JP2009040368A - 自動車用情報提供装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ドライバーと同乗者との間で状態が異なる場合においても、個々の乗員(ユーザー)別に独立した音声情報提供が可能な自動車用情報提供装置を提供する。
【解決手段】 各座席(D,P,RR,RL)に個別音声情報出力部202,204を設ける。そして、各座席のユーザー状態を検出して、検出されたユーザー状態に応じて各ユーザーに適合する音声情報を、対応する座席の個別音声情報出力部(D,P,RR,RL)から独立に出力する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、自動車用情報提供装置に関する。
特開2007−145225号公報 特開2007−099249号公報 特開2006−282111号公報
特許文献1〜3には、ドライバーの体調や精神状態あるいは性格を特定し、そのドライバーの状態に適合した音声情報(例えば、音楽ソースデータ)を読み出して再生することにより、運転中のドライバーの体調や精神状態の安定化を図ることができ、より快適なドライブの実現に貢献する。
しかし、上記各公報に開示された装置は、同乗者への音声情報提供についてはあまり考慮されておらず、特にドライバーと同乗者との間で状態が異なる場合に、独立した音声情報提供を行なうことができない難点がある。
本発明の課題は、ドライバーと同乗者との間で状態が異なる場合においても、個々の乗員(ユーザー)別に独立した音声情報提供が可能な自動車用情報提供装置を提供することにある。
課題を解決するための手段及び作用・効果
上記の課題を解決するために、本発明の自動車用情報提供装置は、
ユーザーに提供するべき音声情報を記憶した音声情報記憶手段と、
各前記座席に個別に対応する形で個々の座席のユーザーの耳元からは離間した位置にて車室内に取り付けられ、各座席に着座するユーザーにより限定的に聴取可能な形で音声情報を出力する個別音声情報出力部と、
各座席のユーザー状態を検出するユーザー状態検出手段と、
検出されたユーザー状態に応じて音声情報記憶手段から、当該ユーザーに出力するべき音声情報を選択して読み出す音声情報選択手段と、
選択した音声情報を対応する個別音声情報出力部から該情報を出力させる情報出力制御手段と、を有することを特徴とする。
該本発明の構成によると、各座席に個別音声情報出力部を設けるとともに、各座席のユーザー状態を検出して、検出されたユーザー状態に応じて各ユーザーに適合する音声情報を、対応する座席の個別音声情報出力部から独立に出力するようにした。これにより、ドライバーと同乗者との間で状態が異なる場合においても、個々の乗員(ユーザー)別に適合した音声情報を独立に提供することが可能となる。また、個別音声情報出力部からの音声情報は、その座席のユーザーにより限定的に聴取可能な形で出力されるので、他の座席の音声情報が錯綜して聴き取り難くなることもない。
また、ヘッドフォンやイやホーンのごとくユーザーの耳元に直接装着するような個別音声情報出力部は、日常的に利用する自動車の場合は極めて煩わしく、快適なドライブを楽しめることにはならないし、装着を煩わしく感じたユーザーが乗車中に取り外してしまうと技術的な意義は全く損なわれてしまうことにつながる。しかし、本発明においては、個別音声情報出力部は、着座したユーザーの耳元から離間した位置に取り付けられるので、そのような煩わしさがない。
そのような個別音声情報出力部としては、例えば座席に埋設された骨伝導スピーカとすることができる。骨伝導スピーカは人体骨格と組織とを媒介として音声伝達するものであり、音声伝播が可能な骨格の一部が当たっていれば耳元に当てなくても音声情報を聴き取ることができる。しかし、最終的に音声情報を知覚する内耳になるべく近いほうがより鮮明な聴き取りが可能となるので、骨伝導スピーカの取付位置は、例えば座席のヘッドレスト部に埋設することが望ましい。この場合、骨伝導スピーカは人体後頭部や側頭部あるいは頚骨付近に当たることになる。
一方、個別音声情報出力部は、各座席に着座するユーザー別に音像形成されるように、超音波キャリアビームを可聴帯音声信号にて変調した指向性音声情報ビームをユーザーに向け個別に出力する指向性音声情報ビーム出力部を有するものとして構成することもできる。このような指向性音声情報ビーム出力部は、いわゆるパラメトリックスピーカシステムとして知られ、指向性が強い超音波ビームをキャリアとして、可聴帯の音声情報を変調情報としてこれに重畳することで、その超音波ビームの向かう先にあるユーザー位置をいわば狙い撃ちする形で局所的な音像形成が可能となる。その結果、完全非接触にて個々の座席のユーザーに対し限定的な音声情報伝達が可能となり、また、ユーザーの背中や頭が座席から多少離れていても、確実に音声伝達することができる。
上記のような指向性音声情報ビーム出力部は、1つのものを複数座席間で共有し、音声情報の伝達対象ユーザーの方向をその都度向くように駆動して用いることも可能であるが、駆動部が別途必要であり、位置決めシーケンスにも時間を要するので、レスポンス上も問題を生じやすい。そこで、指向性音声情報ビームの出力方向が予め定められた座席に向けて固有に調整されたものを、座席毎に個別に設けておけば、どの座席のユーザーが伝達対象ユーザーになっても、対応する個別の指向性音声情報ビーム出力部により直ちに出力可能である。
なお、個別音声情報出力部に個々に随伴する形で視覚情報を出力するモニター等の視覚情報出力手段を、座席毎に設けることができる。これにより、音声に映像の加わったより多面的な個別情報伝達が可能となる。
次に、本発明の自動車用情報提供装置には、地図データベースと、目的地設定手段と、現在地から設定された目的地までの案内経路を地図データベース上で検索する案内経路検索手段と、検索された案内経路に基づいて案内出力を行なう案内出力手段とを有するカーナビゲーションシステムを設けることができる。ユーザー状態検出手段は、座席のうち、運転席と同乗者用座席との双方にユーザーが着座しているか否かを検出するものとできる。そして、音声情報選択手段は、運転席と同乗者用座席との双方にユーザーが着座していると検出された場合に、音声情報記憶手段から運転席に着座しているユーザーに対し、地図データと対応付けて記憶されているガイド音声情報から、案内経路周辺に位置するものを読み出して、運転席に対応する個別音声情報出力部と同乗者用座席に対応する個別音声情報出力部とのいずれかにのみ出力させるものとして構成できる。
案内経路周辺のガイド音声情報を、運転席にのみ出力できるようにすることで、旅をリードするドライバーは、同乗者に知られることなく案内経路周辺のガイド音声情報を聴き取ることができ、同乗者に向けて気の利いたガイドトーク(例えば、観光スポットや歴史等に係る薀蓄など)を展開することができる。逆に、同乗者用座席にのみ出力できるようにすることで、ドライバーは、さしあたってはガイド音声情報に煩わされることなく運転に集中でき、かつ、運転に関与しない同乗者はガイド音声情報により機嫌よくドライブを継続することができる。
