JP2009067878A - ボールペン用水性インキ組成物及びそれを内蔵したボールペン - Google Patents

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Abstract

【課題】 ボールの回転によるボール受け座の摩耗を抑制することで、良好なインキ吐出性を長距離の筆記に亘って確保できると共に、優れた筆記感を損なうことがないボールペン用水性インキ組成物とそれを内蔵したボールペンを提供する。
【解決手段】 着色剤と、水と、下記一般式(1)で示すチオアミドを少なくとも含有する。
RC(=S)NH (1)
〔式中RはCH、Cのいずれかを示す。〕
前記チオアミドがインキ組成物全量中0.01〜10重量%の範囲で添加される。前記ボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペン。
【選択図】 なし

Description

本発明はボールペン用水性インキ組成物に関する。更には、潤滑性能に優れ、高い筆記性能を備えたボールペン用水性インキ組成物及びそれを内蔵したボールペンに関する。
従来、油性インキに較べて潤滑性が乏しい水性インキを内蔵したボールペンにおいては、ボールの回転によるボール受け座の摩耗が発生し易い。その結果、ボールペンチップ内のインキ流通路が変形してしまい、インキの吐出不良や漏れ等を生じることがあった。そのため、筆記した際の筆記感が損われたり、筆記不良をきたすという問題があった。
そこで、前記問題を解決するために、インキ組成物中にオレイン酸カリウムセッケンや、アミノ酸型ベタイン等を潤滑剤として添加し、水性インキの潤滑性を向上させてボール受け座の摩耗を低減する試みが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特開昭61−16974号公報 特開平10−67961号公報
しかしながら、前記アミノ酸型ベタインは潤滑効果が低く、また、オレイン酸カリウムセッケンは、充分な効果を発揮させるために多量に添加する必要があるが、水性媒体への安定性に乏しいため、経時によりインキ中で析出する等の不具合を生じるものであった。尚、前記析出が生じない範囲で添加した場合には、ボール受け座の摩耗を充分に抑制することができず、筆記距離が短くなるものであった。
特に、ボール径が0.4mm以下の小径のものでは、筆記距離に対するボールの回転数が多くなることから、より摩耗を生じ易い。そのため、より潤滑効果の高いものが必要となる。
本発明は、ボールの回転によるボール受け座の摩耗を抑制することで、良好なインキ吐出性を長距離の筆記に亘って確保できると共に、優れた筆記感を損なうことがないボールペン用水性インキ組成物とそれを内蔵したボールペンを提供するものである。
本発明のボールペン用水性インキ組成物は、着色剤と、水と、下記一般式(1)で示すチオアミドを少なくとも含有することを要件とする。
RC(=S)NH (1)
〔式中RはCH、Cのいずれかを示す。〕
更に、前記チオアミドがインキ組成物全量中0.01〜10重量%の範囲で添加されること、インキのpHが7〜12の範囲にあることを要件とする。
更には、前記いずれかのボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペンを要件とし、前記ボールペンが、0.4mm以下のボールを筆記先端部に備えることを要件とする。
本発明により、ボールの回転によるボール受け座の摩耗を抑制できると共に、筆記時に高い潤滑性能を維持できるので、筆跡にかすれや線飛びを生じることなく、滑らかな筆記感を長距離に亘って持続できる水性ボールペン用インキ組成物及びそれを内蔵したボールペンを提供できる。
本発明は、ボールペン用水性インキ組成物中に、前記一般式で示すチオアミド類を含有することにより、ボールの回転に伴うボール受け座の摩耗を抑制できるものである。
前記チオアミド類としては、チオアセトアミドやチオプロピオンアミドが適用される。これらの化合物は、インキ中でチオアミド構造部分がボールやチップ(ボール受け座)の表面に被膜を形成することにより、筆記時のボールと受け座間の接触抵抗を低減させていると考えられる。
前記チオアミド類は、インキ組成物全量中0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜7重量%添加することができる。
0.01重量%未満では所期の効果を得ることは困難であり、又、10重量%を越えて添加しても摩耗抑制効果の向上は認められないので、これ以上の添加を要しない。
前記着色剤としては、水性媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料がすべて使用可能であり、その具体例を以下に例示する。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
塩基性染料としては、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、ローダミンB(C.I.45170)、アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
直接染料としては、コンゴーレッド(C.I.22120)、ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、バイオレットBB(C.I.27905)、ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、予め界面活性剤等を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、
C.I.Pigment Blue 15:3B〔品名:S.S.Blue GLL、顔料分22%、山陽色素株式会社製〕、
C.I. Pigment Red 146〔品名:S.S.Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、
C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、
C.I.Pigment Red220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
その他、パール顔料、金色、銀色のメタリック顔料、蓄光性顔料、修正ペン等に用いられる二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、香料又は香料カプセル顔料などを例示できる。
前記着色剤は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成中0.01乃至15重量%、好ましくは0.1乃至10重量%の範囲で用いられる。
更に必要に応じて、水に相溶性のある従来汎用の水溶性有機溶剤を用いることができる。具体的には、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
尚、前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用して用いることができ、2〜60重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲で用いられる。
