JP2009050051A - 圧電素子の駆動回路およびポンプ装置 - Google Patents

圧電素子の駆動回路およびポンプ装置 Download PDF

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Abstract

【課題】圧電素子の入力電力が変更可能で省電力な駆動回路を提供する。
【解決手段】電源側電圧値と負荷側の仕様電圧値との比率を超えた巻数比としたトランス(電磁結合トランス2)、スイッチ回路3、リアクタンス素子4、パルス発生回路5、および、デューティ比制御回路6を有する。スイッチ回路3は、電磁結合トランス2の一次側で電源電圧Vddを駆動周波数でスイッチング動作する。リアクタンス素子4は、電磁結合トランス2の二次側で圧電素子PZと並列に接続され、圧電素子PZの等価回路におけるキャパシタンス成分および電磁結合トランス2のインダクタンス成分と駆動周波数で並列共振する共振回路を構成する。デューティ比制御回路6は、圧電素子PZの駆動電圧の値が負荷側の仕様電圧値以下の範囲内となるように、スイッチ回路3に入力される駆動パルスのデューティ比を制御する。
【選択図】図1

Description

本発明は、駆動電圧が可変でき、かつ、低消費電力となる高効率な圧電素子の駆動回路と、圧電素子の振動により流体の移送を行うポンプ装置とに関する。
圧電素子は、圧電材料に電界を印加すると撓むため印加電圧に応じて機械的運動を生じる。この電気エネルギーを運動エネルギーに変換する特性を利用して、圧電素子がアクチュエータ、モータ等に広く応用されている。
振動波モータの圧電素子の駆動回路として、トランスの一次側コイルに対して共振回路を構成するコンデンサ等の共振素子を接続し、かつ、一次側の駆動周波数を可変とした駆動回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。
近年、圧電素子単体ではなく、周辺構造体との結合振動モードを利用する新しいアクチュエータが提案されている。このようなアクチュエータでは圧電素子と周辺構造体とが機械的に結合して振動するので、このときの結合振動モードの挙動は複雑で、例えば電気的共振点は1つではなく、単なる高次の関係ではない周波数の共振点が複数存在する。このようなアクチュエータでは、機械的な共振周波点のQ値が高くなることが多く、アクチュエータが持つ機械的な共振周波数に対して、例えば10[%]も駆動周波数が異なると、アクチュエータが発生する機械的出力量は著しく低下してしまう現象がある。
このようなアクチュエータに対し、例えば上記特許文献1に記載された駆動回路を適用した場合、広範囲に機械的出力を変化させることを目的として駆動周波数を変化させると、アクチュエータの持つ機械的な共振周波数と駆動周波数が異なってしまうので、アクチュエータからの機械的出力は殆どゼロになってしまう。
機械的な共振周波数に合致した周波数のみで動作しつつ、アクチュエータの機械的出力を制御する駆動回路を使用する必要がある。
固定の駆動周波数でアクチュエータの機械的出力を制御するためには、出力電圧可変電源と駆動回路を組み合わせる手法が考えられる。この手法も特許文献1にて述べられているが、駆動回路とは別に、比較的回路規模の大きな出力電圧可変電源回路が必要となる。
トランスの二次側の負荷(圧電素子または圧電モータ)と並列共振回路を構成する、インダクタ等のリアクタンス素子を設け、かつ、上記並列共振回路の共振周波数を駆動周波数と一致させるようにリアクタンス素子の定数を最適化することにより駆動周波数を安定化させた駆動回路が知られている(例えば特許文献2参照)。
上記特許文献2に記載された駆動回路では、駆動周波数がトランスの二次側の並列共振回路で決まるため、一次側のスイッチ回路は、二次側電圧に対して定期的に昇圧動作を行い、エネルギーを補給する役目しかしない。特許文献2には、二次側電圧のゼロクロス波形を実現するために、トランスの一次巻線の中点に電源電圧を印加し、当該一次巻線の両端を交互に接地するスイッチ回路が開示されている。
特許文献2に開示されている駆動回路は、トランスの二次側に発生する昇圧された電圧をきれいな正弦波にすることによって、リップルによる高調波成分を抑圧して損失を低減することを課題としている。
そのために、上記特許文献2に記載された駆動回路では、トランスの一次側の電源供給をインダクタンス素子を介して行い、しかも、当該インダクタンス素子と、負荷となる超音波モータの等価回路における並列容量とを並列共振させて、当該並列容量を見かけ上キャンセルさせている。
このような構成および動作の駆動回路は、リップル除去および損失の低減が可能であり、また、トランスの一次側に接続されたスイッチング素子の駆動デューティ比を50[%]と単純にすることができる。
特公平05−16277号公報 特許第2976489号公報
しかしながら、上記特許文献2に記載の駆動回路など、スイッチング素子の駆動デューティ比を固定した駆動回路では、回路外部に可変電圧電源を設けない限り、圧電素子の駆動電圧を可変することができず、圧電素子の入力電力を可変することができない。
例えば圧電素子を用いた流体ポンプ装置において、移送する流体量を制御しなければならないことがあるが、このとき圧電素子の入力電力が可変できることが必要となる。
一方で、圧電素子を利用したアクチュエータの用途が、従来の据え置き型機器向けだけでなく、携帯用機器向けにも広がることが考えられるが、このときは駆動回路の省電力化および小型化も重要な要素となる。
特許文献2の従来技術には、圧電素子と共振回路を構成する可変インダクタンス素子が設けられ、その共振回路の共振周波数を最適化する意図で、スイッチング素子を駆動するパルス信号のデューティ比を変える制御が開示されている。しかし、このようにして駆動デューティ比を決めた場合、駆動デューティ比の最適値が消費電力抑制のための値とはならず、当該駆動回路の消費電力は大きい。
本発明が解決しようとする課題は、圧電素子の入力電力が変更可能であり、低消費電力な駆動回路を実現することである。また、当該駆動回路を含む流体のポンプ装置を実現することである。
本発明に係る圧電素子の駆動回路は、トランス、スイッチ回路、リアクタンス素子、パルス発生回路、および、デューティ比制御回路を有する。
前記トランスは、電源側電圧値と負荷側の仕様電圧値との比率を超えて負荷側の二次巻線数の割合が電源側の一次巻線数に対し多い巻数比を有する。
前記スイッチ回路は、前記トランスの一次側で電源電圧を駆動周波数でスイッチング動作し、前記トランスの二次側に接続されている圧電素子に駆動電圧を印加する。
