、より好ましくは90〜130℃で加熱することにより乾燥させるのがよい。乾燥温度が80℃未満では溶媒の蒸発速度が遅く十分な成膜性が得られない恐れがあり、160℃を超えると化合物の熱分解が生じる恐れがある。塗布後に熱乾燥させる場合の乾燥時間は5秒〜5分が好ましい。
メッシュ状(格子状を含む)の前処理層の線幅は、一般に20μm以下、好ましくは5〜15μmで、特に5〜12μmを有する。線のピッチは200μm以下が好ましい。また、開口率は75〜95%であることが好ましく、特に80〜95%である。
前処理層の線で囲まれた開口部の形状は、円、楕円、角形(4角形、6角形)など任意の形状とすることができるが、一般に角形であり、特に正方形であることが好ましい。また線は網状であるが、格子状とすることが好ましい。
前記前処理層の厚さは、0.01〜2μm、好ましくは0.05〜0.5μmとするのがよい。これにより、透明基板および導電層との高い密着性を確保することができる。
前記第3の方法では、次に、上述の通りに形成した前処理層上に無電解めっき処理により、導電層を形成する工程を実施する。無電解めっき処理を行うことにより、微細な金属粒子が濃密で実質的な連続皮膜として沈積形成されて、前処理層上のみに選択的に導電層を得ることが可能となる。
めっき金属は、導電性を有してメッキ可能である金属であれば使用することができ、金属単体、合金、導電性金属酸化物等であってもよく、均一な金属薄膜又は一様に塗布された微細な微粒子等からなるものであってもよい。
無電解めっきにおけるめっき金属としては、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、スズ、カドミウム、銀、白金、銅、チタン、コバルト、鉛等を用いることができる。特に、高い電磁波シールド性が得られる導電層が得られることから、好ましくは、銀、銅又はアルミニウムが好ましく用いられる。これらのめっき金属を用いて形成される導電層は、前処理層との密着性に優れる他、光透過性と電磁波シールド性の両立に好適である。
前記無電解めっきは、無電解めっき浴を用いて常法に従って常温または加温下で行うことができる。即ち、めっき金属塩、キレート剤、pH調整剤、還元剤などを基本組成として含むめっき液を建浴したものにめっき基材を浸漬して行うか、構成めっき液を2液以上と分けて添加方式でめっき処理を施すなど適宜選択すれば良い。
無電解めっきとして一例を挙げると、Cuからなる導電層を形成する場合、硫酸銅等の水溶性銅塩1〜100g/L、特に5〜50g/L、ホルムアルデヒド等の還元剤0.5〜10g/L、特に1〜5g/L、EDTA等の錯化剤20〜100g/L、特に30〜70g/Lを含み、pH12〜13.5、特に12.5〜13に調整した溶液に、前処理層を有する透明基板を50〜90℃、30秒〜60分浸漬する方法を採用することができる。
無電解めっきをする際に、めっきされる基板を揺動、回転させたり、その近傍を空気撹拌させたりしてもよい。
(第4の導電層形成方法)
メッシュ状など、所定のパターンを有する導電層の第4の形成方法として、
透明基板上に、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、合成樹脂とを含む無電解めっき前処理剤をメッシュ状など所定のパターンに印刷して、前処理層を形成する工程、及び、
前記前処理層上に、無電解めっき処理により、導電層を形成する工程、を含む方法が好ましく用いられる。
前記無電解めっき前処理剤を用いた第4の方法によれば、無電解めっき前処理剤において複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物は分散性に優れ、これらが印刷時に均一に高分散且つ固着することにより、無電解めっき前処理剤をほぼ設計通りの寸法の形状で印刷することが可能となる。したがって、スジやカブリの発生がない、微細なパターンを有する前処理層を精度よく形成することが可能となる。このような前処理層上に無電解めっき処理を行うことで、線幅の小さい微細なパターンを有する導電層を形成することが可能となる。
前記第4の方法においても、透明基板上に無電解めっき前処理剤を印刷する際に、透明基板上にアンカーコート層が設けられていてもよい。これにより透明基板と導電層との接着性を向上させることができる。なお、前記アンカーコート層については、第1の方法において上述したアンカーコート層と同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
前記第4の方法において、透明基板上、好ましくはアンカーコート層を有する透明基板上に、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、合成樹脂とを含む無電解めっき前処理剤をメッシュ状など所定のパターンに印刷して、メッシュ状の前処理層を形成する工程を実施する。
前記無電解めっき前処理剤に用いられる複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物としては、Pd、Ag、Si、Ti及びZrよりなる群から選択される少なくとも2種の金属元素を含むものが好ましく用いられる。より好ましくは、Pd又はAgの金属元素と、Si、Ti又はZrの金属元素とを含むものが挙げられる。このような複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物は、高いめっき金属析出能力を有し、さらに前処理剤中での安定性及び分散性に優れた特性を有する。
なかでも、前記特性が特に優れることから、下記式(I)
Figure 2009074143
