JP2009040132A - 車両用ハイブリッド駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】必要発電量を確保しつつ燃費を向上させる車両用ハイブリッド駆動装置を提供する。
【解決手段】燃料の燃焼によって動力を発生させるエンジン16と、回転エネルギにより発電を行い得る第1モータジェネレータMG1と、前記エンジン16により発生させられる動力をその第1モータジェネレータMG1と出力歯車26とに分割する動力分割装置とを、備えた車両用ハイブリッド駆動装置10において、その動力分割装置は、前記エンジン16により発生させられる動力の前記第1モータジェネレータMG1及び出力歯車26への分割比率を変更できる遊星円錐機構18から成るものであることから、その遊星円錐機構18における分割比率を適宜設定することにより前記エンジン16の最適燃費線上で運転することができ、前記第1モータジェネレータMG1による発電を阻害することなく燃費を向上させることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料の燃焼によって動力を発生させるエンジン及び回転エネルギにより発電を行い得る電動機を備えた車両用ハイブリッド駆動装置に関し、特に、必要発電量を確保しつつ燃費を向上させるための改良に関する。
燃料の燃焼によって動力を発生させるエンジンと、回転エネルギにより発電を行い得る電動機と、前記エンジンにより発生させられる動力をその電動機と出力回転部材とに分割する動力分割装置とを、備えた車両用ハイブリッド駆動装置が知られている。例えば、特許文献1に記載されたハイブリッド車両の動力伝達装置がそれである。斯かる技術によれば、前記エンジンにより発生させられた動力を前記動力分割装置により発電用の電動機と車両の駆動力とに分割することで、その発電により得られた電気エネルギを車両の駆動力に用いる実用的な車両用ハイブリッド駆動装置を実現することができる。
特開平11−189053号公報
ところで、前述したような従来の技術において、前記動力分割装置には一般的な遊星歯車装置等が用いられていたが、斯かる構成では前記エンジンにより発生させられる動力の前記電動機及び出力回転部材への分割比率を変更することができないため、必ずしも前記エンジンの最適燃費線上で運転することができずに燃費が悪化するという不具合があった。車両用ハイブリッド駆動装置においては、電動機により駆動力を発生させるための必要発電量を確保すると共にエンジンの燃費を向上させることが求められるが、そのように、必要発電量を確保しつつ燃費を向上させる車両用ハイブリッド駆動装置は、未だ開発されていないのが現状である。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、必要発電量を確保しつつ燃費を向上させる車両用ハイブリッド駆動装置を提供することにある。
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、燃料の燃焼によって動力を発生させるエンジンと、回転エネルギにより発電を行い得る電動機と、前記エンジンにより発生させられる動力をその電動機と出力回転部材とに分割する動力分割装置とを、備えた車両用ハイブリッド駆動装置であって、前記動力分割装置は、前記エンジンにより発生させられる動力の前記電動機及び出力回転部材への分割比率を変更できる分割比率可変機構から成ることを特徴とするものである。
このようにすれば、燃料の燃焼によって動力を発生させるエンジンと、回転エネルギにより発電を行い得る電動機と、前記エンジンにより発生させられる動力をその電動機と出力回転部材とに分割する動力分割装置とを、備えた車両用ハイブリッド駆動装置であって、前記動力分割装置は、前記エンジンにより発生させられる動力の前記電動機及び出力回転部材への分割比率を変更できる分割比率可変機構から成るものであることから、前記動力分割装置における分割比率を適宜設定することにより前記エンジンの最適燃費線上で運転することができ、前記電動機による発電を阻害することなく燃費を向上させることができる。すなわち、必要発電量を確保しつつ燃費を向上させる車両用ハイブリッド駆動装置を提供することができる。