前記トランスは一次側巻線回路と二次側巻線回路を有し、前記スイッチ回路がスイッチング動作し一次側巻線回路に入力された電圧を、二次側巻線回路に変圧して出力し、また、前記スイッチ回路がオフ動作のときは二次側巻線回路側から前記トランスを見たときのインダクタンス成分が共振動作時の共振回路を構成する。
前記リアクタンス素子は、前記トランスの二次側で前記圧電素子と並列に接続され、前記圧電素子の等価回路におけるキャパシタンス成分および前記トランスのインダクタンス成分と前記駆動周波数で並列共振する共振回路を構成する素子である。
前記パルス発生回路は、例えば共振周波数と同等の周波数で駆動パルスを発生し出力する回路である。
前記デューティ比制御回路は、前記パルス発生回路から駆動パルスを入力し、例えば入力される電圧制御信号に応じて、当該駆動パルスのデューティ比を、前記駆動電圧の値が前記負荷側の仕様電圧値以下の範囲内となるように制限し、当該デューティ比が制限された駆動パルスを前記スイッチ回路に出力する回路である。
かかる構成の圧電素子の駆動回路によれば、スイッチ回路が、トランスの一次側で電源電圧を駆動周波数で駆動する。これにより、トランスの二次側に接続された圧電素子に、トランスの巻数比に応じた大きさの駆動電圧が印加される。
このとき、トランスの二次側で圧電素子に並列に接続されているリアクタンス素子と、圧電素子のキャパシタンス成分およびトランスのインダクタンス成分とからなる共振回路が駆動周波数で並列共振する。スイッチ回路がスイッチング動作し、トランスの二次側の電位をある所定電位に変化させる。
圧電素子の駆動電圧は、本来、トランスの巻数比に応じて大きくなるが、本発明では、当該巻数比を、電源側電圧値と負荷側の仕様電圧値との比率を超えて、二次巻線の巻数の割合がより大きくなるように設定している。よって、その分、デューティ比制御回路が駆動パルスのデューティ比を小さくしても、圧電素子に必要な駆動電圧の振幅を維持できる。一方、スイッチ回路で消費される電力は駆動パルスがオンする時間の消費電力を時間平均したものであるため、駆動パルスのデューティ比が相対的に小さくなると、その分、スイッチ回路で消費される電力が低減される。
本発明に係るポンプ装置は、圧電素子の圧電体で、または、当該圧電体とともに振動する振動部材で一方の面が塞がれたポンプ室を有し、前記ポンプ室の流体吸入口から吸い込んだ流体を吐出口から排出するポンプと、当該ポンプの前記圧電素子を振動させて駆動する駆動回路と、を備える。当該駆動回路は、上述した本発明の駆動回路と同様に、トランスと、スイッチ回路と、リアクタンス素子と、パルス発生回路、および、デューティ比制御回路とを有する。
かかる構成のポンプ装置は、例えば空冷や水冷に用いることができ、ポンプ室の一方面を塞ぐ圧電素子の圧電体に駆動回路により交流電圧が印加されると、圧電体が振動しポンプ室内の圧力が増減する。圧電体がポンプ室の空間を広げるように動作すると、ポンプ室内の圧力が下がり流体吸入口から流体が取り込まれる。つぎに圧電体がポンプ室の空間を縮めるように動作すると、ポンプ室内の流体に圧力がかかり、ポンプ内の流体が吐出口から押し出されて外部に勢いよく排出される。圧電体がポンプ室の空間を広げる動作と縮める動作を所定の周波数で繰り返すように、駆動回路により圧電素子が駆動される。
このとき駆動回路において、前述したように、デューティ比制御回路により入力電力を変化させると、これにより流体の吐出口から排出される速度等が変化する。したがって、ポンプ装置から出力される流体の速度等を任意に変更可能である。
一方、共振周波数の周期ごとに全て前記スイッチ回路を動作させるほど圧電素子の駆動電圧を必要としない場合がある。このとき、前記駆動回路に含めて、新たに停止制御回路を設けるとよい。即ち、本発明では好適に、前記スイッチ回路のスイッチング動作を任意の期間、周期的に停止する停止制御回路を有する。
停止制御回路は、スイッチ回路のスイッチング動作を、例えば、駆動周波数のm(任意の自然数)倍の周期で断続的に停止させることができる。したがって、その周期的に停止されたときだけはエネルギーの補充が行われない。停止制御回路は、このエネルギーの補充が行われない停止動作の頻度(周期)を変えることで、圧電素子の入力電力の制御を行うように構成するとよい。
本発明によれば、簡易な構成で所望の周波数で効率的な駆動が可能であり、また圧電素子への入力電力の変更と、消費電力の低減が可能な圧電素子の駆動回路と、その駆動回路を用いたポンプ装置とを提供できる。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
《第1実施形態》
本実施形態は、本発明の「圧電素子の駆動回路」の実施形態に関する。
図1(A)および図1(B)に、圧電素子の駆動回路の回路ブロック図を示す。
図1(A),図1(B)に図解する駆動回路1A,1Bは、それぞれ、電磁結合トランス2と、スイッチ回路3と、リアクタンス素子4と、パルス発生回路5と、デューティ比制御回路6とを有する。
図1(A),図1(B)に示す駆動回路1A,1Bは、それぞれ、電磁結合トランス2を有する。電磁結合トランス2は、一次側巻線回路と二次側巻線回路、ならびに、二つの巻線回路の間に1以上の被透磁率を有する磁性材を有し、二つの巻線回路は磁性材で磁気結合されている。
電磁結合トランス2は、電源側電圧値と負荷側の仕様電圧値との比率を超えた巻数比を有する。より詳細には、上記比率で規定される一次巻線W1と二次巻線W2の巻線数の通常比率に比べて、本実施形態の電磁結合トランス2では、負荷側の二次巻線W2の巻線数の割合が電源側の一次巻線W1の巻線数の割合に対し多い巻数比となっている。
図1(A)はリアクタンス素子4を電磁結合トランス2の二次側巻線回路に並列接続した図である。図1(B)はリアクタンス素子4を電磁結合トランス2の一次側巻線回路に並列接続した図である。リアクタンス素子4の耐電圧仕様やリアクタンス値に応じて、リアクタンス素子4を接続する巻線回路側を、電磁結合トランス2の一次側と二次側の何れにするかを決定すればよい。
駆動回路1A,1Bは、それぞれ、電磁結合トランス2の一次巻線W1にスイッチ回路3が接続され、電磁結合トランス2の二次巻線W2に圧電素子PZが接続されている。
パルス発生回路5で発生したパルス信号が、デューティ比制御回路6によりデューティ比の制御を受けた後、スイッチ回路3に入力可能に、デューティ比制御回路6にパルス発生回路5が接続され、スイッチ回路3にデューティ比制御回路6が接続されている。
駆動回路1A,1Bを駆動するための電源電圧Vddおよび基準電圧(例えば接地電圧GND)は、外部の電源回路(POWER)10から供給され、また、デューティ比制御回路6の電圧制御信号Vcontも外部から与えられる。
次に、駆動回路1A,1Bの概略的な動作と、共振周波数変更のための構成を説明する。ここで駆動回路1A,1Bの動作は基本的に同じである。
