JP2009046441A - コレステロール誘導体、リポソーム、リポソームの形成方法及びx線用造影剤 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、新規なコレステロール誘導体、リポソーム、リポソームの形成方法及び該リポソームを含有するX線用造影剤に関する。
近年、薬剤キャリアとして注目されているリポソームの表面に、糖鎖を提示する材料として、糖を修飾したコレステロール誘導体が盛んに研究されている。例えば、ガラクトース、マンノース、フコースをコレステロールに修飾し、これを構成成分とするリポソームが肝臓に特異的に集積することを見出している(例えば、非特許文献1参照)。また、三菱化学ではスペルミジンをジョイントとして、糖とコレステロールを結合した新規化合物を提案している。該コレステロール誘導体を構成成分とするリポソームは、核酸成分(DNA、RNA断片)を内包することができ、標的細胞に目的の遺伝子を送り込むことで効果的な遺伝子治療を実現できることが期待されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
しかしながら、上記の糖修飾コレステロールはいずれもカチオン性であるため毒性に懸念があり、特に発明者らの研究対象である造影剤での使用を念頭とした場合には、遺伝子治療に対して使用量が格段に多いため、致命的な欠点となる問題があった。また非イオン性のヨード化合物を内包するリポソームを作製する場合に、カチオン性材料はその内包率が非常に低くなる欠点があった。さらに超臨界二酸化炭素に対する溶解度が低いため、この方法で効率的にリポソームを形成することには限界があった。
一方、ヨード原子を含有する造影剤は、汎用的には低分子量の有機ヨード剤として提供され、水に溶けるため、尿路撮影、血管造影、CTの造影のように、通常、静脈血管内投与で用いられる。ヨード造影剤は、投与されて数分間は血管内に滞留するが、急速に全身に分布し、通常は腎臓で排泄されて尿中に出る。現在使用されている低分子量・水溶性のヨード造影剤は血管から臓器や組織への移行が早く、血管の中でも特に静脈を明確に造影することが困難であった。
血中滞留性を上げるために今から20年程前、ヨード化けし油をレシチンで分散したオイルエマルジョンタイプの造影剤がいくつか検討された(例えば、非特許文献2参照)。これらは目論見通り血中滞留性が向上し、全身血管の造影能力が格段に向上したが、発熱、悪心、アナフィラキシーショック等の重篤な副作用を引き起こす問題が解決できず、実用化に至っていない。
一方、近年、特定臓器の癌疾患の造影が強く求められている。しかしながら、上述の造影剤には臓器特異的な集積性がないため要望を満たすことが困難である。上述のカチオン性コレステロールを用いたリポソームは、肝臓への集積性が高いことが知られており(例えば、非特許文献1参照)、肝臓疾患用造影剤への応用が期待できる半面、膵臓への集積性は低く、膵臓疾患用造影剤への応用は期待できないのが現状である。現在、膵臓疾患、特に膵臓の転移性癌は早期発見が難しく、死亡率の高い疾患として知られており、新規な造影剤の開発が切望されている。
特表2004−522722号公報
特表2004−520301号公報
Chem.,Pharm.,Bull.,871−880 53(8),(2005)
Radiology,216,154−162,2000
本発明の目的は、(1)生体に対する毒性が低く、(2)内包率が高く、(3)超臨界二酸化炭素に対する溶解度が高く、(4)全身血管及び肝臓の造影に優れ、(5)かつ、膵臓の造影にも優れ、(6)さらに24時間以内に体外に大部分が排泄される安全性を有する新規なコレステロール誘導体、リポソーム、リポソームの形成方法、及び該リポソームを含有するX線用造影剤を提供することである。
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
1.下記一般式(1)で表されることを特徴とするコレステロール誘導体。
(式中、Gは糖とヒドロキシル基が糖のアノマー位でエーテル結合を形成した一価の糖の残基を表し、〜線は糖のアノマー位の立体が、α体及び/またはβ体であることを表し、nは1〜150の整数を表す。)
2.前記糖が、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、フコース、マルトース、イソマルトース、ラクトースまたはマルトリオロースであることを特徴とする前記1に記載のコレステロール誘導体。
2.前記糖が、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、フコース、マルトース、イソマルトース、ラクトースまたはマルトリオロースであることを特徴とする前記1に記載のコレステロール誘導体。
3.非イオン性ヨード化合物、前記1または2に記載のコレステロール誘導体の少なくとも1種及びリン脂質を含有することを特徴とするリポソーム。
4.前記3に記載のリポソームを超臨界状態の二酸化炭素を用いて形成することを特徴とするリポソームの形成方法。
5.前記3に記載のリポソームを含有することを特徴とするX線用造影剤。
本発明によれば、(1)生体に対する毒性が低く、(2)内包率が高く、(3)超臨界二酸化炭素に対する溶解度が高く、(4)全身血管及び肝臓の造影に優れ、(5)かつ、膵臓の造影にも優れ、(6)さらに24時間以内に体外に大部分が排泄される安全性を有する新規なコレステロール誘導体、リポソーム、リポソームの形成方法、及び該リポソームを含有するX線用造影剤を提供することができる。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、前記一般式(1)で表される特定構造のコレステロール誘導体は、(1)生体に対する毒性が低く、(2)内包率が高く、(3)超臨界二酸化炭素に対する溶解度が高く、(4)全身血管及び肝臓の造影に優れ、(5)かつ、膵臓の造影にも優れ、(6)さらに24時間以内に体外に大部分が排泄される安全性を有する新規なコレステロール誘導体であり、これを含む造影剤は優れた造影剤であることを見出した。