また、本発明においては、各座席のいずれからも聴取可能な形で音声情報を出力する共通音声情報出力手段を設けることができる。そして、音声情報選択手段は、運転席と同乗者用座席との双方にユーザーが着座していると検出され、かつ、目的地まで所定距離範囲内に近付いた場合に、地図データと対応付けて記憶されているガイド音声情報から、目的地周辺に位置するものを読み出して共通音声情報出力手段に出力させるよう構成することができる。目的地に近付いたとき、その目的地周辺のガイド音声情報を乗員全員で共有的に聴取することで、目的地到着への期待を盛り上げることができる。
また、本発明の自動車用情報提供装置には、自動車内の複数の座席に各々着座するユーザーの体調・精神状態を反映したユーザー生体特性情報を個別に取得するユーザー生体特性情報取得手段と、取得したユーザー生体特性情報の内容に基づいて、各座席のユーザーの体調・精神状態をそれぞれ特定する体調・精神状態特定手段とを、設けることができる。情報出力制御手段は、特定された各ユーザーの体調・精神状態に応じた内容の情報を音声情報記憶手段から取得して対応する個別音声情報出力部から出力させるように構成できる。
各座席のユーザーは、精神状態が高揚していたり、逆に落ち込んでいたりすると、それはユーザーの体に何らかの生体反応となって表れる。また、体調不良や疲れなどがある場合も同様である。そこで、ユーザー生体特性情報取得手段によりその生体反応を捉え、その検出情報から各座席のユーザーの精神状態や体調を個別に特定し、各々適合した音声情報をユーザー別に個別に出力することで、精神・体調状態の異なる各座席のユーザーの気分を独立してコントロールすること(例えばよい方向に盛り上げたり、あるいは転換させたりする)ができ、ひいては自動車の利用をより快適なものとすることができる。また、ユーザーが運転者の場合は、安全運転にも寄与することができる。
音声情報記憶手段は、音声情報として複数の音楽ソースデータを体調・精神状態と対応付けた形で記憶するものとして構成できる。情報出力制御手段は、特定された各ユーザーの体調・精神状態に対応する音楽ソースデータを音声情報記憶手段から取得することにより、個々の座席のユーザーの体調・精神状態に応じて異なる音楽を、音楽ソースデータに基づいて対応する個別音声情報出力部により個別に再生出力するよう構成することができる。精神・体調状態の異なる各座席のユーザーの、その時々の気分や体調に合わせ、互いに異なる音楽を、ヘッドフォン等を用いることなく錯綜せずに再生することができ、個々のユーザーは自分の望む音楽を独立して聴取することができる。
また、精神/肉体状態特定手段により、運転席に着座しているユーザーが集中力減退状態にあると特定された場合に、音声情報選択手段は、運転席に対応する共通音声情報出力手段にのみ、該運転席のユーザーを覚醒させる音声出力(例えばインパルス音出力など)を行なうことができる。これにより、同乗者を無用に驚かせたりすることなく、運転者だけを覚醒させることができ、安全運転の強化を図ることができる。
また、精神/肉体状態特定手段により、同乗者用座席に着座しているユーザーが喧騒状態にあると特定された場合に、音声情報選択手段は、該同乗者用座席に対応する共通音声情報出力手段にのみ、該同乗者用座席のユーザーの喧騒状態を緩和させるための音声出力を行なうことができる。これにより、運転者に余分な音声情報を与えることなく同乗者の喧騒状態を沈めることができ、運転者をより運転に集中させることができる。
以下、本発明の実施の形態を添付の図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態を示す自動車用情報提供装置の全体構成を示すブロック図である。要部をなすのは、それぞれマイクロプロセッサとして構成された乗員判定ECU104と、個別空間制御ECU103である。乗員判定ECU104には、自動車の各座席、具体的には運転席D、助手席P、右後部座席RL及び左後部座席RR毎に個別に設けられた乗員検知ユニット201が接続されている。各乗員検知ユニット201は同一の構成を有しており、以下の各センサ類を含む。これらはユーザー生体特性情報取得手段として機能するものである。
・車外用カメラ518:自動車に接近してくるユーザーの姿を撮影する。
・赤外線センサ519:自動車に乗車したユーザーの顔部分からの放射赤外線に基づき、サーモグラフィーを撮影する。体温測定部として機能し、その時間的変化波形を測定することにより、ユーザーの体調状態ないし精神状態を推定することができる。
・着座センサ520:ユーザーが座席に着座したか否かを検出する。図2に示すように、自動車のシートに埋設される近接スイッチ等で構成することができる。
・顔カメラ521:着座したユーザーの顔を撮影する。例えばバックミラー等に取り付けられ、フロントグラス側から運転者を斜め上方から、シートに着座したユーザー(運転者)の顔を含む上半身を撮影する。その画像から顔部分の画像を切り出し、ユーザーの種々の表情を予め撮影して用意されたマスター画像と比較することにより、種々の表情を特定することができる。体調状態ないし精神状態のいずれにおいても、状態が良好な順に表情の序列を決めておき、その序列に従って得点付与することにより(例えば、精神状態の場合、安定を「1」、注意散漫・不安を「2」、興奮・怒りを「3」とするなど)、表情を離散的な数値パラメータ(第二種生体状態パラメータ)として使用することができ、その時間変化を離散的な波形として測定できるので、当該波形に基づき、精神状態ないし体調状態の推定を行なうことも可能である。また、バイオメトリックスによるユーザーの本人認証用にも使用される。さらに、目のアイリスの向きを拡大検出することで、顔や視線の方向を特定することもできる(例えば、やたらに時計の方向を見る場合は、「時間を気にして焦っている」と推定するなど)。また、視線方向の角度の時間的変化波形(真正面を向いているときを基準方向として、その基準方向に対する左右へのぶれ角度を波形変化として検出する)に基づき(第二種生体状態パラメータ)、運転者の体調状態あるいは精神状態を推定するのにも使用される。
・マイクロフォン522:ユーザーの声を検出する。特に、同乗者の喧騒状態を検出する手段としても機能する。
・感圧センサ523:自動車のハンドルやシフトレバーの、ユーザーによる把握位置に取り付けられ、ユーザーの握り力や、握ったり放したりの繰り返し頻度などを検出する。
・血圧センサ524:自動車のハンドルのユーザー把握位置に取り付けられる(ユーザー生体特性情報取得手段)。血圧センサ524の検出する血圧値はその時間的変化が波形として記録され、その波形に基づいて運転者の体調状態ないし精神状態の推定に使用される。