パルス信号により制御されるスイッチ回路3は、一次巻線W1に電流を流すオン状態、電流を流さないオフ状態を、入力される上記パルス信号により規定される所定の周波数で繰り返し一次巻線W1に設定するように動作する。このとき例えば、上記オン状態がパルスのハイレベルに、上記オフ状態がパルスのローレベルに対応する。
ここで電磁結合トランス2の一次側電流駆動の周波数(周期T)を電流駆動周波数と定義する。電流駆動周波数は、二次側の巻線回路で形成されている共振回路の共振周波数に、望ましくは一致するように設定される。ここで電流駆動周波数が共振周波数と完全に一致しなくても動作は可能であるが、後述するように、圧電素子の印加電圧波形を正弦波にして、効率良い駆動を行うには、電流駆動周波数が共振周波数と一致することが望ましい。
駆動回路1A,1Bの特徴の一つは、電磁結合トランス2の一次側の電流駆動を、上記オン状態とオフ状態を繰り返すことにより間欠的に行うことである。言い換えると、間に電流停止状態を挟んで断続的に電流を流すことにより電流駆動を行う。かかる電流駆動によって、一次側のスイッチ回路3で消費される電力は、持続時間が短いパルス電流による電力消費の時間平均であるため、比較的小さくてすむ。
また他の特徴としては、電磁結合トランス2の巻数比を通常比率より大きくしたことによって、駆動パルスのオン時間を短くできることである。この点の詳細は後述する。
パルス電流が電磁結合トランス2の一次側に一度印加されると、二次側の共振回路の共振現象により、圧電素子PZに交流電圧が印加され、そのままオフ状態に放置すると該交流電圧は次第に減衰する。この減衰は、共振回路(巻線回路)の銅損等でエネルギーが失われるため生じる。本実施形態では、望ましくは、電磁結合トランス2の二次側で圧電素子PZに与えられる交流電圧において正負のそれぞれで波高値が減衰する前の短い時間の間だけ、一次側から次のパルス電流によるエネルギー補充を行い、これが周期的に繰り返される。ただし、圧電素子PZに与えられる交流電圧がある程度減衰してから短い時間だけ周期的にエネルギー補充を行ってもよい。
本実施形態では、上記共振回路から外(例えばGND線)への放電経路がなく、実質的に外への放電は行われない。共振回路(巻線回路)の銅損等でエネルギーが失われることを一次側からの間欠的な電流駆動で補うことは既に述べたが、そのエネルギー損失を全て一次側から必要最小限補う。
以上より、極めて効率的な動作が可能で、低消費電力である。
圧電素子PZは、用途に応じて等価的な容量値の大きさが決まり、パルス発生回路5が発生するパルス信号の周波数(電流駆動周波数)を変更するだけでは、当該電流駆動周波数と、共振回路の共振周波数を一致させる、あるいは、ほぼ等しくすることは困難な場合がある。
そのため、ここでは、電流駆動周波数と、各共振回路の共振周波数を一致させる、あるいは、ほぼ等しくするために、共振回路にリアクタンス素子4を追加している。リアクタンス素子4は、圧電素子PZの等価回路におけるキャパシタンス成分および電磁結合トランス2のインダクタンス成分と(電流)駆動周波数で並列共振する共振回路を構成している。
共振回路へのリアクタンス素子4の追加は、圧電素子PZと並列にコンデンサを接続する、あるいは、圧電素子PZと並列または直列にインダクタを接続することにより実施可能である。
図2は、本実施形態に関わる具体的な回路例を、図1(A)の更に詳細な図により示すものである。図3は、図2に示す回路の動作波形図である。
図2に示すパルス発生回路5は、2つの電流源I1,I2、増幅器AMP、比較器CMP1、スイッチSW1、キャパシタC1および抵抗R1を有する。
電源回路10の電源電圧Vddの供給端子と、電源回路10の接地電圧GNDの供給端子との間に、電流源I1とキャパシタC1が直列接続されている。同様に、電源電圧Vddの供給端子と接地電圧GNDの供給端子間に、電流源I2と抵抗R1が直列接続されている。
比較器CMP1の非反転入力「+」が電流源I1とキャパシタC1の接続点に接続され、当該接続点の電圧V1を入力可能となっている。比較器CMP1の反転入力「−」が電流源I2と抵抗R1の接続点に接続され、当該接続点の電圧V2を入力可能になっている。
スイッチSW1はキャパシタC1の保持電圧を放電可能に、比較器CMP1の非反転入力「+」と接地電圧GNDの供給端子間に接続されている。スイッチSW1は比較器CMP1の出力に応じて制御される。
電圧V1は増幅器AMPにより増幅された後、パルス発生回路5から出力可能になっている。増幅器AMPは、入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いものであって、通常、バッファアンプと呼ばれるインピーダンス変換の役目を果たす。
デューティ比制御回路6は、1つの比較器CMP2から構成されている。比較器CMP2の反転入力「−」が増幅器AMPの出力に接続され、非反転入力「+」が電圧制御信号Vcontの供給端子に接続されている。電圧制御信号Vcontは、外部の可変電圧源11で発生し、デューティ比制御回路6に供給される。
スイッチ回路3は、1つのダイオードD1とNMOSトランジスタQ1から構成されている。
電磁結合トランス2の一次巻線W1が、電源電圧Vddの供給端子と上記ダイオードD1のアノード間に接続されている。ダイオードD1のカソードと接地電圧GNDの供給端子との間にNMOSトランジスタQ1が接続されている。NMOSトランジスタQ1のゲートが比較器CMP2の出力に接続されている。
ダイオードD1は、NMOSトランジスタQ1のボディダイオードによって、NMOSトランジスタQ1のゲート電圧(信号Vg)がローレベルであるときに駆動電流が流れてしまうことを避ける、逆流防止のダイオードである。ボディダイオードの影響が無視出来る場合、D1を省略可能である。
つぎに、以上のように構成されている駆動回路1Aの動作を、図3(A)〜図3(G)を適宜参照しつつ説明する。
図3(A)に、図2の比較器CMP1の入力電圧である電圧V1とV2の波形を示す。また、図3(B)に、スイッチSW1のゲート電圧波形を示す。
図2の抵抗R1に流れる電流が電流源I2で発生するため、図3(A)のように、抵抗R1には一定の安定した電位差(電圧V2)が生じ、コンデンサC1の両端には電流が印加される経過時間に比例して増加する電位差(電圧V1)が生じる。電圧V1はキャパシタC1を充電する間は単調増加する。
比較器CMP1は、抵抗R1の両端の電圧V2とキャパシタC1の保持電圧(電圧V1)とを比較している。比較器CMP1は、キャパシタC1の保持電圧(電圧V1)が抵抗R1の両端の電圧V2を上回ったときに、通常はオープン状態にあるスイッチSW1をオンにする(図3(B))。すると、キャパシタC1に蓄えられた電荷はスイッチSW1を経由して放電されるので、キャパシタC1の保持電圧(電圧V1)はゼロとなる(図3(A))。
