JP2009056887A - 操舵制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両走行中で且つ操舵中である状況下でのモード切替を可能としつつ、車両走行中で且つ操舵中である状況下でのモード切替に起因した車両挙動の急変を適切に防止すること。
【解決手段】本発明による操舵制御装置は、転舵手段の転舵モードを切り替える転舵モード切替手段と、前記転舵モード切替手段により転舵手段の転舵モードが前輪転舵モードから前後輪同相転舵モードに切り替えられた場合に、車両走行中で且つ操舵中である状況下でモード遷移中の転舵角制御を行うモード遷移時制御手段とを備え、前記モード遷移時制御手段は、後輪の転舵角の変化量を、前輪転舵角と後輪転舵角との比に基づいて設定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、前輪転舵モード及び前後輪同相転舵モードの間の切替が可能な操舵制御装置に関する。
従来から、この種の操舵制御装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の構成では、一般走行モード(前輪転舵モード)、平行走行モード(前後輪同相転舵モード)及び小回りモード(前後輪逆相転舵モード)の3つのモードが設定されていると共に、これらのモードを切り替えるモード切替スイッチが設けられている。
特開平3−7676号公報
しかしながら、上述の特許文献1では、各モードが切り替わる際のモード遷移中の転舵角制御方法について十分な検討がなされていない。従って、例えば車両走行中で且つ操舵中である状況下で一般走行モードから平行走行モードに切替が実施される場合、後輪転舵角の急変に起因した車両挙動の急変が生ずる虞がある。これに対して、かかる不都合を防止するために、車両走行中で且つ操舵中である状況下でのモード切替を禁止する構成も考えられるが、かかる構成では、モード切替可能となる条件を制限しなくてはならない。
そこで、本発明は、車両走行中で且つ操舵中である状況下でのモード切替を可能としつつ、車両走行中で且つ操舵中である状況下でのモード切替に起因した車両挙動の急変を適切に防止することができる操舵制御装置の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、第1の発明に係る操舵制御装置は、転舵手段の転舵モードを切り替える転舵モード切替手段と、
前記転舵モード切替手段により転舵手段の転舵モードが前輪転舵モードから前後輪同相転舵モードに切り替えられた場合に、車両走行中で且つ操舵中である状況下でモード遷移中の転舵角制御を行うモード遷移時制御手段とを備え、
前記モード遷移時制御手段は、後輪の転舵角の変化量を、前輪転舵角と後輪転舵角との比に基づいて設定することを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明に係る操舵制御装置において、
前記モード遷移時制御手段は、ステアリング操舵角に対する後輪の転舵角の変化量を、前輪転舵角と後輪転舵角との比に基づいて徐変させることを特徴とする。
第3の発明は、第2の発明に係る操舵制御装置において、
前記モード遷移時制御手段は、前輪転舵角に対する後輪転舵角の比が小さい範囲では前記後輪の転舵角の変化量を小さくし、前輪転舵角に対する後輪転舵角の比が増加するに従って前記後輪の転舵角の変化量を大きくし、前輪転舵角に対する後輪転舵角の比が1に近づくに従って前記後輪の転舵角の変化量を小さくすることを特徴とする。
第4の発明は、第1〜3のうちのいずれかの発明に係る操舵制御装置において、
前記モード遷移時制御手段は、更に、ステアリング操舵角に対する前輪の転舵角の変化量を、前輪転舵モード時に比べて低減する前輪転舵角スロー制御を行うことを特徴とする。
第5の発明に係る操舵制御装置は、転舵手段の転舵モードを切り替える転舵モード切替手段と、
前記転舵モード切替手段により転舵手段の転舵モードが前輪転舵モードから前後輪同相転舵モードに切り替えられた場合に、車両走行中で且つ操舵中である状況下でモード遷移中の転舵角制御を行うモード遷移時制御手段とを備え、
