JP2009048681A - ホログラム記録再生装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】位相マスクを用いる場合において、良好な再生特性を得ることができる技術を提供する。
【解決手段】ホログラム記録媒体48に信号光及び参照光を照射して記録し、記録されたホログラムに再生光と加算光とを照射して、回折光と反射光とを得て、記録データを再生するホログラム記録再生装置1において、参照光領域と再生光領域と信号光領域と加算光領域との各々が形成される空間変調器19と、加算光領域の相互に隣接するピクセルに対してπ/6ラジアン以下の位相変調を与える位相マスク70と、を備えることとした。
【選択図】図1
【解決手段】ホログラム記録媒体48に信号光及び参照光を照射して記録し、記録されたホログラムに再生光と加算光とを照射して、回折光と反射光とを得て、記録データを再生するホログラム記録再生装置1において、参照光領域と再生光領域と信号光領域と加算光領域との各々が形成される空間変調器19と、加算光領域の相互に隣接するピクセルに対してπ/6ラジアン以下の位相変調を与える位相マスク70と、を備えることとした。
【選択図】図1
Description
本発明は、ホログラム記録再生装置に関する。
近年、データストレージデバイスとしてホログラムメモリが注目されている。このホログラムメモリでは、ホログラム記録装置を用いて記録をおこない、また、ホログラム再生装置を用いて再生をおこなうものである。記録の動作は以下のようにおこなわれる。記録データに応じて変調された信号光と所定の参照光とを同一光源からのレーザ光によって生成し、これらをホログラム記録媒体に照射して、ホログラム記録媒体中で信号光と参照光とを干渉させて干渉縞(ホログラム)を形成する。このようにして、ホログラム記録媒体に記録データがホログラムとして記録される。ここで記録されるホログラムには、1ページと称される単位で極めて大容量の情報が含まれ、記録データは1ページ毎に特定され管理される。
また、このホログラムメモリでは、ホログラム再生装置を用いて、記録済みのホログラム記録媒体からの記録データの再生をおこなう。再生の動作は以下のようにおこなわれる。上述した記録データに応じ形成されたホログラムに、記録において用いられた光ビームである参照光と同様な性質を有する光ビームである再生光を照射することで、ホログラム記録媒体から回折光を発生させる。この回折光は1ページ分の記録データを含んでいるので、回折光を2次元配列された受光素子で受光し、信号処理を施して記録データを再生できる。
また、ホログラム記録装置の機能と、ホログラム再生装置の機能とを同一の装置で実現するホログラム記録再生装置(記録及び再生装置)も提案されている。なお、以下の説明においては、ホログラム記録装置、ホログラム再生装置、ホログラム記録再生装置の総称(記録及び/又は再生装置)としてホログラム記録再生装置の用語も用いるものとし、明確な区別が必要な場合には、その旨を記載する。また、記録する、再生をする、記録再生(記録及び再生)をする、の用語についても、それらの動作の総称(記録及び/又は再生)として、記録再生をする、の用語も用いるものとし、明確な区別が必要な場合には、その旨を記載する。
なお、上述した、信号光、参照光、再生光の発生、及び回折光の受光は、光学素子を組み合わせて構成したホログラム記録再生光学部でおこなわれる。光学部における光路設計のひとつの方式としては、信号光と参照光とを同軸状に配置して、さらに、参照光と再生光との経路の一部を同一とし、これらの光ビーム(信号光と参照光と再生光)が通過する光路を共通とする、所謂、コアキシャル方式(例えば、非特許文献1を参照)が知られている。また、光学部における光路設計の他の方式としては、信号光と参照光(再生光)の各々の光ビームが別の光路を通過する2光束法が知られている。
また、記録において、信号光及び参照光は、対物レンズでフーリエ変換され、ホログラム記録媒体中に非常に強い0次光を生じる。このため、0次光照射部分のモノマを多量に消費するのである。ホログラムメモリは、ほぼ同一の位置に多数回の記録をおこなうことによって高密度記録をおこなうので、このような局所的なモノマの消費は有害である。このような現象の発生を回避するため、位相マスクの採用が検討されている。
特開平11−242424号公報
米国特許第US7065032号明細書
日経エレクトロニクス2005年1月17日号P106〜114
しかしながら、位相マスクを採用する場合には、記録時にはモノマの消費を少なくすることができるものの、記録データの再生が容易ではないという問題を生じる。また、記録時の位相マスクの採用に拘わらず、再生時において0次光が集中して再生特性の劣化を生じる場合もあり得る。本発明は、再生時における0次光の発生を防止して、良好な再生特性を得ることができる技術を提供するものである。
本発明のホログラム記録再生装置は、ホログラム記録媒体に信号光及び参照光を照射してホログラムとして記録データを記録し、前記ホログラム記録媒体に記録されたホログラムに再生光を照射して回折光を得て、前記回折光より記録データを再生するホログラム記録再生装置において、前記参照光を発生するための参照光領域と前記再生光を発生するための再生光領域と前記信号光を発生するための信号光領域と加算光を発生するための加算光領域との各々が形成される空間変調器と、前記参照光領域と前記再生光領域と前記信号光領域と前記加算光領域とについて、各々の領域範囲と各々の領域に表示されるパターンとを制御する制御部と、前記回折光及び前記加算光が前記ホログラム記録媒体で反射して得られる反射光を受光する受光素子と、前記信号光領域と前記加算光領域との各々における相互に隣接するピクセルから得られる信号光と加算光とに対して所定値以下の位相差を与える位相マスクと、を備える。
本発明のホログラム記録再生装置では、空間変調器と、空間変調器を制御する制御部と、信号光及び加算光に作用して位相変調を行う位相マスクとを備える。空間変調器には、参照光を発生するための参照光領域と再生光を発生するための再生光領域と信号光を発生するための信号光領域と加算光を発生するための加算光領域との各々が形成される。制御部は、参照光領域と再生光領域と信号光領域と加算光領域とについて、その範囲とパターンとを制御する。又、信号光と加算光とに対して位相マスクを作用させる。この位相マスクは、信号光領域及び加算光領域における相互に隣接するピクセルから得られる信号光及び加算光に対して所定値以下の位相差を与える。そして記録時においては、参照光と信号光との干渉縞がホログラムとしてホログラム記録媒体に記録され、再生時には、再生光をホログラムに照射することによって生じた回折光と反射光とは受光素子において加算される。このようにして、再生時には、ホログラムからの回折光の振幅を正しく再現することができ、この結果、再生特性を良好なものとすることができる。これに加えて、加算光は位相変調を受けているので、加算光がホログラム記録媒体の中で集中することがなく、再生時において、ホログラム記録媒体が劣化することを防止できる。
