JP2009057652A - 全芳香族ポリアミド繊維布帛 - Google Patents

全芳香族ポリアミド繊維布帛 Download PDF

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Abstract

【課題】布帛の明度Lが30.0以上の領域にプリント捺染する際の耐光堅牢度を改善し、耐光劣化を緩和した全芳香族ポリアミド繊維布帛、またはそれを用いた難燃作業服、難燃防護服を提供する。
【解決手段】プリント捺染により着色された全芳香族ポリアミド繊維よりなる布帛であって、該プリント捺染が顔料と紫外線遮蔽剤とを併用してなされている全芳香族ポリアミド繊維布帛。
【選択図】なし

Description

本発明は、主にプリント捺染により着色された全芳香族ポリアミド繊維よりなる布帛であって、該プリント捺染が顔料と紫外線遮蔽剤とを併用してなされていることを特徴とし、かつ、高耐光堅牢度である全芳香族ポリアミド繊維布帛、難燃作業服、難燃防護服に関する。さらに詳細には、本発明は、全芳香族ポリアミド繊維からなる布帛が紫外線遮蔽剤と顔料を併用したプリント捺染されることで、耐光性が向上する全芳香族ポリアミド繊維布帛、難燃作業服、または難燃防護服に関する。さらに詳しくは、耐光劣化が緩和され、通気性、着用快適性に優れた全芳香族ポリアミド繊維布帛に関するものである。
全芳香族アラミド繊維は、主にパラ型、メタ型の2つに分けられる。パラ型アラミド繊維とは、優れた力学特性、高強度、高弾性率、高耐熱性と、有機繊維特有のしなやかさと軽量性を併せ持った合成繊維である。これらの特長から、自動車や自動二輪、および自転車用のタイヤ、自動車用歯付きベルト、コンベヤなどの補強材料として用いられている。また、光ファイバーケーブルの補強やロープにも利用されている。さらに、衣料分野において、防弾チョッキや、刃物に対して切れにくい性質を利用した作業用手袋や、作業服などの防護衣料およびスポーツ衣料、また燃え難さを利用した消防服への応用など機能性衣料への応用が行われ、各方面に用途を展開している。また、メタ型アラミド繊維とは、高い耐熱性、耐炎性、耐薬品性、強力な耐放射線性、電気特性などに優れた性質を有する。そのため、ノロ(溶融金属塊)や溶接火花が飛散する可能性のある作業者用の防護作業衣あるいは耐熱性に加えて耐スパッター性も要求される防護衣料用布帛などに利用されている。これらパラ型アラミド繊維やメタ型アラミド繊維混布帛、また他の繊維と混紡して得られた布帛は、例えばガソリンスタンドで着用される作業服、また、工場や工事現場での作業服防爆防護服などに用いられる。
しかしながら、特に屋外の作業において、全芳香族アラミド繊維布帛は十分な耐光堅牢度を持ちえず、また固着性のある捺染物が得られないという問題がある。
このような欠点を除くために、従来、種々の捺染方法が提案されている。
例えば、特許文献1(特開平1−139814号公報)には、全芳香族ポリアミド繊維に耐熱性のある顔料を練り込むことにより、発色性、耐熱性、高温時の形態安定性や耐光性が向上することを示しているが、長時間の屋外曝露下においては、変退色するという問題点があった。
また、特許文献2(米国特許第6451070号明細書)においては、顔料およびバインダーを含む糊を使用してアラミド繊維製布帛に捺染を施す方法が記載されている。これは、従来、他の繊維へ適用していた方法をすぐに応用できるものであり、比較的濃色で鮮明な柄を得ることができ、堅牢度面でも良好な耐光堅牢度を得ることができる方法である。しかしながら、淡色領域での耐光性には問題があった。
さらに、特許文献3(特開昭62−268876号公報)では、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶媒を使用した方法が記載されている。これは、カチオン染料、アニオン染料、建染染料、分散染料などの染料とアクリル酸ポリマーの糊、および上記溶媒からなる捺染糊をアラミド繊維製布帛に捺染することにより、溶媒により繊維を膨潤させて繊維内部にまで染料を導入させるものである。この方法によれば、建染染料以外では良好な固着率が得られ、比較的濃色でしかも鮮明でかつ風合いの良い捺染布を得ることができる。
しかしながら、この方法では、捺染糊に大量の溶媒を含むため環境に悪影響を与えるだけでなく、染料の繊維内部への到達には限界があり、そのため十分な耐光堅牢度を得ることができないという欠点がある。また建染染料では堅牢度は良好であるが十分な濃度を得ることができないという欠点もある。
