JP2009038316A - 反射防止膜成膜方法、および反射防止膜成膜装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面波プラズマによる窒化シリコン膜の反射防止膜の成膜において、低温での処理を行うことで高いH2パッシベーション効果を得る。
【解決手段】表面波プラズマによる窒化シリコン膜の反射防止膜の成膜において、成膜処理の前処理としてN2ガスを用いたプラズマ処理を行うことで、イオンボンバードメント作用によって半導体表面に存在する自然酸化膜を除去し、この自然酸化膜の除去によって半導体表面での熱拡散を促進させ、これによって低温での成膜を可能とするものであり、成膜温度を低温とすることで、H2パッシベーション効果の高い反射防止膜を形成する。
【選択図】図1
【解決手段】表面波プラズマによる窒化シリコン膜の反射防止膜の成膜において、成膜処理の前処理としてN2ガスを用いたプラズマ処理を行うことで、イオンボンバードメント作用によって半導体表面に存在する自然酸化膜を除去し、この自然酸化膜の除去によって半導体表面での熱拡散を促進させ、これによって低温での成膜を可能とするものであり、成膜温度を低温とすることで、H2パッシベーション効果の高い反射防止膜を形成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、反射防止膜の成膜方法および反射防止膜成膜装置に関し、特に、表面波プラズマ処理による太陽電池の反射防止膜の成膜に関する。
基板上に成膜を行って薄膜等を製造する成膜装置が知られている。このような成膜装置として、プラズマCVD装置があり、太陽電池用薄膜、感光ドラム、液晶ディスプレイ等に用いられるTFTアレイ等の種々の半導体製造に使用されている。
太陽電池は、一般にn型シリコンとp型シリコンの積層構成の半導体で構成され、この半導体に光が当たると光電効果により電気が発生する。太陽電池は、太陽光を効率よく吸収するために、通常、太陽電池の受光面を反射防止膜で被覆している。従来、この種の反射防止膜として、PVD法及び蒸着法によって作成する方法、スピンオン法,スプレー法,ディップ法で塗布し堆積させた後、熱処理によって作成する方法の他、プラズマCVD法により、水素を含有する窒化シリコン膜を太陽電池の受光面に形成する技術が知られている(特許文献1)。プラズマCVD法では、平行平板プラズマCVDによって、半導体基板を例えば550℃で加熱して反射防止膜用の窒化シリコン膜(SiNx)を形成している。
また、太陽電池の反射防止膜である窒化シリコン膜中の水素が太陽電池のシリコン基板に拡散され、太陽電池の効率が上がるパッシベーション効果が知られている(特許文献2)。
平行板プラズマCVD装置を用いて窒化シリコン膜を成膜することで反射防止膜に形成することが一般的であるが、大面積に基板を処理する場合には、この大面積用に対応した電極では、異常放電が発生しやすいという問題があり、また、電極構造が複雑となるため、高密度プラズマに適した周波数領域を得ることが困難である。
特許文献1および特許文献2の窒化シリコン膜は、プラズマCVD法による成膜時の成膜条件によって窒化シリコン中の水素の濃度を調節する。このため、H2パッシベーション効果を高めるために窒化シリコン中の水素の含有量を大きくしようとすると、成膜時の反応ガス使用量が増加したり、成膜条件の制御が困難になるなど、生産性の低下をもたらすという問題点があった。また特許文献2では、H2パッシベーション効果を高めるために350℃以上の温度で成膜しなくてはならない。このため、プラズマCVD装置の内部に付着する生成物が多くなり、プラズマCVD装置内のクリーニング頻度が高くなるという問題点があった。
また、低周波数で処理することによって、H2パッシベーション効果が高い窒化シリコン膜(SiNx)が得られることが知られている。
また、緻密な膜を作成するには、良好な熱拡散によって均一な温度分布を形成する必要である。良好な熱拡散は高温とすることで得ることができるが、高温処理とした場合には、上述したように、プラズマCVD装置の内部に付着する生成物が多くなり、メンテナンス頻度が高まるという問題点が発生する。