・体温センサ525:自動車のハンドルのユーザー把握位置に取り付けられた温度センサからなる。体温センサ525の検出する体温値はその時間的変化が波形として記録され、その波形に基づいて運転者の体調状態ないし精神状態の推定に使用される。
・皮膚抵抗センサ545:発汗等による体表面の抵抗値を測定する周知のセンサであり、自動車のハンドルのユーザー把握位置に取り付けられる。皮膚抵抗センサ545の検出する皮膚抵抗値はその時間的変化が波形として記録され、その波形に基づいて運転者の体調状態ないし精神状態の推定に使用される。
・網膜カメラ526:ユーザーの網膜パターンを撮影し、バイオメトリックスによるユーザーの本人認証用に使用される。
・アイリスカメラ527:バックミラー等に取り付けられ、ユーザーのアイリス(虹彩)の画像を撮影し、バイオメトリックスによるユーザーの本人認証用に使用される。アイリスの画像を用いる場合、その模様や色の個人性を利用して照合・認証を行なうこともできる。また、アイリスカメラにより撮影された運転者の瞳孔寸法の時間的変化に基づいて、体調状態あるいは精神状態の特定を行なうことができる。
・静脈カメラ528:ユーザーの静脈パターンを撮影し、バイオメトリックスによるユーザーの本人認証用に使用される。
次に、個別空間制御ECU103には、自動車の各座席に個別に設けられた座席別出力ユニット250が接続されている。各座席別出力ユニット250は同一の構成を有しており、以下の各構成要素を含む。
・骨伝導スピーカユニット202:個別音声情報出力部を構成する。図2及び図3に示すように、座席1のヘッドレスト部102に埋め込んで装着される。基本構成は、例えば特許第2967777号公報あるいは特開2003−340370号公報等により公知であり、詳細な説明は略する。
・骨伝導マイク203:図2及び図3に示すように、座席1のヘッドレスト部102に埋め込んで装着される。個々の座席の乗員の会話入力部として機能し、骨伝導にて周囲騒音に影響されることなく声の入力が可能であり、上記の骨伝導スピーカユニット202から出力すれば、喧騒な車内での会話支援にも役立つ。骨伝導マイクの基本構成は、例えば実開昭55−146785号公報、特開昭58−182397号公報、実開昭63−173991号公報あるいは特許第3488749号公報等により公知であり、詳細な説明は略する。
・指向性スピーカユニット202:指向性音声情報ビーム出力部として、公知のパラメトリックスピーカユニット(例えば、特開2006−245753号公報、特開2006−173770号公報及び特開2006−135778号公報等)として構成される。図4にその電気的構成の概略を示す。デジタル包絡変調器202mは、超音波キャリアビームを音源となる可聴帯音声信号にて変調し、その変調信号をアンプ202aに入力する。アンプ202aの出力は超音波放射器202dから指向性音声情報ビームとして出力される。通常、音は、その周波数が20kHz以上であっても歪まないで空気中を伝搬する。しかし、音圧レベルが120db前後を超えると、20kHz以上の素波成分は正弦波波形から歪む非線形特性を有する。そこで、音楽やアナウンスなどの音源(可聴音)をデジタル包絡変調器202mにより、超音波(非可聴音)キャリアを変調する形で取り込み、さらにアンプ202aで増幅して超音波放射器202dから放出すると、超音波はビーム状の高い指向性を持ったまま空気中を伝搬し、その過程で歪みを発生し、その歪み成分が可聴音として聴取される。図5に示すように、指向性スピーカ202(指向性音声情報ビーム出力部)は、指向性音声情報ビームの出力方向が各座席1D,1P,1RR,1Rl(それぞれ着座するユーザーの顔付近をターゲットとする)に向けて固有に調整されたものが、座席1D,1P,1RR,1Rlに一対一に対応する形で設けられている。該指向性スピーカ202は、図5の実施形態では、フロントグラス上方の各座席を見込む位置に取り付けられている。
・モニター205:カラー液晶ディスプレイ等にて構成され、音声情報と同期した映像出力を行なう。
また、各座席間で共用化される構成要素として、カーナビゲーションシステム206が接続されている。図6はカーナビゲーションシステム206の構成例を示すブロック図である。カーナビゲーションシステム206は、位置検出器1101、地図データ入力器1106、操作スイッチ群1107、リモートコントロール(以下リモコンと称する)センサ1111、音声案内などを行なうスピーカ1115(運転席1Dの座席別出力ユニット250(D)に含まれる骨伝導スピーカ202で代用できる)、フラッシュメモリ等で構成された不揮発性メモリ1109、LCD等からなるモニター1110(運転席1Dの座席別出力ユニット250(D)に含まれるモニター205で代用できる)、これらの接続された主制御部をなす情報系ECU1051、リモコン端末1112及び主記憶装置をなすハードディスク装置1121等を備えている。不揮発性メモリ1109には、車両の履歴情報等のナビゲーション装置1100の動作に必要な情報およびデータが記憶されている。
位置検出器1101は、周知の地磁気センサ1102、ジャイロスコープ1103、距離センサ1104、および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPSのためのGPS受信機1105を有している。これらのセンサ等1102,1103,1104,1105は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては前述したうちの一部のセンサで構成してもよく、さらに、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
操作スイッチ群1107は、メカニカルなスイッチ等を使用できるが、本実施形態では、モニター1110と一体になったタッチパネル1122を併用しており、モニター1110上に表示されるボタン画像に対応するタッチパネル領域を指で触れることにより、操作状態を認識できるようにしている(いわゆるソフトボタン)。これら操作スイッチ群1107およびリモコン端末1112によって、種々の指示を入力することが可能である。
操作スイッチ群1107およびリモコン端末1112の他に、音声認識ユニッ1130を用いて種々の指示を入力することも可能である。これは、音声認識ユニット1130に接続されるマイク1131(運転席1Dの座席別出力ユニット250(D)に含まれる骨伝導マイク203で代用できる)から音声を入力することによって、その音声信号を周知の音声認識技術により音声認識処理して、その結果に応じた操作コマンドに変換するものである。
