JP2009066928A - 複合成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】ノルボルネン系モノマーを塊状開環重合させることにより得られる重合体と、複合化用部材とを一体成形してなる複合成形体において、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体と複合化用部材との間の密着力が向上され、反応熱による密着力の劣化がない複合成形体を提供すること。
【解決手段】ノルボルネン系モノマーを塊状開環重合させることにより得られる重合体と、複合化用部材とを一体成形してなる複合成形体であって、前記複合化用部材は、前記重合体との接触界面のうちの少なくとも一部に、所定のトリアジンチオール誘導体で表面処理を施すことにより形成された被膜を有することを特徴とする複合成形体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ノルボルネン系モノマーを塊状開環重合させることにより得られる重合体と、複合化用部材との複合成形体に関する。
ノルボルネン系モノマーなどのシクロオレフィンモノマーを含む重合性単量体を、メタセシス重合触媒存在下で重合させて得られるシクロオレフィン重合体は、電気特性、機械的特性、耐衝撃特性、耐候性などに優れるため、幅広い分野の成形体について実用化が進められている。
このようなシクロオレフィン重合体は、その優れた電気特性から、プリント配線板などの電気絶縁材料として好適に用いられている。近年、プリント配線板は多層化され、より高密度化されている。このようなプリント配線板の配線層を、はんだなどを利用して形成する場合、これを絶縁する電気絶縁材料には、はんだ耐熱性が求められる。また、このようなプリント配線板に実装される電子部品の端子電極を封止するために用いられる電気絶縁材料についても、同様に耐熱性が求められる。これら配線層や端子電極に適用されるはんだは、環境安全性の観点から鉛を含まない材料が望まれている。鉛フリーはんだでは、鉛より融点の高い金属が使用されるため、電気絶縁層に対する耐熱性の要求がさらに高まっている。
これに対して、シクロオレフィン重合体とプリント配線板を構成する金属との間の密着性および耐熱性を向上させるために、たとえば、特許文献1では、ビニル基を分子内に2以上有する化合物の存在下に、シクロオレフィンモノマーをメタセシス開環重合して得られるシクロオレフィン樹脂と、ラジカル発生剤とを含有する架橋性樹脂組成物が提案されている。
しかしながら、この特許文献1では、シクロオレフィン重合体と金属との間の密着性、特に熱衝撃が与えられた際における密着性が未だ十分ではなく、さらには、過酸化物からなるラジカル発生剤を用いているため、取り扱いが困難であるという問題があった。また、この特許文献1は、プライマーとしてのビニル基を分子内に2以上有する化合物、およびラジカル発生剤を必要とするものであるため、シクロオレフィン重合体を介して、金属と他の樹脂とを接着させる場合に、金属側だけでなく、樹脂側にも処理が必要であり、そのため、プレス工程が必要となるなど、工程数が増加し、製造コストが高くなるという問題もあった。
また、ノルボルネン系モノマーなどのシクロオレフィン重合体とプリント配線板を構成する金属とをゴム製の接着剤などで接着する方法も考えられるが、重合時に発生する高い反応熱により、接着剤が分解してしまい、そのため、十分な接着力を確保できなかった。
国際公開第2005/17033号パンフレット
本発明は、ノルボルネン系モノマーを塊状開環重合させることにより得られる重合体と、複合化用部材とを一体成形してなる複合成形体において、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体と複合化用部材との間の密着力が向上され、反応熱による密着力の劣化がない複合成形体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ノルボルネン系モノマーを塊状開環重合させることにより得られる重合体と、複合化用部材とを一体成形してなる複合成形体において、複合化用部材の、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体との接触界面のうちの少なくとも一部に、所定のトリアジンチオール誘導体で表面処理することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、ノルボルネン系モノマーを塊状開環重合させることにより得られる重合体と、複合化用部材とを一体成形してなる複合成形体であって、
前記複合化用部材は、前記重合体との接触界面のうちの少なくとも一部に、下記式(1)で表されるトリアジンチオール誘導体で表面処理を施すことにより形成された被膜を有することを特徴とする複合成形体が提供される。
Figure 2009066928
〔上記式(1)中、Xは−CR、−NR、−OR、または−SRであり、R〜Rは、−H、−C2n+1(ただし、nは1〜20の自然数)、−C2mCH=CH(ただし、mは1〜20の自然数)、−CH=CH、−C16CH=CHC17、−C11(シクロヘキシル基)、−C(フェニル基)、−CH、−CHCH、−CHCHOOC(CHCH=CH(「CHOOC」は、エステル結合部である。以下同様。)、−CHCHCOOC(CHCH=CH、−CHCHOOC(CHCH=CHのいずれかであり、R〜Rはお互いに同じであっても異なっていても良く、Mは、H、Li、Na、K、CaまたはBaである。〕
好ましくは、前記重合体と前記複合化用部材とは、前記複合化用部材に形成された前記被膜を介して互いに密着しているものである。
好ましくは、前記複合化用部材が、銅を主成分とするものである。
