JP2009041000A - 顔料インク組成物及びこれを用いた画像形成方法 - Google Patents

顔料インク組成物及びこれを用いた画像形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】顔料濃度が高くても分散安定性を有し、長期にわたり保管したときにも良好なインク特性が維持される顔料インク組成物を提供する。また、上記の優れた特性とともに、耐光性や耐オゾン性といった耐侯性、さらに耐擦過性を改善し、顔料のもつ高い着色力と褪色抑制力とにより、メディアに良好な画像を形成しうる顔料インク組成物及びこれを用いた画像形成方法を提供する。さらにまた、オンサイト・オンデマンドで安全に調製することができ、環境にやさしい顔料インク組成物を提供する。
【解決手段】水性媒体中に、重合体に包含させた顔料微粒子と、親水性基を有する高分子化合物とを含有させた顔料インク組成物であって、前記親水性基を有する高分子化合物が、前記重合体に包含させた顔料微粒子を調製した後に含有させたものである顔料インク組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット、塗料、化粧品料、文具などに好適に用いられる顔料インク組成物及びこれを用いた画像形成方法に関する。
米国のナショナル・ナノテクノロジー・イニシアティブ(NNI)による研究開発活動を始め、各国でナノ材料の開発が活発になされている。この1つに顔料の微粒化があるが、顔料をナノメートルサイズにまで微細化するとその表面積は著しく大きくなることから、経時における凝集を抑制することが難しくなる。さらに、加熱条件下においては経時における安定性の維持が難しく、例えば粒径の増大が加速的に進行し顔料微粒子の沈降を早めてしまう。
これに対し、所定の重合体を固定化した顔料微粒子により分散安定性を良化した例が特許文献1に開示されている。また、顔料の耐光性を高める目的で、顔料分散液にポリマーやラテックスを添加することが開示されている(特許文献2、3)。しかし、昨今のインクジェット等のインクに求められる高い要求性能に鑑みると、さらなる顔料微粒子及びその分散物の特性の良化が望まれ、インク性能の向上につなげることが求められる。
特開2007−39643号公報 特開2003−138171号公報 特開2003−170655号公報
本発明は、顔料濃度が高くても分散安定性を有し、長期にわたり保管したときにも良好なインク特性が維持される顔料インク組成物の提供を目的とする。また、本発明は、上記の優れた特性とともに、耐光性や耐オゾン性といった耐侯性、さらに耐擦過性を改善し、顔料のもつ高い着色力と褪色抑制力とにより、メディアに良好な画像を形成しうる顔料インク組成物及びこれを用いた画像形成方法の提供を目的とする。さらにまた本発明は、オンサイト・オンデマンドで安全に調製することができ、環境にやさしい顔料インク組成物の提供を目的とする。
本発明の目的は下記構成によって達成された。
(1)水性媒体中に、重合体に包含させた顔料微粒子と、親水性基を有する高分子化合物とを含有させた顔料インク組成物であって、前記親水性基を有する高分子化合物が、前記重合体に包含させた顔料微粒子を調製した後に含有させたものであることを特徴とする顔料インク組成物。
(2)前記重合体に包含させた顔料微粒子を含有する水分散物と、前記親水性基を有する高分子化合物としてポリビニルアルコールを溶解した溶液とを、前記水分散物調製後に混合してなることを特徴とする(1)に記載の顔料インク組成物。
(3)前記重合体が前記顔料微粒子の存在下で重合性化合物を重合したものであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の顔料インク組成物。
(4)前記重合性化合物がラジカル重合性化合物であることを特徴とする(3)に記載の顔料インク組成物。
(5)前記顔料微粒子の体積平均粒径が100nm未満であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
(6)前記顔料微粒子の体積平均粒径が1nm以上50nm未満であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
(7)前記顔料微粒子の体積平均粒径が1nm以上30nm未満であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
(8)前記顔料微粒子の体積平均粒径(Mv)と個数平均粒径(Mn)との比(Mv/Mn)が1.00以上1.80以下であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
(9)前記顔料微粒子が、キナクリドン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、ジスアゾ縮合化合物顔料、またはフタロシアニン化合物顔料からなる群より選ばれた顔料からなることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
(10)前記顔料微粒子として複数の種類のものを含有することを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
(11)前記複数の種類の顔料微粒子が、少なくとも、有機金属錯体顔料微粒子及びこれとは別種の有機顔料微粒子であること特徴とする(10)に記載の顔料インク組成物。
(12)前記有機金属錯体顔料微粒子が金属フタロシアンニン微粒子であり、前記別種の有機顔料微粒子が水素フタロシアン微粒子であることを特徴とする(11)に記載の顔料インク組成物。
(13)前記複数の種類の顔料微粒子が、少なくとも、互いに金属の異なる複数の種類の有機金属錯体顔料微粒子であること特徴とする(10)に記載の顔料インク組成物。
(14)前記顔料微粒子の形成時に分散剤を用い、前記重合体で包含された顔料微粒子と、該重合体包含顔料微粒子側にある前記分散剤と、前記水性媒体側にある前記親水性基を有する高分子化合物とを共存させた(1)〜(13)のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
(15)前記顔料微粒子として、有機顔料を良溶媒に溶解した顔料溶液と、前記良溶媒に対しては相溶性を有し前記有機顔料に対しては貧溶媒となる溶媒とを、前記重合体をなす重合性化合物の共存下で接触させ析出させた微粒子を含むことを特徴とする(1)〜(14)のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
(16)前記顔料微粒子として、有機金属錯体顔料前駆体溶液と金属塩類溶液とを接触させて金属置換反応させ有機金属錯体顔料を生成する金属置換反応工程と、前記有機金属錯体顔料を分散する分散工程とから調製された微粒子を含むことを特徴とする(1)〜(15)のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
(17)前記金属置換反応において、前記金属塩類を2種以上用い、その少なくとも2種の金属塩類の金属原子を互いに異ならせて生成させた、複数の種類の顔料微粒子を含むことを特徴とする(16)に記載の顔料インク組成物。
(18)前記分散工程において、前記有機金属錯体顔料を微粒子として分散させ、これと同時もしくは逐次に前記有機金属錯体顔料前駆体の微粒子を析出させ、組成物中に前記顔料微粒子として複数の種類含有させたことを特徴とする(15)又は(16)に記載の顔料インク組成物。
(19)金属塩類溶液と、前記有機金属錯体顔料前駆体及びこれとは別種の有機顔料を含有する混合液体とを接触させて前記前駆体を金属置換反応させ有機金属錯体顔料を生成させる工程と、該有機金属錯体顔料を生成させた液体と、この媒体と相溶性を有し前記別種の有機顔料に対して貧溶媒となる溶媒とを分散剤の共存下で接触させてpHを変化させながら前記有機顔料を微粒子として生成させる工程とから調製される複数の種類の顔料微粒子を含有させたことを特徴とする(1)〜(14)のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
(20)前記顔料微粒子が、マイクロリアクター装置を用いて形成されたことを特徴とする(1)〜(19)のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
(21)(1)〜(20)のいずれか1項に記載の顔料インク組成物を用いて画像記録することを特徴とする画像形成方法。
本発明の顔料インク組成物は、顔料の濃度を高めても高い分散安定性を示し、長期間にわたり保管したときにも良好なインク性能を維持する。また、本発明の顔料インク組成物及びこれを用いた本発明の画像形成方法は、顔料をナノメートルサイズにまで微細化したときにも上記の優れた特性とともに、耐光性や耐オゾン性といった耐侯性、さらには耐擦過性を改善し、顔料のもつ高い着色力を維持し褪色を抑制するという優れた作用効果を奏する。さらにまた本発明の顔料インク組成物は、特殊な有機溶剤等を必要とせず環境にやさしく、オンサイト・オンデマンドで安全に調製することができる。
本発明の顔料インク組成物は、水性媒体中に、重合体に包含させた顔料微粒子(重合体包含顔料微粒子)と、親水性基を有する高分子化合物とを含有させた顔料インク組成物であって、前記親水性基を有する高分子化合物が、前記重合体包含顔料微粒子を調製した後に含有させたものである。そして重合体包含顔料微粒子の水分散物と、水に溶解した親水性基を有する高分子化合物(好ましくはポリビニルアルコール(PVA))とを混合してなることが好ましい。両者を混合するに当たり、これらを添加する方向は特に限定されず、上記分散物に親水性基を有する高分子化合物の水溶液を添加しても、親水性基を有する高分子化合物の水溶液に分散物を添加してもよく、また同時に上記分散物と親水性基を有する高分子化合物の水溶液とを添加混合してもよい。本発明において分散物とは、液状組成物(分散液)であっても、固体状組成物であってもよく、またペースト状の半固形状の組成物やインク画像等を含む意味に用いる。
本発明において、顔料微粒子を重合体に包含させるとは、分散物中で集合したもしくは散在した多数の重合体分子の中に顔料微粒子が存在することをいい、顔料微粒子全体が包埋された状態であっても、重合体分子が顔料微粒子の表面もしくはこの近傍に点在した状態又は顔料微粒子の一部が露出した状態であってもよい。顔料微粒子を包含する重合体は、該微粒子の形成前に共存させた重合性化合物を重合させたものであることが好ましく、顔料微粒子の一部もしくは全体を包含しうるものであればよい。顔料微粒子は、粒径が小さく、粒径分布がシャープであることが好ましい。重合体包含顔料微粒子における顔料微粒子及び重合体についての詳細は後述する。
本発明の顔料インク組成物は親水性基を有する高分子化合物を含有する。この親水性基は、ヒドロキシル基(ヒドロキシ基)、チオール基、アルデヒド基、アミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルボキシル基、スルホ基、硫酸基、リン酸基、四級アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、スルホ基、スルフィニル基、ホスフィンオキシド、エーテル基、ポリオキシエチレン基、スルフィド基、であることが好ましく、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基がより好ましい。この親水性基に、ピロリドン基は含まれず、したがって上記親水性基を有する高分子化合物にポリビニルピロリドンは含まれない。
高分子化合物の有する親水性基についてさらに詳しくいうと、インク組成物の経時安定性が保たれるのであれば、高分子化合物の有する親水性基の種類が複数あってもかまわない。また、造膜形成が好適であればよく、高分子化合物に占めるすべての親水性基の和が、高分子化合物の5重量%〜95重量%が好ましく、より好ましくは10重量%〜90重量%であることが好ましい。
上記親水性基を有する高分子化合物がインク組成物の0.1〜50重量%であることが好ましく、0.1〜25重量%であることがより好ましく、0.1〜3質量%となるように含有するのがより好ましい。この範囲とすることで、必要により、褪色を抑制し、成膜性を良化するばかりでなく、着色力が高い記録画像を提供することができる。このような優れた特性を利用し、本発明の顔料インク組成物を用いて、例えば銀塩写真画質に相当する良質の記録画像を提供することができる。さらに、耐光性や耐オゾン性といった耐光性が保たれ、記録画像を提供することができる。
本発明の顔料インク組成物における親水性基を有する高分子化合物(好ましくはポリビニルアルコール(PVA))の水溶液は、水性媒体に溶解させたものであることが好ましく、純水に溶解させたものであることがより好ましい。本発明の顔料インク組成物において、水分散物調製後に混合する親水性基を有する高分子化合物は、単なる分散剤としてではなく、ナノメートルサイズにまで微細化した顔料を含有するインクのインク特性を向上する添加剤(インク特性向上剤)として機能し、顔料インク組成物の耐候性や耐擦過性を高めると考えられる。
上記のような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、水性媒体中で、重合体に包まれた顔料微粒子の調製後に上記親水性基を有する高分子化合物が含有されたため、重合体に包まれた顔料微粒子と水性媒体側に存在する上記親水性基を有する高分子化合物とが相互に作用したと考えられる。すなわち、上述の相互作用の存在により高分子化合物は、顔料微粒子が水、オゾン等の作用を受けて分解することを防ぐものと推察される。
さらに本発明の顔料インク組成物においては、前記顔料微粒子の形成時に分散剤を用いることが好ましく、この際、前記重合体包含顔料微粒子側に前記分散剤が、前記水性媒体側に前記親水性基を有する高分子化合物が存在する。この分散剤の詳細については後述するが、例えば親水性基を有さない高分子化合物が挙げられ、具体的にポリビニルピロリドンが挙げられる。すなわち、この実施態様においては、顔料微粒子を重合体により包含し、その顔料微粒子内又はその周辺に上記分散剤が偏在することとなる。このとき水性媒体側に移行する分散剤があってもよいが、相当量の分散剤が重合体と交絡等しながら微粒子側に残存しうる。他方、別途添加された親水性基を有する高分子化合物は水性媒体側に存在する。このような、顔料微粒子をとりまく重合体と分散剤と親水性の高分子化合物とが協働して以下のように作用すると考えられる。ただし、以下の説明により本発明が限定して解釈されるものではない。
顔料インク組成物の成膜時、水性媒体が空気界面および記録媒体に移行する際、残存した水性媒体は、上記高分子化合物の親水性基と上記重合体包含顔料微粒子を取巻く分散剤との間に点在し、経時において、不要な水性媒体が拡散により排除される。この際、高分子化合物は親水性基を有するため、水性媒体の拡散を妨害しない。水性媒体が拡散により空気界面および記録媒体に移行することで上記高分子化合物の親水性基と上記重合体包含顔料微粒子との相互作用が強固になり、重合体包含顔料微粒子が膜中に固持される。また、親水性基を有する高分子化合物は該親水性基がオゾン分子の膜への浸透、顔料分子への到達を抑制し、オゾンによる顔料の劣化も防止できる。他方、上記高分子化合物の親水性基を含有しない場合、成膜時に水性媒体は効率的に分散せず、分散剤近傍に水が局所的に保持され、暴露光により活性ヒドロキシラジカルが生成する。活性ヒドロキシラジカルにより重合体および高分子化合物、顔料も劣化する。この顔料の劣化が退色に寄与しているものと推察する。また、オゾンの浸透が妨害されないため、直接顔料に到達し、退色を進行させているものと考えられる。
このような状態変化は元素分析付走査型顕微鏡(SEM/EDX)測定により特定することが可能であり、さらに詳細に分析するには元素分析付透過型顕微鏡(TEM/EDX)測定、走査型透過電子顕微鏡(STEM/EDX)測定、中性子散乱法、X線散乱法によって特定することも可能である。より視覚的には核磁気共鳴イメージング法(MRI)を用いたリアルタイムイメージング法により経時変化として捕らえることも可能である。上記高分子化合物の親水性基を含有させることにより、経時で偏在している水性媒体が拡散し、減少することからシグナルの強度変化として捕らえることができる。この水性媒体量と暴露時間との相関間から耐侯性を判断することも可能である。
通常、最終組成物において不純物をろ過により除去することは難しく、製造段階で不純物をろ過により除去することが効率的であり好ましい。特に親水性基を有する高分子化合物を含む本発明の顔料インク組成物においては、不純物の除去が難しいことがあるため、不純物等のない水溶液として混和することが好ましい。
また本発明のインク組成物は、余計な添加剤等を必要とせず、重合体に包含させた顔料微粒子の水分散物と、親水性基を有する高分子化合物の水溶液とを組み合わせて、例えばオンサイト、オンデマンドで調製することができる。必要に応じて環境に影響する有機溶剤によらずに純水で希釈して、所望の濃度のインクとすることができ、省資源で環境にやさしいという利点がある。また必要な量のみを、必要なときに組み合わせて混合するだけで目的の性能を示すため、コスト低減にも役立てることができる。これらの利点から、本発明の顔料インク組成物は、インクジェット、塗料、化粧品料、文具を始め、現場に特殊な装置等が無い場所で取り扱う用途にも対応することができる。例えば、本発明の顔料インク組成物を家庭や屋内外で調製して使用することができ、業種等に左右されることなく、平面、曲面、球面の基材に塗布可能な場面であればたとえ基材表面の形状や位置が安定してない部材であっても安全かつ簡便にインク組成物として浸透着色することができる。
本発明の顔料インク組成物においてポリビニルアルコール(PVA)等の親水性基を有する高分子化合物の質量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましく、3,000以上50,000以下がより好ましい。質量平均分子量を1,000以上とすることで顔料粒子の成長及び凝集を抑制する効果が高まり、200,000以下とすることで粘度上昇が抑えられ、溶解し易くなり好ましい。本発明において分子量とは特に断らない限り、ゲルパーミエーションクマトグラフィー(キャリア:テトラヒドロフラン(室温)もしくは、N−メチルピロリンドン(40℃))により求めたポリスチレン換算の質量平均分子量をいう。質量平均分子量とは別の指標として重合度が用いられることもあり、この重合度は10以上2,000以下が好ましく、30以上700以下がより好ましい。重合度を10以上とすることで顔料粒子の成長及び凝集を抑制する効果が高まり、2,000以下とすることで粘度上昇が抑えられ、溶解し易くなり好ましい。
本発明の顔料インク組成物における顔料微粒子とは、ブレイクダウン法、ビルドアップ法、またはブレイクダウン法で形成したものをもとにビルドアップする方法等により形成したものを言い、なかでも顔料微粒子の粒径を効率的にナノメートルサイズにし粒径分布を狭くしうる方法が好ましい。本発明の顔料インク組成物においては、上述のように、着色力の観点から、色濃度を高め鮮やかさを際立たせるために、顔料の粒径が小さく均一で揃っているものとしうるビルドアップ法によることが好ましい。
本発明において「ビルドアップ法」とは、媒体に溶解(分子分散)した顔料および/または顔料前駆体から化学的反応(溶解度の変化も含む)を経て顔料微粒子を形成する方法をいう。このビルドアップ法によれば、ブレイクダウン法で形成することが難しい、ナノメートルサイズの有機顔料微粒子を効率良く形成することができる。そして本発明においては、上記ビルドアップ法で形成した顔料微粒子を「ビルドアップ有機顔料微粒子」と定義する。
