JP2009030745A - 流体軸受装置およびこれを備えたスピンドルモータ - Google Patents

流体軸受装置およびこれを備えたスピンドルモータ Download PDF

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Abstract

【課題】潤滑流体の外部への漏れ出しを防止して、良好なシール性能を維持することが可能な流体軸受装置およびこれを備えたスピンドルモータを提供する。
【解決手段】流体軸受装置30は、シャフト32と、スリーブ31と、微少間隙に充填される潤滑剤36と、ラジアル軸受部42と、スラスト軸受部41,43と、軸受シール部37と、を備えている。そして、スリーブ31のシャフト32方向への変動容積を示すV1と軸受シール部37の開放端37A近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数を示すP1との関数P1/V1の値を所定値以上としている。
【選択図】図4

Description

本発明は、ハードディスクドライブ(以下、HDDと示す。)等のように情報を記録もしくは再生する装置に搭載される流体軸受装置およびこれを備えたスピンドルモータに関する。
近年、回転するディスクを用いた記録装置等はそのメモリー容量が増大し、また、データの転送速度が高速化している。このため、記録装置に使用される軸受は、ディスク負荷を高精度に回転させるための高い性能と信頼性とが要求されている。そこで、これらの記録装置には、高精度回転に適した流体軸受置が用いられている。また、小型ノートパソコン等のモバイル機器においては、より一層、高容量、小型化、さらに耐衝撃性にも強い記録装置が要求されている。
流体軸受装置は、軸とスリーブ部材との間にオイル等の潤滑流体を介在させ、動圧発生溝によって回転時にポンピング圧力を発生し、これにより、軸がスリーブに対して非接触で回転する。流体軸受装置は、軸とスリーブとが非接触であるため機械的な摩擦が無く、高速かつ高精度な回転に適している。
特開2002−54628号公報 特開2003−158861号公報
モバイル商品に用いられる流体軸受装置は、耐衝撃性、軸受隙間に空気が混入して油膜切れを生じたり、オイルが漏れを生じたりしない事が要求されている。特に、耐衝撃性は、従来は700G程度の要求であったが、今日では2000Gもの高い耐衝撃性能が要求されるようになっている。
特許文献1および特許文献2に示されるような流体軸受装置においては、軸と一体的に取り付けられたフランジは、スリーブとスラスト板との間に、それぞれ軸方向の隙間(ガタ)を持っている。そして、上記流体軸受装置が軸方向に衝撃荷重が加えられると、軸が軸方向への移動を繰り返し、水鉄砲のピストンが出入りするような状態になる。このとき、軸受隙間に充填されたオイルが開口部から噴出して気泡が流入し、やがて、油膜切れが発生してしまう。
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、潤滑流体の外部への漏れ出しを防止して、良好なシール性能を維持することが可能な流体軸受装置およびこれを備えたスピンドルモータを提供することを目的とする。
第1の発明に係る流体軸受装置は、軸と、スリーブ部材と、潤滑流体と、軸受部と、軸受シール部と、を備えている。スリーブ部材は、開口端と閉塞端とを含む軸受孔を有しており、軸受孔内に軸が微少間隙を介して挿入され、軸に対して相対回転可能な状態に配置されている。潤滑流体は、微少間隙に充填されている。軸受部は、潤滑流体を介して軸とスリーブ部材とを軸の半径方向に支持するラジアル軸受部と、軸方向に支持するスラスト軸受部と、を有している。軸受シール部は、軸受部の開放端側に配置されており、潤滑流体が開放端から漏れ出すことを軸とスリーブ部材との間に働く毛管力によって抑制する。そして、変動容積を示すV1と第1毛管圧力係数を示すP1との関数P1/V1の値が所定値以上である。また、V1とP1とは、以下のように示される。
V1=π×dg×dg×G ・・・(1)
V1:スリーブ部材が軸に対して軸方向に相対移動が可能な容積[m3
dg:開口端における軸受部の最外半径[m]
G :スリーブ部材が軸に対して軸方向に相対移動が可能な距離[m]
Fg1o=π×D1×γ×cosθ ・・・(2)
Fg1i=π×D1i×γ×cosθ ・・・(3)
D1i=D1−2×r1 ・・・(4)
Fg1=Fg1o+Fg1i ・・・(5)
Ag1=π×(D12−D1i2)/4 ・・・(6)
P1=Fg1/Ag1 ・・・(7)
P1:軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数[Pa]
γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
D1:軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面の外径[m]
r1:軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚さ[m]
ここでは、変動容積を示すV1と第1毛管圧力係数を示すP1との関係に着目し、関数P1/V1の値が所定値以上となるようにしている。
なお、ここでいう軸には、軸に取り付けられているロータハブ等も含む。
以下に、P1、V1についてそれぞれ説明する。
変動容積V1は、スリーブ部材が軸に対して軸方向に相対移動が可能な容積をいい、以下の関係式(1)によって示される。
V1=π×dg×dg×G ・・・(1)
ここで、開口端における軸受部の最外半径を示すdgは、例えば、軸受シール部が、スリーブ部材の外周面と軸部に取り付けられたロータハブの内周面とによって形成されており、スリーブ部材の開口端近傍にスラスト軸受部が配置されている場合には、スラスト軸受部の軸の半径方向における最も外側部分における半径をいう。また、例えば、軸受シール部が、軸の外周面とスリーブ部材の内周面とによって形成されており、スリーブ部材の開口端近傍に軸受シール部が配置されている場合には、ラジアル軸受部の半径をいう。
第1毛管圧力係数P1は、軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数をいい、以下の関係式(2)〜(6)によって導かれる関係式(7)によって示される。
Fg1o=π×D1×γ×cosθ ・・・(2)
Fg1i=π×D1i×γ×cosθ ・・・(3)
D1i=D1−2×r1 ・・・(4)
Fg1=Fg1o+Fg1i ・・・(5)
Ag1=π×(D12−D1i2)/4 ・・・(6)
P1=Fg1/Ag1 ・・・(7)
ここで、r1は、開放端近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚を示している。一般的に、軸受シール部を形成するスリーブ部材、あるいは、軸の周面(以下、軸受シール面と示す)は、開放端側に向かって隙間が広くなる方向に傾斜している。このとき、開放端近傍に位置する気液境界面も軸方向に対して略垂直に形成されず傾斜して形成される場合もある。従って、内外軸受シール面が互いにαの角度を有する場合においては、内外軸受シール面の二等分線も傾斜する(2/α)場合があり、このとき、例えば、関係式(2)を厳密に表現すれば、以下の関係式(2A)に示されるようになる。
Fg1o=π×D1×γ×cosθ×cos(α/2) ・・・(2A)
ところが、上記軸受シール面の角度αは、大きくても20度程度であり、これによる気液境界面の傾きも10度程度である。このとき、cos(α/2)≒0.985であることから、軸受シール面の角度αを計算上無視しても関係式(2)に影響はない。
さらに、軸受シール部における潤滑流体溜まりの容積を示すV2と、変動容積を示すV1とは、V1<V2の関係を満たしている。
従来の流体軸受装置においては、軸と一体的に取り付けられたフランジは、スリーブ部材とスラスト板との間に、それぞれ軸方向の隙間(ガタ)を有しており、軸方向に衝撃荷重が加えられると、軸が軸方向への移動を繰り返し、水鉄砲のピストンが出入りするような状態になる。このとき、軸受隙間に充填されたオイルが開口部から噴出して気泡が流入し、やがて、油膜切れが発生してしまう。そこで、軸方向の隙間を一定範囲に設計することによって、耐衝撃性能を確保するような対策が行われてきたが、より大きな衝撃荷重が加わるモバイル商品に用いられる流体軸受装置等では、シール性能を維持することができない。
そこで、本発明の流体軸受装置においては、軸受シール部におけるシール性能と相関関係があると考えられる第1毛管圧力係数P1と、耐衝撃性能と相関関係があると考えられる変動容積V1との関係(P1/V1)に着目し、関数P1/V1が所定値以上となるようにしている。そして、潤滑流体が軸受シール部の開放端から漏れ出さないための臨界点を想定衝撃荷重、軸受形状ごとに算出し、上記所定値として適用する。
これにより、所定の衝撃荷重、軸受形状に対応する関数P1/V1の値を満たすことによって、外部から衝撃が加えられた場合でも、潤滑流体が開放端から漏れ出すことを防止することが可能となる。
この結果、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能となる。
第2の発明に係る流体軸受装置は、第1の発明に係る流体軸受装置であって、軸は、開口部側に略円形の天板と天板から垂下する円筒壁とから形成されるロータハブ部材が取り付けられており、軸受シール部は、スリーブ部材の外周面とロータハブ部材の内周面とによって形成されており、関数P1/V1の値は、4.5×1011以上である。
ここでは、上記変動容積を示すV1と、ロータハブ部材の円筒壁とスリーブ部材の外周面とから形成されている軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数を示すP1との関数P1/V1の値を、4.5×1011以上としている。
ここで、4.5×1011という値は、開口部側に略円形の天板と天板から垂下する円筒壁とから形成されるロータハブ部材が軸に取り付けられ、軸受シール部が、スリーブ部材の外周面とロータハブ部材の内周面とによって形成されている上述の流体軸受装置において、想定衝撃荷重を2000Gとしたときに、潤滑流体が軸受シール部の開放端から漏れ出さないための臨界点として算出された値である。
これにより、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能となる。
第3の発明に係る流体軸受装置は、第1の発明に係る流体軸受装置であって、軸受シール部は、軸の外周面とスリーブ部材の内周面とによって形成されており、関数P1/V1の値は、1.5×1012以上である。
ここでは、上記変動容積を示すV1と、軸の外周面とスリーブ部材の内周面とから形成されている軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数を示すP1との関数P1/V1の値を、1.5×1012以上としている。
ここで、1.5×1012という値は、軸受シール部が、軸の外周面とスリーブ部材の内周面とによって形成された上述の流体軸受装置において、想定衝撃荷重を2000Gとしたときに、潤滑流体が軸受シール部の開放端から漏れ出さないための臨界点として算出された値である。
これにより、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能となる。
第4の発明に係る流体軸受装置は、第1の発明に係る流体軸受装置であって、変動容積を示すV1と第2毛管圧力係数を示すP2との関数P2/V1の値が所定値以上である。そして、V1とP2とは、以下のように示される。
V1=π×dg×dg×G ・・・(8)
V1:スリーブ部材が軸に対して軸方向に相対移動が可能な容積[m3
dg:開口端における軸受部の最外半径[m]
G :スリーブ部材が軸に対して軸方向に相対移動が可能な距離[m]
Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(9)
Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(10)
D2i=D2−2×r2 ・・・(11)
Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(12)
Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(13)
P2=Fg2/Ag2 ・・・(14)
P2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数[Pa]
γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
D2:軸受シール部の奥部における外径[m]
r2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚さ[m]
ここでは、軸受シール部におけるシール性能と相関関係があると考えられる第2毛管圧力係数P2と、耐衝撃性能と相関関係があると考えられる変動容積V2との関係(P2/V1)に着目し、関数P2/V1が所定値以上となるようにしている。そして、潤滑流体が軸受シール部の開放端から漏れ出さないための臨界点を想定衝撃荷重、軸受形状ごとに算出し、上記所定値として適用する。
以下に、P2、V1についてそれぞれ説明する。
変動容積V1は、スリーブ部材が軸に対して軸方向に相対移動が可能な容積をいい、以下の関係式(8)によって示される。
V1=π×dg×dg×G ・・・(8)
第2毛管圧力係数P2は、軸受シール部の奥部、すなわち、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数をいい、以下の関係式(9)〜(13)によって導かれる関係式(14)によって示される。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(9)
Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(10)
D2i=D2−2×r2 ・・・(11)
Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(12)
Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(13)
P2=Fg2/Ag2 ・・・(14)
なお、ここでいう軸受シール部の奥部とは、軸受シール部の開放端から軸受部に向かって奥側の部分をいう。例えば、軸受シール部が、開放端に向かって隙間が広がる方向にテーパ形状を有している場合には、隙間の最も小さい部分を軸受シール部の奥部という。
ここで、r2は、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚を示している。一般的に、軸受シール部を形成するスリーブ部材、あるいは、軸の周面(以下、軸受シール面と示す)は、開放端側に向かって隙間が広くなる方向に傾斜している。このとき、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面も軸方向に対して略垂直に形成されず傾斜して形成される場合もある。従って、内外軸受シール面が互いにαの角度を有する場合においては、内外軸受シール面の二等分線も傾斜する場合があり、このとき、例えば、関係式(14)を厳密に表現すれば、以下の関係式(14A)に示されるようになる。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ×cos(α/2) ・・・(14A)
ところが、上記軸受シール面の角度αは、大きくても20度程度であり、これによる気液境界面の傾きも10度程度である。このとき、cos(α/2)≒0.985であることから、軸受シール面の角度αを計算上無視しても関係式(14)に影響はない。
これにより、所定の衝撃荷重、軸受形状に対応する関数P2/V1の値を満たすことによって、潤滑流体が開放端から漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
この結果、気液境界面が変動した場合であっても、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能となる。
第5の発明に係る流体軸受装置は、第1の発明に係る流体軸受装置であって、変動容積を示すV1と、第1毛管圧力係数を示すP1と、軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面の外径を示すD1と、潤滑流体が充填されている部分の軸方向における距離である軸受長さを示すLと、によって示される関数(P1/V1)×D1×D1×Lの値が以下の関係式(15)を満たしている。
