JP2009044009A - 電極材料、その製造方法および電極 - Google Patents

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Abstract

【課題】高容量かつ高速な充放電が可能な新規の蓄電デバイス用の電極材料、その製造方法を提供する。
【解決手段】炭素材料と、該炭素材料の表面に形成された酸化物より構成される酸化物−炭素複合体からなる電極材料であって、前記炭素材料の表面に形成された酸化物が、層状複水酸化物の層を剥離して得たシート状複水酸化物を脱水させた酸化物である電極材料。酸化物−炭素複合体からなる電極材料の製造方法であって、層状複水酸化物の層を剥離してシート状複水酸化物を得る工程と、該シート状複水酸化物を炭素材料の表面に吸着させ、シート状複水酸化物−炭素複合体を作製する工程と、前記シート状複水酸化物−炭素複合体中のシート状複水酸化物を脱水して酸化物−炭素複合体を得る工程とを有する電極材料の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、高容量かつ高速な充放電が可能な新規の蓄電デバイス用の電極材料、その製造方法および前記電極材料を用いた電極に関する。
蓄電材料のなかで、電気二重層キャパシタは、電気二重層における静電的な電荷分離を利用した蓄電デバイスである。したがって急速な充放電によるエネルギーの出し入れが可能であり、サイクル特性が良好であるという特長がある。
しかしながら、エネルギー密度が、電気二重層キャパシタでは、リチウムイオン電池の約1/100程度に留まっているのが現状である。
このエネルギー密度が小さいという問題を解決するために、電極に酸化物を用いたレドックスキャパシタが提案されている。レドックスキャパシタは静電容量に加えて、酸化還元による擬似容量を有するキャパシタである。
レドックスキャパシタに使用される、酸化還元反応に関与する材料として金属酸化物が知られている。この金属酸化物として、酸化ルテニウムや酸化マンガンなどが用いられている。しかし、これら酸化物のみでは、導電性が不十分なため、十分な充放電特性が得られないため、一般に炭素と複合化した材料が用いられる。この炭素としては、前記酸化物との微視的な混合状態を作り出す必要があるために、高比表面積の炭素が好ましく用いられている。高比表面積の炭素材料に高分散で酸化物を担持する事により、酸化物の問題である導電性を高くすることができ、更に酸化物と電解液中の反応物質との接触比表面積を大きくすることが可能になる。つまり、高比表面積の炭素と微細な酸化物の複合材料を構築することにより、電極の内部抵抗の低減と、蓄電容量の増大が可能となる。
電極上の酸化物活物質上における蓄電反応で重要な事は、電解液からのプロトンやリチウムなどのイオンと、集電体からの電子の、スムーズな酸化物活物質への供給である。このため、上記の高比表面積の炭素と微細な酸化物の複合材料を構築する際に、高比表面積の炭素材料と酸化物との接触面積をできるだけ大きくする事と、酸化物自身の電解液との接触面積を大きくすることである。
この課題に対して、アセチレンブラックの様な微粒子で比表面積の大きい炭素材料を用いて、微細な酸化物微粒子を表面に担持させる技術が提案されている。また、酸化物を炭素の表面に担持させる手段として、微細な金属酸化物を液相反応によって炭素表面に析出させる方法などが提案されている(特許文献1、2参照)。
特開2005−217103号公報 特開2004−099345号公報
しかしながら、上記の特許文献1の方法では、酸化物は、数十nm以上のサイズの粒子として炭素に担持されているので、比表面積が小さく、高速充放電時の電解液からのイオン拡散、及び終電体からの電子の供給という観点からは不利な粒子内部の割合が増大する。その結果として担持したマンガン酸化物の内部が有効に活性サイトとして利用できていないという問題があった。