ビルドアップ法については、気相中あるいは液相中から核を発生させ粒子成長させる方法が知られている。気相法によれば粒度分布が揃ったものとすることができるが、一度に生産できる量が極めて少ないためコストがかかる。液相法については、例えば特開2003−26972号公報、特開2004−91560号公報、WO2006/121016号公報等に記載の手順を参考にすることができる。これらの方法では、回分操作による生産が可能であるが、大スケールでの反応では製造に時間がかかる場合があり、均一な品質の顔料を生成するために最適化を大スケールで行う際の開発コストがかかることがある。この他、液相法として、マイクロリアクターを用いた流通操作によって顔料微粒子を製造する方法があり、粒径サイズのばらつきを抑制することができ、均質な顔料を生成することができる点で好ましい。これについては例えば、特開2005−307154号公報、特開2006−342304号公報に記載の手順を参考にすることができる。
ビルドアップ有機顔料微粒子は、液相法による再沈法や共沈法により形成したものであることがより好ましい。これ以外に、後述する金属置換反応工程(a)及び分散工程(b)を経て形成したものであることがより好ましい。本発明において液相法とは、有機顔料を良溶媒に溶解(分子分散)した溶液を貧溶媒(水性媒体など)とを混合し、有機顔料を析出させる方法をいう。本発明において再沈法とは、有機顔料を良溶媒に溶解(分子分散)した溶液を貧溶媒(水性媒体など)とを接触させ顔料を析出形成する方法をいう。本発明において共沈法とは、有機顔料を良溶媒に溶解(分子分散)した溶液を貧溶媒(水性媒体など)と接触させ顔料を析出形成する方法において、有機顔料析出時に分散剤を共存させる微粒子形成方法をいう。共沈法において分散剤を共存させる態様は特に限定されないが、上記の顔料溶液及び貧溶媒のいずれかもしくは両方に分散剤を含有させておくことが好ましく、これにより微粒子析出時の分散安定性を効果的に向上させることができる。なお、このとき用いられる具体的な分散剤については後述する。微粒子析出をこれらの方法で形成した顔料微粒子は、粒子サイズ、その分布、分散安定性に優れ、しかも生産効率が高い点で特に好ましい。
本発明の顔料インク組成物は調色性に優れる。ここで示す調色性とは混合時、短時間で色別れしにくい色の状態を示す。さらに、再沈法ないし共沈法で作製した顔料微粒子を混合して調色する好ましい実施態様について詳しくいうと、前記分散工程において再沈法ないし共沈法が行われるようにしてもよく、再沈法ないし共沈法で得た顔料分散組成物を別途混合するようにしてもよい。前記分散工程において再沈法ないし共沈法を行う実施態様については、例えば後述する有機金属錯体顔料前駆体を含む液体及び/又は金属置換反応で該前駆体から生成させた有機金属錯体顔料を含む液体及び/又は顔料溶液を貧溶媒と混合して有機金属錯体顔料前駆体の微粒子及び/又は有機金属錯体顔料の微粒子及び/又は顔料の微粒子を生成させることが挙げられる。また、このとき該微粒子をナノメートルサイズで得ることが好ましい。
微粒子の計測法において、数値化して集団の平均の大きさを表現する方法があるが、よく使用されるものとして、分布の最大値を示すモード径、積分分布曲線の中央値に相当するメジアン径、および各種の平均径(長さ平均、面積平均、質量平均、個数平均、体積平均など)がある。本発明において平均粒子サイズ(粒子の平均直径)は、特に断らない限り、体積平均粒径(Mv)をいう。
本発明の顔料インク組成物において、顔料微粒子の平均粒子サイズは流路を閉塞しない範囲で任意であるが、体積平均粒径で100nm未満であることが好ましい。高画質用インクなどで要求されるより微細な微粒子とする場合は、微粒子の体積平均粒径を1nm以上50nm以下とすることがより好ましく、1nm以上30nm未満とすることが特に好ましい。
本発明の顔料インク組成物において、顔料微粒子の粒子サイズが揃っていることが好ましい。ここで単分散微粒子とすることは含まれる粒子の大きさが揃っているだけではなく、通常、粒子内の化学組成や結晶構造にも粒子間の変動がないことを意味し粒子の性能を決める要素となり、特に粒子サイズがナノメートルの超微粒子においてはその粒子の特性を支配する因子として単分散微粒子とすることが好ましい。
本発明の顔料インク組成物において、顔料微粒子の体積平均粒径Mvを個数平均粒径Mnで除した値(Mv/Mn)を単分散性の指標として用いることができ、本発明において、特に断らない限り、微粒子の単分散性を上記Mv/Mnの値で示し、この値が小さく1に近いほど単分散性に優れており、本発明の微粒子においては、1.0以上1.80以下であることが好ましく、1.0以上1.60以下であることが特に好ましい。なお、体積平均粒径Mv、個数平均粒径Mnは、例えば、動的光散乱法などによって測定することができる。
顔料粒子のサイズが揃っていることを表す別の指標として算術標準偏差値が用いられることも有り、好ましくは130nm以下であり、より好ましくは80nm以下であり、特に好ましくは50nm以下であり、このようにすることで粒度分布のピークをシャープにすることができる。本発明において、算術標準偏差値は、粒度分布を正規分布とみなして標準偏差を求める方法で、積算分布の84%粒子径から、16%粒子径を減じた値を2で除した値である。
本発明の微粒子は保存安定性が高いことが好ましく、この安定性を示す指標として保存処理による粒径の変化率で表すことができ、例えば、上述した体積平均粒径Mvの変化率で表すことができる。本発明の微粒子は、例えば60〜80℃、50〜300時間の加熱保存処理をしたときの変化率((加熱保存処理後のMv[Mvf]−加熱保存処理前のMv[Mvi])/加熱保存処理前のMv[Mvi])が6.0%以下であることが好ましく、5.0%以下であることがより好ましく、4.0%以下であることが特に好ましい。
上記再沈法ないし共沈法において顔料溶液と貧溶媒とを混合する態様として、バッチ方式についていうと、(i)顔料溶液に貧溶媒を注ぐ態様、(ii)貧溶媒に顔料溶液を注ぐ態様、(iii)顔料溶液と貧溶媒とを同時に供給して混合する態様などが挙げられる。このとき、フラスコやタンク内を攪拌し混合を促進することが好ましい。
本発明において顔料は色相もしくは構造において限定されるものではなく、マゼンタ顔料、イエロー顔料、及びシアン顔料のいずれであってもよい。有機顔料としては例えば、ペリレン化合物顔料、ペリノン化合物顔料、キナクリドン化合物顔料、キナクリドンキノン化合物顔料、アントラキノン化合物顔料、アントアントロン化合物顔料、ベンズイミダゾロン化合物顔料、ジスアゾ縮合化合物顔料、ジスアゾ化合物顔料、アゾ化合物顔料、インダントロン化合物顔料、インダンスレン化合物顔料、キノフタロン化合物顔料、キノキサリンジオン化合物顔料、金属錯体アゾ化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料、トリアリールカルボニウム化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、アミノアントラキノン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、ナフトールAS化合物顔料、チオインジゴ化合物顔料、イソインドリン化合物顔料、イソインドリノン化合物顔料、ピラントロン化合物顔料、イソビオラントロン化合物顔料、またはそれらの混合物のマゼンタ顔料、イエロー顔料、またはシアン顔料が挙げられる。
なかでもキナクリドン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、ジスアゾ縮合化合物顔料、またはフタロシアニン化合物顔料が好ましく、キナクリドン化合物顔料、ジスアゾ縮合化合物顔料、またはフタロシアニン化合物顔料がより好ましい。
本発明の組成物において用いられるビルドアップ有機顔料微粒子は、単一の顔料またはその前駆体から形成されたものであっても、2種類以上の顔料またはその前駆体から形成されたものであってもよく、また顔料の固溶体であってもよい。更には顔料微粒子形成後に、複数の種類の微粒子が混合された混合物であってもよい。
本発明の顔料インク組成物においては、色相の異なる2種類以上の顔料を用いることで所望の色調に調節(色相調整)でき、本発明のインク組成物は色相調整に際し、ビルドアップ有機顔料微粒子を2種類以上含有することが好ましい。すなわち、前記顔料微粒子として複数の種類のものを含有することが好ましく、前記複数の種類の顔料微粒子が、有機金属錯体顔料微粒子及びこれとは別種の有機顔料微粒子を含むことがより好ましい。あるいは、前記複数の種類の顔料微粒子が、互いに金属の異なる複数の種類の有機金属錯体顔料微粒子を含むことが好ましい。このとき、前記有機金属錯体顔料微粒子として金属フタロシアンニン微粒子を、前記別種の有機顔料微粒子として水素フタロシアン微粒子を含むことが好ましい。
とくに本発明の色相調整においては、ビルドアップ有機顔料微粒子として2種類以上のフタロシアニン化合物顔料の微粒子を含有することが好ましく、なかでも2種類以上の水素フタロシアニン顔料および/または金属フタロシアニン顔料が好ましく、更には水素フタロシアニン顔料、銅フタロシアニン顔料、亜鉛フタロシアニン顔料、鉛フタロシアニン顔料から選ばれた2種類以上の組合せであることがさらに好ましい。
顔料分散組成物に複数の顔料種のビルドアップ顔料微粒子を含有させるとき、その種類の数は特に限定されないが、2〜10種であることが好ましく、2〜3種であることがより好ましい。顔料分散組成物に含有している各種の微粒子の含有率は顔料の色強度に支配され、特に限定されないが、全微粒子に対する重量%が大きい1種の主顔料微粒子の割合が50%以上であることが好ましく、70〜99.9%であることがより好ましい。
2種以上のビルドアップ有機顔料微粒子を含有する組成物を調製する好ましい実施態様として、下記<i>〜<iii>の実施態様が挙げられる。
<i>マイクロリアクター装置によりおよび/または撹拌液中で2種以上のビルドアップ有機顔料微粒子をそれぞれ生成させ、このビルドアップ有機顔料微粒子をそれぞれ含有する2種類以上の顔料組成物をマイクロリアクター装置で混合する実施態様。
<ii><i>で生成させた2種以上のビルドアップ有機顔料微粒子をそれぞれ含有する2種類以上の顔料組成物同士を、マイクロリアクター装置を用いずに混合する実施態様。
<iii>マイクロリアクター装置によりおよび/または撹拌液中で2種類以上のビルドアップ有機顔料微粒子を一つの槽内で生成させ、別途の混合工程を要さずに前記2種以上のビルドアップ有機顔料微粒子を含有する分散物を調製する実施態様。
上記の実施態様における製造方法によれば、マイクロリアクター装置によりおよび/または撹拌液中で生成させた2種類以上のビルドアップ有機顔料微粒子を含有する分散物を効率良く調製することができ、複雑な工程や技巧的で個人差のある操作を要さずに分散物を所望の色相とする、再現性の高い調色を実現できるため好ましい。中でも、2種類以上のフタロシアニン化合物を含有する顔料組成物を生成させる際にマイクロリアクター装置を用いて行うことが好ましい。なお、マイクロリアクター装置の詳細については後で述べる。
本発明の顔料インク組成物の調整法において、良溶媒とは顔料を均一に溶解する溶媒を示し、顔料溶液は、顔料を均一に溶解させたものであることが好ましい。その顔料の溶解方法は特に限定されず、添加剤を用いずに溶剤に溶解しても、アルカリ性もしくは酸性の水性媒体を用いて溶解しても、水性媒体とは別にアルカリ性もしくは酸性の添加剤等を添加して溶解してもよい。酸性で溶解するかアルカリ性で溶解するかは、顔料がどちらの条件でより均一に溶解するかで選択することができる。一般に分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料の場合はアルカリ性を、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子を分子内に多く有するときは酸性を用いることができる。例えば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合系顔料はアルカリ性で、フタロシアニン系顔料は酸性でより均一に溶解することができる。
良溶媒は例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、もしくはトリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール化合物溶媒、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、もしくはトリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級モノアルキルエーテル化合物溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、もしくはトリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)等のポリエーテル化合物溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、尿素、もしくはテトラメチル尿素等のアミド化合物溶媒、スルホラン、ジメチルスルホキシド、もしくは3−スルホレン等の含イオウ化合物溶媒、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物溶媒、酢酸、マレイン酸、ドコサヘキサエン酸、トリクロロ酢酸、もしくはトリフルオロ酢酸等のカルボン酸化合物溶媒、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロスルホン酸等のスルホン酸化合物溶媒が挙げられる。これらの溶媒を2種以上混合して用いてもよい。
好ましい良溶媒は、アルカリ性の場合はアミド化合物溶媒または含イオウ化合物溶媒であり、酸性の場合はカルボン酸化合物溶媒、イオウ化合物溶媒またはスルホン酸化合物溶媒であるが、更に好ましくはアルカリ性の場合は含イオウ化合物溶媒であり、酸性の場合はスルホン酸化合物溶媒である。特に好ましくは、アルカリ性の場合はジメチルスルホキシド(DMSO)、酸性の場合はメタンスルホン酸である。
アルカリ性で溶解させる場合に用いられる塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、もしくは水酸化バリウムなどの無機塩基が挙げられ、またはトリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、金属アルコキシド(NaOCH、KOC)などの有機塩基が挙げられ、好ましくは無機塩基である。
使用される塩基の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、無機塩基の場合、好ましくは顔料に対して1.0〜30モル当量であり、より好ましくは2.0〜25モル当量であり、特に好ましくは3.0〜20モル当量である。有機塩基の場合は好ましくは顔料に対して1.0〜100モル当量であり、より好ましくは5.0〜100モル当量であり、さらに好ましくは20〜100モル当量である。
酸性で溶解させる場合に用いられる酸は、硫酸、塩酸、もしくは燐酸などの無機酸が挙げられ、または酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸が挙げられるが、好ましくは無機酸でありより好ましくは硫酸である。
使用される酸の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多い。無機酸および有機酸の場合を問わず、好ましくは顔料に対して3〜500モル当量であり、より好ましくは10〜500モル当量であり、特に好ましくは30〜200モル当量である。
顔料微粒子を析出させるときの温度は、溶媒が凝固、あるいは気化しない範囲内であることが望ましいが、好ましくは、−20〜90℃、より好ましくは0〜50℃である。特に好ましくは5〜15℃である。
空気、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウムなどの気体を用いる場合、それらは反応流体に溶解させるか、あるいは流路内に気体として導入する方法を取ることができ、気体として導入する方法が好ましい。
本発明の顔料インク組成物の調製においては再沈法や共沈法、又は後述する有機金属錯体顔料微粒子の調製における分散工程に用いることのできる貧溶媒とは、前記良溶媒と相溶し、かつ顔料溶液に溶解された有機顔料が難溶である溶媒をいう。この貧溶媒としては、用いられる有機顔料の溶解度が0.02質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。また、良溶媒と貧溶媒との相溶性は、良溶媒の貧溶媒に対する溶解量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
本発明においては貧溶媒として水性媒体を用いることが好ましい。本発明において、「水性媒体」とは水単独または水と水溶性有機溶媒の混合溶媒をいう。水溶性有機溶媒は、例えば、顔料や分散剤を均一に溶解するために水のみでは不十分な場合、流路中を流通するのに必要な粘性を得るのに水のみでは不十分な場合、層流の形成に必要な場合、などに用いることが好ましく、多くの場合、水溶性有機溶媒の添加により均一に顔料などを溶解させることができる。
添加する水溶性有機溶媒は例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、もしくはトリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール系溶媒、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、もしくはトリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級モノアルキルエーテル系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、もしくはトリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)等のポリエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、尿素、もしくはテトラメチル尿素等のアミド系溶媒、スルホラン、ジメチルスルホキシド、もしくは3−スルホレン等の含イオウ系溶媒、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能系溶媒、酢酸、マレイン酸、ドコサヘキサエン酸、トリクロロ酢酸、もしくはトリフルオロ酢酸等のカルボン酸系溶媒、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロスルホン酸等のスルホン酸系溶媒が挙げられる。これらの溶媒を2種以上混合して用いてもよい。
好ましい水溶性有機溶媒は、アルカリ性の場合はアミド系溶媒または含イオウ系溶媒であり、酸性の場合はカルボン酸系溶媒、イオウ系溶媒またはスルホン酸系溶媒であるが、更に好ましくはアルカリ性の場合は含イオウ系溶媒であり、酸性の場合はスルホン酸系溶媒である。特に好ましくは、アルカリ性の場合はジメチルスルホキシド(DMSO)、酸性の場合はメタンスルホン酸である。