前記モード遷移時制御手段は、前輪の転舵角の変化量を、前輪転舵モード時に比べて低減する前輪転舵角スロー制御を行うことを特徴とする。
第6の発明は、第4又は5の発明に係る操舵制御装置において、
前記モード遷移時制御手段は、操舵速度が所定値以上となった場合には、前記前輪転舵角スロー制御を中止することを特徴とする。
第7の発明は、第6の発明に係る操舵制御装置において、
前記モード遷移時制御手段は、操舵速度が所定値以上となった場合には、更に、後輪を操舵方向に応じて回頭性が高まる方向に転舵させることを特徴とする。
第8の発明は、第1〜7のうちのいずれかの発明に係る操舵制御装置において、
前記モード遷移時制御手段は、車両の後進が検出された場合には、モード切替を中止することを特徴とする。
本発明によれば、車両走行中で且つ操舵中である状況下でのモード切替を可能としつつ、車両走行中で且つ操舵中である状況下でのモード切替に起因した車両挙動の急変を適切に防止することができる操舵制御装置が得られる。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
図1は、本発明による操舵制御装置1の一実施例を示すシステム構成図である。本実施例の操舵制御装置1は、ステアリング制御ECU10を中心として構成されている。ステアリング制御ECU10は、ハードウェア構成としては、図示しないバスを介して互いに接続されたCPU、ROM、及びRAM等からなるマイクロコンピュータを中心として構成されている。ROMには、後述の各種処理を実行するためのプログラムやデータが記憶されている。
ステアリング制御ECU10には、舵角センサ12、車輪速センサ14等からのセンサ値が入力されると共に、モード切替スイッチ16からモード切替信号が入力される。
舵角センサ12は、運転者により操作されるステアリングホイールの操舵角に応じた信号を発生する。車輪速センサ14は、車輪に設けられ、車輪の回転速度に応じた信号(車速パルス)を発生する。ステアリング制御ECU10は、舵角センサ12からの情報に基づいて、ステアリングホイールの操舵角θ(以下、「ステアリング操舵角θ」という)を把握する。
モード切替スイッチ16は、転舵モードを切り替えるためのスイッチであり、例えばステアリングコラムやステアリングホイールのような、運転者により操作可能な適切な位置に配設される。モード切替スイッチ16は、運転者により操作され、その操作態様に応じた信号(モード切替信号)を生成する。本例では、転舵モードとしては、少なくとも前輪転舵モード(2WSモード)と前後輪同相転舵モードの2つのモードが存在するものとする。この場合、モード切替スイッチ16は、前輪転舵モードと前後輪同相転舵モードとの間を切り替えるために操作される。尚、その他のモードとして、前後輪逆相転舵モードが存在してもよい。また、現在の転舵モードは、運転者が把握できるように、例えばメータ等に表示されてもよい。
また、ステアリング制御ECU10には、後輪操舵アクチュエータ20が接続されている。ステアリング制御ECU10は、後輪操舵アクチュエータ20を制御して、後輪を転舵させる。後輪操舵アクチュエータ20は、左右の後輪に対して共用であってもよいし、左右の後輪に対して独立に設けられてもよい。尚、後輪の操舵機構は、左右の後輪が前輪操舵機構から機械的に独立した態様で電子制御により同相で且つ所望の転舵量で転舵可能である構成であれば、任意の構成であってよい。
ステアリング制御ECU10は、後述のモード遷移中を除いて、原則的に、現在の転舵モードに従って、後輪操舵アクチュエータ20を制御する。前輪転舵モードでは、ステアリング制御ECU10は、後輪操舵アクチュエータ20を動作させること無く、従って、後輪転舵角は実質的に0に維持される。尚、ステアリング制御ECU10は、前輪転舵モード中、ステアリングホイールの操舵トルクを検出するトルクセンサ(図示せず)や車輪速センサ14からの情報に基づいて、パワーステアリング装置(図示せず)によりアシストトルク制御を行ってもよいし、舵角センサ12や車輪速センサ14からの情報に基づいて、伝達比可変装置(図示せず)により伝達比可変制御を行ってもよい。いずれにしても、前輪転舵モードでは、前輪転舵角δは、ステアリング操舵角θに対して、δ=k・θとなる。ここで、kは、操舵角/転舵角比であり、kは固定値であってもよいし、上述の伝達比可変制御による可変値とされてもよい。