好ましくは、前記複合成形体は、前記複合化用部材を配置した型内に、前記ノルボルネン系モノマーを含有する反応液を注入して塊状重合させることによって得られるものである。
本発明によれば、複合成形体を構成する重合体を、ノルボルネン系モノマーを塊状開環重合させることにより得られる重合体としているため、電気特性、機械的特性、耐衝撃特性および耐候性に優れた複合成形体を提供することができる。しかも、本発明においては、複合化用部材の、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体との接触界面のうちの少なくとも一部に、所定のトリアジンチオール誘導体で表面処理を施すことにより形成される被膜を有しているため、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体と、複合化用部材との間の密着性を向上させ、かつ反応熱による密着力の劣化を防止することができ、これにより信頼性の高い複合成形体を提供することができる。
特に、従来においては、ノルボルネン系モノマーを塊状開環重合させることにより得られる重合体は、電気特性、機械的特性、耐衝撃特性および耐候性に優れているものの、極性が極めて低いという性質を有しているため、金属材料などから構成される複合化用部材との密着性に劣るという問題があった。一方、たとえば、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体と複合化用部材との密着性を向上させるために、ゴム製の接着剤等を用いても、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合時の高い反応熱により分解してしまい、そのため、十分な接着力を確保できなかった。これに対して、本発明は、所定のトリアジンチオール誘導体を用い、これにより、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体と複合化用部材との接着力を確保するものである。特に、本発明所定のトリアジンチオール誘導体は、高い接着力に加え、高い耐熱性を有しているため、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合時の高い反応熱によっても分解されず、そのため、十分な接着力を実現できるものである。
本発明の複合成形体は、ノルボルネン系モノマーを塊状開環重合させることにより得られる重合体と、複合化用部材とを一体成形してなる複合成形体であって、前記複合化用部材の、前記重合体との接触界面のうちの少なくとも一部に、後述する所定のトリアジンチオール誘導体により表面処理が施すことにより形成された被膜を有するものである。
重合性組成物
本発明に係るノルボルネン系モノマーを塊状開環重合させることにより得られる重合体は、ノルボルネン系モノマーと、重合触媒と、を含有する重合性組成物を用いて、これを塊状開環重合させることにより得られる重合体である。
まず、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体を形成するために用いられる重合性組成物に含有される各成分について説明する。
重合性組成物に含有させるノルボルネン系モノマーとしては、ノルボルネン環構造を有する化合物であれば良く、特に限定はされないが、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体;ジシクロペンタジエン(シクロペンタジエン二量体)、ジヒドロジシクロペンタジエン等の三環体;テトラシクロドデセン等の四環体;シクロペンタジエン三量体等の五環体;シクロペンタジエン四量体等の七環体;等を挙げることができる。
これらのノルボルネン系モノマーは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;エチリデン基等のアルキリデン基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール等の置換基を有していてもよく、さらに、これらのノルボルネン系モノマーは、エステル基、エーテル基、シアノ基、ハロゲン原子等の極性基を有していてもよい。
このようなノルボルネン系モノマーの具体例としては、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、シクロペンタジエン−メチルシクロペンタジエン共二量体、5−エチリデンノルボルネン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4−メタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロナフタレン、エチレンビス(5−ノルボルネン)等が挙げられる。
ノルボルネン系モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ノルボルネン系モノマーのうちでは、入手が容易であり、反応性に優れ、得られる複合成形体を耐熱性に優れたものとすることができる点から、三環体、四環体または五環体のノルボルネン系モノマーが好ましい。
また、塊状重合により生成する開環重合体が熱硬化型となることが好ましく、そのためには、上記ノルボルネン系モノマーの中でも、対称性のシクロペンタジエン三量体等の、反応性の二重結合を二個以上有する架橋性モノマーを少なくとも含むものを用いることが好ましい。このような架橋性モノマーの割合は、全ノルボルネン系モノマー中に、2〜30重量%であることが好ましい。
