JP2009061589A - インクジェットヘッドの製造方法及びインクジェットヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】インクジェットヘッドにおいて、所望の耐溶剤性を確保しつつインク吐出孔周辺の清浄性を高める。
【解決手段】本発明のインクジェットヘッド1の製造方法は、インク吐出面75に溝部71を有するインクジェットヘッドマニホールド2上のオリフィスプレート3表面に、インク吐出孔3aを塞ぐマスキングテープ76を貼り付ける工程と、オリフィスプレート3表面のマスキングテープ76及び溝部71と共に、FPC5と圧電素子6との間の接着層74を各圧電素子6の外側から覆う保護膜72を形成する工程と、この保護膜72をインク吐出面75上の溝部71内で切断しつつマスキングテープ76を剥離する工程と、を有する。
【選択図】図8F
【解決手段】本発明のインクジェットヘッド1の製造方法は、インク吐出面75に溝部71を有するインクジェットヘッドマニホールド2上のオリフィスプレート3表面に、インク吐出孔3aを塞ぐマスキングテープ76を貼り付ける工程と、オリフィスプレート3表面のマスキングテープ76及び溝部71と共に、FPC5と圧電素子6との間の接着層74を各圧電素子6の外側から覆う保護膜72を形成する工程と、この保護膜72をインク吐出面75上の溝部71内で切断しつつマスキングテープ76を剥離する工程と、を有する。
【選択図】図8F
Description
本発明は、インクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッドの製造方法及びインクジェットヘッドに関する。
個々のインク吐出孔に各々対応する複数の電極が形成された圧電素子をフレキシブル基板を介して駆動することで、この際生じるポンプ作用によってインクを吐出させるインクジェットヘッドが知られている。この種のインクジェットヘッドでは、圧電素子とフレキシブル基板との間の接着に例えば異方性導電フィルムなどが利用される。
一般に耐溶剤性が低いこの異方性導電フィルムを適用する場合には、少なくともこの接着部分の周辺を耐溶剤性の高い保護膜で被覆することなどが行われている。保護膜の形成に際しては、インク吐出孔の周辺をマスキングテープで覆い、保護膜形成後、マスキングテープを剥離させている。マスキングテープの剥離後には、インク吐出孔の周辺の塵埃を拭き取るクリーニングなどが行われる。
ここで、インク吐出孔の周辺に例えばフッ素樹脂などをコーティングすることで、インク吐出孔周辺の耐クリーニング性を高めたインクジェットヘッドなども提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平5−4344号公報
しかしながら、上述した製法を適用するインクジェットヘッドでは、マスキングテープを剥離させた時の保護膜の断片が、インク吐出孔の周辺を拭き取るクリーニングの際にインク吐出孔内に入り込むことなどが懸念される。また、マスキングテープを剥離させる際に、保護膜で覆うことが必要な個所まで一緒に保護膜が剥がれてしまうという課題などもある。
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、所望の耐溶剤性などを確保しつつインク吐出孔周辺の清浄性を高めることができるインクジェットヘッドの製造方法及びインクジェットヘッドの提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るインクジェットヘッドの製造方法は、インクの流路を内部に備え、かつ所定個所に溝部を形成したインク吐出面にインク吐出口を開口させたヘッド本体を作製するヘッド本体作製工程と、前記作製されたヘッド本体を挟んだ状態で押圧力を付与する一対の振動板を前記ヘッド本体上の一対のヘッド押圧面に接合する振動板接合工程と、前記ヘッド本体の前記インク吐出面上の前記溝部を避けた領域に、前記インク吐出口とつながるインク吐出孔が穿孔されたオリフィス部材を接合するオリフィス接合工程と、前記ヘッド本体に接合された前記各振動板を電気的に駆動するそれぞれ一対のフレキシブル基板及び圧電素子を前記各振動板の外側に所定の接着層を介して順次接着する接着工程と、前記ヘッド本体に接合された前記オリフィス部材の表面に前記インク吐出孔を塞ぐマスキングテープを貼り付けるマスキング工程と、前記インク吐出面上の前記オリフィス部材表面の前記マスキングテープ及び前記溝部と共に、前記各フレキシブル基板と前記各圧電素子との間の前記接