本発明によれば、信号光と加算光とに位相マスクを作用させて、再生時において0次光の集中を防止して、良好な再生特性を得ることができる技術を提供することができる。
(実施形態のホログラム記録再生装置の概要)
実施形態のホログラムの記録再生装置は、ホログラム記録媒体に信号光及び参照光を照射してホログラムとして記録データを記録し、ホログラム記録媒体に記録されたホログラムに再生光を照射して回折光を得て、さらに加算光をホログラムに照射して反射光を得て、回折光と反射光とを重ね合わせることによって、記録データを再生するホログラム記録再生装置に関するものである。このホログラム記録再生装置は、空間変調器と、空間変調器を制御する制御部と、回折光及び反射光を受光する受光素子と、信号光及び加算光に作用して位相変調を行う位相マスクとを備える。
実施形態のホログラムの記録再生装置は、ホログラム記録媒体に信号光及び参照光を照射してホログラムとして記録データを記録し、ホログラム記録媒体に記録されたホログラムに再生光を照射して回折光を得て、さらに加算光をホログラムに照射して反射光を得て、回折光と反射光とを重ね合わせることによって、記録データを再生するホログラム記録再生装置に関するものである。このホログラム記録再生装置は、空間変調器と、空間変調器を制御する制御部と、回折光及び反射光を受光する受光素子と、信号光及び加算光に作用して位相変調を行う位相マスクとを備える。
空間変調器には、参照光を発生するための参照光領域と再生光を発生するための再生光領域と信号光を発生するための信号光領域と加算光を発生するための加算光領域との各々が形成される。制御部は、参照光領域と再生光領域と信号光領域と加算光領域とについて、各々の領域が空間変調器のどの領域を占めるかの範囲をピクセル(画素)単位で制御するとともに、これらの各々の領域に表示されるパターン(各々のピクセルが白部とされるか黒部とされるか、あるいは、灰部とされるかの態様)を制御する。実施形態では、参照光領域と再生光領域とは同一の一致した範囲とされ、信号光領域と加算光領域とは同一の一致した範囲とされている。ここで、白部とは、光源から空間変調器へ入射する光ビームの光量のほとんどを空間変調器から出射するようにする空間変調器のピクセルの状態、黒部とは、光源から空間変調器へ入射する光ビームの光量のほとんどを空間変調器から出射しないようにする空間変調器のピクセルの状態、灰部とは、光源から空間変調器へ入射する光ビームの光量の一部を空間変調器から出射するようにする、黒部と白部との中間のピクセルの状態を各々称すものである。
又、信号光と加算光とに対して同一の位相変調を与える位相マスクを備えている。この位相マスクは、加算光領域における相互に隣接するピクセルから得られる加算光に対して所定値以下の位相差を与える。すなわち、加算光の進行する方向に垂直なる面上においてゆったりとした位相変化を与える。この位相マスクは、信号光にも同様に作用して、信号光領域における相互に隣接するピクセルから得られる信号光に対して所定値以下の位相差を与える。ここで、所定値としては、例えば、π/6ラジアンとされ、この値が小さければ、再生時にホログラム記録媒体の中における0次光、高次光の強度はより強くなるが、再生時における再生処理はより容易とできるので、適宜に定めることができる。
そして記録時においては、信号光領域には記録データに応じたパターンが表示されて、参照光と信号光との干渉縞がホログラムとしてホログラム記録媒体に記録される。又、再生時には、加算光領域のすべてのピクセルは灰部とされて発生した加算光がホログラムに照射され、再生光をホログラムに照射することによって生じた回折光とホログラム記録媒体から戻ってきた反射光とは受光素子(イメージセンサ)において加算される。
加算光領域を灰部とする理由は、加算光領域から出射する光ビームの強度を加算光領域に入射する光ビームの強度よりも小さくするということである。すなわち、光ビームの一部が加算光領域で吸収されることとなる。このようにすることによって、回折光と反射光との比率を1対1程度に調整することができる。空間変調器の加算光領域を灰部とする制御は、各々のピクセルを白部とする制御、各々のピクセルを黒部とする制御と同様に、後述する制御部からの電気信号によって行われる。具体的には、制御部から、黒部に対応する電圧と白部に対応する電圧の中間の電圧を発生させ、この中間の電圧を加算光領域に属するすべてのピクセルに印加することによって、加算光領域を灰部とすることができる。
灰部の内容について、簡単に説明する。再生光の強度を1とすると、回折光の強度は10−3〜10−4程度の大きさである。一方、反射光はホログラム記録媒体に設けられた反射膜で反射するので利用効率は、回折光の利用効率よりも大きく、加算光の強度を1とすると10−0〜10−1程度の大きさである。反射光と回折光とを加算するコヒーレント加算の有効なる効果を得るためには、反射光と回折光とが略同等の光強度を有するものとしなければならない。よって、加算光領域への入射加算光(加算領域へ入射する加算光)の光強度を10−2〜10−3程度に減衰させ、出射加算光(加算領域から出射する加算光)の光強度との桁が略同等となるように灰部の明度を調整する。
また、加算光領域から出射する光ビームの強度を弱くする別の方法としては、加算光領域のすべてのピクセルを白部として、記録媒体までの光路の途中に加算光領域のみの光量を減じるフィルタを再生の動作を行うに際してのみに使用する方法がある。この場合、このフィルタを記録中は抜き、再生中は入れるようにしても良く、このフィルタを、液晶等の電気信号によって透過光量を調整する可変透過率素子として構成し、制御部からの電気信号によって加算光領域の透過率を小さくするようにしても良い。
このようにして、受光素子において回折光と反射光とのコヒーレント加算が行われるので、ホログラムからの回折光の振幅を正しく再現することができ、この結果、再生特性を良好なものとすることができる。これに加えて、加算光は位相変調を受けているので、加算光がホログラム記録媒体の中で集中することがなく、再生時において、0次光がホログラム記録媒体を劣化することを防止できる。又、記録時に用いられる信号光と再生時に用いられる加算光とに対して、同一の位相マスクが作用するようにして、記録された情報を正しく再生することができる。
又、記録時には、さらに、ピクセル単位で位相が変化する、上述した位相マスクよりも位相の変化がより大きな位相マスクを信号光領域に作用させて、記録時における0次光の発生を防止することができる。
(実施形態のホログラム記録再生装置)
図1に、ホログラム記録再生装置の主要部である光学部を中心として、ホログラム記録媒体を用いて記録再生をおこなうホログラム記録再生装置の模式図を示す。図1に示すホログラム記録再生装置は、ホログラムの記録及び/又は再生をおこなう装置であり、コアキシャル方式を採用するものである。
図1に、ホログラム記録再生装置の主要部である光学部を中心として、ホログラム記録媒体を用いて記録再生をおこなうホログラム記録再生装置の模式図を示す。図1に示すホログラム記録再生装置は、ホログラムの記録及び/又は再生をおこなう装置であり、コアキシャル方式を採用するものである。
