JP2009029354A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】周方向溝に起因した気柱共鳴音を、幅広い周波数帯域で低減する空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤのトレッド踏面に、トレッド周線に沿って延びる少なくとも1本の周方向溝と、該周方向溝に開口する複数の共鳴器とを具える空気入りタイヤであって、前記共鳴器は、前記周方向溝に一端が開口する管状部と、該管状部の他端に接続し、該管状部の断面積よりも大きな断面積を有する気室部とを具え、前記管状部における平均断面積Sに対する平均周長Lの比L/Sが2以上である。
【選択図】図2

Description

本発明は、タイヤの騒音を低減した空気入りタイヤ、特にトレッド踏面に形成した周方向溝に起因した気柱共鳴音を低減した空気入りタイヤに関するものである。
近年の車両の静粛化に伴って、自動車騒音における、タイヤ騒音の占める割合が相対的に大きくなっているため、そのタイヤ騒音の低減が大きな課題となっている。なかでも、1000Hz前後のタイヤ騒音は車外騒音の主な要因となっており、この騒音は、環境問題の点からも早急な対策が望まれている。
ところで、一般的な乗用車において、800〜1200Hzの周波数帯域に属するタイヤ騒音は、タイヤの接地面内で、トレッドに形成した周方向溝と路面とによって区画される気柱が共鳴すること、いわゆる気柱共鳴によって発生することが一般に知られている。
すなわち、周方向溝を有するタイヤが接地した状態において、該周方向溝の溝壁と、接地面との間に接地長と同じ長さの管が形成され、タイヤの走行に伴い、気柱共鳴音と呼ばれるノイズが発生する。この気柱共鳴音の周波数fは、音速をcとし、管の長さ、すなわち、周方向溝の長さに開口端補正量を足したものをLとすると、
=c/2L
で表わされる一定の周波数である。なお、開口端補正量とは、通常は実験によって求められるものであり、管が円筒形の場合、管の内側の半径に定数を乗じたものとなる。
この気柱共鳴音は高いピークを有し、周波数帯域も広いため、騒音の中でもタイヤ起因の直接音となる主要な要因のひとつである。また、人間の聴覚は、人間の聴覚感度特性を反映したA特性と呼ばれる周波数補正特性で示されるように、1000Hz前後の周波数帯域で敏感であり、フィーリング面の静粛性を向上させる意味でもこの気柱共鳴音を低減することが望ましい。
このような気柱共鳴の抑制のために、特許文献1には、トレッドに、その周方向に直線状もしくはジグザグ状に連続する2本以上の周方向溝を設け、少なくとも1本の周方向溝に付き、一端がその周方向溝に開口し、他端が陸部内で終了する複数本の分岐溝を形成し、それぞれの分岐溝を、接地面内に常に1本以上が完全に含まれる配設態様とした、サイドブランチ型共鳴器を有するトレッドパターンが提案されている。
このように、周方向溝から枝分かれした分岐溝を設けることにより、気柱共鳴音を減音させることができる。この周波数の減音効果は、分岐溝の形状により変わる。具体的には、分岐溝の長さに開口端補正量を足したものをL、音速をcとすると、減音される周波数fは、
Figure 2009029354
n:振動次数(n=1,3,5・・・)
で表されることがわかっている。
また、特許文献2には、この分岐溝を断面積が小さい枝溝部と断面積が大きい気室部とからなる、いわゆるヘルムホルツ共鳴器とすることによって気柱共鳴音を低減することが、提案されている。
この場合、音速をc、枝溝部の長さに開口端補正量を足したものをL、枝溝部の断面積をS、気室部の体積をVとすると、減音する周波数fは、
Figure 2009029354
で表されることが分かっている。
あるいは、上述したようなヘルムホルツ型の共鳴器に代えて、図1に示すように、それぞれ、その長さ方向に一定の断面積S、Sを有する断面積の異なる管路を連結した段付き管型の共鳴器を適用することもできる。この場合には、それぞれの管路の長さに開口端補正量を足したものをL、L、音速をcとすると、共鳴周波数fは、
Figure 2009029354
Figure 2009029354
で表されることが分かっている。
国際公開第2004/103737号パンフレット 特開平5−338411号公報
上述した共鳴器による気柱共鳴音の減音効果は、共鳴器の共鳴周波数では非常に大きいが、それ以外の周波数帯域ではほとんどみられない。それゆえ、幅広い周波数帯域での減音を所期したとき、周方向溝に起因した気柱共鳴音の低減は未だ不十分であった。