キャパシタC1の保持電圧(電圧V1)がゼロとなると、比較器CMP1がスイッチSW1をオフし、キャパシタC1の保持電圧(電圧V1)が再び単調増加する。
図3(C)に比較器CMP2の入力電圧の波形を、図3(D)に比較器CMP2の出力電圧、即ちNMOSトランジスタQ1のゲートに印加される信号Vgの波形を、それぞれ示す。
上述した動作が繰り返されることで、図3(C)のように、図2のパルス発生回路5からは鋸波形状のパルス波Vrampが出力される。パルス波Vrampの発振周波数はキャパシタC1の値、電流源I1,I2の各電流値、および、抵抗R1の値を、それぞれ適切な値に設定することによって、電磁結合トランス2の二次側の共振周波数にほぼ一致させている。
駆動回路1Aの外部から与えられる電圧制御信号Vcontは、任意のDC信号であって、圧電素子PZへ与えられる駆動電圧Vout(図2、図3(G))を制御しようとする信号である。
デューティ比制御回路6としての比較器CMP2は、パルス波Vrampと電圧制御信号Vcontの電圧値を比較し(図3(C))、比較結果に応じて、図3(D)に示すように、スイッチ回路3のオン状態とオフ状態を制御する信号Vgを出力する。
ここで、信号Vgがハイレベルにあるとき、スイッチ回路3は出力電流を流すオン状態をとる。逆に、信号Vgがローレベルにあるとき、スイッチ回路3は出力電流を流さないオフ状態をとる。
電磁結合トランス2の一次側電流Idはスイッチ回路3の出力電流でもある。
スイッチ回路3のオン状態の時間が短いときには、電磁結合トランス2の一次側の漏れインダクタンスにより、スイッチ(NMOSトランジスタQ1)がオン状態となってから、図3(F)に示すように、一次側電流Idは直線状に立ち上がっていく。
電磁結合トランス2の一次側には、図3(E)に示すように、一次側電流Idに応じてピーク値が制限された擬似正弦波が出現する。そして、電磁結合トランス2の二次巻線W2には、図3(G)に示すように、その巻数比に応じた大きさの正弦波が駆動電圧Voutとして出現する。
以上の動作において、信号Vgの周期をT、パルス持続時間をtonとすると、デューティ比(ton/T)によって、スイッチ回路3がオン状態になる時間が変わり、一次側電流Idのピーク値も変化する。信号Vgのデューティ比は電圧制御信号Vcontの大きさにより制御可能である。
図4(A)〜図4(C)と、図5(A)〜図5(C)に、信号Vgのデューティ比によって一次側電流Idと、二次側電圧、即ち圧電素子PZの駆動電圧Voutが変化する様子を示す。各図の(A)が信号Vgの波形、(B)が一次側電流Idの波形、(C)が駆動電圧Voutの波形を、それぞれ表している。
図4(A)の信号Vgは、図5(A)の信号Vgよりデューティ比が小さい。これは、図3(C)において電圧制御信号Vcontを相対的に小さく制御しているためである。信号Vgのデューティ比を小さくすると、図4(B)の一次側電流Idのピーク値も相対的に小さく、その結果、一次側電流Idのピーク値に応じて駆動電圧Voutの振幅も小さくなる。
これに対し、図3(C)において電圧制御信号Vcontを相対的に大きくすると、図5(A)の信号Vgのデューティ比が大きくなるため、図5(B)の一次側電流Idのピーク値が大きくでき、その結果、図5(C)の駆動電圧Voutの振幅を大きく制御できる。
このように、本実施形態では、スイッチ回路3を駆動するパルス信号のデューティ比を変化させて、圧電素子PZの駆動振幅を適切な値に制御できる。
つぎに、以上の動作における共振周波数について説明する。
圧電素子PZを駆動するときの共振周波数fdrvはスイッチ回路3内部のトランジスタ(NMOSトランジスタQ1)がオフのときの状態での共振回路で設定する。駆動回路の消費電力を抑えるためである。
共振周波数fdrvは、圧電素子のキャパシタンス成分Cpzと並列に接続されたリアクタンス成分Xext、それと電磁結合トランス2の二次側漏れインダクタンス成分L2と電磁結合トランス2の相互インダクタンスMにより下記の式(1-1)または式(1-2)で表される。式(1-1)はリアクタンス成分Xextが容量性のとき、式(1-2)はリアクタンス成分Xextが誘導性のときの、各共振周波数fdrvを表している。
[数1]
fdrv=1/(2π((L2+M)×(Cpz+Xext))1/2) …(1-1)
fdrv=1/(2π((L2+M)Xext/(L2+M+Xext)×Cpz)1/2)…(1-2)
NMOSトランジスタQ1はオン状態のときに低いインピーダンス状態であるため、電磁結合トランス2の一次側があたかもショートされた状態となり、電磁結合トランス2の一般的なT型等価回路においては、一次側巻線回路の一次側漏れインダクタンスL1と電磁結合トランス2の相互インダクタンスMが並列接続された状態になる。
このときの共振周波数は、M(on)=L1×M/(L1+M)と表されるオン時相互インダクタンスM(on)を、前述した式(1-1)または式(1-2)中の“M”と置き換えることにより定式化できる。
一般的に、一次側漏れインダクタンスL1は相互インダクタンスMの数[%]程度の値であるため、オン時相互インダクタンスM(on)も、(オフ時)相互インダクタンスMの数[%]の値となる。よって、NMOSトランジスタQ1がオン状態のときの共振周波数は、圧電素子駆動時の共振周波数fdrvよりも約1桁、上がることになる。
このためNMOSトランジスタQ1がオン状態なると、スイッチ回路3はNMOSトランジスタQ1がオフ状態で設定された共振周波数fdrvよりも速い応答を示し、駆動電流が素早く立ち上ることになる。
NMOSトランジスタQ1のオン状態が長く続くと、駆動電流はピークを過ぎて減少に転じ振動的な振る舞いをする。
電磁結合トランス2の二次側共振回路にて電圧振幅を制御するためには、NMOSトランジスタQ1のオン期間は、NMOSトランジスタQ1がオン状態となり駆動電流(一次側電流Id)が流れ始めてから、一次側電流Idの増加の傾きが次第に減少し、ピーク値を迎えるまででよい。駆動電流がピーク値となれば、電磁結合トランス2の二次側共振回路も電圧振幅がピーク値となるためである。
駆動電流がピーク値を過ぎても出力トランジスタをオン状態に保持することは、電磁結合トランス2の二次側の共振電圧を制御する点で意味はなくなり、無駄に駆動電力を消費することになる。
