以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係るプリンタの概略構成図である。図1に示すように、プリンタ1は、キャリッジ2、インクジェットヘッド3、サブタンク4、チューブ5a〜5d、インクカートリッジ6a〜6d、チューブ7a〜7c、差圧弁9、チャージタンク12、キャップユニット13、吸引ポンプ14、切り替えユニット15などを備えている。また、プリンタ1の動作は制御装置100によって制御されている。
キャリッジ2は、駆動装置18によって駆動されて、図1の左右方向(走査方向)に平行に延びた2本のガイド軸17に沿って走査方向に往復移動する。インクジェットヘッド3は、キャリッジ2上に搭載されており、キャリッジ2とともに走査方向に往復しつつ、その下面に設けられたノズル95(図7参照)から、図示しない用紙搬送機構により図1の下方(紙送り方向)に搬送される記録用紙Pにインク(液体)を吐出する。これにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
サブタンク4は、キャリッジ2上に搭載されており、サブタンク4にはインクジェットヘッド3に供給するためのインクが一時的に貯留される。チューブ5a〜5dは一端がサブタンク4に接続されているとともに、他端がそれぞれインクカートリッジ6a〜6dに接続されている。インクカートリッジ6a〜6dには、それぞれ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが貯留されており、インクカートリッジ6a〜6dに貯留されたこれら4色のインクが、それぞれチューブ5a〜5bを介してサブタンク4に供給される。これにより、インクジェットヘッド3にはサブタンク4からこれら4色のインクが供給され、ノズル95(図7参照)からは、これら4色のインクが吐出される。
チューブ7a〜7cは、それぞれ、サブタンク4とチャージタンク12、チャージタンク12と差圧弁9、及び、差圧弁9と切り替えユニット15とを接続している。これにより、サブタンク4と切り替えユニット15とは、チューブ7a、チャージタンク12、チューブ7b、差圧弁9及びチューブ7cを介して接続される。なお、サブタンク4の後述する排気ユニット23(図2参照)からチューブ7a、チャージタンク12、チューブ7b、差圧弁9及びチューブ7cを経て切り替えユニット15に至る気体流路が、本発明に係る排気流路に相当する。
差圧弁9は、後述するように、チューブ7aとチューブ7bとの連通及びその遮断を切り替える。チャージタンク12は、後述するように、排気流路におけるサブタンク4と差圧弁9との間の部分を負圧に保持したときに、負圧に保持された状態が持続する時間を長くするためのものである。
キャップユニット13は、キャリッジ2が移動可能な範囲で図1の最も右側にきたときにインクジェットヘッド3の下面と対向するように配置されており、後述するノズル列88(図7参照)に対応して走査方向に配列された4つのインク吸引キャップ13a〜13dを有している。そして、インクジェットヘッド3がキャップユニット13と対向する位置にきたときに、キャップユニット13が図1の紙面手前方向に移動し、これにより、各インク吸引キャップ13a〜13dが対応するノズル列88を構成するノズル95(図7参照)を覆う。また、各インク吸引キャップ13a〜13dは切り替えユニット15に個別に接続されている。
吸引ポンプ14は、切り替えユニット15に接続されている。切り替えユニット15は、吸引ポンプ14をチューブ7c及びキャップユニット13のいずれか一方に選択的に接続させる。さらに、切り替えユニット15は、吸引ポンプ14をキャップユニット13に接続させる際に、インク吸引キャップ13a〜13dのいずれか1つ又は複数と吸引ポンプ14とを選択的に接続させる。
そして、切り替えユニット15により吸引ポンプ14とチューブ7cとを接続させた状態で吸引ポンプ14を動作させることにより、チューブ7cから排気流路内の気体を吸引することが可能となっている。また、切り替えユニット15により吸引ポンプ14とキャップユニット13のインク吸引キャップ13a〜13dのいずれか1つ又は複数とを接続させた状態で吸引ポンプ14を動作させることによって、インクジェットヘッド3内のインクにノズル95を介して吸引圧を作用させ、ノズル95(図7参照)からインクジェットヘッド3内の増粘したインクを強制的に吸引するパージを行うことが可能となっている。
すなわち、吸引ポンプ14は、本発明に係る気体吸引手段と本発明に係る液体吸引手段とを兼ねるものである。これにより、プリンタ1においては、排気流路内の気体を吸引するための吸引ポンプ(気体吸引手段)と、ノズル95からインクジェットヘッド3内のインクを吸引するための吸引ポンプ(液体吸引手段)とを別々に設ける必要がなく、プリンタ1の構成が簡単になる。なお、本発明に係る液体吸引手段として動作する吸引ポンプ14とキャップユニット13とを合わせたものが、本発明に係る液体排出手段に相当する。
次に、サブタンク4について詳細に説明する。図2は図1のサブタンク4の概略を示す斜視図である。図3は図2の平面図である。図4(a)は図3のA−A線断面図である。図4(b)は図3のB−B線断面図である。図4(c)は図3のC−C線断面図である。図4(d)は図3のD−D線断面図である。図5は図3のE−E線断面図である。図6は、図5(a)〜(d)の一点鎖線で囲まれた部分を拡大した図である。なお、図面を分かりやすくするため、図3においては、後述する接続ユニット21の流入管31a〜31d及び後述する排気ユニット23を二点鎖線で示すとともに、後述する接続ユニット21の接続部32及びサブタンク本体22の一部の図示を省略している。また、図4(a)〜図4(d)の一点鎖線で囲まれた部分は、全て同様の構造を有しているので、図6においてはこれらを1つの図面で表し、図4(a)の一点鎖線で囲まれた部分については、括弧を付けずに符号を付し、図4(b)〜図4(d)の一点鎖線で囲まれた部分については、括弧付きで符号を付している。
図2〜図4に示すように、サブタンク4は、接続ユニット21、サブタンク本体22及び排気ユニット23を有している。
接続ユニット21は、チューブ5a〜5dをサブタンク4に接続するものであり、流入管31a〜31d及び接続部32を有している。流入管31a〜31dは互いに平行に紙送り方向に延びた円管であり、走査方向に沿って等間隔に配列されている。流入管31a〜31dは、図2における手前側の端部が、それぞれチューブ5a〜5dに接続されている(図2、図3ではチューブ5a〜5dの図示を省略している)とともに、図2における奥側の端部が接続部32に接続されている。接続部32は、サブタンク本体22の走査方向に関する一方の端部の上面に接合されており、流入管31a〜31dとサブタンク本体22の後述する接続口41a〜41dとを連通させる。