情報系ECU1051は通常のコンピュータとして構成されており、周知のCPU1181、ROM1182、RAM1183、前述の不揮発性メモリ1109、入出力部1184がバス接続されたものである。前述のHDD1121はインターフェース1129fを介してバス接続されている。また、地図やナビ操作画面を表示する描画情報に基づいて、モニター1110に画像出力する機能を担う描画LSI1187と、描画処理用のグラフィックメモリ1187Mとが同様にバス接続され、前述のモニター1110がこれに接続されている。CPU1181は、HDD1121に記憶されたナビプログラム21pおよびデータにより制御を行なう。また、HDD1121へのデータの読み書きの制御はCPU1181によって行なわれる。
HDD1121には、道路データを含む地図データ21mと、目的地データベース21dとが記憶されている。その他に、地点登録など、ユーザーが独自にデータ21uを書き込むことができる。これらのデータは、操作スイッチ群1107およびリモコン端末112の操作あるいは音声入力によって内容の書き換えが可能である。また、外部情報入出力装置(地図データ入力器)1106を用いて記憶媒体120からデータを読み込んでHDD121の内容を更新することも可能である。なお、本実施形態では、通信インターフェース1126及び通信データを一次格納するためのバッファメモリ1126fを介して情報系ECU1051が、車内ネットワークをなすシリアル通信バス1127に接続され、ボデー系ECU1142やエンジン制御ECU(図示せず)などの、車内の他の制御装置との間でデータの遣り取りを行なうようになっている。さらに、地図データや音楽ソースデータあるいは映像データは、無線通信ユニット1143により、基地局1150及び通信網1151を介して情報センター1152からダウンロードが可能である。
図1に戻り、個別空間制御ECU103には、ユーザーに提供するための情報コンテンツをなす映像データベース207、音声データベース208及び音楽データベース209が接続されている。映像データベース207には、映画やその他のエンターテインメントに係る映像音声情報がライブラリー化された形で記憶されている。また、音声データベース208には、ユーザーの状態に応じて種々出力するための音声情報が記憶されている。
図7は、音楽データベース209の一例を示すもので、曲ID、曲名及びジャンルコードと対応付ける形で音楽ソースデータ(例えば、MPEGの音声ストリームデータで構成される)が記憶されている。また、各音楽ソースデータには、その音楽を選曲したユーザーについて推定される性格種別(「活動的」、「おとなしい」、「楽観的」、「悲観的」、「頽廃的」、「体育会系」、「知性派」、「ロマンチスト」など)を示す性格種別コード、同じく年齢コード(「幼児」、「子供」、「ジュニア」、「青年」、「壮年」、「中点」、「熟年」、「敬老」、「年齢無関係」など)、性別コード(「男性」、「女性」及び「性別無関係」)が個々に対応付けて記憶されている。性格種別コードはユーザー性格特定情報の一つであり、年齢コード及び性別コードは、性格とは無関係なサブ分類である。ユーザーの性格が特定できても、年齢層や性別に合わない音楽ソースを選択したのでは、ユーザーを楽しませる「もてなし」としての効果は半減する。従って、ユーザーに提供する音楽ソースの適性をより絞り込むために、上記のようなサブ分類付与は有効である。さらに、各音楽ソースデータには、後述する体調指数PLと精神状態指数SLとが個々に対応付けて記憶されている。これらの指数は、該指数が示す体調ないし精神状態に適合する音楽ソースデータを特定するために事前に付与されたものである。その使用方法については後述する。
以下、自動車用情報提供装置100の動作についてフローチャートを用いて説明する。まず、S1において乗員の存在する座席を特定し、以下は基本的には座席別の処理となる。RDは運転席側の処理を、RPは同乗者用座席側の処理をそれぞれ示しているが、流れの骨格自体は略同一である(以下、運転席側の処理ステップは「S」により、同乗者用座席側の処理ステップは「S’」にて、対応するステップ同士を同じ番号にて表わす。
カーナビゲーションシステム206に目的地を設定した後、S2,S2’では、その目的地に向けて自動車が移動を開始したかどうかを判定する。移動開始していればS3,S3’に進み、移動開始直後の所定期間ないし所定距離内(経過時間t1あるいは走行距離L1)であるか、あるいは、目的地到着直前の所定期間ないし所定距離内(残り時間t2あるいは残り走行距離L2)であるかを判定する。移動開始直後ないし目的地到着直前の該条件を充足する場合はS8に進み、運転席及び同乗者用座席についての共通情報提供処理となる。他方、該条件を充足しない場合(つまり、目的地に向う途上の主要期間内にある場合)はS5,S5’に進み、運転席及び同乗者用座席毎に個別の処理となる。
運転席(D)及び同乗者用座席(P,RL,RR)のいずれにおいても、まず、ユーザーの性格(個性)を特定する処理(S5,S5’)及び体調・精神状態を特定する処理(S6,S6’)を行なう。まず、性格の特定処理は以下のようにして実施できる。自動車のユーザーは、図9に示すように、乗員判定ECU104のROM(書換えが可能となるように、フラッシュROMで構成しておくことが望ましい)等に形成されたユーザー登録部600に予め登録される。このユーザー登録部は、各ユーザー名(あるいは、ユーザーID(及び暗証番号)と、その性格種別とが互いに対応付けられた形で登録されている。この性格種別は、例えば特許文献1〜3に開示されているごとく、ユーザーによる自動車使用継続中に蓄積される、カーオーディオシステムの選曲統計情報に基づいて決定することも可能である。しかし、自動車の使用開始直後など、選曲統計情報の蓄積が不十分な場合、あるいは、操作履歴情報を敢えて収集せずに性格種別を推定したい場合は、性格種別情報又は該性格種別情報を特定するために必要な情報を、ユーザー自身により入力させ、その入力結果に基づいて性格種別を決定するようにしてもよい。例えば、図1のモニター205に、図10に示すごとく性格種別を表示し、ユーザーは自分に適合する性格種別を選んで、別途設けられた入力部からこれを入力することができる。モニター205には入力部としてのタッチパネル529が重ね配置され、性格種別に対応したソフトボタン529Bによりタッチ選択を行なうことが可能である。
次に、精神・体調状態の特定処理であるが、詳細は特許文献1〜3に開示されており、ここでは概略のみを説明する。基本的には、取得した生体状態パラメータの時間的変化を測定し、その変化波形から精神状態と体調状態とを推定する方式を採用する。生体状態パラメータとして「表情」を採用する場合は、図1の顔カメラ521を用い、所定のサンプリング間隔で顔画像を撮影し、マスター画像と順次比較することにより、表情種別(例えば、「安定」、「不安・不快」、「興奮・怒り」)を識別しつつ、その時間的変化を「変化小」、「増」、「微増」あるいは「急増」等として判定する。