ここで、好適には、前記動力配分装置は、内周側に突起部を備えて前記出力回転部材に連結されたリング部と、前記電動機に連結されたサンギヤと、前記突起部と摩擦接触させられる円錐状の当接面及び前記サンギヤと噛み合わされるギヤ部を備えたピニオン部と、そのピニオン部を保持すると共に前記エンジンに連結されたキャリアと、前記サンギヤ、ピニオン部、及びキャリアを一体的に前記リング部に対して軸心方向に相対移動させるアクチュエータとを、備え、前記リング部に対するピニオン部の相対位置を変更して前記当接面に対する突起部の当接位置を変更することで前記エンジンにより発生させられる動力の前記電動機及び出力回転部材への分割比率を変更できる遊星円錐機構から成るものである。このようにすれば、実用的な分割比率可変機構である遊星円錐機構により前記エンジンにより発生させられる動力の前記電動機及び出力回転部材への分割比率を適宜変更することができる。
また、好適には、車速が予め定められた所定速度以上である場合に前記動力分割装置の分割比率を変化させるものである。このようにすれば、車両の高速走行時に前記動力分割装置の分割比率を変化させることで、燃費が最適となる動作点を実現できる。
また、好適には、蓄電装置の蓄電量が予め定められた所定値未満である場合に前記動力分割装置の分割比率を変化させるものである。このようにすれば、蓄電装置の蓄電量の低下時に前記動力分割装置の分割比率を変化させることで、必要発電量を確保しつつ燃費を向上させる動作点を実現できる。
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明が好適に適用される前後輪駆動型車両すなわち四輪駆動型車両のハイブリッド駆動装置10(以下、単に駆動装置10という)の構成を説明する骨子図である。この駆動装置10は、前輪38R、38L(以下、特に区別しない場合には単に前輪38という)を駆動する主駆動装置12と、後輪48R、48L(以下、特に区別しない場合には単に後輪48という)を駆動する副駆動装置14とを備えており、その主駆動装置12は、燃料の燃焼によって動力を発生させる内燃機関であるエンジン16と、それぞれ発動機及び発電機として選択的に作動させられる電動機である第1モータジェネレータMG1(以下、単にMG1という)及び第2モータジェネレータMG2(以下、単にMG2という)と、動力分割装置である遊星円錐機構18と、遊星歯車装置20とを、同軸上に備えている。
上記エンジン16は、その吸気配管の吸入空気量を制御するスロットル弁の開度θTHを電気的に制御できるスロットルアクチュエータ30を備えていると共に、トルクコンバータ等の流体式伝動装置が介在することなくダンパ22を介して入力軸24に機械的に接続されている。また、上記MG1は、主に上記遊星円錐機構18により分割される前記エンジン16の動力により発電を行う発電機として使用されるものであり、上記MG2は、主に電気エネルギにより動力を発生させる発動機(電動モータ)として使用されるものである。
前記遊星円錐機構18は、前記エンジン16により発生させられる動力を上記MG1と出力回転部材である出力歯車26とに分割する動力分割装置であり、その出力歯車26に連結されて一体的に回転させられるリング部材R1と、前記MG1のコアに連結されてそのコアと一体的に回転させられるサンギヤS1と、上記リング部R1の内周側に設けられた突起部Rpと摩擦接触させられる円錐状の当接面Pc及び前記サンギヤS1と噛み合わされるギヤ部Pgを備えたピニオン部P1と、そのピニオン部P1を自転可能に保持すると共に前記入力軸24すなわち前記エンジン16の出力軸(ダンパ22)に連結されて一体的に回転させられるキャリアCA1とを、備えて構成されている。また、上記サンギヤS1、キャリアCA1、及びピニオン部P1は、上記リング部R1に対して軸心方向に一体的に相対移動可能に設けられたものであり、それらサンギヤS1、キャリアCA1、及びピニオン部P1を一体的に前記リング部R1に対して軸心方向に相対移動させるアクチュエータ28を備えている。この遊星円錐機構18による動力の分割については、図8乃至図10等を用いて後述する。
前記遊星歯車装置20は、前記遊星円錐機構18のリング部R1に連結されて一体的に回転させられるリングギヤR2と、非回転部材である変速機ケース等に接続されたキャリアCA2と、前記MG2のコアに連結されてそのコアと一体的に回転させられるサンギヤS2と、上記キャリアCA2に保持されて上記リングギヤR2及びサンギヤS2と噛み合わされるピニオンギヤP2とを、備えて構成されたシングルピニオン型の遊星歯車装置である。前記エンジン16により発生させられた動力は前記遊星円錐機構18を介して、前記MG2により発生させられた動力は前記遊星歯車装置20を介してそれぞれ前記出力歯車26から出力される。その出力歯車26から出力された動力は、減速装置32、差動歯車装置34、及び左右1対の車軸36R、36Lを介して前記前輪38へ伝達されるようになっている。なお、図1では、前輪38R、38Lの舵角を変更する操舵装置が省略されている。