さらに、特許文献4(特開2007−16346号公報)においては、アラミド繊維製布帛に一種または二種以上の染料を含む糊を捺染後乾燥し、これにレーザー照射後、ソーピングし、染料を繊維内の奥深くまで移行させ、高耐光堅牢度、高濃度固着性のある捺染物が得られるとしているが、染色において耐光性は十分に解消できず、また淡色域での耐光性に関しては触れられていなかった。
上記のように、全芳香族ポリアミド繊維よりなる布帛を捺染するにあたり、従来方法では濃色で鮮明な色を得ることや一部の耐光堅牢度面ではある程度の改善が見られたが、十分な濃度でしかも良好な耐光堅牢度及び風合いを兼ね備えた染色布帛を得るには十分ではなかった。全芳香族ポリアミド繊維よりなる布帛を捺染する際、特許文献2(米国特許第6451070号明細書)に示すようなプリント処方を用いると、布帛の柔軟性、通気性の低下が懸念されるため、繊維や布帛の染色やドープへの練り込みが多く検討されているが、布帛の組織や密度、また他の繊維と組み合わせることにより、これらは改善することはできる。しかしながら、上述のような問題点がある。

特開平1−139814号公報 米国特許第6451070号明細書 特開昭62−268876号公報 特開2007−16346号公報
本発明の目的は、全芳香族ポリアミド繊維の欠点として指摘される耐光堅牢度を紫外線遮蔽剤と顔料を併用したプリント捺染を行うことで、高耐光堅牢度を得ることである。特に、布帛の明度Lが30.0以上の領域にプリント捺染する際の耐光堅牢度を改善し、耐光劣化を緩和した全芳香族ポリアミド繊維布帛、またはそれを用いた難燃作業服、難燃防護服を提供しようとするものである。
本発明は、プリント捺染により着色された全芳香族ポリアミド繊維よりなる布帛であって、該プリント捺染が顔料と紫外線遮蔽剤とを併用してなされていることを特徴とする全芳香族ポリアミド繊維布帛に関する。
ここで、本発明の全芳香族ポリアミド繊維布帛では、顔料と紫外線遮蔽剤が併用してプリント捺染されている部分が布帛に一部であってもよい。
全芳香族ポリアミド繊維布帛は、その明度Lが30.0以上であり、かつフェードメーターにて63℃、20時間光を照射した際の耐光堅牢度が4級以上であることが好ましい。
さらに、上記紫外線遮蔽剤の付着量は、好ましくは1.0〜30.0重量%である。
さらに、上記紫外線遮蔽剤は、一次粒子径が0.1〜3.0μmの範囲の、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、白鉛、塩基性硫酸亜鉛、硫酸鉛、硫化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化スズ、酸化アンチモン、および硫酸バリウムからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
さらに、本発明に使用される上記布帛は、他の繊維を60.0重量%以下含む布帛であって、かつJIS L 1096 E法に規定される限界酸素指数(LOI)が26.0以上であることが好ましい。
ここで、上記他の繊維としては、難燃レーヨン、難燃加工綿、難燃ウール、難燃ポリエステル繊維、難燃ビニロン繊維、難燃アクリル繊維、およびノボラック繊維からなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
以上の本発明の全芳香族ポリアミド繊維布帛は、好ましくはフェードメーターにて63℃、40時間光照射後の強度保持率が70.0%以上ある。
また、本発明の全芳香族ポリアミド繊維布帛は、プリント捺染において、リン系および/またはハロゲン系防炎剤が併用されていてもよい。
次に、本発明は、以上の全芳香族ポリアミド繊維布帛を少なくとも一部に用いた難燃作業服に関する。
次に、本発明は、以上の全芳香族ポリアミド繊維布帛を少なくとも一部に用いた難燃防護服に関する。
全芳香族ポリアミドアラミド繊維よりなる混布帛を捺染する際に、顔料と紫外線遮蔽剤、例えば酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛や白鉛、塩基性硫酸亜鉛、硫酸鉛、硫化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化スズ、酸化アンチモン、硫酸バリウムからなる群から選ばれた少なくとも1種を併用することで、、耐光堅牢度の優れた布帛を得ることができる。特に、布帛の明度Lが30.0以上にプリント捺染する際に効果が得られる。具体的には、フェードメーター63℃、20時間光照射した際の、耐光堅牢度堅牢性が4〜5級以上であり、また40時間照射後の強度保持率が70.0%以上である全芳香族ポリアミド繊維布帛、およびそれを用いた難燃作業服、または難燃防護具を提供することができる。
