JP6115577B2 - 車両用乗員感情対応制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用乗員感情対応制御装置に関し、特に運転者と同乗者との一体感を形成可能な車両用乗員感情対応制御装置に関する。
従来より、乗員の望む形態で車載装置の動作を車両が自律的に制御する車両用もてなしシステムが知られている。
特許文献1の車両用もてなしシステムは、乗員の生体情報を取得する生体情報取得手段と、乗員の生体情報に基づいて乗員の体調・精神状態を特定する体調・精神状態特定手段と、特定された体調・精神状態に基づいてもてなし動作部によるもてなし動作の内容を定めるもてなし意思決定部と、対応するもてなし動作部の動作制御を行うもてなし実行制御部とを備えている。これにより、もてなし対象者である乗員が個々のシーンで欲する種類のもてなし内容を車両が自律的に実行している。
特許文献2のユーザの心理状態判断装置は、スマートフォン等の移動端末を保持したユーザを対象にしたものであるが、ユーザ動作に基づくセンサデータから特徴データを抽出するデータ処理部と、特徴データを推論モデルに適用して心理状態を判断する心理状態判断部と、心理状態に適合した措置を実行する措置実行部とを備えている。心理状態判断部は、特徴データを指導学習アルゴリズム(決定木等)の1つを用いた推論モデルに適用して心理状態を判断している。
特許第4332813号公報 特願2014−94291号
複数の乗員が一緒にドライブする際、乗車前の状況や休憩中の状況或いはその時の体調等が乗員毎に異なるため、同乗している乗員の感情も異なっていることが少なくない。
このような場合、運転者は、走行中、各々の同乗者への気配りを余儀なくされることから、運転負荷に加えて同乗者を配慮するための負荷(以下、気配り負荷という)が付加的に発生し、疲労が増大することがある。特に、運転者は、同乗者との一体感を得られない場合、運転者の気配り負荷は更に大きなものになる。
特許文献1の車両用もてなしシステムでは、もてなし対象者が運転者或いは序列順位が最も上位に位置する乗員に予め一義的に設定されているため、もてなし対象者である乗員は個々の運転状況(シーン)に応じて感情の改善が図られている。
しかし、もてなし対象者以外の乗員の感情変化は一切考慮されておらず、運転者と同乗者との感情の同一性を図るものではない。しかも、運転者が同乗者の同意が欲しい場合であっても、同乗者が疲れているときには、同乗者に煩わしさが生じることがあり、また、運転者が不快感を表した場合には、同乗者にも不快感が伝わるため、運転者と同乗者との一体感を図る上で解決すべき課題が存在している。
本発明の目的は、運転者と同乗者との一体感を良好に形成可能な車両用乗員感情対応制御装置等を提供することである。
請求項1の車両用乗員感情対応制御装置は、運転者と同乗者からなる複数の乗員の複数種類の生体情報を夫々検出する生体情報検出手段と、前記生体情報検出手段によって検出された生体情報に基づき前記複数の乗員の感情を夫々推定する感情推定手段と、前記複数の乗員の感情を改善可能な感情改善手段と、前記感情改善手段を制御する制御手段とを備えた車両用乗員感情対応制御装置において、前記制御手段は、前記感情推定手段によって推定された複数の乗員の感情を比較する乗員感情比較部と、前記運転者の感情変化の要因を記録する記録部とを備え、前記運転者の感情変化があり且つ前記複数の乗員の感情が互いに接近しているとき、前記運転者の感情変化の要因を前記感情改善手段を介して前記同乗者に提供することを特徴としている。
この車両用乗員感情対応制御装置では、制御手段は、感情推定手段によって推定された複数の乗員の感情を比較する乗員感情比較部と、運転者の感情変化の要因を記録する記録部とを備えているため、複数の乗員が共感を発生し易い類似感情状態か否かを判定することができ、運転者の感情変化の要因を確保することができる。
制御手段は、運転者の感情変化があり且つ複数の乗員の感情が互いに接近しているとき、運転者の感情変化の要因を感情改善手段を介して同乗者に提供するため、同乗者の感情を悪化させることなく、同乗者による運転者への共感によって乗員間の感情の同一性を確保でき、運転者は運転に集中することができる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記感情推定手段が前記複数の乗員の感情変化の推移を乗員毎に記憶するマップ手段を有し、前記制御手段は前記マップ手段に基づき前記感情改善手段を制御することを特徴としている。
この構成によれば、複数の乗員毎の感情変化の推移を容易且つ正確に追跡することができ、簡単な構成で感情改善手段を制御することができる。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記複数の乗員の感情が互いに離隔しているとき、前記複数の乗員の感情を接近させるように前記感情改善手段を制御することを特徴としている。
この構成によれば、複数の乗員の感情を同一感情領域へ移行させることができ、容易に共感を発生させることができる。
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れか1項の発明において、前記生体情報検出手段は車両前方の周辺状況を撮像可能なカメラ装置を備えると共に前記感情改善手段は1又は複数のディスプレイモニタを備えることを特徴としている。
この構成によれば、運転者の感情変化の要因を同乗者へ確実に伝達することができる。
本発明の車両用乗員感情対応制御装置によれば、運転者と同乗者との一体感を良好に形成することができる。
実施例1に係る乗員感情対応制御装置の全体概略斜視図である。 乗員感情対応制御装置のブロック図である。 (a)は生体情報と快度との相関関係を示す表であり、(b)は生体情報と活性度との相関関係を示す表である。 乗員感情を3軸平面で表現したマップである。 乗員感情対応制御装置の制御処理を示すフローチャートである。 優先モードの制御処理を示すフローチャートである。 通常モードの制御処理を示すフローチャートである。 類似感情状態を示すマツプの例である。 第1個別制御のときのマップの例である。 第2個別制御のときのマップの例である。 第3全体制御のときのマップの例である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明は、本発明を車両Vに適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
以下、本発明の実施例1について図1〜図11に基づいて説明する。
乗員感情対応制御装置1は、車両Vに乗車することによって、運転者と同乗者が共にわくわく感を感じるように車両Vから自律的に乗員感情に働きかける乗員支援装置である。