生体状態パラメータとして「体温」を採用する場合は、体温センサ525(赤外線センサ519)を用いる。具体的には、一定時間間隔で定められたサンプリングタイミングが到来する毎に検出される体温値をサンプリングし、波形記録するとともに周知の高速フーリエ変換処理を行なって周波数スペクトラムを求め、そのスペクトラムの中心周波数(あるいはピーク周波数)fを演算する。また、波形を一定数の区間に分割し、区間別の体温平均値を演算する。そして、区間毎に、平均体温値を波形中心線として積分振幅を演算し、各区間の積分振幅を平均し、波形振幅の代表値として決定する。決定された周波数fが上限閾値fu0より大きくなっているかどうかを調べ、大きくなっていれば監視中の体温変化が「急」であると判定する。また、周波数fが下限閾値fL0(>fu0)より小さくなっているかどうかを調べ、小さくなっていれば監視中の体温変化が「緩」であると判定する。また、fu0≧f≧fL0ならば、監視中の体温変化は「標準」であると判定する。また、積分振幅A(平均値)の値は閾値A0と比較し、A>A0であれば、監視中の平均体温レベルは「変動」状態にあると判定する。また、A≦A0であれば、監視中の平均体温レベルは「維持(安定)」状態にあると判定する。
生体状態パラメータとして「血圧」を採用する場合は、血圧センサ524により検出される血圧波形の中心周波数(あるいはピーク周波数)fと、区間別の積分振幅A1,A2の平均値Aを演算する。周波数fが上限閾値fu0より大きくなっていれば監視中の血圧変化が「急」であると判定し、下限閾値fL0(>fu0)より小さくなっていれば「緩」であると判定し、fu0≧f≧fL0ならば「標準」であると判定する。また、振幅Aを閾値A0と比較し、A≦A0であれば、監視中の平均血圧レベルは「維持」状態にあると判定し、そうでなければ「変動」状態にあると判定する。血圧検出値の変化が急で変化の方向が「変動」である場合は、精神状態が「集中力散漫」と推定できる。体調不良に関しては、血圧の変動が緩やかとなる。また、血圧は急激に変動する場合は、「興奮(怒り)状態」であることを推定することができる。
生体状態パラメータとして「皮膚抵抗」を採用する場合は皮膚抵抗センサ545を用いる。ここでも同様に皮膚抵抗値をサンプリングし波形記録するとともに、スペクトラムの中心周波数(あるいはピーク周波数)fと区間別積分振幅A1,A2‥を演算する。そして、各区間の積分振幅Aを時間tに対してプロットし、最小二乗回帰して勾配αを求める。周波数fが上限閾値fu0より大きくなっていれば監視中の皮膚抵抗変化が「急」であると判定し、下限閾値fL0(>fu0)より小さくなっていれば「緩」であると判定する。また、fu0≧f≧fL0ならば「標準」であると判定する。さらに、勾配αの絶対値を閾値α0と比較し、|α|≦α0であれば、監視中の平均皮膚抵抗レベルは「一定」状態にあると判定する。また、|α|>α0の場合、αの符号が正であれば監視中の平均皮膚抵抗レベルは「増」状態にあると判定し、負であれば「減」状態にあると判定する。皮膚抵抗検出値の変化が急で変化の方向が「増」である場合は、精神状態が「集中力散漫」と推定できる。体調不良に関しては、軽度のものは皮膚抵抗の時間的変化にそれ程反映されないが、体調不良が進行すると、皮膚抵抗値の変化が緩やかに増加に転ずるので、「重度体調不良」の推定には有効である。また、皮膚抵抗値は急激に減少する場合は、「興奮(怒り)状態」であることを、かなり高精度に推定することができる。
生体状態パラメータとして「姿勢」を採用する場合は、シートに埋設した複数個の着座センサによる姿勢信号を用い、姿勢信号波形の中心周波数(あるいはピーク周波数)fと区間別の積分振幅A1,A2‥の平均値Anと分散Σを演算する。周波数fが上限閾値fu0より大きくなっていれば監視中の姿勢変化速度が「増」であると判定し、下限閾値fL0(>fu0)より小さくなっていれば「減」であると判定する。また、積分振幅Aの平均値Anの値を予め定められた閾値と比較して、姿勢移動量を「変化小」、「微増」および「急増」のいずれかに判定する(平均値Anが大きいほど、姿勢移動量は増加傾向にある)。また、分散Σの値が閾値以上になっている場合は、姿勢移動が増減傾向にあると判定する。姿勢の変化は、基本被特定状態(「体調不良」、「集中力散漫」及び「興奮状態」)の相違に応じて顕著に異なる傾向を示すので、それらを相互識別する上で特に有効なパラメータである。正常であれば、運転中のユーザーは適度に姿勢を保ちながら運転に必要な緊張感を持続される。他方、体調不良が生ずると、辛さを和らげようとして時折姿勢を変える仕草が目立つようになり、姿勢移動量は微増傾向となる。しかし、体調不良がさらに進行すると(あるいは、極度の眠気に襲われた場合)、姿勢が不安定になってぐらつくようになり、姿勢移動は増減傾向となる。このときの姿勢移動は、体のコントロールが利かない不安定なものなので、姿勢移動の速度は大幅に減少する。また、集中力が散漫になっている場合も、姿勢移動はだらしなく増減するが、体のコントロールは利く状態であるから、姿勢移動速度はそれほど減少しない点に違いがある。他方、興奮状態にある場合は、落ち着きがなくなったり、いらいらしたりして姿勢移動は急増し、移動速度も大きくなる。
生体状態パラメータとして「視線角度」を採用する場合は、前述の顔画像中にて瞳孔位置と顔中心位置とを特定するとともに、顔中心位置に対する瞳孔の正面方向からのぶれを演算して視線角度θを求め、その時間的変化波形を取得する。そして、同様に、波形の中心周波数(あるいはピーク周波数)fと、区間別積分振幅A1,A2の平均値An及び分散Σとを演算する。周波数fが上限閾値fu0より大きくなっていれば監視中の視線角度θの変化速度が「増」であると判定し、下限閾値fL0(>fu0)より小さくなってれば「減」であると判定し、fu0≧f≧fL0ならば「正常」であると判定する。また、積分振幅Aの平均値Anの値を予め定められた閾値と比較して、視線角度θの変化量を「変化小」、「微増」および「急増」のいずれかに判定する(平均値Anが大きいほど、視線角度θの変化量は増加傾向にある)。さらには、Aの分散Σの値が閾値以上になっている場合は、視線角度θの変化が増減傾向にある状態、つまり「変調」状態(いわゆる、目がきょろきょろした状態)にあると判定する。視線角度θは、集中力が散漫になった場合に移動量が急増し、また、きょろきょろと変調を来たすようになるので、該集中力散漫と推定する上での有力な決め手となる。また、体調不良が生ずると、その不良の程度に応じて視線移動量が減少するので、体調不良の推定にも有効である。また、興奮状態でも視線移動量は減少するが、体調不良時は、視界に変化が起きた場合に視線がついてゆきにくくなり、移動速度も減少するのに対し、興奮状態では、視界の変化等に鋭敏に反応してこれを睨みつけるなど、時折生ずる視線移動の速度は非常に大きいので、互いに識別することができる。