本発明において、全芳香族ポリアミド繊維よりなる布帛とは、全芳香族ポリアミド繊維を主成分とする、織物状、編物状、不織布状、メッシュ状、一方向引き揃えシート状物から選ばれる1種または2種以上の材料を組み合せたものである。特に好ましくは、全芳香族ポリアミド繊維からなる織編物、不織布である。
なお、布帛の組織についても特に限定を加えるものではなく、平織の他、綾織、朱子織等、公知の組織でも良い。しかし、用途に応じて通気性や柔軟性が要求される場合、3/1や3/2、2/2の綾織、経二重ツイル、経三重ツイル構造などが好ましく採用される。
布帛を構成する繊維材料は、短繊維紡績糸条、長繊維糸条、スプリットヤーン、テープヤーンなどのいずれの形状であってもよい。
また、本発明に用いられる上記布帛の目付は、180〜350g/m2、好ましくは200〜300g/m2である。目付が180g/m2未満の場合は、炎や輻射熱に対する遮熱性が悪く、例えば人体に火傷を負わす可能性がある。一方、350g/m2を超えると、例えば防火服の重量が重くなり、消火活動における作業性を阻害する。
さらに、布帛を構成する全芳香族ポリアミド繊維の単繊維繊度は、0.1〜10dtexの範囲にあることが好ましい。
ここで、本発明で用いる全芳香族ポリアミド繊維とは、ポリアミドを構成する繰り返し単位の80モル%以上好ましくは90モル%以上)が、下記式(1)で表される芳香族ホモポリアミド、または、芳香族コポリアミドからなる繊維である。ここで、Ar1,Ar2は、芳香族基を表し、なかでも下記式(2)から選ばれた同一の、または、相異なる芳香族基からなるものが好ましい。ただし、芳香族基の水素原子は、ハロゲン原子、低級アルキル基、フェニル基などで置換されていてもよい。
−NHAr1−NHCO−Ar2−CO− ………(1)




Figure 2009057652
このような全芳香族ポリアミド繊維の製造方法や繊維特性については、例えば、英国特許第1501948号公報、米国特許第3733964号明細書、同第3767756号明細書、同第3869429号明細書、特開昭49−100322号公報、特開昭47−10863号公報、特開昭58−144152号公報、特開平4−65513号公報などに記載されているものが使用できる。
また、上記全芳香族ポリアミド繊維の中で耐熱性の優れたものとして、パラ型全芳香族ポリアミド繊維が挙げられるが、これは上記芳香族ポリアミドの延鎖結合が共軸または平行で、かつ、反対方向に向いているポリアミドからなる繊維であり、例えば、上記Ar1,Ar2の80モル%以上がパラ配位の芳香族基である繊維が例示される。
具体的には、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維[例えば、デュポン(株)製、「ケブラー」]、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維[例えば、帝人(株)製、「テクノーラ」]などが例示される。
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維としては、上記全芳香族ポリアミドのうち、延鎖結合の50モル%以上が非共軸で非平行の芳香族ポリアミド、例えば、ジカルボン酸として、テレフタル酸、イソフタル酸などの1種または2種以上と、ジアミンとしてメタフェニレンジアミン、4,4−ジアミノフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、キシリレンジアミンなどの1種または2種以上を使用したホモポリマーまたは共重合ポリマーからなる繊維をあげることができ、その代表的な例としては、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリメタキシレンテレフタルアミド、あるいはイソフタル酸クロライド、テレフタル酸クロライド、メタフェニレンジアミンなどを共重合させた共重合ポリマーからなる繊維などがある。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維の具体例は、デュポン(株)製の「ノーメックス」、帝人(株)製の「コーネックス」が挙げられる。
なお、芳香族ポリアミド繊維を2種以上用いる場合には、混紡して紡績糸の形態で使用するものが好ましく例示されるが、パラ系芳香族ポリアミド繊維の混合比率としては、全繊維に対して、5重量%以上を占めることが好ましく、さらに該混合比率は、50重量%以下にすることが好ましい。パラ系ポリアミド繊維の混合比率が、5重量%未満では、充分な強力が得られないおそれがあり、一方、50重量%を超えると、パラ系ポリアミド繊維がフィブリルを起こしやすくなるので好ましくない。
