ランドリー工場においては、シーツや布団包布のような大面積布類を洗濯・乾燥後にプレス機でプレスしたり、折畳み機で折畳む作業が行われるが、その次工程装置(以下、プレス機で説明する)に布類を供給する際には、予め布類をきれいに展張させておく必要がある。
ところで、シーツや布団包布のような大面積の布類を展張させるとともに、その展張布類を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機として、例えば特開平7−54262号公報(特許文献1)に示されるものがある。
この公知例の布類展張搬送機は、図10〜図12に示すように、布類Sの一辺の両端角部を左右の吊上チャック110,110で掴持し、所定高位置において各吊上チャック110,110を左右離間方向に移動させることによって、布類Sを展張吊上げ状態で保持し得るようになっている。尚、図10の公知例では、展張すべき布類Sとして、中央部に丸ぐり部Tを有する布団包布が採用されている。
又、この公知例の布類展張搬送機では、図10に示す展張吊上げ状態の布類Sを、図11に示すように各吊上チャック110から受渡し装置104の受取チャック140(符号140′のようにチャックが閉じる)で受け取り(布類が図11のS1の状態になる)、続いて図12に示すように受取チャック140が後退する。この状態では、布類S2の上下中間部付近が送込みローラ134に接触する。そして、吸気ボックス131内が吸気ファン133で吸気されるとともに、送込みローラ134が布類送込み方向に回転して、布類S2の下半部を符号S3で示す状態を経て符号S4で示すように吸気ボックス131内に吸引する(所定タイマー後、吸気ボックス131内の吸気は停止する)。その後、コンベア(吸着コンベア)151が走行するとともに受取チャック140が開放し、布類上縁部が符号S4bで示すようにコンベア151の始端部(水平部)上に移乗する。そして、コンベア151が走行することによって、布類S4の下部側が順次引上げられていき、該布類がコンベア151によって次工程(プレス工程)側に搬送される。
ところで、布類が展張吊上げ状態で、図12のように布類S4の下部側が吸気ボックス131内に吸引される(布類の下部側にテンションがかかる)と、布類S4はかなりの展張状態になるものの、布類Yに小皺や波打ち部分(図10の符号Y)が残ることがある。そこで、この公知例の布類展張搬送機では、コンベア151の始端部の直下近傍で展張吊上げ布類S4の背面側に左右一対の布類背面拡張装置106,106を設けている。この各布類背面拡張装置106,106は、図10に示すように左右にそれぞれ横向き姿勢で拡張ベルト161,161を有している。この各拡張ベルト161,161は、それぞれ前面側が左右外向きに走行するようになっている。又、各拡張ベルト161,161は、多数の小孔をあけた通気性のあるものを使用しており、該各拡張ベルト161,161の背面側に設けた吸気ボックス163内を吸気することにより、各拡張ベルト161,161の前面に布類の背面を吸引させ得る機能を有している。
そして、この各布類背面拡張装置106,106は、吸気ボックス163内が吸気されるとともに各拡張ベルト161,161の前面がそれぞれ左右外向きに走行し、そのとき布類S4の背面が各拡張ベルト161,161の前面に接触しながら引き上げられていき、該布類を順次左右各外方に拡張させるように機能する。
ところで、展張すべき布類Sが、図13(A)に示す中央部に丸ぐり部Tを有する布団包布や、図13(B)に示す袋状の布団包布では、生地に表裏2枚重ね部分がある。そして、このように表裏2枚重ね生地を有する布団包布Sを上記公知例(図10〜図12)の布類展張搬送機で展張させる場合には、展張吊上げ布類Sの背面側は各布類背面拡張装置106,106により左右に拡張させることができるものの、該展張吊上げ布類(布団包布)Sの前面側を拡張させる(皺延ばしする)機能はほとんどない。従って、丸ぐり部Tの外側の布類前面生地に小皺や波打ち部分(符号Y)が残り易くなる。尚、図13(B)の袋状布団包布Sでも、前面側生地に小皺や波打ち部分(符号Y)が残る。
そこで、本件出願人は、布類を展張吊上げ状態で、その布類背面側及び布類前面側をそれぞれ左右に拡張させ得る(皺延ばしする)ようにした布類展張搬送機を既に提案している(特許文献2の特願2006−306141号)。
この特許文献2の布類展張搬送機は、図14及び図15に示すように左右の各布類背面拡張装置106,106の各拡張ベルト161,161の対面位置に、展張吊上げ布類Sの左右外側部寄り前面をそれぞれ強制的に外側に拡張させ得る拡張ベルト171を有した左右一対の布類前面拡張装置107,107を設けている。各布類前面拡張装置107,107は、各拡張ベルト171,171を吊上げ展張される布類Sの左右各端部の前面に摺接させる構造であるので、該各拡張ベルト171,171を布類Sの吊上げ展張動作に邪魔にならない外側退避位置と使用位置である布類対面位置との間で移動させる左右動装置172が必要であるとともに、該拡張ベルト171,171を展張吊上げ布類Sに対して接触・離間させるための接離移動装置173(図15)が必要となる。
そして、図14及び図15(特許文献2)の布類展張搬送機では、その前面部で吊上げ展張される布類Sは、各布類背面拡張装置106,106側の拡張ベルト161,161と各布類前面拡張装置107,107側の拡張ベルト171,171との間に挟まれた状態で上方に引き込まれることにより、該展張吊上げ布類Sの表裏各面がそれぞれ前後各拡張ベルト161,171で擦られて左右外側に拡張される(皺延ばしされる)ようになっている。