以下、本発明を詳細に説明する。
《一般式(1)で表されるコレステロール誘導体》
まず、本発明の一般式(1)で表されるコレステロール誘導体について詳述する。
まず、本発明の一般式(1)で表されるコレステロール誘導体について詳述する。
一般式(1)において、Gはヒドロキシル基と糖が糖のアノマー位でエーテル結合を形成した一価の糖の残基を表し、該糖は単糖、二糖、三糖、多糖の全てのアルドペントース、アルドヘキソースを表すが、好ましくはアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、フコース、マルトース、イソマルトース、ラクトースまたはマルトリオロースを表す。〜線は糖のアノマー位の立体が、α体及び/またはβ体であることを表すが、α体、β体それぞれの単独であってもよいし、α体、β体の任意の比率での混合物であってもよい。nは1〜150の整数を表すが、好ましくは1〜50であり、最も好ましくは1〜40である。
一般式(1)で表されるコレステロール誘導体は単一化合物であっても、n値が異なる混合物であってもよい。混合物である場合、nと対応するコレステロール誘導体のモル数は正規分布に近似であることが好ましく、その分散度は1.2〜3.0であることが好ましい。
次に、本発明の一般式(1)で表される化合物の具体例を示す。
化合物名は以下のように略記した。例えば、Allo−15−cholは、糖がAllose(アロース、Alloと略記)、nが15、cholはコレステロール残基を表す。
しかし本発明はこれらに限定されない。これらの例示化合物の合成方法は実施例に示す。
《非イオン性ヨード化合物、コレステロール誘導体及びりん脂質を含有するリポソーム》
(りん脂質)
本発明のリポソームは、通常公知のリポソームと同様に脂質二重膜から形成されている。その脂質膜の成分として、一般にリン脂質が好ましく使用される。本発明に用いられるリン脂質は通常公知のもので制限はない。ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリン等のリン脂質である。卵黄、大豆その他の動植物材料に由来するリン脂質、それらの水素添加物、水酸化物の誘導体といった半合成のリン脂質、または合成加工品等、限定されることなく用いられる。リン脂質の構成脂肪酸も特に限定されることはなく、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のどちらでもよい。
(りん脂質)
本発明のリポソームは、通常公知のリポソームと同様に脂質二重膜から形成されている。その脂質膜の成分として、一般にリン脂質が好ましく使用される。本発明に用いられるリン脂質は通常公知のもので制限はない。ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリン等のリン脂質である。卵黄、大豆その他の動植物材料に由来するリン脂質、それらの水素添加物、水酸化物の誘導体といった半合成のリン脂質、または合成加工品等、限定されることなく用いられる。リン脂質の構成脂肪酸も特に限定されることはなく、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のどちらでもよい。
具体的な中性リン脂質の例として、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルエノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン等が挙げられる。
これらのリン脂質は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
(コレステロール誘導体)
本発明のコレステロール誘導体は、上述の脂質二重膜を構成する成分となるが、その使用量としては、リン脂質1質量部に対して0.01〜1.5質量部、好ましくは0.05〜1質量部、より好ましくは0.05〜0.8質量部の割合が望ましい。
本発明のコレステロール誘導体は、上述の脂質二重膜を構成する成分となるが、その使用量としては、リン脂質1質量部に対して0.01〜1.5質量部、好ましくは0.05〜1質量部、より好ましくは0.05〜0.8質量部の割合が望ましい。
(非イオン性ヨード化合物)
本発明に係る非イオン性ヨード化合物は、上述のリポソームに内包される成分であるが、水溶性であることが好ましく、具体的にはヨウ化フェニル基、例えば2,4,6−トリヨードフェニル基を少なくとも1個有する非イオン性ヨード化合物が好適である。好ましい非イオン性ヨード化合物として、具体的にはイオヘキソール、イオペントール、イオジキサノール、イオプロミド、イオトロラン、イオメプロール、N,N′−ビス〔2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)−エチル〕−5−〔(2−ヒドロキシ−1−オキソプピル)−アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼン−ジカルボキシアミド(イオパミドール);メトリザミド等が挙げられる。