(式中、M1はPd又はAgを表し、M2はSi、Ti又はZrを表し、M1がPdである場合、xは1であり、M1がAgである場合、xは2であり、nは1〜20の整数である)で示される複合金属酸化物水化物を用いるのが特に好ましい。
前記式(I)において、M1はPd又はAgであるが、Pdであるのが好ましい。また、M2はSi、Ti又はZrであるが、Tiであるのが好ましい。これにより、高いめっき析出能力を有する複合金属酸化物水水化物が得られる。
前記複合金属酸化物水化物として具体的には、PdSiO3、Ag2SiO3、PdTiO3、Ag2TiO3、PdZrO3及びAg2TiO3などの水化物が挙げられる。
上述した複合金属酸化物水化物は、それぞれの相当する金属塩、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、相当する金属酸化物の水和物等を原料とし、これらを加熱し、加水分解する方法などを用いることによって得られる。
また、前記複合金属酸化物としては、M1 X・M22(M1、M2及びXについては、上記式(I)と同義である)で示されるものが好ましく用いられる。
前記無電解めっき前処理剤に用いられる複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物の平均粒子径は、0.01〜10μm、特に0.05〜3μmのものを用いるのが好ましい。これにより、凝集が抑制された高い分散性および触媒活性を有する複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物とすることができる。
なお、本発明において、前記複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物の平均粒子径は、導電性シートの断面を電子顕微鏡(好ましくは透過型電子顕微鏡)により倍率100万倍程度で観測し、少なくとも100個の複合金属酸化物又は複合金属酸化物水化物の面積円相当径を求めた数平均値とする。
前記複合金属酸化物及び/又は前記複合金属酸化物水化物の含有量は、前記合成樹脂100質量部に対して、好ましくは10〜60質量部、より好ましくは10〜40質量部とするのが好ましい。前記含有量が、10質量部未満では十分なめっき析出能力が得られない恐れがあり、60質量部を超えるとこれらの複合金属酸化物の凝集に基づくスジやカブリが形成する恐れがある。
前記無電解めっき前処理剤は、合成樹脂を含む。これにより、前処理層が剥離し難くなり、導電層をより精度よく形成することが可能となる。
前記合成樹脂は、導電層との密着性を確保できるものであれば、特に制限されない。前記合成樹脂として、好ましくは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、およびエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂などが挙げられる。これらによれば、透明基板および導電層との高い密着性が得られ、前処理層上に導電層を精度よく形成することができる。また、これらの合成樹脂は、1種単独で用いられてもよいほか、2種以上を混合して用いてもよい。
前記アクリル樹脂としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル等のメタアクリル酸アルキルエステル類のホモポリマーが使用できるが、特にポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレートまたはポリブチルメタクリレートなどが挙げられる。
前記ポリエステル樹脂として、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、2,6−ポリエチレンナフタレートなどを用いることができる。
前記ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエステル系ウレタン樹脂 、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリエステル系ウレタン樹脂が好ましく挙げられる。
前記ポリウレタン樹脂として具体的には、ポリエステル系ポリオールとポリイソシアネート化合物との反応生成物からなるポリエステル系ウレタン樹脂を使用することができる。前記ポリエステル系ウレタン樹脂の平均分子量は、一般的に1万〜50万である。
前記ポリエステル系ポリオールとしては、低分子ジオールとジカルボン酸とを反応させて得られる縮合ポリエステルジオールや、ラクトンの開環重合により得られるポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。なお、前記低分子ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール、グリセリン等のトリオール、ソルビトール等のヘキサオールが挙げられる。前記ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸類、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸類、等が単独使用又は2種以上使用される。また、前記ラクトンには、ε−カプロラクトン等が使用される。
そして、ポリエステル系ポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリブチレンヘキサブチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート、ポリエチレンアゼート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンアゼート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が挙げられ、これらが単独使用又は2種以上使用される。