着層を当該各圧電素子の外側から覆う保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記形成された保護膜を前記インク吐出面上の前記溝部内で切断しつつ前記マスキングテープを剥がすマスキング剥離工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明のインクジェットヘッドは、インクの流路を内部に備え、かつ所定個所に溝部を有するインク吐出面にインク吐出口を開口させたヘッド本体と、前記ヘッド本体を一対のヘッド押圧面側から挟んだ状態で押圧力を付与する一対の振動板と、前記ヘッド本体の前記インク吐出面上の前記溝部を避けた領域に接合され、前記インク吐出口とつながるインク吐出孔が穿孔されたオリフィス部材と、前記ヘッド本体に接合された前記各振動板の外側に所定の接着層を介して順次接着され、前記各振動板を電気的に駆動するそれぞれ一対のフレキシブル基板及び圧電素子と、前記オリフィス部材上の前記インク吐出孔が露出するように前記インク吐出面上の前記溝部内で縁部が切断されていると共に、前記各フレキシブル基板と前記各圧電素子との間の前記接着層を当該各圧電素子の外側から覆う保護膜と、を具備することを特徴とする。
すなわち、本発明によれば、インク吐出面に設けた溝部内で保護膜を切断できるので、マスキングテープを剥離する際一緒に、保護膜における例えば接着層などを被覆する必要な被覆個所が剥がれてしまうことなどを防止できる。また、本発明によれば、上述した溝部内で保護膜を切断できるので、インク吐出孔周辺を例えば払拭するクリーニングの際などに、マスキングテープを剥離させた時の保護膜の断片が、インク吐出孔内に異物として混入することなどを抑制できる。
本発明によれば、所望の耐溶剤性などを確保しつつインク吐出孔周辺の清浄性を高めることが可能なインクジェットヘッドの製造方法及びインクジェットヘッドを提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットヘッド1の外観を示す斜視図である。また、図2は、このインクジェットヘッド1を概略的に示す平面(上面)図であり、図3は、インクジェットヘッド1を概略的に示す底面図である。さらに、図4は、図3に示したインクジェットヘッド1のA−A断面図であり、図5は、このインクジェットヘッド1の構造を示す分解斜視図である。なお、図4のA−A断面図では、インクジェットヘッドマニホールド2内のインクの流路やオリフィスプレート3上のインク吐出孔3aなどの図示を省略している。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットヘッド1の外観を示す斜視図である。また、図2は、このインクジェットヘッド1を概略的に示す平面(上面)図であり、図3は、インクジェットヘッド1を概略的に示す底面図である。さらに、図4は、図3に示したインクジェットヘッド1のA−A断面図であり、図5は、このインクジェットヘッド1の構造を示す分解斜視図である。なお、図4のA−A断面図では、インクジェットヘッドマニホールド2内のインクの流路やオリフィスプレート3上のインク吐出孔3aなどの図示を省略している。
図1に示すように、本実施形態のインクジェットヘッド1は、ヘッド本体(ヘッド筐体)としての金属製のインクジェットヘッドマニホールド2を備えている。インクジェットヘッドマニホールド2は、図1〜図5に示すように、インクの流路を内部に備えると共に後述するインク吐出口37の開口するインク吐出面75に溝部71を有する。
インクジェットヘッドマニホールド2は、図1及び図5に示すように、複数の種類(図5に示す例では大別して9種類)の金属製の第1流路形成積層板21〜第9流路形成積層板29を複数枚(例えば、25〜250枚)積層して構成されている。これらの第1流路形成積層板21〜第9流路形成積層板29は、厚さが例えば0.02mm〜0.2mmの金属製(例えば、SUS304など)の板材から構成されており、これらを拡散接合などによって互いに圧着することで、ブロック状に形成されている。また、第1流路形成積層板21〜第9流路形成積層板29に開口されたインク流路は、例えばエッチング加工やブラスト加工によって形成されている。第1流路形成積層板21〜第9流路形成積層板29の外形は、エッチング加工やブラスト加工の他、打ち抜き加工によっても成形することができる。