(P1/V1)×D1×D1×L≧45000 ・・・(15)
ここでは、ラジアル軸受部に混入した気泡は、気液境界面の外径D1が大きく開口面積が広い方がラジアル軸受外部に排出される確率が高くなり、また、たとえ気泡が軸受内部に閉じこめられてしまった場合でも、軸受部が長いほど気泡による性能劣化が少ないと推定して、本発明の流体軸受装置においては、関数(P1/V1)×D1×D1×Lの値が所定値以上となるようにしている。
ここで、関数(P1/V1)×D1×D1×Lには、軸受シール部の開放端における開口面積との相関を示すD1×D1と、ラジアル軸受部の長さを示すLとが含まれている。そして、所定値を45000以上とすれば、ラジアル軸受部に混入した気泡による性能劣化を抑えることが可能となる。
この結果、ラジアル軸受内部に混入した気泡によってシール性能が劣化することを防止することが可能となる。
第6の発明に係る流体軸受装置は、第1の発明に係る流体軸受装置であって、変動容積を示すV1と、第1毛管圧力係数を示すP1と、軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面の外径を示すD1と、軸方向における潤滑流体が充填されている部分の距離である軸受長さを示すLと、軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間を示すr3と、によって示される関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの値が以下の関係式(16)を満たしている。
(P1/V1)×D1×D1×r3×L≧0.1 ・・・(16)
ここでは、ラジアル軸受部に混入した気泡は、開口面積が広い方が軸受外部に排出される確率が高くなり、またたとえ気泡が軸受内部に閉じこめられてしまった場合でも、軸受部の容積が大きいほど気泡による性能劣化が少ないと推定して、本発明の流体軸受装置においては、関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの値が所定値以上となるようにしている。
ここで、関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lには、軸受シール部の開放端における開口面積との相関を示すD1×D1と、ラジアル軸受部の容積との相関を示すr3×Lとが含まれている。そして、所定値を0.1以上とすれば、ラジアル軸受部に混入した気泡による性能劣化を抑えることが可能となる。
この結果、ラジアル軸受内部に混入した気泡によってシール性能が劣化することを防止することが可能となる。
第7の発明に係る流体軸受装置は、第1の発明に係る流体軸受装置であって、第2毛管圧力係数を示すP2と第3毛管圧力係数を示すP3との関数P3/P2の値が所定値以上である。そして、P2とP3とは、以下のように示される。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(17)
Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(18)
D2i=D2−2×r2 ・・・(19)
Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(20)
Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(21)
P2=Fg2/Ag2 ・・・(22)
P2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数[Pa]
γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
D2:軸受シール部の奥部における外径[m]
r2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚さ[m]
Fg3o=π×D3×γ×cosθ ・・・(23)
Fg3i=π×D3i×γ×cosθ ・・・(24)
D3i=D3−2×r3 ・・・(25)
Fg3=Fg3o+Fg3i ・・・(26)
Ag=π×(D32−D3i2)/4 ・・・(27)
P3=Fg3/Ag3 ・・・(28)
P3:ラジアル軸受部における毛管圧力係数[Pa]
γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
D3:軸の外径[m]
r3:軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間[m]
ここでは、衝撃荷重が解除された瞬時に潤滑流体を軸受隙間に戻すために、ラジアル軸受部における毛管圧力係数を示すP3を軸受シール部の奥部における毛管圧力係数を示すP2よりも大きくすればよい点に着目し、本発明の流体軸受装置においては、関数P3/P2の値が所定値以上となるようにしている。そして、潤滑流体が軸受シール部の開放端から漏れ出さないための臨界点を想定衝撃荷重、軸受形状ごとに算出し、上記所定値として適用する。
ここで、繰り返し衝撃荷重が加えられると、潤滑流体漏れの発生は顕著となるのは、衝撃荷重によって軸受シール部における潤滑流体溜まりに移動した潤滑流体が、表面張力によってラジアル軸受部の隙間に戻される前に次の衝撃荷重を受けることによると考えられる。
以下に、P2、P3についてそれぞれ説明する。
第2毛管圧力係数P2は、軸受シール部の奥部、すなわち、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数をいい、以下の関係式(17)〜(21)によって導かれる関係式(22)によって示される。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(17)
Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(18)
D2i=D2−2×r2 ・・・(19)
Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(20)
Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(21)
P2=Fg2/Ag2 ・・・(22)
なお、ここでいう軸受シール部の奥部とは、軸受シール部の開放端から軸受部に向かって奥側の部分をいう。例えば、軸受シール部が、開放端に向かって隙間が広がる方向にテーパ形状を有している場合には、隙間の最も小さい部分を軸受シール部の奥部という。
ここで、r2は、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚を示している。一般的に、軸受シール部を形成するスリーブ部材、あるいは、軸の周面(以下、軸受シール面と示す)は、開放端側に向かって隙間が広くなる方向に傾斜している。このとき、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面も軸方向に対して略垂直に形成されず傾斜して形成される場合もある。従って、内外軸受シール面が互いにαの角度を有する場合においては、内外軸受シール面の二等分線も傾斜する場合があり、このとき、例えば、関係式(17)を厳密に表現すれば、以下の関係式(17A)に示されるようになる。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ×cos(α/2) ・・・(17A)
ところが、上記軸受シール面の角度αは、大きくても20度程度であり、これによる気液境界面の傾きも10度程度である。このとき、cos(α/2)≒0.985であることから、軸受シール面の角度αを計算上無視しても関係式(17)に影響はない。
第3毛管圧力係数P3は、ラジアル軸受部における毛管圧力係数をいい、以下の関係式(23)〜(27)によって導かれる関係式(28)によって示される。
Fg3o=π×D3×γ×cosθ ・・・(23)
Fg3i=π×D3i×γ×cosθ ・・・(24)
D3i=D3−2×r3 ・・・(25)
Fg3=Fg3o+Fg3i ・・・(26)
Ag=π×(D32−D3i2)/4 ・・・(27)
P3=Fg3/Ag3 ・・・(28)
ここで、r3は、軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間を示している。なお、ここでいう隙間は、ラジアル軸受部に形成されている動圧発生溝の溝深さは無視している。
これにより、所定の衝撃荷重、軸受形状に対応する関数P3/P2の値を満たすことによって、繰り返し衝撃荷重が加えられた場合でも、潤滑流体が開放端から漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
この結果、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能となる。
第8の発明に係る流体軸受装置は、第1の発明に係る流体軸受装置であって、第2毛管圧力係数を示すP2と流路抵抗係数を示すKrとの関数P2/Krの値が所定値以上である。そして、P2とKrとは、以下のように示される。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(29)
Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(30)
D2i=D2−2×r2 ・・・(31)
Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(32)
Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(33)
P2=Fg2/Ag2 ・・・(34)
P2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数[Pa]
γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
D2:軸受シール部の奥部における外径[m]
r2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚さ[m]
Kr=12×μ×Lr×(T×r3×r3×r3) ・・・(35)
Kr:流路抵抗係数
r3:軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間[m]
Lr:ラジアル軸受部長さ[m]
T=π×D3 ・・・(36)
T:流路幅[m]
D3:軸の外径[m]
ここでは、衝撃荷重が解除された瞬時に潤滑流体を軸受隙間に戻すために、軸受シール部の奥部における毛管圧力係数を示すP2に対してラジアル軸受部における流路抵抗Krを十分に小さくすればよい点に着目し、本発明の流体軸受装置においては、関数P2/Krが所定値以上となるようにしている。そして、潤滑流体が軸受シール部の開放端から漏れ出さないための臨界点を想定衝撃荷重、軸受形状ごとに算出し、上記所定値として適用する。
ここで、繰り返し衝撃荷重が加えられると、潤滑流体漏れの発生は顕著となるのは、衝撃荷重によって軸受シール部における潤滑流体溜まりに移動した潤滑流体が、表面張力によってラジアル軸受部の隙間に戻される前に次の衝撃荷重を受けることによると考えられる。
以下に、P2、Krについてそれぞれ説明する。
第2毛管圧力係数P2は、軸受シール部の奥部、すなわち、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数をいい、以下の関係式(29)〜(33)によって導かれる関係式(34)によって示される。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(29)
Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(30)
D2i=D2−2×r2 ・・・(31)
Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(32)
Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(33)
P2=Fg2/Ag2 ・・・(34)
なお、ここでいう軸受シール部の奥部とは、軸受シール部の開放端から軸受部に向かって奥側の部分をいう。例えば、軸受シール部が、開放端に向かって隙間が広がる方向にテーパ形状を有している場合には、隙間の最も小さい部分を軸受シール部の奥部という。
ここで、r2は、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚を示している。一般的に、軸受シール部を形成するスリーブ部材、あるいは、軸の周面(以下、軸受シール面と示す)は、開放端側に向かって隙間が広くなる方向に傾斜している。このとき、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面も軸方向に対して略垂直に形成されず傾斜して形成される場合もある。従って、内外軸受シール面が互いにαの角度を有する場合においては、内外軸受シール面の二等分線も傾斜する場合があり、このとき、例えば、関係式(29)を厳密に表現すれば、以下の関係式(29A)に示されるようになる。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ×cos(α/2) ・・・(29A)
ところが、上記軸受シール面の角度αは、大きくても20度程度であり、これによる気液境界面の傾きも10度程度である。このとき、cos(α/2)≒0.985であることから、軸受シール面の角度αを計算上無視しても関係式(29)に影響はない。
流路抵抗係数Krは、ラジアル軸受部における流路抵抗係数をいい、以下の関係式(35)によって示される。
Kr=12×μ×Lr×(T×r3×r3×r3)・・・(35)
ここで、Lrは、ラジアル軸受部の軸方向における長さをいう。例えば、ラジアル軸受部が、軸方向において2箇所(2段)に形成されている場合には、両方の軸受部の長さの和をいう。
また、流路幅Tは、下記に示す関係式(36)によって計算され、D3は、軸の外径を示している。
T=π×D3 ・・・(36)
また、r3は、軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間を示している。なお、ここでいう隙間は、ラジアル軸受部に形成されている動圧発生溝の溝深さは無視している。
これにより、所定の衝撃荷重、軸受形状に対応する関数P2/Krの値を満たすことによって、繰り返し衝撃荷重が加えられた場合でも、潤滑流体が開放端から漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
この結果、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能となる。
第9の発明に係る流体軸受装置は、第1の発明に係る流体軸受装置を搭載したスピンドルモータである。
ここでは、スピンドルモータが、上述の流体軸受装置を搭載している。
これにより、外部から衝撃が加えられた場合でも、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能なスピンドルモータを提供することができる。
第10の発明に係る流体軸受装置は、軸と、スリーブ部材と、潤滑流体と、軸受部と、軸受シール部と、を備えている。スリーブ部材は、開口端と閉塞端とを含む軸受孔を有しており、軸受孔内に軸が微少間隙を介して挿入され、軸に対して相対回転可能な状態に配置されている。潤滑流体は、微少間隙に充填されている。軸受部は、潤滑流体を介して軸とスリーブ部材とを軸の半径方向に支持するラジアル軸受部と、軸方向に支持するスラスト軸受部と、を有している。軸受シール部は、軸受部の開放端側に配置されており、潤滑流体が開放端から漏れ出すことを軸とスリーブ部材との間に働く毛管力によって抑制する。そして、変動容積を示すV1と第2毛管圧力係数を示すP2との関数P2/V1の値が所定値以上である。また、V1とP2とは、以下のように示される。
V1=π×dg×dg×G ・・・(101)
V1:スリーブ部材が軸に対して軸方向に相対移動が可能な容積[m3
dg:開口端における軸受部の最外半径[m]
G :スリーブ部材が軸に対して軸方向に相対移動が可能な距離[m]
Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(102)
Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(103)