本発明に係る非イオン性ヨード化合物は、上述のリポソームに内包される成分であるが、水溶性であることが好ましく、具体的にはヨウ化フェニル基、例えば2,4,6−トリヨードフェニル基を少なくとも1個有する非イオン性ヨード化合物が好適である。好ましい非イオン性ヨード化合物として、具体的にはイオヘキソール、イオペントール、イオジキサノール、イオプロミド、イオトロラン、イオメプロール、N,N′−ビス〔2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)−エチル〕−5−〔(2−ヒドロキシ−1−オキソプピル)−アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼン−ジカルボキシアミド(イオパミドール);メトリザミド等が挙げられる。
非イオン性ヨード化合物は、これらの例示に限定されるものではない。また、非イオン性ヨード化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお本明細書において、化合物は遊離形態の他に、その塩、水和物等も含めて言及することがある。特に好適なヨード系化合物として、高度に親水性であり、かつ高濃度でも浸透圧が高くならないイオメプロール、イオパミドール、イオトロラン、イオジキサノール等が挙げられる。イオトラン、イオジキサノールといった二量体非イオン性ヨード化合物では、ヨウ素担持効率が高く、同一ヨード濃度の造影剤を調製しても全体のモル数が低いために浸透圧を低下させる利点がある。
本発明に係るヨード化合物の濃度は、該化合物の性質、意図する製剤の投与経路及び臨床上の指標といった要因に基づき、任意に設定することができる。リポソーム内に封入されたヨード化合物の量は、典型的には添加された全ヨード化合物の5〜40質量%、好ましくは5〜35質量%、より好ましくは10〜25質量%である。この内包率はリポソーム粒子の最密充填の限界を下回るために、リポソームにおける造影物質の保持安定性は損なわれない。
本発明のリポソームの構成成分は、上記に限定されず、他の成分を加えることができる。その例としては、FEBS Lett.,223,42(1987);Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85,6949(1988)等に記載のモノシアルガングリオキシドGM1誘導体、Chem.Lett.,2145(1989);Biochim.Biophys.Acta,1148,77(1992)等に記載のグルクロン酸誘導体、Biochim.Biophys.Acta,1029,91(1990);FEBS Lett.,268,235(1990)等に記載のポリエチレングリコール誘導体が挙げられるが、これに限られるものではない。
《リポソームの形成方法》
本発明のリポソームは、当業者が利用可能ないかなる方法で形成してもよい。形成法の例としては、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.,9,467(1980)、”Liposomes”(M.J.Ostro編、MARCELL DEKKER、INC.)等に記載されている。具体例としては、超音波処理法、エタノール注入法、フレンチプレス法、エーテル注入法、コール酸法、カルシウム融合法、凍結融解法、逆相蒸発法等が挙げられるが、これに限られるものではない。リポソームの構造は特に限定されず、ユニラメラまたはマルチラメラ等のいずれの形態でもよい。また、リポソームの内部に適宜、化合物の1種または2種以上を配合することも可能である。
本発明のリポソームは、当業者が利用可能ないかなる方法で形成してもよい。形成法の例としては、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.,9,467(1980)、”Liposomes”(M.J.Ostro編、MARCELL DEKKER、INC.)等に記載されている。具体例としては、超音波処理法、エタノール注入法、フレンチプレス法、エーテル注入法、コール酸法、カルシウム融合法、凍結融解法、逆相蒸発法等が挙げられるが、これに限られるものではない。リポソームの構造は特に限定されず、ユニラメラまたはマルチラメラ等のいずれの形態でもよい。また、リポソームの内部に適宜、化合物の1種または2種以上を配合することも可能である。
形成方法の一例を以下に示す。
本発明のコレステロール誘導体、リン脂質、安定化剤、酸化防止剤等の構成成分を、フラスコ内のクロロホルム等の有機溶媒中で混合し、有機溶媒を留去した後、真空乾燥することによりフラスコ内壁に薄膜を形成させる。次に、前記フラスコ内に非イオン性ヨード化合物の水溶液を加え、激しく攪拌することにより、リポソーム分散液を得る。得られたリポソーム分散液を遠心分離し、上澄みをデカンテーションして封入されなかった化合物等を除去する。必要に応じ、さらに、親水性高分子の脂質誘導体の溶液を加えて加温することにより、本発明のリポソームが得られる。
なお、親水性高分子の脂質誘導体の溶液を構成成分の混合時に加えることによっても、本発明のリポソームが得られる。
また、別の方法として、上記の構成成分を混合し、高圧吐出型乳化機により高圧吐出させることにより、本発明のリポソームを得ることもできる。