前記副駆動装置14は、発動機(電動モータ)及び発電機として選択的に作動させられる電動機であるリヤモータジェネレータMGR(以下、単にMGRという)を備えており、そのMGRから出力されたトルクは、減速装置42、差動歯車装置44、及び左右1対の車軸46R、46Lを介して前記後輪48へ伝達されるようになっている。
図2は、前記駆動装置10に備えられた制御系統の要部を説明する図である。この図2に示すエンジン制御装置50、ハイブリッド制御装置52、及びブレーキ制御装置54は、何れもCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を有する所謂マイクロコンピュータを備えて構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、種々の制御を実行する。また、それらエンジン制御装置50、ハイブリッド制御装置52、及びブレーキ制御装置54は、相互に通信可能とされており、所定の制御装置から必要な信号が要求されると、他の制御装置からその所定の制御装置へ適宜送信されるようになっている。
上記エンジン制御装置50は、前記エンジン16のトルク制御を実行するもので、前記スロットルアクチュエータ30によりスロットル弁開度θTHを制御する他、燃料噴射量制御のために図示しない燃料噴射弁を制御したり、点火時期制御のために図示しないイグナイタを制御したりする。また、定常走行等の所定の運転状態では、最適燃費で前記エンジン16を作動させるようにスロットルアクチュエータ30や燃料噴射量等を制御する。
前記ハイブリッド制御装置52は、バッテリ等の蓄電装置56から前記MG1、MG2に供給される駆動電流や、それ等MG1、MG2からその蓄電装置56へ供給される発電電流、或いは前記MG1からMG2に供給される発電電流(駆動電流)等を制御するインバータ60を制御するためのMG制御装置62と、上記蓄電装置56から前記MGRに供給される駆動電流や、そのMGRから上記蓄電装置56へ供給される発電電流を制御するインバータ64を制御するためのMGR制御装置66とを、備えている。そして、例えば図3に示すように車両の運転状態や走行環境等に応じて複数の走行モードを切り換えて走行するように制御を行う。斯かる制御を行うために、車輪速センサ76から車速Vに対応する前記後輪48の車輪速が、蓄電量センサ78から上記蓄電装置56の蓄電量(残容量)SOCが、それぞれ前記ハイブリッド制御装置52へ供給されるようになっている。その他、アクセルペダル68の操作量Accや、前記MG1、MG2、MGRの回転速度等を表す信号が図示しないセンサ等から前記ハイブリッド制御装置52へ供給されるようになっている。
図3は、前記駆動装置10において選択的に成立させられる複数の走行モードを説明する図である。この図3の各走行モードは一例で、前進走行時のものであり、後進時には前記MG2を逆回転方向へ力行制御する。また、前記エンジン16の始動時には、前記MG1を力行制御してクランキングする。なお、図3のモータジェネレータMG1、MG2、MGRの欄の「○」は、駆動トルクを発生する力行制御を意味し、「●」は、エネルギー回生を行う回生制御を意味している。
図3に示す「モータ二輪走行モード」は、前記エンジン16の作動を停止すると共に、前記MG2を力行制御して走行するもので、低速の軽負荷走行時等に選択される。「ハイブリッド二輪走行モード」は、前記エンジン16を主動力源として走行するもので、前記MG1を回生制御すると共に、その回生制御で得られた電気エネルギで前記MG2を補助的に力行制御するようになっており、定常走行時や前記蓄電装置56の蓄電量SOCが少ない時の軽負荷走行時等に選択される。「モータ四輪走行モード」は、前記エンジン16の作動を停止すると共に、前記MG2及びMGRを力行制御して走行するもので、発進時等に選択される。「ハイブリッド四輪走行モード」は、前記エンジン16を作動させると共に、前記MG1を回生制御して得られた電気エネルギや前記蓄電装置56の電気エネルギにより前記MG2及びMGRを力行制御して走行するもので、加速時や前記蓄電装置56の蓄電量SOCが少ない時の発進時、或いは路面の摩擦係数μが低い低μ路走行時等に選択される。「減速制動走行モード」は、前記MG2及びMGRを回生制御することにより、車両に制動トルクを付与すると共にエネルギ回生を行って前記蓄電装置56を充電するもので、アクセルOFFの減速時等に選択される。以上の走行モードのうち「モータ二輪走行モード」及び「モータ四輪走行モード」はモータ走行モードであり、「ハイブリッド二輪走行モード」及び「ハイブリッド四輪走行モード」はハイブリッド走行モードである。