D2i=D2−2×r2 ・・・(104)
Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(105)
Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(106)
P2=Fg2/Ag2 ・・・(107)
P2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数[Pa]
γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
D2:軸受シール部の奥部における外径[m]
r2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚さ[m]
ここでは、変動容積を示すV1と第2毛管圧力係数を示すP2との関係に着目し、関数P2/V1の値が所定値以上となるようにしている。
なお、ここでいう軸には、軸に取り付けられているロータハブ等も含む。
以下に、P2、V1についてそれぞれ説明する。
変動容積V1は、スリーブ部材が軸に対して軸方向に相対移動が可能な容積をいい、以下の関係式(101)によって示される。
V1=π×dg×dg×G ・・・(101)
ここで、開口端における軸受部の最外半径を示すdgは、例えば、軸受シール部が、スリーブ部材の外周面と軸部に取り付けられたロータハブの内周面とによって形成されており、スリーブ部材の開口端近傍にスラスト軸受部が配置されている場合には、スラスト軸受部の軸の半径方向における最も外側部分における半径をいう。また、例えば、軸受シール部が、軸の外周面とスリーブ部材の内周面とによって形成されており、スリーブ部材の開口端近傍に軸受シール部が配置されている場合には、ラジアル軸受部の半径をいう。
第2毛管圧力係数P2は、軸受シール部の奥部、すなわち、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数をいい、以下の関係式(102)〜(106)によって導かれる関係式(107)によって示される。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(102)
Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(103)
D2i=D2−2×r2 ・・・(104)
Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(105)
Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(106)
P2=Fg2/Ag2 ・・・(107)
なお、ここでいう軸受シール部の奥部とは、軸受シール部の開放端から軸受部に向かって奥側の部分をいう。例えば、軸受シール部が、開放端に向かって隙間が広がる方向にテーパ形状を有している場合には、隙間の最も小さい部分を軸受シール部の奥部という。
ここで、r2は、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚を示している。一般的に、軸受シール部を形成するスリーブ部材、あるいは、軸の周面(以下、軸受シール面と示す)は、開放端側に向かって隙間が広くなる方向に傾斜している。このとき、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面も軸方向に対して略垂直に形成されず傾斜して形成される場合もある。従って、内外軸受シール面が互いにαの角度を有する場合においては、内外軸受シール面の二等分線も傾斜する場合があり、このとき、例えば、関係式(102)を厳密に表現すれば、以下の関係式(102A)に示されるようになる。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ×cos(α/2) ・・・(102A)
ところが、上記軸受シール面の角度αは、大きくても20度程度であり、これによる気液境界面の傾きも10度程度である。このとき、cos(α/2)≒0.985であることから、軸受シール面の角度αを計算上無視しても関係式(102)に影響はない。
さらに、軸受シール部における潤滑流体溜まりの容積を示すV2と、変動容積を示すV1とは、V1<V2の関係を満たしている。
従来の流体軸受装置においては、軸と一体的に取り付けられたフランジは、スリーブ部材とスラスト板との間に、それぞれ軸方向の隙間(ガタ)を有しており、軸方向に衝撃荷重が加えられると、軸が軸方向への移動を繰り返し、水鉄砲のピストンが出入りするような状態になる。このとき、軸受隙間に充填されたオイルが開口部から噴出して気泡が流入し、やがて、油膜切れが発生してしまう。そこで、軸方向の隙間を一定範囲に設計することによって、耐衝撃性能を確保するような対策が行われてきたが、より大きな衝撃荷重が加わるモバイル商品に用いられる流体軸受装置等では、シール性能を維持することができない。
そこで、本発明の流体軸受装置においては、軸受シール部におけるシール性能と相関関係があると考えられる第2毛管圧力係数P2と、耐衝撃性能と相関関係があると考えられる変動容積V2との関係(P2/V1)に着目し、関数P2/V1が所定値以上となるようにしている。そして、潤滑流体が軸受シール部の開放端から漏れ出さないための臨界点を想定衝撃荷重、軸受形状ごとに算出し、上記所定値として適用する。
これにより、所定の衝撃荷重、軸受形状に対応する関数P2/V1の値を満たすことによって、外部から衝撃が加えられた場合でも、潤滑流体が開放端から漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
この結果、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能となる。
第11の発明に係る流体軸受装置は、第10の発明に係る流体軸受装置であって、軸は、開口部側に略円形の天板と天板から垂下する円筒壁とから形成されるロータハブ部材が取り付けられており、軸受シール部は、スリーブ部材の外周面とロータハブ部材の内周面とによって形成されており、関数P2/V1の値は、1.0×1012以上である。
ここでは、上記変動容積を示すV1と、ロータハブ部材の円筒壁とスリーブ部材の外周面とから形成されている軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数を示すP2との関数P2/V1の値を、1.0×1012以上としている。
ここで、1.0×1012という値は、開口部側に略円形の天板と天板から垂下する円筒壁とから形成されるロータハブ部材が軸に取り付けられ、軸受シール部が、スリーブ部材の外周面とロータハブ部材の内周面とによって形成されている上述の流体軸受装置において、想定衝撃荷重を2000Gとしたときに、潤滑流体が軸受シール部の開放端から漏れ出さないための臨界点として算出された値である。
これにより、上記形状の流体軸受装置が外部から衝撃が加えられた場合でも、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能となる。
第12の発明に係る流体軸受装置は、第10の発明に係る流体軸受装置であって、軸受シール部は、軸の外周面とスリーブ部材の内周面とによって形成されており、関数P2/V1の値は、6.0×1012以上である。
ここでは、上記変動容積を示すV1と、軸の外周面とスリーブ部材の内周面とから形成されている軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数を示すP2との関数P2/V1の値を、6.0×1012以上としている。
ここで、6.0×1012という値は、軸受シール部が、軸の外周面とスリーブ部材の内周面とによって形成された上述の流体軸受装置において、想定衝撃荷重を2000Gとしたときに、潤滑流体が軸受シール部の開放端から漏れ出さないための臨界点として算出された値である。
これにより、上記形状の流体軸受装置が外部から衝撃が加えられた場合でも、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能となる。
第13の発明に係る流体軸受装置は、第10の発明に係る流体軸受装置であって、変動容積を示すV1と、第1毛管圧力係数を示すP1と、軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面の外径を示すD1と、潤滑流体が充填されている部分の軸方向における距離である軸受長さを示すLと、によって示される関数(P1/V1)×D1×D1×Lの値が以下の関係式(108)を満たしている。
(P1/V1)×D1×D1×L≧45000 ・・・(108)
ここでは、ラジアル軸受部に混入した気泡は、開口面積が広い方がラジアル軸受外部に排出される確率が高くなり、またたとえ気泡が軸受内部に閉じこめられてしまった場合でも、軸受部が長いほど気泡による性能劣化が少ないと推定して、本発明の流体軸受装置においては、関数(P1/V1)×D1×D1×Lの値が所定値以上となるようにしている。
ここで、関数(P1/V1)×D1×D1×Lには、軸受シール部の開放端における開口面積との相関を示すD1×D1と、ラジアル軸受部の長さを示すLとが含まれている。そして、所定値を45000以上とすれば、ラジアル軸受部に混入した気泡による性能劣化を抑えることが可能となる。
この結果、ラジアル軸受内部に混入した気泡によってシール性能が劣化することを防止することが可能となる。
第14の発明に係る流体軸受装置は、第10の発明に係る流体軸受装置であって、変動容積を示すV1と、第1毛管圧力係数を示すP1と、軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面の外径を示すD1と、軸方向における潤滑流体が充填されている部分の距離である軸受長さを示すLと、軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間を示すr3と、によって示される関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの値が以下の関係式(109)を満たしている。
(P1/V1)×D1×D1×r3×L≧0.1 ・・・(109)
ここでは、ラジアル軸受部に混入した気泡は、開口面積が広い方が軸受外部に排出される確率が高くなり、またたとえ気泡が軸受内部に閉じこめられてしまった場合でも、軸受部の容積が大きいほど気泡による性能劣化が少ないと推定して、本発明の流体軸受装置においては、関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの値が所定値以上となるようにしている。
ここで、関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lには、軸受シール部の開放端における開口面積との相関を示すD1×D1と、ラジアル軸受部の容積との相関を示すr3×Lとが含まれている。そして、所定値を0.1以上とすれば、ラジアル軸受部に混入した気泡による性能劣化を抑えることが可能となる。
この結果、ラジアル軸受内部に混入した気泡によってシール性能が劣化することを防止することが可能となる。
第15の発明に係る流体軸受装置は、第10の発明に係る流体軸受装置であって、第2毛管圧力係数を示すP2と第3毛管圧力係数を示すP3との関数P3/P2の値が所定値以上である。そして、P2とP3とは、以下のように示される。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(110)
Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(111)
D2i=D2−2×r2 ・・・(112)
Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(113)
Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(114)
P2=Fg2/Ag2 ・・・(115)
P2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数[Pa]
γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
D2:軸受シール部の奥部における外径[m]
r2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚さ[m]
Fg3o=π×D3×γ×cosθ ・・・(116)
Fg3i=π×D3i×γ×cosθ ・・・(117)
D3i=D3−2×r3 ・・・(118)
Fg3=Fg3o+Fg3i ・・・(119)
Ag=π×(D32−D3i2)/4 ・・・(120)
P3=Fg3/Ag3 ・・・(121)
P3:ラジアル軸受部における毛管圧力係数[Pa]
γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
D3:軸の外径[m]
r3:軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間[m]
ここでは、衝撃荷重が解除された瞬時に潤滑流体を軸受隙間に戻すために、ラジアル軸受部における毛管圧力係数を示すP3を軸受シール部の奥部における毛管圧力係数を示すP2よりも大きくすればよい点に着目し、本発明の流体軸受装置においては、関数P3/P2の値が所定値以上となるようにしている。そして、潤滑流体が軸受シール部の開放端から漏れ出さないための臨界点を想定衝撃荷重、軸受形状ごとに算出し、上記所定値として適用する。
ここで、繰り返し衝撃荷重が加えられると、潤滑流体漏れの発生は顕著となるのは、衝撃荷重によって軸受シール部における潤滑流体溜まりに移動した潤滑流体が、表面張力によってラジアル軸受部の隙間に戻される前に次の衝撃荷重を受けることによると考えられる。
以下に、P2、P3についてそれぞれ説明する。
第2毛管圧力係数P2は、軸受シール部の奥部、すなわち、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数をいい、以下の関係式(110)〜(114)によって導かれる関係式(115)によって示される。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(110)
Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(111)
D2i=D2−2×r2 ・・・(112)
Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(113)
Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(114)
P2=Fg2/Ag2 ・・・(115)
なお、ここでいう軸受シール部の奥部とは、軸受シール部の開放端から軸受部に向かって奥側の部分をいう。例えば、軸受シール部が、開放端に向かって隙間が広がる方向にテーパ形状を有している場合には、隙間の最も小さい部分を軸受シール部の奥部という。
第3毛管圧力係数P3は、ラジアル軸受部における毛管圧力係数をいい、以下の関係式(116)〜(120)によって導かれる関係式(121)によって示される。
Fg3o=π×D3×γ×cosθ ・・・(116)
Fg3i=π×D3i×γ×cosθ ・・・(117)
D3i=D3−2×r3 ・・・(118)
Fg3=Fg3o+Fg3i ・・・(119)
Ag=π×(D32−D3i2)/4 ・・・(120)
P3=Fg3/Ag3 ・・・(121)
ここで、r3は、軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間を示している。なお、ここでいう隙間は、ラジアル軸受部に形成されている動圧発生溝の溝深さは無視している。
これにより、所定の衝撃荷重、軸受形状に対応する関数P3/P2の値を満たすことによって、繰り返し衝撃荷重が加えられた場合でも、潤滑流体が開放端から漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
この結果、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能となる。
第16の発明に係る流体軸受装置は、第10の発明に係る流体軸受装置であって、第2毛管圧力係数を示すP2と流路抵抗係数を示すKrとの関数P2/Krの値が所定値以上である。そして、P2とKrとは、以下のように示される。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(122)
Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(123)
D2i=D2−2×r2 ・・・(124)
Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(125)
Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(126)
P2=Fg2/Ag2 ・・・(127)
P2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数[Pa]
γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
D2:軸受シール部の奥部における外径[m]
r2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚さ[m]
Kr=12×μ×Lr×(T×r3×r3×r3)・・・(128)
Kr:流路抵抗係数
r3:軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間[m]
Lr:ラジアル軸受部長さ[m]
T=π×D3 ・・・(129)
T:流路幅[m]
D3:軸の外径[m]
ここでは、衝撃荷重が解除された瞬時に潤滑流体を軸受隙間に戻すために、軸受シール部の奥部における毛管圧力係数を示すP2に対してラジアル軸受部における流路抵抗Krを十分に小さくすればよい点に着目し、本発明の流体軸受装置においては、関数P2/Krが所定値以上となるようにしている。そして、潤滑流体が軸受シール部の開放端から漏れ出さないための臨界点を想定衝撃荷重、軸受形状ごとに算出し、上記所定値として適用する。
ここで、繰り返し衝撃荷重が加えられると、潤滑流体漏れの発生は顕著となるのは、衝撃荷重によって軸受シール部における潤滑流体溜まりに移動した潤滑流体が、表面張力によってラジアル軸受部の隙間に戻される前に次の衝撃荷重を受けることによると考えられる。
以下に、P2、Krについてそれぞれ説明する。
第2毛管圧力係数P2は、軸受シール部の奥部、すなわち、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数をいい、以下の関係式(122)〜(126)によって導かれる関係式(127)によって示される。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(122)
Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(123)
D2i=D2−2×r2 ・・・(124)
Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(125)
Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(126)
P2=Fg2/Ag2 ・・・(127)
なお、ここでいう軸受シール部の奥部とは、軸受シール部の開放端から軸受部に向かって奥側の部分をいう。例えば、軸受シール部が、開放端に向かって隙間が広がる方向にテーパ形状を有している場合には、隙間の最も小さい部分を軸受シール部の奥部という。
流路抵抗係数Krは、ラジアル軸受部における流路抵抗係数をいい、以下の関係式(128)によって示される。
Kr=12×μ×Lr×(T×r3×r3×r3)・・・(128)
ここで、Lrは、ラジアル軸受部の軸方向における長さをいう。例えば、ラジアル軸受部が、軸方向において2箇所(2段)に形成されている場合には、両方の軸受部の長さの和をいう。
また、流路幅Tは、下記に示す関係式(129)によって計算され、D3は、軸の外径を示している。
T=π×D3 ・・・(129)
また、r3は、軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間を示している。なお、ここでいう隙間は、ラジアル軸受部に形成されている動圧発生溝の溝深さは無視している。
これにより、所定の衝撃荷重、軸受形状に対応する関数P2/Krの値を満たすことによって、繰り返し衝撃荷重が加えられた場合でも、潤滑流体が開放端から漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
この結果、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能となる。
第17の発明に係る流体軸受装置は、第10の発明に係る流体軸受装置を搭載したスピンドルモータである。
ここでは、スピンドルモータが、上述の流体軸受装置を搭載している。
これにより、外部から衝撃が加えられた場合でも、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能なスピンドルモータを提供することができる。
第18の発明に係る流体軸受装置は、軸と、スリーブ部材と、潤滑流体と、軸受部と、軸受シール部と、を備えている。スリーブ部材は、開口端と閉塞端とを含む軸受孔を有しており、軸受孔内に軸が微少間隙を介して挿入され、軸に対して相対回転可能な状態に配置されている。潤滑流体は、微少間隙に充填されている。軸受部は、潤滑流体を介して軸とスリーブ部材とを軸の半径方向に支持するラジアル軸受部と、軸方向に支持するスラスト軸受部と、を有している。軸受シール部は、軸受部の開放端側に配置されており、潤滑流体が開放端から漏れ出すことを軸とスリーブ部材との間に働く毛管力によって抑制する。そして、第2毛管圧力係数を示すP2と流路抵抗を示すKrとの関数P2/Krの値が所定値以上である。また、P2とKrとは、以下のように示される。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(201)
Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(202)
D2i=D2−2×r2 ・・・(203)
Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(204)
Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(205)
P2=Fg2/Ag2 ・・・(206)
P2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数[Pa]
γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
D2:軸受シール部の奥部における外径[m]
r2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚さ[m]
Kr=12×μ×Lr×(T×r3×r3×r3)・・・(207)
Kr:流路抵抗係数
r3:軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間[m]
Lr:ラジアル軸受部長さ[m]
T=π×D3 ・・・(208)
T:流路幅[m]
D3:軸の外径[m]
ここでは、第2毛管圧力係数を示すP2と流路抵抗係数を示すKrとの関係に着目し、関数P2/Krの値が所定値以上となるようにしている。
なお、ここでいう軸には、軸に取り付けられているロータハブ等も含む。
以下に、P2、Krについてそれぞれ説明する。
第2毛管圧力係数P2は、軸受シール部の奥部、すなわち、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数をいい、以下の関係式(201)〜(205)によって導かれる関係式(206)によって示される。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(201)
Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(202)
D2i=D2−2×r2 ・・・(203)
Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(204)
Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(205)
P2=Fg2/Ag2 ・・・(206)
なお、ここでいう軸受シール部の奥部とは、軸受シール部の開放端から軸受部に向かって奥側の部分をいう。例えば、軸受シール部が、開放端に向かって隙間が広がる方向にテーパ形状を有している場合には、隙間の最も小さい部分を軸受シール部の奥部という。
ここで、r2は、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚を示している。一般的に、軸受シール部を形成するスリーブ部材、あるいは、軸の周面(以下、軸受シール面と示す)は、開放端側に向かって隙間が広くなる方向に傾斜している。このとき、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面も軸方向に対して略垂直に形成されず傾斜して形成される場合もある。従って、内外軸受シール面が互いにαの角度を有する場合においては、内外軸受シール面の二等分線も傾斜する場合があり、このとき、例えば、関係式(201)を厳密に表現すれば、以下の関係式(201A)に示されるようになる。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ×cos(α/2) ・・・(201A)
ところが、上記軸受シール面の角度αは、大きくても20度程度であり、これによる気液境界面の傾きも10度程度である。このとき、cos(α/2)≒0.985であることから、軸受シール面の角度αを計算上無視しても関係式(201)に影響はない。
流路抵抗係数Krは、ラジアル軸受部における流路抵抗係数をいい、以下の関係式(207)によって示される。
Kr=12×μ×Lr×(T×r3×r3×r3)・・・(207)
ここで、Lrは、ラジアル軸受部の軸方向における長さをいう。例えば、ラジアル軸受部が、軸方向において2箇所(2段)に形成されている場合には、両方の軸受部の長さの和をいう。
また、流路幅Tは、下記に示す関係式(208)によって計算され、D3は、軸の外径を示している。
T=π×D3 ・・・(208)
また、r3は、軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間を示している。なお、ここでいう隙間は、ラジアル軸受部に形成されている動圧発生溝の溝深さは無視している。
従来の流体軸受装置においては、軸と一体的に取り付けられたフランジは、スリーブ部材とスラスト板との間に、それぞれ軸方向の隙間(ガタ)を有しており、軸方向に衝撃荷重が加えられると、軸が軸方向への移動を繰り返し、水鉄砲のピストンが出入りするような状態になる。このとき、軸受隙間に充填された潤滑流体が開口部から噴出して気泡が流入し、やがて、油膜切れが発生してしまう。そこで、軸方向の隙間を一定範囲に設計することによって、耐衝撃性能を確保するような対策が行われてきたが、より大きな衝撃荷重が加わるモバイル商品に用いられる流体軸受装置等では、シール性能を維持することができない。
また、繰り返し衝撃荷重が加えられると、潤滑流体漏れの発生は顕著となる。これは、衝撃荷重によって軸受シール部における潤滑流体溜まりに移動した潤滑流体が、表面張力によってラジアル軸受部の隙間に戻される前に次の衝撃荷重を受けることによると考えられる。
そこで、衝撃荷重が解除された瞬時に潤滑流体を軸受隙間に戻すために、軸受シール部の奥部における毛管圧力係数を示すP2に対してラジアル軸受部における流路抵抗Krを十分に小さくすればよい点に着目し、本発明の流体軸受装置においては、関数P2/Krが所定値以上となるようにしている。そして、潤滑流体が軸受シール部の開放端から漏れ出さないための臨界点を想定衝撃荷重、軸受形状ごとに算出し、上記所定値として適用する。
これにより、所定の衝撃荷重、軸受形状に対応する関数P2/Krの値を満たすことによって、外部から衝撃が加えられた場合でも、潤滑流体が開放端から漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
この結果、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能となる。
第19の発明に係る流体軸受装置は、第18の発明に係る流体軸受装置であって、軸は、開口部側に略円形の天板と天板から垂下する円筒壁とから形成されるロータハブ部材が取り付けられており、軸受シール部は、スリーブ部材の外周面とロータハブ部材の内周面とによって形成されており、関数P2/Krの値は、7.0×10-14以上である。
ここでは、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数を示すP2と、ラジアル軸受部における流路抵抗係数を示すKrとの関数P2/Krの値を、7.0×10-14以上としている。
ここで、7.0×10-14という値は、開口部側に略円形の天板と天板から垂下する円筒壁とから形成されるロータハブ部材が軸に取り付けられ、軸受シール部が、スリーブ部材の外周面とロータハブ部材の内周面とによって形成されている上述の流体軸受装置において、想定衝撃荷重を2000Gとしたときに、潤滑流体が軸受シール部の開放端から漏れ出さないための臨界点として算出された値である。
これにより、上記形状の流体軸受装置が外部から衝撃が加えられた場合でも、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能となる
第20の発明に係る流体軸受装置は、第18の発明に係る流体軸受装置であって、軸受シール部は、軸の外周面とスリーブ部材の内周面とによって形成されており、記関数P2/Krの値は、1.5×10-16以上である。
ここでは、軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数を示すP2と、ラジアル軸受部における流路抵抗係数を示すKrとの関数P2/Krの値を、1.5×10-16以上としている。
ここで、1.5×10-16という値は、軸受シール部が、軸の外周面とスリーブ部材の内周面とによって形成された上述の流体軸受装置において、想定衝撃荷重を2000Gとしたときに、潤滑流体が軸受シール部の開放端から漏れ出さないための臨界点として算出された値である。
これにより、上記形状の流体軸受装置が外部から衝撃が加えられた場合でも、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能となる。
第21の発明に係る流体軸受装置は、第18の発明に係る流体軸受装置であって、変動容積を示すV1と、第1毛管圧力係数を示すP1と、軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面の外径を示すD1と、潤滑流体が充填されている部分の軸方向における距離である軸受長さを示すLと、によって示される関数(P1/V1)×D1×D1×Lの値が以下の関係式(209)を満たしている。
(P1/V1)×D1×D1×L≧45000 ・・・(209)
ここでは、ラジアル軸受部に混入した気泡は、開口面積が広い方がラジアル軸受外部に排出される確率が高くなり、またたとえ気泡が軸受内部に閉じこめられてしまった場合でも、軸受部が長いほど気泡による性能劣化が少ないと推定して、本発明の流体軸受装置においては、関数(P1/V1)×D1×D1×Lの値が所定値以上となるようにしている。
ここで、関数(P1/V1)×D1×D1×Lには、軸受シール部の開放端における開口面積との相関を示すD1×D1と、ラジアル軸受部の長さを示すLとが含まれている。そして、所定値を45000以上とすれば、ラジアル軸受部に混入した気泡による性能劣化を抑えることが可能となる。
この結果、ラジアル軸受内部に混入した気泡によってシール性能が劣化することを防止することが可能となる。
第22の発明に係る流体軸受装置は、第18の発明に係る流体軸受装置であって、変動容積を示すV1と、第1毛管圧力係数を示すP1と、軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面の外径を示すD1と、軸方向における潤滑流体が充填されている部分の距離である軸受長さを示すLと、軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間を示すr3と、によって示される関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの値が以下の関係式(210)を満たしている。