また、特許文献2の方法では、超音波を用いて数ナノメートルの厚みで酸化物を被覆する技術を開示しているが、強い超音波を長時間発生させる必要があるために、装置が複雑化し、プロセスコストが大きくなる。そのため、単位エネルギーあたりの価格が問題となるキャパシタの様なエネルギーデバイスへの応用には好ましい技術ではなかった。
つまり現状では、高比表面積を有する炭素に対して、酸化物を均一に、かつ嵩張らずに担持する方法は達成されていない。これらの問題を解決する手法が確立すれば、現在以上に高容量のキャパシタ用電極活物質の構築は可能となる。
本発明は、上記の技術的な課題に鑑みなされたもので、金属酸化物を比表面積の高い炭素表面へ担持させることにより、高容量かつ高速な充放電が可能な酸化物−炭素複合体からなる蓄電デバイス用の電極材料およびその製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記の電極材料を用いた電極を提供するものである。
上記の課題を解決する電極材料は、炭素材料と、該炭素材料の表面に形成された酸化物より構成される酸化物−炭素複合体からなる電極材料であって、前記炭素材料の表面に形成された酸化物が、層状複水酸化物の層を剥離して得たシート状複水酸化物を脱水させた酸化物であることを特徴とする。
上記の課題を解決する電極材料の製造方法は、酸化物−炭素複合体からなる電極材料の製造方法であって、層状複水酸化物の層を剥離してシート状複水酸化物を得る工程と、該シート状複水酸化物を炭素材料の表面に吸着させ、シート状複水酸化物−炭素複合体を作製する工程と、前記シート状複水酸化物−炭素複合体中のシート状複水酸化物を脱水して酸化物−炭素複合体を得る工程とを有することを特徴とする。
上記の課題を解決する電極は、上記の酸化物−炭素複合体からなる電極材料を用いたことを特徴とする。
本発明によれば、酸化物−炭素複合体からなる電極材料の酸化物の原料に層状複水酸化物を用い、これをシート状に剥離させた複水酸化物を、高比表面積の炭素の表面に、薄い厚さで均一に吸着させ、加熱処理を行うことにより、従来の電極材料に比較して、高容量かつ高速な充放電が可能な酸化物−炭素複合体からなる蓄電デバイス用の電極材料およびその製造方法を提供できる。
また、本発明は、上記の電極材料を用いた電極を提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る電極材料は、炭素材料と、該炭素材料の表面に形成された酸化物より構成される酸化物−炭素複合体からなる電極材料であって、前記炭素材料の表面に形成された酸化物が、層状複水酸化物の層を剥離して得たシート状複水酸化物を脱水させた酸化物であることを特徴とする。
前記シート状複水酸化物を脱水させた酸化物がマンガンを含むことが好ましい。
また、本発明に係る電極材料の製造方法は、酸化物−炭素複合体からなる電極材料の製造方法であって、層状複水酸化物の層を剥離してシート状複水酸化物を得る工程と、該シート状複水酸化物を炭素材料の表面に吸着させ、シート状複水酸化物−炭素複合体を作製する工程と、前記シート状複水酸化物−炭素複合体中のシート状複水酸化物を脱水して酸化物−炭素複合体を得る工程とを有することを特徴とする。
前記炭素材料が多孔質であり、前記シート状複水酸化物の吸着が、多孔質炭素材料の外部表面及び内部表面に対して行われることが好ましい。
また、本発明に係る電極は、上記の酸化物−炭素複合体からなる電極材料を有することを特徴とする。
次に、図面に基づいて本発明に係る酸化物−炭素複合体からなる電極材料について説明する。
図1は本発明の酸化物−炭素複合体からなる電極材料の一例を示す模式図である。図1において、11は層状複水酸化物の層を剥離(以降、層剥離と略記する。)したシートを脱水した酸化物、12は高比表面積炭素である。図1に示すように、本発明の酸化物−炭素複合体からなる電極材料は、層状複水酸化物を層剥離したシートを脱水した酸化物のほぼ単層のシートが、高比表面積炭素の表面に担持されている。本発明においては、高比表面積炭素として多孔質炭素が好ましく用いられる。この場合には、表面とは炭素粒子の外部表面のほか、その内部表面をも包含する。