図2に戻って、前記ブレーキ制御装置54は、油圧ブレーキ制御回路70を介して各車輪38R、38L、48R、48Lに設けられたホイールブレーキ72R、72L、74R、74Lの制動トルクを制御する。このブレーキ制御装置54には、前記車輪速センサ76から車輪の回転速度を表す信号が供給されるようになっており、低μ路等における発進走行時や制動時、旋回時の車両の安定性を高めるために、TRC(トラクションコントロール)制御やABS(アンチロックブレーキシステム)制御、VSC(ヴィークルスタビリティコントロール)制御等を実行する。上記ホイールブレーキ72R、72L、74R、74Lは、油圧により対応する各車輪38R、38L、48R、48Lに制動力を発生させる制動装置である。また、前記ブレーキ制御装置54には、TRC制御等に必要な前後加速度Gやヨーレート等を表す信号が図示しない加速度センサやヨーレートセンサ等から供給される。
図4は、前記ハイブリッド制御装置52が備えている各種の機能を説明する機能ブロック線図である。この図4に示す要求トルク算出手段80は、例えばアクセル操作量Acc及び車速Vをパラメータとして予め定められたマップや演算式等に基づいて、運転者が車両に要求する要求駆動トルクTDを算出する。走行モード切換手段82は、上記要求トルク算出手段80により算出された要求駆動トルクTDや車速V、車両加速度、蓄電量SOC等に基づいて、例えば図3に示す複数の走行モードのうち何れかを選択すると共に、上記要求駆動トルクTD等の変化に応じて走行モードを順次切り換える。トルク分配制御手段84は、上記走行モード切換手段82によって前記「モータ四輪走行モード」或いは「ハイブリッド四輪走行モード」が選択された場合に、運転状態や走行環境等に応じて前後輪のトルク分配を制御するもので、例えば図示しない加速度センサによって検出される前後加速度Gに基づいて車体の荷重を担う前記前輪38R及び38Lと前記後輪48R及び48Lとの間の荷重分配比を決定すると共に、その荷重分配比に基づいてフロント側トルク分配比Ktf及びリヤ側トルク分配比Ktr(Ktrは1よりも小さい値で、Ktf+Ktr=1)を決定する。このリヤ側トルク分配比Ktrは、例えば静的後輪荷重分配比Ktrwに前後加速度Gから求められる路面傾斜角度θLに基づいて決定される補正値(sinθL・K)を加えることによって算出される。また、リヤ側トルク分配比Ktrをマイナスとすることも可能で、その場合は前記MGRを回生制御して制動トルクを発生させる一方、Ktf+Ktr=1となるようにフロント側トルク分配比Ktfが1より大きな値とされる。なお、上記走行モード切換手段82によって「モータ二輪走行モード」或いは「ハイブリッド二輪走行モード」が選択された場合は、フロント側トルク分配比Ktf=1、リヤ側トルク分配比Ktr=0とされる。
フロント側駆動トルク制御手段86は、上記要求トルク算出手段80により算出された要求駆動トルクTDと上記トルク分配制御手段84により決定されたフロント側トルク分配比Ktf或いはリヤ側駆動トルクTRとに基づいてフロント側駆動トルクTF(=TD×KtfまたはTD−TR)を算出し、そのフロント側駆動トルクTFが得られるように前記エンジン16、MG1、及びMG2のトルク制御を行う。また、上記走行モード切換手段82によって選択された走行モードに応じて前記エンジン16の運転を停止したり作動させたりすると共に、前記MG2のトルクを制御する。リヤ側駆動トルク制御手段88は、上記要求トルク算出手段80により算出された要求駆動トルクTDと上記トルク分配制御手段84により決定されたリヤ側トルク分配比Ktr或いはフロント側駆動トルクTFとに基づいてリヤ側駆動トルクTR(=TD×KtrまたはTD−TF)を算出し、そのリヤ側駆動トルクTRが得られるように前記MGRのトルク制御を行う。このように、上記フロント側駆動トルク制御手段86及びリヤ側駆動トルク制御手段88によりフロント側及びリヤ側の駆動トルクTF及びTRが制御されることにより、車両全体として運転者の要求駆動トルクTDが発生させられる。なお、上記MG1、MG2、及びMGRのトルク制御は、力行トルクを発生する力行制御だけでなく、制動トルクを発生する回生制御も含む。
動力分割制御手段90は、動力分割装置としての前記遊星円錐機構18における動力の分割比率を制御する。具体的には、前記アクチュエータ28を介して前記サンギヤS1、キャリアCA1、及びピニオン部P1を一体的に前記リング部R1に対して軸心方向に相対移動させることにより、そのリング部R1に対するピニオン部P1の相対位置を変更することで、前記遊星円錐機構18による前記MG1及び出力歯車26への動力の分割比率を制御する。以下、この遊星円錐機構18における動力の分割比率の変更制御を、図5乃至図10を用いて説明する。