(P1/V1)×D1×D1×r3×L≧0.1 ・・・(210)
ここでは、ラジアル軸受部に混入した気泡は、開口面積が広い方が軸受外部に排出される確率が高くなり、またたとえ気泡が軸受内部に閉じこめられてしまった場合でも、ラジアル軸受部の容積が大きいほど気泡による性能劣化が少ないと推定して、本発明の流体軸受装置においては、関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの値が所定値以上となるようにしている。
ここで、関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lには、軸受シール部の開放端における開口面積との相関を示すD1×D1と、ラジアル軸受部の容積との相関を示すr3×Lとが含まれている。そして、所定値を0.1以上とすれば、ラジアル軸受部に混入した気泡による性能劣化を抑えることが可能となる。
この結果、ラジアル軸受内部に混入した気泡によってシール性能が劣化することを防止することが可能となる。
第23の発明に係る流体軸受装置は、第18の発明に係る流体軸受装置を搭載したスピンドルモータである。
ここでは、スピンドルモータが、上述の流体軸受装置を搭載している。
これにより、外部から衝撃が加えられた場合でも、潤滑流体が外部へ漏れ出すことを防止して、良好なシール性能を維持することが可能なスピンドルモータを提供することができる。
本発明に係る流体軸受装置によれば、潤滑流体の外部への漏れ出しを防止して、良好なシール性能を維持することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る流体軸受装置30を含むスピンドルモータ1について、図1〜図7を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下の説明において、図1における上下方向を「軸方向」、上方向を「軸方向上
側」(軸方向外側)、下方向を「軸方向下側」(軸方向内側)と表現するが、これらは実際の流体軸受装置30の取り付け方向を限定するものではない。
[スピンドルモータ1の全体構成]
スピンドルモータ1は、記録ディスク11を回転駆動するための装置であり、図1に示すように、主に、回転部材10と、静止部材20と、流体軸受装置30とから構成されている。
回転部材10は、主に、記録ディスク11が装着されるハブ(ロータハブ)12と、後述するステータ22とともに磁気回路を構成するロータ磁石13とから構成されている。
ハブ12は、略円形の天板部12Aと、天板部12Aから垂下する円筒壁部12Bと、軸方向下側の外周部に配置されたディスク載置部12Cとが一体成形されている。ハブ12の外周側には、2枚の記録ディスク11が環状のスペーサ14を介して嵌め込まれており、ディスク載置部12Cの上に載置されている。シャフト(軸)32の軸方向上側には、クランパ15がネジ16により固定されており、ハブ12は、シャフト32に対して圧入接着により固定、あるいは、両部材が一体に成形されている。記録ディスク11は、クランパ15により軸方向下側に押さえられており、クランパ15とディスク載置部12Cとの間に狭持されている。
ロータ磁石13は、ハブ12の内周側に固定されており、後述するステータ22とともに磁気回路を構成する。
静止部材20は、図示しない記録ディスク駆動装置のハウジングに固定されており、主に、ベース21と、ベース21に固定されたステータ22とから構成されている。ステータ22は、ロータ磁石13の内周側に半径方向に対向して配置されている。ベース21の中央部には、流体軸受装置30が固定されている。流体軸受装置30は、静止部材20に対して回転部材10を回転可能に支持している。
[流体軸受装置30の構成]
流体軸受装置30は、図2に示すように、主に、スリーブ(スリーブ部材)31と、シャフト32と、フランジ33と、スラスト板34と、潤滑剤(潤滑流体)36および軸受シール部37から構成されている。スリーブ31およびスラスト板34が静止側の部材を構成し、シャフト32およびフランジ33が回転側の部材を構成している。
スリーブ31は、軸方向に延びる筒状の部材であり、ベース21に接着などにより固定されている。スリーブ31には、開口端31Aと、スラスト板34等によって形成される閉塞端31Bと、を含む軸受孔31Cが形成されている。また、スリーブ31の上端面には、複数のスラスト動圧発生溝31Eが形成されており、スリーブ31およびハブ12の間には、スラスト動圧発生溝31Eを有するスラスト軸受部41が形成されている。スラスト動圧発生溝31Eは、例えば、スパイラル形状を有している。そして、スラスト軸受部41において発生する支持圧により、シャフト32および回転部材10は軸方向に支持される。また、スラスト動圧発生溝31Eは、ヘリングボーン形状であってもよい。
シャフト32は、軸方向に延びる円柱状の部材であり、ハブ12を回転可能に支持している。具体的には、シャフト32は、スリーブ31の内周側に隙間を介して相対回転可能に配置されており、シャフト32の軸方向上側の端部にはハブ12が固定されている。そして、シャフト32の外周面には、複数のラジアル動圧発生溝32Aが形成されており、スリーブ31およびシャフト32の間には、ラジアル動圧発生溝32Aを有するラジアル軸受部42が形成されている。ラジアル動圧発生溝32Aは、例えば、軸方向に非対称なヘリングボーン形状を有している。そして、ラジアル軸受部42において発生する支持圧により、シャフト32および回転部材10は半径方向に支持される。
フランジ33は、円板状の部材であり、シャフト32の軸方向下側の端部に固定されている。フランジ33の軸方向上側の面には、複数のスラスト動圧発生溝33Aが形成されており、フランジ33とスリーブ31との間にはスラスト動圧発生溝33Aを有するスラスト軸受部43が形成されている。スラスト動圧発生溝33Aは、例えば、スパイラル形状を有している。スラスト軸受部43において発生する支持圧により、シャフト32および回転部材10は、軸方向に支持される。なお、シャフト32とフランジ33とは、一体成形されていてもよい。また、スラスト動圧発生溝33Aは、ヘリングボーン形状であってもよい。
スリーブ31の軸方向下側の端部には、環状の凹部31Dが形成されており、フランジ33の外周部は、凹部31Dとスラスト板34との間に収容されている。
また、スリーブ31には、連通孔31Fが形成されている。具体的には、図1および図2に示すように、連通孔31Fは、スリーブ31の上端面と凹部31D近傍とを軸方向に貫通している。
軸受シール部37は、スラスト軸受部41の開放端37A側に配置されており、スリーブ31の外周面と、天板部12Aから垂下する円筒壁部12Bの内周面とによって形成されている。また、軸受シール部37を形成するスリーブ31の外周面37Boと、円筒壁部12Bの内周面37Biとは、開放端37A側に向かって軸受シール部37の隙間が広くなる方向に傾斜している。
スラスト軸受部41、ラジアル軸受部42、スラスト軸受部43、連通孔31Fには、潤滑剤36が充填されている。潤滑剤36としては、例えば、低粘度なエステルオイル、超流動性グリスまたはイオン性液体等が挙げられる。
[流体軸受装置30の動作と潤滑剤36漏れのメカニズム]
ここで、流体軸受装置30の動作について説明する。
流体軸受装置30では、ステータ22に通電されると回転磁界が発生し、ロータ磁石13に回転力が付与される。これにより、回転部材10が、シャフト32とともに回転を開始する。シャフト32が回転すると、各動圧発生溝31E、32A、33A部分において半径方向および軸方向の支持圧が発生する。これにより、シャフト32が、スリーブ31に対して非接触状態で支持される。すなわち、静止部材20に対して回転部材10が、非接触状態で回転可能となり、記録ディスク11の高精度な高速回転が実現される。これにより、図示しない磁気ヘッドまたは光学ヘッドを用いることで、記録ディスク11に対してデータの記録再生を行うことができる。
次に、潤滑剤36が開放端37Aから漏れるメカニズムについて説明する。
図3(a)は、ロータ磁石13に回転力が付与される前、すなわち、回転部材10が、シャフト32とともに回転を開始する前の、スリーブ31とシャフト32との位置関係を示した図である。回転部材10が、シャフト32とともに回転を開始する前、ハブ12とスリーブ31との隙間G1は0である。
図3(b)は、ステータ22が通電され、ロータ磁石13に回転力が付与されたときのスリーブ31とシャフト32との位置関係を示した図である。シャフト32が回転すると、各動圧発生溝31E、32A、33Aによって各動圧発生溝周辺の潤滑剤36がかき集められ、スラスト動圧発生溝31Eによる発生圧力が発生する。このとき、シャフト32は、図3(b)に示すように、ハブ12に対して潤滑剤膜厚さ分G1だけ浮上する。そして、フランジ33とスリーブ31との間には、図3(b)に示すG2の隙間が形成されるようになる。
ここで、流体軸受装置30が、図1に示す白色矢印方向に落下衝撃荷重が加えられると、シャフト32が軸方向への移動を繰り返し、水鉄砲のピストンが出入りするような状態となる。このとき、潤滑剤36が軸受シール部37における開放端37Aより噴出して、開放端37Aから気泡が流入する。
従来、上記に示したような潤滑剤36漏れの問題を解決するために、軸方向移動可能隙間(G1+G2)の値を一定範囲に設計することによって、耐衝撃性能を高めることが行なわれてきた。ところが、モバイル製品に搭載するような2000Gもの耐衝撃性能が要求される流体軸受装置においては、従来の方法では、潤滑剤36の漏れを防止することはできない。
[実施例1]
本実施形態のスピンドルモータ1に搭載される流体軸受装置30においては、軸受シール部37におけるシール性能と相関関係があると考えられる第1毛管圧力係数P1と、耐衝撃性能と相関関係があると考えられる変動容積V1との関係(P1/V1)に着目し、関数P1/V1が所定値以上となるようにすれば、耐衝撃性能に優れた流体軸受装置30を得ることができるのではないかと考えた。
変動容積V1は、スリーブ31がシャフト32に対して軸方向に相対移動が可能な容積をいい、以下の関係式(1)によって示される。
V1=π×dg×dg×G ・・・(1)
dgは、図4に示すように、スラスト軸受部41の軸の半径方向における最も外側部分における半径をいう。また、Gは、図3(b)に示すように、回転部材10の回転時における軸方向移動可能隙間(G1+G2)をいう。
第1毛管圧力係数P1は、軸受シール部37の開放端37A近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数をいい、以下の関係式(2)〜(6)によって導かれる関係式(7)によって示される。
Fg1o=π×D1×γ×cosθ ・・・(2)
Fg1i=π×D1i×γ×cosθ ・・・(3)
D1i=D1−2×r1 ・・・(4)
Fg1=Fg1o+Fg1i ・・・(5)
Ag1=π×(D12−D1i2)/4 ・・・(6)
P1=Fg1/Ag1 ・・・(7)
D1は、図4に示すように、軸受シール部37の開放端37A近傍に位置する気液境界面の外径を示している。
r1は、図4に示すように、開放端37A近傍に位置する気液境界面における潤滑剤膜厚を示している。
ここで、本実施形態の流体軸受装置30のように、軸受シール部37を形成するスリーブ31およびシャフト32の周面(以下、軸受シール面37Bと示す)は、開放端37A側に向かって隙間が広くなる方向に傾斜している。このとき、図4に示すように、開放端37A近傍に位置する気液境界面も軸方向に対して略垂直に形成されず傾斜して形成される場合もある。従って、内外軸受シール面37Bi,37Boが互いにαの角度を有する場合においては、内外軸受シール面37Bi,37Boの二等分線も傾斜する(2/α)場合があり、このとき、例えば、関係式(2)を厳密に表現すれば、以下の関係式(2A)に示されるようになる。
Fg1o=π×D1×γ×cosθ×cos(α/2) ・・・(2A)
ところが、内外軸受シール面37Bi,37Boの角度αは、大きくても20度程度であり、これによる気液境界面の傾きも10度程度である。このとき、cos(α/2)≒0.985であることから、内外軸受シール面37Bi,37Boの角度αを計算上無視しても関係式(2)に影響はない。
ここで、上記流体軸受装置30に2000Gという比較的大きな衝撃荷重を加えた際に、開放端37Aから潤滑剤36が漏れ出さないための関数P1/V1の臨界値を算出するための実験を行った。その結果、上記流体軸受装置30において、関数P1/V1の値と、開放端37Aから潤滑剤36が漏れ出した時の衝撃荷重との関係について、図5に示すような結果が得られた。すなわち、上記流体軸受装置30に2000Gの衝撃荷重が加えられた時、開放端37Aから潤滑剤36が漏れ出さないための関数P1/V1の臨界値は、P1/V1=4.5×1011となった。
これにより、上記流体軸受装置30に2000Gという比較的大きな衝撃加重が加わった場合であっても、関数P1/V1の値を、4.5×1011以上とすることで、潤滑剤36が開放端37Aから漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
さらに、軸受シール部37における潤滑剤溜まり37Cの容積を示すV2と、変動容積を示すV1とは、V1<V2の関係を満たしている。
[実施例2]
本実施形態のスピンドルモータ1に搭載される流体軸受装置30においては、軸受シール部37におけるシール性能と相関関係があると考えられる第2毛管圧力係数P2と、耐衝撃性能と相関関係があると考えられる変動容積V2との関係(P2/V1)に着目した。そして、関数P2/V1が所定値以上となるようにすれば、耐衝撃性能に優れた流体軸受装置30を得ることができるのではないかと考えた。
変動容積V1は、上述の実施例1と同様であるので、ここではその説明を省略する。
第2毛管圧力係数P2は、図4に示すように、軸受シール部37の奥部37Dに位置する気液境界面における毛管圧力係数をいい、以下の関係式(102)〜(106)によって導かれる関係式(107)によって示される。
Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(102)
Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(103)
D2i=D2−2×r2 ・・・(104)
Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(105)
Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(106)
P2=Fg2/Ag2 ・・・(107)
D2は、図4に示すように、軸受シール部37の奥部37D近傍に位置する気液境界面の外径を示している。
r2は、図4に示すように、奥部37D近傍に位置する気液境界面における潤滑剤膜厚を示している。
なお、本実施形態の流体軸受装置30における軸受シール部37の奥部37Dを形成する軸受シール面37Eは、図4に示すように、内外軸受シール面37Ei,37Eoは互いにシャフト32方向に平行となっている。
ここで、実施例1と同様に、上記流体軸受装置30に2000Gという比較的大きな衝撃荷重を加えた際に、開放端37Aから潤滑剤36が漏れ出さないための関数P2/V1の臨界値を算出するための実験を行った。その結果、上記流体軸受装置30において、関数P2/V1の値と、開放端37Aから潤滑剤36が漏れ出した時の衝撃荷重との関係について、図6に示すような結果が得られた。すなわち、上記流体軸受装置30に2000Gの衝撃荷重が加えられた時、開放端37Aから潤滑剤36が漏れ出さないための関数P2/V1の臨界値は、P2/V1=1.0×1012となった。
これにより、上記流体軸受装置30に2000Gという比較的大きな衝撃加重が加わった場合であっても、関数P2/V1の値を、1.0×1012以上とすることで、潤滑剤36が開放端37Aから漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
さらに、実施例2においても、軸受シール部における潤滑剤溜まりの容積を示すV2と、変動容積を示すV1とは、V1<V2の関係を満たしている。
[実施例3]
本実施形態のスピンドルモータ1に搭載される流体軸受装置30においては、衝撃荷重が解除された瞬時に潤滑剤を軸受隙間に戻すために、軸受シール部37の奥部37Dにおける毛管圧力係数を示すP2に対してラジアル軸受部42における流路抵抗Krを十分に小さくすればよい点に着目した。そして、関数P2/Krが所定値以上となるようすれば、繰り返し荷重による耐衝撃性能に優れた流体軸受装置30を得ることができるのではないかと考えた。