図1に示すホログラム記録再生装置1に用いるホログラム記録媒体48は、コンパクト・ディスク(CD)やデジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)と同様のディスク型(円盤形状)をしており、ホログラム記録媒体48の最内周部には、回転中心を位置決めするための孔部が設けられている。このようなホログラム記録媒体48に記録再生をおこなうホログラム記録再生装置1は、図1に図示された光学部を主要な構成部分として備えている。また、詳細は図示しない電気回路で構成される制御部100を備え、さらに、そのすべては図示しないが図1にその一部を図示する機構部を備えている。そして、ホログラム記録再生装置1は、制御部100を介して図示しない外部装置に接続されるようになされている。ここで、外部装置は、例えば、ホストコンピュータ、映像表示装置(モニター)等である。ここで、ホログラム記録媒体48は、記録材料とこの記録材料を両側から挟み込む基板とを有している。また、再生光によって発生された回折光を反射して、再び、光学部に戻すための反射膜をさらに有している。
ホログラム記録再生装置1の光学部は、光ビームが通過する光路を形成している。光学部は、レーザ光源10、アイソレーター11、シャッター12、フーリエ変換レンズ13、フーリエ変換レンズ14、可動ミラー16a、空間変調器19、位相マスク70、偏光ビームスプリッタ20、フーリエ変換レンズ21、フーリエ変換レンズ24、偏光ビームスプリッタ27、フーリエ変換レンズ41、ピンホール71、フーリエ変換レンズ42、1/4波長板26、対物レンズ28、フーリエ変換レンズ29、ミラー30、フーリエ変換レンズ31、イメージセンサ32を有している。対物レンズ28と図示しないミラーとによって形成される対物レンズユニット36と、1/4波長板26と、フーリエ変換レンズ42とは、トラックキング可動部34に固着されている。なお、対物レンズユニット36に配されたミラーは、図1の紙面の左右方向に進行する光ビームの通過方向を、紙面の表裏方向に変換するためのものである。
また、図1に表された機構部の一部としての可動ミラーユニット16に設けられた可動ミラーアクチュエータ(図示せず)によって可動ミラー16aの回動の角度は制御され、対物レンズ28を通過してホログラム記録媒体48に照射される光ビームを紙面の上下方向(タンジェンシャル方向)に移動させるようになされている。また、トラックキング可動部34は、フーリエ変換レンズ42、1/4波長板26及び対物レンズユニット36を一体として紙面の左右(横)方向(ラジアル方向)に微少量だけ移動するようになされている。このトラックキング可動部34の移動は、機構部の一部である可動部アクチュエータ60を用いておこなわれるようになされている。すなわち、可動ミラーアクチュエータは、光スポットをタンジェンシャル方向に移動させる機構部である。また、トラックキング可動部34は、光スポットをトラッキング方向に移動させる機構部である。
また、図1に表された他の機構部としては、ホログラム記録媒体48を回転させる機構部分及びフォーカスサーボをおこなう機構部が示されている。ホログラム記録媒体48はターンテーブルに例えば、マグネットチャッキングによって装着されるようになされ、このターンテーブルはスピンドルモータ33の回転軸と固着されている。このような機構部の構造によって、スピンドルモータ33の駆動力でホログラム記録媒体48を回転させるようになされている。スピンドルモータ33とスピンドルモータ基台58との間にはフォーカスアクチュエータ55が装着され、図1に示す図の紙面の表裏方向(フォーカス方向)のホログラム記録媒体48とスピンドルモータ基台58との間の距離を変化させることができるようになされている。また、スライド送りモータ56の回転軸に固着され、この回転軸とともに回転する第1の歯車57aと、スピンドルモータ基台58に固着された第2の歯車57bとが噛み合って、スライド送りモータ56の回転にともなって、ホログラム記録媒体48を紙面の左右方向へ移動させることができるようになされている。このようなスライド送り機構は、ホログラム記録媒体48の半径に相当する距離に渡り、トラッキングサーボの低域成分の大きな量の変位に対応してホログラム記録媒体48を移動させることができるようにされている。
(記録の作用の概要説明)
光学部の各部の作用と併せてホログラムへの記録がどの様におこなわれるかについて、順に説明をする。
光学部の各部の作用と併せてホログラムへの記録がどの様におこなわれるかについて、順に説明をする。
レーザ光源10は、例えば、レーザ光の波長が405nm(ナノ・メータ)とされているレーザ(いわゆる、青色レーザ)を有し、青色レーザからの光ビームを外部共振器に通過させ、光ビームの波長を変化できるようにされている。アイソレーター11は、レンズ等の反射によって戻光が戻った場合でも、外部共振器型レーザを構成する青色レーザに戻光が戻ることを防いで、シングルモードの発振を維持するためのものである。レーザ光の波長は、制御部100からの信号によって制御される。
シャッター12は光ビームを透過、又は、遮蔽するための素子であり、制御部100からの信号によって光ビームが透過させられるか、遮蔽されるかが制御される。フーリエ変換レンズ13及びフーリエ変換レンズ14は光ビームの径を拡大するためのものである。このようにして径を拡大された光ビームは、可動ミラー16aに入射して、偏光ビームスプリッタ20によって光ビームは空間変調器19に向かうように反射する。このようにして、空間変調器19の所望の領域、すなわち、後述する空間変調器19の参照光領域19a及び信号光領域19b(図2を参照)に光ビームを照射することが可能とされる。
空間変調器19は、上述する参照光領域19a及び信号光領域19bの各々に所定のパターンを表示して、光ビームに空間的な変調を施して参照光と信号光とを得るためのものであり、例えば、反射型強誘電体液晶が採用されている。反射型強誘電体液晶は2次元に微細なサイズに分割されたピクセルの集合として形成されている。各々のピクセルは、例えば、10μmの正方形として形成されている。また空間変調器19の縦と横に各々1000個のピクセルが配置され、空間変調器19に配置されるピクセルの総数は、1000×1000=1000000個とされており、このピクセルによって、参照光領域及び信号光領域の各々、さらには、後述する再生の動作においては、再生光領域が形成されようになされている。そして、上述した所定のパターンとは、このピクセルの各々に照射される光ビームを反射するようにするか、反射しないようにするかの組み合わせをピクセル単位で選ぶものであって、このパターンの形態は制御部100によって制御されている。
位相マスク70は、空間変調器19に接して配置され、空間変調器19のピクセル(画素)ごとに位相を変える。位相マスク70の材質はガラスが多く用いられ、空間変調器19のピクセルの大きさに対応させてガラス厚を変え、π/2(単位はラジアン)と−π/2の2つの位相がランダムに配置されるようにする。それぞれの位相の存在確率が各々1/2なのでホログラム記録媒体48中の0次光が打ち消しあうようにできる。
