JP2009066209A - 車両用シートの表皮材及び車両用シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数のピースSpをシート形状に縫合したのち、車両用シート1表面を覆うように張設される表皮材Sであって、表皮材Sを構成する複数のピースSpに、各々、表皮材Sの意匠面を構成する意匠部位32と、意匠部位32とは異なる縫い代部位30とを設け、表皮材Sの意匠部位32に、寸法の異なる貫通孔34又は非貫通孔を、一定の規則性を持たして配列形成した表皮材Sである。
【選択図】図1
Description
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、表皮材の貫通孔又は非貫通孔に、より機能的な役割を持たせて有効利用することにある。
そして第1発明によれば、表皮材の「意匠部位」に、寸法の異なる貫通孔又は非貫通孔を一定の規則性を持たして配置形成する(貫通孔又は非貫通孔の寸法の違いによるグラデーションを設ける)ことで、グラデーションによる意匠性を向上させながら、貫通孔又は非貫通孔の寸法の違いに由来する機能性を表皮材に付与することができる。一方、表皮材の「縫い代部位」を、貫通孔又は非貫通孔を形成しない無地状態とすることで、ピース同士の縫付強度を確保することができる。
そこで第3発明では、第1発明又は第2発明の表皮材において、複数の貫通孔又は非貫通孔を、シートバック中央部からシートバック両側部に向かって連続的又は段階的に寸法が小さくなる規則性を持たして(貫通孔の寸法の違いによるグラデーションを設けて)配置形成した。これにより、比較的寸法の小さい貫通孔又は非貫通孔が配置形成されたシートバック両側部には、シートバック中央部よりも高い耐摩耗性が備わる。
そこで第4発明では、第1発明又は第2発明の表皮材において、複数の貫通孔又は非貫通孔を、シート端部付近の表皮材に形成するとともに、シート端部側に向かって連続的又は段階的に寸法が大きくなる規則性を持たして(貫通孔の寸法の違いによるグラデーションを設けて)配置形成した。これにより、比較的寸法の大きい貫通孔又は非貫通孔が配置形成されたシート端部付近の表皮材が、シート中央部の表皮材よりも伸びやすくなる(伸び特性が向上する)。
そして第3発明によれば、シートバック両側部の耐摩耗性が優れた車両用シートを提供することができる。また第4発明によれば、より好適にシート本体外形に対応させて表皮材を張設した車両用シートを提供することができる。
そして上記各図では、適宜「貫通孔又は非貫通孔(薄肉部)」を黒丸で図示する。また各図において、便宜上一部の貫通孔(又は非貫通孔)にのみ符号34を付すが、黒丸で図示された部分は全て貫通孔(又は非貫通孔)である。
(車両用シート)
図1を参照して、実施例1に係る車両用シート1には、シートクッション10、シートバック80及びシートヘッドレスト90からなるシート本体を覆うように、貫通孔34を設けた表皮材S(10S,80S,90S)が張設されてなる。なお表皮材S(10S,80S,90S)の材質は特に限定しないが一般的には皮革製である。
そして本実施例の車両用シート1は、着座者の着座姿勢位置となるシートバック80中央部Cに対してシートバック80の両側部L,Lが緩やかな突出凸状に形成されている。このシートバック80両側部L,Lは、上述の通り、乗降時の着座者が擦るように接触する部位である。このためシートバック80の両側部L,Lは、シートバック80中央部Cよりも耐摩耗性に優れることが望ましい。
このため車両用シート1では、径寸法の小さい貫通孔34を配置形成したシートバック80両側部L,L(特に無地状態の両端部E,E)が、径寸法の大きい貫通孔34を配置形成したシートバック80中央部Cと比較して、より高い耐摩耗性を備えることとなる(換言すると、車両用シート1の乗降性能が高められている)。
さらに車両用シート1は、シートヘッドレスト90の表皮材90S(側面ピース92Sp)にも貫通孔34を設けてあって、その意匠性がより高められている。このように表皮材S(10S,80S,90S)に貫通孔34の径寸法の違いによるグラデーションが設けられることで、車両用シート1が優れた意匠性を有することとなる。
そして表皮材Sの貫通孔34又は非貫通孔の形状は、本実施例に示す円形のほか、楕円形などの略円形状、ひし形,三角形,四角形,五角形又は星形等の多角形状でもよい。
上述の表皮材S(10S,80S,90S)は、複数のピースを縫合してシート形状としたものである。そしてピースの製造工程は、図2を参照して、(a)「ピース区分け工程」及び(b)「貫通孔形成工程」を有している。
そして本実施例では、コンピュータ制御のレーザー光照射装置(図示しない)を使用することにより「ピース区分け工程」及び「貫通孔(又は非貫通孔)形成工程」を実質同時に行う。そしてコンピュータ制御のレーザー光照射装置を使用することで、「貫通孔形成工程」において、予め設定された大きさ、形状及び間隔でもって複数の貫通孔34をピースに正確に形成することができる。さらに本実施例の製造方法によれば、後述するように、従来のピース製造方法の問題点を同時に解消することができる。