第2毛管圧力係数P2は、上述の実施例2と同様であるので、ここではその説明を省略する。
流路抵抗係数Krは、ラジアル軸受部42における流路抵抗係数をいい、以下の関係式(207)によって示される。
Kr=12×μ×Lr×(T×r3×r3×r3)・・・(207)
Lrは、ラジアル軸受部42の軸方向における長さをいう。本実施形態の流体軸受装置30においては、ラジアル軸受部42が、図7に示すように、シャフト32方向において2箇所(2段)に形成されているので、Lrは、両方のラジアル軸受部42の長さの和L1+L2とする。
また、流路幅Tは、下記に示す関係式(208)によって計算され、D3は、図7に示すように、シャフト32の外径を示している。
T=π×D3 ・・・(208)
また、r3は、図7に示すように、軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間を示している。なお、ここでいう隙間は、ラジアル軸受部42に形成されているラジアル動圧発生溝32Aの溝深さは無視している。
ここで、上記流体軸受装置30に2000Gの衝撃荷重を40回繰り返した際に、開放端37Aから潤滑剤36が漏れ出さないための関数P2/Krの臨界値を算出するための実験を行った。その結果、上記流体軸受装置30において、関数P2/Krの値と、開放端37Aから潤滑剤36が漏れ出した時の衝撃荷重の回数との関係について、図8に示すような結果が得られた。すなわち、記流体軸受装置30に2000Gが40回の繰り返し衝撃荷重が加えられた時、開放端37Aから潤滑剤36が漏れ出さないための関数P2/Krの臨界値は、P2/Kr=7.0×10-14となった。
これにより、上記流体軸受装置30に2000Gの衝撃荷重を40回繰り返すという比較的厳しい条件が加わった場合であっても、関数P2/Krの値を、7.0×10-14以上とすることで、潤滑剤36が開放端37Aから漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
[実施例4]
本実施形態のスピンドルモータ1に搭載される流体軸受装置30においては、ラジアル軸受部42に混入した気泡は、開口面積が広い方がラジアル軸受部42外部に排出される確率が高くなり、ラジアル軸受部42が長いほど気泡による性能劣化が少ないと推定する。そして、関数(P1/V1)×D1×D1×Lの値が所定値以上となるようにすれば、ラジアル軸受部42に混入した気泡による性能劣化を抑えることできるのではないかと考えた。
関数(P1/V1)×D1×D1×Lには、軸受シール部37の開放端37Aにおける開口面積との相関を示すD1×D1と、ラジアル軸受部42の長さを示すLとが含まれている。
D1は、図7に示すように、軸受シール部37の開放端37A近傍に位置する気液境界面の外径を示している。
Lは、図7に示すように、潤滑剤36が充填されている部分のシャフト32方向におけるラジアル軸受部42の長さ(ラジアル動圧発生溝32Aのシャフト32方向における長さとは区別する)を示す。
ここで、実施例1と同様に、上記流体軸受装置30に2000Gの衝撃荷重を加えた際に、開放端37Aから潤滑剤36が漏れ出さない関数(P1/V1)×D1×D1×Lの臨界値を算出するための実験を行った。その結果、上記流体軸受装置30において、関数(P1/V1)×D1×D1×Lの値と、開放端37Aから潤滑剤36が漏れ出した時の衝撃荷重との関係について、図9に黒丸●で示すような結果が得られた。すなわち、流体軸受装置30に2000Gの衝撃荷重を加えた時、開放端37Aから潤滑剤36が漏れ出さないための関数(P1/V1)×D1×D1×Lの臨界値は、(P1/V1)×D1×D1×L=45000であることが明らかになった。
表1に図2に示される流体軸受装置30の具体的な設計事例を示す。いずれの設計値においても関数(P1/V1)×D1×D1×Lの値は45000以上であり、2000G以上の耐衝撃荷重性能を得ることができた。
Figure 2009030745
これにより、上記流体軸受装置30に2000Gという比較的大きな衝撃荷重を加えた場合であっても、(P1/V1)×D1×D1×Lの値を、45000以上とすることで、潤滑剤36が開放端37Aから漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
[実施例5]
本実施形態のスピンドルモータ1に搭載される流体軸受装置30においては、ラジアル軸受部42に混入した気泡は、開口面積が広い方がラジアル軸受部42外部に排出される確率が高くなり、ラジアル軸受部42の容積が大きいほど気泡による性能劣化が少ないと推定する。そして、関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの値が所定値以上となるようにすれば、ラジアル軸受部42に混入した気泡による性能劣化を抑えることできるのではないかと考えた。
関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lには、軸受シール部37の開放端37Aにおける開口面積との相関を示すD1×D1と、ラジアル軸受部37の容積との相関を示すr3×Lとが含まれている。
D1は、図7に示すように、軸受シール部37の開放端37A近傍に位置する気液境界面の外径を示している。
r3は、図7に示すように、シャフト32の半径方向におけるラジアル軸受部42の隙間を示している。なお、ここでいう隙間は、ラジアル軸受部42に形成されているラジアル動圧発生溝32Aの溝深さは無視している。
Lは、図7に示すように、潤滑剤36が充填されている部分のシャフト32方向におけるラジアル軸受部42の長さ(ラジアル動圧発生溝32Aのシャフト32方向における長さとは区別する)を示す。
ここで、実施例1と同様に、上記流体軸受装置30に2000Gの衝撃荷重を加えた際に、開放端37Aから潤滑剤36が漏れ出さない関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの臨界値を算出するための実験を行った。その結果、上記流体軸受装置30において、関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの値と、開放端37Aから潤滑剤36が漏れ出した時の衝撃荷重との関係について、図10に黒丸●で示すような結果が得られた。すなわち、流体軸受装置30に2000Gの衝撃荷重を加えた時、開放端37Aから潤滑剤36が漏れ出さないための関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの臨界値は、(P1/V1)×D1×D1×r3×L=0.1となることが明らかになった。
表1に示した図2に示される流体軸受装置30の具体的な2つの設計事例のとおり、両方の事例の設計値において、関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの値は0.1以上であり、2000G以上の耐衝撃荷重性能を得ることができた。
これにより、上記流体軸受装置30に2000Gという比較的大きな衝撃荷重を加えた場合であっても、(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの値を、0.1以上とすることで、潤滑剤36が開放端37Aから漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
[実施例6]
上記流体軸受装置30は、上記実施例1の条件を満たすことによって、衝撃荷重が加えられても開放端37Aから潤滑剤36が漏れ出さない。このため、各軸受部41,42,43における軸受隙間において油膜欠如が生じなくなり、回転性能が良好でかつ信頼性が高いばかりでなく、潤滑剤36が良好に上記軸受隙間に保持されるためにオイルミストと呼ばれるガスの発生がなくなる。これにより、上記流体軸受装置30が搭載された情報装置においては、記録再生の信頼性を向上させることが可能となる。
ここで、上記実施例2において示した関数P1/V1の値と、アウトガス量比率についての関係を調べる実験を実施した。その結果、図11に示すように、関数P1/V1の値が4.5×1011以上であれば、アウトガス量比率、すなわち、オイルミストの発生が急激に減少することが分かった。これにより、上記流体軸受装置30が搭載された情報装置において、関数P1/V1の値を4.5×1011以上とすることによって、情報装置の装置内を大変クリーンな状態に維持することが可能となり、光記録または磁気ヘッドによる情報装置にとって大変好都合な状況を提供することができる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態のスピンドルモータ1では、図1に示すような、軸受シール部37が、スリーブ31の外周面とハブ12に含まれる円筒壁部12Bの内周面とによって形成されているタイプについて、実施例1〜実施例6をそれぞれ適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図12に示すような、軸受シール部137が、シャフト(軸)102の外周面137Boと、スリーブ101の内周面137Biとによって形成されているタイプの流体軸受装置140を搭載したスピンドルモータ100に対しても、実施例1〜実施例5をそれぞれ適用することが可能である。以下に、スピンドルモータ100について説明する。
スピンドルモータ100は、記録ディスク111を回転駆動するための装置であり、図12に示すように、主に、回転部材131と、静止部材132と、流体軸受装置140とから構成されている。
回転部材131は、主に、記録ディスク111が装着されるハブ107と、後述するステータ110とともに磁気回路を構成するロータ磁石109とから構成されている。ハブ107の軸方向下側の外周部には、ディスク載置部107Aが一体成形されている。ハブ107の外周側には、2枚の記録ディスク111が環状のスペーサ112を介して嵌め込まれており、ディスク載置部107Aの上に載置されている。シャフト102の軸方向上側には、クランパ113がネジ114により固定されており、ハブ107はシャフト102に対して圧入接着により固定、あるいは、両部材が一体成形されている。記録ディスク111は、クランパ113により軸方向下側に押さえられており、クランパ113とディスク載置部107Aとの間に狭持されている。ロータ磁石109は、ハブ107の内周側に固定されている。
静止部材132は、図示しない記録ディスク駆動装置のハウジングに固定されており、主に、ベース108と、ベース108に固定されたステータ110とから構成されている。ステータ110は、ロータ磁石109の内周側に半径方向に対向して配置されている。ベース108の中央部には、流体軸受装置140が固定されている。流体軸受装置140は、静止部材132に対して回転部材131を回転可能に支持している。
流体軸受装置140は、図13に示すように、主に、スリーブ101と、シャフト102と、フランジ103と、スラスト板104と、潤滑剤(潤滑流体)106とから構成されている。スリーブ101、スラスト板104が静止側の部材を構成し、シャフト102およびフランジ103が回転側の部材を構成している。
スリーブ101は、軸方向に延びる筒状の部材であり、ベース108に接着などにより固定されている。スリーブ101の軸方向下側の端部にはスラスト板104が固定されており、スリーブ101およびスラスト板104により軸受穴101Aが形成されている。
シャフト102は、軸方向に延びる円柱状の部材であり、ハブ107を回転可能に支持している。具体的には、シャフト102は、スリーブ101の内周側に隙間を介して相対回転可能に配置されており、シャフト102の軸方向上側の端部にはハブ107が固定されている。シャフト102の外周面には、複数のラジアル動圧発生溝102Bが形成されており、スリーブ101およびシャフト102の間には、ラジアル動圧発生溝102Bを有するラジアル軸受部121が形成されている。ラジアル動圧発生溝102Bは、例えば軸方向に非対称なヘリングボーン形状を有している。ラジアル軸受部121において発生する支持圧により、シャフト102および回転部材131は半径方向に支持される。
フランジ103は、円板状の部材であり、シャフト102の軸方向下側の端部に固定されている。フランジ103の軸方向上側および軸方向下側の面には、複数のスラスト動圧発生溝103A、103Bが形成されており、フランジ103、スリーブ101およびスラスト板104の間にはスラスト動圧発生溝103A、103Bを有するスラスト軸受部122が形成されている。スラスト動圧発生溝103A、103Bは、例えば、スパイラル形状を有している。スラスト軸受部122において発生する支持圧により、シャフト102および回転部材131は、軸方向に支持される。なお、シャフト102とフランジ103とは一体成形されていてもよい。また、スラスト動圧発生溝103A、103Bはヘリングボーン形状であってもよい。
スリーブ101の軸方向下側の端部には、環状の凹部101Cが形成されており、フランジ103の外周部は、凹部101Cとスラスト板104との間に収容されている。
ラジアル軸受部121、スラスト軸受部122には、潤滑剤106が充填されている。潤滑剤106としては、例えば、低粘度なエステルオイルなどが挙げられる。また、スリーブ101は、例えば、純鉄、スレンレス鋼、銅合金および焼結金属などにより構成されている。シャフト102は、例えば、ステンレス鋼などにより構成されている。
なお、上記の流体軸受装置140を搭載したスピンドルモータ100に対して、実施例1〜実施例5をそれぞれ適用する場合の各パラメータは、図13,図14(a),図14(b)に示すとおりである。
ここで、上記流体軸受装置140に対して、上記実施例1と同様の実験を行った。その結果、上記流体軸受装置140において、関数P1/V1の値と、開放端137Aから潤滑剤106が漏れ出した時の衝撃荷重との関係について、図15に示すような結果が得られた。すなわち、上記流体軸受装置140に2000Gの衝撃荷重が加えられた時、開放端137Aから潤滑剤106が漏れ出さないための関数P1/V1の臨界値は、P1/V1=1.5×1012となった。
これにより、上記流体軸受装置140に2000Gという比較的大きな衝撃加重が加わった場合であっても、関数P1/V1の値を、1.5×1012以上とすることで、潤滑剤106が開放端137Aから漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
なお、上記流体軸受装置140においても、軸受シール部137における潤滑剤溜まり137Cの容積を示すV2と、変動容積を示すV1とは、V1<V2の関係を満たしている。
また、上記流体軸受装置140に対して、上記実施例2と同様の実験を行った。その結果、上記流体軸受装置140において、関数P2/V1の値と、開放端137Aから潤滑剤106が漏れ出した時の衝撃荷重との関係について、図16に示すような結果が得られた。すなわち、上記流体軸受装置140に2000Gの衝撃荷重が加えられた時、開放端137Aから潤滑剤106が漏れ出さないための関数P2/V1の臨界値は、P2/V1=6.0×1012となった。
これにより、上記流体軸受装置140に2000Gという比較的大きな衝撃加重が加わった場合であっても、関数P2/V1の値を、6.0×1012以上とすることで、潤滑剤106が開放端137Aから漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
また、上記流体軸受装置140に対して、上記実施例3と同様の実験を行った。その結果、上記流体軸受装置140において、関数P2/Krの値と、開放端137Aから潤滑剤106が漏れ出した時の衝撃荷重の回数との関係について、図17に示すような結果が得られた。すなわち、記流体軸受装置140に2000Gが40回の繰り返し衝撃荷重が加えられた時、開放端137Aから潤滑剤106が漏れ出さないための関数P2/Krの臨界値は、P2/Kr=1.5×10-16となった。
これにより、上記流体軸受装置140に2000Gの衝撃荷重を40回繰り返すという比較的厳しい条件が加わった場合であっても、関数P2/Krの値を、1.5×10-16以上とすることで、潤滑剤106が開放端137Aから漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
また、上記流体軸受装置140に対して、上記実施例4と同様の実験を行った。その結果、上記流体軸受装置140において、関数(P1/V1)×D1×D1×Lの値と、開放端137Aから潤滑剤106が漏れ出した時の衝撃荷重との関係について、図9に菱形◆で示すような結果が得られた。すなわち、流体軸受装置140に2000Gの衝撃荷重を加えた時、開放端137Aから潤滑剤106が漏れ出さないための関数(P1/V1)×D1×D1×Lの臨界値は、(P1/V1)×D1×D1×L=45000であることが明らかになった。
