JP2009050051A - 圧電素子の駆動回路およびポンプ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電源側電圧値と負荷側の仕様電圧値との比率を超えた巻数比としたトランス(電磁結合トランス2)、スイッチ回路3、リアクタンス素子4、パルス発生回路5、および、デューティ比制御回路6を有する。スイッチ回路3は、電磁結合トランス2の一次側で電源電圧Vddを駆動周波数でスイッチング動作する。リアクタンス素子4は、電磁結合トランス2の二次側で圧電素子PZと並列に接続され、圧電素子PZの等価回路におけるキャパシタンス成分および電磁結合トランス2のインダクタンス成分と駆動周波数で並列共振する共振回路を構成する。デューティ比制御回路6は、圧電素子PZの駆動電圧の値が負荷側の仕様電圧値以下の範囲内となるように、スイッチ回路3に入力される駆動パルスのデューティ比を制御する。
【選択図】図1
Description
機械的な共振周波数に合致した周波数のみで動作しつつ、アクチュエータの機械的出力を制御する駆動回路を使用する必要がある。
そのために、上記特許文献2に記載された駆動回路では、トランスの一次側の電源供給をインダクタンス素子を介して行い、しかも、当該インダクタンス素子と、負荷となる超音波モータの等価回路における並列容量とを並列共振させて、当該並列容量を見かけ上キャンセルさせている。
例えば圧電素子を用いた流体ポンプ装置において、移送する流体量を制御しなければならないことがあるが、このとき圧電素子の入力電力が可変できることが必要となる。
特許文献2の従来技術には、圧電素子と共振回路を構成する可変インダクタンス素子が設けられ、その共振回路の共振周波数を最適化する意図で、スイッチング素子を駆動するパルス信号のデューティ比を変える制御が開示されている。しかし、このようにして駆動デューティ比を決めた場合、駆動デューティ比の最適値が消費電力抑制のための値とはならず、当該駆動回路の消費電力は大きい。
前記トランスは、電源側電圧値と負荷側の仕様電圧値との比率を超えて負荷側の二次巻線数の割合が電源側の一次巻線数に対し多い巻数比を有する。
前記スイッチ回路は、前記トランスの一次側で電源電圧を駆動周波数でスイッチング動作し、前記トランスの二次側に接続されている圧電素子に駆動電圧を印加する。
前記トランスは一次側巻線回路と二次側巻線回路を有し、前記スイッチ回路がスイッチング動作し一次側巻線回路に入力された電圧を、二次側巻線回路に変圧して出力し、また、前記スイッチ回路がオフ動作のときは二次側巻線回路側から前記トランスを見たときのインダクタンス成分が共振動作時の共振回路を構成する。
前記リアクタンス素子は、前記トランスの二次側で前記圧電素子と並列に接続され、前記圧電素子の等価回路におけるキャパシタンス成分および前記トランスのインダクタンス成分と前記駆動周波数で並列共振する共振回路を構成する素子である。
前記パルス発生回路は、例えば共振周波数と同等の周波数で駆動パルスを発生し出力する回路である。
前記デューティ比制御回路は、前記パルス発生回路から駆動パルスを入力し、例えば入力される電圧制御信号に応じて、当該駆動パルスのデューティ比を、前記駆動電圧の値が前記負荷側の仕様電圧値以下の範囲内となるように制限し、当該デューティ比が制限された駆動パルスを前記スイッチ回路に出力する回路である。
このとき、トランスの二次側で圧電素子に並列に接続されているリアクタンス素子と、圧電素子のキャパシタンス成分およびトランスのインダクタンス成分とからなる共振回路が駆動周波数で並列共振する。スイッチ回路がスイッチング動作し、トランスの二次側の電位をある所定電位に変化させる。
圧電素子の駆動電圧は、本来、トランスの巻数比に応じて大きくなるが、本発明では、当該巻数比を、電源側電圧値と負荷側の仕様電圧値との比率を超えて、二次巻線の巻数の割合がより大きくなるように設定している。よって、その分、デューティ比制御回路が駆動パルスのデューティ比を小さくしても、圧電素子に必要な駆動電圧の振幅を維持できる。一方、スイッチ回路で消費される電力は駆動パルスがオンする時間の消費電力を時間平均したものであるため、駆動パルスのデューティ比が相対的に小さくなると、その分、スイッチ回路で消費される電力が低減される。