デューティ比制御回路6は、パルス発生回路5から駆動パルスを入力し、入力される電圧制御信号Vcontに応じて、当該駆動パルスのデューティ比を、電磁結合トランス2の二次巻線W2に発生する駆動電圧の値が負荷側の仕様電圧値以下の範囲内となるように制限する。ここで「負荷側の仕様電圧値」とは、例えば、圧電素子PZの最大定格電圧または推奨される印加電圧を意味する。デューティ比制御回路6は、当該デューティ比が制限された駆動パルスをスイッチ回路3に出力する。
圧電素子PZの駆動電圧は、本来、電磁結合トランス2の巻数比に応じて大きくなるが、本実施形態では、当該巻数比を、電源側電圧値と負荷側の仕様電圧値との比率を超えて、二次巻線W2の巻数の割合がより大きくなるように設定している。よって、その分、デューティ比制御回路6が駆動パルスのデューティ比を小さくしても、圧電素子PZに必要な駆動電圧の振幅を維持できる。一方、スイッチ回路3で消費される電力は駆動パルスがオンする時間の消費電力を時間平均したものであるため、駆動パルスのデューティ比が相対的に小さくなると、その分、スイッチ回路3で消費される電力が低減される。
このようにデューティ比制御回路6による駆動パルスのデューティ比制御によって、NMOSトランジスタQ1のオン状態の時間を制限することで、圧電素子PZの入力電力を、より低消費電力となる様に制御することができる。
図6は、第1実施形態に関わる他の具体的な回路図である。図7(A)〜図7(F)は、図6の回路の動作波形図である。
図6に図解する回路は、前述した図2に図解した回路と、スイッチ回路3の構成が異なる。図6では図示を省略しているが、前述した図2の回路と同様、スイッチ回路3に対しパルス発生回路5がデューティ比制御回路6を介して接続され、デューティ比制御回路6でスイッチ回路3の駆動パルスのデューティ比を制御する。
また、図2の信号Vgに代えて、図6では入力A,入力Bを用いている。入力Aと入力Bは、例えば位相が半周期ずれて、各入力につながるトランジスタを差動的に動作させる信号である。不図示のデューティ比制御回路6は、入力される電圧制御信号Vcontに応じて、入力Aと入力Bの各々に対してデューティ比を制御する。
既に説明した図2の回路では、電磁結合トランス2の一次側にて、一次側電流Idが一次巻線W1を一方向に流れるオン状態と、一次側電流Idが一次巻線W1に流れないオフ状態の2つの状態がある。このような駆動を、一般にはユニポーラ駆動という。
これに対し、図6の回路では、電磁結合トランス2の一次側にて、一次側電流Idが一次巻線W1を一方の向き(正の向き)に流れるオン状態、逆向き(負の向き)に流れるオン状態、および、一次側電流Idが一次巻線W1に流れないオフ状態の3つの状態がある。このような駆動を、一般にはバイポーラ駆動という。
図6は、2つの圧電素子PZ1とPZ2を駆動する駆動回路を例示する。また、電磁結合トランス2の二次巻線W2が、2つの第2巻線コイルW21とW22から構成されている。
圧電素子PZ1は、補助コンデンサCaxu.1と第2巻線コイルW21と共に共振回路を形成している。同様に、圧電素子PZ2は、補助コンデンサCaxu.2と第2巻線コイルW22と共に他の共振回路を形成している。2つの共振回路は、共振周波数が同じとなるように補助コンデンサCaxu.1とCaxu.2の値がそれぞれ決められている。このとき圧電素子PZ1の等価容量成分と補助コンデンサCaxu.1との合成容量と、第2巻線コイルW21のインダクタンスとにより共振回路の共振周波数が決められ、圧電素子PZ2の等価容量成分と補助コンデンサCaxu.2との合成容量と、第2巻線コイルW22のインダクタンスとにより、他の共振回路の共振周波数が決められる。
本例では、圧電素子PZ1とPZ2の一方の電極が、中点ノードN側で互いに接続されている。補助コンデンサCaxu.1は、当該中点ノードNと、圧電素子PZ1の他の電極との間に接続される。同様に、補助コンデンサCaxu.2は、当該中点ノードNと、圧電素子PZ2の他の電極との間に接続される。
中点ノードNが接地電圧GNDに接続されている。これは、静電気による影響を排除するためである。なお、中点ノードNを接地電圧GNDに接続することは、当該中点ノードNを通って接地電圧GNDに至る経路が高周波駆動時の放電経路にはならないため、動作に影響しない。
電磁結合トランス2の一次巻線W1に接続されたスイッチ回路3は、図6に示すように、4トランジスタ構成のHブリッジ回路である。
スイッチ回路3は、2つのPMOSトランジスタP1とP2、2つのNMOSトランジスタN1とN2を有する。一次巻線W1がスイッチ回路3内部のノードND1とND2との間に接続されている。
トランジスタP1のソースが電源電圧Vddの供給端子に接続され、ドレインがノードND1に接続され、ゲートがノードND2に接続されている。
トランジスタP2のソースが電源電圧Vddの供給端子に接続され、ドレインがノードND2に接続され、ゲートがノードND1に接続されている。
トランジスタN1のドレインがノードND2に接続され、ソースが接地電圧GNDの供給端子に接続され、ゲートが入力Aの供給端子に接続されている。
トランジスタN2のドレインがノードND1に接続され、ソースが接地電圧GNDの供給端子に接続され、ゲートが入力Bの供給端子に接続されている。
このように構成されたスイッチ回路3は、入力Bがローレベル(“L”)の状態で入力Aがハイレベル(“H”)となると、トランジスタN1とP1がオンするため、オン状態のトランジスタP1、ノードND1、一次巻線W1、ノードND2、オン状態のトランジスタN1を通って正電流I(+)が接地電圧GNDへ流れる(図6参照)。
また、入力Aが“L”の状態で入力Bが“H”になると、トランジスタN2とP2がオンするため、オン状態のトランジスタP2、ノードND2、一次巻線W1、ノードND1、オン状態のトランジスタN2を通って負電流I(-)が接地電圧GNDへ流れる(図6参照)。
入力Aの“H”の期間は、図7(A)に示すように、一定の半周期T/2より短い時間(ON(+)で表示)だけ持続するパルスで規定され、このパルスが一定の周期Tで繰り返される。
入力Bの“H”の期間は、図7(B)に示すように、入力Aのパルスと180度位相が異なる同一周期Tのパルスの、短い持続時間(ON(-)で表示)により規定される。2つのパルスの持続時間(いわゆるパルス幅)は異なってもよいが、ここでは同じとする。
以下、入力Aのパルス持続時間を「正電流駆動時間、または、ON(+)時間」、入力Bのパルス持続時間を「負電流駆動時間、または、ON(-)時間」と称する。
ON(+)時間と次のON(-)時間との間、さらに、当該ON(-)時間と次のON(+)時間との間には、それぞれ、一次巻線W1に電流が流れない一定のオフ状態の期間が存在する。
オフ状態の期間は、図6に示すスイッチ回路3を構成する4つのトランジスタN1,N2,P1,P2がすべてオフすることから、一次巻線W1の両端からスイッチ回路3を見てハイインピーダンス状態となる。よって、オフ状態の期間にはトランジスタのオフリーク程度しか電流が流れないため、実質的に消費電力はゼロに等しい。