最初に高比表面積炭素について説明する。本発明に使用可能な高比表面積炭素には、さまざまなものが用いられる。例示すると、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラックなどの材料が好ましく用いられる。これらは、粒径が小さく、結果的に高比表面積になる。また、多孔質炭素が特に好ましく用いられる。例示すると活性炭や、気相成長炭素繊維などである。但し、本発明の高比表面積炭素はこれらに限定されるものではなく、いかなる高比表面積炭素であっても良好に使用することができる。
ここでいう高比表面積とは、比表面積が10m2/g以上、好ましくは100m2/g以上のものを指す。10m2/g未満の比表面積の炭素を用いた場合には、高い充放電容量を達成することが難しい。炭素材料の比表面積は、例えば窒素ガスの等温吸着線測定によって、高い精度で測定することが可能である。比表面積が10m2/g未満の炭素を用いた場合には、単位体積あたりの充放電容量が小さくなる。
次に、層状複水酸化物を層剥離したシートを脱水した酸化物11に関して説明する。
層状複水酸化物とは、下記の一般式(1)で表される、層状の結晶性水酸化物である。
Figure 2009044009
式中のMIIは2価の金属であり、好ましくはMg,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Znから選ばれる1種又は2種以上の2価金属を表す。MIIIは3価の金属であり、好ましくはAl,Fe,Cr,Co,In,Mnから選ばれる1種又は2種以上の3価金属を表す。xは0より大きい実数であり、好ましくは0.1≦x<0.4を表す。An-はアニオンを表し、好ましくは炭酸イオン、水酸化物イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオンなどである。このアニオンは結晶層間に存在し交換性を有する。nはアニオンの価数を表し、1より大きい整数である。mは層状複水酸化物に吸着した水分子の数を表し、0以上の実数である。
本発明に用いられる層状複水酸化物の組成は、後述する可逆的に酸化−還元反応を起こす材料であれば、特に制限は無いが、電気化学的特性が良好である事と、資源量が豊富で安価であることから、マンガンを含む材料が特に好ましく用いられる。
この層状複水酸化物は、適切な処理を行うことによって、極性溶媒中で、結晶を形成している層が、単一層の状態にまで剥離することが知られており、これを層剥離という。本発明では、この層剥離を用いて、酸化物−炭素複合体からなる電極材料を作製する。
以下、層剥離を用いて、本発明の酸化物−炭素複合体からなる電極材料を作製する手順について、工程毎に説明する。
層状複水酸化物を層剥離するためには、まず、層間アニオンを、イオン交換した後に、極性溶媒の中に導入する方法が一般的である。イオン交換するイオンとしては例えば硝酸イオンが好ましく、また、使用する極性溶媒としては、例えばホルムアミドが好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。また、層剥離の方法も、この方法に限定されるわけではない。層剥離は単一層まで完全に剥離することが好ましいが、必ずしも完全に剥離する事に限定されるものではない。
次に、この層剥離したシート状複水酸化物を極性溶媒中で、上記高比表面積炭素と適切な割合で混合する工程により、シート状複水酸化物が炭素の表面に、数層以下の、極めて薄い厚さで担持された複合体を形成することができる。