なお、本発明の目的を損なわない範囲で、ノルボルネン系モノマーと開環共重合し得るシクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロオクテン、シクロドデセン等の単環シクロオレフィン等を、コモノマーとして用いてもよい。
重合性組成物に含有させる重合触媒としては、メタセシス重合触媒が好ましい。
メタセシス重合触媒は、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオンおよび/または化合物が結合してなる錯体である。遷移金属原子としては、周期表(長周期型周期表、以下同じ)第5、6および8族の原子が使用される。このような遷移金属原子としては、特に限定されないが、第5族の原子としては、たとえばタンタルが挙げられ、第6族の原子としては、たとえばモリブデンやタングステンが挙げられ、第8族の原子としては、たとえばルテニウムやオスミウムが挙げられる。
これらの中でも、第8族のルテニウムやオスミウムの錯体をメタセシス重合触媒として用いることが好ましく、ルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。ルテニウムカルベン錯体は、触媒活性に優れるため重合性組成物の開環重合反応率を高くすることができ、生産性に優れるという利点を有する。また、得られる重合体における未反応の環状オレフィンに由来する臭気を低減することができる。さらに、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも生産が可能であるという利点も有する。
ルテニウムカルベン錯体は、下記式(2)または(3)で表される錯体化合物が好ましい。
Figure 2009066928
Figure 2009066928
上記式(2)および(3)において、R11、R12は、それぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;または、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくはケイ素原子を含んでもよい炭素数1〜20の炭化水素基;である。また、X、Xは、それぞれ独立して任意のアニオン性配位子であり、L、Lはそれぞれ独立して、ヘテロ原子含有カルベン化合物または中性電子供与性化合物である。R11、R12、X、X、LおよびLは、それぞれ組み合わせは任意であり、互いに結合して多座キレート化配位子を形成していてもよい。
なお、ヘテロ原子とは、周期表第15族および第16族の原子を意味し、具体的には、N、O、P、S、As、Se原子などを挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、N、O、P、S原子などが好ましく、N原子が特に好ましい。
ヘテロ原子含有カルベン化合物としては、カルベン炭素の両側にヘテロ原子が隣接して結合しているものが好ましく、さらにカルベン炭素原子とその両側のヘテロ原子とを含むヘテロ環が構成されているものがより好ましい。また、カルベン炭素に隣接するヘテロ原子には嵩高い置換基を有していることが好ましい。
このようなヘテロ原子含有カルベン化合物としては、下記式(4)または(5)で示される化合物が好ましい。
Figure 2009066928
Figure 2009066928
上記式(4)および(5)において、R13〜R16は、それぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;または、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでもよい炭素数1〜20の炭化水素基;である。また、R13〜R16は、それぞれ組み合わせは任意であり、互いに結合して多座キレート化配位子を形成していてもよい。
上記式(2)および(3)において、アニオン性配位子X、Xは、中心金属から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、例えば、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子;ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基などを挙げることができる。これらの中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
また、中性の電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよく、たとえば、カルボニル、アミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、チオエーテル類、芳香族化合物、オレフィン類、イソシアニド類、チオシアネート類などが挙げられる。これらの中でも、ホスフィン類、エーテル類およびピリジン類が好ましく、トリアルキルホスフィンがより好ましい。
上記式(2)または(3)で表させる錯体化合物の具体例としては、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、などのL、Lがそれぞれヘテロ原子含有カルベン化合物および中性の電子供与性化合物であるルテニウム錯体化合物;ベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどのL、Lともに中性電子供与性化合物であるルテニウム化合物;ベンジリデンビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデンビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ルテニウムジクロリドなどのL、Lともヘテロ原子含有カルベン化合物であるルテニウム錯体化合物;などが挙げられるが、これらの中でも(I)L、Lがそれぞれヘテロ原子含有カルベン化合物および中性の電子供与性化合物であるルテニウム錯体化合物、または、(II)L、Lともヘテロ原子含有カルベン化合物であるルテニウム錯体化合物が好ましい。
