JP2009030364A - 縦方向格子状の手摺 - Google Patents

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Abstract

【課題】格子を通過する風に起因する音鳴り、特に共鳴音を簡便な構造ながらも、安価に防止することができる手摺を提供する。
【解決手段】笠木部、下胴縁、支柱により外縁を構成される手摺であって、前記支柱間には、等間隔で垂直に立設し、上端部を前記笠木部の下側に嵌合される上胴縁に固定され、下端部を前記下胴縁に固定される、複数本の縦方向中空格子が更に備えられて構成される縦格子状手摺において、縦方向中空格子の内部には、その下端面から充填物が、縦方向中空格子自体の長さ全体に対して10〜20%の範囲に充填され、且つ、当該充填物を充填された縦方向中空格子の前記範囲が、前記充填物により中実に構成されることを特徴とする縦方向格子状の手摺により解決される。
【選択図】図2

Description

本発明は、手摺に風が吹くことによって発生する可聴な有害音を防止することのできる縦方向格子状の手摺に関する。
建造物のベランダや建造物の外部に設けられている階段及び廊下等には、人間やペット若しくは物品等の落下防止目的のため及び美観向上目的のために、従来から様々な手摺が設置されている。この種の手摺の中には、縦方向中空格子を概略等間隔で水平方向に並べることで構成される手摺であって、図1に示すような手摺が知られており、様々な場所で一般的に用いられている。
従来、金属等の中空体により縦方向格子状に構成される手摺では、風が吹くことで当該縦方向格子が音を発する場合があることが知られている。この種の音は、一般に当業者の間では所謂音鳴りと称されている。ここで、音鳴りとは、口笛のような高音である笛吹き音、格子が共振することで現れる共鳴音、及び、組付けや建付け等の関係で現れるガタツキ音などの有害な騒音を指す。
この種の所謂音鳴りが発生すると、騒音の問題が発生したり、あるいは、手摺近傍にいる人間にわずらわしさや、時には恐怖感をあおる等の不快感を覚えさせたりする等の問題点が従来から存在している。また、上記共鳴音については、建物自体を伝播する場合もあり、そのような場合には床を音が伝播して就寝中の人々の耳にまで達し、多大な不快感を覚えさせることもある。しかしながら、この種の有害音を防止する有効な解決策は未だに見出されていない。
本発明は、上記問題点に照らし、格子を通過する風に起因する音鳴り、特に共鳴音を簡便な構造ながらも、安価に防止することができる手摺を提供することを課題とするものである。
上記課題は、本発明にしたがって、笠木部、下胴縁、支柱により外縁を構成される手摺であって、前記支柱間には、等間隔で垂直に立設し、上端部を前記笠木部の下側に嵌合される上胴縁に固定され、下端部を前記下胴縁に固定される、複数本の縦方向中空格子が更に備えられて構成される縦格子状手摺において、前記縦方向中空格子の内部には、その下端面から充填物が、縦方向中空格子自体の長さ全体に対して10〜20%の範囲に充填され、且つ、前記充填物を充填された縦方向中空格子の前記範囲が、前記充填物により中実に構成されることを特徴とする縦方向格子状の手摺により解決される。
本発明は、上記問題点を解決するために種々検討乃至実験を行った結果、従来から用いられている縦方向格子状手摺の外観をなんら変更することなく、当該手摺を構成する縦方向中空格子内の一定範囲を充填物で中実に構成することで音鳴りを防止することができることを見出したものである。
本発明に用いられる充填物には様々な材料が考えられるが、例えば、入手の容易さ及びコスト要因等から考えて桂砂であってもよい。その他の充填物であっても、手摺を構成する縦方向格子の一定範囲に充填物を詰め込むことにより、縦方向格子の一部を中実に構成することで本発明の目的を達成することができる。
なお、本発明の効果は、手摺用部材である格子に限られるものではない。例えば、縦方向格子状に構成される門扉等にも応用が利くものである。
請求項1による発明によれば、建物の外部に設けられる手摺において、風が吹くことにより発生する所謂音鳴りを効果的に防止することが可能となり、且つ、この種の手摺を簡便に構成することができるようになる。また、本発明は、手摺の外観になんら変更点を加えずに、縦方向中空格子内の一部を中実に構成することによりその効果を得ることができるので、本発明の構成を既設の手摺に充填物を詰めることでも達成することが可能である。すなわち、新たな手摺を購入することなく、既設の手摺であっても本願発明の手摺に改良することが可能である。