サブタンク本体22は、接続口41a〜41d、インク流路42a〜42d、43a〜43d、46a〜46d、47a〜47d、インク貯留室44a〜44d、及び、ダンパフィルム45a〜45dを有している。接続口41a〜41dは、略円形の平面形状を有しており、サブタンク本体22の図3における右下端部において、図3の上下方向に配列されている。そして、サブタンク本体22には、接続口41a〜41dからインクが供給される。
インク流路42aは、接続口41aから図3の上方に延びており、途中で図3の右上方向に折れ曲がってインク貯留室44a〜44dの図3における下方に隣接する位置まで延びている。
インク流路42bは、接続口41bから図3の左方に延びているともに途中で図中上方に折れ曲がって延びており、さらに途中で図3の右上方向に折れ曲がってインク貯留室44a〜44dの図3における下方に隣接する位置まで延びている。
インク流路42cは、接続口41cから図3の左方に延びているともに途中で図中上方に折れ曲がって延びており、さらに途中で図3の左上方向に折れ曲がってインク貯留室44a〜44dの図3における下方に隣接する位置まで延びている。
インク流路42dは、接続口41dから図3の左方に延びているともに途中で図中上方に折れ曲がって延びており、さらに途中で図3の左上方向に折れ曲がってインク貯留室44a〜44dの図3における下方に隣接する位置まで延びている。
そして、インク流路42a〜42dは、上述したように配置されることにより、図3の上下方向に延びた部分が、図3の左右方向に沿って、右側からインク流路42a、42b、42c、42dの順に配列されている。
インク貯留室44a〜44dは、インク流路42a〜42dの図3における上端部の上方に隣接する位置に、平面視で互いに重なるように配置されており、図4に示すように、鉛直方向に関して上から順に、インク貯留室44b、44a、44d、44cの順に配置されている。また、インク貯留室44a〜44dは、平面視で図3の左右方向を長手方向とする略長方形状となっている。
インク貯留室44bの上端部及びインク貯留室44aの下端部には、それぞれ、ダンパフィルム45b、45aが設けられており、ダンパフィルム45b、45aがそれぞれインク貯留室44bの上面及びインク貯留室44aの下面を画定する壁となっている。また、インク貯留室44bとインク貯留室44aとの間には、隔壁49が設けられており、隔壁49によってインク貯留室44bとインク貯留室44aとが隔てられている。
インク貯留室44dの上端部及びインク貯留室44cの下端部には、それぞれ、ダンパフィルム45d、45cが設けられており、ダンパフィルム45d、45cがそれぞれインク貯留室44dの上面及びインク貯留室44cの下面を画定する壁となっている。また、インク貯留室44dとインク貯留室44cとの間には、隔壁50が設けられており、隔壁50によってインク貯留室44dとインク貯留室44cとが隔てられている。なお、インク貯留室44aとインク貯留室44dとの間(ダンパフィルム45aとダンパフィルム45dとの間)は空間となっている。
ここで、印刷を行う際などに、キャリッジ2とともにサブタンク4が走査方向に往復移動すると、サブタンク4内のインクが振動してサブタンク4内のインクに圧力の変動が生じるが、ダンパフィルム45a〜45dが変形することによりこのインクの圧力変動が抑制される。
インク流路43aは、インク流路42aの先端部(図3における上端部)から鉛直下方(図4(a)の下方)にインク貯留室44aと同じ高さまで延びており、そこから、さらに図4(a)の左方に折れ曲がって延び、インク貯留室44aと接続されている。
インク流路43bは、インク流路42bの先端部(図3における上端部)からさらにインク流路42bの延在方向(図4(b)の左方)に延びてインク貯留室44bと接続されている。
インク流路43cは、インク流路42cの先端部(図3における上端部)から鉛直下方(図4(c)の下方)にインク貯留室44cと同じ高さまで延びており、そこからさらに図4(c)の左方に折れ曲がって延び、インク貯留室44cと接続されている。
インク流路43dは、インク流路42dの先端部(図3における上端部)から鉛直下方(図4(d)の下方)にインク貯留室44dと同じ高さまで延びており、そこからさらに図4(d)の左方に折れ曲がって延び、インク貯留室44dと接続されている。
インク流路46a〜46dは、それぞれ、インク貯留室44a〜44dの図4(a)〜図4(d)の左端部から図中左方に延びてインク流路47a〜47dに接続されている。インク流路47a〜47dは、それぞれ、鉛直方向に沿って延びているとともに、図3の左右方向に沿って、図3の左からインク流路47a、47b、47c、47dの順に互いに近接して配列されている。
インク流路47a〜47dの下端部は、それぞれ、その下端が開口したインク供給部48a〜48dとなっており、インク供給部48a〜48dは、それぞれインクジェットヘッド3の上面に形成されたインク供給口89(図7参照)に接続されている。そして、インク流路47a〜47d内のインクは、インク供給部48からインクジェットヘッド3に供給される。
インク流路47a〜47dの上端はそれぞれ開口しており、サブタンク本体22の上面の平面視でインク流路47a〜47dに重なる位置には、これらの開口にまたがって配置されて、これらの開口を覆う気体透過シート60が設けられている。気体透過シート60は、気体のみが通過可能となっており、インクは気体透過シート60を通過することはできない。
そして、プリンタ1においては、インクカートリッジ6a〜6dに貯留されたインクはチューブ5a〜5dから流入管31a〜31dに流れ込み、さらに接続口41a〜41d及びインク流路42a〜42b、43a〜43dを介してインク貯留室44a〜44dに流れ込む。さらに、インク貯留室44a〜44dに一時的に貯留されたインクは、インク流路46a〜46dからインク流路47a〜47dに流れ込み、インク供給部48a〜48dからインクジェットヘッド3に供給される。