また、インクジェットヘッドマニホールド2の底面には、図3〜図5に示すように、複数のインク吐出孔3a(例えば直径0.01mm〜0.1mm)の形成されたオリフィス部材としてのオリフィスプレート3が、上記した拡散接合などによって接合されている。このオリフィスプレート3は、例えば幅4mm、厚さ0.08mmで形成(厚さは例えば0.05mm〜0.2mmの範囲内で形成されていてもよい)されており、その構成材料としては、インクジェットヘッドマニホールド2と同一の材料(例えば、SUS304など)が適用されている。インク吐出孔3aは、図3、図5に示すように、オリフィスプレート3上に例えば一列に配置されている。このインク吐出孔3aは、例えばパンチング加工、レーザ加工、エッチング加工などによって形成されている。
ここで、図3に示すように、上述した溝部71は、オリフィスプレート3上のインク吐出孔3aをインク吐出面75上で包囲する位置に形成されている。換言すると、オリフィスプレート3は、インク吐出面75上の溝部71を避けた領域、つまり、溝部71の内側の領域に接合されている。
また、インクジェットヘッドマニホールド2の各側面で構成されるヘッド押圧面2cには、図1〜図5に示すように、一対の振動板(箔)4が、拡散接合などによって接合されている。また、振動板4は、インクジェットヘッドマニホールド2と同一の材料(例えば、SUS304など)から構成されており、例えば厚さ0.01mm〜0.05mmで形成されている。また、振動板4は、レーザ加工やエッチング加工などによって加工成形されている。このような各振動板4は、一対のヘッド押圧面2c側からインクジェットヘッドマニホールド2を挟んだ状態で押圧力を付与する。
一対のこの振動板4の個々の外側面には、図1〜図5に示すように、所定形状の導体パターンが形成されたフレキシブル基板である一対のFPC(Flexible Printed Circuit)5が、接着層73を介して接着されている。さらに、これらのFPC5の各外側面には、接着層74を介して一対の圧電素子6が接着されている。圧電素子6は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの材質で構成されたピエゾ素子であって例えば0.2mm〜2mmの厚さを有する。これらの圧電素子6には、各インク吐出孔3aにそれぞれ対応する複数の電極が、蒸着などの方法で形成されており、これらの電極は、FPC5に形成された導体パターンとそれぞれ電気的に接続されている。すなわち、圧電素子6をFPC5を介して電気的に駆動することで振動板4が振動し、この際生じるポンプ作用によってインク吐出孔3aからインクが吐出することになる。
ここで、図4に示すように、上述したFPC5と圧電素子6との間の接着層74には、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)が適用されている。したがって、接着層74の耐溶剤性を確保するために、インクジェットヘッド1には、この接着層74を各圧電素子6の外側から覆う保護膜72が形成されている。この保護膜72は、オリフィスプレート3上のインク吐出孔3aが露出するようにインク吐出面75上の溝部71内でその縁部が切断されている。つまり、保護膜72の形成に際しては、インク吐出孔3aの周辺をマスキングテープで覆い、保護膜形成後、マスキングテープを剥離させている。また、溝部71は、このような保護膜72の厚さ以上の深さで形成されている。保護膜72としては、耐溶剤性に優れる例えばポリテトラフロロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂膜、パリレン樹脂(パラキシリレン系樹脂)の被膜、シリコーン樹脂膜又は金属蒸着膜などを例示でき、例えば蒸着などを用いて、図4に示すように接着層74を覆うようにインクジェットヘッド1上に形成される。
また、図5に示すように、上述した第1流路形成積層板21〜第9流路形成積層板29のうちで、中央部に配置される第5流路形成積層板25から一方の積層方向に積層される第6流路形成積層板26〜第9流路形成積層板29は、インク吐出孔3aの例えば奇数列の流路を形成するように配置されている。また、第5流路形成積層板25から他方の積層方向に積層される第4流路形成積層板24〜第1流路形成積層板21は、インク吐出孔3aの例えば偶数列の流路を形成するように配置されている。
ここで、上記構成に代えて、第5流路形成積層板25から一方に積層される第6流路形成積層板26〜第9流路形成積層板29が、インク吐出孔3aの偶数列の流路を形成し、第5流路形成積層板25から他方に積層される第4流路形成積層板24〜第1流路形成積層板21が、インク吐出孔3aの奇数列の流路を形成するものであってもよい。そして、このようにして形成される奇数列の流路と偶数列の流路とで、図3に示すように、インク吐出孔3aが、オリフィスプレート3上に一列に配置される。