図1,図2に示すように、この乗員感情対応制御装置1は、運転者である乗員P1と助手席に着座した乗員P2と左右後部座席に夫々着座した乗員P3,P4の複数種類の生体情報を夫々検出する生体情報検出手段2と、これら生体情報検出手段2によって検出された生体情報に基づき乗員P1〜P4の感情を夫々推定する感情推定手段11と、乗員P1〜P4の精神的な感情を改善可能な感情改善手段3と、これら感情改善手段3を制御する制御手段12等を備えている。
まず、生体情報検出手段2について説明する。
図1,図2に示すように、生体情報検出手段2は、主に、車両Vの前方を含む周辺風景を撮像する車外カメラ21と、乗員P1,P2を夫々撮像する1対の前席用カメラ22a,22bと、乗員P3,P4を夫々撮像する1対の後席用カメラ22c,22dと、乗員P1〜P4が夫々携帯しているスマートフォンからなるユーザ端末23と、運転支援装置24等を備えている。
車外カメラ21及びカメラ22a〜22dで撮像された画像は、静止画及び動画を記憶可能な記録部15に夫々蓄積されている。
前席用カメラ22a,22bは、例えばインスツルメントパネルの上部に夫々装着され、乗員P1,P2の顔を含む上半身を夫々撮像する。撮像された上半身の画像は、顔部分の画像を切り出して表情の特定、目のアイリス(虹彩)を拡大検出して瞳孔寸法と視線方向の特定、画像の重心位置と乗員P1,P2の上半身の形状に基づいて姿勢の特定に用いられる。同様に、後席用カメラ22c,22dは、例えば左右のシートバックモニタ39の近傍位置に夫々装着され、乗員P3,P4の顔を含む上半身を夫々撮像する。撮像された上半身の画像は、顔部分の画像を切り出して表情の特定、目のアイリスを拡大検出して瞳孔寸法と視線方向の特定、画像の重心位置と乗員P3,P4の上半身の形状に基づいて姿勢の特定に用いられる。
ユーザ端末23は、各種情報を外部サーバ25を介して又は直接的に車両Vと通信可能に構成されている。このユーザ端末23は、乗員P1〜P4の心拍数を取得する心拍センサと、呼吸数を取得する呼吸センサと、血流速度を取得する血流速度センサと、皮膚電気抵抗値を取得する皮膚電気抵抗センサを備えている(何れも図示略)。
ユーザ端末23は、GNSS(Global Navigation Satellite System)機能と商品購入の決済機能等を備え、乗員P1〜P4の歩行距離、歩行時間、所定位置における滞在時間、商品の取引履歴等に関する行動履歴を取得可能である。
また、このユーザ端末23は、乗員P1〜P4のキーボード入力情報と筆記入力情報を検出可能に構成されている。キーボード入力情報は、キーボードへのタイプ速度、削除されたテキスト長、特殊記号の使用頻度、打ち間違い率等であり、筆記入力情報は、ペン入力時の筆記入力速度、平均筆圧、筆記入力規則性、入力キーワード等である。
しかも、予めドライブアプリが導入されたユーザ端末23は、スケジューラに入力されたスケジュール情報によって、ドライブの日程、出発時刻、所要(走行)時間、同乗者情報(家族、客等の種別)を検出可能に構成されている。ユーザ端末23は、インスツルメントパネル内のアンテナ(図示略)とbluetooth(登録商標)による通信によってスケジュール情報を車両Vに伝達する。
運転支援装置24は、車両Vの走行状態を判定し、所定の運転操作状態に関する運転評価情報をメータパネル4に表示するスマートドライブサポートシステムである。
この運転支援装置24は、乗員P1の運転状態を所定の判定基準によって、適度な加速度変化のあるしなやかな運転状態と、急激な加速度変化のあるゆれる運転状態と、ゆっくりな加速度変化のあるやさしい運転状態とに分類し、この判定結果をメータパネル4に表示している。乗員P1は、この情報に基づいて学習することにより、運転操作の技術を向上することができる。尚、運転支援装置24の具体的な構成は、本出願人が既に出願しているため、詳細な説明を省略する(特開2012−106714号公報参照)。
次に、感情改善手段3について説明する。
感情改善手段3は、乗員P1〜P4の五感に作用する感覚を介して乗員P1〜P4の感情を改善可能に構成されている。
図1,図2に示すように、感情改善手段3は、乗員P1〜P4に作用する複数の車載装置としての感覚誘導部31〜39を有し、感覚誘導部31〜39は、乗員P1〜P4が共通に知覚可能な誘導媒体を出力可能な複数の共通感覚誘導部3aと、乗員P1〜P4が個別に知覚可能な誘導媒体を出力可能な複数の個別感覚誘導部3bとを備えている。
共通感覚誘導部3aは、乗員P1〜P4に夫々対応した送風口を有する空調装置31と、車体側に設けられたオーディオシステムの一部を構成するスピーカ32と、左右1対のヘッドライト34と、窓枠可変装置35と、可変ステアリング装置36等を備えている。
共通感覚誘導部3aは、乗員P1の運転動作を誘導する運転動作誘導部3cを有している。運転動作誘導部3cは、ヘッドライト34、窓枠可変装置35、可変ステアリング装置36、ディスプレイモニタ37(以下、モニタ37と略す)を有するナビゲーションシステムとが相当している。
尚、乗員P1の運転動作を誘導する運転動作誘導部3cは、乗員P1にとっては個別感覚誘導部3bに相当するものの、乗員P2〜P4にとっては共通感覚誘導部3aに相当するため、本実施例では主に共通感覚誘導部3aに分類している。。
LEDヘッドライトを用いているヘッドライト34は、乗員P1に生じる緊張状態を緩和するため、車道外に設置された反射板からの反射光の発生を抑制する運転支援装置の一部を構成している。このヘッドライト34は、乗員P1が緊張状態であり且つ車両Vの前方の周辺状況が乗員P1を緊張させる状況(例えば路肩等に設置された反射板からの反射光の発生)のとき、ロービームLEDの照射範囲を下方向へ自律的に移動させるように構成されている。尚、ヘッドライト34に係る運転支援装置の具体的な構成は、本出願人が既に出願しているため、詳細な説明を省略する(特願2014−247801号参照)。
窓枠可変装置35は、フロントウインドガラスを介した視界の増減によって、乗員P1の知覚速度を人為的に増加又は減少させることができ、乗員P1に高い運転技量の運転操作を経験させることができる運転支援装置である。この窓枠可変装置35は、フロントウインドガラスの両端部分の透過率が多段階に変更可能に形成され、両端部分の透過率を低下(視界減少)させることにより乗員P1の知覚速度を減少させ、両端部分の透過率を増加(視界拡大)させることにより乗員P1の知覚速度を増加させるように構成されている。
尚、窓枠可変装置35に係る運転支援装置の具体的な構成は、本出願人が既に出願しているため、詳細な説明を省略する(特願2014−120871号参照)。
可変ステアリング装置36は、車両Vが乗員P1の精神状態を自動判定又は乗員P1が自己選択して、ステアリングホイール5の操作感覚を切替える運転支援装置である。
この可変ステアリング装置36は、乗員P1がわくわく感、軽快感、重厚感、リニア感を夫々知覚可能な操舵力特性を設定し、選択された操舵フィーリングに応じてステアリングホイール5の操作感覚を変更するように構成されている。