なお、インクカートリッジ6aから、チューブ5a、流入管31a、接続口41a、インク流路42a、43a、インク貯留室44a及びインク流路46a、47aを経てインクジェットヘッド3に至るインク流路、インクカートリッジ6bから、チューブ5b、流入管31b、接続口41b、インク流路42b、43b、インク貯留室44b及びインク流路46b、47bを経てインクジェットヘッド3に至るインク流路、インクカートリッジ6cから、チューブ5c、流入管31c、接続口41c、インク流路42c、43c、インク貯留室44c及びインク流路46c、47cを経てインクジェットヘッド3に至るインク流路、並びに、インクカートリッジ6dから、チューブ5d、流入管31d、接続口41d、インク流路42d、43d、インク貯留室44d及びインク流路46d、47dを経てインクジェットヘッド3に至るインク流路が、それぞれ、本発明に係る液体供給流路に相当し、プリンタ1は、4つの(複数の)液体供給流路を有している。
排気ユニット23は、サブタンク本体22内の気体を外部に排出する排気流路の一部を構成するものであり、接続部61及び排気管62とを有している。接続部61は、サブタンク本体22の上面の平面視でインク流路47a〜47dと重なる部分に、インク流路47a〜47dにまたがってインク流路47a〜47dを覆うように配置されており、接続部61の内部には、排気流路を構成する個別気体室63a〜63d、連通流路64a〜64d及び共通気体室65が形成されている。
個別気体室63a〜63dは、それぞれ、平面視でインク流路47a〜47dと重なる位置に設けられている。そして、気体透過シート60のうち、インク流路47aと個別気体室63aとに重なる部分、インク流路47bと個別気体室63bとに重なる部分、インク流路47cと個別気体室63cとに重なる部分、及び、インク流路47dと個別気体室63aとに重なる部分が、それぞれ、気体透過膜60aとなっている。すなわち、4つの気体透過膜60aが、インク流路47a〜47d(複数の液体供給流路)に対応して互いに近接して設けられている。そして、各気体透過膜60aが、インク流路47a〜47dと個別気体室63a〜63dと接続部において、インク流路47a〜47dと個別気体室63a〜63dとをそれぞれ仕切る壁を構成している。
また、個別気体室63aと個別気体室63bとの間、個別気体室63bと個別気体室63cとの間、及び、個別気体室63cと個別気体室63dとの間には、それぞれ、隔壁66が設けられており、隔壁66によって隣接する個別気体室63a〜63d同士が互いに仕切られている。
個別気体室63a〜63d内には、図3〜図6に示すように、4つの気体透過膜60aの上面(排気流路側の面)に、それぞれ、気体透過膜60aよりもインクの吸収性(インクの濡れ性)が高い不織布55(液体吸収部材)が配置されており、各不織布55の上面(気体透過膜60aと反対側の面)には、平面視で図4の左右方向に関するインク流路47a〜47dの両端に重なる位置(互いに離隔した位置)にそれぞれ、電極56及び電極57(一対の電極)が配置されている。
前述したように、各気体透過膜60aは、通常、気体のみが透過可能であり、インクは通過することはできない。しかしながら、プリンタ1の長期間の使用により、気体透過膜60aがインクにより目詰まりし、最終的には、インク流路47a〜47d内のインクが対応する気体透過膜60aから個別気体室63a〜63dに漏れ出してしまう。すなわち、気体透過膜60aにおいて、インク流路47a〜47d側(液体供給流路側)から個別気体室63a〜63d側(排気流路側)へのインク漏れが発生してしまう。
このとき、気体透過膜60aから漏れ出したインクは、気体透過膜60aの上面に配置された不織布55に吸収され、吸収されたインクは不織布55の全域に広がる。すると、電極56と電極57とが、不織布55の全域に広がったインクを介して互いに導通する。したがって、後述するインク漏れ検知部134(図13参照)において、電極56と電極57とが導通していることを検知することにより、インク流路47a〜47d内のインクが対応する気体透過膜60aから個別気体室63に漏れ出していることを検出することができる。なお、不織布55、一対の電極56、57及び後述するインク漏れ検知部134を合わせたものが本発明に係るインク漏れ検知手段に相当する。
また、前述したように、隣接する個別気体室63a〜63dの間には隔壁66が設けられているため、気体透過膜60aのいずれかから対応する個別気体室63a〜63dに漏れ出したインクが、他の気体透過膜60aに流れ込むのが防止されている。これにより、インクが漏れ出していない気体透過膜60aに対応する不織布55にインクが吸収され、その気体透過膜60aおいてインク漏れが生じたことが誤って検知されるのが防止される。なお、隔壁66が、本発明に係る液体流入防止壁に相当する。
共通気体室65は、個別気体室63a〜63dの上方に、個別気体室63a〜63dの図3における略下半分にまたがって設けられている。連通流路64a〜64dは、それぞれ、個別気体室63a〜63と共通気体室65との間に設けられており、上下方向に延びて個別気体室63a〜63dと共通気体室65とを連通させている。
このように、サブタンク4においては、インク流路47a〜47d(複数の液体供給流路)が、それぞれ、個別気体室63a〜63dに接続されており、個別気体室63a〜63dが、それぞれ、連通流路64a〜64dを介して共通気体室65に接続されている。これにより、排気流路は、複数の液体供給流路とそれぞれ接続されている。
排気管62は、一端が共通気体室65の図3における下側の側面の略中央部に接続された円管であり、共通気体室65との接続部分から図3の下方に延びているとともに、途中で図3の左方に折れ曲がっており、走査方向に関して、流入管31a〜31dと排気管62とが等間隔に配列されている。そして、図3の左方に延びた排気管62の先端が、チューブ7aに接続されている(図2、図3においては、チューブ7aの図示を省略している)。
次に、インクジェットヘッド3について説明する。図7は図1のインクジェットヘッド3の平面図である。図8は図7の部分拡大図である。図9は図8のIX−IX線断面図である。図10は図8のX−X線断面図である。ただし、図面を分かりやすくするため、図7においては後述する圧力室90及び貫通孔92〜94の図示を省略するとともに、ノズル95を図8〜図10よりも大きく図示している。
図7〜図10に示すように、インクジェットヘッド3は、圧力室90などのインク流路が形成された流路ユニット67と、流路ユニット67の上面に配置された圧電アクチュエータ68とを有している。
流路ユニット67は、上から順にキャビティプレート71、ベースプレート72、マニホールドプレート73及びノズルプレート74の4枚のプレートが互いに積層されることによって構成されている。これら4枚のプレート71〜74のうち、ノズルプレート74を除く3枚のプレート71〜73は、ステンレスなどの金属材料からなり、ノズルプレート74は、ポリイミドなどの合成樹脂材料からなる。あるいは、ノズルプレート74も他の3枚のプレート71〜73と同様、金属材料によって構成されていてもよい。