図7(C)において、正電流I(+)と負電流I(-)の大きさ(絶対値)を「|I|」により示す。
パルスをオンして電流が流れ始め、続いて飽和するが、本例では、その飽和時点でパルスをオフするようにON(+)時間、ON(-)時間が決められている。言い換えると、電流の飽和時点でパルスをオフするようにデューティ比が設定されている。このように正電流I(+)と負電流I(-)は、意図的に未飽和領域を用いる場合を除くと、通常、少なくとも飽和するまで流す。ただし、飽和後は、それ以上パルス幅を長くしても動作的に余り意味がなく、電力消費が増えるだけである。よって、ON(+)時間とON(-)時間をそれぞれ最大で電流飽和の時間付近に設定することが望ましい。
一方、不図示のデューティ比制御回路6により、入力Aと入力Bのデューティ比を、飽和電流の時間で決まるデューティ比より小さくすることは可能である。
一次巻線W1の両端の電圧を、図6のノードND2を基準としたノードND1の電圧(一次側電圧Vi)と定義し、その波形を図7(D)に示す。
トランジスタのオン抵抗が無視できるとすると、ON(+)時間の一次側電圧Vi(+)、ON(-)時間の一次側電圧Vi(-)は、ともにほぼ電源電圧Vddの大きさ(例えば5[V]程度)となる。この間欠的な短い時間の電圧は、強制的に一次側の動作で一次巻線W1に設定される。一方、その間のオフ期間は一次巻線W1に対し一次側の電圧強制力が解除されるが、二次側の影響で共振回路の共振周波数に依存した電圧が一次側にも現れる。
この動作では、前述したように電流駆動周波数(一次側電圧Vi(+)とVi(-)の設定を繰り返す動作の周波数)と、共振回路の共振周波数がほぼ一致している場合、図7(D)のように一次側電圧Viの波形がほぼ正弦波となる。このため圧電素子の駆動がスムーズで効率的であり、望ましい。
完全に周波数が一致していない場合、間欠的な一次側の電圧設定時に一次側電圧Viの波形の不連続点が生じるが、動作周波数自体は一次側の電流駆動周波数で決まるため、一定の周波数で圧電素子を駆動すること自体は可能である。ただし、この場合、駆動のスムーズさは失われ、効率としても低下する。
本例では、図6に示す圧電素子PZ1とPZ2が互いに逆相で駆動されるように、第2巻線コイルW21とW22の極性が決められている。第2巻線コイルW21とW22の極性は、巻線方向の違いと、巻き始め、巻き終わりのどちらを中点ノードNに接続するかの違いによって決められる。
また、電磁結合トランス2の一次側と二次側の巻数比によって、電圧の昇圧比率が決められる。本例では、電磁結合トランス2の巻数比を一次(W1):二次(W21):二次(W22)=1:6:6としているため、図7(E)および図7(F)に示すように、互いに逆相で6倍に昇圧された駆動電圧Vo1とVo2が得られる。
駆動電圧Vo1により圧電素子PZ1が動作し、駆動電圧Vo2により圧電素子PZ2が、圧電素子PZ1とは機械的変位が逆相で動作する。
図8(A)と図8(B)に、電圧制御信号Vcontを変化させて、デューティ比制御回路6から出力される駆動パルスのデューティ比(駆動デューティ比)を変化させたときの駆動電圧値および平均駆動電流を示す。ここで電磁結合トランス2の1次側:二次側の巻数比を1:6とした。電源電圧Vddは5.0[V]とした。
特許文献2では、フル駆動のときのデューティ比を50[%]と規定しているが、図7では、フル駆動のときのデューティ比を100[%]と規定した。
図8(A)は、駆動デューティ比を1[%]から100[%]まで変化させたときの駆動電圧値を示す。図8(A)から、駆動デューティ比が40[%]以下の範囲で駆動電圧が制御できていることがわかる。
図8(B)は、駆動デューティ比を1[%]から100[%]まで変化させたときの平均駆動電流を示す。図8(B)から、駆動デューティ比が20[%]を超えたあたりから、急激に平均駆動電流が増加することがわかる。
図8(A)および図8(B)から、駆動デューティ比が20[%]以下で圧電素子PZを駆動すると、効率的な省電力動作ができることがわかる。
実験に使用した圧電ポンプは30[Vp-p]の駆動電圧で十分な流体移送能力を示したため、図8(A)より駆動デューティ比は2.5[%]となる。このとき図8(B)から平均駆動電流は7[mA]とわかる。本例では30[Vp-p]が「負荷側の仕様電圧値」の一例に該当する。
電源電圧Vddは5.0[V]なので、消費電力は35[mW]とわずかな値である。
電磁結合トランス2を使用する場合には、電源として与えられる1次側電圧値と、負荷に与える駆動電圧としての二次側電圧値の比率を、1次側巻線数と二次側巻線数の比率と同等にする考え方が一般的である。
本発明では、電源電圧Vddは5.0[V]であり、負荷側となる圧電素子の駆動電圧は30[Vp-p]、つまり15[V0-p](ボルト・ゼロ−ピーク)であるから、一般的な考えでは、電磁結合トランス2の巻数比は1:3となるところを、あえて1:6としている。そのため駆動デューティ比を極端に低下させて運転することができる。駆動デューティ比を低下させるとそれだけ低消費電力となるのは、図8(B)から明らかである。よって、本実施形態では、電磁結合トランス2の巻数比を通常より大きくした(本例では2倍にした)ことにより、その分、電力消費が低減されている。
ここまでで低消費電力駆動と、電磁結合トランス2による適正な昇圧との両立を述べたので、次に、小型化について簡単に記す。
図6に示す回路のスイッチ回路3(Hブリッジ出力部)では、PMOSトランジスタP1,P2とNMOSトランジスタN1,N2を組み合わせた回路例を挙げた。このような回路は、ディスクリートの電子部品を回路基板に実装させる回路である必要は必ずしもなく、何らかのIC内部に形成することができる。
電磁結合トランス2の一次巻線W1に流れる電流は数十[mA]のオーダーであるから、電磁結合トランス2の巻線の線径は太くする必要はなく、またコア内の磁束密度も大きくはないからコアの断面積も小さくすることができる。
近年では巻線をフィルムに配線パターンをメッキあるいは蒸着工程により形成したシート状巻線もあり、これらを積層化することで小型の多巻線トランスを形成することもできる。これにより小型の多巻線トランスが実現できる。
以上の本実施形態では、携帯機器に適応した、小型かつ低消費電力の圧電素子の駆動回路が実現できる。
《第2実施形態》
第2実施形態では、第1実施形態の駆動回路に停止制御回路を追加する。
図9(A)および図9(B)に、図1(A)と図1(B)に対し停止制御回路(STC)7を、それぞれ追加したブロック図を示す。また図10に、図1(A)に対する図2と同様に、より詳細な回路図を示す。