表2に、図13と図18とに示される流体軸受装置140,200の具体的な設計事例を示す。いずれの設計値においても関数(P1/V1)×D1×D1×Lの値は45000以上であり、2000G以上の耐衝撃荷重性能を得ることができた。
Figure 2009030745
これにより、上記流体軸受装置30に2000Gという比較的大きな衝撃荷重を加えた場合であっても、(P1/V1)×D1×D1×Lの値を、45000以上とすることで、潤滑剤106が開放端137Aから漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
また、上記流体軸受装置140に対して、上記実施例5と同様の実験を行った。その結果、上記流体軸受装置140において、関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの値と、開放端137Aから潤滑剤106が漏れ出した時の衝撃荷重との関係について、図10に菱形◆で示すような結果が得られた。すなわち、流体軸受装置140に2000Gの衝撃荷重を加えた時、開放端137Aから潤滑剤106が漏れ出さないための関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの臨界値は、(P1/V1)×D1×D1×r3×L=0.1となることが明らかになった。
表2に示した図13と図18とに示される流体軸受装置140,200の具体的な2つの設計事例のとおり、両方の事例の設計値において、関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの値は0.1以上であり、2000G以上の耐衝撃荷重性能を得ることができた。
これにより、上記流体軸受装置140に2000Gという比較的大きな衝撃荷重を加えた場合であっても、(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの値を、0.1以上とすることで、潤滑剤106が開放端137Aから漏れ出すことをより確実に防止することが可能となる。
さらに他の実施形態として、スピンドルモータ100は、図18に示すような流体軸受装置200を有していてもよい。
ここで、流体軸受装置200は、図18に示すように、上記流体軸受装置140にシールキャップ105と、連通穴101Gとを備えた構造となっている。ここでは、シールキャップ105および連通穴101Gについてのみ、以下に説明する。
スリーブ101の軸方向上側の端部には、シールキャップ105が固定されている。シールキャップ105は、環状の部材であり、スリーブ101に固定される筒状の固定部105Aと、固定部105Aの軸方向端部から半径方向内側へ延びるテーパ部105Bと、テーパ部105Bの外周側に形成された換気孔105Cとを有している。気液分離機能を持たせるために、テーパ部105Bは、少なくともスリーブ101側の内面が半径方向外側から内側へかけて軸方向下側へ傾斜している。テーパ部105Bは、スリーブ101とほぼ同じくらいの内径を有しており、シャフト102の外周面と隙間を介して配置されている。シールキャップ105とスリーブ101との間には、環状の流体室Hが形成されており、流体室Hの内周部はラジアル軸受部121と連通している。流体室Hの軸方向寸法は、半径方向内側へいくにしたがって小さくなっている。
連通穴101Gは、潤滑剤106を軸受121,122内部において循環させたり、内部に堆積した気泡を軸受121,122外部に排出させたりすることができる。
上記流体軸受装置200に対しても、上記で示した実施例1〜実施例6をそれぞれ適用することが可能である。
さらに、他の実施形態として、上記流体軸受装置200のシールキャップ105とスリーブ101とが一体成形され、シャフト102にフランジを有していない、図19に示すような流体軸受装置210であってもよい。流体軸受装置210においては、シャフト102とスラスト板104との間で潤滑剤36を介してスラスト軸受部122が形成されている。なお、各部については、上記流体軸受装置140と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。そして、流体軸受装置210に対しても、上記で示した実施例1〜実施例6をそれぞれ適用することが可能である。
さらに、他の実施形態として、図20に示すように、シャフト102に取り付けられたフランジ103の代わりに、例えば、ハブ107等の一部に抜け止め部材221が形成されているタイプの流体軸受装置220であってもよい。なお、各部については、上記流体軸受装置140と同じであるので、ここでは詳細な説明を省略する。そして、流体軸受装置220に対しても、上記で示した実施例1〜実施例6をそれぞれ適用することが可能である。
(B)
上記実施形態のスピンドルモータ1では、実施例1〜実施例5のうち一つを適用した場合について説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、実施例1と実施例2とを組み合わせたり、実施例1と実施例3とを組み合わせたりする等、上記に示した実施例を任意に組み合わせることが可能である。
特に、所定の荷重が加えられた時の静的なシール性能を維持することが可能な実施例(実施例1と実施例2)、繰り返し所定の荷重が加えられた時の動的なシール性能を維持することが可能な実施例(実施例3)といった観点から適宜選択、組み合わせることで、ある性能に特化したり、互いに相乗効果を得たりすることが可能となる。
(C)
上記実施形態のスピンドルモータ1では、比較的大きな衝撃荷重である2000Gを受けた場合であっても、潤滑剤36が軸受シール部37の開放端37Aから漏れ出さないような関数P1/V1、関数P2/V1の値とする例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
さらに厳しい条件を満たす必要がある場合には、その想定荷重に対応した関数P1/V1、関数P2/V1の値を算出し、その値を満たすように流体軸受装置を形成してもよい。
(D)
上記実施形態のスピンドルモータ1では、衝撃荷重である2000Gを繰り返し40回受けるという比較的厳しい条件において、潤滑剤36が軸受シール部37の開放端37Aから漏れ出さないような関数P1/V1、関数P2/V1の値とする例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
さらに厳しい条件を満たす必要がある場合には、その想定荷重、繰り返し回数に対応した関数P3/P2、関数P2/Krの値を算出し、その値を満たすように流体軸受装置を形成してもよい。
(E)
上記実施形態では、本発明をスピンドルモータ1に対して適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図21に示すように、上記構成を有するスピンドルモータ1を搭載しており、記録ヘッド350aによって記録ディスク11に記録された情報を再生したり、記録ディスク11に対して情報を記録したりする情報装置350に対して本発明を適用することもできる。
これにより、潤滑剤36の外部への漏れ出しを防止して、良好なシール性能を維持することが可能な情報装置350を得ることができる。
本発明によれば、高速化、高精度化が求められるハードディスク装置等の駆動装置として有用である。
本発明の一実施形態に係る流体軸受装置を含むスピンドルモータの縦断面概略図。 図1のスピンドルモータに含まれる流体軸受装置の拡大図。 (a),(b)は、衝撃荷重を受けた時の流体軸受装置の挙動を示した説明図。 図2の流体軸受装置に含まれる軸受シール部の拡大図。 図1に含まれる流体軸受装置の実施例1における特性図。 図1に含まれる流体軸受装置の実施例2における特性図。 図1のスピンドルモータに含まれる流体軸受装置の拡大図。 図1に含まれる流体軸受装置の実施例3における特性図。 図1に含まれる流体軸受装置の実施例4における特性図。 図1に含まれる流体軸受装置の実施例5における特性図。 図1に含まれる流体軸受装置の実施例6における特性図。 本発明の他の実施形態に係る流体軸受装置を含むスピンドルモータの縦断面概略図。 図12のスピンドルモータに含まれる流体軸受装置の拡大図。 (a),(b)は、図13の流体軸受装置に含まれる軸受シール部の拡大図。 図13に含まれる流体軸受装置の実施例1における特性図。 図13に含まれる流体軸受装置の実施例2における特性図。 図13に含まれる流体軸受装置の実施例3における特性図。 本発明の他の実施形態に係る流体軸受装置の縦断面概略図。 本発明の他の実施形態に係る流体軸受装置の縦断面概略図。 本発明の他の実施形態に係る流体軸受装置の縦断面概略図。 本発明の一実施形態に係る流体軸受装置を含む情報装置の構成を示す断面図。
符号の説明
1 スピンドルモータ
10 回転部材
11 記録ディスク
12 ハブ(ロータハブ)
12A 天板部(ロータハブ、天板)
12B 円筒壁部(ロータハブ、円筒壁)
12C ディスク載置部
13 ロータ磁石
14 スペーサ
15 クランパ
16 ネジ
20 静止部材
21 ベース
22 ステータ
30 流体軸受装置
31 スリーブ(スリーブ部材)
31A 開口端
31B 閉塞端
31C 軸受孔
31D 凹部
31E スラスト動圧発生溝
31F 連通孔
32 シャフト(軸)
32A ラジアル動圧発生溝
33 フランジ
33A スラスト動圧発生溝
34 スラスト板
36 潤滑剤(潤滑流体)
37 軸受シール部
37A 開放端
37B 軸受シール面
37Bi 軸受シール面(内周面)
37Bo 軸受シール面(外周面)
37C 潤滑剤溜まり
37D 奥部
37E 軸受シール面
37Ei 軸受シール面(内周面)
37Eo 軸受シール面(外周面)
41 スラスト軸受部
42 ラジアル軸受部
43 スラスト軸受部
100 スピンドルモータ
101 スリーブ
101A 軸受穴
101C 凹部
101G 連通穴
102 シャフト(軸)
102B ラジアル動圧発生溝
103 フランジ
103A スラスト動圧発生溝
104 スラスト板
105 シールキャップ
105A 固定部
105B テーパ部
105C 換気孔
106 潤滑剤(潤滑流体)
107 ハブ
107A ディスク載置部
108 ベース
109 ロータ磁石
110 ステータ
111 記録ディスク
112 スペーサ
113 クランパ
114 ネジ
121 ラジアル軸受部
122 スラスト軸受部
131 回転部材
132 静止部材
137 軸受シール部
137A 開放端
137Bi 軸受シール部(内周面)
137Bo 軸受シール部(外周面)
137C 潤滑流体溜まり
137D 奥部
140 流体軸受装置
200 流体軸受装置
210 流体軸受装置
220 流体軸受装置
221 抜け止め部材
350 情報装置
350a 記録ヘッド

Claims (23)

  1. 軸と、
    開口端と閉塞端とを含む軸受孔を有しており、前記軸受孔内に前記軸が微少間隙を介して挿入され、前記軸に対して相対回転可能な状態に配置されているスリーブ部材と、
    前記微少間隙に充填される潤滑流体と、
    前記潤滑流体を介して前記軸と前記スリーブ部材とを前記軸の半径方向に支持するラジアル軸受部と、前記軸方向に支持するスラスト軸受部と、を有している軸受部と、
    前記軸受部の開放端側に配置されており、前記潤滑流体が前記開放端から漏れ出すことを前記軸と前記スリーブ部材との間に働く毛管力によって抑制する軸受シール部と、
    を備えており、
    変動容積を示すV1と第1毛管圧力係数を示すP1との関数P1/V1の値が所定値以上である、流体軸受装置。
    V1=π×dg×dg×G ・・・(1)
    V1:スリーブ部材が軸に対して軸方向に相対移動が可能な容積[m3
    dg:開口端における軸受部の最外半径[m]
    G :スリーブ部材が軸に対して軸方向に相対移動が可能な距離[m]
    Fg1o=π×D1×γ×cosθ ・・・(2)
    Fg1i=π×D1i×γ×cosθ ・・・(3)
    D1i=D1−2×r1 ・・・(4)
    Fg1=Fg1o+Fg1i ・・・(5)
    Ag1=π×(D12−D1i2)/4 ・・・(6)
    P1=Fg1/Ag1 ・・・(7)
    P1:軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数[Pa]
    γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
    θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
    D1:軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面の外径[m]
    r1:軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚さ[m]
  2. 前記軸は、前記開口部側に略円形の天板と前記天板から垂下する円筒壁とから形成されるロータハブ部材が取り付けられており、
    前記軸受シール部は、前記スリーブ部材の外周面と前記ロータハブ部材の内周面とによって形成されており、
    前記関数P1/V1の値は、4.5×1011以上である、
    請求項1に記載の流体軸受装置。
  3. 前記軸受シール部は、前記軸の外周面と前記スリーブ部材の内周面とによって形成されており、
    前記関数P1/V1の値は、1.5×1012以上である、
    請求項1に記載の流体軸受装置。
  4. 前記変動容積を示すV1と第2毛管圧力係数を示すP2との関数P2/V1の値が所定値以上である、
    請求項1に記載の流体軸受装置。
    V1=π×dg×dg×G ・・・(8)
    V1:スリーブ部材が軸に対して軸方向に相対移動が可能な容積[m3
    dg:開口端における軸受部の最外半径[m]
    G :スリーブ部材が軸に対して軸方向に相対移動が可能な距離[m]
    Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(9)
    Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(10)
    D2i=D2−2×r2 ・・・(11)
    Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(12)
    Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(13)
    P2=Fg2/Ag2 ・・・(14)
    P2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数[Pa]
    γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
    θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
    D2:軸受シール部の奥部における外径[m]
    r2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚さ[m]
  5. 前記変動容積を示すV1と、前記第1毛管圧力係数を示すP1と、前記軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面の外径を示すD1と、前記潤滑流体が充填されている部分の前記軸方向における距離である軸受長さを示すLと、によって示される関数(P1/V1)×D1×D1×Lの値が以下の関係式(15)を満たしている、
    請求項1に記載の流体軸受装置。
    (P1/V1)×D1×D1×L≧45000 ・・・(15)
  6. 前記変動容積を示すV1と、前記第1毛管圧力係数を示すP1と、前記軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面の外径を示すD1と、前記軸方向における前記潤滑流体が充填されている部分の距離である軸受長さを示すLと、前記軸の半径方向における前記ラジアル軸受部の隙間を示すr3と、によって示される関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの値が以下の関係式(16)を満たしている、
    請求項1に記載の流体軸受装置。
    (P1/V1)×D1×D1×r3×L≧0.1 ・・・(16)