前記ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタリンジイソシアネート、n−イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、m−或いはp−イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート等);脂肪族ジイソシアネート(例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等);脂環式ジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等)のポリイソシアネート、或いはまた、これら各種イソシアネートの付加体、又は多量体等が、単独使用又は2種以上使用される。
ポリエステル系ポリオールとポリイソシアネート化合物との使用比率は、特に限定されないが、通常はポリエステル系ポリオール:ポリイソシアネート化合物=1:0.01〜0.5程度(モル比)の範囲内において、使用する化合物の種類等に応じて適宜決定すれば良い。
前記ポリエステル系ウレタン樹脂を使用する場合、無電解めっき前処理剤は、ポリイソシアネート硬化剤をさらに含むのが好ましい。前記ポリイソシアネート硬化剤としては、上述したポリイソシアネート化合物が用いられる。前記硬化剤の含有量は、前記ポリエステル系ウレタン樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部、特に0.1〜1.0質量部とするのが好ましい。
前記塩化ビニル樹脂は、従来公知の塩化ビニルの単独重合物であるホモポリマー樹脂、または従来公知の各種のコポリマー樹脂であり、特に限定されるものではない。該コポリマー樹脂としては、従来公知のコポリマー樹脂を使用でき、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピオン酸ビニルコポリマー樹脂などの塩化ビニルとビニルエステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリル酸ブチルコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリル酸2エチルヘキシルコポリマー樹脂などの塩化ビニルとアクリル酸エステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−エチレンコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピレンコポリマー樹脂などの塩化ビニルとオレフィン類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリロニトルコポリマー樹脂などが代表的に例示される。特に好ましくは、塩化ビニル単独樹脂、エチレン−塩化ビニルコポリマー樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマー樹脂などを使用するのが良い。
前記合成樹脂は、高い密着性が得られることから、活性水素を含有する官能基を分子末端に有するものが好ましく用いられる。前記活性水素を含有する官能基としては、活性水素を有していれば特に制限されず、1級アミノ基、2級アミノ基、イミノ基、アミド基、ヒドラジド基、アミジノ基、ヒドロキシル基、ヒドロペルオキシ基、カルボキシル基、ホルミル基、カルバモイル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、チオール基、チオホルミル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピペリジル基、インダゾリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。好ましくは、1級アミノ基、2級アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボキシル基、スルホン酸基またはチオール基である。特に好ましくは、1級アミノ基、2級アミノ基、アミド基またはヒドロキシル基である。なお、これらの基はハロゲン原子や炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換されていてもよい。なかでも、ヒドロキシル基、カルボニル基、およびアミノ基が好ましく挙げられる。
前記無電解めっき前処理剤における合成樹脂の含有量は、無電解めっき前処理剤の全量に対して、40〜90質量%、特に60〜80質量%とするのが好ましい。これにより、高い密着性を有する前処理層を形成することが可能となる。
また、前記無電解めっき前処理剤は、さらに無機微粒子を含んでいてもよい。無機微粒子を含有することにより、印刷精度を向上することができ、より精度の高い導電層を形成することが可能となる。前記無機微粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、タルク、マイカ、ガラスフレーク、金属ウィスカー、セラミッックウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、スメクタイト等が好ましく挙げられる。これらは、1種単独で用いられてもよい他、2種以上を混合して用いてもよい。