ノズルプレート74には、複数のノズル95が形成されている。複数のノズル95は、紙送り方向(図7の上下方向)に沿って配列されてノズル列88を構成しており、このようなノズル列88が走査方向(図7の左右方向)に4列に配置されている。これら4つのノズル列88を構成するノズル95からは、図7の左側のノズル列88を構成しているものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。すなわち、インクジェットヘッド3は、互いに異なる種類のインクを吐出する、4種類(複数種類)のノズル95を有している。そして、これら4種類のノズル95に対応して、前述した4つの液体供給流路が設けられている。
キャビティプレート71には、複数のノズル95に対応して複数の圧力室90が形成されている。圧力室90は走査方向を長手方向とする略楕円の平面形状を有しており、平面視で圧力室90の右端部がノズル95と重なるように配置されている。ベースプレート72には、平面視で圧力室90の長手方向の両端部に重なる位置に、それぞれ貫通孔92、93が形成されている。
マニホールドプレート73には、4つのノズル列88に対応してノズル列88の左側に紙送り方向に延びた4つのマニホールド流路91が形成されている。各マニホールド流路91は、平面視で、対応する圧力室90の略左半分と重なっている。各マニホールド流路91の図7の上端部にはそれぞれインク供給口89が設けられている。インク供給口89は、前述したようにサブタンク4のインク供給部48a〜48dと接続されており、サブタンク4内のインクがインク供給口89からマニホールド流路91に供給される。また、マニホールドプレート73には、平面視で貫通孔93とノズル95とに重なる位置に、貫通孔94が形成されている。
そして、流路ユニット67においては、マニホールド流路91が貫通孔92を介して圧力室90に連通し、圧力室90はさらに貫通孔93、94を介してノズル95に連通する。このように流路ユニット67には、マニホールド流路91の出口から圧力室90を経てノズル95に至る複数の個別インク流路が形成されている。
圧電アクチュエータ68は、振動板81、圧電層82及び複数の個別電極83を有している。振動板81は金属材料などの導電性材料からなり、複数の圧力室90を覆うようにキャビティプレート71の上面に接合されている。また、導電性を有する振動板81は、後述するように圧電層82の個別電極83との間に配置された部分に電界を作用させるための共通電極を兼ねており、図示しないドライバICに接続されて常にグランド電位に保持されている。
圧電層82は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であり、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなり、振動板81の上面に複数の圧力室90にまたがって連続的に配置されている。また、圧電層82は予めその厚み方向に分極されている。
複数の個別電極83は、圧電層82の上面に複数の圧力室90に対応して設けられている。個別電極83は、圧力室90よりも一回り小さい略楕円の平面形状を有しており、平面視で、圧力室90の略中央部に重なる位置に配置されている。また個別電極83の長手方向における一端部(図8の左端部)は、平面視で圧力室90と重ならない位置まで左方に延びており、その先端部が接点83aとなっている。接点83aには、図示しないフレキシブルプリント基板(FPC)等の配線部材を介して図示しないドライバICが接続される。そして、ドライバICにより、複数の個別電極83に選択的に駆動電位が付与される。
ここで、圧電アクチュエータ68の駆動方法について説明する。圧電アクチュエータ68においては、複数の個別電極83の電位は、図示しないドライバICにより予めグランド電位に保持されている。そして、ドライバICにより複数の個別電極83のいずれかに駆動電位が付与されると、駆動電位が付与された個別電極83とグランド電位に保持された共通電極としての振動板81との間に電位差が発生し、圧電層82のこの個別電極83と振動板81とに挟まれた部分に厚み方向の電界が発生する。この電界の向きは圧電層82の分極方向と平行であるため、圧電層82のこの部分は分極方向と直交する水平方向に収縮する。これに伴って、振動板81及び圧電層82の駆動電位が付与された個別電極83に対応する圧力室90に対向する部分が全体として圧力室90に向かって凸となるように変形し、この圧力室90内の容積が減少する。これにより、圧力室90内のインクの圧力が上昇し、圧力室90に連通するノズル95からインクが吐出される。
次に、差圧弁9について説明する。図11は図1の差圧弁9の構成を示す断面図である。
差圧弁9は、図11に示すように、気体室101、102、連通流路103及び弁本体104を有している。気体室101と気体室102とは、図11の左右方向に並んで配置されているとともに、気体室101はその図11における右端部に設けられた連通口107においてチューブ7cに接続されており、気体室102は、その図11における左端部に設けられた連通口109においてチューブ7bに接続されている。連通流路103は、気体室101と気体室102との間で左右方向に延びて、気体室101と気体室102とを連通させる、図11の左右方向から見て略円形の流路であり、その径は、図11の上下方向及び紙面垂直方向に関する気体室101、102の長さよりも小さい。
弁本体104は、円柱部104a、遮断部104b、抜け落ち防止部104cを有している。円柱部104aは、連通流路103よりも若干径の小さい略円柱形状を有しており、連通流路103を通過して、気体室101の図11における左端部から気体室102の図11の右端部まで延びている。遮断部104bは、円柱部104aの図11の右端部に設けられており、円柱部104aから円柱部104aの径方向外側に傘状に延びて、その径が連通流路103の径よりも大きくなっている。抜け落ち防止部104cは、円柱部104aの図11における左端部に設けられており、円柱部104aから円柱部104aの径方向外側に延びて、その径が連通流路103よりも大きくなっている。また、抜け落ち防止部104cには、図11の左右方向に関して連通流路103の縁近傍の部分と重なる部分に複数の貫通穴104dが設けられている。