なお、本発明の布帛を構成する全芳香族ポリアミド繊維には、他の繊維と混綿、混紡、混編織し、布帛とすることもできる。例えば、全芳香族ポリアミド繊維に混合する繊維素材は、特に限定はしないが、該全芳香族ポリアミド繊維の難燃性を生かす上では、難燃レーヨン、難燃加工綿、難燃ウール、難燃ポリエステル繊維、難燃ビニロン繊維、難燃アクリル繊維、ノボラック繊維などの難燃素材が好ましい。中でも難燃素材として、難燃レーヨン、難燃加工綿などのセルロース系、あるいは難燃ウールなどを混合すると、全芳香族ポリアミド繊維単独よりも高吸湿性となり快適性の面でより好ましい。また、速乾性を重視する場合は、難燃ビニロン繊維や難燃アクリル繊維、難燃ポリエステル繊維などが望ましい。他の繊維の混合率は、本発明の布帛中に60重量%以下、好ましくは30〜60重量%程度である。
この場合、難燃性繊維からなる上記の他の繊維を60重量%以下の割合で混合した全芳香族ポリアミド繊維よりなる布帛は、JIS L 1096 E法に規定される限界酸素指数(LOI)が好ましくは26.0以上、さらに好ましくは26.0〜30.0である。26.0未満では、難燃性の作業服、防護服が得られ難い。LOIを26.0以上にするには、上記の難燃性の他の繊維を60重量%以下、好ましくは30〜50重量%、混合して使用する。
本発明では、全芳香族ポリアミド繊維よりなる布帛をプリント捺染して着色された該布帛を得るに際し、プリント捺染時に、顔料と紫外線遮蔽剤とを併用する。
ここで、全芳香族ポリアミド繊維よりなる布帛をプリント捺染する際に用いられる顔料としては、例えばCI
Pigment Yellow93、CI Pigment Brown23、CI Pigment Red144に代表される不溶性アゾ染料(顔料?)、CI Vat
Yellow1(CI 70600)、CI Vat Orange7(CI 71105)、CI Vat Red23(CI 71130)、CI Pigment Red123(CI
71140)、CI Vat Violet1(CI 60010)、CI Vat Blue4(CI 69800)に代表されるスレン系顔料 、CI Pimgmt Blue15(CI
74160)、Poly−bromo−phtalocyanineに代表されるフタロシアニン系顔料 、CI Pigment Red122、CI Pigment Violet19(CI
46500)に代表されるキナクリドン系顔料 、CI Pigment Violet23に代表されるジオキサジン系顔料 、CI Pigment Yellow 110、CI
Pigment Orange42、CI Pigment Red180で代表されるイソインドリノン系顔料などのほか、市販品として、ディクセルシリーズ(大日本インキ化学工業(株)製)、インペロンシリーズ(DyStar Ltd製)、リューダイシリーズ(大日本インキ化学工業(株)製)などの各色顔料が使用できる。
これらの顔料 の中では、300℃、15分の熱履歴で変色しないものが特に好ましく、スレン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系顔料が好ましく用いられる。
なお、顔料の布帛への付着量は、通常、0.05〜30.0重量%、好ましくは0.1〜20.0重量%である。
プリント捺染において、捺染糊の布帛への付着量は、乾燥後の固形分重量として、7〜80g/m、好ましくは、10〜50g/mである。
なお、以後、当特許において用いる布帛への付着量は、単位面積当たりに付着した捺染糊の固形分重量に対する重量%とする。
また、プリント捺染において、顔料とともに併用される紫外線遮蔽剤は、得られるプリント捺染布帛の耐光堅牢度を高めることができる。
上記紫外線遮蔽剤としては、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛や白鉛、塩基性硫酸亜鉛、硫酸鉛、硫化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化スズ、酸化アンチモン、硫酸バリウムが挙げられる。
これらの紫外線遮蔽剤の一次粒子径は、0.1〜3.0μmの範囲、好ましくは0.2〜1.0μmの範囲が良い。一次粒子径が0.1μm未満では表面エネルギーが高いため、凝集を起こしやすく、一方3.0μmを超える場合は、透明性が十分ではない問題がある。
紫外線遮蔽剤の布帛への付着量は、通常、1.0〜30.0重量%、好ましくは2.0〜20.0重量%程度である。付着量が1.0重量%未満であると耐光堅牢度の改善はほとんど見られず、一方30.0重量%を超えると粒子を固着するためのバインダー使用量が多くなり、布帛の柔軟性や通気性に問題が生じる。