前記無機微粒子の平均粒子径は、0.01〜5μm、特に0.1〜3μmとするのが好ましい。前記無機微粒子の平均粒子径が、0.01μm未満であると無機微粒子の添加により所望するほどの印刷精度の向上が得られない恐れがあり、5μmを超えるとスジやカブリが発生し易くなる恐れがある。
前記無電解めっき前処理剤における無機微粒子の含有量は、前記合成樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部、特に1〜5質量部とするのが好ましい。これにより、高い印刷適正を持った前処理剤とすることができる。
また、前記無電解めっき前処理剤は、さらにチキソトロピック剤を含有してもよい。前記チキソトロピック剤によれば、前処理剤の流動性を調整することにより印刷精度を向上させることができ、より精度の高い導電層を形成することが可能となる。チキソトロピック剤としては、従来公知のものであれば使用できる。好ましくは、アマイドワックス、硬化ひまし油、蜜ロウ、カルナバワックス、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド等を使用することができる。
前記無電解めっき前処理剤におけるチキソトロピック剤の含有量は、前記合成樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に1〜5質量部とするのが好ましい。これにより、高い印刷適正を持った前処理剤とすることができる。
本発明の無電解めっき前処理剤は、黒色着色剤をさらに含有していてもよい。これにより、印刷精度の向上とともに、得られる光透過性電磁波シールド材において透明基板側から見た際の防眩効果を付与することができる。
前記黒色着色剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、黒色酸化鉄、黒鉛、および活性炭などが好ましく挙げられる。これらは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なかでも、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等が挙げられる。カーボンブラックの平均粒径は、好ましくは0.1〜1,000nm、特に好ましくは5〜500nmである。
前記無電解めっき前処理剤における黒色着色剤の含有量は、前記合成樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に1〜5質量部とするのが好ましい。これにより、防眩効果を有する前処理層を精度よく形成することが可能となる。
黒色着色剤を用いる場合、市販されている墨インキを用いて無電解めっき前処理剤を調製するのが好ましい。このような墨インキとしては、東洋インキ製造株式会社製 SS8911、十条ケミカル株式会社製 EXG−3590、大日精化工業株式会社製 NTハイラミック 795R墨などがある。例えば、東洋インキ製造株式会社製 SS8911の場合、溶剤中に、カーボンブラックの他、さらに塩化ビニルおよびアクリル樹脂などを含む。したがって、前記した市販品であれば、合成樹脂および黒色着色剤を含む無電解めっき前処理剤の調製を容易に行うことができる。
また、前記無電解めっき前処理剤は、適当な溶媒を含んでいてもよい。前記溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール、アセトン、トルエン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサンなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記無電解めっき前処理剤には、必要に応じて体質顔料、界面活性剤などの各種添加剤をさらに含有させてもよい。
本発明の方法では、上述した無電解めっき前処理剤を、透明基板上にメッシュ状などに印刷することにより、前記透明基板上に前処理層をパターン形成する。これにより、簡易な方法で所望する微細なパターンを有する前処理層を形成することができる。
前記無電解めっき前処理剤の粘度は、印刷により微細な線幅および間隙(ピッチ)を有する前処理層を得るためには、25℃において、好ましくは500〜5000cps、より好ましくは1000〜3000cpsとするのがよい。
このように前記無電解めっき前処理剤を印刷した後、好ましくは80〜160℃、より好ましくは90〜130℃で加熱することにより乾燥させるのがよい。乾燥温度が80℃未満では、溶媒の蒸発速度が遅く十分な成膜性が得られない恐れがあり、160℃を超えると化合物の熱分解が生じる恐れがある。塗布後に熱乾燥させる場合の乾燥時間は5秒〜5分が好ましい。
なお、無電解めっき前処理剤を透明基板に印刷する方法及び前処理層におけるパターンの形状については、上述した第3の方法と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
前記前処理層の厚さは、0.01〜5μm、好ましくは0.1〜2μmとするのがよい。これにより、透明基板および導電層との高い密着性を確保することができる。
本発明の方法では、上述の通りにして透明基板上に前処理層を形成する工程の後、導電層を形成する工程の前に、前記前処理層に還元処理を行う工程を実施するのが好ましい。還元処理することで、前記前処理層に含まれる無電解めっき触媒である複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物に含まれる金属種を還元し、活性成分である金属種のみを超微粒子状で均一に析出させることができる。このように還元析出した金属種は、高い触媒活性を有し且つ安定であることから、前記前処理層と前記透明基板との密着性及び無電解めっきの析出速度を向上させ、さらには複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物の使用量を少なくすることが可能となる。