生体状態パラメータとして「瞳孔径」を採用する場合は、アイリスカメラ527(図1)によりユーザーのアイリスを撮影し、その画像上にて瞳孔径dを決定し、その時間変化波形を取得する。そして、その波形から区間別の瞳孔径平均値dn、区間別の積分振幅A1,A2の平均値An及び分散Σを演算する。瞳孔径平均値dnが閾値d0より大きくなっていれば「瞳孔開」と判定する。また、大きくなっていなければ分散Σが閾値Σ0よりも大きいかどうかを調べ、大きければ「瞳孔径変動」と判定する。また、大きくなければ「正常」と判定する。瞳孔径dは、ユーザーの精神状態に応じて顕著に変化し、特に、特有の瞳孔開状態があるか否かに基づいて、ユーザーが興奮状態にあるか否かを高精度に推定することができる。また、瞳孔径が変動する場合は、集中力散漫であると推定することができる。
生体状態パラメータとして「ステアリング操作状態」を用いる場合は、直線走行時にステアリングのサンプリング及び評価を行なう。具体的には、一定時間間隔で定められたサンプリングタイミングが到来する毎に、操舵角センサの出力により現在の操舵角度φを読み取る(例えば、直進中立状態でφ=0°とし、左右いずれかへの触れ角として定義する(例えば右方向の角度を正、左方向の角度を負とする)。そして、その操舵角度値を波形として取得し、中心周波数(あるいはピーク周波数)fと、区間別の積分振幅A1,A2‥及びその分散Σを演算する。周波数fが上限閾値fu0より大きくなっていれば操舵角度φの変化速度が「増」であると判定し、下限閾値fL0(>fu0)より小さくなっていれば「減」であると判定し、fu0≧f≧fL0ならば「正常」であると判定する。また、積分振幅Aの分散Σが閾値Σ0よりも大きければ操舵誤差が「増」と判定し、大きくなければ「正常」と判定する。操舵誤差の増大を検知することで、運転者が集中力散漫状態や興奮状態にあることを推定できる。他方、重度の体調不良(居眠り状態を含む)が発生した場合も、正常な操舵が妨げられるので、誤差の増大傾向からこれを推定することができる。他方、体調不良や集中力の散漫化は操舵への反応が遅れがちになり、操舵速度の減少からこれを推定することができる。また、興奮状態では、いらいらして急ハンドルを切りがちになるので、操舵速度の増加からこれを推定することができる。
このようにして得られた生体状態パラメータの時間的変化に係る判定結果を用いて、ユーザーの具体的な体調/精神状態の判定(推定)が行なわれる。具体的には、乗員判定ECU104内に、図11に示すように、ユーザーの判定すべき精神状態と体調状態との組み合わせである複数の被特定状態と、個々の被特定状態が成立していると判定するための、複数のユーザー生体特性情報取得手段がそれぞれ検出しているべき生体状態パラメータの時間的変化状態の組み合わせとを対応付けて記憶した判定テーブル1601が記憶されている。また、この判定テーブル1601には、各体調/精神状態に対応する体調指数PL及び精神状態指数SLの各値も記憶されている。
本実施形態では、被特定状態として、「正常」、「集中力散漫」、「体調不良」、「興奮状態」及び「落胆」が定められている。なお、「体調不良」は複数レベル、ここでは「軽度体調不良」と「重度体調不良」との2レベルに分割されている。なお、「集中力散漫」及び「興奮状態」についても、よりきめ細かい精神/体調状態の推定を行なうために、これを複数レベルに分けて定めることが可能である。なお、本実施形態では、上記の基本被特定状態に対し、体調系のものと精神状態系のものとの複合状態についても、生体状態パラメータの時間的変化状態の組み合わせが独自に定められ、これらの複合状態の推定精度向上を図っている。さらに、もてなし動作の不適合や程度の不足あるいは過剰等により、ユーザーがある種の不快感を感じている場合、該ユーザーは軽度体調不良と同様の生体状態を示すことが多く、本実施形態では該「不快感」と「軽度体調不良」とを被特定状態として統合している(もちろん、関与する複数のパラメータ構成の閾値変更等により、両者を分離して特定するようにしてもよい)。
個々の被特定状態に対応する体調指数PL及び精神状態指数SLの値の設定例を、判定テーブル1601内に示している。いずれも、最大値(ここでは「10」)と最小値(ここでは「0」)を有する一定の範囲内の数値として定められているが、「正常」に対応するのは、体調指数については、数値範囲の最大値(ここでは「10」)であり、ここから数値が減少するほど体調が悪いことを示す。他方、精神状態指数SLは、「正常」に対応するのが数値範囲の中間値(つまり、精神的に「安定」もしくは「中庸」であることを示す:ここでは「5」としているが、必ずしも中央値である必要はない)であり、最大値側に振れると「高揚ないし興奮」状態であることを、最小値側に振れると「沈んだ、ないし落胆」状態であることを示す。
この、判定テーブル1601によると、集中力散漫のときは表情の変化が急増し、体調不良や興奮状態の場合も表情の変化は増加する傾向にある。いずれも正常時とは異なる状態であることは識別できるが、個々の精神/体調状態を詳細に識別することは難しい。他方、体温の状態について見れば、集中力散漫のときは特に大きな変化がない(つまり、正常時とほぼおなじ)のに対し、体調不良時は緩やかな変化を示し、興奮状態の場合は非常に急激な変化を呈する。従って、この両者を組み合わせれば、「集中力散漫」、「体調不良」及び「興奮状態」を互いに識別することが可能となる。
基本的には、複数(ここでは、表情と体温の2つ)の生体状態パラメータについて判定テーブル上の被照合情報と照合し、照合一致した組み合わせに対応する被特定状態を現在成立している被特定状態として特定する処理を行なう。すなわち、各生体状態パラメータの時間的変化に係る判定結果(例えば、「急減」や「増加」など)をリードする。各被特定状態が成立していると判定するためには、判定テーブル1601における個々の生体状態パラメータがどのような変化傾向を示していればよいかを表す被照合情報と、上記判定結果とを照合し、被照合情報と判定結果とが一致した被特定状態の照合カウンターをインクリメントする。この場合、例えば、全ての生体状態パラメータについて、被照合情報と判定結果とが一致した被特定状態のみを採用する処理としてもよいが、参照する生体状態パラメータが多い場合は、被照合情報と判定結果とが全ての生体状態パラメータについて一致するのが稀となり、ユーザーの体調状態あるいは精神状態の推定を柔軟に行なうことができなくなる。従って、照合カウンターの得点(N)を「一致度」とみなして、最も得点の高いもの、つまり一致度の最も高いものを、被特定状態として確定させる方法が有効である。
なお、例えば平均血圧レベルが「変動」と判定された場合のように、同じ生体状態パラメータの状態が複数の被特定状態(「集中力散漫」あるいは「興奮状態」)への成立に肯定的に寄与する場合もあるが、この場合は、それら各被特定状態の照合カウンターをインクリメントする。例えば、平均血圧レベルが「変動」と判定された場合は、4つの照合カウンター値N1,N4,N5,N6がインクリメントされる。