ここで均等ピッチとは、例えば図9を参照して、隣接する2つの貫通孔を結ぶ線の長さ寸法を常にaとし、直近の4つの貫通孔で四角形を形成したとき、その対角線の長さ寸法は常にbとすることである。そして従来の製造方法の問題点の一つは、ピースの縫い代部にまで貫通孔34が形成されることである。このように縫い代部位に貫通孔があることで、その強度が低下するとともに、表皮材を構成するピース間の縫合強度が低下する。
すなわち従来の製造法では、貫通孔34の配列がピース間でずれないうようにシート状に縫合する必要上、ピース区分け工程において貫通孔34の柄を揃えた状態で複数のピースを表皮材原反4より裁断する必要がある。具体的には図10(a)のように、基本となる柄の側部ピース{柄角度0°の側部ピース88Sp(1)}と同一の柄の関係にある側部ピース{柄角度90°の側部ピース88Sp(2)、180°の側部ピース88Sp(3)又は270°の側部ピース88Sp(4)}を表皮材原反4より裁断する必要がある。
そこで本実施例の「ピース区分け工程」では、上記問題点を解消すべく、図2(a)を参照して、貫通孔34を設ける前段階の(無地の)表皮材原反6をピース毎に区分けすることとした。
このように無地の表皮材原反6を使用すると、図3(a)を参照して、貫通孔34の柄角度とは無関係に側部ピース88Spを区分けすることができ、表皮材原反6から得られるピース枚数が極端に増加する(歩留まりが向上する)。そして本実施例によれば、後述の「貫通孔形成工程」においてピース毎に貫通孔34を設けるため、予め貫通孔34を設けた表皮材原反4と貫通孔34を設けない無地の表皮材原反6の2種類を用意する必要がない。このため、図3(b)を参照して、貫通孔34を形成した側部ピース88Sp(1)〜(4)と、無地状態のピース(後述するシートヘッドレスト用の側面ピース92Sp)を一枚の表皮材原反6に設けることができる。
なお「ピース毎に区分けする」とは、表皮材原反6よりピースを裁断することのほか、(ピースを裁断することなく)ピース外形を示す区分けラインPL(実線又はコンピュータ上に設定された仮想線)による線引きをすることを意味する。
このマーキング36は、ピース同士を縫い合わせてシート形状とする際、ピース毎に形成された貫通孔が一定の規則性にて配置形成されるように、ピースと他のピースとを縫い合わせる際の縫付位置を決める目印である。そして、ピースのマーキング36と他のピースのマーキング36を対応させつつピース同士を縫合することで、ピース毎に形成された貫通孔34がピース間でずれないようにシート形状とすることができる。このため、表皮材S(10S,80S,90S)縫合時の手間が省け、縫合作業が容易となる。
なおマーキング36の配置位置や形状は特に図示された略V字状に限定されるものではなく、ピースの大きさや張設位置によって適宜変更される。
次に「貫通孔形成工程」では、図2(b)を参照して、上述のマーキング36が収まるよう区分けラインPLに沿って設けた「縫い代部位30」と、この縫い代部位30で囲まれた「意匠部位32」とを区別して形成する。なお「意匠部位32」とは、人が見たり触ったりできる表皮材S(10S,80S,90S)の外面(表皮材Sの意匠面を構成する部位)である。
また別の例として、図4(b)を参照して、側面ピース92Sp(シートヘッドレスト90側部Lを覆うピース)でも、区分けラインPLを帯状に縁取る「縫い代部位30」を無地状態で残しておく。そして側面ピース92Spにレーザー光を照射して、側面ピース92Sp中央から縫い代部位30に向かって連続的(又は段階的)に径寸法が小さくなる規則性でもって貫通孔34を放射状に配置形成する。
こうすることで上記各ピース(88Sp,92Sp)の「意匠部位32」に貫通孔34の径寸法の違いによるグラデーションを設けて配置形成するとともに、「縫い代部位30」を無地状態(マーキング36のみが設けられた状態)で残すことができる。
次に、ピース毎に形成された貫通孔34を一定の規則性にて配置形成するように、上述のマーキング36を目印にピース同士を縫合してシート形状とする。具体的には、「縫い代部位30」をシート本体内部方向に折り返し状態として各ピースを互いに縫合し、シート本体表面に後述する「意匠部位32」を露出した状態とする(図7を参照)。このとき各ピースの縫い代部位30は無地状態(貫通孔34又は非貫通孔がない状態)であるので、車両用シート1に特に好適な縫付強度を有する。また縫合具(典型的には縫糸)が貫通孔34に入り込むこともない。