顔料溶液と貧溶媒とを混合して顔料微粒子を析出されるときに混合させる流体は互いに混じり合う流体同士でもよく、混じり合わない流体同士でも構わない。混じり合う流体同士とは、同じもしくは比較的性質の近い有機溶媒を用いた溶液同士、あるいはメタノールなどの極性の高い有機溶媒を用いた溶液と水などであり、混じり合わない流体同士とは、ヘキサンなどの低極性の溶媒を用いた溶液とメタノールなどの高極性の溶媒を用いた溶液があげられる。
流路を用いて顔料溶液と水性媒体とを接触混合させ顔料分散液を得るビルドアップ法の場合、均一に溶解した溶液を流路に投入することが好ましい。懸濁液を投入すると粒子サイズが大きくなったり、粒子分布が広い顔料微粒子になったりし、流路を閉塞する場合がある。「均一に溶解」とは、可視光線下で観測した場合にほとんど濁りが観測されない状態をさし、その溶液は1μm以下のミクロフィルターを通して得られる溶液、または1μmのフィルターを通した場合に濾過される物を含まない溶液を均一に溶解した溶液をいう。
水と水溶性有機溶媒の混合比は均一溶解に適した比率であればよく、特に限定は無い。好ましくはアルカリ性の場合には水/有機溶媒=0.05〜10(質量比)である。酸性の場合で無機酸を用いる場合は、有機溶媒を使わず、例えば硫酸単独で用いるのが好ましい。有機酸を用いるときは有機酸自身が有機溶媒であり、粘性と溶解性を調整するために複数の酸を混合したり、水を添加したりする。好ましくは水/有機溶剤(有機酸)=0.005〜0.1(質量比)である。
本発明においては、顔料溶液と貧溶媒とを接触混合させる際、顔料溶液の水素イオン指数(pH)を変化させ、ビルドアップ有機顔料微粒子を形成することが好ましい。その方法は例えばマイクロリアクター装置を用いて、一方の流路に酸性もしくはアルカリ性の顔料溶液を導入し、もう一方の流路に貧溶媒を導入し、両液をマイクロ反応場で接触させることにより顔料溶液のpHを酸性もしくはアルカリ性から中性pH7の方向に変化させることが好ましい。
水素イオン指数(pH)の変化は、アルカリ性水性媒体に溶解した顔料から顔料微粒子を製造する場合は、おおむね変化はpH16.0〜5.0の範囲内での変化であり、好ましくはpH16.0〜10.0の範囲内での変化である。酸性水性媒体に溶解した顔料から顔料微粒子を製造する場合は、おおむね変化はpH1.5〜9.0の範囲内での変化であり、好ましくはpH1.5〜4.0の範囲内での変化である。変化の幅は顔料溶液の水素イオン指数(pH)の値によるが、顔料の析出をうながすのに十分な幅でよい。
本発明の顔料インク組成物は、顔料微粒子を析出生成させる際に分散剤を共存させ、インク組成物中に分散剤を含有させることが好ましい。分散剤は(1)析出した顔料表面に素早く吸着して、微細な顔料粒子を形成し、かつ(2)これらの粒子が再び凝集することを防ぐ作用を有するものであることが好ましい。このようにして分散剤を、インク特性向上剤として作用する上記の親水性基を有する高分子化合物と共存させることにより、インク特性を一層向上させることができることは先に述べたとおりである。
上記の分散剤として、アニオン性、カチオン性、両イオン性、ノニオン性もしくは顔料性分散剤、低分子または高分子分散剤を使用することができる。これらの分散剤は、単独あるいは併用して使用することができる。顔料の分散に用いる分散剤に関しては、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」(化学情報協会、2001年12月発行)の29〜46頁に詳しく記載されている。
アニオン性分散剤(アニオン性界面活性剤)としては、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、N−アシル−N−アルキルタウリン塩が好ましい。N−アシル−N−アルキルタウリン塩としては、特開平3−273067号明細書に記載されているものが好ましい。これらアニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
カチオン性分散剤(カチオン性界面活性剤)には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンおよびこれらのカチオン性物質の塩が含まれる。これらカチオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
両イオン性分散剤は、前記アニオン性分散剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性分散剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する分散剤である。
ノニオン性分散剤(ノニオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
顔料性分散剤とは、親物質としての顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料性分散剤と定義する。例えば、糖含有顔料分散剤、ピペリジル含有顔料分散剤、ナフタレンまたはペリレン誘導顔料分散剤、メチレン基を介して顔料親構造に連結された官能基を有する顔料分散剤、ポリマーで化学修飾された顔料親構造、スルホ基を有する顔料分散剤、スルホンアミド基を有する顔料分散剤、エーテル基を有する顔料分散剤、あるいはカルボキシル基、カルボン酸エステル基またはカルボキサミド基を有する顔料分散剤などがある。
高分子分散剤としては、具体的には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアミド、ポリアリルアミン塩、縮合ナフタレンスルホン酸塩、スチレン−アクリル酸塩共重合物、スチレン−メタクリル酸塩共重合物、アクリル酸エステル−アクリル酸塩共重合物、アクリル酸エステル−メタクリル酸塩共重合物、メタクリル酸エステル−アクリル酸塩共重合物、メタクリル酸エステル−メタクリル酸塩共重合物、スチレン−イタコン酸塩共重合物、イタコン酸エステル−イタコン酸塩共重合物、ビニルナフタレン−アクリル酸塩共重合物、ビニルナフタレン−メタクリル酸塩共重合物、ビニルナフタレン−イタコン酸塩共重合物、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トンガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も使用できる。なかでも、ポリビニルピロリドンが好ましい。これら高分子分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
高分子分散剤の質量平均分子量は特に限定されないが、1,000〜 200,000であることが好ましく、3,000〜50,000であることがより好ましい。
分散剤を含有させる実施態様は特に限定されないが、例えば、それらを顔料溶液および貧溶媒のいずれに溶解させてもよく、混合後の分散液に添加してもよい。また微粒子析出を妨げなければ、必要に応じて顔料溶液または貧溶媒以外の液体を混合させてもよく、3液以上を同時にまたは逐次に混合させてもよい。
分散剤の含有量は、顔料の均一分散性および保存安定性をより一層向上させることを考慮し、顔料100質量部に対して0.1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜500質量部の範囲であり、特に好ましくは10〜250質量部の範囲である。0.1質量部未満であると顔料微粒子の分散安定性の向上が見られない場合がある。
本発明においては、上記再沈法ないしは共沈法とは別の実施態様として、顔料微粒子を有機顔料前駆体から形成してもよい。具体的に、有機顔料前駆体の金属置換反応により顔料微粒子とする態様が挙げられ、例えば置換もしくは無置換のフタロシアニンアルカリ金属塩溶液を金属塩類溶液と反応させフタロシアニン顔料微粒子とする態様が好ましい。このとき、前記フタロシアニンアルカリ金属塩溶液の溶媒が極性溶媒であることが好ましい。前記フタロシアニンアルカリ金属塩は、ナトリウム塩またはカリウム塩であることが好ましい。前記金属塩類は、金属ハロゲン化物または/および金属アセチルアセトナートであることが好ましく、臭化銅であることがより好ましい。前記金属塩類の金属は、遷移金属であることが好ましい。有機顔料前駆体の溶液と金属塩類溶液とを混合するとき、その混合態様は特に限定されないが上述の共沈法における混合態様を採用することができ、後述するマイクロチャネル中で混合することが好ましく、層流中あるいは層流と乱流との過渡流で混合することがより好ましい。
本実施態様に用いることのできる具体的な化合物としては、例えば特願2005−258382号明細書の段落0019〜0037に記載のものが挙げられる。
本実施態様においては、(a)有機金属錯体顔料前駆体溶液と金属塩類を溶解した溶液とを混合して金属置換反応させる工程と、(b)上記前駆体から生成させた有機金属錯体顔料からなるビルドアップ有機顔料微粒子を分散する工程を有することが好ましい。上記金属置換反応工程(a)と分散工程(b)とは同時に又は逐次に、行ってもよい。
上記の製造方法において、ビルドアップ有機顔料微粒子の分散工程(b)においては、金属置換反応により有機顔料を生成させた液体と貧溶媒とを混合しその分散状態を変化させることができる。さらに、この分散工程(b)において液中に分散剤を共存させてもよく、この分散剤の種類や貧溶媒の種類、ないし上記有機顔料を生成させた液体と貧溶媒とが出会うまでの時間等を調節することにより微粒子の成長を進ませたり抑えたりすることができ、これにより微粒子の大きさを制御することができる。
より好ましくは、工程間の滞留時間(反応時間)を調節して分散状態を制御することが好ましい。このように分散工程(b)において滞留時間(反応時間)を調節することにより、例えば特開2007−100072号公報で開示されているような粒径を調えるための超音波等による別途の分散工程を省略することができ、工程短縮・コスト低減が計れる。そのため、上記置換反応と貧溶媒との接触混合による分散とを連続して行うことが好ましい。この滞留時間(反応時間)は、例えば図4に示した六方マイクロリアクター装置でいうと、流体合流点201で複数の液体が接触し有機顔料が生成し、その後分散のための貧溶媒と接触するまでの時間に相当し、好ましくは1秒以下、より好ましくは100ミリ秒以下であり、滞留時間を短く調整することにより、結晶形態サイズにおける長い辺の長さを短くすることができ、さらに好ましくは10ミリ秒以下の滞留時間とすることにより、結晶形態サイズの長い辺の長さと短い辺の長さとの比(アスペクト比)の大きな針状晶結晶ではなく、アスペクト比の小さな球状結晶にすることができる。
金属置換反応工程(a)および分散工程(b)における反応温度は、溶媒が凝固、あるいは気化しない範囲内であることが好ましく、具体的には−20〜90℃、より好ましくは0〜50℃である。特に好ましくは5〜15℃である。金属置換反応工程(a)および分散工程(b)における流路内での流体の速度(流速)は0.1mL〜300L/hrが好ましく、0.2mL〜30L/hrがより好ましく、0.5mL〜15L/hrが更に好ましく、1.0mL〜6L/hrが特に好ましい。金属置換反応工程(a)における有機金属錯体顔料前駆体の濃度は、生成する顔料溶液の顔料に換算したときの濃度が0.5〜20質量%となるようにすることが好ましく、1.0〜10質量%となるようにすることがより好ましい。上記分散工程(b)で用いられる貧溶媒としては、先に述べた「水性媒体」を用いることが好ましい。分散工程(b)で用いられる貧溶媒の量は、金属置換反応工程(a)で得られた有機顔料微粒子を含有する液体100質量部に対して、水0.1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、1〜500質量部の範囲であることがより好ましく、10〜200質量部の範囲であることが特に好ましい。
金属置換反応工程(a)において用いる「金属塩類を溶解した溶液」は貧溶媒を含有してもよい。金属塩類を溶解した溶液に貧溶媒を含有させることにより、一層効果的に有機金属錯体顔料前駆体溶液の金属置換反応と、金属置換反応により得られた有機顔料を含有する液体と貧溶媒との接触混合とを同時に又は逐次に行うことができる。例えば上記金属置換反応を行うと同時もしくは逐次に貧溶媒(好ましくは水性媒体)を混合し有機金属錯体顔料前駆体溶液の水素イオン指数(pH)を変化させ、所望の分散状態とした分散組成物とすることができる。このとき、例えば有機金属錯体顔料前駆体として水素フタロシアニンを用いれば、水素フタロシアニン顔料の微粒子および1種類以上の金属フタロシアニン顔料の微粒子を含有する分散組成物とすることができる。このようにして、金属置換反応による金属フタロシアニン顔料ないしその微粒子の生成とpH変換での共沈による水素フタロシアニン顔料微粒子との析出を同時もしくは逐次に行うことができる。
さらに、「有機金属錯体前駆体を溶解した溶液」に、「これとは別種の顔料を溶解した顔料溶液」を含有させてもよい。有機金属錯体溶液に上記別種の顔料溶液を含有させ、上述の貧溶媒を含有させた金属塩類を溶解した溶液とを混合させると、一層効果的に有機金属錯体前駆体の金属置換反応と、別種の顔料溶液と貧溶媒との接触混合とを同時に又は逐次的に行うことができる。貧溶媒(好ましくは水性媒体)を混合し有機金属錯体顔料前駆体溶液の水素イオン指数(pH)を変化させ、所望の分散状態とした分散組成物とすることができる。
このとき、例えば有機金属錯体顔料前駆体としてナトリウムフタロシアニン顔料及び/又はカリウムフタロシアニン顔料を用いれば、水素フタロシアニン顔料の微粒子および1種類以上の金属フタロシアニン顔料の微粒子を含有する分散組成物とすることができる。
このようにして、金属置換反応による金属フタロシアニン顔料ないしその微粒子の生成とpH変換での共沈による水素フタロシアニン顔料微粒子との析出を同時もしくは逐次に行うことができる。
これらにより先に述べた別途の混合工程を要さずに2種以上のビルドアップ有機顔料微粒子を含有する分散物を調製する実施態様(製造方法<iii>)に好適に対応することができる。このように2種以上の顔料微粒子を1つの分散系又は/および装置系で同時又は逐次に調製し、所望の色相の分散組成物とすることができるため、多様でありながら再現性の高い化粧料の調色が可能となる。
金属塩類溶液に貧溶媒(好ましくは水性媒体)を含有させるとき、その添加量は、好ましくは金属塩類溶液100質量部中に0.01〜1000質量部、より好ましくは金属塩類溶液100質量部中に0.1〜500質量部、さらに好ましくは金属塩類溶液100質量部中に0.5〜100質量部である。
上記の有機金属錯体顔料前駆体からビルドアップ有機顔料微粒子を生成させる実施態様において、有機金属錯体顔料前駆体ないし、そこから生成させた有機金属錯体顔料を含む溶液と貧溶媒(好ましくは水性媒体)とを接触混合させる際、前記有機金属錯体顔料前駆体溶液の水素イオン指数(pH)を変化させ、ビルドアップ有機顔料微粒子を形成することが好ましい。水素イオン指数(pH)の変化は、pH16.0〜5.0の範囲内でpHを低下させることが好ましく、pH16.0〜10.0の範囲内でpHを低下させることがより好ましい。変化の幅は有機金属錯体顔料前駆体及び/又は有機金属錯体顔料を含む液体の水素イオン指数(pH)の値によるが、ビルドアップ有機顔料微粒子の析出をうながすのに十分な幅でよい。
上記実施態様の製造方法により金属錯体顔料の微粒子を形成することができる。本発明において有機金属錯体顔料とは、特に断らない限り、中心金属と有機配位子とを有する有機金属錯体顔料を意味し、その有機配位子の種類によって、例えば金属フタロシアニン顔料、アゾ金属錯体顔料、またはアゾメチン金属錯体顔料に大別される。具体例をC.I.ナンバーで示せば、P.B.15、P.B.75、P.B.79、P.G.7、もしくはP.G.36などの金属フタロシアニン顔料、P.G.8、P.G.10、もしくはP.Y.150などのアゾ金属錯体顔料、またはP.Y.65、P.Y.117、P.Y.129、P.Y.153、P.Y.177、P.Y.179、P.O.65、P.O.68、もしくはP.R.257などのアゾメチン金属錯体顔料が挙げられる。なかでも金属錯体顔料としては金属フタロシアニン顔料が代表的である。
以下、金属フタロシアニン顔料について詳しく説明する部分もあるが、それにより本発明が限定して解釈されるものではない。
前記有機金属錯体の中心金属として、II〜IV価の典型金属、遷移金属、または内遷移金属が挙げられる。これらを具体的に示せば、例えば、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、インジウム(In)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、タリウム(Tl)、もしくは鉛(Pb)の典型金属、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、もしくは水銀(Hg)の遷移金属、またはセリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、トリウム(Th)、プロトアクチニウム(Pa)、ウラン(U)、ネプツリウム(Np)、もしくはアメリシウム(Am)のランタニド系・アクチニド系の内遷移金属などが挙げられる。なかでも遷移金属が好ましく、二価の遷移金属であることがより好ましく、銅(II)、鉛(II)、又は亜鉛(II)であることが特に好ましい。
前記有機配位子(例えば、金属フタロシアニンであればそのフタロシアニン基)は置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素原子数1〜6のアルキルもしくはシクロアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、または塩素もしくは臭素のハロゲン原子が好ましく、無置換またはハロゲン原子を置換基として有することがより好ましく、無置換であることが特に好ましい。尚、本発明において、金属フタロシアニンとは、フタロシアニン骨格を有するもののほか、フタロシアニン骨格のベンゼン環にさらにベンゼン環が縮合した構造(例えばナフタロシアニン)を有するものを含む意味で用いる。
本発明において有機金属錯体顔料前駆体とは金属置換反応により有機金属錯体顔料となる化合物と定義される。ただし、有機金属錯体顔料前駆体自体が微粒子化したときに着色剤として有用な顔料として機能するものであってもよく、そのような化合物として例えば水素フタロシアニン(PB―16)が挙げられる。有機金属錯体顔料前駆体として、置換もしくは無置換フタロシアニンアルカリ金属塩を用いることができ、この置換もしくは無置換フタロシアニンアルカリ金属塩と金属塩類とを金属交換反応(金属置換反応)させ、ビルドアップ有機顔料微粒子を生成させることができる。前記アルカリ金属塩としては、フタロシアニンアルカリ金属塩(通常ジアルカリ金属塩を形成している)が好ましい。アルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、もしくはセシウム(Cs)が挙げられ、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、もしくはセシウム(Cs)が好ましく、ナトリウム(Na)、カリウム(K)がより好ましい。
前記金属塩類としては、金属錯体の中心金属としたときに顔料を生成する金属の塩であり、その金属は前記金属錯体の中心金属として説明した金属が挙げられ、その好ましい範囲も同様である。塩を形成する対アニオンとしては、ハロゲンアニオン、ClO 、BF 、カルボン酸イオン(例えば、酢酸イオン)、スルホン酸イオン(例えば、メタンスルホン酸イオン)、リン酸イオン等が挙げられる。なかでもハロゲンアニオンもしくはアセチルアセトナートアニオンのように金属に余り強くない錯体を形成する配位子を構成するものが好ましく、塩素イオンもしくは臭素イオンのハロゲンイオン、またはアセチルアセトナートアニオンがより好ましく、極性溶媒への溶解性がとりわけ良い金属塩を形成する臭素イオンであることが特に好ましい。