ピンホール71は、アパーチャと呼ばれるものであり、ホログラム記録媒体48に向かう信号光及びホログラムから生じた回折光は、このピンホール71を通過するようになされる。このピンホールは、光ビームの周辺部分を除去して、ノイズを減らすために用いられるものである。
図2は、参照光領域19a及び信号光領域19bの各々に表示されるパターンを示している。図2の紙面の色と同じ部分(以下、白部と称する)は光ビームを反射する部分で、黒い部分(以下、黒部と称する)は光ビームを反射しない部分である。ここで、制御部100においては記録データを2値のブロック符号としてエンコードして、「1」を白い部分に、「0」を黒い部分に対応させている。内側の多角形が信号光を発生するための信号光領域であり、参照光を発生する参照光領域19aは明るいドーナツ部分であり、同図のように白部と黒部とをランダムに配置する方式もあるし、全部を白部とする方式もあり、様々である。多角形とドーナツの間に黒い部分があり、これによって信号光と参照光を分けている。ここで、信号光領域19bは、多角形とされているが、参照光領域19aと共通部分を有しないものであれば、多角形に限らず、どの様な形状としても良く、例えば、円形の領域としても良い。
再び、図1に示す各部の説明に戻る。空間変調器19で光強度変調を受け、位相マスク70で位相変調を受けた参照光及び信号光はその偏光方向が入射光に対してπ/2異なって直交するので偏光ビームスプリッタ20を透過してフーリエ変換レンズ21の方向に向かう。フーリエ変換レンズ21及びフーリエ変換レンズ24を通過した光ビームは、偏光ビームスプリッタ27に入射する。
偏光ビームスプリッタ27は、参照光及び信号光をフーリエ変換レンズ41の方向に向かわせるとともに、後述する回折光をフーリエ変換レンズ29の方向に向かわせるためのものである。
フーリエ変換レンズ41、ピンホール71及びフーリエ変換レンズ42を通過した光ビームは、さらに、1/4波長板26を透過し、対物レンズユニット36に配されたミラーによって方向が変えられた光ビームは対物レンズで集光されて、参照光と信号光とによって形成される干渉縞に応じたホログラムをホログラム記録媒体48の記録材料の中に形成してホログラムの記録がおこなわれる。
(再生の作用の概要説明)
光学部の各部の作用と併せてホログラムからの再生がどの様におこなわれるかについて、簡単に順に説明をする。
光学部の各部の作用と併せてホログラムからの再生がどの様におこなわれるかについて、簡単に順に説明をする。
ホログラムの再生に際しては、参照光領域19aは、再生光領域として機能し再生光領域19aには記録時におけると同様なパターンが表示される。なお、本実施形態では、記録における参照光領域と再生における再生光領域とは同一領域としているので、参照光領域19a、再生光領域19aと、同一の符号を付して特定し、参照光を得る目的の領域であるか再生光を得る目的の領域であるかについては、その名称で区別をすることとする。また、信号光領域19bのピクセルは、再生の動作においては、従来は、すべて黒部とされ、信号光領域19bからは光ビームを反射しないようになされていた。しかしながら、本実施形態では、再生においては、信号光領域19bも積極的に使用されているが、これについては、後述する。空間変調器19にこのようなパターンを表示する制御は、制御部100から空間変調器19に信号を供給することによって制御される。
空間変調器19にこのようなパターンを表示した後に、記録をおこなうときと同様に光ビームを空間変調器19に照射して、光ビームを変調して、変調された光ビームは、記録時におけると同様に、途中の光学部品を通過して最終的に対物レンズ28で集光されて、ホログラム記録媒体48の記録材料に集光される。記録材料に形成されているホログラムに応じて発生する回折光は、ホログラム記録媒体48の反射膜で反射されて、再び、対物レンズ28、1/4波長板26を通過して、他の光学部材を通過して、偏光ビームスプリッタ27に至る。
ここで、1/4波長板26は、行きの経路では、青色光ビームの偏光を直線偏光から円偏光に変換し、帰りの経路では、1/4波長板26に入射する。青色光ビームの偏光が円偏光である場合には円偏光から直線偏光に変換する。このときの戻光の青色光ビームの偏光面は行きの偏光面とπ/2異なって直交することとなるので、偏光ビームスプリッタ27に至った回折光は、フーリエ変換レンズ29の方向へ向かうこととなる。
ミラー30は、フーリエ変換レンズ29からの回折光を反射してフーリエ変換レンズ31に導くものであり、ミラー30は光ビームの通過する光路を折り曲げて光学部のサイズを小さくするために用いられている。また、フーリエ変換レンズ29とフーリエ変換レンズ31とは、倍率が調整された実像がイメージセンサ32に形成されるようにするためのものである。イメージセンサ32は、シーモス・センサ(CMOSセンサ)、チャージ・カップルト・デバィス(CCD)等に代表される光学受光素子であって、微細に分割された複数の受光素子(ピクセル)が2次元に配置され、各々の受光素子を照射する回折光の明暗の光強度に応じた電気信号を各々のピクセルで検出するものである。制御部100ではこの電気信号を入力して記録データを再生するための信号処理をおこなうようになされている。ここで、記録データは、従来のCD、DVDのような光ディスクと比較すると、1×103〜1×106 bit(ビット)のデータ(1ペ−ジ分のデータ)を一度に記録、再生できるのが特徴である。
(コヒーレント加算について)
図3を引用してピンホール71の作用についてより詳しく説明する。図3はピンホール71の作用を模式的に示す図である。図3の実線で示すグラフは、回折光の振幅を示すものであり、図3の破線で示すグラフはイメージセンサ32で検出される明暗に応じた電気信号の電圧を示すものである。なお、図3の縦軸は、回折光の振幅の大きさ、電気信号の電圧レベルを示し、横軸はイメージセンサ32上の位置を示すものである。ここで、ピンホール71は、再生時においては、光ビーム(回折光)の周辺部分を除去して、ノイズを減らすように作用する。しかしながら、高次光をカットするため、図3の実線で示すようにサイドローブを生じ、このサイドローブは位相の反転を生じる。ここで、振幅がプラスの部分を位相0とすると、マイナスの部分はπに対応する。イメージセンサ32が検知するのは、光強度(振幅の2乗)なので、図3の破線で示すように位相情報は検知されず、2乗演算された光強度の情報のみが検知され、また、折り返しが生じているので、イメージセンサ32から得られる電気信号は線形性を失っている。
図3を引用してピンホール71の作用についてより詳しく説明する。図3はピンホール71の作用を模式的に示す図である。図3の実線で示すグラフは、回折光の振幅を示すものであり、図3の破線で示すグラフはイメージセンサ32で検出される明暗に応じた電気信号の電圧を示すものである。なお、図3の縦軸は、回折光の振幅の大きさ、電気信号の電圧レベルを示し、横軸はイメージセンサ32上の位置を示すものである。ここで、ピンホール71は、再生時においては、光ビーム(回折光)の周辺部分を除去して、ノイズを減らすように作用する。しかしながら、高次光をカットするため、図3の実線で示すようにサイドローブを生じ、このサイドローブは位相の反転を生じる。ここで、振幅がプラスの部分を位相0とすると、マイナスの部分はπに対応する。イメージセンサ32が検知するのは、光強度(振幅の2乗)なので、図3の破線で示すように位相情報は検知されず、2乗演算された光強度の情報のみが検知され、また、折り返しが生じているので、イメージセンサ32から得られる電気信号は線形性を失っている。