このとき駆動回路において、前述したように、デューティ比制御回路により入力電力を変化させると、これにより流体の吐出口から排出される速度等が変化する。したがって、ポンプ装置から出力される流体の速度等を任意に変更可能である。
停止制御回路は、スイッチ回路のスイッチング動作を、例えば、駆動周波数のm(任意の自然数)倍の周期で断続的に停止させることができる。したがって、その周期的に停止されたときだけはエネルギーの補充が行われない。停止制御回路は、このエネルギーの補充が行われない停止動作の頻度(周期)を変えることで、圧電素子の入力電力の制御を行うように構成するとよい。
本実施形態は、本発明の「圧電素子の駆動回路」の実施形態に関する。
図1(A)および図1(B)に、圧電素子の駆動回路の回路ブロック図を示す。
図1(A),図1(B)に図解する駆動回路1A,1Bは、それぞれ、電磁結合トランス2と、スイッチ回路3と、リアクタンス素子4と、パルス発生回路5と、デューティ比制御回路6とを有する。
図1(A),図1(B)に示す駆動回路1A,1Bは、それぞれ、電磁結合トランス2を有する。電磁結合トランス2は、一次側巻線回路と二次側巻線回路、ならびに、二つの巻線回路の間に1以上の被透磁率を有する磁性材を有し、二つの巻線回路は磁性材で磁気結合されている。
電磁結合トランス2は、電源側電圧値と負荷側の仕様電圧値との比率を超えた巻数比を有する。より詳細には、上記比率で規定される一次巻線W1と二次巻線W2の巻線数の通常比率に比べて、本実施形態の電磁結合トランス2では、負荷側の二次巻線W2の巻線数の割合が電源側の一次巻線W1の巻線数の割合に対し多い巻数比となっている。
パルス発生回路5で発生したパルス信号が、デューティ比制御回路6によりデューティ比の制御を受けた後、スイッチ回路3に入力可能に、デューティ比制御回路6にパルス発生回路5が接続され、スイッチ回路3にデューティ比制御回路6が接続されている。
駆動回路1A,1Bを駆動するための電源電圧Vddおよび基準電圧(例えば接地電圧GND)は、外部の電源回路(POWER)10から供給され、また、デューティ比制御回路6の電圧制御信号Vcontも外部から与えられる。
パルス信号により制御されるスイッチ回路3は、一次巻線W1に電流を流すオン状態、電流を流さないオフ状態を、入力される上記パルス信号により規定される所定の周波数で繰り返し一次巻線W1に設定するように動作する。このとき例えば、上記オン状態がパルスのハイレベルに、上記オフ状態がパルスのローレベルに対応する。
また他の特徴としては、電磁結合トランス2の巻数比を通常比率より大きくしたことによって、駆動パルスのオン時間を短くできることである。この点の詳細は後述する。
以上より、極めて効率的な動作が可能で、低消費電力である。
共振回路へのリアクタンス素子4の追加は、圧電素子PZと並列にコンデンサを接続する、あるいは、圧電素子PZと並列または直列にインダクタを接続することにより実施可能である。
図2に示すパルス発生回路5は、2つの電流源I1,I2、増幅器AMP、比較器CMP1、スイッチSW1、キャパシタC1および抵抗R1を有する。
電源回路10の電源電圧Vddの供給端子と、電源回路10の接地電圧GNDの供給端子との間に、電流源I1とキャパシタC1が直列接続されている。同様に、電源電圧Vddの供給端子と接地電圧GNDの供給端子間に、電流源I2と抵抗R1が直列接続されている。
比較器CMP1の非反転入力「+」が電流源I1とキャパシタC1の接続点に接続され、当該接続点の電圧V1を入力可能となっている。比較器CMP1の反転入力「−」が電流源I2と抵抗R1の接続点に接続され、当該接続点の電圧V2を入力可能になっている。
スイッチSW1はキャパシタC1の保持電圧を放電可能に、比較器CMP1の非反転入力「+」と接地電圧GNDの供給端子間に接続されている。スイッチSW1は比較器CMP1の出力に応じて制御される。