また、金属塩類の溶解性を上げる目的で、その溶液中にトリアルキルホスフィン(例えば、トリブチルホスフィン)、トリアルキルホスファイト(例えば、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト)等を添加することも好ましい。
具体的には金属塩類として、臭化銅(II)、臭化鉛(II)、臭化亜鉛(II)を用いることがより好ましい。複数の種類のビルドアップ顔料微粒子を分散組成物中に含有させるために、金属塩類を2種以上組み合わせて用いて、2種類以上の金属フタロシアニン顔料微粒子をえるとき、臭化銅(II)、臭化鉛(II)、臭化亜鉛(II)から選ばれた2種類以上の組合せであることが好ましく、臭化銅(II)と臭化鉛(II)との組合せ、臭化銅(II)と臭化亜鉛(II)との組合せ、臭化銅(II)と臭化鉛(II)と臭化亜鉛(II)との組合せがより好ましい。
上記有機金属錯体前駆体を溶解するための溶媒は、極性溶媒(分子内に大きな分極構造をもつ溶媒)が好ましく、具体的にはジメチルスルホキシド、スルホラン、もしくは3−スルホレンのような含イオウ系極性有機溶媒、またはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、もしくは1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンのようなアミド系有機溶媒を主体とした溶媒が好ましい。溶媒が極性有機溶媒であるとき、溶媒全体の50%(体積比)以上が極性有機溶媒であることが好ましく、本発明の効果を妨げなければ、他の有機溶媒や水との混合溶媒として用いてもよく、ジメチルスルホキシドの単独もしくは混合溶媒、またはスルホランの単独もしくは混合溶媒が好ましく、ジメチルスルホキシド(DMSO)の単独もしくは混合溶媒がより好ましい。
極性溶媒と混合する場合、他の有機溶媒としては、非プロトン溶媒(aprotic solvent)が挙げられ、具体的には例えば、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、もしくはトリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)等のポリエーテル系溶媒、アセトンもしくはメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、またはテトラメチル尿素等の尿素系溶媒が挙げられ、ポリエーテル系溶媒が好ましい。これらは単独で用いても、混合して用いてもよい。
極性溶媒において、ヒドロキシル基のようなプロトン供与しやすい基を有する溶媒(例えば水やアルコール)は、フタロシアニンアルカリ金属塩の溶解に用いる場合でいうと、一般的にはフタロシアニンアルカリ金属塩と反応し、水素フタロシアニンを与えるので混合溶媒として好ましくないが、溶液中に過剰のアルカリを含む場合は、平衡がフタロシアニンアルカリ金属塩の方に大きくずれるため、多少(20%(質量比)以下が好ましく、10%以下がより好ましく、1%以下が特に好ましい)のプロトン供与溶媒が存在しても構わない。
極性溶媒の量は、高純度の金属錯体顔料微粒子を得るために、有機金属錯体顔料前駆体を十分に溶解できる量であればよく、その量(混合溶媒の場合はその総量)は有機金属錯体顔料前駆体に対して、重量比で5〜200倍程度であることが好ましく、10〜100倍程度であることがより好ましい。
有機金属錯体顔料前駆体溶液の調製方法に特に制限はないが、例えば、(i)所望の配位子を有するアルカリ金属塩(例えばフタロシアニンアルカリ金属塩が挙げられ、具体的にはジナトリウムフタロシアニンが挙げられる。)を極性溶媒(例えば、DMSOが挙げられる。)に溶解してもよく、(ii)所望の配位子となる化合物(例えば水素フタロシアニンが挙げられる。)とアルカリ化合物(例えば、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド等が挙げられる。)とを別に極性溶媒(例えば、DMSO)に溶解してもよい。
金属塩類を溶解する溶媒は、好ましくはジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジグライム、トリグライム、およびアセトンであればよく、混合溶媒でも良い。特に好ましくはDMSOである。金属塩類を溶解する溶媒の量は、金属塩類を十分に溶解できる量であればよく、その量(混合溶媒である場合はその総量)は金属塩類に対して、質量比で5〜200倍程度であることが好ましく、10〜100倍程度であることがより好ましい。
また、上述の金属塩類を溶解した溶液中に、貧溶媒として、ヒドロキシル基のようなプロトン供与しやすい基を有する溶媒(例えば水やアルコール)を添加することができる。添加することにより、金属交換反応と同時及び/又は逐次にpHを変化させることができため、金属塩類溶液に貧溶媒として水を用いる場合でいうと、一般的にはフタロシアニンアルカリ金属塩と金属塩類との反応と、フタロシアニンアルカリ金属塩と水との競争反応となり、水素フタロシアニンと1種類以上の金属フタロシアニンが混合したビルドアップ顔料微粒子分散液が得られる。
このため、金属塩類溶液に貧溶媒(好ましくは水性媒体)を含有させるとき、その添加量は、好ましくは金属塩類溶液100質量部中に0.01〜1000質量部、より好ましくは金属塩類溶液100質量部中に0.1〜500質量部、さらに好ましくは金属塩類溶液100質量部中に0.5〜100質量部である。
有機金属錯体前駆体溶液、金属塩類溶液、及び貧溶媒のいずれか一つ以上に分散剤を添加することが好ましく、それにより粒径分布が狭くサイズの小さな顔料微粒子を得ることができる。分散剤は(1)析出した有機微粒子表面に素早く吸着して、微細な粒子を形成し、かつ(2)これらの粒子が再び凝集することを防ぐ作用を有するものである(なお、金属置換反応工程(a)における分散剤の働きは凝集を制御可能な添加剤であるため、特に晶癖制御剤ということもある)。使用可能な分散剤は先に共沈法で述べた、アニオン性、カチオン性、両イオン性、ノニオン性もしくは顔料性の低分子または高分子分散剤等を用いることができる。これらの分散剤は、単独あるいは併用して使用することができる。
分散剤は例えば、有機金属錯体前駆体溶液中、金属塩類溶液中、及び貧溶媒のいずれか1つ以上に分散剤を添加することが好ましく、アニオン性分散剤および/または高分子分散剤を有機金属錯体前駆体溶液中及び/又は金属塩類溶液中に添加し、貧溶媒には分散剤を添加しないことがより好ましく、アニオン性分散剤および/または高分子分散剤を金属塩類溶液中に添加することが特に好ましい。吸湿しやすい分散剤をアルカリ金属塩溶液等の有機金属錯体前駆体溶液中に添加しないことにより、該溶液の経時安定性が保たれるため好ましい。
本発明の顔料インク組成物においては、上述したように、顔料微粒子の分散液中に共存させた重合性化合物を重合して重合体をなし、この重合体に前記顔料微粒子を包含させたものであることが好ましく、顔料微粒子に重合体を固定化したものであることがより好ましい。上記重合体として、ラジカル重合性化合物を重合させた重合体、架橋性化合物−被架橋性化合物を架橋(縮重合)した重合体であってもよく、なかでもラジカル重合させた重合体であることが好ましい。また本発明のインク組成物は、顔料を溶解したアルカリ性または酸性の顔料溶液と、水性媒体との少なくとも一方に重合性化合物を含有させ、これら両者を混合する過程で該顔料を析出させ微粒子として形成し、予め添加しておいた重合性化合物とともに水分散物として安定化した状態で得ることが好ましい。
本発明において、上記重合体をなす重合性化合物は水溶性および非水溶性のいずれのものであってもよく、顔料を含有する水分散物とする際には、水に分散可能なものであればいずれも用いることができる。
重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物が好ましく、エチレン性不飽和単量体が好ましい。具体的には、例えば(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸シクロヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、γ−ヒドロキシアクリル酸プロピル、δ−ヒドロキシアクリル酸ブチル、β−ヒドロキシメタクリル酸エチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、ジエチレングリコールメタクリル酸メチル、エチレングリコールジメタクリル酸エチル、テトラエチレングリコールジメタクリル酸メチル等、およびその誘導体)、ビニル芳香族単量体(例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−ヘキシルスチレン、p−オクチルスチレン、p−ノニルスチレン、p−デシルスチレン、p−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等、およびその誘導体)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等、およびその誘導体)、N−ビニルアミド類(例えばN−ビニルピロリドン)、(メタ)アクリル酸アミド類、アルキル置換(メタ)アクリルアミド類、メタクリルアミド類、N−置換マレイミド類、ビニルエーテル類(ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ジビニルエーテル等、およびその誘導体)、オレフィン類(エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等、およびその誘導体)フタル酸ジアリル、無水マレイン酸、(メタ)アクリロニトリル、メチルビニルケトン、塩化ビニリデン、等が使用できる。
さらに、スルホ基、リン酸基、カルボキシル基等のアニオン性基を有する水溶性単量体も用いられ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、p−ビニル安息香酸などのカルボキシル基を有する単量体、もしくはそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。さらには、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシメチルメタクリロイルホスフェート、2−ヒドロキシエチルメタクリロイルホスフェート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリロイルホスフェートも具体例として挙げられる。これらは単独で用いても、互いに併用して用いてもよい。
上記の重合性化合物のうち、重合反応性部位と分散性部位を併せ持つものを重合性界面活性剤(反応性界面活性剤ないし反応性乳化剤)ということがあり、重合性化合物の中でもこれを用いることが好ましい。
重合反応性部位として、ビニル基、アリル基、プロペニル基、(メタ)アクリロイル基などのα,β−エチレン性不飽和基が好ましく、分散性部位として、スルホ基またはその塩などのイオン解離可能な基やアルキレンオキシ基などの親水性基を有しているものが挙げられる。
上記の重合性界面活性剤として、分子内にラジカル重合可能な不飽和結合を少なくとも1つ以上有するアニオン性もしくはノニオン性の界面活性剤が挙げられる。重合性界面活性剤は、単独で用いても、異なるものを併用しても、または重合性界面活性剤以外の重合性化合物、界面活性剤、あるいは分散剤と共に用いてもよい。
好ましい重合性界面活性剤としては、例えば、花王(株)社、三洋化成(株)社、第一工業製薬(株)社、旭電化工業(株)社、日本乳化剤(株)社、日本油脂(株)社等より市販されているものが挙げられ、「微粒子・粉体の最先端技術、第1章3反応乳化剤を用いる微粒子設計、pp23−31」、2000年(株)シーエムシーに記載されたものなどが挙げられる。
重合性界面活性剤の具体例を以下に記載するが、これらに限定されるものではない。
Figure 2009041000
Figure 2009041000
上記の重合性化合物の重合方法は、顔料分散液中で重合する方法が好ましく、重合開始剤を用いてラジカルを発生させて重合させる方法がより好ましい。重合を開始するきっかけは種々あるが、熱、光、超音波、マイクロ波等を用いることが好ましい。
重合開始剤としては、重合性化合物を重合させうるものであれば特に限定しないが、水溶性、または油溶性のアゾ重合開始剤、高分子アゾ重合開始剤、過硫酸塩に代表される無機系塩類、過酸化物が好ましくは用いられる。中でも水溶性アゾ重合開始剤、高分子アゾ重合開始剤、無機系塩類がより好ましく、無機系塩類、高分子アゾ重合開始剤が更に好ましく、高分子アゾ重合開始剤が特に好ましい。具体的には、無機系塩類としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化物としては、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化ベンゾイル(BPO)等を、油溶性アゾ重合開始剤としては、2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2‘−アゾビス(4−メトキシー2,4−ジメチルバレロニトリル); V−70(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル);V−65(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート);V−601(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル);V−59(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、1,1‘−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル);V−40(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド];VF−096(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、1.[(シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド;V−30(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2‘−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド);VAm−110(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾ(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド);VAm−111(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)等を、水溶性アゾ重合開始剤としては、2,2‘−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩;VA−044(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩・二水和物;VA−046B(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩;V−50(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物;VA−057(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2‘−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩;VA−060(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン];VA−061(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕),2,2‘−アゾビス(1−イミノー1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)二塩酸塩;VA−067(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド};VA−080(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2‘−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド];VA−086(和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2‘−アゾビス(2−N−ベンジルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−N−(2−ヒドロキシエチル)アミジノプロパン]二塩酸塩等を、高分子アゾ重合開始剤としては、ポリジメチルシロキサンユニット含有高分子アゾ重合開始剤;VPS−0501(ポリシロキサンユニット分子量約5,000)、VPS−1001(ポリシロキサンユニット分子量約10,000)(いずれも和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)、ポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合開始剤;VPE−0201(ポリエチレングリコールユニット分子量約2,000)、VPE−0401(ポリエチレングリコールユニット分子量約4,000)、VPE−0601(ポリエチレングリコールユニット分子量約6,000)(いずれも和光純薬工業株式会社製〔商品名〕)等を挙げることができる。例えば、和光純薬工業(株)社のホームページ(www.wako−chem.co.jp)には、各種水溶性アゾ重合開始剤、油溶性アゾ重合開始剤、高分子アゾ重合開始剤が10時間半減期温度とその構造式と共に記載され入手可能である。重合開始剤の添加量は特に限定されないが、全モノマー成分に対して0.1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、特に好ましくは2〜10質量%である。
本発明の顔料インク組成物を製造するに当たり、顔料溶液及び/又は貧溶媒に上記重合性化合物及び/又は重合開始剤を含有させておくことが好ましい。また上記再沈法ないし共沈法と組み合わせて又は組み合わせずに、後述する金属置換反応を利用して顔料微粒子を得る実施態様において、有機金属錯体顔料前駆体溶液、金属塩類溶液、及び貧溶媒の少なくとも一つに上記重合性化合物及び/又は重合開始剤を含有させておくことが好ましい。