プラズマを用いて窒化シリコン膜(SiNx)の成膜において、プラズマCVD装置の温度を上げずに、また、H2パッシベーション効果の高い窒化シリコン膜を形成するために、本発明の発明者は、表面波プラズマを用いた成膜方法を提案している(特許文献3)。
表面波プラズマ処理によって太陽電池の反射防止膜用の窒化シリコン膜(SiNx)を作成する場合、例えば450℃以上の高温成膜が必要である。表面波プラズマ処理において、低温成膜(例えば、400℃)以下、では、成膜レートが上昇した場合、目標成膜膜厚800Åに対してH2パッシベーション効果が不十分となるという問題がある。
このような問題に対して、前記した特許文献3では、結晶性シリコン基板の受光面側に窒化シリコン膜の反射防止膜を形成して成る太陽電池の製造において、窒化シリコン膜を表面波プラズマ処理等の高密度プラズマCVD法により成膜し、成膜した窒化シリコン膜を水素を含む雰囲気中で熱処理することで、処理温度を低下させている。
この処理によれば、処理温度を低下させることができるものの、窒化シリコン膜を高密度プラズマCVD法により形成する成膜工程や成膜手段に加えて、窒化シリコン膜を水素を含む雰囲気中で熱処理するための熱処理工程や熱処理手段を要するため、工程および構成要素が増えることになる。
そこで、本発明は上記課題を解決して、表面波プラズマによる窒化シリコン膜の反射防止膜の成膜において、低温での処理を行うことで高いH2パッシベーション効果を得ることを目的とする。
また、表面波プラズマによる窒化シリコン膜の反射防止膜の成膜において、成膜処理の後に行う熱処理を不要とすることを目的とする。
本発明は、表面波プラズマによる窒化シリコン膜の反射防止膜の成膜において、成膜処理の前処理としてN2ガスを用いたプラズマ処理を行うことで、イオンボンバードメント作用によって半導体表面に存在する自然酸化膜を除去し、この自然酸化膜の除去によって半導体表面での熱拡散を促進させ、これによって低温での成膜を可能とするものであり、成膜温度を低温とすることで、H2パッシベーション効果の高い反射防止膜を形成するものである。
本発明は成膜方法の態様、成膜装置の態様、および、成膜方法で形成された太陽電池の態様の各態様とすることができる。
本発明の成膜方法の態様は、太陽電池の半導体表面に窒化シリコン(SiNx)膜の反射防止膜を形成する成膜方法において、成膜工程とこの成膜工程の前処理を行う工程とを備え、前処理工程によって成膜工程における熱拡散を向上させて、低温での成膜を可能とする。
前処理工程は、半導体表面をN2ガスを用いてプラズマ処理を行う。このN2ガスを用いてプラズマ処理は、イオンボンバードメント作用によって半導体表面に存在する自然酸化膜を除去する。
成膜処理工程は、前処理工程によって酸化膜を除去した半導体表面に表面波プラズマ処理により窒化シリコン(SiNx)膜を成膜する。前処理工程は半導体表面の自然酸化膜を除去するため、自然酸化膜で低減されていた半導体表面の熱拡散は良好となる。
本発明の成膜方法を適用する太陽電池の半導体表面として、多結晶の結晶性シリコンの表面、あるいは単結晶の結晶性シリコンの表面とすることができる。
本発明の成膜装置の態様は、太陽電池の半導体表面に窒化シリコン(SiNx)膜の反射防止膜を形成する成膜装置において、半導体表面に表面波プラズマ処理を施す成膜室と、この成膜室にプロセスガスを導入するプロセスガス導入部と材料ガスを導入する材料ガス導入部とを備える。
プロセスガス導入部は、成膜室内に窒素ガス(N2)を導入してプラズマ処理を行い、この窒素ガス(N2)によるプラズマ処理によって半導体表面に存在する自然酸化膜を除去する。
また、材料ガス導入部は、窒素ガス(N2)のプラズマ処理によって自然酸化膜を除去した後、成膜室内に材料ガスを導入して表面波プラズマ処理により窒化シリコン(SiNx)膜を成膜する。この成膜処理において、半導体表面の熱拡散は良好であるため、低温でH2パッシベーション効果の高い反射防止膜を成膜することが可能となる。