請求項2による発明によれば、非常に低コストに音鳴りを防止するという効果を有する手摺を製造することができるようになる。
図1は、本発明による金属性縦方向中空格子からなる手摺の正面図である。先に記述したように、本発明の手摺の外観は、従来から用いられているものとなんら変わりはないが、以下に概略説明する。
図1に示される手摺1において、縦方向中空格子2、2・・・を見て取ることができる。図1において、垂直に立設している縦方向中空格子2、2・・・は、笠木部4の下側に嵌合される上胴縁に縦方向中空格子2、2・・・それぞれの上端面を固定され、その下端面はそれぞれ下胴縁5に固定されている。これら固定方法には、例えば、ビスやねじ等の公知の固定手段が用いられる。また、下胴縁5は、水平方向に延在し、その両端面が垂直に立設する左右の支柱6、6’に固定される。また、支柱6、6’の上端面も縦方向中空格子2、2・・・と同様に、笠木部4の下側に嵌合される上胴縁に固定される。やはりこれらの場合も周知の方法(例えば、ボルト留め等)でそれぞれ固定されている。
本発明の特徴は、従来から用いられている手摺の外観になんら変更点を加えることなく、縦方向中空格子2、2・・・の内部中空空間に充填物3を一定量詰めることにより、音鳴りを防止することができるようになる点にある。したがって、例えば笠木部4は、当該笠木部4の下側に嵌合される上胴縁と共に概略断面四角形を形成してもよいし、概略断面円形状を形成してもよい。また、縦方向中空格子2、2・・・の断面も概略四角形であってもよいし、円形であってもよい。本発明の手摺りに用いられるその他の部材に関しても、部材の形状、寸法、材質等により本願発明の効果が左右されるものではない。さらに、既に設置された手摺においても縦方向中空格子2、2・・・の内部中空空間に充填物を詰め込むことで、本発明の効果を発揮させることができるようになる。
図2は、図1における記号Aで示された部分を拡大した拡大図である。図2において、金属製縦方向格子2の下端部に斜線で示されている箇所には、充填物3が充填されていて、記号Wは充填物3が充填された高さを示す。
以下に、本発明を適用した実施例を、従来技術の基準例と比較して説明する。
実験に用いられた縦方向格子状手摺の外観は、いずれも図1に示される手摺と同形状のものであり、また、手摺1に用いられる部材は全てアルミ製材料により構成されている。その概略的な寸法形状は、支柱6、6’の底面から笠木部4の上面までの高さが1200mmであり、支柱6、6’の中心軸線間の距離が871.4mmで構成されている。また、隣り合う縦方向中空格子の長手方向中心軸線間の距離は80mmに設定されている。本実験で用いた金属製縦方向中空格子は、断面で30×15mmのおよそ方形であり、短い方の側面(15mm側)が図面正面に見えるように配置され、長い方の側面(30mm側)は、支柱6、6’の方にそれぞれ面するように配置されている。また、金属性縦方向格子の長さは、下胴縁5の上端面から笠木部4の下端面までの距離に等しく、その長さは1050mmとした。本実験に用いた笠木部4は、当該笠木部4とその下側に嵌合する上胴縁と共に断面において60×40mmの概略四角形を形成するが、その上端部は断面で見て中心から外延に向けて下方へなだらかに傾斜する。支柱6、6’は、断面において50×50mmのおよそ正方形を構成し、笠木部4の長手方向最外端部から100mmの位置に支柱の長手方向中心軸線がくるように構成されている。下胴縁5は、断面において40×25mmのおよそ方形であり、その下端面が支柱の最下端面から85mmの位置にある。また、40mmの長い方の側面側が上下面となって設置面と平行になるように取り付けられている。
まず、基準例として、充填物3を充填していない従来型の手摺に風を吹き付けて音鳴りの発生の有無を観察した。風を吹き付ける手段としては、風に関する実験では一般的に用いられる暴風雨試験装置を用いた。その概略構成を図3に俯瞰図で示す。図において記号10は、風を送り出すための吹出し管10であり、その先端部11は、吹出し口径600mmを有する断面円形状に構成される吹出し口を示す。試験装置における手摺1は、ターンテーブル12の中心に設置され、当該ターンテーブル12を動かし、その位置を調整することによって、吹出し管10の吹出し口11から送出される風が当該手摺1の中央に当たるように設置される。すなわち、吹出し口11の断面中心軸線が手摺り1の格子部分の中心に位置合わせされるように、ターンテーブル12の位置を水平面方向及び垂直方向に調整する。当該ターンテーブル12を、手摺1が固定されたままの状態で回転させることも可能であり、実験では手摺1の正面(図1に示される面)を吹出し口11の断面に対して平行に置く場合を0°として、時計回りに30°回転させた場合と60°回転させた場合の合計3パターンで風速を変化させ、音鳴りの発生の有無を確認し、音鳴りが発生した場合の騒音測定及び周波数測定を実施した。本発明の目的が可聴な音鳴りの発生を防止することであるため、音鳴りの発生の有無の判断は、実験者らの聴覚、すなわち実験者らが音鳴りを自らの聴覚で確認できるか否かで行った。風速は、3パターンの各実験において4m/sから20m/sまで1m/sごとに変更させて実験を行った。