上記したように、中央部に配置される第1流路形成積層板25には、インク供給流路31、インク溜め部32、空気抜き孔40、インク吐出口37を形成するための開口部が設けられている。また、第5流路形成積層板25の両外側に配置される第6流路形成積層板26及び第4流路形成積層板24には、インク供給流路31、インク溜め部32、空気抜き孔40を形成するための開口部と、下側インク流路36を形成するための開口部とが設けられている。
ここで、インク溜め部32の内壁上部32aは、空気抜き孔40に向けて上り勾配となる傾斜面で形成されている。また、インク供給流路31は、インク供給口2aから一旦インク溜め部32の下方に延び、次いで上方に延びてインク溜め部32の底部に接続されるサイフォン構造を採っている。さらに、インク供給流路31と空気抜き孔40とは、インク溜め部32の長手方向の両側端部に接続されるように設けられている。
また、上記第6流路形成積層板26及び第4流路形成積層板24のそれぞれの外側に配置される第7流路形成積層板27及び第3流路形成積層板23には、下側インク流路36と、上側共通インク流路33とを形成するための開口部が設けられている。さらに、第7流路形成積層板27及び第3流路形成積層板23のそれぞれの外側に配置される第8流路形成積層板28及び第2流路形成積層板22には、下側インク流路36と、上側個別インク流路34とを形成するための開口部が設けられている。また、最も外側に配置される第9流路形成積層板29及び第1流路形成積層板21には、上下方向インク流路35を形成するための開口部が設けられている。
このように構成された所定枚数の第1流路形成積層板21〜第9流路形成積層板29を、所定の順序で積層一体化することで、インクジェットヘッドマニホールド2内には、インク供給流路31からインク吐出口37に至るインクの流路が、積層方向中央部から両側に向けて形成されると共に、図1及び図5に示すように、インクジェットヘッドマニホールド2の上側に、インク供給口2a、空気抜き口2bが開口した状態となる。また、積層一体化されたこれらの積層板の端面で、上述したインク吐出口37を開口させかつ溝部71を有するインク吐出面75が形成される。
インクジェットヘッドマニホールド2へのインクの供給は、図5に示すように、インク供給口2aから行われる。このインク供給口2aから供給されたインクは、インク供給流路31を通って、インク溜め部32に導入され、このインク溜め部32から、上側共通インク流路33、上側個別インク流路34、上下方向インク流路35、下側インク流路36をこの順で通過して、インク吐出口37内にまで充填される。
また、上記のようにインクジェットヘッドマニホールド2内にインクが充填された状態で、FPC5を介して圧電素子6に駆動信号が加わると、駆動信号が加わった部分の圧電素子6が変形することで対応する部分の振動板4が振動し、さらにこれに対応する部分の上下方向インク流路35内のインクを押圧し、オリフィスプレート3の対応するインク吐出孔3aから所定量のインクが吐出されることになる。
ここで、上記したインク供給流路31は、サイフォン構造で構成されているため、インク供給口2aから供給されるインク供給量及び供給圧が仮に安定していなくとも、インク溜め部32内のインクの状態を安定に保つことができ、インクの吐出不良が発生することを防止できる。また、インク溜め部32には、上述したように、空気抜き孔40が設けられており、インク溜め部32の内壁上部32aは、空気抜き孔40に向けて上り勾配となる傾斜面とされているので、インク溜め部32内に進入した空気を、速やかにこの空気抜き孔40から排出させることができ、これにより、前記同様、インク吐出不良の発生を抑制することができる。
次に、本実施形態に係るインクジェットヘッド1の製造方法について説明する。ここでは、まず、インクジェットヘッドマニホールド2の製造方法を図6及び図7に基づき説明する。なお、上述した第1流路形成積層板21〜第9流路形成積層板29は、以下、積層板65として説明を行う。上記の図6は、積層板65どうしを拡散接合するための熱圧着装置55を概略的に示す図であり、また、図7は、積層板65を形成するための母材プレート50を示す斜視図である。