本発明のプリント捺染では、上記の顔料および紫外線遮蔽剤は、これらにバインダーを加えた捺染糊として用いられる。
ここで、バインダーとしては、特に限定されないが、ポリウレタン系重合体、ポリアクリル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリエステル系重合体、ポリエチレン系重合体、ポリプロピレン系重合体、ポリ塩化ビニル系重合体、ポリ塩化ビニリデン系重合体、ポリフッ素系重合体、あるいはシリコーン系重合体などの水系エマルジョン、さらにあるいは上記各重合体のプレポリマーの水系エマルジョンと架橋剤の組合せを用いればよい。特に、柔軟性、洗濯耐久性、耐加水分解性、コストなどの点からポリウレタン系重合体、ポリアクリル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリエステル系重合体からなる群から選ばれる一種または二種以上の水系エマルジョンの組合せで用いるものがより好ましい。
なお、上記架橋剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、ビニルエチレン尿素、アクロレイン、ケテンダイマー、ビニルイソシアネート、ジビニルスルホン等の官能基を有する反応性化合物などが用いられる。
バインダー(必要に応じて用いられる架橋剤を含む)の付着量は、通常、10〜70重量%、好ましくは20〜60重量%である。
なお、捺染糊の割合は、顔料が0.05〜30.0重量%、好ましくは0.1〜20.0重量%、紫外線遮蔽剤が1.0〜30.0重量%、好ましくは2.0〜20.0重量%、バインダー(固形分換算、架橋剤を含む)が10〜70.0重量%、好ましくは20.0〜60.0重量%(ただし、顔料+紫外線遮蔽剤+バインダー(架橋剤を含む)=100重量%)である。
さらに、本発明のプリント捺染では、難燃性をさらに向上させるために、リン系および/またはハロゲン系防炎剤が併用されていることが好ましい。
リン系防炎剤としては、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、およびホスファゼンオリゴマーなどが好適に例示される。
さらに、リン酸エステルとしては、下記式(I)で示される化合物が好適である。
Figure 2009057652
[式中、Xは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、およびビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイドからなる群より選ばれる化合物から誘導される二価の基である。nは0〜5の整数であり、n数の異なるリン酸エステルの混合物の場合は0〜5の平均値である。R11、R12、R13、およびR14はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子で置換したもしくは置換していないフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、およびp−クミルフェノールからなる群より選ばれる化合物より誘導される一価の基である。]
さらに好ましいものとしては、上記式中のXが、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、およびジヒドロキシジフェニルからなる群より選ばれる化合物から誘導される二価の基であり、R11、R12、R13、およびR14はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子で置換したもしくはより好適には置換していないフェノール、クレゾール、およびキシレノールからなる群より選ばれる化合物から誘導される一価の基であり、nが1〜3の整数である成分を主成分として含む化合物が挙げられる。
ハロゲン系防炎剤としては、有機ハロゲン系防炎剤が好ましい。
かかる有機ハロゲン系防炎剤 としては、ハロゲン化カーボネートオリゴマー、ハロゲン化エポキシ化合物、ハロゲン化ポリスチレン、ハロゲン化トリアジン化合物、ハロゲン化ジフェニルアルカン系化合物、ハロゲン化インダン系化合物、およびハロゲン化芳香族フタルイミド系化合物などが挙げられ、中でもポリカーボネートとの相溶性に優れ、その耐熱性および熱安定性が良好であることからハロゲン化カーボネートオリゴマー、ハロゲン化エポキシ化合物が好ましい。
以上の防炎剤の付着量は、通常、5.0〜50.0重量%、好ましくは10.0〜40.0重量%である。