そこで、本発明の目的は、上述した問題点を解消して、幅広い周波数帯域の気柱共鳴音の低減を達成する空気入りタイヤを提供することにある。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)タイヤのトレッド踏面に、トレッド周線に沿って延びる少なくとも1本の周方向溝と、該周方向溝に開口する複数の共鳴器とを具える空気入りタイヤであって、
前記共鳴器は、前記周方向溝に一端が開口する管状部と、該管状部の他端に接続し、該管状部の断面積よりも大きな断面積を有する気室部とを具え、
前記管状部における平均断面積(以下、「平均管断面積」という)Sに対する平均周長(以下、「平均管周長」という)Lの比L/Sが2以上である
ことを特徴とする空気入りタイヤ。
なお、平均管断面積の単位はmm、平均管周長の単位はmmであるので、上記比は、mm−1の単位となる。
ここで、トレッド踏面とは、タイヤを適用リムに装着するとともに、それに最高空気圧を充填して平板上に垂直に置き、そこへ最大負荷能力に相当する質量を負荷したときに平板と接触することになるトレッドゴムの表面領域をいうものとする。
また、管状部とは、トレッド部に埋設した管、トレッド部に形成された溝と接地面とにより管を形成する構造、およびトレッド部に形成された溝の接地面側に該溝の両側から突起を設け、当該管状部が接地域内にあるとき、これらの突起が相互に接触することにより溝幅が維持される構造を含むものとする。
さらに、管状部の断面積とは、管状部が直線的に延びている場合、管状部を区画する側壁に垂直な向きに管状部を切断した面の面積であり、管状部が曲線状に延びている場合、管状部それぞれの延在長さの中間点における側壁に対する法線に沿って管状部を切断した面の面積のことである。
また、管周長とは、前記管状部として定義した管の断面形状を形づくる輪郭の線分長さのことであり、平均管周長とは、管状部の全表面積から管状部の両端面の面積を引いた面積である側面積を管状部の長さで割ったものである。平均管断面積とは、管状部の体積を管状部の長さで割ったものである。
(2)前記比L/Sが10以下である上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
(3)前記管状部を区画する面の表面粗さが粗い上記(1)または(2)に記載の空気入りタイヤ。
本発明によれば、共鳴器の管状部の平均管断面積Sに対する平均管周長Lの比L/Sを2以上とすることによって、幅広い周波数帯域の気柱共鳴音の低減を達成する空気入りタイヤを提供することができる。
以下に、本発明の空気入りタイヤの実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、タイヤの内部補強構造等は一般的なラジアルタイヤのそれと同様であるので図示を省略する。
図2は本発明の空気入りタイヤの実施形態を示すトレッドパターンの展開図である。
本実施形態の空気入りタイヤのトレッド踏面1には、タイヤ周方向に連続して延びる複数本の周方向溝2を有し、それら周方向溝2のうち、図においてタイヤの赤道CLの近傍の周方向溝2とその片側に配置した周方向溝2に対して複数の共鳴器3を設けている。共鳴器3は、周方向溝2に一端が開口する溝による管状部3aと、管状部3aの他端に接続し、管状部3aよりも断面積が大きい気室部3bとからなる。ここで、管状部3aの断面積は、図2のA−A線に沿う断面積であり、気室部3bの断面積は、図2のB−B線に沿う断面積である。すなわち、管状部3aおよび気室部3bの断面積は、管状部3aおよび気室部3bが曲線状に延びているので、管状部3aおよび気室部3bそれぞれの延在長さの中間点における側壁に対する法線に沿って管状部3aおよび気室部3bを切断した面の面積のことである。
なお、本実施形態では、共鳴器3を、図3(a)に示すように、接地面に開口する溝による管状部3aと、同様の溝形態の気室部3bとから構成するが、管状部と気室部とのいずれについても接地面に開口しない構成としてもよい。例えば、管状部は、図3(b)に示すように、トレッド部に埋設した管としたり、あるいは、図3(c)に示すようにトレッド部に形成された溝の接地面側に該溝の両側から突起を設け、当該管状部3aが接地域内にあるとき、これらの突起が相互に接触することにより溝幅が維持される構造でもよい。
ここで、管状部3aが溝形状の場合は管状部3aと接地面とにより構成される管、また、管状部がトレッド部に埋設した管の場合は該管の平均管断面積Sに対する平均管周長Lの比L/Sが2以上であることが肝要である。
例えば、本発明に従う共鳴器の典型的な形態(溝形態)を、図4(a)に斜視図で、図4(b)に断面図として示すように、管状部3aの深さL1と溝幅L2とが一定の場合は、管状部3aと接地面とにより構成される管の平均管周長Lは、2L1+2L2となり、管の平均管断面積Sは、L1×L2となるので、