また、前後輪同相転舵モードでは、ステアリング制御ECU10は、δ=k・θとなるように、後輪操舵アクチュエータ20を動作させる。ここで、δは後輪転舵角である。従って、前後輪同相転舵モードでは、前輪及び後輪共に、同一の転舵角(=k・θ)となり、前後輪同相転舵(車両の平行移動)が実現される。
本実施例では、モード切替スイッチ16は、操舵中で且つ車両走行中にも操作可能とされる。即ち、特に前輪転舵モードから前後輪同相転舵モードへのモード切替は、操舵中で且つ車両走行中にも実現可能とされる。これにより、モード切替の機会が制限されることなく、運転者にとって利便性の高いシステムを実現することができる。しかしながら、操舵中に前輪転舵モードから前後輪同相転舵モードへの切替が即座に実施される場合、後輪転舵角が実質的にゼロからk・θへと急変することになり、かかる急変に起因した車両挙動の急変が生ずる虞がある。そこで、本実施例では、以下で詳説する如く、操舵中で且つ車両走行中に前輪転舵モードから前後輪同相転舵モードへの切替が指示された場合に、適切なモード遷移時制御を経由して前後輪同相転舵モードへ移行させることで、車両挙動の急変を防止する。以下、モード遷移時制御に関する詳細を説明する。
図2は、本実施例のステアリング制御ECU10により実行される主要処理の一例を示すフローチャートである。
ステップ100では、モード切替スイッチ16により前輪転舵モードから前後輪同相転舵モードへのモード切替操作が発生したか否かが判定される。前輪転舵モードから前後輪同相転舵モードへのモード切替操作が発生した場合には、ステップ102に進み、それ以外の場合には、そのまま終了する。
ステップ102では、今回周期で入力される舵角センサ12の出力値に基づいて、前輪転舵モードから前後輪同相転舵モードへのモード切替操作発生時のステアリング操舵角θ(以下、「モード切替時操舵角θ」という)が記憶される。
ステップ104では、モード切替時操舵角θが所定値よりも大きいか否かが判定される。所定値は、操舵中であることを示す値であってよく、例えばステアリングホイールの90度回転分に相当する値であってよい。モード切替時操舵角θが所定値よりも大きい場合、即ち操舵中である場合には、ステップ106に進み、それ以外の場合には、ステップ108に進む。
ステップ106では、モード遷移時制御が実行される。モード遷移時制御は、前輪転舵モードから前後輪同相転舵モードへの切替時に発生しうる後輪転舵角の急変を緩和する制御である。即ち、モード遷移時制御では、後輪転舵角を実質的にゼロからk・θへと瞬時に変化させるのではなく、前輪転舵角δに対する後輪転舵角δの比(以下、「前後転舵角比δ/δ」という)に基づいて、後輪転舵角を実質的にゼロから段階的に(徐々に)増加させて、後輪転舵角を、その後のステアリング操舵角θに応じたk・θへと追いつかせる。かかるモード遷移時制御は、例えば、後輪転舵角δをステアリング操舵角θに応じた後輪転舵角k・θへと徐々に増加させたり、及び/又は、ステアリング操舵角θに応じた前輪転舵角δを前輪転舵モード時に比して低減させたりすることで実現されてもよい。モード遷移時制御の好ましい幾つかの具体例については後述する。
本ステップ106において、モード遷移時制御が完了すると(後輪転舵角δがk・θとなると)、ステップ108に進む。
ステップ108では、通常通り、前後輪同相転舵モード時の制御が実行される。即ち、上述の如く、前輪及び後輪共に、ステアリング操舵角θに対してk・θとなるように制御等される。これにより、運転者は、車両を平行移動させることが可能となる。
以上の通り、本実施例によれば、操舵中に前輪転舵モードから前後輪同相転舵モードへの切替時に、モード遷移時制御を経由して前後輪同相転舵モードへ移行させることで、車両挙動の急変を適切に防止することができる。
次に、上記ステップ106の処理として好適なモード遷移時制御の具体例について説明する。尚、以下の説明では、上記の図2のステップ100でモード切替スイッチ16が操作されてから、モード切替スイッチ16の新たな操作が無い場合(即ち、モード遷移時制御中に再度のモード切替が指示されない場合)を前提とする。