なお、上記防炎剤中には、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛や白鉛、塩基性硫酸亜鉛、硫酸鉛、硫化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化スズ、硫酸バリウム、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウムなどの無機系防炎剤を5.0重量%以下程度、配合することもできる。
本発明のプリント捺染は、上記顔料および紫外線遮蔽剤(さらに、必要に応じて上記防炎剤)とバインダーを主成分とする捺染糊を、例えば捺染に適した2,000〜50,000cPs程度の粘度に調合し、300〜2,000メッシュのスクリーンを用いて捺染すればよい。このときのスクリーンはフラットまたはロータリー方式を採用すればよい。
プリント捺染後、120〜150℃で2〜5分間乾燥したのち、150〜170℃で2〜5分、熱処理すればよい。
本発明のプリント捺染された全芳香族ポリアミド繊維布帛は、以上の顔料および紫外線遮蔽剤が併用してプリント捺染されている部分は、全面である必要はなく、布帛の一部であってもよく、プリント捺染部分は、通常、30〜70%、好ましくは50〜70%程度であり、意匠性やデザイン、顧客より要求される内容によって、適宜、決定される。
本発明において、以上のプリント捺染をする際、耐光堅牢度の改善に特に効果のある色相は、布帛の明度Lが30.0以上にプリント捺染する場合である。
ここで、明度Lは、JIS Z 8729によって定義され、マクベス社(株)製、カラー測定装置「Machbeth COLOR-EYE」を用い、2度視野とし、D65光源を使用して測定された値である。明度Lが30.0未満では、濃色であるため、耐光変色が少ない。
また、本発明のプリント捺染された全芳香族ポリアミド繊維布帛は、フェードメーターにて63℃、20時間光を照射した際の耐光堅牢度が好ましくは4級以上、さらに好ましくは4級〜5級である。
ここで、上記耐光堅牢度は、具体的にはJIS L 0842法に準じて測定された値である。
この耐光堅牢度が4級未満では、変退色が大きくなり好ましくない。
耐光堅牢度を4.0以上にするには、顔料と紫外線遮蔽剤を併用すればよい。
さらに、本発明のプリント捺染された全芳香族ポリアミド繊維布帛は、フェードメーターにて63℃、40時間光照射後の強度保持率が好ましくは70.0%以上、さらに好ましくは70〜90%である。
上記強度保持率は、例えばJIS L 0842法に準じて光を照射し、その後サンプルをJIS L 1096 A法に準じて測定された値である。
上記強度保持率を70.0%以上にするには、サンプルが光によるダメージを受けにくくすれば良く、例えば顔料と紫外線遮蔽剤を併用すればよい。
このようにして得られる本発明のプリント捺染された全芳香族ポリアミド繊維布帛は、特に該布帛を表層や裏地、または中間の層など、少なくとも一部に用いて、難燃作業服や難燃防護服に用いられる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、実施例中の部および%は重量基準である。また、実施例中の各物性は、下記の方法により測定した。
(1)一次粒子径
紫外線遮蔽剤を電子顕微鏡を用いて、その径が測定できる程度の倍率で観察し、その画像を写真に撮影することにより記録した。撮影した写真上で、紫外線遮蔽剤の径を測定し、倍率で除することによりその径を求めた。ひとつの粒子の径は、5〜8箇所の測定の平均値とし、同様の作業を100前後の粒子に対して行い、それらの平均を取ることにより一次粒子径を求めた。
(2)高温耐光試験
JIS L 0842法に準拠しフェードオメーターにて63℃、20時間、40時間光照射後、耐光性を評価した。評価は、直射日光を避け、北空昼光(日の出3時間後から日没3時間前までの北空昼光で、周辺の建物・部屋の内装などの環境色の影響を受けていない光であること)、またはJIS
Z8720に既定する常用光源D65を用い、660lxまたは、それ以上の明るさ(約1,000lxが最も望ましい)の下で行った。
光線は約45°の角度で表面に当て、観察する方向は試験片およびグレースケールの表面に対してほぼ直角になるようにした。その際の判定には耐光堅牢度判定用ブルースケールを用いて行った。
(3)明度L
マクベス社(株)製、カラー測定装置「Machbeth COLOR-EYE」を用い、2度視野とし、D65光源を使用してL*を測定した。
(4)織物引張強力
JIS L 1096 A法に準じて測定した。
(5)強度保持率