そして、吸引ポンプ14により排気流路内の気体が吸引されているときには、吸引ポンプ14の吸引力により弁本体104が図11の右方に移動する。これにより、遮断部104bと気体室101の図11左側の壁面との間に隙間ができる(弁が開く)。その結果、気体室101と気体室102とが、貫通穴104d及び連通流路103を介して連通し、これにより、排気流路と切り替えユニット15(吸引ポンプ14)とが連通する。このとき、抜け落ち防止部104cの右側の表面が気体室102の右側の壁面に接触するため、弁本体104が連通流路103から抜け落ちてしまうのが防止される。そして、この状態で吸引ポンプ14により排気流路内の気体が吸引されることによって、排気流路内及びインク流路47a〜47d内の気体が外部に排出され、排気流路内の気圧が低下して大気圧よりも低い負圧となる。
一方、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引した後には、気体室102の圧力が負圧となっているため、弁本体104はこの負圧により吸引されて図11の左方に移動し、遮断部104bの外縁部が気体室101の図11左側の壁面に押し付けられる。これにより、遮断部104bと気体室101の左側の壁面との間の隙間がなくなり(弁が閉じ)、気体室101と連通流路103及び気体室102との連通が遮断される。このとき、排気流路のうち、差圧弁9と気体透過膜60aとの間の部分は外部との連通が遮断されて密閉される。
したがって、排気流路のうち差圧弁9と気体透過膜60aとの間の部分は、負圧に保持された状態となる。これにより、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引した後も、インク流路47a〜47d内の気体は、この負圧によって吸引されて排気流路に排出される。
このように、本実施形態の差圧弁9は、弁本体104よりもサブタンク4側の排気流路内空間の圧力が、弁本体104よりも切り替えユニット15側(吸引ポンプ14側)の排気流路内空間の圧力よりも十分に小さい場合(サブタンク4側の排気流路内空間の圧力の方が小さく、2つの空間の差圧が所定量以上の場合)に、これら2つの空間の連通を遮断し、そうでない場合(2つの空間の差圧が所定量よりも小さい場合、または、2つの空間の圧力が等しいか、切り替えユニット15側の排気流路内空間の圧力の方が小さい場合)には2つの空間の連通を許容するものである。また、本実施形態の差圧弁9は、サブタンク4側から切り替えユニット15側に向かう気体の流れを許容し、切り替えユニット15側からサブタンク4側に向かう気体の流れを遮断する一方向弁でもある。
ここで、インク流路47a〜47d内の気体がインクジェットヘッド3に流れ込むと、ノズル95からのインクの吐出特性が変動してしまう虞がある。しかしながら、インク流路47a〜47d内の気体は、上述したように排気流路に排出されるため、ノズル95からのインクの吐出特性が変動してしまうのが防止される。
次に、チャージタンク12について説明する。図12はチャージタンク12の構成を示す断面図であり、(a)が後述するチャージ室122c内の圧力が大気圧である場合、(b)がチャージ室122c内の圧力が負圧となった状態を示している。図12に示すように、チャージタンク12は、気体流路121、ベローズ部122及び圧力センサ123を有している。
気体流路121は、図12の左右方向に延びており、図中左右両端部にそれぞれ、チューブ7a、7bと連通する連通口121a、121bが設けられている。また、気体流路121における図12の略中央部の上面には、気体流路121とベローズ部122の後述するチャージ室122cとを連通させる連通口121cが設けられている。
ベローズ部122は、図12の上下方向に延びており、内部に天井壁122b及び側壁122aに囲まれたチャージ室122cが形成されている。天井壁122bは、チャージ室122cの上面を画定する壁であり、略円形の平面形状を有している。側壁122aは、チャージ室122cの側面を画定する壁であり、天井壁122bの外縁部から、互いに逆方向に交互に折り曲げられつつ下方に延びている。これにより、天井壁122bに鉛直方向に力が加わることで、天井壁122bが鉛直方向に移動するとともに、側壁122aの折り曲げ角度θが変化して、チャージ室122cの容積が変化する。また、チャージ室122cの下端は開口しており、連通口121cに接続されている。これにより、気体流路121とチャージ室122c(排気流路)とが連通している。
ベローズ部122は、チャージ室122c内の圧力が大気圧のときには、図12(a)に示すように、天井壁122bが最も高い位置にあるとともに、側壁122aの折り曲げ角度θが最大となっている。そして、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引することによってチャージ室122c内の圧力が低下すると、天井壁122bには、外部の大気圧とチャージ室122c内の負圧との差によって下向きの力が生じる。これにより、図12(b)に示すように、天井壁122bが下方に移動し、これに伴って、側壁122aの折り曲げ角度θが小さくなる。そして、このようなベローズ部122の変形により、チャージ室122cの容積が低下する。
ここで、側壁122aの折り曲げ角度θが小さくなると、側壁122aには図12(a)の状態に戻ろうとする図12上向きの反発力が生じ、側壁122aの折り曲げ角度θが小さくなるほどこの反発力は大きくなる。したがって、ベローズ部122は、大気圧とチャージ室122c内の圧力との差によって生じる力と上記反発力とがつりあったときにチャージ室122cの容積の変化が止まる。したがって、チャージ室122c内の圧力と、チャージ室122cの容積とは所定の関係にあり、チャージ室122c内の圧力が低いほどチャージ室122cの容積は小さくなる。
逆に、図12(b)に示すように、チャージ室122c内が負圧に保持されているときに、インク流路47a〜47dの気体が対応する気体透過膜60aを介して個別気体室63a〜63dに排出されると、個別気体室63a〜63dに連通するチャージ室122c内の圧力が増加する。これにより、大気圧とチャージ室122c内の圧力との差によって生じる力が小さくなり、ベローズ部122においては、天井壁122bが上方に移動し、これに伴って側壁122aの折り曲げ角度θが大きくなる。このようなベローズ部122の変形によって、チャージ室122cの容積が増加する。
このとき、排気流路にチャージ室122cが連通しているため、排気流路とチャージ室122cとを合わせた容積は、チャージタンク12が設けられていない場合の排気流路のみの容積と比較して、チャージ室122cの分だけ大きくなる。これにより、インク流路47a〜47dから排気流路に気体が流れ込んだときの排気流路内の圧力上昇を緩やかにすることができ、排気流路内が負圧に保持される時間が長くなる。