尚、可変ステアリング装置36に係る運転支援装置の具体的な構成は、本出願人が既に出願しているため、詳細な説明を省略する(特願2014−099234号参照)。
ナビゲーションシステムは、インスツルメントパネルの中段部に配設され、車両Vの位置検出器、地図データ入力器、音声出力用スピーカー、モニタ37等を備えている。
モニタ37は、カラー液晶表示器によって構成され、CDプレイヤ、HDDプレイヤ、テレビ、ナビゲーション等の動画を表示可能に構成されている。このモニタ37は、操作スイッチ群が表示されたタッチパネルと併用され、CDプレイヤ操作位置、HDDプレイヤ操作位置、テレビ操作位置、空調操作位置、ナビゲーション操作位置を接触操作することにより、各装置を起動させることができる。
個別感覚誘導部3bは、4つの照明装置33と、各座席のヘッドレストに夫々配設された4つの個別スピーカ38と、左右前部座席の後部に夫々配設された左右1対のシートバックモニタ39等を備えている。
4つの照明装置33は、各座席側方のピラーに夫々設けられ、乗員P1〜P4に夫々対応するように配設されている。これら照明装置33は、照明光の周波数及び光量が調整可能に構成されている。照明光は、波長の長い赤系、中波長の緑系、波長の短い青系に多段階に切替えることができ、光量を多段階に切替えることができる。
個別スピーカ38は、出力される音声信号の位相特性を調整可能に夫々構成されている。
個別スピーカ38は、スピーカ32から出力される音声信号位相特性に対して互いに180度異なるように音声信号位相特性を設定することにより、個別スピーカ38に対応する乗員が認識するスピーカ32の音声(音量)を擬似的に消音することができ、また、ロードノイズの位相特性に対して同位相又は逆位相になるように音声信号位相特性を設定することにより、個別スピーカ38に対応する乗員が認識するロードノイズを擬似的に強調(増幅)又は消音することができる。
シートバックモニタ39は、カラー液晶表示器によって構成され、CDプレイヤ、HDDプレイヤ、テレビ等の動画を表示可能に構成されている。このシートバックモニタ39は、操作スイッチ群が表示されたタッチパネルと併用され、CDプレイヤ操作位置、HDDプレイヤ操作位置、テレビ操作位置を接触操作することにより、各装置を起動させることができる。また、シートバックモニタ39及びモニタ37は、記録部15に蓄積された車外カメラ21によって撮像された車両Vの周辺画像や所定の交通事象のアニメーションを再生可能に構成されている。
感情推定手段11及び制御手段12の説明の前に、わくわく感について説明する。
人の全感情(精神状態)は、快・不快の横軸と、活性・不活性の縦軸との2軸の平面(ラッセルの感情円環モデル)で表現することができる。
しかし、多人数走行中の車両Vでは、限られた車室内に、役割が異なる運転者、助手席同乗者、後席同乗者が存在しており、更に、同じ後席同乗者であっても、立場が異なる同乗者が存在する状況が発生することも少なくない。
本発明者が検討した結果、多人数走行中の車両Vでは、感情の同一性(x軸)と、期待感(y軸)と、達成感(z軸)の3軸で表現されるわくわく感が車両Vの車室内における感情判定に適していることを知見した(図4参照)。
感情の同一性は快の共感性、期待感は快の存在性、達成感は快の獲得性で定義することができる。これらの同一性、期待感、達成感は、人の感情を一般化したラッセルの感情円環モデルでは直接的に表現し難いため、重み付けした快度の値をX、重み付けした活性度の値をYとしたとき、快度X,活性度Yと同一性、期待感、達成感との各々の関係式を経験則によって次式のように求めている。
同一性=F(X,Y)
期待感=G(X,Y)
達成感=H(X,Y) …(1)
尚、Fは、X,Yで表すことができる同一性の3次元関係式、Gは、X,Yで表すことができる期待感の3次元関係式、Hは、X,Yで表すことができる達成感の3次元関係式である。
次に、感情推定手段11及び制御手段12について説明する。
感情推定手段11及び制御手段12は、車両V内のECU(Electric Control Unit)10によって構成され、CPU(Central Processing Unit)や、ROM、及びRAM等のメモリを有している。
感情推定手段11は、生体情報検出手段2によって検出された生体情報に基づき、予め定められた学習処理を用いて推定区間における乗員P1〜P4の感情を夫々推定可能に構成されている。ここで、学習処理には、例えば、SVM(Support Vector Machines)、決定木、k近傍法等から選択したアルゴリズムを用いている。
感情推定手段11は、カメラ22a〜22dで撮像した画像に基づき快度、不快度を検出している。快が高い順に表情の序列を決めたマスタ画像が予め準備され、その序列に従って快度Xが付与されているため、カメラ22a〜22dで撮像した画像とマスタ画像を比較することで乗員P1〜P4の快度Xを判定している。
図3(a)に示すように、乗員P1〜P4の表情以外に、視線方向変化数や姿勢変化数及び瞳孔径は快度Xと相関関係を有しているため、これら視線方向変化数や姿勢変化数及び瞳孔径によって乗員P1〜P4の快度Xを補正して高精度の快度Xを設定している。
ユーザ端末23は、キーボード入力情報と筆記入力情報を検出しているため、これらキーボード入力情報と筆記入力情報を用いて乗員P1〜P4の快度X,活性度Yを補正することができる。具体的には、キーボード入力情報では、通常の打ち間違い率と現在の打ち間違い率との比較で活性度Yを推定でき、筆記入力情報では、メッセージ機能において車外との遣り取りにおけるキーワード、例えば「びみょ−」(不快ワード)や「かなりいい」(快ワード)等、によって快度Xを推定できる。
また、運転支援装置24は、運転状態をしなやかな運転状態とゆれる運転状態とやさしい運転状態に分類しているため、分類された運転状態に基づき乗員P1の快度Xを補正することができる。尚、室内マイクを設けることで、乗員P1〜P4の発言するワードを検出して、この検出されたワードを用いて乗員P1〜P4の興味対象を抽出すると共に乗員P1〜P4の快度Xを補正しても良い。
感情推定手段11は、ユーザ端末23によって検出された心拍数に基づき活性度、不活性度を検出している。心拍数が高い程、活性度が高く、心拍数が低い程、不活性度が低いため、心拍数を介して乗員P1〜P4の活性度Yを判定している。
図3(b)に示すように、乗員P1〜P4の心拍数以外にも、呼吸数や血流速度及び皮膚電気抵抗値は活性度Yと相関関係を有しているため、これら呼吸数や血流速度及び皮膚電気抵抗値によって乗員P1〜P4の活性度Yを補正して高精度の活性度Yを設定している。
また、キーボード入力頻度も活性度Yと相関関係を有しており、活性度Yを間接的に推定できる。