図6に示すように、熱圧着装置55は、複数の積層板65を熱圧着により積層一体化したインクジェットヘッドマニホールド2を作製するための装置である。熱圧着装置55は、高温真空炉56と、この高温真空炉56の床上に設置された金属製の支え台57と、この支え台57上に設置されたあて板58と、このあて板58上に配置された複数の積層板65を上方から支え台57側に押圧するあて板59を備えた金属製の圧着冶具63と、この圧着冶具63を駆動するアクチュエータ64と、一対の金属製の位置決めピン61、62と、で主に構成される。
ここで、上記した図1、図2及び図6に示すように、金属製(本実施形態ではSUS304製)の複数の積層板65の各々には、一対の貫通穴(位置決め穴)7、8が形成されている。この貫通穴7、8は、積層板65の積層一体化後インクの流路になる開口部(インク供給流路31及びインク溜め部32など)と同一のステージで形成され、このインク流路形成用の開口部との相対的な位置精度が確保されている。ここで、上記した位置決めピン61、62は、積層板65の貫通穴7、8に対し挿抜自在に嵌合される。
つまり、熱圧着装置55では、貫通穴7、8に位置決めピン61、62を挿通させた状態で、熱圧着により積層板65どうしを拡散接合する。なお、積層板65の貫通穴7、8の内壁面と位置決めピン61、62とが拡散現象により接合してしまうことなどを抑制するために、位置決めピン61、62の外周面に例えばアルミナ層などを形成することが好ましい。
高温真空炉56は、その炉内を最大1300℃程度まで昇温させることが可能である。また、高温真空炉56では、その炉内に接続されたターボ分子ポンプ(図示せず)などを通じて10-1〜10-10Pa程度の真空度を得ることができる。さらに、高温真空炉56は、炉内を窒素などの不活性ガス雰囲気にすることも可能である。
支え台57の上面に設けられたあて板58、及び圧着冶具63の下端部に設けられたあて板59は、熱圧着時の金属材料間での拡散現象により、支え台57(又は圧着冶具63)と積層板65とが接合してしまうことを防止するために設けられている。つまり、あて板58、59は、例えば析出硬化型ステンレス鋼などで形成されている。また、本実施形態では、支え台57上には、上述したように、位置決めピン61、62を挿通させた状態で、複数の積層板65が搭載されることになる。ここで、あて板59には、圧着冶具63が下降して支え台57上のこれら積層板65を熱圧着する際に、積層板65の上方から突出する位置決めピン61、62の形状を避けるように一対の凹部60が設けられている。
したがって、熱圧着装置55を用いて、実際に積層板65どうしを接合する場合には、まず、酸浸漬などによる洗浄処理により、SUS304製の各積層板65の表層にあるクロムの酸化膜(不動態皮膜)を除去する。次に、図6に示すように、各積層板65の一対の貫通穴7、8に対し、位置決めピン61、62を挿通させることで、複数の積層板65どうしをその板面に沿った方向に位置決めする。
次いで、貫通穴7、8に位置決めピン61、62を挿通させた状態の複数の積層板65を熱圧着装置55における高温真空炉56内の支え台57上に載置する。さらに、位置決めピン61、62の外形部分(例えばアルミナ層)を貫通穴7、8の内壁面に接触させることにより位置決めされた複数の積層板65を、所定温度に加熱しつつ、さらに圧着冶具63を通じて加圧し、当該積層板65どうしを拡散接合する。この熱圧着時の条件は、例えば、加熱温度950℃〜1050℃、圧力0.5〜2kg/cm2、炉内の真空度を0.0001Paとし、この状態を2時間維持し、この後さらに24時間かけて除冷処理を行う。これにより、インクジェットヘッドマニホールド2が作製される。
ここで、上述した態様では、積層板65の本体部分(製品部分)どうしを直接積層する製法について例示したが、これに代えて、図7に示すように、積層板65の外側にあるブランク部(捨て部材)51、52を有する状態の積層板65どうしを積層一体化するようにしてもよい。図7に示すように、積層板65は、例えばSUS304製の母材プレート50を加工成形することで得られる。詳細には、非製品部分であるブランク部51、52は、各積層板65の外形部分のさらに外側に配置され且つ積層板65どうしの拡散接合後に除去されるものであって、積層板65と一体で加工成形される。このようなブランク部51、52は、積層板65本体を例えばハンドリングする場合などに有用となる。なお、ブランク部51、52と積層板65とのつなぎ部分に、ハーフエッチングなどによって切れ込みを入れておくことで、積層板65の積層一体化後、ブランク部51、52を容易に除去して、インクジェットヘッドマニホールド2を得ることができる。