この処理を行う際には、炭素材料の表面を修飾して、負電荷を表面に発生させ得るようにしておくことが好ましく、これによって効率的にシート状複水酸化物を担持することができる。これは、シート状複水酸化物が正の電荷を有しているために、炭素材料の表面を酸等で修飾し、負に帯電する官能基を付与することで、静電気的相互作用により吸着を促進するためである。
ただし、本発明において、上記炭素材料の表面修飾は必須ではない。また、この層状複水酸化物の炭素材料表面への担持は、上記の方法に限定されるわけではなく、いかなる方法を用いても良い。
次に、この高比表面積炭素の表面に層状複水酸化物の層剥離後のシートを担持させた複合材料に対して脱水反応を起こし、水酸化物を酸化物に転化する工程について説明する。この工程は、担体の高比表面積炭素を損なうことなく、シート状複水酸化物の脱水反応を起こすことができる方法であれば、どんな方法を用いても良い。例示すると、不活性な雰囲気中での焼成等が挙げられるが、この方法に限定されるわけではない。焼成温度は典型的には200℃から400℃が用いられ、焼成時間は温度との兼ね合いで最適な長さに設定される。この反応後に、層状複水酸化物の層剥離後のシートは酸化物シートへと変化する。この脱水反応は、例えば、赤外吸光分析等によって確認することができる。
本発明の酸化物−炭素複合体からなる電極材料において、前記酸化物シートには、特に制限は無いが、厚さが5.0nm以下、好ましくは0.5nm以下のものが望ましい。また、酸化物シートの面方向の大きさが200nm以下、好ましくは50nm以下のものが望ましい。この層状複水酸化物−炭素複合体中での酸化物シートのサイズは、例えば、透過電子顕微鏡により観察することができる。
以上の様な工程で、本発明の酸化物−炭素複合体からなる電極材料が作製できる。
次にこの酸化物−炭素複合体からなる電極材料を用いて、キャパシタ用の電極を作製する工程について説明する。
この酸化物−炭素複合体からなる電極材料を電極として用いるためには、上述の酸化物−炭素複合体からなる電極材料を、集電体上に集積する必要がある。一般的にキャパシタ用電極の特性を向上させるため、炭素間の電気伝導率を高める目的で、導電補助材が、また、全体の機械的強度を向上させるために、結着剤が用いられる事が多い。ここでは、この両者を含む電極の作製方法について説目する。
本発明の電極は、上記酸化物−炭素複合体を集電体である電極上に固定したものである。本発明の電極中において、前記酸化物−炭素複合体からなる電極材料は、層状複水酸化物で修飾する前の形態を反映した粒子の形で使用される。例えば粒子径約34nmのケッチェンブラックを炭素材料に用いた場合、電極に集積する酸化物−炭素複合体粒子のサイズは、ケッチェンブラックの粒子径に被覆した酸化物層の厚さ約0.5nmから5.0nm程度を加えたサイズとなる。
図2は、本発明の電極の一例の構成を示す模式図である。図2において、21は、前述の工程で作製した酸化物−炭素複合体からなる電極材料、22は導電補助材、23は結着剤、24は集電体である。
本発明において、導電補助材、及び結着剤は必須な構成要素ではないが、これらがあることで、電極としての性能が一般的に向上する。
最初に導電補助材22について説明する。本発明の導電補助材としては、さまざまな材料が使用可能である。例示すると、ポリアニリン類、ポリピロール類、及びポリチオフェン類から選ばれる導電性ポリマーなどである。また、人造黒鉛、天然黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、フラーレン類などの炭素材料も好ましく用いられる。但し、本発明の導電補助材はこれらに限定されるものではなく、酸化物−炭素複合体間の電気伝導を高められる材料ならば特に限定なく使用することができる。導電補助材の大きさとしては、その粒径が30nmから100nm程度が好ましいが特に制限は無い。