  7. 第2毛管圧力係数を示すP2と第3毛管圧力係数を示すP3との関数P3/P2の値が所定値以上である、
    請求項1に記載の流体軸受装置。
    Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(17)
    Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(18)
    D2i=D2−2×r2 ・・・(19)
    Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(20)
    Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(21)
    P2=Fg2/Ag2 ・・・(22)
    P2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数[Pa]
    γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
    θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
    D2:軸受シール部の奥部における外径[m]
    r2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚さ[m]
    Fg3o=π×D3×γ×cosθ ・・・(23)
    Fg3i=π×D3i×γ×cosθ ・・・(24)
    D3i=D3−2×r3 ・・・(25)
    Fg3=Fg3o+Fg3i ・・・(26)
    Ag=π×(D32−D3i2)/4 ・・・(27)
    P3=Fg3/Ag3 ・・・(28)
    P3:ラジアル軸受部における毛管圧力係数[Pa]
    γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
    θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
    D3:軸の外径[m]
    r3:軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間[m]
  8. 第2毛管圧力係数を示すP2と流路抵抗係数を示すKrとの関数P2/Krの値が所定値以上である、
    請求項1に記載の流体軸受装置。
    Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(29)
    Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(30)
    D2i=D2−2×r2 ・・・(31)
    Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(32)
    Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(33)
    P2=Fg2/Ag2 ・・・(34)
    P2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数[Pa]
    γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
    θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
    D2:軸受シール部の奥部における外径[m]
    r2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚さ[m]
    Kr=12×μ×Lr×(T×r3×r3×r3) ・・・(35)
    Kr:流路抵抗係数
    r3:軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間[m]
    Lr:ラジアル軸受部長さ[m]
    T=π×D3 ・・・(36)
    T:流路幅[m]
    D3:軸の外径[m]
  9. 請求項1に記載の流体軸受装置を搭載したスピンドルモータ。
  10. 軸と、
    開口端と閉塞端とを含む軸受孔を有しており、前記軸受孔内に前記軸が微少間隙を介して挿入され、前記軸に対して相対回転可能な状態に配置されているスリーブ部材と、
    前記微少間隙に充填される潤滑流体と、
    前記潤滑流体を介して前記軸と前記スリーブ部材とを前記軸の半径方向に支持するラジアル軸受部と、前記軸方向に支持するスラスト軸受部と、を有している軸受部と、
    前記軸受部の開放端側に配置されており、前記潤滑流体が前記開放端から漏れ出すことを前記軸と前記スリーブ部材との間に働く毛管力によって抑制する軸受シール部と、
    を備えており、
    変動容積を示すV1と第2毛管圧力係数を示すP2との関数P2/V1の値が所定値以上である、流体軸受装置。
    V1=π×dg×dg×G ・・・(101)
    V1:スリーブ部材が軸に対して軸方向に相対移動が可能な容積[m3
    dg:開口端における軸受部の最外半径[m]
    G :スリーブ部材が軸に対して軸方向に相対移動が可能な距離[m]
    Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(102)
    Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(103)
    D2i=D2−2×r2 ・・・(104)
    Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(105)
    Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(106)
    P2=Fg2/Ag2 ・・・(107)
    P2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数[Pa]
    γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
    θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
    D2:軸受シール部の奥部における外径[m]
    r2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚さ[m]
  11. 前記軸は、前記開口部側に略円形の天板と前記天板から垂下する円筒壁とから形成されるロータハブ部材が取り付けられており、
    前記軸受シール部は、前記スリーブ部材の外周面と前記ロータハブ部材の内周面とによって形成されており、
    前記関数P2/V1の値は、1.0×1012以上である、
    請求項10に記載の流体軸受装置。
  12. 前記軸受シール部は、前記軸の外周面と前記スリーブ部材の内周面とによって形成されており、
    前記関数P2/V1の値は、6.0×1012以上である、
    請求項10に記載の流体軸受装置。
  13. 前記変動容積を示すV1と、前記第1毛管圧力係数を示すP1と、前記軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面の外径を示すD1と、前記潤滑流体が充填されている部分の前記軸方向における距離である軸受長さを示すLと、によって示される関数(P1/V1)×D1×D1×Lの値が以下の関係式(108)を満たしている、
    請求項10に記載の流体軸受装置。
    (P1/V1)×D1×D1×L≧45000 ・・・(108)
  14. 前記変動容積を示すV1と、前記第1毛管圧力係数を示すP1と、前記軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面の外径を示すD1と、前記軸方向における前記潤滑流体が充填されている部分の距離である軸受長さを示すLと、前記軸の半径方向における前記ラジアル軸受部の隙間を示すr3と、によって示される関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの値が以下の関係式(109)を満たしている、
    請求項10に記載の流体軸受装置。
    (P1/V1)×D1×D1×r3×L≧0.1 ・・・(109)
  15. 第2毛管圧力係数を示すP2と第3毛管圧力係数を示すP3との関数P3/P2の値が所定値以上である、
    請求項10に記載の流体軸受装置。
    Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(110)
    Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(111)
    D2i=D2−2×r2 ・・・(112)
    Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(113)
    Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(114)
    P2=Fg2/Ag2 ・・・(115)
    P2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数[Pa]
    γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
    θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
    D2:軸受シール部の奥部における外径[m]
    r2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚さ[m]
    Fg3o=π×D3×γ×cosθ ・・・(116)
    Fg3i=π×D3i×γ×cosθ ・・・(117)
    D3i=D3−2×r3 ・・・(118)
    Fg3=Fg3o+Fg3i ・・・(119)
    Ag=π×(D32−D3i2)/4 ・・・(120)
    P3=Fg3/Ag3 ・・・(121)
    P3:ラジアル軸受部における毛管圧力係数[Pa]
    γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
    θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
    D3:軸の外径[m]
    r3:軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間[m]
  16. 第2毛管圧力係数を示すP2と流路抵抗係数を示すKrとの関数P2/Krの値が所定値以上である、
    請求項10に記載の流体軸受装置。
    Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(122)
    Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(123)
    D2i=D2−2×r2 ・・・(124)
    Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(125)
    Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(126)
    P2=Fg2/Ag2 ・・・(127)
    P2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数[Pa]
    γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
    θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
    D2:軸受シール部の奥部における外径[m]
    r2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚さ[m]
    Kr=12×μ×Lr×(T×r3×r3×r3)・・・(128)
    Kr:流路抵抗係数
    r3:軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間[m]
    Lr:ラジアル軸受部長さ[m]
    T=π×D3 ・・・(129)
    T:流路幅[m]
    D3:軸の外径[m]
  17. 請求項10に記載の流体軸受装置を搭載したスピンドルモータ。
  18. 軸と、
    開口端と閉塞端とを含む軸受孔を有しており、前記軸受孔内に前記軸が微少間隙を介して挿入され、前記軸に対して相対回転可能な状態に配置されているスリーブ部材と、
    前記微少間隙に充填される潤滑流体と、
    前記潤滑流体を介して前記軸と前記スリーブ部材とを前記軸の半径方向に支持するラジアル軸受部と、前記軸方向に支持するスラスト軸受部と、を有している軸受部と、
    前記軸受部の開放端側に配置されており、前記潤滑流体が前記開放端から漏れ出すことを前記軸と前記スリーブ部材との間に働く毛管力によって抑制する軸受シール部と、
    を備えており、
    第2毛管圧力係数を示すP2と流路抵抗を示すKrとの関数P2/Krの値が所定値以上である、流体軸受装置。
    Fg2o=π×D2×γ×cosθ ・・・(201)
    Fg2i=π×D2i×γ×cosθ ・・・(202)
    D2i=D2−2×r2 ・・・(203)
    Fg2=Fg2o+Fg2i ・・・(204)
    Ag2=π×(D22−D2i2)/4 ・・・(205)
    P2=Fg2/Ag2 ・・・(206)
    P2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における毛管圧力係数[Pa]
    γ:潤滑流体の表面張力[N/m]
    θ:潤滑流体の接触角[ラジアン]
    D2:軸受シール部の奥部における外径[m]
    r2:軸受シール部の奥部近傍に位置する気液境界面における潤滑流体膜厚さ[m]
    Kr=12×μ×Lr×(T×r3×r3×r3)・・・(207)
    Kr:流路抵抗係数
    r3:軸の半径方向におけるラジアル軸受部の隙間[m]
    Lr:ラジアル軸受部長さ[m]
    T=π×D3 ・・・(208)
    T:流路幅[m]
    D3:軸の外径[m]
  19. 前記軸は、前記開口部側に略円形の天板と前記天板から垂下する円筒壁とから形成されるロータハブ部材が取り付けられており、
    前記軸受シール部は、前記スリーブ部材の外周面と前記ロータハブ部材の内周面とによって形成されており、
    前記関数P2/Krの値は、7.0×10-14以上である、
    請求項18に記載の流体軸受装置。
  20. 前記軸受シール部は、前記軸の外周面と前記スリーブ部材の内周面とによって形成されており、
    前記関数P2/Krの値は、1.5×10-16以上である、
    請求項18に記載の流体軸受装置。
  21. 前記変動容積を示すV1と、前記第1毛管圧力係数を示すP1と、前記軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面の外径を示すD1と、前記潤滑流体が充填されている部分の前記軸方向における距離である軸受長さを示すLと、によって示される関数(P1/V1)×D1×D1×Lの値が以下の関係式(209)を満たしている、
    請求項18に記載の流体軸受装置。
    (P1/V1)×D1×D1×L≧45000 ・・・(209)
  22. 前記変動容積を示すV1と、前記第1毛管圧力係数を示すP1と、前記軸受シール部の開放端近傍に位置する気液境界面の外径を示すD1と、前記軸方向における前記潤滑流体が充填されている部分の距離である軸受長さを示すLと、前記軸の半径方向における前記ラジアル軸受部の隙間を示すr3と、によって示される関数(P1/V1)×D1×D1×r3×Lの値が以下の関係式(210)を満たしている、
    請求項18に記載の流体軸受装置。
    (P1/V1)×D1×D1×r3×L≧0.1 ・・・(210)
  23. 請求項18に記載の流体軸受装置を搭載したスピンドルモータ。
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