[モード遷移時制御の具体例1]
この具体例1は、後輪転舵角δの徐変制御に関する。具体例1では、ステアリング制御ECU10は、所定周期毎に、上記の図2のステップ102で得たモード切替時操舵角θと、その後随時入力される現在のステアリング操舵角θと、現在の後輪転舵角δと、現在の前輪転舵角δとに基づいて、後輪目標転舵角δ*(今回周期で実現されるべき目標値)を次の関係に従って決定し、当該決定した後輪目標転舵角δ*が実現されるように後輪を転舵させる(即ち後輪操舵アクチュエータ20を制御する)。
δ*=k・(θ−θ)+k・θ・α
ここで、αは、0<α≦1の係数であり、図3に示すように、前後転舵角比δ/δに基づいて設定される。尚、前後転舵角比δ/δの算出に用いる後輪転舵角δは、後輪操舵アクチュエータ20の回転角を検出する回転角センサのような後輪転舵角δを検出できるセンサに基づいて導出されてもよいし、若しくは、前回周期の後輪目標転舵角δ*であってもよい。また、前後転舵角比δ/δの算出に用いる前輪転舵角δは、舵角センサ12の出力値(現在のステアリング操舵角θ)に基づいて導出されてもよい。
係数αは、図3に示すように、好ましくは、前後転舵角比δ/δが小さい範囲では、ステアリング操舵角θに対する後輪転舵角δの変化が小さくなり、前後転舵角比δ/δが増加するに従ってステアリング操舵角θに対する後輪転舵角δの変化が大きくなり、前後転舵角比δ/δが1に近づくに従ってステアリング操舵角θに対する後輪転舵角δの変化が小さくなるように(漸減するように)、決定される。これにより、前後転舵角比δ/δに応じて後輪転舵角δの変化を“緩”→“急”→“緩”と変化させることでモード切替時の車両挙動の急変及び運転者の違和感を適切に緩和することができる。
尚、この具体例1によるモード遷移時制御は、前後転舵角比δ/δが1になるまで継続し、前後転舵角比δ/δが1になった段階(即ち、後輪転舵角δが前輪転舵角δに追いついた段階)で終了する。モード遷移時制御が終了すると、以後、図2のステップ108による前後輪同相転舵モード時の制御が実現されることになる。
[モード遷移時制御の具体例2]
この具体例2は、前輪転舵角δのスロー制御に関する。尚、以下で説明する前輪転舵角δのスロー制御は、伝達比可変装置の差動機構のような、ステアリングの入力軸と出力軸との間の回転差を吸収する機構と、前輪を所望の量だけ転舵させることができる前輪操舵アクチュエータを備えるステアリング装置に対して適用可能である。即ち、伝達比可変装置を備えるステアリング装置や、ステアバイワイヤ式のステアリング装置や、ステアバイワイヤ式のステアリング装置としても機能できるステアリング装置に適用可能である。この種のステアリング装置の構成は多種多様であるが、例えば特開2007−90947号に開示されるような構成であってよい。
この具体例2では、ステアリング制御ECU10は、所定周期毎に、上記の図2のステップ102で得たモード切替時操舵角θと、その後随時入力される現在のステアリング操舵角θと、現在の後輪転舵角δと、現在の前輪転舵角δとに基づいて、前輪目標転舵角δ*(今回周期で実現されるべき目標値)を次の関係に従って決定し、当該決定した前輪目標転舵角δ*が実現されるように前輪を転舵させる(即ち前輪操舵アクチュエータ(図示せず)を制御する)。
δ*=k・θ+k・(θ−θ)・β
ここで、βは、0<β≦1の係数であり、図4に示すように、前後転舵角比δ/δに基づいて設定される。尚、前後転舵角比δ/δの算出に用いる前輪転舵角δは、後輪転舵角δと同様、舵角センサ12のような前輪転舵角δを検出できるセンサに基づいて導出されてもよいし、前回周期の前輪目標転舵角δ*であってもよい。