また、上記式(4)および(5)で表される化合物の具体例としては、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどが挙げられる。さらに、上記式(4)および(5)で表される化合物の他に、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、1,3,4−トリフェニル−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデンなどのヘテロ原子含有カルベン錯体化合物なども使用できる。
なお、これらのルテニウム錯体化合物は、たとえば、Org.Lett.,1999年,第1巻,953頁、Tetrahedron.Lett.,1999年,第40巻,2247頁などに記載された方法によって製造することができる。
メタセシス重合触媒の量は、触媒中の金属原子:ノルボルネン系モノマーのモル比で、通常1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。
メタセシス重合触媒を使用する際には、必要に応じて、少量の不活性溶剤に溶解または懸濁して使用することができる。このような溶媒としては、特に限定されないが、たとえば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、ミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素;などが挙げられる。これらの中では、工業的に汎用な芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素の使用が好ましい。また、メタセシス重合触媒としての活性を低下させないものであれば、液状の老化防止剤、液状の可塑剤、液状のエラストマーなど、得られる重合体の性能に寄与する機能性液状化合物を溶剤として用いてもよい。
さらに、重合性組成物には、メタセシス重合触媒の重合活性を制御したり、重合反応率を向上させたりする目的で、重合活性剤(共触媒)や重合遅延剤を重合性組成物中に配合してもよい。重合活性剤としては、有機アルミニウム化合物、有機亜鉛化合物、または有機スズ化合物などが挙げられる。
重合活性剤の具体例としては、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。
重合遅延剤としては、たとえば、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、(シス,シス)−2,6−オクタジエン、(シス,トランス)−2,6−オクタジエン、(トランス,トランス)−2,6−オクタジエンなどの鎖状ジエン化合物;(トランス)−1,3,5−ヘキサトリエン、(シス)−1,3,5−ヘキサトリエン、(トランス)−2,5−ジメチル−1,3,5−ヘキサトリエン、(シス)−2,5−ジメチル−1,3,5−ヘキサトリエンなどの鎖状トリエン化合物;トリフェニルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィンなどのホスフィン類;アニリンなどのルイス塩基;などが挙げられる。
重合活性剤や重合遅延剤の量は、使用する化合物や目的に応じて任意に設定されるが、「メタセシス重合触媒中の遷移金属原子:重合活性剤または重合遅延剤」のモル比で、通常1:0.05〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:20、より好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
また、本発明で用いる重合性組成物には、任意成分として、充填材を配合してもよい。充填材としては、種々の充填材を用いることができ、特に限定されないが、アスペクト比が5〜100の繊維状充填材およびアスペクト比が1〜2の粒子状充填材からなる無機充填材を用いることが好ましい。充填材のアスペクト比とは、充填材の平均長軸径と50%体積累積径との比をいう。ここで、平均長軸径は、光学顕微鏡写真で無作為に選んだ100個の充填材の長軸径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均長軸径である。 また、50%体積累積径は、X線透過法で粒度分布を測定することにより求められる値である。
繊維状充填材と粒子状充填材との含有重量比率(繊維状充填材/粒子状充填材)は、好ましくは95/5〜55/45であり、より好ましくは80/20〜60/40である。これらの比率を上記範囲内とすることにより、得られる複合成形体における、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体と、複合化用部材との間の密着性のさらなる向上を図ることができる。
上記繊維状充填材としては、5〜100のアスペクト比を有するものであることが好ましく、10〜50のアスペクト比を有するものであることがより好ましい。繊維状充填材の50%体積累積径は、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは1〜30μmである。50%体積累積径が小さすぎても、また大きすぎても、密着性の向上効果が低くなる傾向にある。