次に、このようにして作製されたインクジェットヘッドマニホールド2に対し、振動板4、オリフィスプレート3、FPC5、圧電素子6を接合して行くことで製造されるインクジェットヘッド1の具体的な製造方法について図8A〜図8Fに基づき説明を行う。ここで、図8Aは、インクジェットヘッドマニホールド2を製造するための振動板接合工程を示す断面図であり、図8Bは、図8Aのインクジェットヘッドマニホールド2に接合された各振動板4の外側に一対のFPC5を接着層73を介して接着する第1の接着工程を示す断面図である。
また、図8Cは、図8Bの各振動板4に接合されたFPC5のさらに外側に一対の圧電素子を接着層74を介して接着する第2の接着工程を示す断面図であり、図8Dは、図8Cの圧電素子6の接合されたインクジェットヘッドマニホールド2に対しマスキング工程及び保護膜形成工程が行われる直前の状態を示す断面図である。さらに、図8Eは、図8Dの保護膜形成工程を終えた後のインクジェットヘッドマニホールド2を示す断面図であり、図8Fは、図8Eのインクジェットヘッドマニホールド2に対してマスキング剥離工程を行った状態を示す断面図である。なお、図8A〜図8Fでは、図4と同様に、インクジェットヘッドマニホールド2内のインクの流路やオリフィスプレート3上のインク吐出孔3aなどの図示を省略している。
まず、図8Aに示すように、上記製法で作製されたインクジェットヘッドマニホールド2を両側から挟んだ状態で押圧力を付与することの可能な一対の振動板4を、当該インクジェットヘッドマニホールド2上の一対のヘッド押圧面2cに接合する。さらに、この際、インクジェットヘッドマニホールド2のインク吐出面75上の(インク吐出孔3aを包囲する)溝部71を避けたその内側領域に、図5に示したインク吐出口37とつながるインク吐出孔3aが穿孔されたオリフィスプレート3を接合する。ここで、インクジェットヘッドマニホールド2と、各振動板4及びオリフィスプレート3と、の接合には、上記図6の積層板65どうしの積層一体化に利用された拡散接合が適用される。また、オリフィスプレート3の拡散接合前には、インク吐出口37内への異物の混入を防止した上で、インクジェットヘッドマニホールド2の(積層板65の個々の端面で構成される)インク吐出面75を平滑(平坦)に研磨することが望ましい。
次に、図8B、図8Cに示すように、インクジェットヘッドマニホールド2に接合された各振動板4を電気的に駆動するそれぞれ一対のFPC5及び圧電素子6を各振動板4の外側に接着層73、74を介して順次接着する。ここで、FPC5と各圧電素子6との間の接着層74には、上述したように、異方性導電フィルム(ACF)が適用される。続いて、図8Dに示すように、インクジェットヘッドマニホールド2に接合されたオリフィスプレート3の表面上に、このオリフィスプレート3に穿孔されたインク吐出孔3aを塞ぐ例えばポリイミド製のマスキングテープ76を貼り付ける。
さらにこの後、図8D、図8Eに示すように、インク吐出面75上のオリフィスプレート3表面のマスキングテープ76及び溝部71と共に、各FPC5と各圧電素子6との間の上記接着層74を、前記各圧電素子6の外側から覆うように、例えば蒸着などによってPTFEなどのフッ素樹脂膜を保護膜72として形成する。
次いで、図8Fに示すように、蒸着などにより形成された保護膜72をインク吐出面75上の溝部71内で切断し、この切断された保護膜72の切断片72aと共に、マスキングテープ76をオリフィスプレート3表面から剥離させる。このマスキングテープ76の剥離後に、インク吐出孔3aの周辺の塵埃を拭き取るクリーニングなどを行うことで、図4に示したインクジェットヘッド1を得ることができる。
したがって、本実施形態に係るインクジェットヘッド1の製造方法によれば、インク吐出面75に設けた溝部71内で保護膜72を切断できるので、マスキングテープ76を剥離する際一緒に、保護膜72における接着層74などを被覆する必要な被覆個所が剥がれてしまうことなどを防止できる。また、上述した溝部71内で保護膜72を切断できるので、インク吐出孔3a周辺を払拭するクリーニングの際などに、マスキングテープ76を剥離させた時の保護膜72の断片が、インク吐出孔3a内に異物として混入することなどを抑制できる。すなわち、本実施形態のインクジェットヘッド1によれば、保護膜72にて実現される耐溶剤性を確保しつつインク吐出孔3a周辺の清浄性を高めることができる。