図5は、前記遊星円錐機構18の代替として、ギヤ比が不可変(固定)である一般的なシングルピニオン型の遊星歯車機構を前記駆動装置10に適用した構成において、その遊星歯車機構の各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図である。この図5の共線図は、上記遊星歯車機構のサンギヤS、リングギヤR、及びピニオンギヤPのギヤ比の関係を示す横軸と、相対的な回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、キャリアCAの回転速度が前記エンジン16の回転速度neに対応している。前記エンジン16のように、燃料の燃焼により動力を発生させる内燃機関においては、後述する図7に示すようにその燃費を最適にする運転点がエンジン回転速度ne及びエンジントルクte等に応じて定まる。ここで、上述のように一般的なシングルピニオン型の遊星歯車機構を前記駆動装置10に適用した構成では、所定の車速(リングギヤ回転速度nr)に対応して前記エンジン16の運転点を燃費が最適なものすなわち図5に破線で示すようなものにしようとしても、ピニオンギヤの回転速度npが許容回転数Npmaxを越えないように運転点が制限されるため、結果としてエンジン回転速度neが釣り上げられて図5に実線で示すようにne′となってしまう。そのように回転制限を受ける運転点では、図6に示すように、リングギヤ回転速度nr及びエンジン回転速度neの関係がプラネタリ過回転制限領域内に入るように制限され、結果として図7に示すように、エンジン回転速度ne及びエンジントルクteの関係が、前記エンジン16の燃費を最適なものとする最適燃費線から離れたものになってしまう。
図8は、動力分割装置として前記遊星円錐機構18を前記駆動装置10に適用した構成において、その遊星円錐機構18の各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図である。この図8の共線図は、前記遊星円錐機構18のサンギヤS1、リング部R1、及びピニオン部P1のギヤ比(リング部R1及びピニオン部P1に関しては後述する有効径)の関係を示す横軸と、相対的な回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、キャリアCA1の回転速度が前記エンジン16の回転速度neに対応している。また、図8に示すρ(ρo、ρ1)はサンギヤS1の歯数Zsとリング部R1の有効径に対応する歯数Zrの比(=Zs/Zr)であり、δ(δo、δ1)はサンギヤS1の歯数Zsとピニオン部P1の有効径に対応する歯数Zpの比(=Zs/Zp)である。
前述のように、本実施例の遊星円錐機構18において、前記サンギヤS1、キャリアCA1、及びピニオン部P1は、前記リング部R1に対して軸心方向に一体的に相対移動可能に設けられたものであり、それらサンギヤS1、キャリアCA1、及びピニオン部P1を一体的に前記リング部R1に対して軸心方向に相対移動させるアクチュエータ28を備えている。また、前記ピニオン部P1は、円錐状の当接面Pcにより前記リング部R1の内周側に設けられた突起部Rpと摩擦接触させられており、そのピニオンP1の回転力が摩擦によりそのリング部R1へ伝達されるようになっている。斯かる構成においては、前記アクチュエータ28により前記サンギヤS1、キャリアCA1、及びピニオン部P1が一体的に前記リング部R1に対して軸心方向に相対移動させられることで、前記リング部R1に対するピニオン部P1の相対位置が変化させられる。斯かる相対位置の変化により、前記リング部R1における突起部Rpに対する前記ピニオン部P1における円錐状の当接面Pcの当接位置(接触位置)が変化させられ、その当接面Pcにおける有効径すなわち動力伝達に係る接触部分の径寸法が変化させられて、前記キャリアCA1を介して入力される動力の前記サンギヤS1及びリング部R1への分配比率が変化させられる。なお、図2に示す構成では、前記ピニオン部P1が前記リング部R1に対して前記MG1側へ移動させられるほど有効径が大きくなりそのリング部R1への動力の分配比率が大きくなる(サンギヤS1への分配比率が小さくなる)一方、前記MG2側へ移動させられるほど有効径が小さくなりそのリング部R1への動力の分配比率が小さくなる(サンギヤS1への分配比率が大きくなる)。