上述のリポソームの形成品は、必ず有機溶媒を含んでいる。残留する有機溶媒、特にクロル系有機溶媒は完全に除去することが困難であり、生体に及ぼす悪影響が懸念される。本発明に使用するリポソームを形成するには、上記の問題点を回避できる方法として、超臨界もしくは亜臨界の二酸化炭素を使用するリポソーム形成法を利用することが好ましい。二酸化炭素の臨界温度は31.1℃、臨界圧力は75.3kgf/cm2(7.38MPa)と比較的扱いやすく、大気圧下で不活性なガスゆえ残存しても人体に無害であり、高純度流体が安価で容易に入手できる等といった理由により好適である。本発明のリポソームの形成方法で使用する超臨界状態(亜臨界状態を含む)の二酸化炭素の好適な圧力は、80〜500kgf/cm2(7.8〜49MPa)、好ましくは90〜400kgf/cm2(8.8〜39MPa)、より好ましくは100〜200kgf/cm2(9.8〜19.6MPa)である。また、好適な臨界状態の二酸化炭素ガスの温度としては、32〜200℃、好ましくは35〜100℃、さらに好ましくは40〜80℃である。これらの範囲内で、温度及び圧力を適宜選択して組み合わせることにより、超臨界状態(亜臨界状態を含む)とするのがよい。
超臨界二酸化炭素使用する本発明のリポソームの形成方法は、具体的に以下のようにして行なわれる。圧力容器に液体二酸化炭素を加え、上記の好適な圧力及び温度のもとにある超臨界状態もしくは亜臨界状態にする。超臨界(もしくは亜臨界)状態の二酸化炭素に本発明に係るリポソーム膜構成物質を溶解するか、あるいは予めこれらの化合物を加えた圧力容器に液体二酸化炭素を加え、次いで温度、圧力を調整して超臨界状態にして溶解してもよい。
その際、溶解助剤を添加すると、膜脂質成分の超臨界二酸化炭素への溶解が短時間で充分に行われるため、形成されるリポソームにおける一枚膜リポソームの比率が高くなる。溶解助剤として、低級アルコール、グリコール、グリコールエーテル等を1種または2種以上併用することが望ましい。例えばアルコール類を超臨界二酸化炭素の0.1〜10質量%、好ましくは、1〜8質量%の割合で助溶媒として使用するのがよい。より好ましい解助剤としては、安全性の観点からエタノールである。
引き続き生成した脂質混合物に、本発明に係る非イオン性ヨード化合物、必要に応じて公知の製剤助剤を含む水溶液を連続的に添加して、水相/二酸化炭素エマルジョンを形成する。系内を減圧して二酸化炭素を排出すると、非イオン性ヨード化合物を内包する本発明のリポソームが分散している水性分散液が生成する。
上記ヨード化合物のリポソーム内への内包化の割合は、リポソーム用脂質の総量とヨード化合物(必要に応じて、さらに製剤助剤)を含む水溶液との比率によっても左右される。リポソームの円滑な形成、ならびにその脂質膜内へのヨード化合物の効率的な内包化には、使用する脂質総量と内包物質を含有する水溶液との比率もまた調整する必要がある。この脂質総量とは、リポソーム膜を構成するリン脂質類、前記一般式(1)で表されるコレステロール誘導体、その他ステロール類、及びその他の添加した脂質類全てを対象とした総和の質量である。上記水溶液1リットル(L)に対して、脂質総量が5〜150mmolの範囲、好ましくは30〜120mmolの範囲、より好ましくは50〜100mmolの範囲の割合でリポソーム膜構成物質を含む溶媒を混合する。そうした場合、非イオン性ヨード化合物のリポソーム内への内包化は良好に進行し、結果的にそのヨード化合物の保持効率も向上する。
次にリポソーム粒子のサイズ及びその分布について詳述する。
「中心粒径」とは、粒子分布で最も出現頻度の高い粒子径を指す。なお、粒子径または粒径は、粒子の直径を意味する。粒径の調整は、処方またはプロセス条件で行なうことができる。例えば、上記の超臨界の圧力を大きくすると、形成されるリポソーム粒径は小さくなる。リポソームの粒子径の分布をより狭い範囲に揃えるには、作製されるリポソームの懸濁液を一定サイズの孔径を有する濾過膜、好ましくはポリカーボネート膜等に強制的に透過させてもよい。この場合、濾過膜として0.05〜0.4μm、好ましくは0.1〜0.4μm、さらに好ましくは0.15〜0.2μmの孔径のフィルターを装着した静圧式押出し装置に通すことにより、リポソーム多重層膜の脂質膜枚数を減らすとともに、中心粒径として100〜300nmの最適寸法を有する均一なリポソームを効率よく調製することができる。
具体的には、各種の静圧式押出し装置、例えば「エクストルーダー」(商品名、日油リポソーム製)等を使用して、フィルターを強制的に透過させる。フィルターは、ポリカーボネート系、セルロース系等のタイプを適宜使用することができる。このような「押出し」操作工程を取り入れることにより、上記サイジングに加えて、リポソーム分散液の交換、濾過滅菌も併せて可能になるという利点もある。引き続きリポソーム分散液を、遠心分離、ゲル濾過等の方法により未保持の薬剤を除去して精製したり、濃縮、希釈、凍結乾燥等の操作を任意に行ってもよい。本発明の造影剤用リポソームの中心粒径は、通常50〜300nm、好ましくは50〜200nm、より好ましくは50〜130nmである。
《X線用造影剤》
次に、本発明のリポソーム含有するX線用造影剤(以下、単に造影剤ともいう)について詳述する。
次に、本発明のリポソーム含有するX線用造影剤(以下、単に造影剤ともいう)について詳述する。
注射のために製剤化された本発明の造影剤は、迅速で簡便な注射を可能にするよう適度な粘度のみを有するべきである。粘度は、10.20×10-4kgf・s/m2(10mPa・s、10cP)未満、または好ましくは5.10×10-4kgf・s/m2(5mPa・s、5cP)未満、またはより好ましくは2.04×10-4kgf・s/m2(2mPa・s、2cP)未満である。また、注射のために製剤化された本発明の造影剤は、過度の浸透圧を有するべきではない。なぜなら、これは毒性を増加させ得るからである。浸透圧は、3000ミリオスモル/kg未満、好ましくは2500ミリオスモル/kg未満、最も好ましくは900ミリオスモル/kg未満である。