以上、本発明を実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこの実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した実施形態では、オリフィスプレート3上のインク吐出孔3aをインク吐出面75上で包囲する位置に溝部71が形成されていたが、これに代えて、図9に示すように、オリフィスプレート3上のインク吐出孔3a側と一対のFPC5(及び圧電素子6)側とを遮る位置、つまり、オリフィスプレート3上のインク吐出孔3aをインク吐出面75上で挟む位置に、例えば直線状に延びる一対の溝部81、82を形成したインクジェットヘッド80を本発明として適用することも可能である。
図9に示すこのインクジェットヘッド80を製造する過程において、オリフィスプレート3を接合する工程及びマスキングを行う工程では、インク吐出面75上の一対の溝部81、82に挟まれた内側の領域部分にオリフィスプレート3及び(このオリフィスプレート3の表面に)マスキングテープ(76)が各々取り付けられる。さらに、保護膜の形成工程では、インク吐出面75上のオリフィスプレート3表面のマスキングテープ及び一対の溝部81、82と共に、各FPC5と各圧電素子6との間の接着層74を当該各圧電素子6の外側から覆う保護膜72を形成する。最後に、マスキングの剥離工程では、形成された保護膜72をインク吐出面75上の一対の溝部81、82内で切断しつつマスキングテープを剥離させる。したがって、このようなインクジェットヘッド80及びその製造方法においても、(耐溶剤性の低い)接着層74を覆う部分の保護膜72の剥がれを抑制できる。さらに、保護膜72を主に一対の溝部81、82内で切断できるので、インク吐出孔3a内に対しての保護膜72の切断片の混入なども抑制できる。
また、上述した実施形態では、複数の積層板65を積層一体化することで溝部71を有するインクジェットヘッドマニホールド2を作製していたが、これに代えて、積層一体化構造を採らない1ブロック構造のインクジェットヘッドマニホールドに溝部71や溝部81、82を形成した場合でも、本発明の上述した作用効果を得ることができる。
1,80…インクジェットヘッド、2…インクジェットヘッドマニホールド、2a…インク供給口、2c…ヘッド押圧面、3…オリフィスプレート、3a…インク吐出孔、4…振動板、5…FPC(Flexible Printed Circuit)、6…圧電素子、21…第1流路形成積層板、22…第2流路形成積層板、23…第3流路形成積層板、24…第4流路形成積層板、25…第5流路形成積層板、26…第6流路形成積層板、27…第7流路形成積層板、28…第8流路形成積層板、29…第9流路形成積層板、37…インク吐出口、65…積層板、71,81,82…溝部、72…保護膜、72a…切断片、73,74…接着層、75…インク吐出面、76…マスキングテープ。
Claims (10)
- インクの流路を内部に備え、かつ所定個所に溝部を形成したインク吐出面にインク吐出口を開口させたヘッド本体を作製するヘッド本体作製工程と、
前記作製されたヘッド本体を挟んだ状態で押圧力を付与する一対の振動板を前記ヘッド本体上の一対のヘッド押圧面に接合する振動板接合工程と、
前記ヘッド本体の前記インク吐出面上の前記溝部を避けた領域に、前記インク吐出口とつながるインク吐出孔が穿孔されたオリフィス部材を接合するオリフィス接合工程と、
前記ヘッド本体に接合された前記各振動板を電気的に駆動するそれぞれ一対のフレキシブル基板及び圧電素子を前記各振動板の外側に所定の接着層を介して順次接着する接着工程と、
前記ヘッド本体に接合された前記オリフィス部材の表面に前記インク吐出孔を塞ぐマスキングテープを貼り付けるマスキング工程と、
前記インク吐出面上の前記オリフィス部材表面の前記マスキングテープ及び前記溝部と共に、前記各フレキシブル基板と前記各圧電素子との間の前記接着層を当該各圧電素子の外側から覆う保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記形成された保護膜を前記インク吐出面上の前記溝部内で切断しつつ前記マスキングテープを剥がすマスキング剥離工程と、
を有することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。 - 前記ヘッド本体作製工程では、前記インク吐出面に後に接合される前記オリフィス部材上の前記インク吐出孔を前記インク吐出面上で包囲する位置に前記溝部が形成され、