このように、振幅の大小関係に関する情報が失われる場合には、後の信号処理が困難となるので、実施形態では、コヒーレント加算によって、振幅の大小関係に関する情報を保っている。コヒーレント加算とは、再生光とともに、加算光を照射する処理である。加算光は、信号光領域19bに該当するピクセル(画素)をすべて灰部として、位相マスク70によって、位相を一様にπ/2ずらして得るようにしている。以下の説明では、加算光領域と信号光領域とを同じ領域に設定しているので、空間変調器19の加算光領域についても参照光領域と同様の符号を付して用いる。加算光の発生に寄与する加算光領域19bにおける位相をπ/2ずらすためには、加算光領域19b及び再生光領域19aの各々に対応する部分の厚さが、位相のπ/2あるいはその奇数倍ずれたガラスを位相マスク70として、再生のときのみ空間変調器19の近傍に入れればいい。これによって、照射される光ビームの位相はπ/2ずれるが、再生光をホログラムに照射することによって得られる回折光の位相は、π/2のずれが生じるので、回折光においては、振幅がプラスの部分の位相と反射光の位相が同じになり、加算後の振幅のグラフが上方に持ち上がり、すべての部分において位相がプラスとなる(図4を参照)。これにより強度の折り返しがなくなり、信号処理によって線形性を回復できる。なお、上述したように、加算光領域のみの光量を減じるフィルタを光路中に導入する場合には、信号光領域19bに該当するピクセル(画素)をすべて白部とするものであるが、この実施形態では、光量を減じるフィルタを採用していない。
図4は、加算光と再生光とをともに照射する場合におけるイメージセンサ32における光ビームを示すものである。図4の実線で示すグラフは、光ビームの振幅を示すものであり、図4の破線で示すグラフはイメージセンサ32で検出される明暗に応じた電気信号の電圧を示すものである。なお、図4の縦軸は、光ビームの振幅の大きさ、又は電気信号の電圧レベルを示し、横軸はイメージセンサ32上の位置を示すものである。図4から明らかなように、電気信号の電圧レベルに折り返しは生じないので、電気信号の電圧レベルの平方根を得る演算によって容易に回折光の振幅を再生することが可能である。
(位相マスクの作用について)
上述したように、信号光及び参照光は、対物レンズでフーリエ変換され、メディア中に非常に強い0次光を生じる。このため、0次光照射部分のモノマを多量に消費するのである。ホログラムメモリは、ほぼ同一の位置に多数回の記録をおこなうことによって高密度記録をおこなうので、このような局所的なモノマの消費は有害である。そこで、位相マスク70を用いることによって、空間変調器19の各ピクセルからの光ビームの位相を変え、これによって、0次光照射によって生じるモノマの多量の消費を防止している。しかしながら、この方法は、0次光の集中を防ぐにはいいのだが、別の問題を生じる。同じ「1」、すなわち、白部となるピクセルであっても位相がπ/2と−π/2のものがあり、その2つが隣接した場合は、受光素子上の再生画像において境界の振幅が打ち消しあい、光強度が低下して、信号を「0」と判定してしまう。
上述したように、信号光及び参照光は、対物レンズでフーリエ変換され、メディア中に非常に強い0次光を生じる。このため、0次光照射部分のモノマを多量に消費するのである。ホログラムメモリは、ほぼ同一の位置に多数回の記録をおこなうことによって高密度記録をおこなうので、このような局所的なモノマの消費は有害である。そこで、位相マスク70を用いることによって、空間変調器19の各ピクセルからの光ビームの位相を変え、これによって、0次光照射によって生じるモノマの多量の消費を防止している。しかしながら、この方法は、0次光の集中を防ぐにはいいのだが、別の問題を生じる。同じ「1」、すなわち、白部となるピクセルであっても位相がπ/2と−π/2のものがあり、その2つが隣接した場合は、受光素子上の再生画像において境界の振幅が打ち消しあい、光強度が低下して、信号を「0」と判定してしまう。
図5は、位相マスク70として、隣接するピクセルで相互にπだけ位相が異なる位相マスクを用いる場合における再生の作用を示す図である。このような位相マスクは、通常に用いられる形態の位相マスクである。図5(A)は、信号光振幅を示し、「1」で示す部分は空間変調器19の信号光領域19bのピクセルが「1」、すなわち、白部となる場合で振幅が大きい場合を示すものである。図5(A)の縦軸は振幅のレベルを示し、図5(A)の横軸は各々のピクセルのある一方向(例えば、図2に示す信号光領域19bの中心、すなわち、ドーナツ形状の形状とされる再生光領域19aの2つの同心円から放射状に延びる半径方向)の位置を示すものである。図5(B)は、位相マスク70の位相を示し、信号光領域19bのピクセルと同じ位置に対応して、π/2又は−π/2のいずれかの位相を有する。図5(B)の縦軸は位相を示し、図5(B)の横軸は図5(A)と同様の位置に対応する位相マスクにおけるピクセルの位置を示すものである。図5(C)は、イメージセンサ32における光強度を示すものである。図5(C)の縦軸はイメージセンサ32で得られる光強度であり、電気信号の電圧レベルでもある。図5(C)の横軸はイメージセンサ32の各々のピクセルの、信号光領域19bのピクセルに1対1に対応するピクセルの位置を示すものである。
このような位相マスクを位相マスク70として採用する場合には、信号光領域19bのピクセルでは、図5(A)に示すように横軸方向に沿って、「1」、「1」、「0」、「1」に対応した情報を有するピクセルの配置となっているにも拘わらず、イメージセンサ32のピクセルでは、図5(C)に示すように、最初の2つの「1」の幅が細くなった情報が信号光領域19bに対応する各ピクセルから得られるものとなっている。すなわち、記録時において、図5(A)に示す最初の位置の「1」が再生時において、図5(C)に示す最初の位置の幅が細くなった「1」に、図5(A)に示す2番目の「1」が再生時において、図5(C)に示す2番目の位置の幅が細くなった「1」に、各々変換されてしまう。すなわち、空間変調器19に表示したパターン(各々のピクセルの「1」(白部)又は「0」(黒部)の組み合わせ)とイメージセンサ32で検出されるパターンとが異なったものとなる。すなわち、このような位相マスクを採用する場合には、信号の線形性は失われ、幅が細くなった「1」は、「0」と誤検出される場合も多くなり、再生される信号のS/N(信号対雑音比)を著しく下げることとなる。