この重合開始剤として高分子アゾ重合開始剤を用いることが好ましい。高分子アゾ重合開始剤は、重合性化合物との共重合で容易にブロックポリマーを与えるユニークな重合開始剤である。その構造は高分子セグメント(例えば、ポリジメチルシロキサンユニット、ポリエチレングリコールユニット)とアゾ基が繰り返し結合したものであり、1分子中に数個のラジカル発生点が存在しているため、重合させた際に非常にブロック化効率の高いポリマーの合成が可能になる。本発明において、高分子アゾ重合開始剤は、重合開始機能を持つと共に、重合性化合物との共重合においてその高分子セグメントとのブロック共重合体が微粒子構造の内部、表面、あるいはその両方に形成されるものであることが好ましい。少なくとも1つ以上の重合性化合物を組み合わせることで、形成される微粒子の表面の親疎水性を容易に制御可能となることから、分散安定性に優れたビルドアップ有機顔料微粒子、及び分散液を与える事ができる。
分散液中に重合性化合物と共重合するモノマーとを共存させて共重合させてもよい。共重合モノマーを含有させる時期は特に限定されないが、顔料溶液および水性媒体の少なくとも一方に、少なくとも1つの共重合モノマーを含有させることが好ましい。共重合モノマーは、微粒子析出や分散液の安定化を妨げなければ特に限定されず、例えば、先に挙げた重合性化合物等が挙げられる。
重合性化合物を重合させる時期や方法は特に限定されないが、例えば、以下のような2つの過程を例に挙げて示すと、重合反応を、過程(1)の途中もしくはその後に行っても、過程(2)の途中もしくはその後に行っても、その両方で行ってもよい。
(1) 顔料を溶解した溶液と水性媒体を混合する過程。
(2) 混合後の分散液を濃縮、精製する過程。
同様に重合開始剤についても、その添加時期や方法は特に限定されないが、例えば、以下のような4つの態様によって説明すると、そのいずれによっても、または組み合わせて行ってもよい。
(1) 顔料を溶解した溶液に添加する。
(2) 水性媒体に添加する。
(3) 顔料を溶解した溶液と水性媒体を混合した後に添加する。
(4) 混合後の分散液を濃縮、精製した後に添加する。
重合の程度(分子量)を調整するために、各種の連鎖移動剤(例えば、カテコール類、アルコール類、チオール類、メルカプタン類)を用いてもよい。重合反応温度は、重合開始剤の種類に応じて選択でき、40℃〜100℃が好ましく、より好ましくは50℃〜90℃、特に好ましくは50℃〜80℃で行うことができる。重合反応時間は、用いる重合性化合物とその濃度、重合開始剤の反応温度にもよるが、1〜12時間で行うことができる。
上述のように、顔料を微粒子として析出させ、そのまま重合性化合物の重合反応を行い、微粒子上に重合性皮膜を形成し固定することにより、微粒子を粉砕する工程や、製造した微粒子を分離し、工程設備を切り替える必要がない点で好ましい。これはフローで連続生産法を導入することを意味し、品質安定化、工程安定化、時間やエネルギー、さらには移送などの物理的なロスを大幅に減じる利点がある。
本発明の顔料インク組成物において重合性化合物の含有量は、顔料の均一分散性および保存安定性をより一層向上させることを考慮し、顔料100質量部に対して0.1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜500質量部の範囲であり、特に好ましくは10〜250質量部の範囲である。0.1質量部以上であると顔料微粒子の保存安定性の向上が見られ好ましい。0.1質量部未満であると重合体の保存安定性の向上が見られない場合がある。
本発明においては、被架橋官能基を有する化合物(本発明においてはこの化合物を「被架橋性化合物」という。)を上記重合性化合物に代え、又はこれと同時に含有させてもよい。この被架橋性化合物は、被架橋官能基が分散能を有した化合物であってもよく、重合性官能基を有する化合物であってもよく、また複数個の同一あるいは異種の官能基を含有した化合物であってもよい。さらには、被架橋官能基と架橋剤の機能を一つの化合物で有していてもよく、本発明においてはこのような化合物を含めて「被架橋性化合物」という。
架橋剤は架橋性官能基を有した化合物であり、被架橋性官能基と反応して架橋構造を形成することができる化合物を示す。分子量に限定はなく、高分子ポリマーであってもよい。架橋反応をおこさせる観点から、架橋反応前は架橋剤の架橋性官能基をブロックしたものが好ましい。より好ましくは、ケチミン、ブロックイソシアネート、ブロックカルボン酸である。
被架橋官能基が分散能を有した化合物の場合、架橋反応で顔料微粒子の分散が不十分になるため、不足分量分散剤を添加しておいてもよい。被架橋官能基を有する化合物(架橋性化合物)とは、より具体的には、架橋反応時に、架橋剤の架橋性官能基から、直接反応を受けられる官能基を分子内に有している化合物を意味する。塗料、接着剤、シーラント、電子材料、光学材料、刷板、印刷、繊維、ゴム、プラスチック、医療歯科用材料などの分野で一般的に使用されている架橋反応機構を用いることができる。架橋形態としては、共有結合、疎水性相互作用、イオン結合、水素結合、配位結合などが挙げられるが、顔料含有粒子を着色液の着色剤として使用する場合は使用環境での保存性から共有結合または配位結合による架橋を行うのがより好ましい。架橋反応における被架橋性官能基と架橋剤の架橋性基の組合せとして、各々いずれかの官能基を有した化合物であればよくて、本発明の目的を達成できる範囲において限定されるものではない。
被架橋性官能基/架橋性基(あるいは架橋性基/被架橋性官能基)の組合せとしてより具体的には、カルボキシル基/エポキシ基、カルボキシル基/イソシアネート基、カルボキシル基/オキサゾリン基、カルボキシル基/アジリジン基、カルボキシル基/アミノ基(アミン基)、カルボキシル基/カルボジイミド基、ヒドロキシル基(水酸基)/金属アルコキシド基(金属=Si,Zr,Al,Ti)、ヒドロキシル基/ジアゾ基、ヒドロキシ基/アルデヒド基、ヒドロキシル基/ビニル基、ヒドロキシル基/イソシアネート基、ヒドロキシル基/カルボジイミド基、ヒドロキシル基/メラミン基、ヒドロキシル基/エポキシ基、ヒドロキシル基/酸クロライド基、スルホ基/4級アンモニウム塩基、スルホ基/金属ハロゲン化物基、スルホ基/有機酸金属塩基、アミノ基/イソシアネート基、アミノ基/イソチオシアネート基、アミノ基/エポキシ基、アミノ基/スクシンイミド基、アミノ基/スルホニルクロライド基、アルデヒド基/ヒドラジン化合物、ケトン基/ヒドラジン化合物、イソシアネート基/アルコール基、イソシアネート基/カルボキシル基、イソシアネート基/オキサゾリン環基、エポキシ基/フェノール基、シラノール基/シラノール基、シラノール基/チタネート基、メルカプト基/イソシアネート基、メルカプト基/フルフラノール基、メルカプト基/エポキシ基、メルカプト基/オレフィン基、メルカプト基/マレイミド基、メルカプト基/メルカプト基、酸無水物構造/アミノ基などが挙げられる。
これらの1種または2以上を組み合わせて用いることができる。被架橋性化合物及び/又は架橋剤の添加量は、顔料に対して0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
前記被架橋性化合物及び/又は架橋剤を使用する様態として、これらを良溶媒又は貧溶媒等に溶解させて用いることができ、あるいは後述する有機金属錯体顔料前駆体溶液、金属塩類溶液、又は貧溶媒に含有させて用いることができる。架橋反応時に架橋反応が可能な活性が存続すれば架橋剤の添加時期に制限はない。
本発明において、顔料微粒子の好ましい調製方法として、流路(チャンネル)を用いて顔料溶液と水性媒体とを流路(チャンネル)中に流通させて接触混合させるビルドアップ法(連続フロー法)が挙げられる。この際、流路内の液流の少なくとも一部が流路の内壁と線で接触する条件下で微粒子を生成させることが好ましい。また、流路内の液流が流路断面を埋めるように流れる条件下で微粒子を生成させることも好ましい。
前記両液を流路(チャンネル)中で接触させるに当たり、層流として又は層流と乱流との間の過渡流として流入し層流界面で両液を接触させることが好ましい。このとき、マイクロリアクター装置を用いることが好ましい。マイクロリアクター装置としては、層流を形成しうる流路(チャンネル)を有するものが好ましく、その流路(チャンネル)はマイクロ反応場を形成しうる等価直径の流路(チャンネル)であることが好ましい。
等価直径(equivalent diameter)とは相当(直)径、とも呼ばれ、機械工学の分野で用いられる用語である。
任意断面形状の配管(本発明では流路(チャンネル))に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の直径を等価直径という。
等価直径(deq)は、A:配管の断面積、p:配管のぬれぶち長さ(周長)を用いて、
eq=4A/p
と定義される。
円管に適用した場合、この等価直径は円管直径に一致する。等価直径は等価円管のデータを基に、その配管の流動あるいは熱伝達特性を推定するのに用いられ、現象の空間的スケール(代表的長さ)を表す。
等価直径は、一辺aの正四角形管では
eq=4a/4a=a、
一辺aの正三角形管では、
eq=a/√3
流路(チャンネル)高さhの平行平板間の流れでは
eq=2h
となる(例えば、(社)日本機械学会編「機械工学事典」1997年、丸善(株)参照)。
上記の式からわかるように等価直径が小さいほどレイノルズ数は小さくなるので、μmサイズの等価直径の場合は安定な層流を形成しやすくなる。また、密度や粘度の液物性もレイノルズ数に影響し、密度が小さく、粘度が大きいほどレイノルズ数は小さくなるので層流を形成しやすいことがわかる。このような層流支配のもと、界面積が非常に大きいため、瞬時に界面間の分子拡散が達成でき、精密な分子混合を達成する。
層流について説明する。管の中に水を流し、その中心軸状に細い管を挿入し着色した液を注入すると、水の流速が遅い間は、着色液は一本の線となって流れ、水は管壁に平行にまっすぐに流れる。しかし、流速を上げ、ある一定の流速に達すると急に水流の中に乱れが生じ、着色液は水流と混じって全体が着色した流れになる。前者の流れを層流(laminar flow)、後者を乱流(turbulent flow)という。
臨界値を示すレイノルズ数を臨界レイノルズ数(critical Reynolds
number)と呼ぶ。臨界レイノルズ数は必ずしも一定とはいえないが、凡そ次の値が基準となる(荻野文丸総編集、「化学工学ハンドブック」、p37、2004年、朝倉書店参照)。
Re<2300 層流
Re>4000 乱流
4000≧Re≧2300 過渡状態
このような層流下で粒子形成(核生成から核成長を)を行い、粒子の成長速度を安定化することにより、粒子サイズが小さく、かつその分布が狭い、透明性が高く濁りのない顔料微粒子分散液を効率良く調製することができる。この層流過程での微粒子析出と、後述するpHの変化による微粒子析出とを組み合わせて形成した顔料微粒子は、粒子サイズ、その分布、分散安定性に優れ、しかも生産効率が高い点で特に好ましい。
本発明において、ビルドアップ有機顔料微粒子は、共沈法において上記の顔料溶液と貧溶媒とを非層流下で接触させて顔料微粒子を形成してもよい。ここで「非層流」とは規則的または不規則な変動を含む流れのことで、例えばカルマン渦やテーラー渦等で代表される層流渦の領域から乱流領域までを含む流れをいう。
上述のように非層流は規則的または不規則な変動を含む流れである。これについて詳しくいうと、マイクロ流路中に第1の粘性流体(例えば水)を流し、その中心軸上にそのマイクロ流路よりも細い管を挿入して別の第2の粘性流体(例えば着色水)を注入すると、流速が十分に遅ければ、着色水は変動を含まない1本の線状の流れとなって流路軸に平行に安定的に流れる。すなわち層流となる。そして、徐々に流速を上げていくと不安定で変動を含む流れへと移行していき、ついには、その変動を起因とした乱れの中で第2の粘性流体が第1の粘性流体と混合していく。すなわち連続的に層流から乱流へと移行する。このとき層流域であるか乱流域であるかに関わらず、上記の流れの変動の形態として規則的なものと不規則なものとがあり、非層流というとき、これらの両者を含む。
例えば、規則的な変動を含む流れとしては、カルマン渦及びテーラー渦が挙げられる。一方、不規則な変動を含む流れとしては、無秩序に大小の様々な渦の発生と消滅が繰り返されるような、いわゆる乱流状態の流れが挙がられる。なお、非層流については、(1)化学工学便覧改訂六版,化学工学会編,丸善株式会社、(2)理化学辞典第5版,岩波書店、(3)M.Engler et al.,“Effective Mixing by the Use of Convective Micro Mixers”,Conference Proceedings,2005 Spring National Meeting,AIChE,128dなどを参考にすることができ、例えば特開2006−342304号公報に記載の態様により行ってもよい。
流路(チャンネル)の等価直径が小さくなるにつれ、単位体積あたりの表面積(比表面積)は大きくなるが、流路(チャンネル)がマイクロスケールになると比表面積は格段に大きくなり、流路(チャンネル)の器壁を通じた熱伝達効率は非常に高くなる。
流路(チャンネル)を流れる流体中の熱伝達時間(t)は、
t=deq /α(α:液の熱拡散率)
で表されるので、等価直径が小さくなるほど熱伝達時間は短くなる。すなわち、等価直径が1/10になれば熱伝達時間は1/100になることになり、等価直径がマイクロスケールである場合、熱伝達速度は極めて速い。
マイクロ反応場とは、前記のような層流を形成する流路(チャンネル)のうち、特に高度に反応制御可能な場である等価直径を有するマイクロスケールの流路(チャンネル)を示す。前記レイノルズ数の説明で示したように、層流の形成は等価直径の大きさだけでなく粘度および密度という液物性を含めた流動条件にも大きく影響される。使用可能な流路(チャンネル)の等価直径は限定されないが、容易に層流が形成できるサイズが好ましい。好ましくは流路の等価直径が10mm以下であり、より好ましくはマイクロ反応場を形成する1mm以下である。更に好ましくは10μm〜1mmであり、特に好ましくは20〜300μmである。
好ましいマイクロスケールのサイズの流路(チャンネル)を有する反応装置の代表的なものは例えば、W.Ehrfeld,V.Hessel,H.Loewe,“ Microreactor”,1Ed(2000)WILEY−VCHを参照することができる。また、反応の効率向上などを目指したデバイスに関する報告がなされている。例えば、特開2003−210960、特開2003−210963、特開2003−210959、特開2005−46650、特開2005−46651、特開2005−46652、特開2005−288254はマイクロミキサー、およびマイクロリアクター装置に関するものであり、顔料分散液の製造方法においては、上記のマイクロデバイスなどを使用することもできる。
流路中へ試薬やサンプルなどを導入して適切に混合するために、流体制御手段を用いることが好ましい。特に、マイクロ流路内における流体の挙動は、マクロスケールとは異なる性質を持つため、マイクロスケールに適した制御方式を考えることが好ましい。流体制御方式は形態分類すると連続流動方式と液滴(液体プラグ)方式があり、駆動力分類すると電気的駆動方式と圧力駆動方式がある。
好ましい流体を扱う形態として、最も広く用いられるのが連続流動方式である。連続流動式の流体制御では、マイクロ流路内は全て流体で満たされ、外部に用意したシリンジポンプなどの圧力源によって、流体全体を駆動するのが一般的である。この方法は、デッドボリュームが大きいことなどが難点であるが比較的簡単なセットアップで制御システムを実現できることが大きな利点である。
連続流動方式とは異なる方式として、液滴(液体プラグ)方式がある。この方式では、リアクター内部やリアクターに至る流路内で、空気で仕切られた液滴を動かすものであり、個々の液滴は空気圧によって駆動される。その際、液滴と流路壁あるいは液滴同士の間の空気を必要に応じて外部に逃がすようなベント構造、および分岐した流路内の圧力を他の部分と独立に保つためのバルブ構造などを、リアクターシステム内部に用意する必要がある。また、圧力差を制御して液滴の操作を行うために、外部に圧力源や切り替えバルブからなる圧力制御システムを構築する必要がある。このように液滴方式では、装置構成やリアクターの構造がやや複雑になるが、複数の液滴を個別に操作して、いくつかの反応を順次行うなどの多段階の操作が可能で、システム構成の自由度は大きくなる。
流体制御を行うための駆動方式として、流路(チャンネル)両端に高電圧をかけて電気浸透流を発生させ、これによって流体移動させる電気的駆動方法と、外部に圧力源を用いて流体に圧力をかけて移動させる圧力駆動方法が一般に広く用いられている。流体制御方法として用いられる方法はその目的によって適宜選ばれるが、好ましくは連続流動方式の圧力駆動方式である。
流路内の温度制御は、流路を持つ装置全体を温度制御された容器中に入れることにより制御してもよいし、金属抵抗線やポリシリコンなどのヒーター構造を装置内に作り込み、加熱についてはこれを使用し、冷却については自然冷却でサーマルサイクルを行ってもよい。温度のセンシングは、金属抵抗線を使用する場合はヒーターと同じ抵抗線をもう一つ作り込んでおき、その抵抗値の変化に基づいて温度検出を行うのが好ましく、ポリシリコンを使用する場合は熱電対を用いて検出を行うのが好ましい。また、ペルチェ素子を流路に接触させることによって外部から加熱、冷却を行ってもよい。どの方法を用いるかは用途や流路本体の材料などに合わせて選択される。
流路中の流通過程で微粒子を析出させる場合、その反応時間は流路中に滞留する時間(反応時間)で制御することができる。滞留する時間は等価直径が一定である場合、流路の長さと反応液の導入速度で決まる。流路の長さには特に制限はないが、好ましくは1mm以上10m以下であり、より好ましくは5mm以上10m以下で、特に好ましくは10mm以上5m以下である。
流路内での流体の速度(流速)は0.1mL〜500L/hrが好ましく、0.2mL〜300L/hrがより好ましく、0.5mL〜50L/hrが更に好ましく、1.0mL〜20L/hrが特に好ましい。
本発明の組成物においては、ビルドアップ有機顔料微粒子の形成に中心衝突型合流流路を有するマイクロリアクター装置を用いることが好ましい。図1は中心衝突型マイクロリアクター装置の一実施態様を模式的に示した分解斜視図である。本実施態様の立体型マイクロリアクター装置100は、主として、それぞれが円柱状の形状をした供給ブロック11、合流ブロック12、及び反応ブロック13により構成される。そして、マイクロリアクター装置100を組み立てるには、円柱状をしたこれらのブロック11、12、13を、この順番で互いの側面同士を合わせて円柱状になるようにし、例えばこの状態で各ブロックをボルト・ナット等により一体的に締結する。
供給ブロック11の合流ブロック12に対向する側面14には、2本の環状溝15、16が同芯状に穿設されており、マイクロリアクター装置100を組み立てた状態において、2本の環状溝15及び16は液体Bと液体Aとがそれぞれ流れるリング状流路を形成する。そして、供給ブロック11の合流ブロック12に対向しない反対側の側面24から外側環状溝16と内側環状溝15に達する貫通孔18、17がそれぞれ形成される。かかる2本の貫通孔18、17のうち、外側の環状溝16に連通する貫通穴18には、液体Aを供給する供給手段(ポンプ及び連結チューブ等)が連結され、内側環状溝15に連通する貫通孔17には、液体Bを供給する供給手段(ポンプ及び連結チューブ等)が連結される。図1中、外側環状溝16に液体Aを流し、内側環状溝15に液体Bを流すように示したが、逆にしてもよい。