前記還元処理は、前処理層に含まれる複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物を還元して金属化できる方法であれば特に制限されない。具体的には、(i)前記前処理層が形成された透明基板を、還元剤を含む溶液を用いて処理する液相還元法、(ii)前記前処理層が形成された透明基板を、還元性ガスと接触させる気相還元法などが好ましく用いられる。
前記液相還元法において還元剤を含む溶液を用いて処理する方法として、具体的には、前記前処理層が形成された透明基板を還元剤を含む溶液中に浸漬させる方法、前記透明基板の前記前処理層が形成された面に還元剤を含む溶液をスプレーする方法などが用いられる。
前記還元剤を含む溶液は、所定の還元剤を水などの溶媒に分散又は溶解させて調製されるものである。前記還元剤としては、特に制限されないが、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルアクリルアミド、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ブドウ糖、アミノボラン、ジメチルアミンボラン(DMAB)、トリメチルアミンボラン(TMAB)、ヒドラジン、ジエチルアミンボラン、ホルムアルデヒド、グリオキシル酸、イミダゾール、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミン、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウムなどの次亜リン酸塩、硫酸ヒドロキシルアミン、亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩、ハイドロサルファイト(Na224:亜二チオン酸ナトリウムともいう)等が挙げられる。前記還元剤は、後工程で用いる無電解めっき浴中に含まれる還元剤と同一のものを用いると、還元処理後の前記透明基板を水洗処理することなく無電解めっきを行うことができ、また無電解めっき浴の組成を変化させる恐れも少ない。
前記還元剤としては、高い還元性が得られることから、アミノボラン、ジメチルアミンボラン、次亜リン酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアミン、ハイドロサルファイト、及びホルマリンを用いるのが好ましい。
前記還元剤を含む溶液における還元剤の含有量は、0.01〜200g/L、特に0.1〜100g/Lとするのが好ましい。還元剤の濃度が低すぎる場合には十分に還元処理を行うのに所要時間が長くなる恐れがあり、還元剤の濃度が高すぎる場合には析出させためっき触媒が脱落する恐れがある。
前記液相還元法において還元剤を含む溶液を用いて処理する方法としては、前処理層に含まれる複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物の高い還元性が得られることから、前記前処理層が形成された透明基板を還元剤を含む溶液中に浸漬させる方法を用いるのが好ましい。
前記透明基板を浸漬させる場合、前記還元剤を含む溶液の温度は、20〜90℃、特に50〜80℃とするのが好ましい。また、浸漬時間は、少なくとも1分以上、好ましくは1〜10分程度とすればよい。
一方、前記気相還元法を用いて還元処理を行う場合、前記還元性ガスとしては、水素ガス、ジボランガスなど、還元性を有する気体であれば特に制限されない。還元ガスを用いた還元処理時の反応温度および反応時間は、使用する還元ガスの種類などに応じて適宜決定すればよい。
次に、前記第4の方法では、上述の通りに形成した前処理層上に、無電解めっき処理により導電層を形成する工程を実施する。無電解めっき処理を行うことにより、微細な金属粒子が濃密で実質的な連続皮膜として沈積形成されて、前処理層上のみに選択的に導電層を得ることが可能となる。
前記導電層を形成する工程は、上述した第3の方法における導電層を形成する工程と同様に実施することができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
上述した本発明の方法により製造される導電性シートは優れた光透過性を有する。したがって、前記導電性シートは、PDP(プラズマディスプレイパネル)の前面フィルタや、病院等の電磁波シールドを必要とする建築物の窓材料(例えば貼着用フィルム)等に特に好適な電磁波シールド性光透過窓材として用いられるのが好ましい。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
[実施例1]
1.メッシュ状の導電層の形成
イミダゾールに、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを、モル比で1:1となるように混合し、1時間、100分間、反応させることにより得られた反応生成物を5wt%含む水溶液に、25℃で撹拌しながら塩化パラジウムを添加し、塩化パラジウム濃度が10g/Lの溶液を調製した。これをn−ブタノールで100体積倍に希釈し、塩化パラジウム濃度が100mg/Lの前処理剤を調製した。次に、前記前処理剤を、PETフィルム(厚さ250μm、Sグレード;(株)帝人製)上に、メッシュ状にグラビア印刷した後、120℃、5分間乾燥させた。これにより、前記PETフィルム上にメッシュ状の前処理層(厚さ0.1μm、線幅25μm、開口部の形状:1辺が230μmの正方形状、開口率81%)を得た。