コヒーレント加算は、このような問題を解決できる。図6(A)ないし図6(C)はコヒーレント加算によって、失われた情報を再生する原理を模式的に示す図である。図6(A)は回折光の振幅と位相とを、空間変調器19のピクセル位置との対応で示すものであり、縦軸は振幅を示し、横軸は位置を示すものである。図6(A)に示す回折光は、イメージセンサ32に照射される。このまま照射される場合には、振幅と位相の両方の作用によって、イメージセンサ32における光強度は、図5(C)に示すように、位置方向に、「0」、幅が細くなった「1」、幅が細くなった「1」、「0」、「1」、「0」、「0」として光強度が得られる。しかしながら、コヒーレント加算がおこなわれる場合には、さらに加算光がホログラム媒体48に照射され、反射光がイメージセンサ32に作用するので、イメージセンサ32に得られる光強度はこれとは異なるものとできる。
図6(B)は加算光の振幅と位相とを示すものである。本実施形態では、加算光は、信号光領域19bと同じ領域である加算光領域19bのピクセルをすべて灰部とすることによって、得ている。また、この場合の加算光領域19bに作用する位相マスクの位相は、π/2又は−π/2のいずれか、一方の均一な位相とされる。以下の説明では、位相マスクの位相はπ/2としたが、位相が−π/2である場合にも同様な結論が得られる。イメージセンサ32の上で、回折光と加算光の加算がされるが、この場合には、位相の影響も及ぶものとなる。図6(C)は、加算光の位相のπ/2を加味して加算した場合のイメージセンサの上での光強度を示すものである。ここで、加算光のレベルは、上述したように、ピンホール71の作用によって生じる極性の折り返しを防止するに十分なレベルとすることによってコヒーレント加算の効果が得られることとなる。なお、説明を簡単にするために、反射光の影響によって、振幅の最低レベルが丁度0となるものとして以下説明をする。
図6(C)に示すように、イメージセンサ32上で2つの光の振幅が加算され、光強度はその2乗で表される。これにより、イメージセンサ32上の各々のピクセルからの電気信号は、図6(C)に示すように2、1、0の3値に分かれて得られる。そして、2と0とを「1」に対応させ、1を「0」に対応させれば、空間変調器19の信号光領域19bに表示された「1」(白部)と「0」(黒部)に基づいて記録された情報が完全にイメージセンサ32の対応するピクセルから再生できることとなる。上述の説明は、説明を簡単にするために、反射光の影響によって、振幅の最低レベルが丁度0となるものとした場合の説明であるが、振幅の最低レベルが丁度0ではない場合には、イメージセンサ32で検出されるオフセット量を引き算して、その後、2、1、0の3値に分離することによって、同様に「1」、「0」の2値信号を再生できる。
また、2、1、0の3値を2値に変換する演算、オフセット量が生じる場合におけるオフセット量を引く演算は制御部100において容易におこなうことができる。
上述した実施形態においては、記録時には、位相マスクの作用によって、0次光の発生を防止し、M/#の浪費を防止することができた。また、再生時においては、コヒーレント加算をおこなうことによって、ピンホール71を設けることによって発生するサイドローブが折り返されることを防止するとともに、加算光を発生する領域を信号光領域19bと同一の領域である加算光領域19bとすることによって、イメージセンサ32における光強度を3値とし、この3値を2値に変換して、記録された情報を再生するものであり、良好なる記録再生特性を得ることができるものである。しかしながら、加算光の位相がすべて同じなので、再生時において、この場合にもメディア(ホログラム記録媒体)内で強い0次光を生じるという問題がなお存在している。この0次光は、再生を繰り返す毎にメディアの劣化を生じ、その結果、再生可能な回数を引き下げる要因となる。そこで、以下に述べる第1実施形態ないし第3実施形態では、再生時におけるホログラム記録媒体の劣化を防止する対策を施したものである。以下のいずれの変形例においても、加算光にゆったりとした位相マスクを作用させる点が共通の特徴である。
(第1実施形態)
図7に第1実施形態に用いる位相マスクの一部を拡大した平面図を示す。図7は、コンピュータシミュレーションで用いた位相マスクを視覚的に示すものである。図7の左部の図面中の縦軸、横軸はμmを単位とする距離を示すものであり、図7の右部の棒状の濃淡を有する直方体は、左部の図面中の白黒の濃淡が表す位相の基準尺度を示すものであり、図面中の−2、+2までの数値は位相をπ単位で示すものである。例えば、+1に対応する黒と白との中間の灰色は、πに対応するものである。図7に示す位相マスクは図1に示すホログラム記録再生装置において、位相マスク70として用いられる。この位相マスクは、コヒーレント加算の機能を発揮するとともに、再生時にホログラム記録媒体48の中に0次光が生じないようにすることができるように、ゆったりした位相の分布を持たせる点に特徴を有するものである。
図7に第1実施形態に用いる位相マスクの一部を拡大した平面図を示す。図7は、コンピュータシミュレーションで用いた位相マスクを視覚的に示すものである。図7の左部の図面中の縦軸、横軸はμmを単位とする距離を示すものであり、図7の右部の棒状の濃淡を有する直方体は、左部の図面中の白黒の濃淡が表す位相の基準尺度を示すものであり、図面中の−2、+2までの数値は位相をπ単位で示すものである。例えば、+1に対応する黒と白との中間の灰色は、πに対応するものである。図7に示す位相マスクは図1に示すホログラム記録再生装置において、位相マスク70として用いられる。この位相マスクは、コヒーレント加算の機能を発揮するとともに、再生時にホログラム記録媒体48の中に0次光が生じないようにすることができるように、ゆったりした位相の分布を持たせる点に特徴を有するものである。
図7に示す位相マスクを図1に示すホログラム記録再生装置1の位相マスク70として用いて再生する場合のホログラム記録媒体48内における0次光、1次光、それ以上の高次光の光強度のピーク値についてシミュレーションをおこなった結果では、光強度のピーク値(0次光、1次光、それ以上の高次光の中での最大の光強度の値)を1/10以下に下げることができた。また、図7に示す位相マスクの第2の特徴は、隣接するピクセルにおける位相差が小さくいことである。このようにすることにより、再生時における0次光の発生を防止しつつ、コヒーレント加算が可能とできる。
図8は、位相マスクがゆっくりとした空間的な位相変化を有する場合のコヒーレント加算の概念を表す図である。図8は、空間変調器19の信号光領域19bと加算光領域19bとに対応する範囲の各々に同一特性を有する、ゆったりとした位相変化の特性を有する位相マスクを配置した場合における記録再生特性を示すものである。すなわち、位相マスクは信号光と加算光とに対して同様の位相変調を与える。これによって、記録されたホログラムが再生できることとなる。図8(C)に示すように、コヒーレント加算の結果得られるイメージセンサ32における光強度は、図5(C)に示すように、3値に分離することなく、2値となり、イメージセンサ32の各々のピクセルからの電気信号を所定閾値によって2分して、「1」又は「0」を直接に得ることができる。