このように製造された車両用シート1は、上述の通り、径寸法の小さい貫通孔34を配置形成したシートバック80両側部L,L(特に無地状態の両端部E,E)が、径寸法の大きい貫通孔34を配置形成したシートバック80中央部Cと比較してより高い耐摩耗性を有することとなる。一方、シートバック80中央部C及びシートクッション10中央部C(いずれも着座時の着座者を収納する部位)は、表皮材Sに形成した貫通孔34の径寸法が比較的大きく、着座者の荷重により適度に伸びる。このため、車両運転時の着座者が安全に車両用シート1に沈み込んで納まることとなる。このように本実施例では、車両用シート1の機能や物性に合わせて、表皮材Sの貫通孔34に、より機能的な役割を持たせることができる。
(車両用シート)
実施例2の車両用シートの基本構造及び表皮材Sの製造方法は、実施例1の車両用シートとほぼ同一であるため、共通の構造等については対応する符号を付すことで詳細な説明を省略する。
実施例2に係る車両用シート2は、図5及び図7を参照して、シートクッション10中央部C及びシートバック80中央部Cに対して、シートクッション10端部E及びシートバック80端部E(シート端部Eと総称する)が突出状に形成されている。このような車両用シート2では、表皮材S(10S,80S,90S)をうまくシート本体外形(典型的にはシートバックパッド80P)に対応させて張設するために、突出状のシート端部Eに張設すべき表皮材S部分が伸びやすい(伸び特性に優れる)ことが望ましい。
このため、シート中央部C側よりも径寸法の大きい貫通孔34又は非貫通孔を配置形成したシート端部Eの表皮材10S,80Sが伸びやすくなり(表皮材の伸び特性が向上し)、より好適にシート本体外形に対応させて表皮材10S,80Sを張設することができる。
このように本実施例でも、車両用シート2の機能や物性に合わせて、表皮材Sの貫通孔34に、より機能的な役割を持たせることができる。
(1)各実施例では、専らシートバック、シートクッション又はシートヘッドレストの表皮材を例示して、貫通孔又は非貫通孔(薄肉部)の配置形成例を示した。本実施例の表皮材は、これら構成部材のほか、車両用シートを構成する各種の部材及びその付属物に対しても適宜適用可能である。
(2)各実施例では、専ら車両用シート着座席側面に貫通孔又は非貫通孔(薄肉部)を設ける例を説明した。これとは異なり、車両用シート後部座席面の表皮材(バックカバー)に貫通孔又は非貫通孔(薄肉部)を設けてもよい。
(3)各実施例では、典型的な例として縫糸を用いて複数のピースを縫合する例を説明した。この縫合具として、縫糸の代わりにステープルのような金属製縫合具を用いてもよい。そして「縫合」の概念には「接着」も含まれることとする。接着とは、公知の接着剤を用いて各ピースを接着すること、または各ピース同士を熱融着することである。各ピースを接着する場合には、縫い代部位が接着部位となる。
(4)そして各実施例では、レーザー光照射装置を使用することで、「ピース区分け工程」及び「貫通孔形成工程」を実質同時に行う例を説明した。これとは異なり、工程毎に異なるプレス型を使用して、「ピース区分け工程」の次に「貫通孔形成工程」を逐次行ってもよい。
2 別の例の車両用シート
4 表皮材原反
6 無地の表皮材原反
10 シートクッション
30 縫い代部位
32 意匠部位
34 貫通孔
36 マーキング
80 シートバック
90 シートヘッドレスト
S 表皮材
Sp (表皮材の)ピース
80Sp (シートバック用表皮材の)上部ピース
88Sp (シートバック用表皮材の)側部ピース
92Sp (シートヘッドレスト用表皮材の)側面ピース
Claims (4)
- 複数のピースをシート形状に縫合したのち、車両用シート表面を覆うように張設される表皮材であって、
前記表皮材を構成する前記複数のピースに、各々、前記表皮材の意匠面を構成する意匠部位と、前記意匠部位とは異なる縫い代部位とを設け、
前記表皮材の意匠部位に、寸法の異なる貫通孔又は非貫通孔を、一定の規則性を持たして配列形成した車両用シートの表皮材。 - 前記ピースの縫い代部位には、前記ピースとは異なる他のピースと縫い合わせる際の縫合位置を決めるマーキングが形成されている請求項1に記載の車両用シートの表皮材。
- 着座者の着座位置とされるシートバック中央部に対してシートバック両側部が突出凸状に形成されたシート本体に請求項1又は2に記載の表皮材が張設されており、
前記表皮材の貫通孔又は非貫通孔が、前記シートバック中央部から前記シートバック両側部に向かって連続的又は段階的に寸法が小さくなる規則性を持たして配置形成されている車両用シート。 - 着座者の着座位置とされるシート中央部に対してシート端部が突出状に形成されたシート本体に請求項1又は2に記載の表皮材が張設されており、
前記表皮材の貫通孔又は非貫通孔が、前記シート端部付近に設けられるとともに、前記シート端部側に向かって連続的又は段階的に寸法が大きくなる規則性を持たして配置形成されている車両用シート。
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