他方、被照合情報と判定結果との一致不一致は、既に種々説明したごとく、生体状態パラメータ(周波数あるいは振幅等)の閾値との比較で判断されているものがほとんどであり、上記のように一致/不一致を二値的(つまり、シロかクロか)に決定する際に、実際のパラメータの指示値と閾値との偏差がどの程度であったかは情報として埋没することになる。しかし、実際には、閾値に近接した値で一致/不一致が決定される場合は、いわば「グレー」の判定であり、閾値から隔たった(例えば閾値を大幅にクリアした)形で一致/不一致が決定される場合と比較して、判定結果への寄与の度合いを小さく扱うようにすることが本来的には望ましい。
これを解決する方法としては、被照合情報と判定結果とが完全に一致した場合にのみ照合カウンターへの加算を行なうようにするのに代え、完全一致せずとも、定められた範囲内で近接した結果が得られた場合は、完全一致の場合よりも低い得点に制限しつつ、これを照合カウンターへ加算することが考えられる。例えば、被照合情報が「急増」となっている場合、判定結果も「急増」であれば3点を、「増」の場合は2点を、「微増」の場合は1点を加算する方式を例示できる。
こうして、各座席のユーザーの性格及び精神・体調状態が特定されればS7,S7’に進み、個別情報提供処理となる。図12に示すごとく、S51にて各座席の乗員を認証し、ユーザー登録部600に登録されているどのユーザーであるかを個別に判定する。そして、そのユーザーの性格と精神・体調状態が把握できればS52に進み、コンテンツ選定処理となる。具体的には図7の音楽ソースデータベール209にて、特定された性格、精神状態指数及び体調状態指数に対応する曲の音楽ソースデータを読み出す。S53では、その読み出した音楽ソースデータを再生し、個々のユーザーが着座している座席に対応する指向性スピーカユニット204から超音波ビームの形で個別に出力する。ユーザー毎に全て違う音楽が再生される場合でも、各指向性スピーカユニット204からの音像は対応する各ユーザーの近傍に限定されるので、各ユーザーは隣の座席の再生状態に錯綜されることなく、個別の音楽を楽しむことができる。
上記の音楽再生処理については、運転席および同乗者用座席にいずれについても適用可能であるが、映像の視聴に没頭できる同乗者用座席のユーザーについては、モニター205を併用した音声映像の再生処理を行なうことも可能である。音声映像のデータは、図1の映像データベース207において、基本的には図7の音楽ソースデータと同様のデータ構造にて記憶されており、特定された性格、精神状態指数及び体調状態指数に対応するものが読み出されて再生される。この場合、個々の座席別出力ユニット250に設けられたマイク203により、各座席に着座しているユーザーの喧騒度を平均音圧等により検出することができる。そして、子供など、特に騒がしいユーザーの座席のモニター205及び指向性スピーカユニット204に、子供の興味を引く映像コンテンツ(例えば、アニメーションや子供向けエンターテインメントあるいはアクションなど)を出力することができる。これにより、騒がしかった子供たちは再生されるコンテンツに没頭し、喧騒な状態が和らげられるので、ドライバーは運転に集中することができる。
一方、運転席のドライバーの精神・体調状態が、例えば集中力散漫(あるいは極度の眠気に襲われた状態)と特定された場合は、図1の音声データベースから、ブザー音等のインパルス状警告音のデータを読み出し、運転席に対応する骨伝導スピーカユニット202にのみその出力を行なう。これにより、ドライバーを効果的に覚醒させることができる。また、指向性スピーカユニット204からドライバーに向け再生中の音楽の音量をアップしたり、パーカッション強打や絶叫歌唱あるいはピアノ不協和音など、気分覚醒に効果のある音楽(例えば、フリージャズ、ハードロック、ヘヴィーメタル、前衛系音楽など)に切り替えて再生したりすることも効果的である。いずれも、処理に対応した音響的効果は、ドライバーに対応した指向性スピーカユニット204や骨伝導スピーカユニット202においてのみ実現されるので、同乗者用座席のユーザーにその影響が及ぶことがない。
なお、骨伝導マイク203を用いれば、個々の座席からコンテンツ選択のための音声入力を行なうことも可能である。図13にその処理の流れを示している。すなわち、S61で骨伝導マイク203からの音声入力があれば、その座席を特定し、S63で、例えば対応するモニター205にコンテンツ内容を表示するなど、コンテンツ選択を促す処理を行なう。そして、S63では、タッチパネル等を用いたユーザー個別のコンテンツ選択処理となり、S64で対応する座席の骨伝導スピーカユニット204のスイッチがONになっていることを確認し、対応する骨伝導スピーカユニット204に向けてコンテンツの音声出力を行なう。
次に、図1の音声データベース208には、図6のカーナビゲーションシステム206の地図データ21mとリンクする形で、図14に示すように、地図上の各ガイドスポット地点と対応させた形でガイド音声情報が記憶されている。そして、カーナビゲーションシステム206上で検索された案内経路上にて、自動車の現在位置の周辺(例えば半径r以内)に存在するガイドスポット名を検索し、対応するガイド音声情報を読み出すことができる。このとき、図15に示すように、カーナビゲーションシステム206側では、検索されたガイドスポット名が、案内経路に沿った進行方向にて右側と左側のどちらに位置するのか(あるいは前方なのか、後方なのか)を地図上で判定し、ガイド音声情報を、例えば自動車の現在地が図14のような状態にある場合には、次のように加工した形で出力する:
「左前方に見えるのは、昔ばなしで名高いカチカチ山です。また、右側に見えるのは、狸がウサギに沈められたと伝えられる泥船湖です。」
そして、各座席の着座センサ520の検出状態により、運転席(D)と同乗者用座席(P,RR,RL)との双方にユーザーが着座していることが特定された場合は、上記のガイド音声情報を運転席の骨伝導スピーカユニット202にのみ出力させることが可能である。これにより、同乗者に知られることなく案内経路周辺のガイド音声情報を聴き取ることができ、同乗者に向けて気の利いたガイドトーク(例えば、観光スポットや歴史等に係る薀蓄など)を展開することができる。ただし、同乗者用座席(P,RR,RL)のにのみ骨伝導スピーカユニット202にのみ出力することも可能である。