次に結着剤23について説明する。本発明に使用可能な結着剤には、さまざまなものが用いられる。例示すると、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンなどから選ばれるフッ素系ポリマーなどの高分子バインダーなどが好ましく用いられる。但し、本発明の結着剤はこれらに限定されるものではなく、炭素間及の結着性を高められる材料ならば、基本的にいかなる材料であっても良好に使用することができる。結着剤の大きさには特に制限は無いが、添加量は酸化物−炭素複合体間及び酸化物−炭素複合体と集電体間の導電の阻害にならない最大の量を導入することが好ましい。
本発明の電極は、例えば、上述の酸化物−炭素複合体からなる電極材料と、導電補助材、結着剤とを配合した混合物を溶媒中で攪拌混合し、それを集電体24、例えば、アルミニウムなどの金属箔に塗布、圧着、乾燥し、電極形状に打ち抜いた後、さらに乾燥をさせる事により作製できる。但し、本発明のキャパシタ用の電極を作製する工程はこれらに限定されるものではなく、上述の酸化物−炭素複合体からなる電極材料を物理的に強固にかつ、良好な導電性を有する形で集電体上に集積できる工程ならばいかなる工程であっても用いることができる。
本発明の電極に含有される酸化物−炭素複合体からなる電極材料の含有量は、電極材料、導電補助材および結着剤の合計に対して50重量%以上95重量%以下、好ましくは75重量%以上90重量%以下の範囲である。
本発明の電極の集電体を除く層の厚さは5μm以上200μm以下の範囲が好ましい。
以下、実施例を示し本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
本実施例は、マンガン−ニッケル層状複水酸化物を合成し、層剥離を行った後に、ケッチェンブラックと複合化させ、不活性雰囲気中での加熱処理を行って、酸化物−炭素複合体からなる電極材料を作製し、電極としての性能を評価した例である。
(層状複水酸化物の合成)
層状複水酸化物の合成の実施例を説明する。層状複水酸化物の合成は、Solid State Sciences,Vol.5,p.1019から1026(2003年)を参照に行った。
硝酸マンガン六水和物及び硝酸ニッケル六水和物(共にキシダ化学製、特級)をニッケル:マンガンのモル比が2:1になるように重量を調整し、これらを混合した水溶液を作成した。このとき、金属イオンの総量が1mol/dm3になるように調整する。得た混合液450cm3を0.5mol/dm3炭酸ナトリウム水溶液200cm3に滴下し加えた。このとき、溶液のpHが約10に保たれるように3mol/dm3水酸化ナトリウム水溶液も同時に滴下した。一時間ほど掛けて全ての混合溶液を加えた後、20度、18時間攪拌し、沈殿物としてNi−Mn型層状複水酸化物を得た。得たNi−Mn型層状複水酸化物を50度の温度条件下にて乾燥した。
生成物を酸性水溶液中にて溶解し、ICP組成分析を行った結果、この複水酸化物はおおよそ[Ni2,Mn(OH2)]2+(CO32-・nH2Oであり、X線回折分析の結果、基本面間隔が約0.78nmの層状物質であることが明らかとなった。また、SEMによる観察の結果、生成物は板状の形態をしており、その径がおおよそ20nmから300nmの結晶が多く観察された。
(層状複水酸化物の層剥離)
上記工程で得た、層状複水酸化物の層剥離の工程を、Chemistry of Materials、Vol.17,p.4386から4391(2005年)を参照に行った。
硝酸ナトリウム0.75molおよび硝酸0.005mol(共にキシダ化学製)を500cm3の煮沸した純水に加えた溶液に、得られた層状複水酸化物0.5gを加え窒素をバブリングしながら常温にて1日攪拌し、炭酸イオンと硝酸イオンのイオン交換を行った。硝酸イオンへの交換反応はX線回折によって確認され、層間イオンへの硝酸イオンの導入が確認された。イオン交換後のX線回折分析で、生成物の層状構造の保持が確認され、基本面間隔は約0.89nmに変化していた。