Figure 2009029354
となることが肝要である。
またより一般的に、管状部が一様の形状でない場合(管状部3aの深さL1と溝幅L2とが一定でない場合)は、管状部3aと接地面とにより構成される管の側面積Pと管状部3aの長さQを用いて、平均管周長Lは、P/Qとなるので、平均管断面積Sを用いて、
Figure 2009029354
となることが肝要である。なお、管状部の側面積とは、管状部の全表面積から管状部の両端面の面積を引いた面積である。
さて、上述したように、従来のヘルムホルツ共鳴器は共鳴周波数付近の音しか低減せず、それ以外の周波数帯域の音はほとんど低減できない。そこで、幅広い周波数帯域において音圧レベルの低減効果を得るために、共鳴周波数が異なる複数種の共鳴器、すなわち大きさの異なるヘルムホルツ共鳴器が同時に接地面内に入るようにトレッドパターンを設計することが考えられる。しかし、通常100mm〜200mm程度のタイヤ接地面内に複数種の共鳴器を入れることになり、トレッドパターンのデザイン上大きな制約を設けなければならないことになる。そこで、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、共鳴器の管状部の平均管断面積Sに対する平均管周長Lの比L/Sを規制することによって、より幅広い周波数域で減音効果を得られることを知見した。
さて、管を通過する音の減衰は、管内の表面積と管を通過する音の粒子速度に比例することが分かっている。そして、管を通過する音の粒子速度は管の断面積に反比例する。それゆえ、この減衰を大きくするためには、粒子速度を下げずに管内の表面積を増加する、すなわち、管の断面積に対して管の周長を長くすることが有効である。
この点につき、さらに鋭意究明したところ、後述する実施例に示すように、管状部の平均管断面積Sに対する平均管周長Lの比L/Sを2以上とすることによって、周方向溝に起因する共鳴周波数を含む幅広い周波数帯域で音圧レベルを低減できることを知見した。これにより、共鳴周波数が異なる複数種の共鳴器が同時に接地面内に入るようにトレッドパターンを設計する必要がなくなり、トレッドパターンのデザイン自由度を損なわずに共鳴周波数を含む幅広い周波数帯域で音圧レベルを低減することが可能となる。
なお、上限については、比L/Sが10以下であることが好適である。なぜなら、比L/Sが10より大きくなると、減衰は大きくなるが、一方で、減衰の大きさは適度に保つことが肝要である点、この場合は減衰が大きくなりすぎることにより、共鳴器の効果が減少する。また、現実的には、管状部の幅が極端に狭いため管状部が閉じて共鳴器のポートとして作用しない状態となり、共鳴器の減音効果が減少する場合もある。
上述したように、音の減衰を大きくするために、前記管状部を区画する面の表面積を増加することが有効であり、このことは、管状部を区画する面の表面粗さを粗くすることによっても達成できる。そのためには、例えば、モールドに微小な突起を多数つけて、管状部を区画する面の表面粗さ粗くすることが有効である。
また、図2においては4本の周方向溝2のうち2本の周方向溝2に共鳴器3を設けているが、その他の周方向溝2に共鳴器3を設けてもよく、1本の周方向溝2からその両側に向かう共鳴器3を設けてもよい。中でも、共鳴器3を全ての周方向溝に対して設ける場合が最も好ましい。
本発明に係る空気入りタイヤ、基準タイヤおよび従来例タイヤを図2、図5および図6に従って試作し性能評価を行ったので以下に説明する。
上述したとおり、図2は発明例タイヤのトレッドパターンの展開図であり、また、図5は比較例タイヤのトレッドパターンの展開図であり、図6は基準タイヤのトレッドパターンの展開図である。
図5に示す比較例タイヤは、管状部の幅と深さが異なる点以外は、図2に示す発明例タイヤと同じ溝構造である。表1に、図2の発明例タイヤおよび図5の比較例タイヤのトレッドパターンの共鳴器の寸法を示す。発明例タイヤおよび比較例タイヤの共鳴器の管状部は、いずれも図4に示すような一定の深さL1、幅L2を有し、管周長は異なるが管断面積は同一である。
一方、図6に示す基準タイヤは、タイヤ騒音低減のための共鳴器を持たない従前のタイヤであり、隣接する周方向溝2間をつなぐ幅方向溝4を有する。
Figure 2009029354
発明例タイヤ、比較例タイヤおよび基準タイヤは、タイヤサイズがともに195/65R15である。これらのタイヤを15×6Jのリムに組み付けてタイヤ車輪とし、タイヤ内圧を210kPaに調整した。そして、荷重4kNを適用し、80km/hにて室内ドラム試験機で走行させた際のタイヤ側方音を、JASO C606規格にて定める条件で測定し、1/3オクターブバンド分析によって各帯域を評価した。また、気柱管共鳴帯域の総合的な評価として、1/3オクターブ中心周波数800−1000−1250Hz帯域のパーシャルオーバーオール値を用いた。