係数βは、図4に示すように、前後転舵角比δ/δが0から1まで増加する過程で、前後転舵角比δ/δが0.5付近までの区間では、1から0に近い極小値まで減少し、前後転舵角比δ/δが0.5付近から1までの区間では、極小値から1へと増加する。これにより、モード切替時の車両挙動変化を穏やかにすると共に、後輪転舵角δを前輪転舵角δに速やかに追いつかせることで、前後輪同相転舵モードへの遷移を速やかに完了させることができる。尚、図4に示す例では、係数βの変化特性は、極小値が前後転舵角比δ/δが0.5付近に設定され、極小値を取る前後転舵角比を中心として対称となっているが、係数βの変化特性は、これに限定されず、前輪転舵角δの変化量が、前輪転舵モード時に比べて低減される態様(スローとなる態様)であればよい。
尚、この具体例2によるモード遷移時制御は、前後転舵角比δ/δが1になるまで継続し、前後転舵角比δ/δが1になった段階(即ち、後輪転舵角δが前輪転舵角δに追いついた段階)で終了する。モード遷移時制御が終了すると、以後、図2のステップ108による前後輪同相転舵モード時の制御が実現されることになる。
尚、この具体例2による前輪転舵角δのスロー制御は、上述の後輪転舵角δの徐変制御と組み合わせて実現されてもよい。
[モード遷移時制御の具体例3]
この具体例3は、上述の前輪転舵角δのスロー制御(具体例2)に対する急操舵を考慮した改良例に関する。この具体例3では、ステアリング制御ECU10は、スロー制御実行中に、操舵速度(ステアリング操舵角θの時間に対する変化量)を監視し、操舵速度が所定値以上となる急操舵が検出された場合に、上述のスロー制御をキャンセルする。
図5は、具体例3を実現するための処理の一例を示すフローチャートである。
ステップ500では、操舵速度dθ/dtが所定値Aより大きいか否かが判定される。所定値Aは、急操舵を示す値であり、実験等により適合された値が用いられる。操舵速度dθ/dtが所定値Aより大きい場合、即ち急操舵が検出された場合には、ステップ504に進み、それ以外の場合には、ステップ502に進む。
ステップ502では、上述の具体例2と同様の態様で、係数βが現在の前後転舵角比δ/δに基づいて決定され、当該決定された係数βに基づいて、前輪目標転舵角δ*が決定される。そして、当該決定された前輪目標転舵角δ*が実現されるように前輪操舵アクチュエータ(図示せず)が制御される。
ステップ504では、係数βが、現在の前後転舵角比δ/δの如何に関らず、1に設定され、当該決定された係数βに基づいて、前輪目標転舵角δ*が決定される。この場合、係数βが1となるので、実質的に前輪転舵モードが実現されることになる。ところで、上述のスロー制御中では、前輪の操舵応答性が幾分悪化してしまうが、本ステップ504の処理により、急操舵検出時には前輪の操舵応答性を回復(向上)させることが可能となり、障害物等の回避能力が回復(向上)する。
ステップ506では、係数βが1より小さいか否かが判定される。係数βが1より小さい場合、即ちモード遷移時制御が継続している場合には、ステップ500に戻る。一方、モード遷移時制御が正常に完了して係数βが1となった場合や、急操舵に起因して上記のステップ504を経由して係数βが1となった場合、図5の処理が終了する。モード遷移時制御が正常に終了された場合には、以後、図2のステップ108による前後輪同相転舵モード時の制御が実現されることになる。一方、急操舵に起因して上記のステップ504を経由して係数βが1となった場合(モード遷移時制御がキャンセルされた場合)には、例えば操舵速度dθ/dtが所定値Aより小さくなるまで前輪転舵モードを実現し、操舵速度dθ/dtが所定値Aより小さくなった段階で、モード遷移時制御を例えば図2のステップ102から再開することとしてもよい。この場合、操舵速度dθ/dtが所定値Aより小さくなった段階でのステアリング操舵角θ(即ち再開時のステアリング操舵角θ)を、上述のモード切替時操舵角θと看做して(書き換えて)、以後の処理が実行されてよい。
[モード遷移時制御の具体例4]
この具体例4は、上述の後輪転舵角δの徐変制御(具体例1)に対する急操舵を考慮した改良例に関する。この具体例4では、ステアリング制御ECU10は、徐変制御実行中に、操舵速度(ステアリング操舵角θの変化速度)を監視し、操舵速度が所定値以上となる急操舵が検出された場合に、上述の徐変制御に代えて、後輪を操舵方向に応じて回頭性が高まる方向に転舵させる。
図6は、具体例4を実現するための処理の一例を示すフローチャートである。