以上のように得られた硝酸型層状複水酸化物を懸濁液より窒素雰囲気下にて回収、洗浄、乾燥させた後、ホルムアミド溶媒に加え攪拌することにより、層状物質の層剥離を行った。硝酸方層状複水酸化物の硝酸イオンは、空気中で容易に炭酸イオンに交換されてしまうので、全ての工程は窒素雰囲気のような不活性な雰囲気中で行う必要がある。
この工程の後、懸濁液は可視光領域において透過性状態に変化した。これは、層状物質が良好に層剥離したことを示唆している。この透明状態の液を希釈し、シリコン基板に移して原子間力顕微鏡にて観察した結果、厚さが最大で4.0nm、粒子径が約20nmのシート状の形態をした生成物を観察する事ができ、元の層状物質が剥離したナノシートの生成を確認した。
(炭素材料表面へのシート状複水酸化物の担持)
次に、上記方法で得られたシート状複水酸化物を高比表面積炭素(ライオン社製:ケッチェンブラック、粒子径、約34nm)に担持した。使用したケッチェンブラックは、窒素ガス吸着によって、比表面積が1250m2/gと測定され、また、吸着等温線の形状から、マイクロ孔を有する多孔質であることがわかった。
最初に、ケッチェンブラックを1.0Nの濃度の硝酸中に分散させ、24時間攪拌し、表面酸処理を行った。酸処理後、ケッチェンブラックは、純水で洗浄し、常温で減圧乾燥させた。
硝酸処理を行ったケッチェンブラックをホルムアミド中に分散し、これに、前記シート状複水酸化物を含むホルムアミド分散液を加え、窒素雰囲気下、常温にて50rpmの速度で3日間攪拌した。次いで得られた沈殿物を濾別し、純水にて洗浄後、減圧乾燥しシート状複水酸化物−ケッチェンブラック複合体を得た。シート状複水酸化物の吸着量を吸着前後の溶液の、上澄み液のUV−Visスペクトルを用いて定量し、計算によって求めた単層のシート状複水酸化物1molあたりの面積から、吸着した単層シートの総面積を求め、炭素表面における担持の割合を計算した。
単一層のシート状複水酸化物の全表面積はシートの両面を含めた数値であるので、仮に、炭素材料の表面が完全に単層のシート状複水酸化物で被覆された場合には、この割合は2となる。ケッチェンブラックを約34nmの球と仮定したときの外表面積と比較した結果、吸着したシート状複水酸化物の全表面積はケッチェンブラックの外表面積の約1.94倍である事がわかった。このことから、シート状複水酸化物のケッチェンブラックへの吸着は単層剥離を仮定した場合、ほぼ100%の被覆率で達成できたレベルであることが確認できた。
但し、この計算結果は、単層剥離したものが100%の被覆率で炭素材料表面に担持されているということを短絡的に示しているわけではなく、実際には数層から成る超薄シートが炭素表面の数十%に担持された構造である。
(シート状複水酸化物−ケッチェンブラック複合体中のシート状複水酸化物の酸化)
次に、上記のように得られたシート状複水酸化物−ケッチェンブラック複合体中のシート状複水酸化物を酸化し、酸化物―ケッチェンブラック複合体を作製した。
シート状複水酸化物の酸化は、熱処理による脱水反応によって行った。前記シート状複水酸化物−ケッチェンブラック複合体をアルゴン雰囲気下で、350度にて12時間焼成し、酸化物−炭素複合体を得た。
層状複水酸化物の不活性ガス雰囲気の熱分析、及び赤外吸光分析により、この条件では、複水酸化物は完全に酸化物に変化したものと考えられる。
(電極の作製)
続いて、上記のようにして得た、酸化物−ケッチェンブラック複合体を結着剤及び導電補助材と共に集電体に集積し、蓄電材料用電極を作製した。
前記酸化物−ケッチェンブラック複合体と、導電補助材として用いられる未処理のケッチェンブラックを質量比で5:1で混合し、バインダーとしてポリテトラフルオロエチレン粉末(三井デュポンフロロケミカル社製:6−J、平均粒径:300μm乃至600μm)を全体の質量比で6%添加、混合し、得られた混合物をステンレス基板上に圧着することにより酸化物−炭素複合電極を得た。