更に、紙面への固着性や粘性を付与するために水溶性樹脂を添加することもできる。前記水溶性樹脂としては、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等が挙げられる。前記水溶性樹脂は一種又は二種以上を併用することができ、インキ組成中1乃至30重量%の範囲で用いられる。
その他、必要に応じて、炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2−ベンズチアゾリン3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を使用してもよい。
更に、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩、N−アシルアミノ酸、N−アシルメチルタウリン、金属石鹸等、汎用の潤滑剤を併用することもできる。
また、インキ組成物中に剪断減粘性付与剤を添加することもできる。
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、HLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸の金属塩やアミン塩等を例示でき、更には、インキ組成物中にN−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤を併用して添加しても安定した剪断減粘性を付与できる。
前記インキ組成物は、pHを7〜12の中性〜アルカリ性領域、好ましくはpH7〜11の中性〜弱アルカリ性領域に調整されて適用される。
前記pHに調整することで、チオアミド類がインキ中で安定して作用するため、座摩耗を効率的に抑制することができる。
更に、インキ収容管内に充填されたインキ組成物の後端部にはインキ逆流防止体(液栓)を配することもできる。
前記インキ逆流防止体としては、液状または固体のいずれを用いることもでき、前記液状のインキ逆流防止体としては、ポリブテン、α−オレフィンオリゴマー、シリコーン油、精製鉱油等の不揮発性媒体が挙げられ、所望により前記媒体中にシリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、脂肪酸アマイド等を添加することもできる。また、固体のインキ逆流防止体としては樹脂成形物が挙げられる。前記液状及び固体のインキ逆流防止体は併用することも可能である。
前記ボールペン用水性インキ組成物を充填するボールペンの筆記先端部(チップ)の構造は、従来汎用の機構が有効であり、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属製のパイプや金属材料の切削加工により形成したチップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
また、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等からなる汎用のものが適用でき、直径0.1mm〜2.0mmの範囲のものが好適に用いられる。
前記水性インキ組成物を収容する軸筒は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなる成形体が、インキの低蒸発性、生産性の面で好適に用いられる。
前記軸筒にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記軸筒とチップを連結してもよい。
前記軸筒内に収容されるインキ組成物は、インキ組成物が低粘度である場合は軸筒前部にインキ保留部材を装着し、軸筒内に直接インキ組成物を収容する方法と、多孔質体或いは繊維加工体に前記インキ組成物を含浸させて収容する方法が挙げられる。
尚、前記軸筒は、ボールペン用レフィルの形態として、前記レフィルを軸筒内に収容するものでもよい。
更に、前記インキ収容管として透明、着色透明、或いは半透明の成形体を用いることにより、インキ色やインキ残量等を確認できる。
尚、前記インキ収容管は、ボールペン用レフィルの形態として、前記レフィルを軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
以下に実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の表に実施例及び比較例のボールペン用水性インキの組成を示す。尚、表中の組成の数値は重量部を示す。
Figure 2009067878
表中の原料の内容について注番号に沿って説明する。
(1)住友化学工業(株)製、商品名:アシッドブルーPG、C.I.Acid blue 90
(2)保土ヶ谷化学工業(株)製、商品名:エオシン、C.I.Acid red 87
(3)保土ヶ谷化学工業(株)製、商品名:フロキシン、C.I.Acid red 92
(4)三晶(株)製、商品名:KELZAN
(5)東レ・ダウコーニング社製、商品名:FZ2163
(6)花王(株)製、商品名:FR−14(固形分21%)
(7)花王(株)製、商品名:アンヒトール86B(固形分26%)
インキの調製
水に各成分を添加して、25℃で、ディスパーにて400rpm、1時間攪拌し、濾過することで各インキを調製した。
インキ逆流防止体の調製
基油としてポリブテン85部中に、増粘剤として脂肪酸アマイド15部を添加した後、3本ロールにて混練してインキ逆流防止体を得た。
ボールペンの作製
前記実施例及び比較例のインキ組成物を、直径0.25mmの超硬合金ボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたボールペンレフィルに同量充填し、その後端に前記インキ逆流防止体を配設した後、前記ボールペンレフィルを軸筒に組み込み、試料ボールペンを作製した。
前記試料ボールペンを用いて以下の試験を行った。
筆記試験
筆記可能であることを確認した試料ボールペンを、自動筆記試験機にて、JIS P3201筆記用紙Aに螺旋状の丸を連続筆記した際の筆記距離を測定した。
更に、筆記後のボール受け座部分の初期状態に対する摩耗量(ペン先上向き状態におけるボール沈み量)を測定した。
尚、前記試験機は、筆記荷重100g、筆記角度70°、筆記速度4m/分の条件で使用した。また、試験結果の値は、各5本ずつ試験したものの平均値である。
前記試験の結果を以下の表に示す。
Figure 2009067878

Claims (5)

  1. 着色剤と、水と、下記一般式(1)で示すチオアミドを少なくとも含有するボールペン用水性インキ組成物。
    RC(=S)NH (1)
    〔式中RはCH、Cのいずれかを示す。〕
  2. 前記チオアミドがインキ組成物全量中0.01〜10重量%の範囲で添加される請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物。
  3. インキのpHが7〜12の範囲にある請求項1又は2に記載のボールペン用水性インキ組成物。
  4. 前記請求項1乃至3のいずれかに記載のボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペン。
  5. 前記ボールペンが、0.4mm以下のボールを筆記先端部に備える請求項4記載のボールペン。
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