ステップ600では、操舵速度dθ/dtが所定値Aより大きいか否かが判定される。所定値Aは、急操舵を示す値であり、実験等により適合された値が用いられる。操舵速度dθ/dtが所定値Aより大きい場合には、ステップ606に進み、それ以外の場合には、ステップ602に進む。
ステップ602では、上述の具体例1と同様の態様で、係数αが現在の前後転舵角比δ/δに基づいて決定され、当該決定された係数αに基づいて、後輪目標転舵角δ*が決定される。そして、当該決定された後輪目標転舵角δ*が実現されるように後輪操舵アクチュエータ20が制御される。
ステップ604では、係数αが1より小さいか否かが判定される。係数αが1より小さい場合、即ちモード遷移時制御が継続している場合には、ステップ600に戻る。一方、モード遷移時制御が正常に完了して係数αが1となった場合、図6の処理が終了する。モード遷移時制御が正常に終了された場合には、以後、図2のステップ108による前後輪同相転舵モード時の制御が実現されることになる。
ステップ606では、ステアリング操舵角θの変化量Δθ(例えば今回周期のステアリング操舵角θから前回周期のステアリング操舵角θを差し引いた量)が0より大きいか否かが判定される。ステアリング操舵角θの変化量Δθが0より大きい場合、即ちステアリングホイールの操舵方向が切り込み側の場合には、ステップ610に進み、ステアリング操舵角θの変化量Δθが0より小さい場合、即ちステアリングホイールの操舵方向が切り戻し側の場合には、ステップ608に進む。
ステップ608では、後輪目標転舵角δ*が切り込み側の後輪最大転舵角δRmzxに設定される。
ステップ610では、後輪転舵角δの徐変制御がキャンセルされ、後輪目標転舵角δ*が0に設定される。
このように、ステップ608及びステップ610によれば、操舵速度が所定値以上となる急操舵が検出された場合に、上述の徐変制御に代えて、後輪が操舵方向に応じて回頭性が高まる方向に転舵されるので、車両の回頭性を向上させることが可能となり、障害物等の回避能力が向上する。
尚、この具体例4においては、ステップ608及び610の双方の処理が用意されているが、いずれか一方の処理のみが実行されるようにしてもよい。即ち、例えば、上記のステップ608の処理を省略してもよい。
尚、また、この具体例4による後輪転舵角δの徐変制御は、上述の具体例2若しくは3による前輪転舵角δのスロー制御と組み合わせて実現されてもよい。
[モード遷移時制御の具体例5]
この具体例5では、ステアリング制御ECU10は、例えばシフトポジション等に基づいて車両の進行方向(前進若しくは後進)を監視し、車両後進が検出された場合に、モード遷移を禁止する。
図7は、具体例5を実現するための処理の一例を示すフローチャートである。
ステップ700では、車両が前進しているか否かが判定される。車両が前進している場合には、ステップ702及び704にて上述の後輪転舵角δの徐変制御及び前輪転舵角δのスロー制御が実行され、ステップ706で係数αが1より小さいか否かが判定され、否定判定の場合には(即ち係数αが1となりモード遷移時制御が正常に完了した場合には)図7の処理は終了し、肯定判定の場合には、ステップ700に戻る。
他方、例えばシフトポジションがR(リバース)であり、ステップ700で否定判定がなされた場合、即ち車両が後進している場合には、ステップ708に進む。ステップ708では、モード遷移が中止される。例えば、後輪転舵角δの徐変制御がキャンセルされて、後輪目標転舵角δ*が0に設定されると共に、前輪転舵角δのスロー制御がキャンセルされ、前輪目標転舵角δ*がk・θとされる。
この具体例5によれば、車両の後進時は、運転者が車両を進行させたい方向と前輪転舵方向が必ずしも一致しないことを考慮し、モード切替を要求した際の運転者の意思と異なる方向に後輪転舵角δが制御されることを防止することが可能となる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述した実施例では、車両走行中にモード切替(前輪転舵モードから前後輪同相転舵モードへの切替)を可能としているが、車速が所定値未満の低速走行時に限り、前輪転舵モードから前後輪同相転舵モードへの切替を許容することとしてもよい。