本発明の自動車用情報提供装置の電気的構成の一例を示すブロック図。 座席配置状態を指向性音声情報ビームの出力形態と合わせて示す平面模式図。 座席の一例を、骨伝導スピーカ等の埋設位置とともに示す斜視図。 パラメトリックスピーカシステムの概略構成例を示すブロック図。 パラメトリックスピーカの車室内への取付位置を指向性音声情報ビームの出力形態とと合わせて示す斜視図。 カーナビゲーションシステムの電気的構成の一例を示すブロック図。 音楽ソースデータベースの構成例を示す模式図。 図1の自動車用情報提供装置の動作の流れを示すフローチャート。 ユーザー登録部の概念を示す図。 性格入力インターフェースの一例を示す模式図。 判定テーブルの一例を示す模式図。 指向性音声情報ビームによるコンテンツ出力の処理流れを示すフローチャート。 骨伝導マイクを用いたコンテンツ選択処理の流れを示すフローチャート。 ガイド音声情報の記憶形態を示す模式図。 ガイド音声情報を出力する際の、カーナビゲーションシステムの画面出力状態の一例を示す模式図。
符号の説明
103 個別空間制御ECU(音声情報選択手段、情報出力制御手段)
201 乗員検知ユニット(ユーザー状態検出手段、ユーザー生体特性情報取得手段)
202 骨伝導スピーカユニット(個別音声情報出力部)
204 指向性スピーカユニット(個別音声情報出力部)
206 カーナビゲーションシステム
208 音声データベース(音声情報記憶手段)
209 音楽ソースデータベース(音声情報記憶手段)

Claims (12)

  1. ユーザーに提供するべき音声情報を記憶した音声情報記憶手段と、
    各座席に個別に対応する形で個々の座席のユーザーの耳元からは離間した位置にて車室内に取り付けられ、各座席に着座するユーザーにより限定的に聴取可能な形で音声情報を出力する個別音声情報出力部と、
    各前記座席のユーザー状態を検出するユーザー状態検出手段と、
    検出されたユーザー状態に応じて前記音声情報記憶手段から、当該ユーザーに出力するべき音声情報を選択して読み出す音声情報選択手段と、
    選択した音声情報を対応する個別音声情報出力部から該情報を出力させる情報出力制御手段と、
    を有することを特徴とする自動車用情報提供装置。
  2. 前記個別音声情報出力部は、前記座席に埋設された骨伝導スピーカである請求項1記載の自動車用情報提供装置。
  3. 前記骨伝導スピーカは前記座席のヘッドレスト部に埋設されている請求項2記載の自動車用情報提供装置。
  4. 前記個別音声情報出力部は、各前記座席に着座するユーザー別に音像形成されるように、超音波キャリアビームを可聴帯音声信号にて変調した指向性音声情報ビームを前記ユーザーに向け個別に出力する指向性音声情報ビーム出力部を有する請求項1記載の自動車用情報提供装置。
  5. 前記指向性音声情報ビーム出力部は、前記指向性音声情報ビームの出力方向が予め定められた座席に向けて固有に調整されたものが、座席毎に個別に設けられている請求項4記載の自動車用情報提供装置。
  6. 前記個別音声情報出力部に個々に随伴する形で視覚情報を出力する視覚情報出力手段が、前記座席毎に設けられている請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の自動車用情報提供装置。
  7. 地図データベースと、目的地設定手段と、現在地から設定された目的地までの案内経路を前記地図データベース上で検索する案内経路検索手段と、検索された案内経路に基づいて案内出力を行なう案内出力手段とを有するカーナビゲーションシステムを備え、
    前記ユーザー状態検出手段は、前記座席のうち、運転席と同乗者用座席との双方にユーザーが着座しているか否かを検出するものであり、
    前記音声情報選択手段は、運転席と同乗者用座席との双方にユーザーが着座していると検出された場合に、前記音声情報記憶手段から前記運転席に着座しているユーザーに対し、前記地図データと対応付けて記憶されているガイド音声情報から、前記案内経路周辺に位置するものを読み出して、前記運転席に対応する前記個別音声情報出力部と前記同乗者用座席に対応する前記個別音声情報出力部とのいずれかにのみ出力させる請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の自動車用情報提供装置。
  8. 地図データベースと、目的地設定手段と、現在地から設定された目的地までの案内経路を前記地図データベース上で検索する案内経路検索手段と、検索された案内経路に基づいて案内出力を行なう案内出力手段とを有するカーナビゲーションシステムと、
    各前記座席のいずれからも聴取可能な形で音声情報を出力する共通音声情報出力手段とを有し、
    前記ユーザー状態検出手段は、前記座席のうち、運転席と同乗者用座席との双方にユーザーが着座しているか否かを検出するものであり、
    前記音声情報選択手段は、運転席と同乗者用座席との双方にユーザーが着座していると検出され、かつ、前記目的地まで所定距離範囲内に近付いた場合に、前記地図データと対応付けて記憶されているガイド音声情報から、前記目的地周辺に位置するものを読み出して前記共通音声情報出力手段に出力させる請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の自動車用情報提供装置。
  9. 自動車内の複数の座席に各々着座するユーザーの体調・精神状態を反映したユーザー生体特性情報を個別に取得するユーザー生体特性情報取得手段と、
    取得したユーザー生体特性情報の内容に基づいて、各座席の前記ユーザーの体調・精神状態をそれぞれ特定する体調・精神状態特定手段とを有し、
    前記情報出力制御手段は、特定された各ユーザーの体調・精神状態に応じた内容の情報を前記音声情報記憶手段から取得して対応する個別音声情報出力部から出力させる請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の自動車用情報提供装置。
  10. 前記音声情報記憶手段は、前記音声情報として複数の音楽ソースデータを体調・精神状態と対応付けた形で記憶するものであり、
    前記情報出力制御手段は、特定された各ユーザーの体調・精神状態に対応する音楽ソースデータを前記音声情報記憶手段から取得することにより、個々の座席のユーザーの体調・精神状態に応じて異なる音楽を、前記音楽ソースデータに基づいて対応する個別音声情報出力部により個別に再生出力させる請求項9記載の自動車用情報提供装置。
  11. 前記精神/肉体状態特定手段により、前記運転席に着座しているユーザーが集中力減退状態にあると特定された場合に、前記音声情報選択手段は、前記運転席に対応する共通音声情報出力手段にのみ、該運転席のユーザーを覚醒させる音声出力を行なう請求項9記載の自動車用情報提供装置。
  12. 前記精神/肉体状態特定手段により、前記同乗者用座席に着座しているユーザーが喧騒状態にあると特定された場合に、前記音声情報選択手段は、該同乗者用座席に対応する共通音声情報出力手段にのみ、該同乗者用座席のユーザーの喧騒状態を緩和させるための音声出力を行なう請求項9記載の自動車用情報提供装置。
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