ユーザ端末23に代えて乗員P1〜P4が着座する各々の座席に心臓や肺をエコー測定可能なエコー測定ユニットを配設し、心拍数、呼吸数、血流速度を検出することによって乗員P1〜P4の活性度Yの判定や補正を行っても良い。また、ステアリングホイール5の乗員P1の把持位置に皮膚電気抵抗センサを配設し、皮膚電気抵抗値を検出することによって乗員P1の活性度Yを補正することができる。
感情推定手段11は、ユーザ端末23から入力された乗員P1〜P4の休憩中の行動履歴(歩行距離・滞在時間・商品購入等)によって休憩前の快度Xと活性度Yを補正し、乗員P1〜P4の行動履歴を反映するようにマップ11aを最新状態に更新している。
このマップ11aの更新は、乗員P1〜P4の再乗車時にユーザ端末23との一回的な通信により行っても良い。
感情推定手段11は、乗員P1〜P4の感情変化の推移を乗員毎に記憶するマップ11aを有している。図4に示すように、マップ11aは、感情の同一性(x軸)と、期待感(y軸)と、達成感(z軸)との3軸で表現される乗員P1〜P4の感情を2軸の平面で表現したものである。尚、本実施例では、同一性と期待感と達成感が何れも高い、所謂わくわく感が高い領域を領域W、わくわく感が低い領域を領域Vとしている。
感情推定手段11は、取得された乗員P1〜P4の快度Xと活性度Yを式(1)に代入して乗員P1〜P4の感情座標p1〜p4を演算した後、感情座標p1〜p4をマップ11aにプロットしてマップ11aを順次更新している。
この感情推定手段11には、ユーザ端末23との通信によって、走行スケジュール(走行距離、走行時間等)、乗員P1〜P4の種別(子供、もてなす必要がある客、生理的要求が発生した乗員等)が入力されているため、各感情座標p1〜p4に各種付加情報が紐付けされる。
次に、制御手段12について説明する。
制御手段12は、他の乗員に対して優先的に対応する優先乗員の有無に基づき、通常モードと第1全体制御を備えた優先モードとを実行可能に形成されている。
また、この制御手段12は、通常モードにおいて、乗員P1〜P4の感情を一定方向に誘導する第2,第3全体制御と、乗員P1〜P4のうち特定乗員の感情を一定方向に誘導する第1〜第3個別制御を実行可能に構成されている。更に、制御手段12は、予め設定された制限条件が成立したとき、乗員P1〜P4の互いに離隔している感情を接近させる感情改善手段3の制御を制限するように構成されている。
図2に示すように、制御手段12は、優先乗員決定部13と、乗員感情比較部14と、記憶部15と、実行部16を備えている。
まず、優先乗員決定部13について説明する。
優先乗員決定部13は、乗員P1〜P4のうち他の乗員に優先して感情が改善されるべき優先乗員を決定している。この優先乗員決定部13は、マップ11aの付加情報に基づき生理的要求のある乗員を第1優先乗員として決定する。体調不良(車酔い、便意発生等)が原因で感情が悪化した乗員が第1優先乗員に相当する。
それ故、体調面から感情が悪化した第1優先乗員は、心拍数等の実際の生体測定値と表情等の動きを所定の判定基準と比較して乗員の体調を直接的に判定しても良い。
また、優先乗員決定部13は、マップ11aの付加情報に基づき乗員P1が他の乗員に優先してもてなす必要のある乗員を第2優先乗員として決定する。久しぶりに訪ねて来た親戚や友人、取引先の顧客等が第2優先乗員に相当する。
次に、乗員感情比較部14について説明する。
乗員感情比較部14は、推定された乗員P1〜P4の感情が互いに近い状態か否かについて比較している。マップ11a上の乗員P1の感情座標p1から一定距離の同心円の領域A内に、乗員P2〜P4の感情座標p2〜p4が存在するか否かを夫々判定している。
領域A内に、乗員P2〜P4の感情座標p2〜p4が存在すれば、乗員P2〜P4は乗員P1と略同一又は近い感情(類似感情)を有し、領域A外の乗員は乗員P1と異なる感情(非類似感情)を有している。尚、領域Aを形成するための一定距離は、予め実験等によって設定している。
次に、実行部16について説明する。
実行部16は、基本的に感情が悪化した乗員の感情をマップ11aに基づきフィードバックを行いながら改善するように感情改善手段3を制御している。
この実行部16は、推定された乗員P1〜P4の感情が互いに離隔しているとき、乗員P1〜P4の感情を接近させると共に、複数の乗員の感情が悪化したとき、複数の乗員の感情を同一方向に誘導するように感情改善手段3を制御している。
更に、実行部16は、予め設定された制限条件(具体的には、走行予定時間が短い、及び乗員の感情が悪化且つ夜間)が成立したとき、複数の乗員の感情を一定方向に誘導する感情改善手段3の制御を制限している。
実行部16は、主に共通感覚誘導部と個別感覚誘導部を用いる第1〜第3全体制御と、主に個別感覚誘導部を用いる第1〜第3個別制御を実行可能に構成されている。
第1全体制御は、第1又は第2優先乗員が同乗しているとき、他の乗員に優先して第1又は第2優先乗員の感情を快方向に向かって改善するようにマップ11aに基づいて感情改善手段3を制御するものである。第1全体制御では、第1又は第2優先乗員に対応した個別感覚誘導部3bに加えて、運転動作誘導部3cを含む共通感覚誘導部3aが制御される。
第2全体制御は、乗員P1〜P4が類似感情状態(領域A内に感情座標p2〜p4が存在)で且つ乗員P1〜P4が感情が良好ではないとき、類似感情状態を維持した状態で乗員P1〜P4の感情が快状態を含む領域W方向に移行するようにマップ11aに基づいて感情改善手段3を制御するものである。第2全体制御では、運転動作誘導部3cを含む共通感覚誘導部3aと個別感覚誘導部3bとが用いられる。
また、第3全体制御は、乗員P1の感情から離隔した乗員が存在し且つ複数の乗員の感情が悪化(負の座標を有する感情座標p1〜p4が複数存在)したとき、乗員P1〜P4の感情を接近させるようにマップ11aに基づいて感情改善手段3を制御するものである。第3全体制御では、運転動作誘導部3cを除く共通感覚誘導部3aが主として用いられ、個別感覚誘導部3bは補助的に用いられる。そして、接近誘導された乗員P1〜P4の感情は、類似感情状態を維持した状態で領域Wをはじめとする所望の領域へ移行するように誘導される。
第1個別制御は、乗員P3又は乗員P4が感情悪化状態で且つ夜間走行のとき、乗員P3又はP4を放置或いは活性化を抑えた状態で乗員P1,P2の感情を快方向に向かって改善するようにマップ11aに基づいて感情改善手段3を制御するものである。第1個別制御では、運転動作誘導部3cと個別感覚誘導部3bが用いられている。
第2個別制御は、乗員P1の感情から離隔した乗員が存在し且つ乗員P1の感情が良好なとき、感情の悪化している乗員の感情を領域W内へ移行するようにマップ11aに基づいて感情改善手段3を制御するものである。第2個別制御では、個別感覚誘導部3bのみが用いられている。
第3個別制御は、乗員P1の感情から離隔した乗員が存在し且つ乗員P1に感情の急変が生じていないとき、乗員P1〜P4の感情を接近させつつ快方向に向かって改善するようにマップ11aに基づいて感情改善手段3を制御するものである。第3個別制御では、運転動作誘導部3cと個別感覚誘導部3bが主として用いられている。