本実施形態の駆動回路1A,1Bは、図9(A)と図9(B)に示すように、スイッチ回路3に入力される駆動パルスを周期的に停止する停止制御回路7を有する。停止制御回路7はパルス発生回路5における駆動パルスの発生を周期的に停止する構成でもよいが、ここでは、デューティ比制御回路6とスイッチ回路3の間に停止制御回路7を設け、所定の期間だけデューティ比制御回路6からの駆動パルスを許可し、または、無効化する構成となっている。この所定の期間の長さおよび周期は任意であり、駆動回路1A,1Bに外部から与えられる停止制御信号Vstcにより決められる。停止制御信号Vstcは、これを発生する回路を設けてもよいし、CPU等で発生させてもよい。
停止制御回路7を、デューティ比制御回路6とスイッチ回路3の間に設ける場合、例えば図10に示すように、停止制御回路7を1つのアンド回路ANDで構成できる。
アンド回路ANDの一方入力がデューティ比制御回路6を構成する比較器CMP2の出力に接続され、他方入力に停止制御信号Vstcが印加される。図10においては、停止制御信号Vstcが、停止制御信号発生回路12で発生する。停止制御信号発生回路12は、電源電圧Vddと接地電圧GNDとの間に抵抗R2とスイッチSW2を直列接続し、第2スイッチSW2を、例えば不図示のCPU等で制御する構成となっている。CPU等の指令により、第2スイッチSW2のオフ時間(駆動パルスの許可期間)とオン時間(駆動パルスの無効化期間)と、このスイッチングの周期(制御タイミング)が決められる。
スイッチング動作が行われている動作において、任意の期間、駆動パルスのスイッチ回路3への入力を停止すると、共振回路(巻線回路)の銅損等で失われるエネルギーを電磁結合トランス2の一次側からの間欠的な電流駆動で補う動作が停止するため、停止期間が長いほど入力電力は下がる。このため圧電素子PZの振動エネルギーも低下する。つまり、停止制御回路7は、圧電素子PZの動作(振動エネルギー、あるいは、平均的な振動振幅)を、任意の期間、停止させることで調整することができる。
圧電素子PZが、例えば水冷や空冷のために流体をポンピングするポンプ装置に用いられる場合(第3実施形態参照)等にあっては、例えばCPU等が、例えば冷却対象の温度等、何らかの検出した物理量に応じて、停止制御信号Vstcのパルス周期を変更可能に決定してよい。この場合、駆動パルスを周期的、かつ、冷却対象の状態に適応して停止させることにより、圧電素子PZへの周期的な短時間の電力印加において電力印加の頻度が下がり、結果として、時間平均としての入力電力を必要量まで低下させることが可能となる。
図11は、図9(A)に示す停止制御回路7により、停止制御を行っているときの、図7(E)または図7(F)の波形を時間圧縮して示すグラフである。
この波形では一例として停止期間を共振周波数の周期のm倍(ここでは3倍)として入力Aと入力Bのそれぞれで、駆動パルスの発生頻度をm回(ここでは3回)に1回に減らしている。そのため駆動パルスを省略した停止時には矢印で示す昇圧が行われないため、銅損等により発振波形の振幅が徐々に低下する。そして、次の駆動パルスの印加で減衰した波形振幅が回復している。
《第3実施形態》
本実施形態は、駆動回路の適用例として、ポンプ装置を示すものである。本発明のポンプ装置は、エアその他の気体、液体などの流体のポンプ装置として広く適用可能であるが、ここでは、特に、発熱した空冷対象物(例えばIC等の電子デバイス)を空冷する空冷装置、あるいは、細い管に一定の空気流を起こす装置等に応用できるエアポンプ装置を一例として説明する。
図12に空冷装置として用いるエアポンプ装置の組み立て図を示す。
図解する空冷装置(エアポンプ装置)30は、圧電素子としての圧電体ユニット31、保護リング32、ダイヤフラム33、第1スペーサ34、中板35、第2スペーサ36、天板37を有する。
保護リング32は、例えばステンレス等の腐食に強く高剛性の材料からなり、内部空間を確保するリング形状に形成されている。保護リング32の内部に圧電体ユニット31が収容され、圧電体ユニット31の非振動部分が保護リング32に固定される。保護リング32に対し、ダイヤフラム33を挟んで第1スペーサ34が重ねられる。
第1スペーサ34は、例えばステンレス等の腐食に強く高剛性の材料からなり、内部空間がポンプ室34Aとなるようにリング形状に形成されている。
ダイヤフラム33は、圧電体ユニット31の圧電体が振動するのに合わせて振動する振動部材の一種であり、薄くて変形自在であるが強度的には強い材質が用いられる。またダイヤフラム33は、第1スペーサ34との接触面で気密性を高める役目もある。
中央に小さな連通口35Aが空けられた中板35が、第1スペーサ34の上面に重ねられて両者が接触面で気密性が高くなるように固着される。このためポンプ室34Aは、連通口35Aのみで外部に通じることになる。したがって、圧電体ユニット31の圧電体が振動しダイヤフラム33が上下運動すると、ポンプ室34Aの内部容積が拡大と縮小を繰り返すため、連通口35Aからエアが高速で出入りする。
中板35には、さらに、例えばステンレス等の腐食に強く高剛性の第2スペーサ36と天板37が、互いに密着面で気密性が高くなるように固着される。
第2スペーサ36は、例えば四方からエアの吸入経路を確保する内部の空間(4つの通路)が形成されている。4つの通路の先端はほぼ閉じられているが、小さい吸入口が開口している。また、天板37の中央にエアの吐出口37Aが開口している。これにより、吐出口37Aと連通口35Aに連通するベンチュリノズル部36Aが第2スペーサ36の中央部に形成される。
図13(A)および図13(B)は、エアの経路を示す概略断面図である。図13(A)は吸引時、図13(B)は吐出時を示す。
圧電体ユニット31によってゆっくりダイヤフラム33を上下させた場合、吸引によってポンプ室34Aの容積が大きくなり外部から図13(A)に示す経路でエアが入ってくる。また、吐出によってポンプ室34Aの容積が小さくなり内部のエアが、図13(B)のように連通口35A、ベンチュリノズル部36Aを通って吐出口37Aから勢いよく吐き出される。
この吸引と吐出を高速(周波数20[kHz]またはそれ以上)で繰り返すと、吐出口37Aからはほぼ圧力が一定の連続エア流が噴出する動作となる。この高速駆動では、図13(A)のように吐出口37Aがエアの吸入口になることはなく、専ら吐き出し口として機能する。そのためエアの吸入は、図12に示す第2スペーサ36に形成されている四方の吸入経路の空間とその先端の小さな穴(吸入口)を通して行われる。
図13(C)は、冷却装置として好適なエアポンプ装置30の概観と、動作時のエア経路を示す図である。