このようにして得られたメッシュ状の前処理層付きPETフィルムを、無電解銅めっき液(メルテックス株式会社製 メルプレートCU−5100)に浸漬し、50℃、20分間で、無電解銅めっき処理して、メッシュ状の導電層(厚さ0.5μm、線幅25μm、開口部の形状:1辺が230μmの正方形状、開口率81%)を得た。
2.電気めっき処理
上記で作製した導電層付きPETフィルムをカソードとして用い、電気めっき装置(ハルセル用直流電源(10A2型);株式会社山本鍍金試験器製)により、下記の電気めっき液、電気めっき条件で電気めっき処理を行った。また、アノードとしては、白金コートチタン板を使用した。前記電気めっき処理により、メッシュ状の導電層表面に金属めっき層(厚さ4μm)が形成された導電性シートを得た。
電気めっき液(A)
2O :800ml
CuSO4・5H2O :81.1g
2SO4(96.0wt%) :160ml
HCl (36.0wt%) :0.1ml
HNO3 (70.0wt%) :300ml
電気めっき条件
めっき液温度 : 45℃
印加電圧 : 3V
カソード電流密度: 1A/dm2
処理時間 : 1分間
[実施例2〜4]
電気めっき条件における印加電圧及び処理時間を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして導電性シートを作製した。
[比較例1]
1.メッシュ状の導電層の形成
実施例1と同様にして、導電層付きPETフィルムを作製した。
2.電気めっき処理
上記で作製した導電層付きPETフィルムをカソードとして用い、電気めっき装置(ハルセル用直流電源(10A2型);株式会社山本鍍金試験器製)により、下記の電気めっき液、電気めっき条件で電気めっき処理を行った。また、アノードとしては、白金コートチタン板を使用した。前記電気めっき処理により、メッシュ状の導電層表面に金属めっき層(厚さ4μm)が形成された導電性シートを得た。
電気めっき液(B)
2O :800ml
CuSO4・5H2O :81.1g
2SO4(96.0wt%) :160ml
HCl (36.0wt%) :0.1ml
電気めっき条件
めっき液温度 : 45℃
印加電圧 : 3V
カソード電流密度: 1A/dm2
処理時間 : 1分間
[比較例2]
電気めっき条件における印加電圧及び処理時間を表1に示すように変更した以外は、比較例1と同様にして導電性シートを作製した。
[評価]
上記で作製した導電性シートの金属めっき層及び開口部の外観を、顕微鏡(材料検査顕微鏡 DM2500M;ライカマクロシステムズ株式会社製)を用いて目視により評価した。結果を表1に示す。
表1の金属めっき層の評価において、「○」、「△」及び「×」は以下の通りである。
○:金属めっき層が問題なく形成された
△:溶解又は剥離により一部に金属めっき層が形成されていない箇所がある
×:溶解又は剥離により金属めっき層が形成されていない
表1の開口部の評価において、「○」及び「×」は以下の通りである。
○:開口部に導電層の付着がなかった
×:開口部に導電層の付着があった
Figure 2009074143
本発明の方法により得られる導電性シートは、優れた視認性と電磁波シールド性を備えたものであり、プラズマディスプレイパネル(PDP)などのディスプレイの前面フィルタなどの電磁波シールド性光透過窓材として好適に使用される。
本発明の導電層の第1の形成方法を、各工程に沿って説明した説明図である。 導電性シートの断面図である。
符号の説明
110、210 透明基板
120、220 パターン形成された導電層
130、230 金属めっき層
121 ドット
122 導電材料層

Claims (7)

  1. パターン形成された導電層を有する透明基板を電気めっき液に浸漬し、前記導電層に通電することにより電気めっき処理すると共に、前記導電層の通電されない部分を、前記電気めっき液に含まれる酸で溶解させることを特徴とする導電性シートの製造方法。
  2. 前記電気めっき液のpHが、2以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性シートの製造方法。
  3. 前記電気めっき液が、硝酸を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記電気めっき液が、硝酸を5〜50質量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記電気めっき液の温度が、40〜60℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記電気めっき処理を、0.1〜15A/cm2のカソード電流密度で1〜10分間行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 電磁波シールド性光透過窓材の製造方法であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010192429A (ja) * 2009-01-20 2010-09-02 Taiyo Ink Mfg Ltd 導電性ペースト、および透光性導電フィルムとその製造方法
JP2013251356A (ja) * 2012-05-31 2013-12-12 Saichi Industry Co Ltd 電磁波遮蔽フィルム

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