合流ブロック12の反応ブロック13に対向する側面19の中心には円形状の合流部20が形成され、この合流部20から放射状に4本の長尺放射状溝21と4本の短尺放射状溝22が交互に穿設される。これら合流穴20や放射状溝21,22はマイクロリアクター装置100を組み立てた状態において、合流領域20となる円形状空間と液体A,Bが流れる放射状流路とを形成する。また、8本の放射状溝21,22のうち、長尺放射状溝21の先端から合流ブロック12の厚み方向にそれぞれ貫通穴25が形成され、これらの貫通穴25は供給ブロック11に形成されている前述の外側環状溝16に連通される。同様に、短尺放射状溝22の先端から合流ブロック12の厚み方向にそれぞれ貫通穴26が形成され、これらの貫通穴26は供給ブロック11に形成されている内側環状溝15に連通される。
また、反応ブロック13の中心には、反応ブロック13の厚み方向に合流部20に連通する1本の貫通孔23が形成され、この貫通孔23がマイクロ流路からなる液体混合空間となる。
これにより、液体Aは供給ブロック11の貫通孔18から外側環状溝16を経て合流ブロック12の貫通孔25を通り、長尺放射溝21の供給流路を流れる。その4つの分割流が合流部20に至る。一方、液体Bは供給ブロック11の貫通孔17から内側環状溝15を経て合流ブロック12の貫通孔26を通り短尺放射溝22の供給流路を流れる。その4つの分割流が合流部20に至る。合流部20において液体Aの分割流と液体Bの分割流とがそれぞれの運動エネルギーを有して合流した後、90°流れ方向を変えてマイクロ流路23に流入する。
また、図2に示したようなY字型流路を有する反応装置を用いることも好ましい。図2はその反応装置(200)の説明図であり、図3は図2のIII−III線の断面図である。本態様の装置においては、例えば2種類の液が供給口111及び供給口112にそれぞれ供給される。各流路の長さ方向に直交する断面の形は使用される微細加工技術により異なるが、台形または矩形に近い形が好ましい。導入口111及び導入口112からポンプなどにより注入された液体は導入流路113a(流路幅X)及び導入流路113b(流路幅Y)をそれぞれ経由して流体合流点113dにて接触し、安定な層流を形成して、合流後の混合領域となる反応流路113c(流路幅Z、流路長さF、流路深さH)を流れる。そして例えば層流として混合領域113c(始点113d、終点114)を流れる間に、層流状態であれば、層流間の界面における分子拡散により互いが混合し反応が行われる。このとき、拡散の極めて遅い物質であれば、層流間での拡散混合が起きず、排出口114に達した後に初めて混合する場合もある。注入される2つの液体がフラスコ中でも容易に混合するような組み合わせのとき、混合領域の流路長Fを長く取れば排出口で液の流れを均一な流れにしうる。一方、このような組み合わせでも流路長Fを短くすれば排出口まで層流を保つこともできる。
また、図4に示したような六方型流路を有する反応装置(6方マイクロリアクター装置)を用いることもより好ましい。図4はその反応装置(300)を模式的に示した平面図である。本態様の装置においては、例えばコネクター接続部210およびチューブフェルール固定部211で固定されたチューブから、2種類の流体αと流体βが導入流路202、203にそれぞれ供給され、流体合流点201で混合し反応が行われる。本実施態様の装置によれば、たとえ拡散の極めて遅い物質であったとしても、流体αを流体βが挟み込むように流れるため、流体αと流体βとの界面の面積を増大させることができ、分子拡散によって両液が迅速に混合される。また、流体αの流量に対して、流体βの流量を増やすことにより、さらに両液の界面の面積を増大させることができ、分子拡散によって両液を一層迅速に混合しうる点で好ましい。流体αおよび流体βが混合された後の流体γが、流体合流点201から排出流路204を経て、流出され、捕集される。本実施態様の装置を用いて、例えば流体αとして有機顔料を溶解した溶液を供給し、液体βとして貧溶媒を供給する。これにより、両者を混合してビルドアップ顔料微粒子を生成させた分散液を流体γとして捕集することができ、さらに析出したビルドアップ有機顔料が流路(チャンネル)壁での析出を抑制する上で好ましい。ここで用いるマイクロリアクター装置としては、6方コネクター(東京理化器械社製)を用いることができるが、流路の本数に依存せず、流体αを少なくとも2本の流体βで挟む構造を有していればどのようなマイクロリアクター装置を用いてもよい。
その他、円筒管型流路を有する反応装置、2液の流れが層流のまま出口まで到達する場合、それらを分離できるように改良を加えた装置などを用いることができる(例えば特開2005−307154号公報の段落0049〜0052及び図1〜図4参照)。また、2液の接触角度や接触流路の数を適宜に調節した平面型マイクロリアクター装置や立体型マイクロリアクター装置を用いることも好ましい(例えば特開20006−342304号公報の段落0053〜0056並びに図1〜図3参照)。
本発明の顔料インク組成物の顔料濃度範囲は、0.5〜20質量%であることが好ましく、1.0〜10質量%であることがより好ましい。
本発明の顔料インク組成物中に、分散液中で共重合するか否かにかかわらず、種々の無機、または有機の機能性添加剤・インク溶剤を共存させてもよい。機能性添加剤・インク溶剤を含有させる時期は特に限定されない。例えば、顔料溶液および水性媒体の少なくとも一方に添加しておく場合が好ましく挙げられる。機能性添加剤・インク溶剤を添加することによって、微粒子析出や分散液の安定化を妨げなければ特に使用を限定されない。本発明に使用できる機能性添加剤として、金属封鎖剤、殺菌剤、防カビ剤、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、表面張力調整剤、水溶性樹脂、pH調整剤、尿素などが挙げられる。
本発明に使用できるインク溶剤としては水溶性の有機溶媒が好ましく、具体的にはアルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、スルホン酸塩類(例えば1−ブタンスルホン酸ナトリウム塩等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
ここでインク溶剤として、下記一般式(1)で表される化合物を用いることが更に好ましい。
一般式(1) A−B
式中、Aは親水性置換基を含む基を表し、Bは疎水性基を表す。
Aで表される親水性置換基としてはヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホキシド基、スルホ基、スルホ基、2−ケト−1−ピロリジニル基等が挙げられる。中でもヒドロキシ基が好ましい。
Bは疎水性基を表し、好ましくは炭素原子数3〜10の脂肪族或いは芳香族炭化水素基である。更にBは炭素原子数4〜8の脂肪族基であることが好ましい。
この一般式(1)で表される化合物は一般的な界面活性剤と類似の構造を有しているが、界面活性剤のような強力な界面活性作用を有さないことが好ましい。一般的な界面活性剤は水溶液中で、低濃度でミセルを形成する特徴を示す。上記一般式(1)で表される化合物は、このようなミセル形成能力を有していないことが好ましい。これは強い界面活性作用を有する場合、分子間の相互作用が強いため、1%を超え濃度が上昇すると、インクの粘度を著しく増加させてしまう欠点があるためである。
上記一般式(1)で表される化合物のうち、好ましい例としては多価アルコールエーテル誘導体及び炭素原子数4〜8の脂肪族1,2−ジオールが挙げられ、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、或いは1,2−ペンタンジオールから選ばれる化合物であることがより好ましい。更に好ましくはトリエチレングリコールモノブチルエーテル或いは1,2−ヘキサンジオールである。
本発明において用いられるインク溶剤は、上記一般式(1)で表される化合物を、インク溶剤の5〜50%以上を用いることがデキャップ耐性やドット径を拡大させて画質を向上させるため好ましい。インク溶剤量を増加すればデキャップ耐性を向上することができ、インク溶剤のインク中における構成比率を45%よりも大きくすることで実用上の問題を減少することができる。
本発明の顔料インク組成物の溶媒としては、それぞれ前述の、有機溶媒、分散剤、界面活性剤、重合性化合物、添加剤、または水、およびこれらを組み合わせたものが挙げられる。また、必要に応じて、例えばインクに添加される水溶性有機溶媒、その他の成分をさらに添加してもよい。これら溶媒成分は、例えば、特開2002−194263号公報、特開2003−26972号公報に記載のあるような顔料分散剤の構成要素を適用することができる。
(実施例・比較例)
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(水分散液試料A−1の調製)
ピグメントイエロー128(PY128、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、CROMOPHTAL YELLOW 8GNP[商品名])162.00gを、ジメチルスルホキシド(DMSO)2702.7g、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)127.07g、アクアロンKH−10商品名]([第一工業製薬(株)社製)129.60g、N−ビニルピロリドン(和光純薬(株)社製)32.40g、ポリビニルピロリドンK30[商品名](東京化成工業(株)社製)8.10g、高分子アゾ開始剤VPE−0201[商品名](和光純薬工業(株)社製)81.00gとともに室温で溶解しA液とした。A液のpHは測定限界(pH14)を超えており、測定不能であった。
蒸留水をB液とした。これらを0.45μmのミクロフィルター(ザルトリウス社製)を通すことでごみ等の不純物を除いた。マイクロリアクター装置として、以下の分割数(流路本数)等を有する図1の立体型のマイクロリアクター装置を使用した。
(i)供給流路本数(n)…2種類の反応液それぞれについて3本に分割(図示したものでは4本に分割されている。)
(ii)供給流路21、22の幅(W)…各400μm
(iii)供給流路21、22の深さ(H)…各400μm
(iv)合流領域20の直径(D)…800μm
(v)マイクロ流路23の直径(R)…800μm
(vi)合流領域23において各供給流路21、23とマイクロ流路23との中心軸同士の交差角度…90°
(vii)装置の材質…ステンレススチール(SUS304)
(viii)流路加工法…マイクロ放電加工で行い、供給ブロック11、合流ブロック12、反応ブロック13の3つのパーツの封止方法はOリングと鏡面研磨による金属面シールで行った。二つの入り口に長さ2m、等価直径2mmのテフロン(登録商標)チューブ2本をコネクターで接続し、A液とB液を各々入れたステンレスタンクの底からプランジャーポンプに繋いだ。コネクターの出口には長さ3m、等価直径2mmを有するテフロン(登録商標)チューブを接続した。
A液とB液の流量を各々、40mL/分、160mL/分で送液し、コネクター出口より、ピグメントイエロー128の分散液が流出開始した時間を0分として、開始から1.5分後から、捕集をおこない15L採取した。
採取した分散液中のピグメントイエロー128(PY128)顔料の体積平均粒径、単分散性の指標である体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)を測定した。この分散液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、70℃、4時間かけて加熱処理し重合反応を行った。加熱処理後の顔料分散液中の顔料の体積平均粒径Mv及び体積平均粒径/個数平均粒径の比(Mv/Mn)を測定した。上記の粒径の測定はいずれも日機装(株)社製のマイクロトラックUPA150(商品名)で行った。この結果を下表1に示した。なお、以下の分散液試料についても同様に重合処理前後における粒径測定を行い、その結果を下表1に示した。
次に、この顔料分散液を限外濾過装置(ADVANTEC社製ウルトラホルダーにウルトラフィルター(Q0500 076E[商品名]、分画分子量5万、ポリサルフォン製))を取りつけたものにより、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製し顔料水分散液試料A−1とした。この顔料濃度を測定したところ、6.6質量%であった。
顔料水分散液A−1を70℃、100時間の加熱条件下で保存安定性を評価したところ、顔料の沈降は見られず、また、上記加熱処理による保存安定性試験の前後で顔料微粒子の粒径変化率は+2%以下であった。
(水分散液試料A−2の調製)
前記のA液で100g当たり、0.62gのDMSOの代わりに、ポリビニルアルコールPVA205[商品名](クラレ社製、けん化度(約87.0〜89.0mol%)、重合度500、質量平均分子量30,000)を添加し溶解してA2液とした以外は、分散液試料A−1と同様の方法で調液を行い分散液を捕集した。
この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、70℃、4時間かけて加熱処理し重合反応を行った。
次に、この顔料分散液を限外濾過装置(ADVANTEC社製ウルトラホルダーにウルトラフィルター(Q0500 076E[商品名]、分画分子量5万、ポリサルフォン製)を取りつけたもの)により、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製し顔料水分散液試料A−2とした。この顔料濃度を測定したところ、5.8質量%であった。
(水分散液試料A−3の調製)
ピグメントレッド254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGAPHOR RED BT−CF(商品名))45.0gを、8M水酸化カリウム水溶液(和光純薬(株)社製)47.25mL、ジメチルスルホキシド588.0g、アクアロンKH−10([商品名]第一工業製薬(株)社製)36.0g、N−ビニルピロリドン((和光純薬(株)社製)9.00g、ポリビニルピロリドンK30[商品名](東京化成工業(株)社製)2.25g、高分子アゾ開始剤VPE−0201[商品名](和光純薬工業(株)社製)22.5gとともに室温で溶解しA3液とした。A3液のpHは測定限界(pH14)を超えており、測定不能であった。蒸留水をB3液とした。これらを0.45μmのミクロフィルター(ザルトリウス社製)を通すことでごみ等の不純物を除いた。
顔料水分散液試料A−1の調製に用いた図1に示した装置を用いて、A3液とB3液の流量を各々10mL/分、60mL/分で送液し、コネクター出口より、ピグメントレッド254の分散液が流出開始した時間を0秒として、開始から30秒後から、分散液を捕集した。
この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、70℃、4時間かけて加熱処理し重合反応を行った。
次に、この顔料分散液を限外濾過装置(ADVANTEC社製ウルトラホルダーにウルトラフィルター(Q0500 076E[商品名]、分画分子量5万、ポリサルフォン製)を取りつけたもの)により、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製し顔料水分散液試料A−3とした。この顔料濃度を測定したところ、10.27質量%であった。
顔料水分散液試料A−3を70℃、100時間かけ加熱処理し保存安定性を評価したところ、顔料の沈降は見られず、また上記加熱処理による保存安定性試験の前後で粒径変化率は+2%以下であった。これは、重合操作による重合体由来の効果によるものである。
(水分散液試料A−4の調製)
2,9−ジメチルキナクリドン(PR122、クラリアント社製、HOSTAPERM PINK E(商品名))0.5gを、ジメチルスルホキシド(以下「DMSO」と表記することがある。)5.0mL、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)0.85mL、25%アクアロンKH−10(重合性化合物)(商品名)(第一工業製薬(株)社製)を混合したDMSO溶液2.0mLに室温で溶解した(A4液)。A4液のpHは測定限界(pH14)を超えており、測定不能であった。蒸留水をB4液とした。これらを0.45μmのミクロフィルター(ザルトリウス社製)を通すことでごみ等の不純物を除いた。
次に、図2の反応装置のようなY字型の流路構成を有する、簡易型の反応装置を作製して下記の手順で反応を行った。すなわち、等価直径500μmを有するテフロン(登録商標)製Y字コネクター(東京理化器械(株)社製)の二つの入り口に長さ50cm、等価直径1mmのテフロン(登録商標)チューブ2本をコネクターを用いて接続し、その先にそれぞれA4液とB4液を入れたシリンジを繋ぎ、ポンプにセットした。コネクターの出口には長さ1.5m、等価直径500μmを有するテフロン(登録商標)チューブを接続した。A4液を96mL/h、B4液を600mL/hの送液速度にて送り出した。チューブ出口先端より2,9−ジメチルキナクリドンのビルドアップ顔料微粒子を含有する分散液が得られたのでこれを捕集した。
さらに、この顔料分散液に含まれるアクアロンKH−10の5質量%の過硫酸カリウム(K)を添加し、70℃で5時間加熱して重合性化合物がビルドアップ顔料微粒子に重合固定化されたものを含む分散液を得た。得次に、この顔料分散液を限外濾過装置(アドバンテック東洋社製、UHP−25K(商品名)、分画分子量20万)により液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製し、引き続き濃縮することにより、顔料濃度7.5質量%の水分散液試料A−4を得た。
(水分散液試料A−5の調製)
フタロシアニン(水素フタロシアニン、PB16、(商品名)、東京化成工業(株)社製)2.05gを、ジメチルスルホキシド96.25g、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)1.84g、N−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム塩1.70g、ポリビニルピロリドンK30(商品名)(東京化成工業(株)社製)0.40gと共に超音波照射しながら溶解した後、N−ビニルピロリドン(重合性化合物)(和光純薬(株)社製)0.40g、高分子アゾ重合開始剤VPE−0201(商品名)(和光純薬工業(株)社製)1.03gを室温下で撹拌溶解した(A5液)。A5液のpHは測定限界(pH14)を超えており、測定不能であった。1.2質量%のアクアロンKH−10(重合性化合物)(商品名)(第一工業製薬(株)社製)水溶液をB5液とした。
これらを150μmの金属焼結フィルターを通すことでごみ等の不純物を除いた。マイクロリアクター装置として、図1のマイクロリアクター装置の内、下記の条件に換えたものを使用した。
(i)供給流路21、22の幅(W)…各150μm
(ii)供給流路21、22の深さ(H)…各150μm
(iii)合流領域20の直径(D)…300μm
(iv)マイクロ流路23の直径(R)…300μm
A5液とB5液の流量を各々、8mL/分、32mL/分で送液し、コネクター出口より、ピグメントブルー16の分散液を得た。このとき、装置のコネクター出口のレイノルズ数は550であった。ピグメントブルー16の分散液が流出開始した時間を0分として、開始から30秒後から、捕集をおこなった。
この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間80℃で加熱重合を行った。このとき顔料分散液のpHは6.3であった。