さらに、前記オリフィス接合工程及び前記マスキング工程では、前記溝部に包囲された内側の領域部分に前記オリフィス部材及び前記マスキングテープが各々取り付けられる
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの製造方法。 - 前記ヘッド本体作製工程では、前記インク吐出面に後に接合される前記オリフィス部材上の前記インク吐出孔を前記インク吐出面上で挟む位置に一対の前記溝部が形成され、
さらに、前記オリフィス接合工程及び前記マスキング工程では、前記一対の溝部に挟まれた内側の領域部分に前記オリフィス部材及び前記マスキングテープが各々取り付けられる
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの製造方法。 - 前記接着工程では、前記各フレキシブル基板と前記各圧電素子との間の接着層として異方性導電フィルムが適用され、
さらに、前記保護膜形成工程では、耐溶剤性を有する保護膜が形成される
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの製造方法。 - 前記ヘッド本体作製工程では、複数の積層板を積層一体化して前記ヘッド本体が形成されると共に積層一体化された前記複数の積層板の端面で、前記インク吐出口を開口させかつ前記溝部を有する前記インク吐出面が形成される
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの製造方法。 - インクの流路を内部に備え、かつ所定個所に溝部を有するインク吐出面にインク吐出口を開口させたヘッド本体と、
前記ヘッド本体を一対のヘッド押圧面側から挟んだ状態で押圧力を付与する一対の振動板と、
前記ヘッド本体の前記インク吐出面上の前記溝部を避けた領域に接合され、前記インク吐出口とつながるインク吐出孔が穿孔されたオリフィス部材と、
前記ヘッド本体に接合された前記各振動板の外側に所定の接着層を介して順次接着され、前記各振動板を電気的に駆動するそれぞれ一対のフレキシブル基板及び圧電素子と、
前記オリフィス部材上の前記インク吐出孔が露出するように前記インク吐出面上の前記溝部内で縁部が切断されていると共に、前記各フレキシブル基板と前記各圧電素子との間の前記接着層を当該各圧電素子の外側から覆う保護膜と、
を具備することを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記溝部が、前記オリフィス部材上の前記インク吐出孔をインク吐出面上で包囲する位置に形成されていることを特徴とする請求項6記載のインクジェットヘッド。
- 前記溝部が、前記オリフィス部材上の前記インク吐出孔を前記インク吐出面上で挟む位置に一対で形成されていることを特徴とする請求項6記載のインクジェットヘッド。
- 前記各フレキシブル基板と前記各圧電素子との間の接着層が、異方性導電フィルムであり、
さらに、前記保護膜が、耐溶剤性を有する保護膜である
ことを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。 - 前記ヘッド本体は、複数の積層板を積層一体化して形成されると共に積層一体化された前記複数の積層板の端面で、前記インク吐出口を開口させかつ前記溝部を有する前記インク吐出面が形成されていることを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
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---|---|---|---|
JP2007228659A JP2009061589A (ja) | 2007-09-04 | 2007-09-04 | インクジェットヘッドの製造方法及びインクジェットヘッド |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2011116112A (ja) * | 2009-12-04 | 2011-06-16 | Samsung Electro-Mechanics Co Ltd | インクジェットヘッド |
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2007
- 2007-09-04 JP JP2007228659A patent/JP2009061589A/ja not_active Withdrawn
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