次に、図5〜図7のフローチャート及び図8〜図11に基づいて、乗員感情対応制御装置1の制御処理について説明する。尚、Si(i=1,2…)は、各処理のためのステップを示す。
まず、図5に示すように乗員感情対応制御装置1では、生体情報検出手段2からの出力を入力し(S1)、S2へ移行する。
S2では、乗員P1〜P4が車両Vから降車して別行動を行ったか否か、例えば、高速道路のサービスエリア等で休憩したか否かを判定している。
S2の判定の結果、乗員P1〜P4が休憩した場合、休憩中の乗員P1〜P4の各々の行動履歴によって休憩前の快度Xと活性度Yの補正値を設定し(S3)、S4に移行する。
感情推定手段11は、休憩中の行動履歴に基づき乗員P1〜P4の感情変化の推移原因を推定している。例えば、降車中、乗員が所定の店舗まで移動し、目的地に関わる商品購入の取引があった場合等、走行目的の一部が達成されたため、購入後、快度(期待感)が減少することがあり、また、降車中、トイレが混雑して出発時間までに済ませられなかった場合等、乗員の体調が悪化して感情が急激に不活性状態に移行することがあるためである。乗員P1は、走行中、乗員P2〜P4への気配りを行っているため、高速道路のサービスエリア等で休憩する降車時までの乗員P2〜P4の感情を概ね把握している。
しかし、乗員P1は、休憩中の乗員P2〜P4の行動や言動を見ていないため、休憩中の感情変化が分からないため、乗員P2〜P4が乗車して再出発した後、暫くの間乗員P2〜P4の様子を伺って乗員P2〜P4の感情把握を再度行うことになる。
本制御により、乗員P1については、車両V側が、再乗車後の最新の乗員P2〜P4の感情が反映されたマップ11aに基づき、乗員P1が無意識のうちに乗員P1に対して所定の運転動作を行うように誘導せしめるため、乗員P2〜P4への気配り負荷が軽減される。また、乗員P2〜P4については、休憩中の事象、(例えば、トイレが混雑して行けなかった、屋台で昼食を取った結果眠くなった等)を乗員P1に敢えて伝えることなく、各自の要求に応じた処理(例えば、ナビゲーションシステムが立ち寄り地点として最短距離のサービスエリアを設定する、アクティブノイズキャンセラ機能により静粛性を確保しながら車両挙動を安定させる等)により要求が満たされるため、感情が改善される。
S2の判定の結果、乗員P1〜P4が降車を伴う休憩していない場合、S4に移行する。
S4では、乗員P1〜P4の感情を予め定められた学習処理を用いて推定している。
各種生体情報と行動履歴に基づく補正値等によって乗員P1〜P4の快度Xと活性度Yを夫々演算し、これらの快度Xと活性度Yを式(1)に代入することにより乗員P1〜P4の感情座標p1〜p4を夫々算出する。
走行スケジュールや乗員P1〜P4の種別等の付加情報が各々の感情座標p1〜p4に夫々対応付けされ、S5に移行する。
S5では、感情座標p1〜p4に基づき前回のマップ11a(図4参照)を更新して、S6に移行する。S6では、乗員P1〜P4の感情座標p1〜p4及び感情座標p1〜p4に付随した付加情報に基づいて優先乗員を決定する。
このS6では、感情座標p1〜p4により、乗員P1〜P4について、例えば、車酔いや便意等の生理的要求を判定し、生理的要求が発生した乗員が存在する場合、その乗員を第1優先乗員に決定する。また、乗員P1〜P4の種別により、例えば、久しぶりに訪ねて来た親戚や仕事上の顧客等のように他の乗員(特に乗員P1)がもてなす必要のある乗員が存在する場合、その乗員を第2優先乗員に決定する。
次に、S7へ移行して、第1優先乗員又は第2優先乗員が存在するか否かを判定する。
S7の判定の結果、第1優先乗員又は第2優先乗員が存在する場合、優先モードを実行する(S8)。S7の判定の結果、第1優先乗員又は第2優先乗員が存在しない場合、通常モードを実行する(S9)。これらの処理は、イグニッションがONされた時点から走行予定が完了してイグニッションがOFFされるまで一定時間毎に実行される。
次に、図6のフローチャートに基づき、優先モードの処理について説明する。
優先モードでは、第1優先乗員と第2優先乗員が両方存在するとき、第2優先乗員よりも第1優先乗員を優先して対応し、第1優先乗員の感情(体調)が改善した後、第2優先乗員の感情改善を実行する。
S11では、第1優先乗員の発生有無を判定する。
S11の判定の結果、第1優先乗員が発生した場合、S12へ移行して、第1全体制御を実行する。例えば、乗員P3が車酔いによって感情悪化したと推定されたとき、マップ11aに基づき乗員P3の感情が改善するように乗員P3に作用する刺激を低減する。
具体的には、個別感覚誘導部3bとして、乗員P3に対応した照明装置33が、照明光の波長を短く(青系)すると共に振幅を小さく(暗く)し、乗員P3に対応した個別スピーカ38が、スピーカ32の音及びロードノイズを擬似的に消音し、乗員P3に対応したシートバックモニタ39が、穏やかな風景等を映し出す。また、共通感覚誘導部3aとして、空調装置31が、マップ11aに基づき車内温度を乗員P3に適した温度に調節し、スピーカ32が、乗員P3の落ち着く曲を選曲して音量を低減する。
更に、運転動作誘導部3cとして、窓枠可変装置35が、フロントウインドガラスの視界を広げて乗員P1の知覚速度を高めることにより車両Vの実車速を抑え、可変ステアリング装置36が、操舵抵抗を高めて車両Vの揺れを抑制し、モニタ37が、早い時点で休憩の提案や最も近いサービスエリアの提案を行う。
以上により、乗員P3に作用する刺激が低減され、乗員P3の感情改善を図ることができ、乗員P1の気配り負荷が低減される。
しかも、乗員P1が高速で素早く操舵したいと感じている場合、乗員P1の感覚(知覚速度、知覚操舵感覚)としては、乗員P1の要望通りの運転が実現できていると感じられるため、乗員P1の感情と他の乗員、特に感情が悪化した乗員P3の感情とを両立している。
S11の判定の結果、第1優先乗員が発生していない場合、S13へ移行する。
S13では、マップ11aに基づき第2優先乗員の感情が悪化しているか否かについて判定している。尚、以下、感情悪化とは、今回の感情座標が、前回の感情座標よりも同一性、期待感、達成感のうち何れかの値が負の方向に移行した状態である。
S13の判定の結果、第2優先乗員の感情が悪化している場合、S12へ移行して、第1全体制御を実行する。基本的に、第2優先乗員の感情座標が前回の感情座標よりも同一性、期待感、達成感が何れも正方向に移行するように個別感覚誘導部3bと共通感覚誘導部3aと運転動作誘導部3cを作動させる。尚、第2優先乗員が体調面から感情が悪化した場合、第1優先乗員と同様の第1全体制御が実行される。
例えば、乗員P3が第2優先乗員に相当する親戚の子供であり、乗員P1の車速域が乗員P3の親による通常の車速域よりも高い場合等が想定される。