図7に、発明例タイヤおよび比較例タイヤの基準タイヤ対比音圧レベルの測定結果を示す。音圧レベル(S.P.L:Sound Pressure Level)が0より大きいと、基準タイヤ対比で良化していることを示し、0より小さいと悪化していることを示す。
比較例タイヤは、周方向溝2の気柱共鳴音1000Hz部分のみは高い減音効果(約2.5dB)があるが、その他の周波数帯域ではあまり減音効果は見られない。
発明例タイヤは、1000Hz部分は、比較例タイヤほど高い減音効果はないが、625Hz〜1250Hzの周波数帯域において1dB以上の減音効果があった。
それゆえ、基準タイヤ対比の総合的な減音効果を、表1に表すように、比較例タイヤでは1.4dB、発明例タイヤでは1.8dBであった。
以上により、共鳴器の管状部の管断面積が同一の場合、管周長を長くすることによって、幅広い周波数帯域の気柱共鳴音の低減が高次元で達成されることが分かる。
次に、幅広い周波数帯域の気柱共鳴音の低減を高次元で達成できるための、管状部の管周長/管断面積の値の範囲を定量的に検証するために、発明例1〜6および比較例1〜3の空気入りタイヤを試作し性能評価を行ったので以下に説明する。
表2に、発明例1〜6および比較例1〜3のタイヤのトレッドパターンの共鳴器の寸法を示す。発明例1および比較例1〜3のタイヤの共鳴器の管状部は、いずれも図4に示すような一定の深さL1および幅L2を有する溝であり、発明例2〜6のタイヤの共鳴器の管状部は、いずれも管周長を長くするために、図8に示すような溝の深さ方向にジグザグの形状を有し、深さL1=L11+L12+L13とする。
発明例タイヤ1〜6および比較例タイヤ1〜3を、上述したのと同様の実験を行い、図6に示す基準タイヤ対比の総合的な減音効果を測定した。その結果を表2に併記する。また、図9に、横軸を管周長L/管断面積Sとし、縦軸を基準タイヤ対比減音効果(S.P.L)として測定結果をグラフに示す。
Figure 2009029354
表2および図9より、管断面積Sに対する管周長の比L/Sが2以上のとき、1.5dB以上の減音効果が得られることが確認できた。また、発明例6において、比L/Sは2以上の5.1であるが、この事例は管状部の幅が極端に狭く、接地により管状部が閉じて共鳴器のポートとして作用しない状態となったため、減音効果が減少した。
以上により、共鳴器となる管状部の管断面積Sに対する管周長の比L/Sを2以上とすることによって、トレッドパターンのデザイン自由度を阻害することなく、幅広い周波数帯域の気柱共鳴音の低減を高次元で達成されことが分かる。
段付き管型の共鳴器を模式的に示す図である。 発明例タイヤのトレッドパターンの展開図を示す。 (a)〜(c)は本発明の空気入りタイヤの共鳴器の管状部の定義を説明するための図である。 (a)、(b)は本発明の空気入りタイヤの共鳴器の一実施形態を示す。 比較例タイヤのトレッドパターンの展開図を示す。 基準タイヤのトレッドパターンの展開図を示す。 発明例タイヤおよび比較例タイヤの基準タイヤ対比音圧レベルの測定結果を示す。 本発明の空気入りタイヤの共鳴器の他の実施形態を示す。 発明例タイヤおよび比較例タイヤの共鳴器の管状部の管周長/管断面積に対する音圧レベルの測定結果を示す。
符号の説明
CL 赤道
1 トレッド踏面
2 周方向溝
3 共鳴器
3a 管状部
3b 気室部
4 幅方向溝

Claims (3)

  1. タイヤのトレッド踏面に、トレッド周線に沿って延びる少なくとも1本の周方向溝と、該周方向溝に開口する複数の共鳴器とを具える空気入りタイヤであって、
    前記共鳴器は、前記周方向溝に一端が開口する管状部と、該管状部の他端に接続し、該管状部の断面積よりも大きな断面積を有する気室部とを具え、
    前記管状部における平均断面積Sに対する平均周長Lの比L/Sが2以上である
    ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記比L/Sが10以下である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記管状部を区画する面の表面粗さが粗い請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
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