電圧V1は増幅器AMPにより増幅された後、パルス発生回路5から出力可能になっている。増幅器AMPは、入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いものであって、通常、バッファアンプと呼ばれるインピーダンス変換の役目を果たす。
電磁結合トランス2の一次巻線W1が、電源電圧Vddの供給端子と上記ダイオードD1のアノード間に接続されている。ダイオードD1のカソードと接地電圧GNDの供給端子との間にNMOSトランジスタQ1が接続されている。NMOSトランジスタQ1のゲートが比較器CMP2の出力に接続されている。
ダイオードD1は、NMOSトランジスタQ1のボディダイオードによって、NMOSトランジスタQ1のゲート電圧(信号Vg)がローレベルであるときに駆動電流が流れてしまうことを避ける、逆流防止のダイオードである。ボディダイオードの影響が無視出来る場合、D1を省略可能である。
図2の抵抗R1に流れる電流が電流源I2で発生するため、図3(A)のように、抵抗R1には一定の安定した電位差(電圧V2)が生じ、コンデンサC1の両端には電流が印加される経過時間に比例して増加する電位差(電圧V1)が生じる。電圧V1はキャパシタC1を充電する間は単調増加する。
比較器CMP1は、抵抗R1の両端の電圧V2とキャパシタC1の保持電圧(電圧V1)とを比較している。比較器CMP1は、キャパシタC1の保持電圧(電圧V1)が抵抗R1の両端の電圧V2を上回ったときに、通常はオープン状態にあるスイッチSW1をオンにする(図3(B))。すると、キャパシタC1に蓄えられた電荷はスイッチSW1を経由して放電されるので、キャパシタC1の保持電圧(電圧V1)はゼロとなる(図3(A))。
キャパシタC1の保持電圧(電圧V1)がゼロとなると、比較器CMP1がスイッチSW1をオフし、キャパシタC1の保持電圧(電圧V1)が再び単調増加する。
上述した動作が繰り返されることで、図3(C)のように、図2のパルス発生回路5からは鋸波形状のパルス波Vrampが出力される。パルス波Vrampの発振周波数はキャパシタC1の値、電流源I1,I2の各電流値、および、抵抗R1の値を、それぞれ適切な値に設定することによって、電磁結合トランス2の二次側の共振周波数にほぼ一致させている。
デューティ比制御回路6としての比較器CMP2は、パルス波Vrampと電圧制御信号Vcontの電圧値を比較し(図3(C))、比較結果に応じて、図3(D)に示すように、スイッチ回路3のオン状態とオフ状態を制御する信号Vgを出力する。
ここで、信号Vgがハイレベルにあるとき、スイッチ回路3は出力電流を流すオン状態をとる。逆に、信号Vgがローレベルにあるとき、スイッチ回路3は出力電流を流さないオフ状態をとる。
スイッチ回路3のオン状態の時間が短いときには、電磁結合トランス2の一次側の漏れインダクタンスにより、スイッチ(NMOSトランジスタQ1)がオン状態となってから、図3(F)に示すように、一次側電流Idは直線状に立ち上がっていく。
電磁結合トランス2の一次側には、図3(E)に示すように、一次側電流Idに応じてピーク値が制限された擬似正弦波が出現する。そして、電磁結合トランス2の二次巻線W2には、図3(G)に示すように、その巻数比に応じた大きさの正弦波が駆動電圧Voutとして出現する。
図4(A)〜図4(C)と、図5(A)〜図5(C)に、信号Vgのデューティ比によって一次側電流Idと、二次側電圧、即ち圧電素子PZの駆動電圧Voutが変化する様子を示す。各図の(A)が信号Vgの波形、(B)が一次側電流Idの波形、(C)が駆動電圧Voutの波形を、それぞれ表している。
これに対し、図3(C)において電圧制御信号Vcontを相対的に大きくすると、図5(A)の信号Vgのデューティ比が大きくなるため、図5(B)の一次側電流Idのピーク値が大きくでき、その結果、図5(C)の駆動電圧Voutの振幅を大きく制御できる。
このように、本実施形態では、スイッチ回路3を駆動するパルス信号のデューティ比を変化させて、圧電素子PZの駆動振幅を適切な値に制御できる。
圧電素子PZを駆動するときの共振周波数fdrvはスイッチ回路3内部のトランジスタ(NMOSトランジスタQ1)がオフのときの状態での共振回路で設定する。駆動回路の消費電力を抑えるためである。