本発明によれば、表面波プラズマによる窒化シリコン膜の反射防止膜の成膜において、低温での処理を行うことにより、高いH2パッシベーション効果を得ることができる。
また、本発明によれば、表面波プラズマによる窒化シリコン膜の反射防止膜の成膜において、成膜処理の後に行う熱処理を不要とすることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
はじめに、本発明の実施の形態による太陽電池について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態による太陽電池の断面図である。太陽電池20は、p型シリコン基板層21、n型拡散層22、p+裏面側不純物拡散層23、反射防止膜24、表面電極25、裏面電極26および半田層27、28から構成される。p型シリコン基板層21は、ホウ素などの3価元素を微量に加えて作製されたシリコン基板により形成される。p型シリコン基板層は単結晶でも多結晶でもよい。n型拡散層22は、p型シリコン基板の表面にn型のドーパントとしてリンを拡散することによって形成され、p型シリコン基板層21とn型拡散層22によってpn結合が形成される。p+裏面側不純物拡散層23は、p型シリコン基板の表面にp型のドーパントとしてアルミニウムを拡散することによって形成される。反射防止膜24は、p型シリコン基板層21の表面に窒化シリコン(SiNx)を成膜して形成される。ここでは、p型シリコン基板層21の表面に形成したn型拡散層22の表面に窒化シリコン(SiNx)を成膜する。また、n型拡散層22の表面およびp+裏面側不純物拡散層23には、表面電極25および裏面電極26はAg電極が用いられる。
以下、本実施の形態の太陽電池の製造方法について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
はじめに、p型シリコン基板21の表面に微細凹凸構造を形成するために表面処理を行う。この表面処理は、例えば、アルカリ水溶液でエッチングする方法や反応性イオンエッチング法による方法などを用いることができる。シリコン基板の表面に微細凹凸構造を形成することによってシリコン基板表面の光の反射を抑えることができる(S1)。
n型ドーパントをp型シリコン基板21の表面から拡散させ、n型拡散層22を形成する。n型ドーパントとして例えばリン(P)を使用する。p型シリコン基板の表面にリンを拡散させる方法として、例えば、POCl3を用いた気相拡散法、P2O5を用いた塗布拡散法、Pイオンを直接拡散させるイオン打ち込み法等がある(S2)。
n型ドーパントを拡散したp型シリコン基板21の一方の面のn型拡散層を除去するためにエッチング処理を行う(S3)。
エッチングしたp型シリコン基板21の表面からp型のドーパントを拡散させ、p+裏面側不純物拡散層23を形成する。p型のドーパントとして例えばアルミニウム(Al)を使用する。エッチングしたp型シリコン基板21の表面にAlペーストを塗布し、熱処理することによってアルミニウムをp型シリコン基板21の表面に拡散させる(S4)。
n型拡散層22の表面に反射防止膜24を形成する。反射防止膜として窒化シリコン膜(SiNx)を使用し、表面波プラズマによる高密度プラズマCVD装置を使用して形成する(S5)。
表面電極25および裏面電極26のパターニングを行う。パターニングは、Ag粉、バインダ、フリットからなるAgペーストをスクリーン印刷することによって行う。太陽電池の効率を高めるために電極はくし型パターンに形成される(S6)。
印刷されたAgペーストが焼成され、電極が形成される(S7)。半田層27、28は半田ディップ法で形成される(S8)。
上記したS5の工程により、反射防止膜形成装置においてS4までの製造工程で完了した太陽電池の半導体面上に反射防止膜24が形成される。