また、上述の図2に示す処理は、車両の走行中か否かの如何に拘らず実行されるように示されているが、例えば車速が所定値未満の低速走行時に実行される処理とされてもよい。例えば、モード遷移時制御の実行中に車速が所定値を超えた場合には、図7と同様の処理によりモード遷移を禁止してもよい。一方、モード遷移時制御の実行中に車両が停止した場合には、いわゆる後輪の据え切り操舵を防止すべく、一旦、モード遷移時制御を中断し、その後、車両が動き始めた段階で、モード遷移時制御の続きを実行することとしてもよい。
また、上述の実施例では、モード切替は運転者によるモード切替スイッチ16の操作により指示されているが、モード切替は、運転者による音声入力やジェスチャー入力等の他の入力態様を介して指示されてもよい。
本発明による操舵制御装置の一実施例を示すシステム図である。 本実施例のステアリング制御ECU10により実行される主要処理の一例を示すフローチャートである。 モード遷移時制御の具体例1による前後転舵角比δ/δと係数αとの関係を示す図である。 モード遷移時制御の具体例2による前後転舵角比δ/δと係数βとの関係を示す図である。 具体例3を実現するための処理の一例を示すフローチャートである。 具体例4を実現するための処理の一例を示すフローチャートである。 具体例5を実現するための処理の一例を示すフローチャートである。
符号の説明
1 操舵制御装置
10 ステアリング制御ECU
12 舵角センサ
14 車輪速センサ
16 モード切替スイッチ
20 後輪操舵アクチュエータ

Claims (8)

  1. 転舵手段の転舵モードを切り替える転舵モード切替手段と、
    前記転舵モード切替手段により転舵手段の転舵モードが前輪転舵モードから前後輪同相転舵モードに切り替えられた場合に、車両走行中で且つ操舵中である状況下でモード遷移中の転舵角制御を行うモード遷移時制御手段とを備え、
    前記モード遷移時制御手段は、後輪の転舵角の変化量を、前輪転舵角と後輪転舵角との比に基づいて設定する、操舵制御装置。
  2. 前記モード遷移時制御手段は、ステアリング操舵角に対する後輪の転舵角の変化量を、前輪転舵角と後輪転舵角との比に基づいて徐変させる、請求項1に記載の操舵制御装置。
  3. 前記モード遷移時制御手段は、前輪転舵角に対する後輪転舵角の比が小さい範囲では前記後輪の転舵角の変化量を小さくし、前輪転舵角に対する後輪転舵角の比が増加するに従って前記後輪の転舵角の変化量を大きくし、前輪転舵角に対する後輪転舵角の比が1に近づくに従って前記後輪の転舵角の変化量を小さくする、請求項2に記載の操舵制御装置。
  4. 前記モード遷移時制御手段は、更に、ステアリング操舵角に対する前輪の転舵角の変化量を、前輪転舵モード時に比べて低減する前輪転舵角スロー制御を行う、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の操舵制御装置。
  5. 転舵手段の転舵モードを切り替える転舵モード切替手段と、
    前記転舵モード切替手段により転舵手段の転舵モードが前輪転舵モードから前後輪同相転舵モードに切り替えられた場合に、車両走行中で且つ操舵中である状況下でモード遷移中の転舵角制御を行うモード遷移時制御手段とを備え、
    前記モード遷移時制御手段は、前輪の転舵角の変化量を、前輪転舵モード時に比べて低減する前輪転舵角スロー制御を行う、操舵制御装置。
  6. 前記モード遷移時制御手段は、操舵速度が所定値以上となった場合には、前記前輪転舵角スロー制御を中止する、請求項4又は5に記載の操舵制御装置。
  7. 前記モード遷移時制御手段は、操舵速度が所定値以上となった場合には、更に、後輪を操舵方向に応じて回頭性が高まる方向に転舵させる、請求項6に記載の操舵制御装置。
  8. 前記モード遷移時制御手段は、車両の後進が検出された場合には、モード切替を中止する、請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の操舵制御装置。
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