なお、当然のことであるが、インク流路47a〜47dから排気流路に気体が流れ込み、チャージ室122c内の容積が増加する際にも、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引する場合と同様、大気圧とチャージ室122c内の圧力との差によって生じる力と、ベローズ部122の側壁122aによる反発力とがつりあったときに、チャージ室122cの容積の変化が止まる。すなわち、この場合にも、チャージ室122c内の圧力と、チャージ室122cの容積とは所定の関係にある。
圧力センサ123は、可動部124、複数のスリット125及びスリット検出センサ126を有している。可動部124は、ベローズ部122の天井壁122bとともに上下方向に移動する。複数のスリット125は、可動部124における図12右端部に設けられており、それぞれが図中左右方向に延びているとともに上下方向に配列されている。スリット検出センサ126は、各スリット125がスリット検出センサ126を上下方向に通過したことを検出する。複数のスリット125は、天井壁122bとともに上下方向に移動するため、スリット検出センサ126により各スリット125がスリット検出センサ126を通過したことを検出することによって、チャージ室122cの容積を検出することができる。
ここで、前述したように、チャージ室122cの容積、すなわち、天井壁122bの位置と、チャージ室122c内の圧力とは所定の対応関係にある。したがって、圧力センサ123においては、スリット検出センサ126により、天井壁122bとともに上下方向に移動する可動部124に設けられた複数のスリット125がスリット検出センサ126を通過したことを検出することによってチャージ室122c内の圧力を検出することができる。
そして、前述したように吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引する際に、吸引ポンプ14は、圧力センサ123により検出される排気流路内の圧力が予め決定された目標圧力となるまで排気流路内の気体を吸引し続ける。さらに、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引した後、排気流路内が負圧に保持された状態で、インク流路47a〜47dから気体が排出されるなどして排気流路内の圧力が上昇し、圧力センサ123において検出された排気流路内の圧力が所定の圧力よりも高くなったときに、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引して排気流路内の圧力を低下させる。このように、吸引ポンプ14による排気流路内の気体の吸引が繰り返し行われることによって、排気流路内の圧力は、後述するように吸引ポンプ14による排気流路内の気体の吸引が実行されなくなるまでの間、上記所定の圧力と上記目標圧力との間の負圧に保持されることとなる。
次に、制御装置100について説明する。図13は図1の制御装置100のブロック図である。制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などからなり、これらが、以下に説明する印刷制御部131、パージ制御部132、排気制御部133及びインク漏れ検知部134として動作する。
印刷制御部131は、プリンタ1において印刷を行う際のインクジェットヘッド3及びキャリッジ2の動作を制御する。パージ制御部132は、ノズル95からインクジェットヘッド3内のインクを吸引するパージを行う際のキャリッジ2、キャップユニット13、切り替えユニット15及び吸引ポンプ14の動作を制御する。排気制御部133は、排気流路内の気体を吸引する際の、切り替えユニット15及び吸引ポンプ14の動作を制御する。
インク漏れ検知部134は、電極56と電極57とが導通していることを検知することによって、インク流路47a〜47d内のインクが対応する気体透過膜60aから個別気体室63a〜63dに漏れ出していることを検知する。
ここで、インク漏れが生じるような状態となった気体透過膜60aは、気体の透過性が悪くなっているため、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引したとき、及び、排気流路内を負圧に保持したときに、インク流路47a〜47d内の気体を十分に排気流路に排出することができない。その結果、インク流路47a〜47d内の気体がインクジェットヘッド3に流れ込み、ノズル95からのインクの吐出特性が変動してしまう虞がある。
そこで、インク漏れ検知部134により4つの気体透過膜60aのいずれかにおいてインク漏れが検知された場合、パージ制御部132は、パージを行う際に、インク漏れが検知された気体透過膜60aに対応するノズル95から、インク漏れが検知されていないときよりも大量のインクが吸引されるように吸引ポンプ14の動作を制御する。これにより、ノズル95からインクジェットヘッド3内のインクとともにインク流路47a〜47d内の気体が排出され、上述したようなノズル95からのインクの吐出特性の変動を防止することができる。
さらに、全ての気体透過膜60aにおいてインク漏れが発生している場合には、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引しても、インク流路47a〜47d内の気体をほとんど個別気体室63a〜63dに排出することができず、吸引ポンプ14を動作させる電力が無駄に消費されるだけである。そこで、インク漏れ検知部134により4つの気体透過膜60aの全てにおいてインク漏れが検知された場合、排気制御部133は、吸引ポンプ104の動作が行われないように制御し排気流路内の気体の吸引が実行されないようにする。これにより、上述した無駄な電力消費を抑えることができる。
次に、パージを行う過程、及び、吸引ポンプ14による排気流路内の気体の吸引が実行されないようにする過程について説明する。図14は、この過程を示すフローチャートである。
図14に示すように、パージを行う際には、まず、インク漏れ検知部134により4つの気体透過膜60aのいずれかにおいてインク漏れが検知されているか否かが判断され(ステップS101、以下、単にS101などとする)、4つの気体透過膜60aのいずれにおいてもインク漏れが検知されていないときには(S101:NO)、切り替えユニット15によりインク吸引キャップ13a〜13dの全てと吸引ポンプ14とを接続してから、吸引ポンプ14を動作させて、全てのノズル95から所定量のインクを吸引する(S102)。これにより、インクジェットヘッド3内の増粘したインクがノズル95から排出される。