(セルの作製、評価)
上記工程を経て作製した電極を用い、三極式セルを組み立て、電極の評価を行った。各電極は150℃減圧条件下にて乾燥し、露点−60度以下のドライエリアでセルの組み立てを行った。対極には金属リチウムを用い、セパレータにポリエチレン製多孔膜を用い、電解液に1mol/dm3過塩素酸リチウムプロピレンカーボネート溶液を用いた。充放電試験を行った。充電電流密度は、活物質の単位重量あたりで50mA/gに固定し、放電電流密度は50mA/g乃至30A/gの範囲で測定を行った。その結果、15A/gの高速放電を行っても1.0A/gの電流密度での放電時と比較して、その容量が殆ど変化することがなく、放電曲線の平均電位で出力特性から見積もるとその容量はおおよそ315Wh/kgにも達していた。
実施例2
本実施例は、実施例1と同じマンガン−ニッケル層状複水酸化物を用いて、層剥離を行った後に、多孔質炭素材料と複合化させ、不活性雰囲気中での加熱処理を行って、酸化物−炭素複合体からなる電極材料を作製し、電極としての性能を評価した例である。
実施例1と同じ手順で、マンガン−ニッケル層状複合水酸化物を合成し、同じ手順で、ホルムアミド溶液中で相剥離を行い、シート状複水酸化物を得た。
(多孔質炭素材料の合成例)
多孔質炭素材料の合成例を説明する。多孔質炭素材料の合成は、特開2005−239450号公報を参考に行った。
SiO2コロイド水溶液(日本触媒社製、アモルファスシリカ球KE−P10、コロイド粒子径約100nm)から遠心分離法によってSiO2コロイド結晶を形成した。ついで、前記SiO2コロイド結晶をフェノール/ホルムアルデヒド/塩酸の混合溶液中に浸漬し、次いで、アルゴンガス雰囲気下、128度で熱処理を行うことにより、前記コロイド結晶の、コロイド粒子間にフェノール樹脂を生成させた。次いで、前記フェノール樹脂−コロイド結晶複合体をアルゴン雰囲気下にて1000度で熱処理することにより炭素−コロイド結晶複合体を得た。次いで前記炭素−コロイド結晶複合体をフッ酸で処理することによりコロイド結晶を除去し、多孔質炭素材料を得た。多孔質炭素材料は窒素ガス吸着によって、比表面積が約800m2/gと測定され、また、SEM観察の結果から、細孔径約100nmのマクロ孔を有する多孔質であることがわかった。窒素吸着及びSEM観察の結果、前記多孔質炭素材料の全表面積に対してマクロ孔の面積の割合は、約50%であることがわかった。
更に前記多孔質炭素材料を1.0Nの濃度の硝酸中に分散させ、3時間攪拌し、表面酸処理を行った。酸処理後、多孔質炭素材料は、純水で洗浄し、常温で減圧乾燥させた。
硝酸処理を行った前記多孔質炭素材料をホルムアミド中に分散し、これに、前記シート状複水酸化物を含むホルムアミド分散液を加え、窒素雰囲気下、常温にて50rpmの速度で3日間攪拌した。次いで得られた沈殿物を濾別し、純水にて洗浄後、減圧乾燥しシート状複水酸化物−多孔質炭素材料複合体を得た。シート状複水酸化物の吸着量を吸着前後の溶液の、上澄み液のUV−Visスペクトルを用いて定量し、計算によって求めた単層のシート状複水酸化物1molあたりの面積から、吸着した単層シートの総面積を求め、炭素表面における担持の割合を計算した。単一層のシート状複水酸化物の全表面積はシートの両面を含めた数値であるので、仮に、炭素材料の表面が完全に単層のシート状複水酸化物で被覆された場合には、この割合は2となる。吸着したシート状複水酸化物の全表面積は前記多孔質炭素材料におけるマクロ孔の全表面積の約1.85倍である事がわかった。前記多孔質炭素材料の外表面の面積は全表面積に比べてはるかに小さいこと、また、サイズマッチングの点からマイクロ孔にはシート状複水酸化物は吸着しない事から、シート状複水酸化物は前記多孔質炭素材料の外表面のみだけではなく、内部マクロ孔表面にも吸着していることがわかった。
(シート状複水酸化物−多孔質炭素材料複合体中のシート状複水酸化物の酸化)