本実施例の遊星円錐機構18を前記駆動装置10に適用した構成では、ピニオン部P1の回転速度npが許容回転速度Npmaxを越えると判断される場合には、前述のように前記リング部R1に対するピニオン部P1の相対位置を変更して前記キャリアCA1を介して入力される動力の前記サンギヤS1及びリング部R1への分配比率を変化させることで、図8にnp0からnp1への変化(或いはP0からP1、ρ0からρ1、δ0からδ1への変化)で示すように、前記エンジン16の運転点の領域が拡張される。それにより、図9に示すように、リングギヤ回転速度nr及びエンジン回転速度neの関係に対応するプラネタリ過回転制限領域が拡張され、結果として図10に示すように、エンジン回転速度ne及びエンジントルクteの関係を、前記エンジン16の燃費を最適なものとする最適燃費線に可及的に近いものとすることができる。
図4に戻って、前記動力分割制御手段90は、予め定められた関係から前記エンジン16の燃費を最適なものとするように前記遊星円錐機構18における分割比率を制御する。例えば、エンジン回転速度ne及びエンジントルクteの関係を図10に示すように予め定められた最適燃費線上の値とすることが可能となるように、前記アクチュエータ28を介して前記サンギヤS1、キャリアCA1、及びピニオン部P1を一体的に前記リング部R1に対して軸心方向に相対移動させて、そのリング部R1に対するピニオン部P1の相対位置を変更する。斯かる制御は、好適には、車速Vが予め定められた所定速度Va以上である場合に実行される。また、前記動力分割制御手段90は、好適には、前記蓄電装置56の蓄電量SOCが予め定められた所定値SOCa未満である場合には、必要発電量が得られるように前記遊星円錐機構18の分割比率を変化させる。すなわち、前記サンギヤS1への動力の分配比率を大きくするように前記アクチュエータ28の駆動を制御することで、前記MG1による発電量を増大させて前記蓄電装置56の蓄電量SOCを確保する。
図11は、前記ハイブリッド制御装置52による駆動力分配制御の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、前記遊星円錐機構18のギヤ比ρが初期値であるρ0に設定される。次に、S2において、リング部R1軸上回転速度nrが入力される。次に、S3において、前記アクセルペダル68の踏込量に対応するアクセル開度が入力される。次に、S4において、S3にて入力されたアクセル開度に相当する必要出力Pが入力される。次に、S5において、S1(又はS7)にて設定されたギヤ比ρ、S2にて入力されたリングギヤ軸上回転速度nr、及びS4にて入力された必要出力Pに基づいてエンジン回転速度ne(=f(P))及びピニオン回転速度np(=g(ne,nr,ρ))が算出される。次に、S6において、S5にて算出されたピニオン回転速度npが所定の上限回転速度np_max以下であるか否かが判断される。このS6の判断が肯定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、S6の判断が否定される場合には、前記動力分割制御手段90の動作に対応するS7において、前記アクチュエータ28を介して前記サンギヤS1、キャリアCA1、及びピニオン部P1が一体的に前記リング部R1に対して軸心方向に相対移動させられ、そのリング部R1に対するピニオン部P1の相対位置が変更されて、前記ピニオン回転速度npが上限回転速度np_max以下となるように前記遊星円錐機構18のギヤ比ρが変更(補正)された後、再びS5以下の処理が実行される。
図12は、前記ハイブリッド制御装置52による前記遊星円錐機構18の動力分割比率制御の要部を説明するフローチャートであり、図11に示す制御と併行して所定の周期で繰り返し実行されるものである。この制御では、先ず、SA1において、前記車輪速センサ76により検出される車輪速に対応する車速Vが予め定められた所定速度Vaより大きいか否かが判断される。このSA1の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、SA1の判断が肯定される場合には、前記動力分割制御手段90の動作に対応するSA2において、前記アクチュエータ28を介して前記サンギヤS1、キャリアCA1、及びピニオン部P1が一体的に前記リング部R1に対して軸心方向に相対移動させられ、そのリング部R1に対するピニオン部P1の相対位置が変更されて、前記遊星円錐機構18のギヤ比ρが変更された後、本ルーチンが終了させられる。