4つの気体透過膜60aのいずれかにおいてインク漏れが検知されている場合には(S101:YES)、さらに、4つの気体透過膜60aの全てにおいてインク漏れが検知されているか否かが判断され(S103)、全ての気体透過膜60aにおいてインク漏れが検知されている場合には(S103:YES)、既に、排気制御部133に制御されて吸引ポンプ14による排気流路内の気体の吸引が実行されないようになっていれば(S104)、S106に進み、吸引ポンプ14による排気流路内の気体の吸引が実行されないようになっていなければ、排気制御部133により制御して吸引ポンプ14による排気流路内の気体の吸引が実行されないようにしてから(S105)、S106に進む。
S106においては、切り替えユニット15によりインク吸引キャップ13a〜13dの全てと吸引ポンプ14とを接続してから、吸引ポンプ14を動作させて、全てのノズル95から所定量よりも大量の(インク漏れが検知されていないときよりも大量の)インクを吸引する(S106)。これにより、全てのノズル95からインクジェットヘッド3内の増粘したインクとともに、インクジェットヘッド3に連通するインク流路47a〜47d内の気体が排出される。
一方、インク漏れが検知されていない気体透過膜60aがあるときには(S103:NO)、切り替えユニット15によりインク吸引キャップ13a〜13dのうちインク漏れが検知されていないノズル95に対応するものと吸引ポンプ14とを接続してから、吸引ポンプ14を動作させることにより、インク漏れが検知されていない気体透過膜60aに対応するノズル95から所定量のインクを吸引する(S107)。そして、次に、切り替えユニット15によりインク吸引キャップ13a〜13dのうちインク漏れが検知された気体透過膜60aに対応するものと吸引ポンプ14とを接続してから、吸引ポンプ14を動作させることにより、インク漏れが検知された気体透過膜60aに対応するノズル95から所定量よりも大量の(インク漏れが検知されていないときよりも大量の)インクを吸引する(S108)。
これにより、インク漏れが検知された気体透過膜60aに対応するノズル95からインクジェットヘッド3内の増粘したインクとともに、インク流路47a〜47dのうちこのノズル95に連通しているものの内部に溜まった気体が排出される。また、インク漏れが検知されていない気体透過膜60aに対応するノズル95からは、インクジェットヘッド3内のインクが必要以上に排出されることがないため、インクの無駄な消費が抑えられている。
以上に説明した実施の形態によると、以下のような効果を得ることができる。
気体透過膜60aは、通常、気体のみを透過させインクは透過させないが、プリンタ1の長期間の使用により、気体透過膜60aがインクによって目詰まりし、最終的にはインク流路内47a〜47d内のインクが気体透過膜60aから個別気体室63a〜63dに漏れ出す。そして、このような状態となった気体透過膜60aは、気体の透過性が悪くなっているため、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引したとき、及び、排気流路内を負圧に保持したときに、インク流路47a〜47d内の気体を十分に排気流路に排出することができず、その結果、インク流路47a〜47d内の気体がインクジェットヘッド3に流れ込み、ノズル95からのインクの吐出特性が変動してしまう虞がある。
しかしながら、気体透過膜60aの上面に不織布55が配置されており、不織布55の上面に互いに離隔して一対の電極56、57が配置されているため、インク流路47a〜47d内のインクが気体透過膜60aから個別気体室63a〜63dに漏れ出したときには、漏れ出したインクが不織布55によって吸収されるとともに不織布55全域に広がり、不織布55全域に広がったインクを介して電極56と電極57とが導通する。したがって、インク漏れ検知部134において電極56と電極57とが導通していることを検知することによって、気体透過膜60aにおいてインク漏れが発生していることを検知することができる。
そして、パージを行う際に、吸引ポンプ14により、インク漏れが発生している気体透過膜60aに対応するノズル95から、インク漏れが発生していない気体透過膜60aに対応するノズル95からよりも大量のインクを吸引することにより、インクジェットヘッド3内のインクとともに、インク流路47a〜47dのうちインク漏れが発生している気体透過膜60aに対応するものの内部に溜まった気体を排出することができる。さらに、インク漏れが発生していない気体透過膜60aに対応するノズル95からインクジェットヘッド3内のインクが必要以上に排出されてしまうことがないため、無駄なインクの消費を抑えることができる。
また、全ての気体透過膜60aについてインク漏れが生じているときには、吸引ポンプ14により排気流路内の気体を吸引しても、インク流路47a〜47dからほとんど気体を吸引することができない。したがって、インク漏れ検知部134において全ての気体透過膜60aについてインク漏れが検知されたときに、吸引ポンプ14による排気流路内の気体の吸引を実行しないことにより、無駄な電力消費を抑えることができる。
また、吸引ポンプ14が排気流路内の気体を吸引するための吸引ポンプ(気体吸引手段)と、ノズル95からインクジェットヘッド3内のインクを吸引するための吸引ポンプ(液体吸引手段)とを兼ねているため、これらを別々に設ける必要がなく、プリンタ1の構成を簡単にすることができる。
また、個別気体室63a〜63dの間にそれぞれ隔壁66が設けられており、隔壁66により、4つの気体透過膜60aのいずれかから漏れ出したインクが、他の気体透過膜60aに流れ込むのが防止されるため、インク漏れが発生してない気体透過膜60aにおいて、誤ってインク漏れが発生していることが検知されてしまうのを防止することができる。
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
本実施の形態では、吐出するインクの種類が異なるノズル95毎にインク吸引キャップ13a〜13dが設けられていたが、これには限られない。一変形例では、図15に示すように、キャップユニット13が、ブラックのインクを吐出するノズル95(図7における最も左側のノズル列88を構成するノズル95)を覆うインク吸引キャップ13eと、カラー(イエロー、シアン、マゼンタ)のインクを吐出するノズル95(図7における最も左側のノズル列88を除く3つのノズル列88を構成するノズル95)を覆うインク吸引キャップ13fとを有しており、切り替えユニット15は、キャップユニット13と吸引ポンプ14とを接続させる際に、吸引ポンプ14、及び、インク吸引キャップ13e、13fのいずれか一方及び両方とを選択的に接続させる(変形例1)。