以下に、基準例としての従来型手摺の実験結果を表1として示す。
Figure 2009030364
表1から明らかなように、音鳴りは、0°の場合、すなわち、図1に見られる手摺1の正面に対して風が垂直にあてられる場合における風速10〜13m/s及び19〜20m/sの間で発生しており、30°及び60°の場合では、いずれも可聴な音鳴りは発生していない。この結果から、音鳴りは、風が手摺正面に垂直に当たる場合にのみ発生することが判明した。
音鳴りがした場合の騒音測定の結果として、風速10m/s時を図4に、風速20m/s時を図5に示す。なお、騒音測定は、RION社製積分系精密騒音計(1/3オクターブ実時間分析機能付:型式 NA−27)を用いて行った。当該騒音計の設定は、周波数重み特性をA特性とし、時間重み特性をF(Fast)として、13秒間、騒音を測定した。また、当該騒音計は、手摺1の斜め前方(手摺1から見て吹出し口11側)から、手摺1の中心点より1mの位置で行っている。ここで、図4及び5に記載されているAP値とは、オールパス(all pass)騒音レベル値のことであり、測定時の全周波数の音量(騒音レベル)全てを表示した値であり、騒音計の音圧信号から直接全パワーを求めた値である。後述する図6〜9におけるAP値も同様である。
次に、前記音鳴りを防止するために、本発明にしたがい充填物3を金属製縦方向中空格子2、2・・・の下側端面から、その全長のおよそ10%の高さに至るまで、すなわち、W=100mmの高さに至るまで充填した縦方向中空格子で実験を行った。充填物には桂砂3号を用いており、充填物重量は70gである。その測定結果を表2に、また、上記基準例と比較のため、風速10m/sにおける騒音測定の結果を図6に、風速20m/sにおける騒音測定の結果を図7に示す。
Figure 2009030364
表2から明らかなように、音鳴りの発生は、30°及び60°の場合だけでなく0°の場合でも発生しなかった。従来型の手摺と本願発明の手摺との風速10m/s時の騒音レベルを比較するために、図4及び図6両者のオクターブバンドレベル値を隣り合わせて記載した図を図8に示す。図8では、広範囲に渡り音圧レベルに差が見られ、AP値では、約39dB(デシベル)の低下を観察することができた。風速20m/sでの騒音レベルである図5と図7においても同様に、両者のオクターブバンドレベル値を隣り合わせて記載した図を図9に示す。図9では、AP値の差は10dB(デシベル)程度であったが、やはり音圧レベルの差が広範囲に渡って観察された。騒音レベルの大きさが、風速10m/s時と比べて大きく差が出なかったのは、風速20m/sでは、実験の際に吹いている風自体が発する音がもともと大きいためであると考えられる。しかしながら、風速20m/s時でもやはり広範囲に渡って音圧レベルに差が出ていることが確認され、何らかの騒音要因が加わっていることがわかる。
なお、当業者には明らかであろうが、前記図8、9において、各中心周波数におけるオクターブバンドレベルの差は、図4、6及び図5、7の対応する各オクターブバンドレベル値の差に等しいが、AP値の差は、このように単純な差として求めることはできないことに注意するべきである。AP値の差は、各中心周波数におけるそれぞれのオクターブバンドレベル差をそれぞれL、L、・・・Lとした場合に、以下に示す複雑な計算の結果として求められる。
Figure 2009030364
次に、充填物3の高さを金属製縦方向格子自体2、2・・・の長さ全体に対しておよそ20%となるW=200mmとして、再度同じ実験を行った。その結果を表3に示す。なお、充填物重量は、140gである。
Figure 2009030364
表3からも明らかなように、音鳴りの発生を0°、30°、60°のいずれにおいても確認することは出来なかった。
次に、充填物高さWを300mmにした場合と、500mmにした場合の実験結果を表4及び表5に示す。W=300mmは、充填物高さが縦方向中空格子の長さ全体に対しておよそ30%に相当する。同様に、W=500mmでは、充填物高さはおよそ50%に相当する。