エアポンプ装置30は、上面視が20[mm]程度、厚さが1[mm]程度の小型の空冷装置として用いることができる。駆動回路は第1実施形態に既に説明した図6のものを使用し、20[VP−P]、20[kHz]駆動の場合、吐出口37Aから噴出する連続エア流の静圧が1[Pa]以上が得られた。
なお、図1(A)、図1(B)、図2、図9(A)、図9(B)および図10に示すデューティ比制御回路6は、当該エアポンプ装置30を内蔵する電子機器の制御をつかさどる、CPU等によっても実現できる。この場合、例えば温度センサ等の検出手段を冷却対象の表面や周囲に配置し、検出手段から得られる検出温度に応じて自動的にCPUが駆動デューティ比を適応的に変化させるとよい。あるいは電源投入からの時間経過に応じて流量を上げる必要のあるシステムならば徐々に駆動デューティ比を上げることにより、エア流量を上げる制御でもよい。
また、第2実施形態の停止制御を第3実施形態に適用した場合、mが大きくなるほど平均的な波形振幅が低下し、その分、圧電素子PZの振動エネルギーも低下し、単位時間あたりの連続エア流量(静圧)も低下する。したがって、停止期間を変更することによりエアポンプ装置の出力制御が可能となる。
以上は空冷に適したエアポンプ装置に、本発明の低消費電力の駆動回路を適用した例を述べたが、本発明の適用範囲は、空冷に限らず、液体の冷却媒体(水等)の配管内で冷却媒体に一定の流量を与えるポンプ装置としても用いることができる。また、撮像素子等に対し振動を与えて埃を除去する埃除去装置、その他の振動を発生させるアクチュエータに応用できる。
さらに本発明の圧電素子の駆動回路は、液晶等の表示装置画面のタッチセンサにクリック感を与える装置、さらには、電磁結合トランス2の二次側巻線回路を2回路に増やすことで、スイッチ回路3を増やすことなく同相駆動出力と同時に、逆相駆動出力を得ることができるので、逆相駆動による圧電モータへの応用も可能である。
第1実施形態に関わる駆動回路の構成を示す回路ブロック図である。(A)と(B)は、リアクタンス素子の接続配置が電磁結合トランス2の二次側の場合、または一次側の場合を示す図である。 第1実施形態に関わるユニポーラ型駆動回路の具体的な回路図である。 (A)〜(G)は、図2に示す回路の動作波形図である。 (A)〜(C)は、駆動デューティ比が比較的小さいときの動作波形図である。 (A)〜(C)は、駆動デューティ比が比較的大きいときの動作波形図である。 第1実施形態に関わるバイポーラ型駆動回路の具体的な回路図である。 (A)〜(F)は、図6に示す回路の動作波形図である。 (A)は、電圧制御信号を変化させて駆動デューティ比を変化させたときの駆動電圧値の変化を示すグラフである。(B)は、同様にして駆動デューティ比を変化させたときの平均駆動電流の変化を示すグラフである。 第2実施形態に関わる駆動回路の構成を示す回路ブロック図である。(A)と(B)は、リアクタンス素子の接続配置が電磁結合トランス2の二次側の場合、または一次側の場合を示す図である。 第2実施形態に関わるユニポーラ型駆動回路の具体的な回路図である。 図9(A)の回路において停止制御時の発振波形を示す図である。 第3実施形態に関わる、空冷装置として用いるエアポンプ装置の組立図である。 エアポンプ装置のエア経路を示した図である。(A)はエアポンプ装置の概略断面図で吸引時のエアの経路を示し、(B)はエアポンプ装置の概略断面図で吐出時のエアの経路を示す図である。また、(C)は、エアポンプ装置を斜めから見たエアーフロー図である。
符号の説明
1…駆動回路、2…電磁結合トランス、3…スイッチ回路、4…リアクタンス素子、5…パルス発生回路、6…デューティ比制御回路、7…停止制御回路、10…電源回路、11…可変電圧源、12…停止制御信号発生回路、30…空冷装置(エアポンプ装置)、34A…ポンプ室、37A…吐出口、PZ,PZ1,PZ2…圧電素子、W1…一次巻線、W2…二次巻線、W21,W22…第2巻線コイル、Vcont…電圧制御信号、Vstc…停止制御信号

Claims (4)

  1. 電源側電圧値と負荷側の仕様電圧値との比率を超えて負荷側の二次巻線数の割合が電源側の一次巻線数に対し多い巻数比を有するトランスと、
    前記トランスの一次側で電源電圧を駆動周波数でスイッチング動作し、前記トランスの二次側に接続されている圧電素子に駆動電圧を印加するスイッチ回路と、
    前記トランスの1次側または二次側で前記圧電素子と並列に接続され、前記圧電素子の等価回路におけるキャパシタンス成分および前記トランスのインダクタンス成分と前記駆動周波数で並列共振する共振回路を構成するリアクタンス素子と、
    前記スイッチ回路の駆動パルスを発生するパルス発生回路と、
    前記駆動パルスを入力し、当該駆動パルスのデューティ比を、前記駆動電圧の値が前記負荷側の仕様電圧値以下の範囲内となるように制限し、当該デューティ比が制限された駆動パルスを前記スイッチ回路に出力するデューティ比制御回路と、
    を有する圧電素子の駆動回路。
  2. 前記スイッチ回路のスイッチング動作を任意の期間、周期的に停止する停止制御回路を有する
    請求項1に記載の圧電素子の駆動回路。
  3. 圧電素子の圧電体で、または、当該圧電体とともに振動する振動部材で、一方の面が塞がれたポンプ室を有し、前記ポンプ室の流体吸入口から吸い込んだ流体を吐出口から排出するポンプと、
    当該ポンプの前記圧電素子を振動させて駆動する駆動回路と、を備え、
    前記駆動回路は、
    電源側電圧値と負荷側の仕様電圧値との比率を超えて負荷側の二次巻線数の割合が電源側の一次巻線数に対し多い巻数比を有するトランスと、
    前記トランスの一次側で電源電圧を駆動周波数でスイッチング動作し、前記トランスの二次側に接続されている圧電素子に駆動電圧を印加するスイッチ回路と、
    前記トランスの1次側または二次側で前記圧電素子と並列に接続され、前記圧電素子の等価回路におけるキャパシタンス成分および前記トランスのインダクタンス成分と前記駆動周波数で並列共振する共振回路を構成するリアクタンス素子と、
    前記スイッチ回路の駆動パルスを発生するパルス発生回路と、
    前記駆動パルスを入力し、当該駆動パルスのデューティ比を、前記駆動電圧の値が前記負荷側の仕様電圧値以下の範囲内となるように制限し、当該デューティ比が制限された駆動パルスを前記スイッチ回路に出力するデューティ比制御回路と、
    を有するポンプ装置。
  4. 前記駆動回路は、前記スイッチ回路のスイッチング動作を任意の期間、周期的に停止する停止制御回路を有する
    請求項3に記載のポンプ装置。
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