このような繊維状充填材の具体例としては、ガラス繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノライト、塩基性硫酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、テトラポッド型酸化亜鉛、石膏繊維、ホスフェート繊維、アルミナ繊維、ウィスカー状炭酸カルシウム、ウィスカー状ベーマイト等を挙げることができる。中でも、塊状重合を阻害せず、密着性の向上効果を少ない使用量で高めることができるウォラストナイトおよびウィスカー状炭酸カルシウムが好ましい。
また、上記粒子状充填材は、1〜2のアスペクト比を有するものであることが好ましく、1〜1.5のアスペクト比を有するものであることがより好ましい。粒子状充填材の50%体積累積径は、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは1〜30μm、特に好ましくは1〜10μmである。50%体積累積径が小さすぎても、また大きすぎても、密着性の向上効果が低くなる傾向にある。
このような粒子状充填材の具体例としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、グラファイト、酸化アンチモン、赤燐、各種金属粉、クレー、各種フェライト、ハイドロタルサイト等を挙げることができる。中でも、塊状重合反応を阻害しないので、炭酸カルシウムおよび水酸化カルシウムが好ましい。
上記充填材は、その表面を疎水化処理したものであることが好ましい。疎水化処理した充填材を用いることにより、重合性組成物中における充填材の凝集・沈降を防止でき、また、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体中における充填材の分散を均一にすることができる。そして、結果として、得られる複合成形体における、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体と、複合化用部材との間の密着性の向上効果のさらなる向上が可能となる。疎水化処理に用いられる処理剤としては、ビニルシラン等のシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ステアリン酸等の脂肪酸、油脂、界面活性剤、ワックス等を挙げることができる。充填材の疎水化処理は、重合性組成物を調製する際に、疎水化処理剤を同時に混合することによっても可能であるが、予め疎水化処理を行なった充填材を用いて重合性組成物の調製を行なうことが好ましい。
本発明において、充填材の量は、ノルボルネン系モノマーおよび触媒の合計量100重量部に対して、5〜55重量部であることが好ましく、10〜45重量部であることがより好ましい。充填材の量が多すぎると、密着性が低下してくる場合がある。一方、少なすぎると、充填材の添加効果が得難くなる。
また、重合性組成物には、上記以外の各種添加剤を含有させてもよい。このような添加剤としては、改質剤、酸化防止剤、着色剤、光安定剤、難燃剤などが例示される。
改質剤としては、たとえば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及びこれらの水素化物などのエラストマーなどが挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、アミン系などの各種のプラスチック・ゴム用酸化防止剤などが挙げられる。
着色剤としては、染料、顔料などが用いられる。染料の種類は多様であり、公知のものを適宜選択して使用すればよい。また、顔料としては、たとえば、カーボンブラック、黒鉛、黄鉛、酸化鉄黄色、二酸化チタン、酸化亜鉛、四酸化三鉛、鉛丹、酸化クロム、紺青、チタンブラックなどが挙げられる。
光安定剤としては、たとえば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オギザニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤などが挙げられる。
難燃剤としては、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物系難燃剤などが挙げられる。
これらの添加剤の量は、用途に応じた量とすれば良いが、ノルボルネン系モノマー100重量部に対して、それぞれ0.001〜1000重量部の範囲とすることが好ましい。
複合化用部材
次に、本発明で用いる複合化用部材について説明する。
本発明で用いる複合化用部材は、上述の重合性組成物を塊状開環重合させることにより得られるノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体と一体成形される、複合成形体の形成用部材であり、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体と接触する接触界面となる表面のうちの少なくとも一部が、後述する所定のトリアジンチオール誘導体で表面処理されたものである。
本発明で用いる複合化用部材を構成する材料としては、特に限定されず、導電性を有する材料から構成されるものが好ましいが、たとえば、鉄、銅、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム、コバルト、亜鉛、鉛、スズ、チタン、クロム、アルミニウム、マグネシウム、マンガンおよびこれらの合金などの各種金属材料を挙げることができる。また、上記した金属材料の他、その表面に導電性被膜(導電性物体のメッキ,蒸着膜,塗膜等)が形成された材料であっても良いし、カーボン、シリコン、導電性セラミック、導電性ゴム、有機導電体等を用いても良い。これらのなかでも、後述するトリアジンチオール誘導体による表面処理により形成される被膜を強固に形成できることから、銅を主成分(銅の含有量が50重量%以上)とするものが好ましい。