S2の製造工程までに完了した太陽電池を、ここでは便宜上、反射防止膜形成前基板と呼ぶ。反射防止膜形成装置1は、チャンバー2、表面波励起プラズマCVD装置13から構成される。チャンバー2は、反射防止膜形成前基板を反射防止膜形成装置1に搬送した際に、雰囲気を外気から反射防止膜形成装置1内部の雰囲気に置換する装置であり、チャンバー内は真空排気装置による真空引きによって真空雰囲気となる。
表面波励起プラズマCVD装置13は、反射防止膜形成前基板の表面に窒化シリコン膜を形成する装置である。なお、搬送装置を設けて、反射防止膜形成前基板1をチャンバー2内の表面波プラズマCVD装置13への搬入、表面波励起プラズマCVD装置13により窒化シリコン膜を形成した基板をチャンバー外への搬出等を行うことができる。
表面波励起プラズマCVD装置(以下、SWP−CVD装置という)は、表面波を利用して大面積で高密度のプラズマを容易に発生させることができ、このプラズマは、表面波励起プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)と呼ばれる。なお、上記した符号は図3に基づくものである。
以下、反射防止膜成膜装置の構成について、図3に示す概略図を用いて説明する。図3において、反射防止膜成膜装置1は、チャンバー2、誘電体板3、マイクロ波導波管4、プロセスガス導入管5、材料ガス導入管6、真空排気管7、ステージ8、ヒータ9を備える。
誘電体板3にはマイクロ波導波管4を通してマイクロ波発生源14からマイクロ波が供給され、誘電体板3の表面近傍にプラズマを励起する表面波励起プラズマ装置13の一部を構成している。誘電体板3の上面に接して、マイクロ波導波管4が設置され、誘電体板3と接するマイクロ波導波管4の底板には、開口で形成されるスロットアンテナが複数個設けられ、このスロットアンテナを通してマイクロ波が導入される。誘電体板3は、例えば、石英、アルミナまたはジルコニアなどで作製することができる。また、誘電体板3は、複数の部分から構成してもよい。
また、マイクロ波導波管4には、マイクロ波の波端を整合して定在波が安定して形成されるように端整合器や側面反射板等を設けることができる。
また、チャンバー2は、その内部空間に生成する表面波励起プラズマを利用して、ステージ8上に載置した基板の表面に成膜を施す密閉容器であり、内部を真空排気するための真空排気管7が設けられ、図示しない真空ポンプによって真空引きされる。ステージ8は、上下方向の移動と回転が可能であり、内部に設けたヒータ9によって成膜対象である基板を加熱することが可能である。また、必要に応じて、冷却する構成や、電界を印加する構成としてもよい。
また、誘電体板3にはプロセスガス導入管5が設けられ、マスフローコントローラ(MFC)15から調整バルブ12を介して例えば、Arガス等のプロセスガスと、自然酸化膜の除去に用いる窒素ガスが導入される。窒素ガスは、プラズマ処理によるイオンボンバードメント作用によって半導体表面に存在する自然酸化膜を除去する。
誘電体板3には、複数のマイクロ波導波管4が設けられ、各マイクロ波導波管4は複数のマイクロ波発生源14からそれぞれマイクロ波電力の供給を受ける。また、誘電体板3には、複数のプロセスガス導入管5が設けられ、各プロセスガス導入管5はそれぞれプロセスガスあるいは窒素ガスが導入される。
マイクロ波導波管4からマイクロ波を誘電体板3に導入することによって、チャンバー2内にはプラズマが励起されるが、このように誘電体板3に複数のマイクロ波導波管4および複数のプロセスガス導入管5を設けることによって、チャンバー2内に放電領域を均一に励起させることができる。なお、図3では、マイクロ波導波管4および複数のプロセスガス導入管5をそれぞれ2組示していているが、設ける個数は2組に限られるものではなく、誘電体板3の大きさや形状に合わせて定めることができる。