本発明の造影剤は、無機または有機の酸及び塩基から誘導される塩を含有することができる。塩の具体例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム及びカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム、マグネシウム及び亜鉛塩)、有機塩基を有する塩(例えば、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミン)、及びアミノ酸(例えば、アルギニン、リジン)を有する塩等を包含する。また、塩基性窒素含有基は、低級アルキルハライド(例えば、メチル、エチル、プロピル及びブチルクロライド、ブロマイド及びヨージド)、ジアルキル硫酸(例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミル硫酸)、長鎖ハライド(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルクロライド、ブロマイド及びヨージド)、アラルキルハライド(例えば、ベンジル及びフェネチルブロマイド)ならびにその他の薬剤で4級化され得る。それによって、水溶性または油溶性あるいは水分散性または油分散性の生成物が得られる。本発明の好ましい塩は、N−メチル−D−グルカミン、カルシウム及びナトリウム塩である。
本発明の造影剤は、任意のキャリア、アジュバントもしくはビヒクルを含有することができる。本発明の造影剤に使用され得るキャリア、アジュバント及びビヒクルは、イオン交換物質、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝性物質(例えば、ホスフェート)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及びラノリンを包含するが、これらに限定されない。
本発明の造影剤は、注射可能な無菌の調合薬の形態(例えば、注射可能な無菌の水性または油性の懸濁液)であり得る。この懸濁液は、当該分野で公知の技術に従い、適切な分散剤または湿潤剤及び懸濁剤を用いて製剤され得る。注射可能な無菌の調合薬はまた、無毒性の非経口で受容可能な希釈剤または溶媒中における、無菌の注射可能な溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として)であってもよい。用いられ得る受容可能なビヒクル及び溶媒は、水、リンガー溶液及び等張食塩水である。さらに、従来では、無菌の不揮発油が溶媒または懸濁媒体として使用される。この目的のために、合成のモノーまたはジーグリセリドを含む任意の刺激のない不揮発油が使用され得る。脂肪酸(例えば、オレイン酸及びそのグリセリド誘導体)は、天然の薬学的に受容可能なオイル(例えば、オリーブオイルまたはヒマシ油)と同様に、注射可能物の調製、特にこれらのポリオキシエチル化した変形物において有用である。これらのオイル溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコールの希釈剤または分散剤(例えば、Ph.Helvまたは類似のアルコール)を含み得る。
本発明の造影剤は、経口投与、非経口投与、吸入スプレーによる投与、局所投与、直腸投与、鼻腔投与、頬投与、膣投与または従来の無毒性の薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント及びビヒクルを含有する投薬製剤中に埋め込まれたリザーバを介して投与され得る。本明細書に使用されるように、用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、くも膜下、肝臓内、病変内及び頭蓋内注射または点滴技術を含む。
経口投与される場合、本発明の薬学的組成物は任意の経口的に受容可能な投薬形態(カプセル、錠剤、水性の懸濁液または溶液が挙げられるが、これらに限定されない)で投与され得る。錠剤を経口使用する場合、一般的に使用されるキャリアには、ラクトース及びコーンスターチが挙げられる。代表的には、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤もまた添加される。カプセル形態の経口投与に対して、有用な希釈剤としては、ラクトース及び乾燥コーンスターチが挙げられる。経口使用に水性懸濁液を必要とする場合、活性成分は乳化剤及び懸濁剤と配合される。所望の場合、特定の甘味料、香味料または着色料もまた添加してもよい。あるいは、直腸投与のために座薬形態で投与される場合には、本発明の造影剤は、室温で固体であるが、直腸温で液体である適切な非刺激性の賦形剤とを混合して調製され得、その結果直腸内で溶け薬剤を放出する。このような物質として、ココアバター、ビーズワックス及びポリエチレングリコールが挙げられる。
また、前述のように、特に、処置標的が局所施用によって容易に接近可能な領域または器官(目、皮膚または下部腸道(lower intestinal tract)を含む)を含む場合に、本発明の造影剤は局所投与され得る。適切な局所製剤は、これらの各領域または器官用に容易に調製される。
下部腸道に対する局所施用は、直腸用座薬製剤または適切な浣腸製剤でなされ得る。局所−経皮性パッチもまた使用してよい。局所施用に対して、本発明の造影剤は、1つ以上のキャリア中に懸濁または溶解される活性成分を含有する、適切な軟膏に製剤され得る。本発明の造影剤の局所投与のためのキャリアは、鉱油、液体ペトロラタム、白色ペトロラタム、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水を包含するが、それらに限定されない。あるいは、本発明の造影剤は、1つ以上のキャリア中に懸濁または溶解された活性成分を含有する、適切なローションまたはクリームに製剤されてもよい。適切なキャリアは、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水を包含するが、それらに限定されない。