また、複合化用部材の形状も特に限定されず、たとえば、複合化用部材を金属材料で形成する場合には、金属箔であっても良いし、さらには、プリント配線板の製造用基板等の基板や、各種電子部品の端子電極などでも良い。特に、複合化用部材を、各種電子部品の端子電極とし、これらとノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体とを一体成形することにより、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体を、封止材として用いることができる。
本発明で用いる複合化用部材は、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体と接触する接触界面となる表面のうちの少なくとも一部に、下記式(1)で表されるトリアジンチオール誘導体で表面処理が施され、これにより被膜が形成されたものである。
Figure 2009066928
〔上記式(1)中、Xは−CR、−NR、−OR、または−SRであり、R〜Rは、−H、−C2n+1(ただし、nは1〜20の自然数)、−C2mCH=CH(ただし、mは1〜20の自然数)、−CH=CH、−C16CH=CHC17、−C11(シクロヘキシル基)、−C(フェニル基)、−CH、−CHCH、−CHCHOOC(CHCH=CH(「CHOOC」は、エステル結合部である。以下同様。)、−CHCHCOOC(CHCH=CH、−CHCHOOC(CHCH=CHのいずれかであり、R〜Rはお互いに同じであっても異なっていても良く、Mは、H、Li、Na、K、CaまたはBaである。〕
複合化用部材に対して、このようなトリアジンチオール誘導体で表面処理を行い、被膜を形成することにより、上述したノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体と複合化用部材とをこの被膜を介して密着させることができ、結果として、これらの間の密着性を向上させ、かつ反応熱による密着力の劣化が起こらない。
上記トリアジンチオール誘導体のうちでも、Xが−NR、Rが−H、Rが−C2mCH=CHであり、MがNaのものが好ましい。このようなトリアジンチオール誘導体の具体例としては、下記式(6)〜(8)に示される化合物が挙げられる。
Figure 2009066928
Figure 2009066928
Figure 2009066928
また、複合化用部材をトリアジンチオール誘導体で表面処理する方法としては、特に限定されないが、たとえば、以下に説明する浸漬処理法や電気化学的処理法が挙げられる。
浸漬処理法は、トリアジンチオール誘導体を水または有機溶剤に溶解させた溶液を用い、複合化用部材を、好ましくは0.1〜120分間、より好ましくは3〜30分間浸漬することにより、複合化用部材に対して表面処理を行い、被膜を形成させる方法である。浸漬処理法に用いる溶液中におけるトリアジンチオール誘導体の濃度は、特に限定されず、用いる複合化用部材の種類や、浸漬処理時間などに応じて適宜調整すれば良いが、好ましくは0.01〜1000mmol/L、より好ましくは0.1〜100mmol/L、特に好ましくは0.1〜10mmol/Lである。また、浸漬処理を行う際における溶液の温度は、用いる複合化用部材の種類や、溶液中のトリアジンチオール誘導体の濃度、さらには溶液を調製する際に用いる溶媒の種類に応じて適宜調整すれば良いが、たとえば、溶媒として水を使用する場合には、20〜80℃の範囲が好ましい。
また、電気化学的処理法は、トリアジンチオール誘導体および必要に応じて添加される電解質物質を含む水または有機溶剤を電解質溶液として用い、複合化用部材を陽極とし、白金、チタン、カーボン、アルミニウムまたはステンレス板を陰極とする電解法によって、複合化用部材の表面にトリアジンチオール誘導体からなる被膜を形成する方法である。電解法の具体例としては、たとえば、サイクリック法、定電流法、定電位法、パルス定電位法、またはパルス定電流法等が挙げられる。なお、複合化用部材の表面に形成されるトリアジンチオール誘導体からなる被膜は、通常、トリアジンチオール誘導体が高分子化した状態で形成される。
電気化学的処理法に用いられる電解質物質は、水または有機溶剤に溶解し、イオン伝導性を示し、かつ安定な化合物であれば良く、特に限定されないが、NaOH、NaCO、NaSO、KSO、NaSO、KCO、NaNO、KNO、NaNO、NaClO、CHCOONa(酢酸ナトリウム)、Na、NaBO、NaHPO、(NaPO、NaMnO、NaSiO等が挙げられ、これらは混合して用いることができる。これらの濃度は、一般的に0.001N以上であり、上限は特に限定されないが、通常、飽和濃度以下、好ましくは、0.1N以下である。
電解質溶液を調製する際に用いる溶媒としては、トリアジンチオール誘導体および必要に応じて添加される電解質物質を同時に溶解可能なものであれば良く、特に限定されないが、たとえば、水、メタノール、エタノール、カルビトール、セルソルブ、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、アクリロニトリル、エチレンカーボネイトなどが挙げられ、これらは混合して用いることができる。
電解質溶液中におけるトリアジンチオール誘導体の濃度としては、用いる複合化用部材の材料により異なるが、好ましくは10−6〜10mol/Lであり、より好ましくは10−5〜1mol/Lである。
複合成形体