この場合、乗員P3は恐怖を感じているものの、遠慮しているため、乗員P1に対して車速を減速して欲しいことを言い出すことができず、次第に感情が悪化する。このような乗員P3(第2優先乗員)の感情悪化を検出した時、可変窓枠装置35による窓枠遮蔽動作によって乗員P1が無意識のうちに車速を低下させた結果、乗員P3の感情が改善方向に誘導された場合、窓枠遮蔽動作を継続する。
乗員P1については、自分の運転について矯正(例えば、「もっとゆっくり走って!」等の要求)されて不愉快な思いをすることなく、良い感情を維持した状態で乗員P3を安心させることができる。
S13の判定の結果、第2優先乗員の感情が悪化していない場合、S9へ移行して、通常モードを実行する。
次に、図7のフローチャートに基づき、通常モードの処理について説明する。
通常モードでは、基本的に、乗員P1〜P4を類似感情状態にすると共に乗員P1〜P4がわくわく感を体感できるように、第2,第3全体制御と第1〜第3個別制御とを実行する。
S21では、今回の走行予定時間が長時間か否かを判定する。
S21の判定の結果、走行予定時間が長時間、例えば、1時間以上の場合、S22へ移行する。S21の判定の結果、走行予定時間が短時間の場合、乗員P1〜P4の感情を改善方向へ誘導するための十分な時間が確保できないため、S1へリターンする。
走行予定時間が短時間の場合、各制御を実行しても、乗員P1〜P4の感情を改善或いは感情の同一性を確保するまでに至らず、特に、走行予定時間が短時間の場合に運転動作誘導部3cが作動すると乗員P1に違和感のみを与える。それ故、上記不具合を防止するため、感情改善制御を制限している。
ここで、走行予定時間が長時間か否かは、例えば、ナビゲーションシステムに設定された目的地までの到達時間を参照することができる。尚、近所のショッピングモールや最寄りの駅に送迎に行くような短時間走行の場合、乗員P1にとって既知の目的地であり、目的地設定を行わないため、ナビゲーションシステムに目的地が設定されないときは、本制御の実行を省略することができる。また、ユーザ端末23のスケジューラを参照して乗車時間の長短を判定しても良い。
S22では、感情座標p2〜p4が領域A内か否かを判定する。
S22の判定の結果、感情座標p2〜p4が領域A内の場合、乗員P1〜P4の感情が類似感情状態であるため、S23へ移行する。
S23では、乗員P1に直前の感情変化があったか否かを判定する。
運転している乗員P1の感情は、交通状況を含めた周囲環境からの影響を乗員P2〜P4よりも早く且つ大きく受けるため、乗員P2〜P4に比べて感情変化速度が速い。
乗員P1の直前の感情変化は、感情座標p1の変化率を検出し、感情座標p1の変化率が正方向(又は負方向)に所定値以上の場合に直前の感情変化ありと判定している。
S23の判定の結果、乗員P1に直前の感情変化があった場合、図8に示すように、乗員P2〜P4が乗員P1の感情に共感できる状態であるため、S24へ移行する。
尚、S23の判定の結果、乗員P1に直前の感情変化がなかった場合、S25へ移行する。
S24では、車外カメラ21によって撮像し一時的に記録された車両Vの周辺状況をモニタ37及びシートバックモニタ39に再生して、S25へ移行する。
乗員P1が、例えば、前方の綺麗な風景によって感動した場合、乗員P1に「あの景色見て、あの景色」と乗員P2〜P4に指差して視線を誘導させる負担を強いることなく、同じ対象物によって乗員P2〜P4の感動を発生させることができるため、乗員P1は乗員P2〜P4との共感を得ることにより感情の同一性を向上することができ、運転に集中することができる。
また、乗員P1が、急な割り込み車両等によって怒りを感じた場合であっても、乗員P1は乗員P2〜P4との共感を得ることにより運転に集中することができる。
急な割り込みを受けた時、乗員P1は単独運転であれば悪態を発して怒りを解消することができるが、同乗者の乗員P2〜P4が存在する場合は悪態をつけず、怒りを解消できないため、運転に悪影響を及ぼすことが考えられる。本制御では、乗員P2〜P4から声(例えば「あの車確かに乱暴だね」、「危ないな」等)を掛けられることにより、乗員P1が乗員P2〜P4に状況を理解して貰えたことを認識することで怒りを和らげられるため、運転に集中することができる。
また、乗員P2〜P4については、乗員P1の感情変化の速度及び指向方向に連動することができ、車内の雰囲気が盛り上がり、乗員P1を含めて乗員間の連帯感が生まれて目的地での行動が改善される等車全体として状況改善を図ることができる。
尚、再生した事象(例えば、割り込み車両の場合であれば交通事象に相当する)に関連するアニメーションを予め記憶している場合、撮像した画像に続けて再生しても良く、再生事象の種類に応じてアニメーションの再生可否を予め設定することができる。
また、実際の割り込み車両の映像の代わりに、割り込み車両を悪役風にデフォルメしたアニメーションを再生しても良い。
S25では、感情座標p1が領域W内か否か判定する。
S25の判定の結果、感情座標p1が領域W内の場合、領域A内の乗員P1〜P4がわくわく感を体感しているため、感情改善の対応を行うことなく、S1へリターンする。
S25の判定の結果、感情座標p1が領域W外の場合、類似感情状態であるものの、乗員P1〜P4がわくわく感を体感できていないため、第2全体制御を実行して(S26)、S1へリターンする。
S26では、第2全体制御を実行する。
具体的には、全ての照明装置33が、照明光の波長を長く(赤系)し、振幅を大きく(明るく)し、全ての個別スピーカ38が、ロードノイズを擬似的に消音し、モニタ37やシートバックモニタ39が、乗員P1〜P4が共通して興味のある目的地情報等を映し出す。また、空調装置31が、マップ11aに基づき車内温度を調節し、スピーカ32が、乗員P1〜P4が共通して好む或いは感情を高揚させる曲を選曲し音量を増加する。
更に、窓枠可変装置35が、フロントウインドガラスの視界を狭めて乗員P1の知覚速度を低くすることにより車両Vの実車速を増加し、可変ステアリング装置36が、操舵抵抗を低減して車両Vの走行感を発生させる。
以上により、乗員P1〜P4の同一性、期待感、達成感を夫々向上でき、乗員P1〜P4の感情を類似感情状態を維持したまま改善している。
例えば、観光地への日帰りドライブでは、出発直後は全乗員がわくわくしているものの、高速道路にのって暫くすると室内の雰囲気が中だるみする状況が生じることがある。
第2全体制御によって、中だるみした乗員P1〜P4の感情を類似感情状態を維持したまま改善方向に指向させることができる。
S22の判定の結果、感情座標p2〜p4の何れかが領域A外の場合、乗員P2〜P4のうち何れかの乗員の感情が乗員P1の感情から離隔しているため、S27へ移行する。
S27では、乗員P3又はP4が感情悪化状態か否か判定している。
S27の判定の結果、乗員P3又はP4が感情悪化状態の場合、S28へ移行し、現在夜間か否か判定している。
S28の判定の結果、夜間走行中の場合、S29へ移行し、夜間走行中ではない場合、S30へ移行する。
S29では、第1個別制御を実行する。