共振周波数fdrvは、圧電素子のキャパシタンス成分Cpzと並列に接続されたリアクタンス成分Xext、それと電磁結合トランス2の二次側漏れインダクタンス成分L2と電磁結合トランス2の相互インダクタンスMにより下記の式(1-1)または式(1-2)で表される。式(1-1)はリアクタンス成分Xextが容量性のとき、式(1-2)はリアクタンス成分Xextが誘導性のときの、各共振周波数fdrvを表している。
fdrv=1/(2π((L2+M)×(Cpz+Xext))1/2) …(1-1)
fdrv=1/(2π((L2+M)Xext/(L2+M+Xext)×Cpz)1/2)…(1-2)
このときの共振周波数は、M(on)=L1×M/(L1+M)と表されるオン時相互インダクタンスM(on)を、前述した式(1-1)または式(1-2)中の“M”と置き換えることにより定式化できる。
このためNMOSトランジスタQ1がオン状態なると、スイッチ回路3はNMOSトランジスタQ1がオフ状態で設定された共振周波数fdrvよりも速い応答を示し、駆動電流が素早く立ち上ることになる。
NMOSトランジスタQ1のオン状態が長く続くと、駆動電流はピークを過ぎて減少に転じ振動的な振る舞いをする。
電磁結合トランス2の二次側共振回路にて電圧振幅を制御するためには、NMOSトランジスタQ1のオン期間は、NMOSトランジスタQ1がオン状態となり駆動電流(一次側電流Id)が流れ始めてから、一次側電流Idの増加の傾きが次第に減少し、ピーク値を迎えるまででよい。駆動電流がピーク値となれば、電磁結合トランス2の二次側共振回路も電圧振幅がピーク値となるためである。
駆動電流がピーク値を過ぎても出力トランジスタをオン状態に保持することは、電磁結合トランス2の二次側の共振電圧を制御する点で意味はなくなり、無駄に駆動電力を消費することになる。
このようにデューティ比制御回路6による駆動パルスのデューティ比制御によって、NMOSトランジスタQ1のオン状態の時間を制限することで、圧電素子PZの入力電力を、より低消費電力となる様に制御することができる。
図6に図解する回路は、前述した図2に図解した回路と、スイッチ回路3の構成が異なる。図6では図示を省略しているが、前述した図2の回路と同様、スイッチ回路3に対しパルス発生回路5がデューティ比制御回路6を介して接続され、デューティ比制御回路6でスイッチ回路3の駆動パルスのデューティ比を制御する。
また、図2の信号Vgに代えて、図6では入力A,入力Bを用いている。入力Aと入力Bは、例えば位相が半周期ずれて、各入力につながるトランジスタを差動的に動作させる信号である。不図示のデューティ比制御回路6は、入力される電圧制御信号Vcontに応じて、入力Aと入力Bの各々に対してデューティ比を制御する。
これに対し、図6の回路では、電磁結合トランス2の一次側にて、一次側電流Idが一次巻線W1を一方の向き(正の向き)に流れるオン状態、逆向き(負の向き)に流れるオン状態、および、一次側電流Idが一次巻線W1に流れないオフ状態の3つの状態がある。このような駆動を、一般にはバイポーラ駆動という。
圧電素子PZ1は、補助コンデンサCaxu.1と第2巻線コイルW21と共に共振回路を形成している。同様に、圧電素子PZ2は、補助コンデンサCaxu.2と第2巻線コイルW22と共に他の共振回路を形成している。2つの共振回路は、共振周波数が同じとなるように補助コンデンサCaxu.1とCaxu.2の値がそれぞれ決められている。このとき圧電素子PZ1の等価容量成分と補助コンデンサCaxu.1との合成容量と、第2巻線コイルW21のインダクタンスとにより共振回路の共振周波数が決められ、圧電素子PZ2の等価容量成分と補助コンデンサCaxu.2との合成容量と、第2巻線コイルW22のインダクタンスとにより、他の共振回路の共振周波数が決められる。
中点ノードNが接地電圧GNDに接続されている。これは、静電気による影響を排除するためである。なお、中点ノードNを接地電圧GNDに接続することは、当該中点ノードNを通って接地電圧GNDに至る経路が高周波駆動時の放電経路にはならないため、動作に影響しない。