上記(2)に記載の方法で、耐光試験を行う前のサンプル、40時間光照射したサンプルの強度を測定し、それぞれS、S40とする。強度保持率は、以下のように求めた。
強度保持率(%)=(S40/S)×100
(6)LOI値
JIS L 1096 E法に基づき、50mm以上燃え続けるのに必要な酸素濃度とした。
実施例1
メタ型アラミド繊維(1.7dtex カット長51mm 帝人テクノプロダクツ製、商標名:コーネックス)とパラ型アラミド繊維(1.7dtex カット長51mm 帝人テクノプロダクツ製、商標名:テクノーラ)、また難燃レーヨン(2.2dtex カット長51mm レンチング社製)の混率が30:20:50よりなる重量割合で混合した耐熱繊維からなる紡績糸(40/2)(英国式番手)を用いて2/1ツイルに織成した織物(目付け200g/m、LOI値=28.6)を作成し、公知の方法で精練処理し、布帛表面にある糊剤、油剤を除去した。
マクベス測定機にて測定した際、Lが43.9にプリント捺染する際、捺染用顔料として、リューダイ W イエロー FF3R(大日本インキ化学工業(株)製) 2.2部、リューダイ W ブラウン FFR(大日本インキ化学工業(株)製) 0.5部、リューダイ W ブリリアント
ルビン FF2B(大日本インキ化学工業(株)製) 0.2部、ハイビック ブルー
FBG(御国色素(株)製) 0.5部と、30%の二酸化チタン(一次粒子径=0.2μm)と、アクリル系樹脂、水、エチレングリコール、ミネラルスピリットを界面活性剤により乳化分散させた紫外線遮蔽剤15部、およびウレタン系樹脂、ミネラルスピリット、水を界面活性剤により乳化分散させた顔料捺染用糊剤(固形分濃度 13%) 60部、ハロゲン系芳香族化合物と三酸化アンチモンからなる難燃剤(日華化学(株)製、ネオステッカー FRC−105) 10部、市販のバインダー用架橋剤(明成化学工業社製、SU−125F) 2部を含む捺染糊(全固形分濃度=29%、粘度=8,000cPs)を用いて、ロータリー捺染機(一金工業社製)を用いて印捺を行った後、150℃で2分間、乾燥し、160℃で3分間、熱処理を行うことによりプリント捺染を行った。なお、捺染面積は、30%であった。
この際、顔料の付着量は3.5%、二酸化チタン(紫外線遮蔽剤)の付着量は16.0%、難燃剤の付着量は24.5%、バインダーの付着量(固形分換算、架橋剤を含む)は27.7%であった。
このとき耐光堅牢度は、4−5級であり、強度保持率は78.2%と共に良好であった。
比較例1
実施例1と同様の方法で、紫外線遮蔽剤を併用せずに同色に顔料を用いて捺染プリントを行った。
このときの耐光堅牢度は、3−4級となり、強度保持率は61.7%となり、耐光堅牢度、強度保持率共に満足するものではなかった。
比較例2
実施例1と同様の方法で、Lが43.7となるよう浸染用染料として、インダンスレン
ブルー CLF(DyStar Ltd製) 0.6部、インダンスレン レッド FFB(DyStar Ltd製) 0.15部、ミケスレン ゴールド オレンジ G(DyStar Ltd製) 0.74部、インダンスレン
イエロー F3GC(DyStar
Ltd製) 0.27部と、市販のマイグレーション防止剤(アルギン酸ソーダ水溶液) 15部を含む染色液(固形分濃度=2.5%)を、ローラードライヤー(京都機械社製)にて布帛に付与し、乾燥を行った後、パッドスチーマ(山東鉄工所製)にて、ハイドロサイルファイト 25 g/lと苛性ソーダ 50 g/lを含む水溶液を付与し、飽和蒸気にて蒸熱処理することにより染料を固着、発色させた。その後、水洗および湯洗により余分な染料およびマイグレーション防止剤を洗い流すことにより均一色に染色を行った。
このときの耐光堅牢度は、3級となり、強度保持率は55.5%となり、耐光堅牢度、強度保持率共に満足するものではなかった。
実施例2
実施例1において同様の方法でLが33.0となるよう、捺染用顔料として、リューダイ W イエロー FF3R(大日本インキ化学工業(株)製) 8部、リューダイ W レッド FB CONC(大日本インキ化学工業(株)製) 0.15部、ハイビック ブルー
FBG(御国色素(株)製) 0.85部と、30%の二酸化チタン(一次粒子径=0.2μm)と、アクリル系樹脂、水、エチレングリコール、ミネラルスピリットを界面活性剤により乳化分散させた紫外線遮蔽剤3部、およびウレタン系樹脂、ミネラルスピリット、水を界面活性剤により乳化分散させた顔料捺染用糊剤(固形分濃度 13%) 70部、ハロゲン系芳香族化合物と三酸化アンチモンからなる難燃剤(日華化学(株)社製、ネオステッカー FRC−105) 10部、市販のバインダー用架橋剤(明成化学工業社製、SU−125F) 5部を含む、捺染糊(全固形分濃度=22.0%、粘度=9,000cPs)を用いて、ロータリー捺染機(一金工業社製)にて印捺を行った後、150℃で2分間、乾燥し、160℃で3分間、熱処理を行うことによりプリント捺染を行った。なお、捺染面積は、40%であった。