また、チャンバー2内には、材料ガスを導入する材料ガス導入管6が複数設けられる。図3では、チャンバー2の中央部分に第1材料ガス導入管6aを配置し、チャンバー2の側面側に第2材料ガス導入管6bおよび第3材料ガス導入管6cを配置する構成を示している。第1材料ガス導入管6aは、チャンバー2の中央部分の領域10aに材料ガスを導入し、第2材料ガス導入管6bおよび第3材料ガス導入管6cは、チャンバー2の側部分の領域10b、10cに材料ガスを導入する。なお、第1材料ガス導入管6a〜第3材料ガス導入管6cには、マスフローコントローラ(MFC)16a〜16cから材料ガスが供給される。
なお、図3では、材料ガス導入管6を3組示していているが、設ける個数は3組に限られるものではなく、チャンバー2やステージ8の大きさや形状に合わせて定めることができる。
また、ステージ8に設けるヒータ9についても、上記した各領域10に応じて複数箇所に設けることができる。図3では、領域10aに対応する位置にヒータ9aを設け、領域10bに対応する位置にヒータ9bを設け、領域10cに対応する位置にヒータ9cを設ける例を示している。
成膜ガスのうち、プロセスガス導入管5からチャンバー2内へ導入されるプロセスガスは、N2ガス、O2ガス、H2ガス、NO2ガス、NOガス、NH3ガス等の反応性活性種の原料となるガスの他に、Arガス、Heガス、Neガス、Krガス、Xeガス等の希ガスである。成膜ガスのうち材料ガス導入管6からチャンバー2内へ導入される材料ガスは、SiH4ガス、Si2H6ガス等のシリコン薄膜或いはシリコン化合物薄膜の成分であるSi元素を含むガスである。
チャンバー2の底板には、図示しない真空排気ポンプに接続される真空排気管7が配設されている。プロセスガス導入管5、材料ガス導入管6を通してそれぞれ所定のガスを所定流量でチャンバー2内に導入しながら排気を行うことによって、チャンバー2内を所定圧力に保持することができる。
上記のように構成された表面波プラズマ装置13では、マイクロ波発生源14から周波数2.45GHzのマイクロ波をマイクロ波導波管5内に伝搬させ、終端整合器(図示していない)によってTE10モードの電磁波の定在波Tを発生させる。そして定在波Tは、定在波Tの波長の間隔に設置したスロットアンテナ(図示していない)から誘電体板3へ放射される。スロットアンテナ(図示していない)から放射された電磁波は誘電体板3の内部を伝播し、側面反射板(図示していない)で囲われた範囲で固有の定在波を発生させ、誘電体板3の表面に表面波(SW)を発生させる。この表面波(SW)によって誘電体板3の直下の成膜ガスが電離、解離されて表面波励起プラズマPが生成する。
表面波励起プラズマはマイクロ波のカットオフ密度以上の電子密度となり、プラズマ境界面で電磁波を全反射し、プラズマ内へ電磁波が吸収されないため、電磁波によるイオン、電子の加熱が生じることがなく、イオンエネルギーは10eV以下の低温を維持する。表面波励起プラズマは、誘電体板3の表面とプラズマ境界面の間でエネルギーの授受が行われ、誘電体板3の表面近傍のみに高エネルギーのプラズマが分布し、誘電体表面から離れるにしたがって指数関数的にエネルギーレベルが減少する。誘電体板3から200mm程度の距離ではイオンエネルギーは20ev以下となる。このように表面波励起プラズマには高エネルギー領域と低エネルギー領域が発生するので、高エネルギー領域でラジカル生成を行い、低エネルギー領域に材料ガスを導入することによって、高効率ラジカル生成と、低ダメージ高速成膜が可能となる。
表面波(SW)は、誘電体板3の内面全域に拡がるので、表面波励起プラズマもチャンバー2内でそれに対応した領域に拡がる。したがって、誘電体板3を拡張することで大面積対応が可能となる。この表面波励起プラズマを利用して、反射防止膜形成前基板上に反射防止膜を成膜する。
本発明は、この反射防止膜の成膜において、表面波励起プラズマの高エネルギー領域にプロセスガス導入管4から窒素ガスを導入してラジカルを生成させ、このプラズマ処理によるイオンボンバードメント作用によって基板の半導体表面に存在する自然酸化膜を除去する。
その後、表面波励起プラズマの高エネルギー領域にプロセスガス導入管4からArガスを導入してラジカルを生成させるとともに、表面波励起プラズマの低エネルギー領域に材料ガス導入管6から材料ガスを導入することによって、低ダメージの高速成膜を行う。