スイッチ回路3は、2つのPMOSトランジスタP1とP2、2つのNMOSトランジスタN1とN2を有する。一次巻線W1がスイッチ回路3内部のノードND1とND2との間に接続されている。
トランジスタP2のソースが電源電圧Vddの供給端子に接続され、ドレインがノードND2に接続され、ゲートがノードND1に接続されている。
トランジスタN1のドレインがノードND2に接続され、ソースが接地電圧GNDの供給端子に接続され、ゲートが入力Aの供給端子に接続されている。
トランジスタN2のドレインがノードND1に接続され、ソースが接地電圧GNDの供給端子に接続され、ゲートが入力Bの供給端子に接続されている。
また、入力Aが“L”の状態で入力Bが“H”になると、トランジスタN2とP2がオンするため、オン状態のトランジスタP2、ノードND2、一次巻線W1、ノードND1、オン状態のトランジスタN2を通って負電流I(-)が接地電圧GNDへ流れる(図6参照)。
入力Bの“H”の期間は、図7(B)に示すように、入力Aのパルスと180度位相が異なる同一周期Tのパルスの、短い持続時間(ON(-)で表示)により規定される。2つのパルスの持続時間(いわゆるパルス幅)は異なってもよいが、ここでは同じとする。
ON(+)時間と次のON(-)時間との間、さらに、当該ON(-)時間と次のON(+)時間との間には、それぞれ、一次巻線W1に電流が流れない一定のオフ状態の期間が存在する。
オフ状態の期間は、図6に示すスイッチ回路3を構成する4つのトランジスタN1,N2,P1,P2がすべてオフすることから、一次巻線W1の両端からスイッチ回路3を見てハイインピーダンス状態となる。よって、オフ状態の期間にはトランジスタのオフリーク程度しか電流が流れないため、実質的に消費電力はゼロに等しい。
パルスをオンして電流が流れ始め、続いて飽和するが、本例では、その飽和時点でパルスをオフするようにON(+)時間、ON(-)時間が決められている。言い換えると、電流の飽和時点でパルスをオフするようにデューティ比が設定されている。このように正電流I(+)と負電流I(-)は、意図的に未飽和領域を用いる場合を除くと、通常、少なくとも飽和するまで流す。ただし、飽和後は、それ以上パルス幅を長くしても動作的に余り意味がなく、電力消費が増えるだけである。よって、ON(+)時間とON(-)時間をそれぞれ最大で電流飽和の時間付近に設定することが望ましい。
一方、不図示のデューティ比制御回路6により、入力Aと入力Bのデューティ比を、飽和電流の時間で決まるデューティ比より小さくすることは可能である。
トランジスタのオン抵抗が無視できるとすると、ON(+)時間の一次側電圧Vi(+)、ON(-)時間の一次側電圧Vi(-)は、ともにほぼ電源電圧Vddの大きさ(例えば5[V]程度)となる。この間欠的な短い時間の電圧は、強制的に一次側の動作で一次巻線W1に設定される。一方、その間のオフ期間は一次巻線W1に対し一次側の電圧強制力が解除されるが、二次側の影響で共振回路の共振周波数に依存した電圧が一次側にも現れる。
完全に周波数が一致していない場合、間欠的な一次側の電圧設定時に一次側電圧Viの波形の不連続点が生じるが、動作周波数自体は一次側の電流駆動周波数で決まるため、一定の周波数で圧電素子を駆動すること自体は可能である。ただし、この場合、駆動のスムーズさは失われ、効率としても低下する。
また、電磁結合トランス2の一次側と二次側の巻数比によって、電圧の昇圧比率が決められる。本例では、電磁結合トランス2の巻数比を一次(W1):二次(W21):二次(W22)=1:6:6としているため、図7(E)および図7(F)に示すように、互いに逆相で6倍に昇圧された駆動電圧Vo1とVo2が得られる。
駆動電圧Vo1により圧電素子PZ1が動作し、駆動電圧Vo2により圧電素子PZ2が、圧電素子PZ1とは機械的変位が逆相で動作する。
特許文献2では、フル駆動のときのデューティ比を50[%]と規定しているが、図7では、フル駆動のときのデューティ比を100[%]と規定した。
図8(A)および図8(B)から、駆動デューティ比が20[%]以下で圧電素子PZを駆動すると、効率的な省電力動作ができることがわかる。
電源電圧Vddは5.0[V]なので、消費電力は35[mW]とわずかな値である。