次に、この顔料分散液を限外濾過装置(ADVANTEC社製ウルトラホルダーUHP−76K(商品名))にウルトラフィルター(Q0500 076E(商品名)、分画分子量5万、ポリサルフォン社製)により、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製した。精製洗浄後、濃縮した。顔料濃度は5.3質量%であり、これを、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−5とした。この水分散液試料を凍結乾燥させ、得られた結晶のX線粉末回折測定を行ったところ、水素フタロシアニンはα型の準安定型であった。
(水分散液試料A−6の調製)
フタロシアニン(水素フタロシアニン、PB16、(商品名)、東京化成工業(株)社製)2.05g(3.98mmol)を、ジメチルスルホキシド96.25g、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)1.84g(9.56mmol)、N−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム塩1.70g(3.99mmol)、ポリビニルピロリドンK30(商品名)(東京化成工業(株)社製)1.00gと共に超音波照射しながら溶解した後、N−ビニルピロリドン(重合性化合物)(和光純薬(株)社製)0.40g(3.60mmol)、高分子アゾ重合開始剤VPE−0201(商品名)(和光純薬工業(株)社製)1.03gを室温下で撹拌溶解し、有機金属錯体顔料前駆体溶液とした(A6液)。A6液のpHは測定限界(pH14)を超えており、測定不能であった。
CuBr1.01g(4.48mmol)を室温下攪拌してDMSO99.0gに溶かした。黄黒色の溶液であった(B6液)。
これらを150μmの金属焼結フィルターを通すことでごみ等の不純物を除いた。マイクロリアクター装置として、試料A−1の調製に用いたのと同じ条件の図1のマイクロリアクター装置を2台(装置A及びB)使用した。このとき、装置Aで金属置換反応するようにし、装置Bで顔料微粒子を分散させるようにした。そして、金属置換反応により銅フタロシアニン顔料微粒子を生成させてから、これを含有する液体が分散工程で蒸留水(C6液)と接触するまでの時間が約5msとなるように設定した。
マイクロリアクター装置Aの二つの入り口に長さ2m、等価直径2mmのテフロン(登録商標)チューブ2本をコネクターで接続し、A6液とB6液を各々入れたステンレスタンクの底からプランジャーポンプに繋いだ。マイクロリアクター装置Aのコネクターの出口には長さ3cm、内径0.5mmを有するテフロン(登録商標)チューブを接続した。マイクロリアクター装置Aから、マイクロリアクター装置Bのもう一方の入り口にコネクターで接続した。マイクロリアクター装置Bのもう一方の入り口にコネクターを接続しステンレスタンクの底からプランジャーポンプに繋ぎ、C6液が供給されるようにした。
A6液、B6液、C6液の流量を各々、40mL/分、40mL/分、120mL/minで送液し、装置Bのコネクター出口より、ピグメントブルー15の分散液が流出開始した時間を0分として、開始から30秒後から、捕集をおこなった。得られた分散液試料に超音波を10分照射した(30W,発振周波数45KHzの超音波洗浄器使用)。このときのpHは7.6であった。
この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間80℃で加熱重合を行った。次に、この顔料分散液を限外濾過装置(ADVANTEC社製ウルトラホルダーにウルトラフィルター(Q0500 076E(商品名)、分画分子量5万、ポリサルフォン社製)により、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製洗浄後、濃縮した。顔料濃度は6.5質量%であり、これを、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−6とした。
(水分散液試料A−7の調製)
フタロシアニン(水素フタロシアニン、PB16、フタロシアニン(商品名)、東京化成工業(株)社製)1.00g(1.94mmol)を、ジメチルスルホキシド107.8g、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)0.80g(9.56mmol)、メタノール(和光純薬(株)社製)1.82gを窒素雰囲気下、撹拌溶解し、有機金属錯体顔料前駆体溶液とした後、N−ビニルピロリドン(重合性化合物)(和光純薬(株)社製)0.20g(1.80mmol)、高分子アゾ重合開始剤VPE−0201(商品名)(和光純薬工業(株)社製)0.51gを室温下で撹拌溶解し、有機金属錯体顔料前駆体溶液とした(A7液)。A7液のpHは測定限界(pH14)を超えており、測定不能であった。
CuBr 0.50g(2.24mmol)、N−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム塩0.83g(1.96mmol)、ポリビニルピロリドンK30(商品名)(東京化成工業(株)社製)0.50gをDMSO98.67gに室温下で撹拌溶解した(B7液)。B7液は黄黒色の溶液であった。これらを0.45μmのミクロフィルター(ザトリウス社製)を通すことでごみ等の不純物を除いた。このときマイクロリアクター装置として、下記流路の寸法を有する図4の6方マイクロリアクター装置を用いた。このとき、6方マイクロリアクター装置で金属置換反応するようにし、ビーカーの液中で顔料微粒子を分散させるようにした。そして、金属置換反応により銅フタロシアニン顔料を生成させてから、これを含有する液体が分散工程で下記蒸留水と接触するまでの時間が約0.9msとなるように設定した。
(i)導入流路202、203の幅(W)…各500μm
(ii)排出口204の幅(W)…500μm
図4に示したマイクロリアクター装置の5つの入り口に長さ2m、等価直径2mmのテフロン(登録商標)チューブ5本をコネクターで接続し、出口の隣から交互にB7液A7液の順に充填したシリンジを繋ぎ(すなわちB7液を矢印βの方向に供給し、A7液を矢印αの方向に供給するように繋ぎ)、5台のポンプにセットした。マイクロリアクター装置の出口(矢印γの位置)にコネクターは接続しなかった。
A7液及びB7液の流量を各々、10mL/分、40mL/分でマイクロリアクター装置に送液し、コネクター出口より、ピグメントブルー15の分散液が流出開始した時間を0分として、開始から30秒後、ビーカーに入った超高速万能ホモジナイザー ヒスコトロン(マイクロテック・ニチオン社製)であらかじめシャフト(NS−20AG/NS−20TP[商品名])の回転数を8000rpmで撹拌しておいた280mLの蒸留水中に、マイクロリアクター装置を2分間浸漬して、A7液とB7液の混合溶液を蒸留水に吐出させ、ピグメントブルー15の顔料分散液を得た。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この分散液をを3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間80℃で加熱重合を行った。得られた顔料分散液は、水分散液試料A−7の調製と同様に精製濃縮を行い、これを、ビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−7とした。顔料分散液の顔料濃度は6.2質量%であった。
(水分散液試料A−8の調製)
フタロシアニン(水素フタロシアニン、PB16、(商品名)、東京化成工業(株)社製)1.00g(1.94mmol)を、ジメチルスルホキシド108.6g、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)0.80g(9.56mmol)、メタノール(和光純薬(株)社製)1.82gを窒素雰囲気下、室温で撹拌溶解し、有機金属錯体顔料前駆体溶液とした(A8液)。A8液のpHは測定限界(pH14)を超えており、測定不能であった。
CuBr2 0.50g(2.24mmol)、N−オレオイル−N−メチルタウリンナトリウム塩0.83g(1.96mmol)をDMSO98.67gに室温下で撹拌溶解したところ、黄黒色の溶液であった(B8液)。
これらを0.45μmのミクロフィルター(ザトリウス社製)を通すことでごみ等の不純物を除いた。
装置は、試料A−7の調製に用いた6方マイクロリアクター装置と同じものを用いた。このとき、6方マイクロリアクター装置で金属置換反応するようにし、ビーカーの液中で顔料微粒子を分散させるようにした。そして、金属置換反応により銅フタロシアニン顔料微粒子を生成させてから、この顔料微粒子を含有する液体が分散工程で下記蒸留水と接触するまでの時間が約3.1msとなるように6方マイクロリアクター装置出口をビーカー中の蒸留水面から垂直に2cm上方に設定した。送液条件の内、A8液、B8液の流量を各々、20mL/分、60mL/分に変更し、A8液とB8液の混合溶液が6方マイクロリアクター装置出口からピグメントブルー15の分散液が流出開始した時間を0分として、開始から30秒後、6方マイクロリアクター装置をビーカー中の蒸留水面から垂直に2cm上方に移動して、ビーカーに入った超高速万能ホモジナイザー ヒスコトロン(マイクロテック・ニチオン社製)であらかじめシャフト(NS−20AG/NS−20TP[商品名])の回転数を8000rpmで撹拌しておいた280mLの蒸留水中に、30秒間空中噴霧し、ピグメントブルー15の顔料分散液を得た。この分散液をなお、ここでは超音波分散は行わなかった。3Lの3口フラスコに移し、顔料分散液100gに付き、10質量%のポリビニルピロリドンK30(商品名)(東京化成工業(株)社製)水溶液1.00gを添加し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱を行った。
次に、200gの顔料分散液に付き、0.1%オルフィンE1010(商品名)(日信化学工業(株)社製)水溶液100gを添加後、限外濾過装置(ADVANTEC社製ウルトラホルダーにウルトラフィルター(Q0100 076E(商品名)、分画分子量1万、ポリサルフォン社製))により、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製洗浄後、濃縮した。顔料濃度は7.0質量%であり、これを、高分子分散剤が吸着安定化したビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−8とした。
(水分散液試料A−9の調製)
上記のA7液及びB7液を用いた。これらを0.45μmのミクロフィルター(ザトリウス社製)を通すことでごみ等の不純物を除いた。水分散液試料A−8の6方マイクロリアクター装置を用い、同じ調製条件で10回送液行い、顔料分散液を得た。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。
この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱重合を行った。
次に、この顔料分散液を限外濾過装置Masterflex I/P Easy−Load pump(商品名、Cole Pamer社製、EW−77601−10/EW−07592−20)にI/P 82チューブ(商品名、Cole Pamer社製)を接続し、マイクロ−ザUF ラボモジュール(旭化成社製、SIP−1013[商品名](分画分子量6000))で、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製洗浄後、濃縮し、最後に限外濾過装置ADVANTEC社製ウルトラホルダーにウルトラフィルター(Q0100 076E(商品名)、分画分子量1万、ポリサルフォン社製))により濃縮した。顔料濃度は7.1質量%であり、これを、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−9とした。
(水分散液試料A−9Bの調製)
上記分散液試料A−9の調製で、B7液に用いたポリビニルピロリドンK30 0.5gをポリビニルアルコールPVA205 0.13gに代え、DMSOを99.04gにした以外同様にして、重合性化合物を重合被覆させたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−9Bを得た。顔料濃度は7.0質量%であった。
(水分散液試料A−10の調製)
水分散液試料A−8の調製で、B8液の DMSO 0.20gをディスモジュールI(被架橋性化合物)(商品名、住化バイエルウレンタン(株)社製、イソホロンジイソシアネート:NCO含有量=37.5質量%)0.20gに置換えた以外、同一条件で顔料分散液を得た。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。
この液を3Lのステンレスビーカーに移し、顔料分散液1000gに付き10質量%ポリビニルアルコール(架橋剤)(重合度5000)(第一工業(株)社製)水溶液0.50g、ジブチルチンジラウレート(触媒)(東京化成社製)0.01gを添加し、超高速万能ホモジナイザー ヒスコトロン(マイクロテック・ニチオン社製)でシャフト(NS−20AG/NS−20TP[商品名])の回転数を24000rpmで30分間撹拌後、この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱を行った。
得られた顔料分散液は、水分散液試料A−9の調製と同様に精製濃縮を行い、被架橋性化合物が架橋剤により、重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−10とした。顔料分散液の顔料濃度は6.5質量%であった。
(水分散液試料A−11の調製)
水分散液試料A−9の調製で、A7液のCuBr 0.50g(2.24mmol)をZnBr 0.50g(2.24mmol)に置換えた以外、同一条件で顔料分散液を得た。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱重合を行った。
得られた顔料分散液は、水分散液試料A−9の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−11とした。顔料分散液の顔料濃度は5.2質量%であった。
(水分散液試料A−12の調製)
水分散液試料A−9の調製で、A7液のCuBr 0.50g(2.24mmol)をPbBr 0.60g(2.06mmol)に置換えた以外、同一条件で顔料分散液を得た。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱重合を行った。
得られた顔料分散液は、水分散液試料A−9の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−12とした。顔料分散液の顔料濃度は5.8質量%であった。
(水分散液試料A−13の調製)
水分散液試料A−9の調製で、A7液のCuBrの半量にあたる0.25g(1.12mmol)をZnBr 0.25g(1.12mmol)に置換えた以外、同一条件で顔料分散液を得た。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱重合を行った。
得られた顔料分散液は、水分散液試料A−9の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−13とした。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.2質量%であった。
(水分散液試料A−14の調製)
水分散液試料A−9の調製で、A7液のCuBrの半量にあたる0.25g(1.12mmol)をPbBr 0.30g(1.03mmol)に置換えた以外、同一条件で顔料分散液を得た。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱重合を行った。
得られた顔料分散液は、水分散液試料A−9の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−14とした。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.3質量%であった。
(水分散液試料A−15の調製)
水分散液試料A−8の調製で、B8液のDMSO 30.0gを超純水30.00gに置換えた以外、同一条件で顔料分散液を得た。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。
この分散液を3Lの3口フラスコに移し、顔料分散液100gに付き、10質量%のポリビニルピロリドンK30(商品名)(東京化成工業(株)社製)水溶液1.00gを添加し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱を行った。
次に、200gの顔料分散液に付き、0.1%オルフィンE1010(商品名)(日信化学工業(株)社製)水溶液100gを添加後、限外濾過装置(ADVANTEC社製ウルトラホルダーにウルトラフィルター(Q0100 076E(商品名)、分画分子量1万、ポリサルフォン社製))により、液量を保持するよう蒸留水を加えながら精製洗浄後、濃縮した。顔料濃度は6.8質量%であり、これを、高分子分散剤が吸着安定化したビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−15とした。
(水分散液試料A−16の調製)
水分散液試料A−6の調製で、A7液、B7液のDMSO 30.0gを超純水30.00gに置換えた液(B16液)、C6液(蒸留水)を用いた。これらを0.45μmのミクロフィルター(ザトリウス社製)を通すことでごみ等の不純物を除いた。マイクロリアクター装置として、試料A−6の調製に用いた図1のマイクロリアクター装置2台(装置A及び装置B)を使用した。
マイクロリアクター装置Aの二つの入り口に長さ2m、等価直径2mmのテフロン(登録商標)チューブ2本をコネクターで接続し、A7液とB16液を入れたシリンジを繋ぎ、ポンプにセットした。マイクロリアクター装置Aの出口には長さ0.7mm、等価直径2mmを有するSUS316製コネクターの一方を接続し、マイクロリアクター装置Bの二つある入り口の一方に接続し、もう一方の入口は、長さ2m、等価直径2mmのテフロン(登録商標)チューブ1本をコネクターで接続し、C6液(蒸留水)を入れたステンレスタンクの底からプランジャーポンプに繋いだ。マイクロリアクター装置Bの出口に長さ4cm、等価直径2mmのテフロン(登録商標)チューブを接続した。
A7液、B16液、貧溶媒(蒸留水:C5液)の流量を各々、40mL/分、40mL/分、120mL/minで送液し、装置Bのコネクター出口より、顔料分散液が流出開始した時間を0分として、開始から30秒後から、捕集をおこなった。
得られた顔料分散液のpHは7.6であった。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱を行った。
得られた顔料分散液は、水分散液試料A−9の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−16とした。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.1質量%であった。
(水分散液試料A−17の調製)