この際、顔料の付着量は12.3%、二酸化チタン(紫外線遮蔽剤)の付着量は4.5%、難燃剤の付着量は32.3%、バインダーの付着量(固形分換算、架橋剤を含む)は43.7%であった。
耐光堅牢度は5級、強度保持率は75.3%となり、耐光堅牢度、強度保持率共に良好であった。
比較例3
実施例1と同様の方法で、Lが28.5に捺染用顔料として、リューダイ W イエロー FF3R(大日本インキ化学工業(株)製) 13部、リューダイ W レッド
FFGR(大日本インキ化学工業(株)製) 2.6部、ハイビック ブルー
3RU(大日本インキ化学工業(株)製) 0.7部、リューダイ W ブラック RC(大日本インキ化学工業(株)製) 0.2部と、ウレタン系樹脂、ミネラルスピリット、水を界面活性剤により乳化分散させた顔料捺染用糊剤(固形分濃度 13%) 76部、市販のバインダー用架橋剤(明成化学工業社製、SU−125F)6部を含む、捺染糊(全固形分濃度=15.4%、粘度=8,000cPs)を用いて、ロータリー捺染機(一金工業社製)にて印捺を行った後150℃で2分間、乾燥し、160℃で3分間、熱処理を行うことによりプリント捺染を行った。なお、捺染面積は、20%であった。
この際、顔料の付着量は32.0%、バインダーの付着量(固形分換算、架橋剤を含む)は68.0%であった。
耐光堅牢度は5級となり、強度保持率は72.1%と明度Lが30.0未満の領域では、二酸化チタンを顔料と併用せずとも、共に良好であった。
本発明によれば、全芳香族ポリアミド繊維の特徴を活かし、特に布帛の明度Lが30.0以上の領域において、耐光堅牢度に優れた全芳香族ポリアミド繊維よりなる布帛であり、難燃作業服や難燃防護服の用途に有用である。

Claims (11)

  1. プリント捺染により着色された全芳香族ポリアミド繊維よりなる布帛であって、該プリント捺染が顔料と紫外線遮蔽剤とを併用してなされていることを特徴とする全芳香族ポリアミド繊維布帛。
  2. 顔料と紫外線遮蔽剤が併用してプリント捺染されている部分が布帛に一部ある請求項1記載の全芳香族ポリアミド繊維布帛。
  3. 全芳香族ポリアミド繊維布帛の明度Lが30.0以上であり、かつフェードメーターにて63℃、20時間光を照射した際の耐光堅牢度が4級以上である請求項1または2に記載の全芳香族ポリアミド繊維布帛。
  4. 紫外線遮蔽剤の付着量が1.0〜30.0重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の全芳香族ポリアミド繊維布帛。
  5. 紫外線遮蔽剤の一次粒子径が0.1〜3.0μmの範囲の、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、白鉛、塩基性硫酸亜鉛、硫酸鉛、硫化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化スズ、酸化アンチモン、および硫酸バリウムからなる群から選ばれた少なくとも1種が使用されている請求項1〜4のいずれかに記載の全芳香族ポリアミド繊維布帛。
  6. 布帛が他の繊維を60.0重量%以下含む布帛であって、かつJIS L 1096 E法に規定される限界酸素指数(LOI)が26.0以上である請求項1〜5のいずれかに記載の全芳香族ポリアミド繊維布帛。
  7. 他の繊維が難燃レーヨン、難燃加工綿、難燃ウール、難燃ポリエステル繊維、難燃ビニロン繊維、難燃アクリル繊維、およびノボラック繊維からなる群から選ばれた少なくとも1種の繊維である請求項1〜6のいずれかに記載の全芳香族ポリアミド繊維布帛。
  8. フェードメーターにて63℃、40時間光照射後の強度保持率が70.0%以上ある請求項1〜7のいずれかに記載の全芳香族ポリアミド繊維布帛。
  9. プリント捺染において、リン系および/またはハロゲン系防炎剤が併用されている請求項1〜8のいずれかに記載の全芳香族ポリアミド繊維布帛。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の全芳香族ポリアミド繊維布帛を少なくとも一部に用いた難燃作業服。
  11. 請求項1〜9のいずれかに記載の全芳香族ポリアミド繊維布帛を少なくとも一部に用いた難燃防護服。
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