ゆったりとした位相変化を与える位相マスクのみが作用する場合でも、記録時における0次光の発生を1/10以下に抑えることができる。このマスクは記録/再生にかかわらず機能するからである。しかしながらさらに0次光をおさえるためには、信号光領域19bに対しては、大きい位相変化を有する位相マスク、例えば、ピクセル単位で位相が急激に変化する位相マスクを、同時に作用させるのがより好ましい。ここで、ゆったりとした位相変化とは、空間的な位置に対する位相変化がゆったりとしている(位置に対する位相の微係数が小さい)ことを言い、大きい位相変化とは、空間的な位置に対する位相変化が大きい(位置に対する位相の微係数が大きい)ことを言うものである。この場合には、再生光によって生じた回折光の位相は、位相マスクの影響でゆったりと変動している成分と位相反転の成分とが混ざった状態になっている。加算光は、従来例と同様にπ/2だけ位相を均一にずらして照射するが、回折光の位相が再生光に対してπ/2ずれる兼ね合いで、イメージセンサ32では回折光のゆったりした位相成分と同じ位相で同じ変動をする。なお、光の位相は0から2πまでを数百THz(テラヘルツ)のオーダーで繰り返し回っている。
図8に描いた位相は一方の位相を固定して考えた相対的なものである。回折光も反射光も位置に関してゆったりと変動しているが、各画素について考えれば、相対的には同じ位相なので、従来のコヒーレント加算と同様の効果が起きる。つまり、加算光を用いることによって、図3の実線を図4に示す実線のように上方に移動させて光の強度の折り返しが生じないようにできる。
位相マスクの位相の急激な変動を避けるのは、ホログラム記録再生装置の相互の互換性を保つためでもある。あるホログラム記録再生装置の位相マスクと別のホログラム記録再生装置の位相マスクの位置が多少異なる場合、位相マスクの形状(つまり位相の分布)が多少異なる場合であっても変動がゆったりしていれば、再生に大きな支障を与えないからである。隣接するピクセル(画素)間の位相差がπ/2では加算効果が全くないので、隣接するピクセル間の位相差はその1/3程度に抑えることが望ましい。つまりπ/6以下が望ましい。これが、‘ゆったり’の意味合いとなる。
図7に示す位相マスクでは、パターンが繰り返しているが、この場合、0次光は小さいレベルとできるものの1次光やそれ以上の高次光が発生する。そのために、上述したように光強度のピーク値が1/10程度となる。周期性をできるだけ排除することによって、さらにピーク値を抑圧できるが、それは必要に応じておこなえば良いものである。
図9(A)及び図9(B)は、ゆったりとした位相マスクの断面図の例を示すものである。図9(A)は曲面のみで位相マスクの断面が形成されている場合を示し、図9(B)は平面部分を有して位相マスクの断面が形成されている場合を示すものである。図9(A)に示す位相マスクは、例えば、信号光及び加算光の進行方向に対して凹凸の断面を有するガラス材で形成されるようにし、図9(B)に示す位相マスクは、例えば、信号光及び加算光の進行方向に対して、一部が凹凸の断面を有し、一部が一定の厚みを有するガラス材で形成されるようにしている。ただし、図9(B)に示す位相マスクでは隣接するピクセルの相互の位相差が急激なものとならないように斜面部分と一定の厚みを有する部分との境界部分の各々の平面と平面の交線において角が生じないようにする(空間的な微分係数を所定範囲以内とする)ことが望ましい。この場合、一定の厚みを有する平坦部ではピクセルに対応する領域の相互において生じる位相差は0である。
(第2実施形態)
位相マスクの他の形態としては、上述したような、ゆったりした位相変動に、さらに、もう1枚の位相マスク重ね合わせ、ピクセルごとに異なる位相変化を得るようにしても良い。ピクセルごとの位相変化を得る場合においては、上述したように、もう1枚の位相マスクを使用しても良く、信号光領域及び加算光領域のピクセル単位で光強度変調と位相変調とを可能とするように、空間変調器と位相マスクとが一体として形成される光学部材を用いるようにしても良い。このように光強度と位相との両方に変調を与える空間変調器(強度/位相変調器と称する)を、図1における空間変調器19として使用する場合には、制御部100からの制御によって、ピクセル単位で自由に光強度変調と位相変調を行うことができる。図1に示すホログラム記録再生装置1において、このような強度/位相変調器を空間変調器19として用い、位相マスク70を取り去る場合においては、ゆったりとした位相変化とピクセルごとの位相変化とを足し合わせたものを一度に得ることができる。また、このような強度/位相変調器を用いるならば、ゆったりとした位相変化のみを得ることもできる。さらに、加算光の位相をπ/2ずらすことも容易である。
位相マスクの他の形態としては、上述したような、ゆったりした位相変動に、さらに、もう1枚の位相マスク重ね合わせ、ピクセルごとに異なる位相変化を得るようにしても良い。ピクセルごとの位相変化を得る場合においては、上述したように、もう1枚の位相マスクを使用しても良く、信号光領域及び加算光領域のピクセル単位で光強度変調と位相変調とを可能とするように、空間変調器と位相マスクとが一体として形成される光学部材を用いるようにしても良い。このように光強度と位相との両方に変調を与える空間変調器(強度/位相変調器と称する)を、図1における空間変調器19として使用する場合には、制御部100からの制御によって、ピクセル単位で自由に光強度変調と位相変調を行うことができる。図1に示すホログラム記録再生装置1において、このような強度/位相変調器を空間変調器19として用い、位相マスク70を取り去る場合においては、ゆったりとした位相変化とピクセルごとの位相変化とを足し合わせたものを一度に得ることができる。また、このような強度/位相変調器を用いるならば、ゆったりとした位相変化のみを得ることもできる。さらに、加算光の位相をπ/2ずらすことも容易である。
図10は、第2実施形態に係るホログラム記録再生装置の一部を拡大して示す図である。位相マスク70aは、図9(A)又は図9(B)に示すような、ゆったりとした位相マスクであり、位相マスク70cは、ピクセル単位で位相を変化させる位相マスクである。図11は位相マスク70cの断面図を示すものであり、図11における記号m1は任意の奇数、記号m2は任意の偶数、λは光ビーム波長、nは屈折率を各々表すものである。
位相マスク70aは、記録の動作、再生の動作いずれにおいても、光ビームに作用する。一方、位相マスク70cは、記録の動作においては、光ビームに作用するが、再生の動作においては光ビームに作用しない。このような動作を可能とするために、空間変調器19と機械的な基準面を同一として配置されるモータ65と、モータ65の回転軸に連結される位相マスク70cの支持部材66とを有する。制御部100は記録の動作においては、図10に図示されるように位相マスク70cを位相マスク70aと密着配置するようにモータ65を回転制御し、再生の動作においては、位相マスク70cを位相マスク70aが光ビームが通過する光路中に挿入しないように回転制御する。
図12は、第2実施形態に係る別のホログラム記録再生装置の一部を拡大して示す図である。制御部100は再生の動作においては、図12に図示されるように位相マスク70dを空間変調器19と密着配置するようにモータ65を回転制御し、制御部100は記録の動作においては、位相マスク70dを空間変調器19と密着配置するようにモータ65を回転制御する。図13は、位相マスク70dの断面を示す図であり、位相マスク70dはゆっくりした位相マスクの特性とピクセル単位で位相変化をする位相マスクの特性とを組み合わせた特性を有している。