この場合には、パージを行う際に、インク漏れ検知部134によりブラックのインクを吐出するノズル95に対応する気体透過膜60aにおいてインク漏れが発生している場合には、ブラックのインクを吐出するノズル95から所定量よりも大量のブラックのインクを吸引する。一方、インク漏れ検知部134によりカラーのインクを吐出するノズル95に対応する気体透過膜60aのいずれかにおいてインク漏れが発生している場合には、カラーのインクを吐出するノズル95から所定量よりも大量のカラーのインクを吸引する。
また、別の一変形例では、図16に示すように、切り替えユニット15(図1参照)が設けられておらず、チューブ7cに直接接続された気体吸引ポンプ141に加えて、キャップユニット13の4つのインク吸引キャップ13a〜13dに個別に接続されたインク吸引ポンプ142を備えている(変形例2)。この場合には、排気流路内の気体を吸引する際には、気体吸引ポンプ141を動作させればよく、ノズル95からインクジェットヘッド3内のインクを吸引する際には、インク吸引キャップ13a〜13dにより対応するノズル95を覆った状態でインク吸引ポンプ142を動作させればよい。
また、本実施の形態においては、インク吸引キャップ13a〜13d(図1参照)によりノズル95を覆い、吸引ポンプ14を動作させることによりノズル95からインクジェットヘッド3内のインクを吸引することによってインクジェットヘッド3内のインクを強制的に排出したが、これには限られない。例えば、別の一変形例においては、図17に示すように、インクカートリッジ6a〜6dに加圧ポンプ151が接続されており、加圧ポンプ151は、インクカートリッジ6a〜6dのうちの1つ又は複数に貯留されたインクを選択的に加圧する。また、キャップユニット13(図1参照)の代わりに、インク排出キャップ152が設けられている(変形例3)。なお、変形例3においては、加圧ポンプ151とインク排出キャップ152とを合わせたものが本発明に係る液体排出手段に相当する。
この場合には、インク排出キャップ152によってノズル95を覆った状態で、加圧ポンプ151によりインクカートリッジ6a〜6d内のインクを加圧すると、インクカートリッジ6a〜6dに連通するチューブ5a〜5dからサブタンク4を経てインクジェットヘッド3に至るインク流路(液体供給流路)内のインクが、上流側から下流側に向けて加圧され、この加圧力によりノズル95からインク排出キャップ152にインクジェットヘッド3内のインクが強制的に排出される。
さらに、インク漏れが検知された気体透過膜60aに対応するインクカートリッジ6a〜6d内のインクを加圧する際には、インク漏れが検知されていない気体透過膜60aに対応するインクカートリッジ6a〜6d内のインクを加圧する時間よりも長い時間加圧するなどして、インク漏れが検知された気体透過膜60aに対応するノズル95からインク漏れが検知されていない気体透過膜60aに対応するノズル95からよりも大量のインクを排出させる。これにより、インク漏れが検知された気体透過膜60aに対応するノズル95から、インクジェットヘッド3内のインクとともに、インク流路47a〜47dのうちインク漏れが検知された気体透過膜60aに対応するものの内部に溜まった気体を排出することができる。さらに、インク漏れが検知されていない気体透過膜60aに対応するノズル95からインクジェットヘッド3内のインクが必要以上に排出されないため、無駄なインクの消費を抑えることができる。
なお、本実施の形態においては、吸引ポンプ14によりノズル95からインクジェットヘッド3内のインクを吸引することによりインクジェットヘッド3内のインクを排出し、変形例3においては、加圧ポンプ151により液体供給流路内のインクを上流側から下流側に向けて加圧することによってインクジェットヘッド3内のインクを排出したが、これらの両方を同時に行うことによってインクジェットヘッド3内のインクを排出してもよい。
また、本実施の形態では、隣接する個別気体室63a〜63dの間、すなわち、隣接する気体透過膜60aの間に隔壁66が設けられていたが、隔壁66は設けられていなくてもよい。この場合でも、気体透過膜60aから漏れ出したインクは対応する不織布55に吸収されるため、不織布55が吸収可能な量を超えてインクが漏れ出すまでは、4つの気体透過膜60aから漏れ出したインクが他の気体透過膜60aに流れ込むことはない。
以上の説明では、パージを行う際に、インク漏れが検知された気体透過膜60aに対応するノズル95からインク漏れが検知されていない気体透過膜60aに対応するノズル95からよりも大量のインクを排出させることによって、インクジェットヘッド3内の増粘したインクとともにインク流路47a〜47d内の気体を排出させたが、排出させるインクの量を変更せず、例えば、インクを吸引又は加圧する圧力を変更するなどして、インク漏れが検知された気体透過膜60aに対応するノズル95から、インクジェットヘッド3内のインクとともにインク流路47a〜47d内の気体を排出してもよい。
また、本実施の形態においては、4つの気体透過膜60aの上面にそれぞれ不織布55が配置され、不織布55の表面に一対の電極56、57が配置されていたが、各気体透過膜60aの上面に、例えばスポンジなど、不織布55以外の気体透過膜60aよりもインクの吸収性(インクの濡れ性)が高い液体吸収部材が配置されていてもよい。この場合でも、気体透過膜60aからインクが漏れ出すと、漏れ出したインクは液体吸収部材に吸収されるとともに液体吸収部材の全域に広がり、このインクを介して電極56と電極57とが導通する。
さらには、液体漏れ検知手段は、上述したような液体吸収部材と一対の電極を含む構成には限られず、気体透過膜60aからインクが漏れ出したことを検知することが可能な構成であれば、他の構成であってもよい。
以上では、ノズルから4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクを吐出するプリンタに本発明を適用した例について説明したが、例えばブラックのインク等、1種類のインクのみを吐出するインクジェットヘッドを有するプリンタに本発明を適用することも可能である。この場合には、気体透過膜が1つのみ設けられることとなるため、パージを行う際に、気体透過膜におけるインク漏れが検知されていれば、ノズルから所定量よりも大量のインクを吸引することにより、実施の形態と同様、ノズルからインクジェットヘッド内のインクとともに液体供給流路内の気体を排出することができる。さらに、気体透過膜においてインク漏れが検知されたときに、吸引ポンプによる排気流路内の気体の吸引を実行しないことにより、実施の形態と同様、無駄な電力消費を抑えることができる。
さらには、本発明をノズルからインク以外の液体を吐出する液体吐出装置に適用することも可能である。