眼使用に対して、本発明の造影剤は防腐剤(例えば、ベンジルアルコニウムクロライド)を含有してもしなくてもよい。pH調節された等張の無菌生理食塩水中に微小化された懸濁液として、または好ましくはpH調節された等張の無菌生理食塩水中の溶液として製剤され得る。あるいは、眼使用に対して本発明の造影剤は、ペトロラタムのような軟膏に製剤され得る。
鼻腔エーロゾルまたは吸入による投与に対して、本発明の造影剤は、製薬的製剤の分野で周知の技術に従って調製され、そしてベンジルアルコールもしくは他の適切な防腐剤、生体利用性を増大させる吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用し、生理食塩水中の溶液として調製され得る。
投薬は、診断用画像化機器の感度、ならびに造影剤の組成に依存する。例えば、MRI画像化に対して、本発明のコレステロール誘導体を含有する造影剤は、一般的に、より低い磁気モーメントを有する常磁性物質、例えば、鉄(III)を含有する造影剤より、より低い投薬を必要とする。好ましくは、投薬は、1日当たり約0.001〜1mmol/kg体重の活性金属−リガンド錯体の範囲である。より好ましくは、投薬は、1日当たり約0.005〜0.05mmol/kg体重の範囲である。
しかし、任意の特定の患者に対する特定の投薬処方もまた、種々の因子(年齢、体重、健康状態、性別、治療食、投与時間、排泄速度、薬物の組み合わせ及び処置する内科医の判断を含む)に依存することが理解されるべきである。
本発明では造影剤の適切な投薬の投与に続いて、X線画像化が行われる。X線画像化は従来公知の方法による脳血管撮影、選択的血管撮影、四肢血管撮影、ディジタルX線撮影法による静脈性血管撮影、コンピューター断層撮影における造影、静脈性尿路撮影等による画像化であることが好ましい。本発明の造影剤は全身血管、及び肝臓、特に膵臓の造影に優れているので選択的血管撮影、コンピューター断層撮影における腹部造影が最適な撮像方法である。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
〔合成例1〕
下記スキーム(反応式1)により、例示化合物Man−15−cholを合成した。
下記スキーム(反応式1)により、例示化合物Man−15−cholを合成した。
t−ブチルジメチルシロキシプロピルアミン(2)2.1g(11mmol)をメチレンクロリド50mlに溶解し、さらにトリエチルアミン1.1g(11mol)を加え、内温が0℃になるまで冷却した。これに、コレステロールクロロフォルメート(1)4.5g(10mmol)を内温を保ちながら少量づつ加えた。添加後、同温度で1時間攪拌し、さらに室温に戻し、3時間攪拌した。有機層を飽和重曹水、飽和食塩水、純水で順次洗浄し、溶媒を減圧で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 酢酸エチル:ノルマルヘキサン=1:2)にて精製し、中間体(3)を5.5g(収率91%)得た。次に、(3)28g(47mmol)をTHF90mlに溶解し、テトラブチルアンモニウムフルオライドの1M THF溶液93ml(93mmol)を室温下で加え、そのまま1時間攪拌した。反応液を飽和食塩水、純水で順次洗浄し、溶媒を減圧で濃縮した。残渣を酢酸エチルより再結晶し、中間体(4)を17g(収率76%)得た。
次に、ベンゾイル−トリクロロアセトイミドイル−D−マンノース(5)13g(26mmol)及び、中間体(4)13g(27mmol)をメチレンクロリド300mlに溶解し、十分に減圧乾燥したモレキュラーシーブス4A 13gを加え、一時間攪拌した。その後内温を−20℃に冷却し、トリメチルシリルトリフラート(TMSOTf)0.05ml(0.3mmol)をメチレンクロリド5mlに希釈した溶液を内温を維持しながら30分かけて滴下した。滴下終了後、30分同温度で攪拌した後、室温に戻した。反応液を飽和重曹水及び純水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、溶媒を減圧で濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロメトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル:ノルマルヘキサン=1:1)にて精製し、中間体(6)を17g(収率78%)得た。
次に中間体(6)10g(12mmol)をジオキサン10ml及びメタノール150mlの混合溶媒に溶解し、1Mのソジュウムメトキサイド溶液1.7ml(1.7mmol)を加え2時間攪拌した。その後、陽イオン交換樹脂Dowex50Wを3g加えて、中和し、樹脂をろ別後、溶媒を減圧で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクリマトグラフィー(展開溶媒 メチレンクロリド:エタノール:8:1)にて精製し、目的物Man−3−cholを6.4g(収率81%)得た。トータル収率56%。元素分析により目的物であることを確認した。
元素分析値
(計算値%):C、62.56;H、9.77
(実測値%):C、62.41;H、9.79
〔合成例2〜60〕
以下、合成例1と同様にして本発明の化合物を合成した。トータル収率、元素分析値(C、H計算値、C、H実測値)と合わせて表1、2に示す。