本発明の複合成形体は、上述の重合性組成物を、複合化用部材に塗布する方法などにより、重合性組成物と複合化用部材とを一体化させ、次いで、重合性組成物中に含有されるノルボルネン系モノマーを塊状開環重合させ、これらを一体成形することにより製造される。なお、この際において、複合化用部材の表面のうち、トリアジンチオール誘導体で表面処理され、被膜が形成された面のうち少なくとも一部が、重合性組成物と接するような状態で、これらを一体化する。このような状態とすることにより、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体と複合化用部材とを、トリアジンチオール誘導体により形成された被膜を介して密着させることができ、これらの密着性を向上させ、かつ反応熱による密着力の劣化が起こらない。
重合性組成物と複合化用部材とを塗布法により一体化させる場合には、たとえば、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法などの公知の塗布方法を採用することができる。
また、重合性組成物を塊状開環重合させる方法としては、特に限定されないが、重合性組成物と複合化用部材とを一体化させた状態で、加熱し、これにより塊状開環重合させることが好ましい。塊状開環重合させるための加熱温度は、通常、30〜250℃、好ましくは50〜210℃である。また、重合時間は、適宜選択すればよいが、好ましくは、10秒〜20分である。
重合性組成物を所定温度に加熱することにより重合反応が開始する。この重合反応は発熱反応であり、一旦反応が開始すると、組成物の温度が急激に上昇し、短時間(例えば、10秒から5分程度)でピーク温度に到達する。このようなピーク温度は、通常、120〜240℃の範囲であり、好ましくは180〜220℃の範囲である。特に、本発明で用いるトリアジンチオール誘導体は、耐熱性が高く、そのため、このように反応時におけるピーク温度が高くなった場合でも反応熱による劣化がなく、その接着機能を十分に発揮できるものである。
なお、本発明においては、上述した方法の他、重合性組成物を2以上の反応原液(たとえば、(1)ノルボルネン系モノマーと重合触媒とを含有する反応原液と、(2)ノルボルネン系モノマーと重合活性剤とを含有する反応原液と、の2つの反応原液)に分け、反応射出成形(RIM)により、これらを、上述の複合化用部材を配置した型内に別々に注入し、型内で塊状重合させることにより製造しても良い。この場合において、反応射出成形(RIM)装置として公知の衝突混合装置を用いることができる。
以上のようにして本発明の複合成形体を製造することができる。このようにして製造される本発明の複合成形体は、ノルボルネン系モノマーを塊状開環重合させることにより得られる重合体を用いているため、電気特性、機械的特性、耐衝撃特性および耐候性に優れたものである。しかも、本発明の複合成形体は、複合化用部材の、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体との接触界面のうちの少なくとも一部に、所定のトリアジンチオール誘導体で表面処理を施すことにより形成された被膜を有しているため、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体と、複合化用部材との間の密着性が高く、たとえば、熱衝撃が加えられた場合においても、剥離せず、高い信頼性を有するものである。
特に、複合化用部材を、プリント配線板の製造用基板や各種電子部品の端子電極とし、これらとノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体とを一体成形して得られる複合成形体、より具体的には、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合体を、プリント配線板の製造用基板や各種電子部品の端子電極と一体成形させて封止材として用いた場合においても、これらは高い密着性および耐熱性を有するため、融点が比較的高い鉛フリーはんだを用いても、剥離することはなく、十分な信頼性を確保することできるものである。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
また、表1中の「破壊モード」は、剥離の状況を次の基準に従って分類したものである。
「界面剥離」:表面処理した銅と樹脂との界面で剥離した状態を表す。
「凝集破壊」:接着面は剥がれず、接着している樹脂の方が引きちぎられて破壊に至った状態を表す(樹脂の破壊強度よりも接着力の方が勝っている状態)。
「銅板/接着剤間で剥離」:銅と接着剤との界面で剥離した状態を表す(接着剤と樹脂の接着強度よりも銅と接着剤の接着強度の方が弱い状態)。
実施例1
まず、ノルボルネン系モノマーとしてのジシクロペンタジエン90%とトリシクロペンタジエン10%とを混合し、反応原液を調製した。一方、メタセシス重合触媒として下記式(9)で表される化合物([1,3-Bis(2,4,6-trimethylphenyl)-2-imidazolidinylidene]dichloro(3-methyl-2-butenylidene)(tricyclohexylphosphine)ruthenium(II)、Aldrich社製品)7%をトルエン93%に溶解させることにより、触媒溶液を調製した。次いで、メタセシス重合触媒とノルボルネン系モノマーとの比率がモル比で1:20,000となるように、反応原液100重量部に対して触媒溶液を0.43重量部添加し、撹拌・混合することにより、重合性組成物を調製した。
Figure 2009066928
一方で、上記とは別に、長さ150mm×幅25mm×厚さ1mmの銅板を2枚準備し、これらの銅板について、浸漬処理法により、下記式(8)で示すトリアジンチオール誘導体で表面処理を行った。なお、表面処理条件としては、濃度1mmol/Lトリアジンチオール水溶液を約60℃に加温し、これに銅板を約30分浸漬した後取り出し、メタノールで洗浄し、次いで乾燥することにより、表面処理を行った。