電磁結合トランス2を使用する場合には、電源として与えられる1次側電圧値と、負荷に与える駆動電圧としての二次側電圧値の比率を、1次側巻線数と二次側巻線数の比率と同等にする考え方が一般的である。
本発明では、電源電圧Vddは5.0[V]であり、負荷側となる圧電素子の駆動電圧は30[Vp-p]、つまり15[V0-p](ボルト・ゼロ−ピーク)であるから、一般的な考えでは、電磁結合トランス2の巻数比は1:3となるところを、あえて1:6としている。そのため駆動デューティ比を極端に低下させて運転することができる。駆動デューティ比を低下させるとそれだけ低消費電力となるのは、図8(B)から明らかである。よって、本実施形態では、電磁結合トランス2の巻数比を通常より大きくした(本例では2倍にした)ことにより、その分、電力消費が低減されている。
図6に示す回路のスイッチ回路3(Hブリッジ出力部)では、PMOSトランジスタP1,P2とNMOSトランジスタN1,N2を組み合わせた回路例を挙げた。このような回路は、ディスクリートの電子部品を回路基板に実装させる回路である必要は必ずしもなく、何らかのIC内部に形成することができる。
以上の本実施形態では、携帯機器に適応した、小型かつ低消費電力の圧電素子の駆動回路が実現できる。
第2実施形態では、第1実施形態の駆動回路に停止制御回路を追加する。
図9(A)および図9(B)に、図1(A)と図1(B)に対し停止制御回路(STC)7を、それぞれ追加したブロック図を示す。また図10に、図1(A)に対する図2と同様に、より詳細な回路図を示す。
本実施形態の駆動回路1A,1Bは、図9(A)と図9(B)に示すように、スイッチ回路3に入力される駆動パルスを周期的に停止する停止制御回路7を有する。停止制御回路7はパルス発生回路5における駆動パルスの発生を周期的に停止する構成でもよいが、ここでは、デューティ比制御回路6とスイッチ回路3の間に停止制御回路7を設け、所定の期間だけデューティ比制御回路6からの駆動パルスを許可し、または、無効化する構成となっている。この所定の期間の長さおよび周期は任意であり、駆動回路1A,1Bに外部から与えられる停止制御信号Vstcにより決められる。停止制御信号Vstcは、これを発生する回路を設けてもよいし、CPU等で発生させてもよい。
アンド回路ANDの一方入力がデューティ比制御回路6を構成する比較器CMP2の出力に接続され、他方入力に停止制御信号Vstcが印加される。図10においては、停止制御信号Vstcが、停止制御信号発生回路12で発生する。停止制御信号発生回路12は、電源電圧Vddと接地電圧GNDとの間に抵抗R2とスイッチSW2を直列接続し、第2スイッチSW2を、例えば不図示のCPU等で制御する構成となっている。CPU等の指令により、第2スイッチSW2のオフ時間(駆動パルスの許可期間)とオン時間(駆動パルスの無効化期間)と、このスイッチングの周期(制御タイミング)が決められる。
この波形では一例として停止期間を共振周波数の周期のm倍(ここでは3倍)として入力Aと入力Bのそれぞれで、駆動パルスの発生頻度をm回(ここでは3回)に1回に減らしている。そのため駆動パルスを省略した停止時には矢印で示す昇圧が行われないため、銅損等により発振波形の振幅が徐々に低下する。そして、次の駆動パルスの印加で減衰した波形振幅が回復している。
本実施形態は、駆動回路の適用例として、ポンプ装置を示すものである。本発明のポンプ装置は、エアその他の気体、液体などの流体のポンプ装置として広く適用可能であるが、ここでは、特に、発熱した空冷対象物(例えばIC等の電子デバイス)を空冷する空冷装置、あるいは、細い管に一定の空気流を起こす装置等に応用できるエアポンプ装置を一例として説明する。
図解する空冷装置(エアポンプ装置)30は、圧電素子としての圧電体ユニット31、保護リング32、ダイヤフラム33、第1スペーサ34、中板35、第2スペーサ36、天板37を有する。
第1スペーサ34は、例えばステンレス等の腐食に強く高剛性の材料からなり、内部空間がポンプ室34Aとなるようにリング形状に形成されている。