図9に示すように、例えば、乗員P3,P4が共に感情悪化状態(感情座標p3,p4の同一性、期待感、達成感のうち何れかの値が負)の場合、乗員P3,P4は眠たい或いは疲労していると推測されるため、前席乗員P1,P2と感情悪化状態の後席乗員P3,P4を分離して対応している。
具体的には、乗員P3,P4に対応した照明装置33が、照明光の波長を短くすると共に振幅を小さくし、乗員P1,P2に対応した照明装置33が、照明光の波長を長くすると共に振幅を大きくし、乗員P3,P4に対応した個別スピーカ38が、スピーカ32の音及びロードノイズを擬似的に消音し、乗員P1,P2に対応した個別スピーカ38が、スピーカ32の音を擬似的に増幅し、乗員P3,P4に対応したシートバックモニタ39の再生を停止する。また、スピーカ32が、音量を低減する。更に、窓枠可変装置35が、フロントウインドガラスの視界を広げて乗員P1の知覚速度を高めることにより車両Vの実車速を抑え、可変ステアリング装置36が、操舵抵抗を高めて車両Vの揺れを抑制する。
以上により、乗員P1〜P4の感情の非類似感情状態を維持することにより、乗員P3,P4は睡眠や休息を取りつつ、乗員P1,P2は感情改善が図られて高い運転意識を確保することができる。尚、乗員P3,P4については、乗員P3,P4に対する感情改善制御を停止し、放置しても良く、また、夜間に加えて単調道路でも分離対応しても良い。
事例としては、観光地への日帰りドライブの帰途において、夜になり、後席乗員P3,P4が眠たくなっている場合である。この場合、乗員P3,P4に対して無理に刺激を与えることなく、眠らせることができる。乗員P1については、眠っているP3,P4に対してやさしい運転をするための気遣い負荷を軽減することができる。
S27の判定の結果、乗員P3又はP4が感情悪化状態ではない場合、S30へ移行し、感情座標p1が領域W内か否か判定する。
S30の判定の結果、感情座標p1が領域W内の場合、乗員P1はわくわく感を体感できる良好な状態であるものの、乗員P2〜P4の何れかはわくわく感を体感できないため、第2個別制御を実行して(S31)、S1へリターンする。
S31では、第2個別制御を実行する。
図10に示すように、例えば、感情座標p1が領域W内且つ感情座標p2〜p4が領域W外の場合、マップ11aに基づき感情座標p2〜p4が領域W内へ移行するように個別感覚誘導部3bを制御する。これにより、乗員P1の良好な感情を維持したまま乗員P2〜P4のうち感情が悪化している乗員の感情が改善されると共に乗員P1〜P4の感情を類似感情状態に誘導している。
事例としては、観光地への日帰りドライブの帰途において、乗員P1は、乗員P2〜P4を観光地に送り届けたことに達成感を感じ、トラブルなく帰宅してこのドライブを成功裏に終えることに期待感を持っているが、乗員P2〜P4は観光地訪問後は目的がなく、乗員によっては観光地が期待外れで喪失感が生じている場合である。このような場合、帰途の高速道路の各サービスエリアの名物料理を各モニタに表示したり、往路において全乗員P1〜P4の感情値が上昇したとき(感情座標p1〜p4が領域W内へ移行したとき)の車外映像を再生することにより、わくわく感を再現させて乗員P2〜P4を活性化することができる。
S30の判定の結果、感情座標p1が領域W外の場合、乗員P1がわくわく感を体感しておらず非類似感情状態であるため、S32へ移行する。
S32では、乗員P1の感情が直前に悪化し且つ乗員P2〜P4のうち何れかの乗員が感情悪化しているか否かを判定する。
S32の判定の結果、乗員P1の感情が直前に悪化し且つ乗員P2〜P4のうち何れかの乗員が感情悪化している場合、第3全体制御を実行して(S33)、S1へリターンする。
S33では、第3全体制御を実行する。
図11に示すように、例えば、乗員P1〜P4の感情が何れも感情悪化側領域に分散的に存在し且つ乗員P1に直前の感情変化があった場合、乗員P1の感情を安定させるために乗員P1〜P4が共通して知覚できる車内環境に制御している。
具体的には、照明装置33が、照明光の波長を短くすると共に振幅を小さくし、個別スピーカ38が、ロードノイズを擬似的に増幅する。また、空調装置31が、マップ11aに基づき車内温度を低下する。
以上により、乗員P1〜P4が共通して知覚できる誘導媒体(照度、音、温度)で車内環境を悪化させて乗員P1〜P4の感情を同一感情領域に意図的に誘導するため、乗員P2〜P4の意識を特定の事象に指向させることができ、乗員P1は乗員P2〜P4と共感しながら運転に集中することができる。尚、領域Vに感情座標が位置する乗員が存在する場合、乗員P1〜P4が共通して知覚できる誘導媒体によって車内環境を改善させて乗員P1〜P4の感情を同一感情領域に意図的に誘導し、継続して乗員P1〜P4の感情を領域Wまで誘導することも可能である。
事例としては、観光地への日帰りドライブの帰途において、乗員P3,P4が些細なことで言い争いを始め、乗員P2の仲裁も効かず、乗員P1が運転に集中できなくなる場合である。このような場合、空調装置31の吹出口からブロアファン全開で冷風が吹出し、乗員P1〜P4の聴覚には言い争いの声が一瞬聞こえない程度のロードノイズが発生する。乗員P3,P4は、共通不快体験により知覚が強く刺激されて我に返り、何れかが「何か寒いね」等の仲直りのきっかけを発声し、言い争いを終結できる。また、怒った動物をデフォルメしたキャラクタのアニメーションをシートバックモニタ39に表示して、自らを客観視させることにより、類似効果を期待できる。本制御により、乗員P1は、言い争いを止めて欲しい旨の発声を我慢するという負担なく、再び運転に集中することができる。
また、逆に、共通快体験(例えば、昼食前に美味しそうな料理の映像を見せる等)によって同様の効果を得ることができるが、共通不快体験の方が知覚刺激が強い。
S32の判定の結果、乗員P1の感情が直前に悪化し且つ乗員P2〜P4のうち何れかの乗員が感情悪化していない場合、少なくとも乗員P1の感情は良好ではないため、第3個別制御を実行して(S34)、S1へリターンする。
S34では、第3個別制御を実行する。
例えば、乗員P4以外の乗員P1〜P3の感情が何れも感情悪化領域に分散的に存在する場合、マップ11aに基づき乗員P1〜P3の感情を改善する。
具体的には、乗員P1〜P3に対応した照明装置33が、照明光の波長を長くし、振幅を大きくし、乗員P1〜P3に対応した個別スピーカ38が、ロードノイズを擬似的に消音する。また、窓枠可変装置35が、フロントウインドガラスの視界を狭めて乗員P1の知覚速度を低くすることにより車両Vの実車速を増加し、可変ステアリング装置36が、操舵抵抗を低減して車両Vの走行感を発生させる。
以上により、乗員P1〜P3の同一性、期待感、達成感を夫々向上でき、乗員P1〜P3の感情を改善している。