Figure 2009066928
そして、上記にて調製した重合性組成物を、表面処理を行った銅板のうち1枚の銅板の一方の面に塗布することにより重合性組成物層を形成し、次いで、重合性組成物層の表面に、もう1枚の銅板を重ねることにより、銅板/重合性組成物層/銅板の三層からなる積層構造体を得た。なお、本実施例では、積層構造体は、銅板と重合性組成物層とが重なり合う面積が12.5mm×25.0mmとなるような構成とし、一対の銅板は、長さ方向の一方の端部側で互いに重なるようにするとともに、長さ方向の他方の端部が反対側となるように配置した。また、重合性組成物層の厚みは、塊状開環重合後の厚みが1mmとなるように調整した。
次いで、積層構造体を、200℃、15分加熱することにより、塊状開環重合反応を行い、銅板/重合性組成物層/銅板の三層からなる複合成形体を得た。得られた複合成形体について、引張り剪断接着強度測定を行った。なお、引張り剪断接着強度測定の条件は、引張り試験機を用い、引張り速度を5mm/min.とした。結果を表1に示す。
実施例2
塊状開環重合反応を行う際における温度を120℃とした以外は、実施例1と同様にして、複合成形体を作製し、同様にして、引張り剪断接着強度測定を行った。結果を表1に示す。
実施例3
実施例1と同様にして、ノルボルネン系モノマーを含有する反応原液を調製する際に、ノルボルネン系モノマー100重量部に対し、以下の方法により調製した表面処理済み混合フィラー33重量部を添加した以外は、実施例1と同様にして、複合成形体を作製し、同様にして、引張り剪断接着強度測定を行った。結果を表1に示す。なお、表面処理済み混合フィラーは、ウォラストナイト(キンセイマテック社製 SH−400、50%体積累積径:20μm、アスペクト比:18)75重量部と炭酸カルシウム(三共製粉社製 エスカロン#2000、50%体積累積径:1.8μm、アスペクト比:1)25重量部を混合し、次いで、シランカップリング剤(信越化学工業社製 KBM−1003)で表面処理した後、チタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ社製 プレンアクトKR−TTS)でさらに表面処理することにより調製した。
比較例1
トリアジンチオール誘導体による処理を行っていない銅板を使用した以外は、実施例1と同様にして、複合成形体を作製し、同様にして、引張り剪断接着強度測定を行った。結果を表1に示す。
比較例2,3
トリアジンチオール誘導体による処理の代わりに、変性オレフィン系ホットメルト接着剤(東亞合成(株)製)による処理を行った銅板を使用した以外は、実施例1と同様にして、複合成形体を作製し、同様にして、引張り剪断接着強度測定を行った。なお、変性オレフィン系ホットメルト接着剤としては、それぞれ、東亞合成(株)製の「PPET−1303S」(比較例2)および東亞合成(株)製の「PPET−1501SG」(比較例3)を使用した。また、変性オレフィン系ホットメルト接着剤による処理は、銅板に変性オレフィン系ホットメルト接着剤を塗布し、24時間室温で乾燥することにより行った。結果を表1に示す。
Figure 2009066928
表1に示すように、複合化用部材として、トリアジンチオール誘導体で表面処理を行った銅板を使用した場合には、いずれも接着強度が高くなり、反応熱による密着力の劣化がなかった(実施例1〜3)。なかでも、ノルボルネン系モノマーに所定の混合フィラーを添加した実施例3においては、破壊モードが凝集破壊となり、特に良好な結果となった。
これに対して、複合化用部材として、未処理の銅板を使用した場合、およびホットメルト接着剤を使用した場合のいずれにおいても、接着強度に劣る結果となった(比較例1〜3)。なお、ホットメルト接着剤を使用した場合における接着強度が低くなった理由としては、ホットメルト接着剤が、ノルボルネン系モノマーの塊状開環重合時における反応熱により分解(反応熱による劣化)したことによるものであった。

Claims (4)

  1. ノルボルネン系モノマーを塊状開環重合させることにより得られる重合体と、複合化用部材とを一体成形してなる複合成形体であって、
    前記複合化用部材は、前記重合体との接触界面のうちの少なくとも一部に、下記式(1)で表されるトリアジンチオール誘導体で表面処理を施すことにより形成された被膜を有することを特徴とする複合成形体。
    Figure 2009066928
    〔上記式(1)中、Xは−CR、−NR、−OR、または−SRであり、R〜Rは、−H、−C2n+1(ただし、nは1〜20の自然数)、−C2mCH=CH(ただし、mは1〜20の自然数)、−CH=CH、−C16CH=CHC17、−C11(シクロヘキシル基)、−C(フェニル基)、−CH、−CHCH、−CHCHOOC(CHCH=CH(「CHOOC」は、エステル結合部である。以下同様。)、−CHCHCOOC(CHCH=CH、−CHCHOOC(CHCH=CHのいずれかであり、R〜Rはお互いに同じであっても異なっていても良く、Mは、H、Li、Na、K、CaまたはBaである。〕
  2. 前記重合体と前記複合化用部材とは、前記複合化用部材に形成された前記被膜を介して互いに密着している請求項1に記載の複合成形体。
  3. 前記複合化用部材が、銅を主成分とするものである請求項1または2に記載の複合成形体。
  4. 前記複合成形体は、前記複合化用部材を配置した型内に、前記ノルボルネン系モノマーを含有する反応液を注入して塊状重合させることによって得られる請求項1〜3のいずれかに記載の複合成形体。
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