図13は、前記ハイブリッド制御装置52による前記遊星円錐機構18の動力分割比率制御の要部を説明するフローチャートであり、図11及び図12に示す制御と併行して所定の周期で繰り返し実行されるものである。この制御では、先ず、SB1において、前記蓄電量センサ78により検出される蓄電量SOCが予め定められた所定値SOCaより小さいか否かが判断される。このSB1の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、SB1の判断が肯定される場合には、前記動力分割制御手段90の動作に対応するSB2において、前記アクチュエータ28を介して前記サンギヤS1、キャリアCA1、及びピニオン部P1が一体的に前記リング部R1に対して軸心方向に相対移動させられ、そのリング部R1に対するピニオン部P1の相対位置が変更されて、前記MG1により必要発電量が得られるように前記遊星円錐機構18のギヤ比ρが変更された後、本ルーチンが終了させられる。
このように、本実施例によれば、燃料の燃焼によって動力を発生させるエンジン16と、回転エネルギにより発電を行い得る電動機であるMG1と、前記エンジン16により発生させられる動力をそのMG1と出力回転部材である出力歯車26とに分割する動力分割装置とを、備えた車両用ハイブリッド駆動装置であって、その動力分割装置は、前記エンジン16により発生させられる動力の前記MG1及び出力歯車26への分割比率を変更できる分割比率可変機構から成るものであることから、前記動力分割装置における分割比率を適宜設定することにより前記エンジン16の最適燃費線上で運転することができ、前記MG1による発電を阻害することなく燃費を向上させることができる。すなわち、必要発電量を確保しつつ燃費を向上させる駆動装置10を提供することができる。
また、前記動力配分装置は、内周側に突起部Rpを備えて前記出力歯車26に連結されたリング部R1と、前記MG1に連結されたサンギヤS1と、前記突起部Rpと摩擦接触させられる円錐状の当接面Pc及び前記サンギヤS1と噛み合わされるギヤ部Pgを備えたピニオン部P1と、そのピニオン部P1を保持すると共に前記エンジン16に連結されたキャリアCA1と、前記サンギヤS1、ピニオン部P1、及びキャリアCA1を一体的に前記リング部R1に対して軸心方向に相対移動させるアクチュエータ28とを、備え、前記リング部R1に対するピニオン部P1の相対位置を変更して前記当接面Pcに対する突起部Rpの当接位置を変更することで前記エンジン16により発生させられる動力の前記MG1及び出力歯車26への分割比率を変更できる遊星円錐機構18から成るものであるため、実用的な分割比率可変機構である遊星円錐機構18により前記エンジン16により発生させられる動力の前記MG1及び出力歯車26への分割比率を適宜変更することができる。
また、車速Vが予め定められた所定速度Va以上である場合に前記遊星円錐機構18の分割比率を変化させるものであるため、車両の高速走行時にその遊星円錐機構18の分割比率を変化させることで、燃費が最適となる動作点を実現できる。
また、前記蓄電装置56の蓄電量SOCが予め定められた所定値SOCa未満である場合に前記遊星円錐機構18の分割比率を変化させるものであるため、前記蓄電装置56の蓄電量SOCの低下時に前記遊星円錐機構18の分割比率を変化させることで、必要発電量を確保しつつ燃費を向上させる動作点を実現できる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
例えば、前述の実施例において、前記駆動装置10は、前記前輪38を駆動させるための主駆動装置12及び後輪48を駆動させるための副駆動装置14から成るものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記副駆動装置14を備えず主駆動装置12のみから成るものであってもよい。また、斯かる主駆動装置12により後輪48を駆動させる構成のものであってもよく、種々の態様の駆動装置に本発明は好適に適用されるものである。
また、前述の実施例において、前記主駆動装置12は、前記エンジン16、MG1、及びMG2を備えて構成されたものであったが、更に第3のモータジェネレータや有段或いは無段の変速機等を備えたものであってもよく、種々のハイブリッド駆動部を採用できる。
また、前述の実施例において、前記遊星円錐機構18による動力の分割に係る電動機であるMG1は、回転エネルギにより発電を行うと共に電気エネルギにより駆動力を発生させるものであったが、少なくとも発電を行い得るものであればよく発動機としての機能を備えないものであってもよい。
また、前述の実施例では、前記エンジン16により発生させられる動力の前記MG1及び出力歯車26への分割比率を変更できる分割比率可変機構として遊星円錐機構18を備えた駆動装置10について説明したが、例えばベルト式無段変速機やトロイダル式無段変速機等を分割比率可変機構として備えたものであっても構わない。