図4は、S5の反射防止膜の成膜工程の詳細を説明するためのフローチャートである。反射防止膜の成膜工程では、はじめにチャンバー1内を真空排気しておき(S5a)、プロセスガス導入管4から窒素ガス(N2)を導入するとともに(S5b)、マイクロ波電力を供給してラジカルを生成させ、このプラズマ処理によるイオンボンバードメント作用によって基板の半導体表面の自然酸化膜を除去する(S5c)。
その後、プロセスガス導入管4から導入するガスを窒素ガス(N2)からプロセスガス(Arガス)に切り替えて導入して表面波励起プラズマを励起し(S5d)、材料ガス導入管6から材料ガス(例えば、SiH4ガス)を導入することによって(S5e)、自然酸化膜を除去した基板の表面に反射防止膜を成膜する(S5f)。
なお、窒素ガスによるプラズマ処理の条件は、例えば、窒素ガスのガス量を144sccm/50sccm、マイクロ波電力を2.0kw、チャンバー内の圧力を4.0Pa、処理時間を1min、誘電体板とのギャップ間隔を50mmである。
また、屈折率2.11の反射防止膜を成膜する反射防止膜の成膜条件は、例えば、成膜温度を350℃、SiH4ガスのガス量を50sccm、NH3ガスのガス量を60sccm、SiH4のマイクロ波電力を2.0kw、チャンバー内の圧力を4.0Paである。
本実施の形態では、高密度プラズマCVD装置によって反応ガスは完全に解離するので、高密度プラズマCVD装置の内部に付着する生成物の量は少ない。このため、高密度プラズマCVD装置のクリーニングの頻度は少なくなる。また、高密度プラズマCVD装置の内部の温度を低温とすることができるため、クリーニング作業が可能となる温度に下がるまでに要する時間が短い。このためクリーニングをするために高密度プラズマCVD装置を停止させる時間を短くすることができる。
本発明は、太陽電池用薄膜に限らず、同様な成膜要求を有する基板上への薄膜の成膜に適用することができる。
1…反射防止膜成膜装置、2…チャンバー、3…誘導体板、4…マイクロ波導入管、5,5a,5b…プロセスガス導入管、6,6a,6b,6c…材料ガス導入管、7…真空排気管、8…ステージ、9a,9b,9c…ヒータ、10,10a,10b,10c…領域、11…放電領域、12…調整バルブ、13…表面波励起プラズマ装置、14…マイクロ波発生源、15…マスフローコントローラ、16,16a,16b,16c…マスフローコントローラ、20…太陽電池、21…n型ドーパントをp型シリコン基板、22…n型拡散層、23…p+裏面側不純物拡散層、24…反射防止膜、25…表面電極、26…裏面電極、27,28…半田層。
Claims (4)
- 太陽電池の半導体表面に窒化シリコン(SiNx)膜の反射防止膜を形成する成膜方法において、
前記半導体表面をN2ガスを用いてプラズマ処理を行う前処理工程と、
前記前処理工程によって半導体表面の酸化膜を除去した後、当該半導体表面に表面波プラズマ処理により窒化シリコン(SiNx)膜を成膜する成膜工程と備えることを特徴とする太陽電池の反射防止膜成膜方法。 - 前記太陽電池の半導体表面は、多結晶および/又は単結晶の結晶性シリコンの表面であることを特徴とする、請求項1に記載の反射防止膜成膜方法。
- 請求項1又は2に記載の反射防止膜成膜方法により成膜された太陽電池。
- 太陽電池の半導体表面に窒化シリコン(SiNx)膜の反射防止膜を形成する成膜装置において、
前記半導体表面に表面波プラズマ処理を施す成膜室と、当該成膜室にプロセスガスを導入するプロセスガス導入部と材料ガスを導入する材料ガス導入部とを備え、
前記プロセスガス導入部により成膜室内に窒素ガス(N2)ガスを導入してプラズマ処理を行った後、前記材料ガス導入部により成膜室内に材料ガスを導入して表面波プラズマ処理により窒化シリコン(SiNx)膜を成膜することを特徴とする反射防止膜成膜装置。
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