A7液中のフタロシアニン(水素フタロシアニン、PB16、フタロシアニン(商品名)、東京化成工業(株)社製)0.50g(0.97mmol)を、ピグメントレッド254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGAPHOR RED BT−CF(商品名))0.35g(0.97mmol)に置換え、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)0.66g(7.89mmol)に換えた(A17液)。これ以外は分散液試料A−6と同一条件で顔料分散液を得た。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱を行った。得られた顔料分散液は、水分散液試料A−9の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−17とした。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.2質量%であった。
(水分散液試料A−18の調製)
上記分散液試料A−6の調製で、A7液中のフタロシアニン(水素フタロシアニン、PB16、フタロシアニン(商品名)、東京化成工業(株)社製)0.50g(0.97mmol)を、ピグメントレッド254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGAPHOR RED BT−CF(商品名))0.35g(0.97mmol)に置換え、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)0.66g(7.89mmol)に換えた液(A17液)、B7液を用い、これ以外は分散液試料A−6と同一条件で顔料分散液を得た。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。
この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱を行った。得られた顔料分散液は、水分散液試料A−9の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−18とした。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.7質量%であった。
(水分散液試料A−19の調製)
上記分散液試料A−6の調製で、A7液中のフタロシアニン(水素フタロシアニン、PB16、フタロシアニン(商品名)、東京化成工業(株)社製)0.50g(0.97mmol)を、ピグメントイエロー128(PY128、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、CROMOPHTAL YELLOW 8GNP)(商品名)1.19g(0.97mmol)に置換え、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(和光純薬(株)社製)0.50g(4.93mmol)に換え、B7液、C7液を用いた以外、同一条件で顔料分散液を得た。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱を行った。得られた顔料分散液は、水分散液試料A−9の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−19とした。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.9質量%であった。
(水分散液試料A−20の調製)
水分散液試料A−6で使用した図1のマイクロリアクター装置を3台(装置A、装置B及び装置P)使用した。水分散液試料A−6の装置において、マイクロリアクター装置Aの入口からA7液とA3液(顔料濃度6質量%)とを装置Pで事前に混合し、マイクロリアクター装置Aの入口へ導入する方法に変更し、A7液とA3液の送液重量流量比が6:1、混合後次のマイクロリアクター装置Aへの送液流量が毎分40mLに変更し、B7液、C7液を用いた以外、同一条件で顔料分散液を得た。なお、ここでは超音波分散は行わなかった。この液を3Lの3口フラスコに移し、窒素気流下、4時間、80℃で加熱を行った。得られた顔料分散液は、水分散液試料A−9の調製と同様に精製濃縮を行い、重合性化合物が重合固定化されたビルドアップ顔料微粒子を含有する水分散液試料A−20とした。顔料分散液の顔料の合計濃度は6.3質量%であった。
[表1]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
分散液試料 加熱重合処理前 加熱重合処理後
MV(nm) MV/Mn MV(nm) MV/Mn
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
A−1 18.1 1.39 22.0 1.42
A−2 13.5 1.44 14.1 1.41
A−3 26.8 1.56 27.4 1.41
A−4 23.5 1.57 19.5 1.52
A−5 13.5 1.63 17.5 1.48
A−6 53.9 1.47 49.3 1.43
A−7 38.3 1.58 37.1 1.46
A−8 22.5 1.62 30.5 1.49
A−9 23.6 1.64 29.5 1.43
A−9B 23.1 1.66 28.3 1.42
A−10 24.3 1.68 31.8 1.46
A−11 48.2 1.53 46.3 1.48
A−12 42.8 1.55 40.5 1.49
A−13 47.5 1.73 46.8 1.6
A−14 48.5 1.79 47.3 1.76
A−15 28.5 1.56 29.3 1.62
A−16 39.4 1.58 37.3 1.51
A−17 20.3 1.54 19.8 1.48
A−18 36.2 1.61 34.8 1.56
A−19 34.3 1.53 32.3 1.48
A−20 29.7 1.72 26.5 1.55
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
各分散液試料を用いて下表2の処方によりインク試料1〜44を調製した。このインク試料についてそれぞれ下記のようにして反射濃度を求め、(1)耐光性、(2)耐オゾン性、(3)耐擦過性の試験を行った。結果を表2に併せて示した。
<評価試験>
画像形成後24時間、暗室で静置した後、階段パッチ部分の各濃度域を、ステータスAフィルターが標準装備されたX−rite310濃度計[商品名](X−Rite社製)を用いて反射濃度(Ci)の測定を行った。
(1)耐光性
アトラス社製ウェザーメーターを用い画像に10万ルックスに設定したキセノン光を表1に記載の日数照射した後、再び画像濃度Cfを測定し色素残存率(Cf/Ci×100)を求め評価を行った。色素残存率としては反射濃度Ciが0.9〜1.1での値を採用した。
(2)耐オゾン性
画像をオゾン濃度5ppmで表1に記載の日数、オゾンガス褪色試験機中に保存することにより、褪色試験を行った後に、再び画像濃度Cfを測定し色素残存率(Cf/Ci×100)を求め評価を行った。5kV交流電圧印加の高圧放電方式のオゾナイザーを使用し、APPLICS社製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01[商品名])で設定し、オゾンガス濃度を制御した。
色素残存率としては反射濃度Ciが0.9〜1.1での値を採用した。
(3)耐擦過性
画像を市販の消しゴム(MONO[商品名]、トンボ鉛筆社製)で10往復擦った後に、再び画像濃度Cfを測定し色素残存率(Cf/Ci×100)を求め評価を行った。
色素残存率としては反射濃度Ciが0.9〜1.1での値を採用した。
色素残存率が85%以上の場合をA、70%以上85%未満をB、70%未満の場合をCとして、3段階で評価した。
Figure 2009041000
Figure 2009041000
ET410:ポリアクリル酸エステル共重合体 ジュリマーET410(商品名、日本純薬社製、30質量%、Tg40℃)
オルフィン:オルフィンE1010(商品名、日信化学工業株式会社社製、アセチレンジオールのエチレンオキサイド(10モル)付加物)
PVP:ポリビニルピロリドンK30(商品名、東京化成工業(株)社製)
PVA:ポリビニルアルコールPVA205[商品名](クラレ社製、けん化度(約87.0〜89.0mol%)、重合度500、質量平均分子量30,000)
上記の結果より、実施例のインク試料はナノメートルサイズにまで微細化した顔料微粒子が重合体に包含され、その微粒子分散物に親水性基を有する高分子化合物(ポリビニルアルコール、ET410)を共存させたものであり、これを用いないあるいは微粒子形成時に共存させた比較のインク液に対して、耐候性(耐光性、耐オゾン性)及び耐擦過性に優れることが分かる。このことについて、いくつかのインク試料の結果に基づきさらに詳述する。
ポリビニルピロリドンを共存させた比較のためのインク液3(黄色)及びインク液20(青色)は耐光性及び耐擦過性がインク液1(黄色)及びインク液18(青色)に対して若干向上したものの、ポリビニルアルコールを所定の態様で共存させた実施例のインク液2(黄色)及びインク液19(青色)には及ばない。この結果より、本発明において顔料種に由来する特徴というよりも特定の態様で含有させた親水性基を有する高分子化合物を用いることにより所望の効果を奏することが分かる。
A液にポリビニルアルコールを添加した、すなわち顔料微粒子の調製前にこれを添加した比較のためのインク液4(黄色)及びインク液21(青色)は、各項目の特性がインク液1に対して若干向上したものの、すべての性能において実施例2のインク液2に対して劣った。この結果から、単に親水性基を有する高分子化合物を用いればよいのではなく、これが水性媒体側に存在しうるよう、顔料微粒子調整後に含有させることで所望の効果が得られることが分かる。
また、ヒドロキシル基を含有するポリビニルアルコールの代わりに、カルボニル基を高分子化合物中に有するポリアクリル酸エステル共重合体(ET410)を含有させた実施例のインク液5(黄色)及びインク液22(青色)はポリビニルアルコールを用いない比較のためのインク液1(黄色)及びインク液18(青色)に対して、それぞれ耐候性(耐光性、耐オゾン性)及び耐擦過性に優れることが分かる。スルホ基を有するポリビニルベンゼンスルホン酸−スチレン共重合体でも同様に耐候性(耐光性、耐オゾン性)及び耐擦過性に優れている。以上のことから、本発明において、特定の態様で含有させた親水性基を有する高分子化合物を用いることにより所望の効果を奏することが分かる。
PB16にさらにPB15を内含させた重合体を含有させたインク液34(青色)及びインク液36(青色)は、PB16を内含させた重合体にポリビニルアルコールを含有させたインク液11(青色)よりも、耐候性(耐光性、耐オゾン性)が長期暴露において効果があった。また、PY128にさらにPB15を内含させた重合体を含有させたインク液41(緑色)は、PY128を内含させた重合体に、ポリビニルアルコールを含有させたインク液2(黄色)よりも、耐候性(耐光性、耐オゾン性)が良好になった。PR254にさらにPB16を内含させた重合体にポリビニルアルコールを含有させたインク液38(紫色)は、長期耐候性(耐光性)が良好になった。そしてPB16をPB15に変えた、インク液40(紫色)及びインク液43(紫色)は、PR254を内含させた重合体にポリビニルアルコールを含有させたインク液7(赤色)よりも、耐候性(耐光性、耐オゾン性)がさらに良好になった。さらにまた、ZnPc及びPbPcにそれぞれPB16を内含させた重合体にポリビニルアルコールを含有させたインク液30(青色)及びインク液32(青色)は、長期耐候性(耐光性)が良好になった。
これらの結果から、本発明においては、特定の態様で含有させた親水性基を有する高分子化合物を、2種以上の顔料種を重合体に包含したものと組み合わせて用いることが効果的であることが分かる。
また以上の結果から分かるように、本発明によれば、粒径や種類の異なる顔料微粒子、異種の重合体においても、親水性基を有する高分子化合物を微粒子形成後に添加することで耐候性(耐光性、耐オゾン性)及び耐擦過性を向上させることができた。また、親水性基を有する高分子化合物についても限定されない。このように本発明の顔料インク組成物は汎用性が高く、用途や必要とされる色相、耐久性や環境適合性等の要求性能等に応じて材料を適宜選択して対応することができる。
さらに、画像形成において使用した受像紙(画彩写真仕上げPRO[商品名])を、エプソン社製の写真用紙クリスピア<高光沢>[商品名]、もしくはキャノン社製のPR101[商品名]に変更した以外、上記と同様にしてインク1〜7を用いてそれぞれ画像形成を行った。得られた画像について上記の評価試験と同様にして各性能を確認したところ、インク液2、5、7は、比較のためのインク液1、3、4、6に対し、良好な耐候性、耐擦過性、及び経時安定性を示した。この結果より受像紙を変えても、本発明の顔料インク組成物は上記の優れた作用効果を示すことが分かる。
中心衝突型マイクロリアクター装置の一実施態様を模式的に示す分解斜視図である。 Y字型流路を有する反応装置の一実施態様を模式的に示す平面図である 図2のIII−III線の断面図である 六方マイクロリアクター装置の一実施態様を模式的に示す平面図である。
符号の説明
100、200、300 反応装置(マイクロリアクター装置)
11 供給ブロック
12 合流ブロック
13 反応ブロック
16 外側環状溝
15 内側環状溝
17、18 供給ブロックの貫通孔
20 合流部(合流領域)
21 長尺放射状溝
22 短尺放射状溝
23 反応ブロックの貫通孔(マイクロ流路からなる液体混合空間)
25、26 合流ブロックの貫通孔
111、112 導入口
113 流路
113a、113b 導入流路
113c 反応流路(マイクロ流路からなる液体混合空間)
113d 流体合流点
114 排出口
201 流体合流点
202、203 導入流路
204 排出流路
210 コネクター接続部
211 チューブフェルール固定部

Claims (21)

  1. 水性媒体中に、重合体に包含させた顔料微粒子と、親水性基を有する高分子化合物とを含有させた顔料インク組成物であって、前記親水性基を有する高分子化合物が、前記重合体に包含させた顔料微粒子を調製した後に含有させたものであることを特徴とする顔料インク組成物。
  2. 前記重合体に包含させた顔料微粒子を含有する水分散物と、前記親水性基を有する高分子化合物としてポリビニルアルコールを溶解した溶液とを、前記水分散物調製後に混合してなることを特徴とする請求項1に記載の顔料インク組成物。
  3. 前記重合体が前記顔料微粒子の存在下で重合性化合物を重合したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の顔料インク組成物。
  4. 前記重合性化合物がラジカル重合性化合物であることを特徴とする請求項3に記載の顔料インク組成物。
  5. 前記顔料微粒子の体積平均粒径が100nm未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
  6. 前記顔料微粒子の体積平均粒径が1nm以上50nm未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
  7. 前記顔料微粒子の体積平均粒径が1nm以上30nm未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
  8. 前記顔料微粒子の体積平均粒径(Mv)と個数平均粒径(Mn)との比(Mv/Mn)が1.00以上1.80以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
  9. 前記顔料微粒子が、キナクリドン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、ジスアゾ縮合化合物顔料、またはフタロシアニン化合物顔料からなる群より選ばれた顔料からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
  10. 前記顔料微粒子として複数の種類のものを含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
  11. 前記複数の種類の顔料微粒子が、少なくとも、有機金属錯体顔料微粒子及びこれとは別種の有機顔料微粒子であること特徴とする請求項10に記載の顔料インク組成物。
  12. 前記有機金属錯体顔料微粒子が金属フタロシアンニン微粒子であり、前記別種の有機顔料微粒子が水素フタロシアン微粒子であることを特徴とする請求項11に記載の顔料インク組成物。
  13. 前記複数の種類の顔料微粒子が、少なくとも、互いに金属の異なる複数の種類の有機金属錯体顔料微粒子であること特徴とする請求項10に記載の顔料インク組成物。
  14. 前記顔料微粒子の形成時に分散剤を用い、前記重合体で包含された顔料微粒子と、該重合体包含顔料微粒子側にある前記分散剤と、前記水性媒体側にある前記親水性基を有する高分子化合物とを共存させた請求項1〜13のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
  15. 前記顔料微粒子として、有機顔料を良溶媒に溶解した顔料溶液と、前記良溶媒に対しては相溶性を有し前記有機顔料に対しては貧溶媒となる溶媒とを、前記重合体をなす重合性化合物の共存下で接触させ析出させた微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
  16. 前記顔料微粒子として、有機金属錯体顔料前駆体溶液と金属塩類溶液とを接触させて金属置換反応させ有機金属錯体顔料を生成する金属置換反応工程と、前記有機金属錯体顔料を分散する分散工程とから調製された微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
  17. 前記金属置換反応において、前記金属塩類を2種以上用い、その少なくとも2種の金属塩類の金属原子を互いに異ならせて生成させた、複数の種類の顔料微粒子を含むことを特徴とする請求項16に記載の顔料インク組成物。
  18. 前記分散工程において、前記有機金属錯体顔料を微粒子として分散させ、これと同時もしくは逐次に前記有機金属錯体顔料前駆体の微粒子を析出させ、組成物中に前記顔料微粒子として複数の種類含有させたことを特徴とする請求項15又は16に記載の顔料インク組成物。
  19. 金属塩類溶液と、前記有機金属錯体顔料前駆体及びこれとは別種の有機顔料を含有する混合液体とを接触させて前記前駆体を金属置換反応させ有機金属錯体顔料を生成させる工程と、該有機金属錯体顔料を生成させた液体と、この媒体と相溶性を有し前記別種の有機顔料に対して貧溶媒となる溶媒とを分散剤の共存下で接触させてpHを変化させながら前記有機顔料を微粒子として生成させる工程とから調製される複数の種類の顔料微粒子を含有させたことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
  20. 前記顔料微粒子が、マイクロリアクター装置を用いて形成されたことを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の顔料インク組成物。
  21. 請求項1〜20のいずれか1項に記載の顔料インク組成物を用いて画像記録することを特徴とする画像形成方法。
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