また、前述の実施例では、前記遊星円錐機構18がダンパ22を介して前記エンジン16に接続された駆動装置10について説明したが、トルクコンバータ等の流体式伝動装置が介在させられた構成にも本発明は好適に適用される。
また、前述の実施例では、前記エンジン16及びMG2等により左右の前輪38R、38Lに駆動トルクを付与する態様の駆動装置10について説明したが、左右の車輪に別々に駆動トルクを付与する一対の駆動源を備えた駆動装置にも本発明は好適に適用される。
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
本発明が好適に適用される前後輪駆動型車両のハイブリッド駆動装置の構成を説明する骨子図である。 図1の車両用ハイブリッド駆動装置に備えられた制御系統の要部を説明する図である。 図1の車両用ハイブリッド駆動装置において選択的に成立させられる複数の走行モードを説明する図である。 図2のハイブリッド制御装置が備えている各種の機能を説明する機能ブロック線図である。 図1に示す遊星円錐機構の代替として、ギヤ比が不可変である一般的なシングルピニオン型の遊星歯車機構を図1の車両用ハイブリッド駆動装置に適用した構成において、その遊星歯車機構の各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図である。 図5の共線図に対応して、リングギヤ回転速度とエンジン回転速度との関係がプラネタリ過回転制限領域内に入るように制限されることを説明する図である。 図5の共線図に対応して、エンジン回転速度とエンジントルクとの関係が最適燃費線から外れることを説明する図である。 図1に示す車両用ハイブリッド駆動装置における遊星円錐機構の各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図である。 図8の共線図に対応して、遊星円錐機構における分配比率の変更によりプラネタリ過回転制限領域が拡張されてリングギヤ回転速度とエンジン回転速度との関係がその領域内に収まることを説明する図である。 図8の共線図に対応して、エンジン回転速度とエンジントルクとの関係が最適燃費線に可及的に近づけられることを説明する図である。 図2のハイブリッド制御装置による駆動力分配制御の要部を説明するフローチャートである。 図2のハイブリッド制御装置による動力分割比率制御の要部を説明するフローチャートである。 図2のハイブリッド制御装置による動力分割比率制御の要部を説明するフローチャートである。
符号の説明
10:車両用ハイブリッド駆動装置
16:エンジン
18:遊星円錐機構(動力分割装置)
26:出力歯車(出力回転部材)
28:アクチュエータ
MG1:第1モータジェネレータ(電動機)
CA1:キャリア
P1:ピニオン部
Pc:当接面
Pg:ギア部
R1:リング部
Rp:突起部
S1:サンギヤ

Claims (4)

  1. 燃料の燃焼によって動力を発生させるエンジンと、回転エネルギにより発電を行い得る電動機と、前記エンジンにより発生させられる動力を該電動機と出力回転部材とに分割する動力分割装置とを、備えた車両用ハイブリッド駆動装置であって、
    前記動力分割装置は、前記エンジンにより発生させられる動力の前記電動機及び出力回転部材への分割比率を変更できる分割比率可変機構から成るものであることを特徴とする車両用ハイブリッド駆動装置。
  2. 前記動力配分装置は、
    内周側に突起部を備えて前記出力回転部材に連結されたリング部と、
    前記電動機に連結されたサンギヤと、
    前記突起部と摩擦接触させられる円錐状の当接面及び前記サンギヤと噛み合わされるギヤ部を備えたピニオン部と、
    該ピニオン部を保持すると共に前記エンジンに連結されたキャリアと、
    前記サンギヤ、ピニオン部、及びキャリアを一体的に前記リング部に対して軸心方向に相対移動させるアクチュエータと
    を、備え、
    前記リング部に対するピニオン部の相対位置を変更して前記当接面に対する突起部の当接位置を変更することで前記エンジンにより発生させられる動力の前記電動機及び出力回転部材への分割比率を変更できる遊星円錐機構から成るものである請求項1に記載の車両用ハイブリッド駆動装置。
  3. 車速が予め定められた所定速度以上である場合に前記動力分割装置の分割比率を変化させるものである請求項1又は2に記載の車両用ハイブリッド駆動装置。
  4. 蓄電装置の蓄電量が予め定められた所定値未満である場合に前記動力分割装置の分割比率を変化させるものである請求項1から3の何れか1に記載の車両用ハイブリッド駆動装置。
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