(計算値%):C、62.56;H、9.77
(実測値%):C、62.41;H、9.79
〔合成例2〜60〕
以下、合成例1と同様にして本発明の化合物を合成した。トータル収率、元素分析値(C、H計算値、C、H実測値)と合わせて表1、2に示す。
実施例1
(リポソームを含有するX線用造影剤の形成方法A)
ジパルミトイルホスファチジルコリン(50nmol、日本油脂株式会社製、COATSOME MC−6060)、表1、2に記載の本発明のコレステロール誘導体、比較のコレステロール誘導体(10nmol)及びPEG−リン脂質(10nmol、日本油脂株式会社製、SUNBRIGHT DSPE−020CN)をJ.Med.Chem.,25(12),1500(1982)に記載の方法により、ナス型フラスコ内でクロロホルムに溶解して均一溶液とした後、溶媒を減圧で留去してフラスコ底面に薄膜を形成した。
(リポソームを含有するX線用造影剤の形成方法A)
ジパルミトイルホスファチジルコリン(50nmol、日本油脂株式会社製、COATSOME MC−6060)、表1、2に記載の本発明のコレステロール誘導体、比較のコレステロール誘導体(10nmol)及びPEG−リン脂質(10nmol、日本油脂株式会社製、SUNBRIGHT DSPE−020CN)をJ.Med.Chem.,25(12),1500(1982)に記載の方法により、ナス型フラスコ内でクロロホルムに溶解して均一溶液とした後、溶媒を減圧で留去してフラスコ底面に薄膜を形成した。
この薄膜を真空で乾燥後、非イオン性ヨード化合物を含有する造影剤溶液(日局イオパミドール溶液306.2mg/ml(ヨード含有量150mg/ml)、トロメタモールを1mg/ml、エデト酸カルシウム2ナトリウム(EDTANa2−Ca)0.1mg/mlを含有し、適量の塩酸及び水酸化ナトリウムでpHを7前後に調整)5mlを注入した。
次に超音波照射(Branson社製、No.3542プローブ型発振器、0.1mW)を氷冷下5分実施することにより、非イオン性ヨード化合を含有するリポソームの分散液を得た。得られた分散液を60℃まで加熱し、アドバンテック社製のセルロース系フィルター、1.0μmで加圧濾過した。得られた試料をスペクトラプロ社製、バイオテックRC透析チューブに封入し、多量の生理食塩水(9.0×10-1%、1000g)中に浸して透析を行い、リポソーム内に取り込めなかった非イオン性ヨード化合物等を除去した。得られたリポソームを含有するX線用造影剤を表3、4に示す。
(リポソームを含有するX線用造影剤の形成方法B)
ジパルミトイルホスファチジルコリン(50nmol、日本油脂株式会社製、COATSOME MC−6060)、表1、2に記載の本発明のコレステロール誘導体、比較のコレステロール誘導体(10nmol)及びPEG−リン脂質(10nmol、日本油脂株式会社製、SUNBRIGHT DSPE−020CN)の混合物をステンレス製の特製オートクレーブに仕込み、オートクレーブ内を60℃に加熱し、次いで液体二酸化炭素13gを加えた。撹拌を行いながら、50kgf/cm2(4.9MPa)であったオートクレーブ内の圧力を、オートクレーブ内の体積を減ずることにより、120kgf/cm2(11.8MPa)にまで上げて、二酸化炭素を超臨界状態にし、撹拌しながら脂質類を分散・溶解させた。さらに撹拌しながら、造影剤溶液(日局イオパミドール溶液306.2mg/ml(ヨード含有量150mg/ml)、トロメタモールを1mg/ml、エデト酸カルシウム2ナトリウム(EDTANa2−Ca)0.1mg/mlを含有し、適量の塩酸及び水酸化ナトリウムでpHを7前後に調整)5mlを定量ポンプで連続的に50分間かけて注入した。注入終了後、系内を減圧して二酸化炭素を排出し、非イオン性ヨード化合物を含有するリポソームの分散液を得た。得られた分散液を60℃まで加熱し、アドバンテック社製のセルロース系フィルター、1.0μmで加圧濾過した。得られた試料をスペクトラプロ社製、バイオテックRC透析チューブに封入し、多量の生理食塩水(9.0×10-1%、1000g)中に浸して透析を行い、リポソーム内に取り込めなかった非イオン性ヨード化合物等を除去した。得られたリポソームを含有するX線用造影剤を表3、4に示す。
ジパルミトイルホスファチジルコリン(50nmol、日本油脂株式会社製、COATSOME MC−6060)、表1、2に記載の本発明のコレステロール誘導体、比較のコレステロール誘導体(10nmol)及びPEG−リン脂質(10nmol、日本油脂株式会社製、SUNBRIGHT DSPE−020CN)の混合物をステンレス製の特製オートクレーブに仕込み、オートクレーブ内を60℃に加熱し、次いで液体二酸化炭素13gを加えた。撹拌を行いながら、50kgf/cm2(4.9MPa)であったオートクレーブ内の圧力を、オートクレーブ内の体積を減ずることにより、120kgf/cm2(11.8MPa)にまで上げて、二酸化炭素を超臨界状態にし、撹拌しながら脂質類を分散・溶解させた。さらに撹拌しながら、造影剤溶液(日局イオパミドール溶液306.2mg/ml(ヨード含有量150mg/ml)、トロメタモールを1mg/ml、エデト酸カルシウム2ナトリウム(EDTANa2−Ca)0.1mg/mlを含有し、適量の塩酸及び水酸化ナトリウムでpHを7前後に調整)5mlを定量ポンプで連続的に50分間かけて注入した。注入終了後、系内を減圧して二酸化炭素を排出し、非イオン性ヨード化合物を含有するリポソームの分散液を得た。得られた分散液を60℃まで加熱し、アドバンテック社製のセルロース系フィルター、1.0μmで加圧濾過した。得られた試料をスペクトラプロ社製、バイオテックRC透析チューブに封入し、多量の生理食塩水(9.0×10-1%、1000g)中に浸して透析を行い、リポソーム内に取り込めなかった非イオン性ヨード化合物等を除去した。得られたリポソームを含有するX線用造影剤を表3、4に示す。