ダイヤフラム33は、圧電体ユニット31の圧電体が振動するのに合わせて振動する振動部材の一種であり、薄くて変形自在であるが強度的には強い材質が用いられる。またダイヤフラム33は、第1スペーサ34との接触面で気密性を高める役目もある。
第2スペーサ36は、例えば四方からエアの吸入経路を確保する内部の空間(4つの通路)が形成されている。4つの通路の先端はほぼ閉じられているが、小さい吸入口が開口している。また、天板37の中央にエアの吐出口37Aが開口している。これにより、吐出口37Aと連通口35Aに連通するベンチュリノズル部36Aが第2スペーサ36の中央部に形成される。
圧電体ユニット31によってゆっくりダイヤフラム33を上下させた場合、吸引によってポンプ室34Aの容積が大きくなり外部から図13(A)に示す経路でエアが入ってくる。また、吐出によってポンプ室34Aの容積が小さくなり内部のエアが、図13(B)のように連通口35A、ベンチュリノズル部36Aを通って吐出口37Aから勢いよく吐き出される。
エアポンプ装置30は、上面視が20[mm]程度、厚さが1[mm]程度の小型の空冷装置として用いることができる。駆動回路は第1実施形態に既に説明した図6のものを使用し、20[VP−P]、20[kHz]駆動の場合、吐出口37Aから噴出する連続エア流の静圧が1[Pa]以上が得られた。
さらに本発明の圧電素子の駆動回路は、液晶等の表示装置画面のタッチセンサにクリック感を与える装置、さらには、電磁結合トランス2の二次側巻線回路を2回路に増やすことで、スイッチ回路3を増やすことなく同相駆動出力と同時に、逆相駆動出力を得ることができるので、逆相駆動による圧電モータへの応用も可能である。
Claims (4)
- 電源側電圧値と負荷側の仕様電圧値との比率を超えて負荷側の二次巻線数の割合が電源側の一次巻線数に対し多い巻数比を有するトランスと、
前記トランスの一次側で電源電圧を駆動周波数でスイッチング動作し、前記トランスの二次側に接続されている圧電素子に駆動電圧を印加するスイッチ回路と、
前記トランスの1次側または二次側で前記圧電素子と並列に接続され、前記圧電素子の等価回路におけるキャパシタンス成分および前記トランスのインダクタンス成分と前記駆動周波数で並列共振する共振回路を構成するリアクタンス素子と、
前記スイッチ回路の駆動パルスを発生するパルス発生回路と、
前記駆動パルスを入力し、当該駆動パルスのデューティ比を、前記駆動電圧の値が前記負荷側の仕様電圧値以下の範囲内となるように制限し、当該デューティ比が制限された駆動パルスを前記スイッチ回路に出力するデューティ比制御回路と、
を有する圧電素子の駆動回路。 - 前記スイッチ回路のスイッチング動作を任意の期間、周期的に停止する停止制御回路を有する
請求項1に記載の圧電素子の駆動回路。 - 圧電素子の圧電体で、または、当該圧電体とともに振動する振動部材で、一方の面が塞がれたポンプ室を有し、前記ポンプ室の流体吸入口から吸い込んだ流体を吐出口から排出するポンプと、
当該ポンプの前記圧電素子を振動させて駆動する駆動回路と、を備え、
前記駆動回路は、
電源側電圧値と負荷側の仕様電圧値との比率を超えて負荷側の二次巻線数の割合が電源側の一次巻線数に対し多い巻数比を有するトランスと、
前記トランスの一次側で電源電圧を駆動周波数でスイッチング動作し、前記トランスの二次側に接続されている圧電素子に駆動電圧を印加するスイッチ回路と、
前記トランスの1次側または二次側で前記圧電素子と並列に接続され、前記圧電素子の等価回路におけるキャパシタンス成分および前記トランスのインダクタンス成分と前記駆動周波数で並列共振する共振回路を構成するリアクタンス素子と、
前記スイッチ回路の駆動パルスを発生するパルス発生回路と、
前記駆動パルスを入力し、当該駆動パルスのデューティ比を、前記駆動電圧の値が前記負荷側の仕様電圧値以下の範囲内となるように制限し、当該デューティ比が制限された駆動パルスを前記スイッチ回路に出力するデューティ比制御回路と、
を有するポンプ装置。 - 前記駆動回路は、前記スイッチ回路のスイッチング動作を任意の期間、周期的に停止する停止制御回路を有する
請求項3に記載のポンプ装置。
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