Figure 2009030364
Figure 2009030364
表4及び表5から明らかなように、いずれの場合でも可聴な有害音である音鳴りが発生している。したがって、充填物を詰めることだけでは音鳴りの発生を防止することはできず、一定範囲、すなわち充填物高さを縦方向中空格子の長さ全体に対して10%〜20%にすることで音鳴りの発生を有効に防止できることが判明した。
次に、比較例として、充填物3の代わりに厚さ3mmの金属プレート7(材質:スチール)を縦方向中空格子2、2・・・のそれぞれに挿入し、縦方向中空格子2、2・・・の内面に当接させながら、その下端面から上方に向けて高さWで延在させた場合の実験結果を表6及び表7に示す。なお、図10において、金属プレート7が挿入された縦方向中空格子2、2・・・の断面図を示す。金属プレート7は、縦方向中空格子2、2・・・の内面に接するようにボルトにて固定されているのが見て取れる。金属プレート7の側方に存在する概略円形状の構成要素は、縦方向中空格子を笠木部4の下側に嵌合される上胴縁及び下胴縁5に固定するためのねじ乃至ビスが挿入される案内穴8である。当該案内穴8は、縦方向中空格子の下端面から上端面まで全体に渡って延在しており、従来技術にかかる縦方向中空格子、及び、上記桂砂を充填物3として挿入した場合にも同様に存在する。また、金属プレート7の高さは、前記Wを80mm及び160mmに設定した。当該高さを80mmと160mmに設定したのは、桂砂との比較のために、桂砂の充填高さが100mmの時と200mmの時との重量に金属プレート7の重量を合わせたことによる。すなわち、桂砂が100mm充填された場合の重量70gに、規格品である厚さ3mmの金属プレートの重量を合わせると高さが80mmとなり、桂砂が200mm充填された場合の重量140gに当該金属プレートの重量を合わせると高さが160mmとなるものである。
Figure 2009030364
Figure 2009030364
表6からも明らかなように、金属プレート7を縦方向中空格子2、2・・・の下面から80mm挿入した場合では、風速10〜12m/sの範囲で音鳴りを観測した。また、表7から明らかなように、金属プレート7を縦方向中空格子2、2・・・の下面から160mm挿入した場合では、風速10m/sで音鳴りを観測した。
以上の結果から、縦方向中空格子2、2・・・に何らかの材料を挿入するだけでは、音鳴りの防止にまでは至らないことが判明した。したがって、縦方向中空格子2、2・・・に充填物3を詰めて、一定範囲、すなわち当該格子の下端面から当該格子の長さ全体の10〜20%を中実に構成しなければ、音鳴りを防止することができないことが判明した。
縦方向中空格子状の手摺の概略的な正面図である。 図1におけるA部分の拡大図である。 暴風雨試験装置の概略的な俯瞰図である。 従来技術の手摺に暴風雨試験装置を適用した際の風速10m/s時の騒音測定結果である。 従来技術の手摺に暴風雨試験装置を適用した際の風速20m/s時の騒音測定結果である。 W=100mmとした本発明の手摺に暴風雨試験装置を適用した際の風速10m/s時の騒音測定結果である。 W=100mmとした本発明の手摺に暴風雨試験装置を適用した際の風速20m/s時の騒音測定結果である。 風速10m/s時の従来型手摺と本願発明との騒音レベルの比較図である。 風速20m/s時の従来型手摺と本願発明との騒音レベルの比較図である。 充填物の代わりに金属プレートを縦方向中空格子に挿入した場合の当該縦方向中空格子の断面図である。
符号の説明
1 手摺
2 縦方向中空格子
3 充填物
4 笠木部
5 下胴縁
6、6’ 支柱
7 金属プレート
8 案内穴

Claims (2)

  1. 笠木部(4)、下胴縁(5)、支柱(6、6’)により外縁を構成される手摺であって、前記支柱(6、6’)間には、等間隔で垂直に立設し、上端部を前記笠木部(4)の下側に嵌合される上胴縁に固定され、下端部を前記下胴縁(5)に固定される、複数本の縦方向中空格子(2、2・・・)が更に備えられて構成される縦格子状の手摺(1)において、
    前記縦方向中空格子(2、2・・・)の内部には、その下端面から充填物(3)が縦方向中空格子自体の長さ全体に対して10〜20%の範囲に充填され、且つ、前記充填物(3)を充填された縦方向中空格子(2、2・・・)の前記範囲が、前記充填物(3)により中実に構成されることを特徴とする縦方向格子状の手摺。
  2. 前記充填物(3)が、桂砂であることを特徴とする請求項1に記載の縦方向格子状手摺。
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