〔試験1〕
(リポソームの平均粒径の測定)
表1、2の試料(リポソーム分散液)をWBCアナライザー(日本光電社製、A−1042)にてリポソームの平均粒径を求めた。平均粒径が100〜400nmのものが好ましく、600nm以上のものは凝集が起こっており好ましくない。
(リポソームの平均粒径の測定)
表1、2の試料(リポソーム分散液)をWBCアナライザー(日本光電社製、A−1042)にてリポソームの平均粒径を求めた。平均粒径が100〜400nmのものが好ましく、600nm以上のものは凝集が起こっており好ましくない。
結果を表3、4に示す。
〔試験2〕
(ヨード化合物の内包率の測定)
表1、2の試料(リポソーム分散液)を等張の食塩水で透析し、透析終了後にエタノールを添加してリポソームを破壊し、吸光度の測定によりリポソーム内のヨード化合物量を求めた。試料中の全ヨード化合物量に対する比率を内包率(質量%)として表した。
(ヨード化合物の内包率の測定)
表1、2の試料(リポソーム分散液)を等張の食塩水で透析し、透析終了後にエタノールを添加してリポソームを破壊し、吸光度の測定によりリポソーム内のヨード化合物量を求めた。試料中の全ヨード化合物量に対する比率を内包率(質量%)として表した。
結果を表3、4に示す。
表3、4から分かるように、本発明のコレステロール誘導体を含有するリポソームは、形成方法A及びBのいずれにおいても良好な平均粒径を示したが、比較のコレステロール誘導体は、特に形成方法Bで全て凝集が起こり、粒径600nmを超えており好ましくないことが分かる。また、本発明のコレステロール誘導体を用いたリポソームは良好な内包率を示すが、比較のコレステロール誘導体を用いたリポソームの内包率は明らかに低く、特に形成方法Bでは低く、好ましくないことが分かった。これは比較のコレステロール誘導体がカチオン性であり、超臨界二酸化炭素に対する溶解度の低さに起因していると考えられる。
実施例2
実施例1で作製したリポソームを含有するX線用造影剤及び生理食塩水を用い、体重30gのマウス1匹当たり3ml注入でヨウ素量が2500mgI/kgの投与量となるX線用造影剤を調製した。
実施例1で作製したリポソームを含有するX線用造影剤及び生理食塩水を用い、体重30gのマウス1匹当たり3ml注入でヨウ素量が2500mgI/kgの投与量となるX線用造影剤を調製した。
〔試験3〕
(急性毒性試験)
上記X線用造影剤をddyマウスの尾静脈より投与することにより、投与後24時間以内に死亡したマウスの数をカウントした。検体数を20として得られた結果を表5、6に示す。
(急性毒性試験)
上記X線用造影剤をddyマウスの尾静脈より投与することにより、投与後24時間以内に死亡したマウスの数をカウントした。検体数を20として得られた結果を表5、6に示す。
表5、6に示すように、本発明の造影剤は生体に対する毒性が低いことが分かる。
実施例3
実施例1で作製したリポソームを含有するX線用造影剤(形成方法A)及び生理食塩水を用い、体重30gのマウス1匹当たり0.3ml注入でヨウ素量が250mgI/kgの投与量となるX線用造影剤を調製した。
実施例1で作製したリポソームを含有するX線用造影剤(形成方法A)及び生理食塩水を用い、体重30gのマウス1匹当たり0.3ml注入でヨウ素量が250mgI/kgの投与量となるX線用造影剤を調製した。
この造影剤をddyマウスの尾静脈より投与することにより組織内分布を評価した。
〔試験4〕
(組織内分布の評価)
このX線用造影剤をddyマウスの尾静脈より投与することにより組織内分布を評価した。投入後、5分、30分、2時間、24時間の肝臓、膵臓及び血液内のヨウ素の濃度を、誘導結合プラズマ発光分析装置(Urtima−2、Jyobin Yvon社製)にて測定した。検体数を20として得られた結果の平均値を表7〜9に示す。なお、投与後24時間以内に死亡したり、重篤な障害が生じる検体はなかった。
(組織内分布の評価)
このX線用造影剤をddyマウスの尾静脈より投与することにより組織内分布を評価した。投入後、5分、30分、2時間、24時間の肝臓、膵臓及び血液内のヨウ素の濃度を、誘導結合プラズマ発光分析装置(Urtima−2、Jyobin Yvon社製)にて測定した。検体数を20として得られた結果の平均値を表7〜9に示す。なお、投与後24時間以内に死亡したり、重篤な障害が生じる検体はなかった。
表7〜9より、本発明のX線用造影剤は、比較のX線用造影剤に対して、全身血管及び肝臓の造影に優れ、かつ膵臓の造影にも優れ、さらに24時間以内に体外に大部分が排泄される安全性を有することが分かる。
Claims (5)
- 前記糖が、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、フコース、マルトース、イソマルトース、ラクトースまたはマルトリオロースであることを特徴とする請求項1に記載のコレステロール誘導体。
- 非イオン性ヨード化合物、請求項1または2に記載のコレステロール誘導体の少なくとも1種及びリン脂質を含有することを特徴とするリポソーム。
- 請求項3に記載のリポソームを超臨界状態の二酸化炭素を用いて形成することを特徴とするリポソームの形成方法。
- 請求項3に記載のリポソームを含有することを特徴とするX線用造影剤。
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