次に、上記のように得られたシート状複水酸化物−多孔質炭素材料複合体中のシート状複水酸化物を酸化し、酸化物―多孔質炭素材料複合体を作製した。
複水酸化物の酸化は、熱処理による脱水反応によって行い、前記シート状複水酸化物−多孔質炭素材料複合体をアルゴン雰囲気下350度にて12時間焼成し、酸化物−炭素複合体を得た。
シート状複水酸化物の不活性ガス雰囲気の熱分析、及び赤外吸光分析により、この条件では、複水酸化物は完全に酸化物に変化したものと考えられる。
(電極の作製)
続いて、上記のようにして得た、酸化物−多孔質炭素材料複合体を結着剤及び導電補助材と共に集電体に集積し、蓄電材料用電極を作製した。
前記酸化物−多孔質炭素材料複合体と、導電補助材として用いられる未処理のケッチェンブラックを質量比で5:1で混合し、バインダーとしてポリテトラフルオロエチレン粉末(三井デュポンフロロケミカル社製:6−J、平均粒径:300〜600μm)を全体の質量比で6%添加、混合し、得られた混合物をステンレス基板上に圧着することにより酸化物−炭素複合電極を得た。
(セルの作製、評価)
上記工程を経て作成した電極を用い、三極式セルを組み立て電極の評価を行った。各電極は150℃減圧条件下にて乾燥し、露点−60度以下のドライエリアでセルの組み立てを行った。対極には金属リチウムを用い、セパレータにポリエチレン製多孔膜を用い、電解液に1mol/dm3過塩素酸リチウムプロピレンカーボネート溶液を用いた。充放電試験を行った。充電電流密度は50mA/gに固定し、放電電流密度は50mA/g乃至30A/gの範囲で測定を行った。その結果、12A/gの高速放電を行っても1.0A/gの電流密度で放電時と比較してその容量が殆ど変化することがなく、放電曲線の平均電位で出力特性から見積もるとその容量はおおよそ280Wh/kgにも達していた。
以上、上記のようにして得る事の出来る酸化物被覆電極は、従来の電極と比較し、ハイパワーかつハイレートな電極材料として有用である。
本発明の酸化物−炭素複合体からなる電極材料を用いた電極は、ハイブリッド車用電源、風力発電用の平準化デバイス、鉄道用回生エネルギー蓄電デバイス等、大容量のキャパシタが必要とされる産業部門に利用することができる。
本発明の酸化物−炭素複合体からなる電極材料の一例を示す模式図である。 本発明の電極の一例の構成を示す模式図である。
符号の説明
11 層状複水酸化物を層剥離したシートを脱水した酸化物
12 高比表面積炭素
21 酸化物−炭素複合体からなる電極材料
22 導電補助材
23 結着剤
24 集電体

Claims (5)

  1. 炭素材料と、該炭素材料の表面に形成された酸化物より構成される酸化物−炭素複合体からなる電極材料であって、前記炭素材料の表面に形成された酸化物が、層状複水酸化物の層を剥離して得たシート状複水酸化物を脱水させた酸化物であることを特徴とする酸化物−炭素複合体からなる電極材料。
  2. 前記シート状複水酸化物を脱水させた酸化物がマンガンを含むことを特徴とする請求項第1項に記載の電極材料。
  3. 酸化物−炭素複合体からなる電極材料の製造方法であって、層状複水酸化物の層を剥離してシート状複水酸化物を得る工程と、該シート状複水酸化物を炭素材料の表面に吸着させ、シート状複水酸化物−炭素複合体を作製する工程と、前記シート状複水酸化物−炭素複合体中のシート状複水酸化物を脱水して酸化物−炭素複合体を得る工程とを有することを特徴とする電極材料の製造方法。
  4. 前記炭素材料が多孔質であり、前記シート状複水酸化物の吸着が、多孔質炭素材料の外部表面及び内部表面に対して行われることを特徴とする請求項3に記載の電極材料の製造方法。
  5. 請求項1または2に記載の酸化物−炭素複合体からなる電極材料を用いたことを特徴とする電極。
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