図14は、第2実施形態に係るさらに別のホログラム記録再生装置の一部を拡大して示す図である。図14に示される位相マスク70eは、制御部100からの電気信号によって、位相を制御することができる素子であり、例えば、浜松ホトニクス株式会社から市販されている位相変調器である。このような構成では、モータ65を採用すること無く、記録の動作においては位相マスク70eをピクセル単位の位相マスクとして動作させ、再生の動作においては位相マスク70eをピクセル単位の位相マスクとして動作させないように制御部100によって制御が可能である。
図15(A)ないし図15(E)は、ゆったりとした位相変化を有する位相マスクにおいて、ゆったりの度合いを変えて、その影響を確認するシミュレーション結果を示す。各々の図において、縦軸は出現頻度を示すものであり、横軸は位相を示すものである。図15(A)は、1ピクセルごとの位相変化を有する位相マスクのみで、ゆったりとした位相変化を有する位相マスクを用いない場合である。図15(B)、図15(C)、図15(D)、図15(E)に示す順で、ゆったりとした位相変化を有する位相マスクの影響が大きくなり、位相の分布が大きくなる。
図16は位相変調の分散(Variance of phase modulation)と光強度のピーク値(Peak intensity)との関係を示す図である。図16によれば、位相変調の分散の変化にも拘わらず、光強度が変わらないことがわかる。図16において、□印が全く位相マスクを使わない場合(No Phasemask)のピーク値であり、これに較べ、位相マスクを使う場合には、位相変調の分散の大小に関わらずほぼ3桁、ピーク値が減少している。つまり、ゆったりした位相変動と細かく位相変動する要素を重ね合わせると、細かいほうの特性が優位となる。したがって記録時に光強度のピークを大きく下げる必要があるならば、このように2つの要素を重ね合わせることが有用である。なお、再生に関してはゆったりとした位相変化を有する位相マスク(ゆったり位相マスク)のみを用いて加算光を照射することによって良好な再生特性を得ることができる。
(第3実施形態)
米国特許第US7065032号明細書に記載された技術では、ピクセル(画素)の明暗ではなく、ピクセルの位相を変化させて記録再生をしている。このようにして、多値位相記録が可能である。この方法では、コヒーレント加算をすることによって、位相の違いを光の明暗に変えて再生することができる。このような位相記録であっても、ゆったりとした位相変化を有する位相マスクによって、加算光の0次光の集中を防ぐことができる。
米国特許第US7065032号明細書に記載された技術では、ピクセル(画素)の明暗ではなく、ピクセルの位相を変化させて記録再生をしている。このようにして、多値位相記録が可能である。この方法では、コヒーレント加算をすることによって、位相の違いを光の明暗に変えて再生することができる。このような位相記録であっても、ゆったりとした位相変化を有する位相マスクによって、加算光の0次光の集中を防ぐことができる。
実施形態のホログラム記録再生装置では、上述したように、位相マスクを用いて0次光の集中を防止し、さらに、コヒーレント加算を用いることによって、再生情報を正しく再現できる。特に、ゆったりとした位相変化を有する位相マスクを採用する場合においては、ホログラム記録再生装置の相互の互換性、所謂、ドライブの互換性を容易に保つことができる。
1、2 ホログラム記録再生装置、 10 レーザ光源、 11 アイソレーター、 12 シャッター、 13、14、21、24、29、31、42 フーリエ変換レンズ、 16 可動ミラーユニット、 16a 可動ミラー、 19 空間変調器、 19a 参照光領域、再生光領域、 19b 信号光領域、加算光領域 20、27 偏光ビームスプリッタ、 26 1/4波長板、 28 対物レンズ、 30 ミラー、 32 イメージセンサ、 33 スピンドルモータ、 34 トラックキング可動部、 36 対物レンズユニット、 40 位相マスク、 48 ホログラム記録媒体、 55 フォーカスアクチュエータ、 56 モータ、 57a、57b 歯車、 58 スピンドルモータ基台、 60 可動部アクチュエータ、 70、70a、70d、70e 位相マスク、 71 ピンホール、 100 制御部
Claims (6)
- ホログラム記録媒体に信号光及び参照光を照射してホログラムとして記録データを記録し、前記ホログラム記録媒体に記録されたホログラムに再生光を照射して回折光を得て、前記回折光より記録データを再生するホログラム記録再生装置において、
前記参照光を発生するための参照光領域と前記再生光を発生するための再生光領域と前記信号光を発生するための信号光領域と加算光を発生するための加算光領域との各々が形成される空間変調器と、
前記参照光領域と前記再生光領域と前記信号光領域と前記加算光領域とについて、各々の領域範囲と各々の領域に表示されるパターンとを制御する制御部と、
前記回折光及び前記加算光が前記ホログラム記録媒体で反射して得られる反射光を受光する受光素子と、
前記信号光領域と前記加算光領域との各々における相互に隣接するピクセルから得られる信号光と加算光とに対して所定値以下の位相差を与える位相マスクと、
を備えるホログラム記録再生装置。 - 前記所定値はπ/6ラジアンであることを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録再生装置。
- さらに、前記信号光領域のピクセル単位で前記信号光に位相変調を与えることを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録再生装置。
- さらに、前記信号光領域及び前記加算光領域のピクセル単位で前記信号光及び前記加算光に位相変調を与えることを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録再生装置。
- 前記位相マスクは、前記信号光及び前記加算光の進行方向に対して凹凸の断面を有するガラス材で形成されることを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録再生装置。
- 前記位相マスクは、前記信号光及び前記加算光の進行方向に対して、一部が凹凸の断面を有し、一部が一定の厚みを有するガラス材で形成されることを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録再生装置。
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2007
- 2007-08-15 JP JP2007211754A patent/JP2009048681A/ja active Pending
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