具体事例1としては、観光地に向かう高速道路は車が多く、特に走行車線では前方が詰まり、乗員P1が好む車速域よりも低い車速でしか巡航できず、車間距離も確保できないため、乗員P1はストレスを感じている場合である。追い越し車線にレーンチェンジすることもできるが、追い越し車線は乗員P1が好む車速域よりも車速が高く且つ煽られることがあるので、レーンチェンジを躊躇している。乗員P1は、車両Vの高い動力性能をもてなし対象の乗員P4に自慢したい欲求があるが、乗員P4がスピード感に恐怖を持っている可能性もあるため、低車速を維持した方が良いと考えて欲求を自制している。乗員P1は、走行安全性と自己の欲求と乗員の感情とを常時考える負荷に晒されており、前方が大型車両に塞がれたとき等、感情が一時的に悪化することがある。
具体事例2としては、山岳観光道路において、乗員P1は、ワインディング路で車両Vの走行性能を楽しみたいという欲求と、乗員P2〜P4が絶景鑑賞できるように低速走行するという義務感がある場合である。このような場合、乗員P1は、乗員P2〜P4の感情を推察しながら、どのような速度で走行するかを常時考える負荷に晒されている。後続車両が増加したとき等、増速すべきか追い抜いてもらうかで感情が一時的に悪化することがある。
何れの場合においても、他の乗員P2〜P4が感情悪化領域に存在する場合、乗員P1と同様に低車速にストレスを感じていると判断し、前述した如く乗員P1に車速を増加する決断を促すように制御する。乗員P1は、乗員P2〜P4の感情を考える負荷から開放され、他の乗員P2〜P4の感情も改善方向に移行することができる。尚、他の乗員P2〜P4の感情が良い領域に存在する場合、現走行速度に安心感を持っていると判断し、現車速を維持するため、フロントウインドガラスの視界を広げて乗員P1の知覚速度を高くして乗員P1のストレスを解消する。
次に、上記乗員感情対応制御装置1の作用、効果について説明する。
本乗員感情対応制御装置1によれば、制御手段12は、感情推定手段11によって推定された乗員P1〜P4の感情を比較する乗員感情比較部14と、乗員P1の感情変化の要因を記録する記録部15とを備えているため、乗員P1〜P4が共感を発生し易い類似感情状態か否かを判定することができ、乗員P1の感情変化の要因を確保することができる。制御手段12は、乗員P1の感情変化があり且つ乗員P1〜P4の感情が互いに接近しているとき、乗員P1の感情変化の要因を感情改善手段3を介して乗員P2〜P4に提供するため、乗員P2〜P4の感情を悪化させることなく、乗員P2〜P4による乗員P1への共感によって乗員P1〜P4間の感情の同一性を確保でき、乗員P1は運転に集中することができる。
感情推定手段11が乗員P1〜P4の感情変化の推移を乗員P1〜P4毎に記憶するマップ11aを有し、制御手段12はマップ11aに基づき感情改善手段3を制御するため、乗員P1〜P4毎の感情変化の推移を容易且つ正確に追跡することができ、簡単な構成で感情改善手段3を制御することができる。
乗員P1〜P4の感情が互いに離隔しているとき、乗員P1〜P4の感情を接近させるように感情改善手段3を制御するため、乗員P1〜P4の感情を同一感情領域へ移行させることができ、容易に共感を発生させることができる。
生体情報検出手段2は車両V前方の周辺状況を撮像可能な車外カメラ21を備えると共に感情改善手段3はモニタ37及びシートバックモニタ39を備えるため、乗員P1の感情変化の要因を乗員P2〜P4へ確実に伝達することができる。
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、同乗者が3人の例を説明したが、同乗者は1人でも良く、また、車両の許容人数に応じて3人以上であっても良い。
2〕前記実施形態においては、優先モード及び通常モードにおいて、複数種類の感情改善手段を制御する例を説明したが、少なくとも乗員の感情を快方向に誘導できれば良く、可能であれば特定の装置のみを作動させても良い。また、乗員の種類、状況に応じて有効な装置を選択的にさせることも可能であり、乗員の好みに合わせて作動させる装置を変更させても良い。
3〕前記実施形態においては、感情悪化を前回の感情座標と比較して同一性、期待感、達成感の何れか1の値が負の方向に移行したときに判定する例を説明したが、同一性、期待感、達成感の何れか1の値が所定量以上負の方向に移行したときに感情悪化を判定しても良い。また、乗員によって、感情悪化の判定方法を要素によって変更しても良い。
具体的には、運転者の感情悪化判定は、達成感が負の方向に移行したとき、或いは同一性又は期待感が所定量以上負の方向に移行したときに感情悪化を判定し、同乗者の感情悪化判定は、同一性又は期待感が負の方向に移行したとき、或いは達成感が所定量以上負の方向に移行したときに感情悪化を判定することも可能である。
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
1 乗員感情対応制御装置
2 生体情報検出手段
3 感情改善手段
11 感情推定部
11a マップ
12 制御手段
14 乗員感情比較部
15 記録部
21 車外カメラ
37 モニタ
39 シートバックモニタ
P1〜P4 乗員

Claims (4)

  1. 運転者と同乗者からなる複数の乗員の複数種類の生体情報を夫々検出する生体情報検出手段と、前記生体情報検出手段によって検出された生体情報に基づき前記複数の乗員の感情を夫々推定する感情推定手段と、前記複数の乗員の感情を改善可能な感情改善手段と、前記感情改善手段を制御する制御手段とを備えた車両用乗員感情対応制御装置において、
    前記制御手段は、前記感情推定手段によって推定された複数の乗員の感情を比較する乗員感情比較部と、前記運転者の感情変化の要因を記録する記録部とを備え、
    前記運転者の感情変化があり且つ前記複数の乗員の感情が互いに接近しているとき、前記運転者の感情変化の要因を前記感情改善手段を介して前記同乗者に提供することを特徴とする車両用乗員感情対応制御装置。
  2. 前記感情推定手段が前記複数の乗員の感情変化の推移を乗員毎に記憶するマップ手段を有し、
    前記制御手段は前記マップ手段に基づき前記感情改善手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用乗員感情対応制御装置。
  3. 前記制御手段は、前記複数の乗員の感情が互いに離隔しているとき、前記複数の乗員の感情を接近させるように前記感情改善手段を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用乗員感情対応制御装置。
  4. 前記生体情報検出手段は車両前方の周辺状況を撮像可能なカメラ装置を備えると共に前記感情改善手段は1又は複数のディスプレイモニタを備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用乗員感情対応制御装置。
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