ところで、展張吊上げ布類Sに対して各拡張ベルト161,171が擦れると、該布類Sから布埃(微細な糸屑や糸繊維)が剥離し、該布埃が周辺に飛散してこの布類展張搬送機の前面部付近に付着するようになる。従って、この布類展張搬送機では、付着した布埃を定期的に清掃する必要があった。尚、布類背面拡張装置106の拡張ベルト161は、展張吊上げ布類Sを背面側から吸着させるために穴空きベルトを使用し、該拡張ベルト(穴空きベルト)161を裏面側から吸気しているので、背面側拡張ベルト161が布類Sに擦れて布埃が剥離しても、その布埃のほとんどが拡張ベルト161の穴から吸引される(吸気ファン165から排出される)。従って、この布類展張搬送機の前面部付近に付着する布埃は、ほとんどが前面側拡張ベルト171,171で剥離されたものである。
特開平7−54262号公報
特願2006−306141号
ところが、図14及び図15(特許文献2)の布類展張搬送機ように、布類前面拡張装置107,107を布類Sの展張吊上げ位置に設置したものでは、布類Sがそこで左右に展張される関係で、前面側拡張ベルト171を外側退避位置と使用位置との間で移動させる左右動装置172と、該前面側拡張ベルト171を展張吊上げ布類Sに対して接触・離間させるための接離移動装置173とがそれぞれ必要であって、布類前面拡張装置107の構造が複雑となる。さらに、このように布類前面拡張装置107の構造が複雑である(多くの動きを必要とする)ので、布類Sの展張吊上げ位置の前面部に、前面側拡張ベルト171の摺動によって布類Sから剥離した布埃を除去する装置(例えば吸引装置)を設置するのは非常に困難となる。
従って、布類Sの展張吊上げ位置の前面側に拡張ベルト171を設置したものでは、該拡張ベルト171で擦られて剥離した布埃が布類展張搬送機の前面部付近に付着するようになり、定期的にその付着布埃を掃除する必要があった。
そこで、本願発明は、布類拡張装置(拡張ベルト)を比較的邪魔にならない場所に設置することにより、該布類拡張装置の構成を簡略化する(動きの少ないものでよい)ことができるようにするとともに、該布類拡張装置(拡張ベルト)によって布類から剥離される布埃を比較的簡単に吸引除去し得るようにした布類展張搬送機を提供することを目的としている。
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明は、シーツや布団包布のような大面積の布類の一辺の両端角部をそれぞれ掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その布類の各掴持部分を左右に離間させて布類を吊上げ状態で展張させた後、その展張吊上げ布類を搬送装置により次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機を対象にしている。
尚、本願発明の布類展張搬送機として、シーツのような1枚ものの布類のみを対象にするものでは、布類の展張吊上げ位置に布類背面拡張装置を設けていないものでもよいが、布団包布のような2枚重ね部分のある布類も対象にするものでは、布類の展張吊上げ位置に布類背面拡張装置を設けたものが好ましい。
そして、本願請求項1の布類展張搬送機は、前記搬送装置の搬出コンベア上に、該搬出コンベア上を搬送される展張布類の上面に摺接して布類を左右外側に拡張させる左右一対の布類上面拡張装置を設けている一方、該各布類上面拡張装置の近傍に、該各布類上面拡張装置が布類に摺接したときに該布類から剥離する布埃を吸引する布埃吸引装置を設けている。
搬出コンベア部分は展張布類が単に展張状態で搬送されるだけであるので、該搬出コンベア上に設置した各布類上面拡張装置は、動作部分の少ない比較的簡単な構成のものでよい。即ち、各布類上面拡張装置としては、搬出コンベア上を搬送させる展張布類の上面に摺接して布類を左右外側に拡張させる拡張ベルト(モータで駆動される)と、該拡張ベルトを搬出コンベア上の展張布類に対して接離させる接離移動装置のみでよい。尚、この布類上面拡張装置で使用する拡張ベルトは、ベルト外周面にブラシを植設したものが好ましい。
そして、この布類上面拡張装置は、その拡張ベルトを搬出コンベア上面から所定小間隔(例えば20〜30mm)だけ離間した位置に待機させておき、搬出コンベア上を搬送される展張布類の先端部が拡張ベルト直下を通過した直後に該拡張ベルトを下動させて該拡張ベルト下面(ブラシ先端)を展張布類の上面に摺接させるようにしている。尚、展張布類の終端部が拡張ベルト位置を通過した時点で、布類上面拡張装置を上動させて上方退避位置に待機させる。
布埃吸引装置は、各拡張ベルトの近傍に設置した吸引ボックスと、該吸引ボックス内を吸引する吸気ファンとで構成されている。
本願の布類展張搬送機は、次のように機能する。即ち、機枠の前面部において布類の一辺の両端角部を掴持させた後、スタートボタンを押すと、布類を所定高位置まで吊上げ、その吊上げ布類を左右に展張させ、その展張布類を奥側に引き込んで搬送装置(搬出コンベア)上に移乗させるようになっている。そして、搬出コンベア上の展張布類の先端部が布類上面拡張装置の拡張ベルト位置まで搬送されたときに各拡張ベルト(下面側が左右外側に走行している)が下動して該各拡張ベルトの下面(ブラシ先端)が展張布類の左右外側寄り上面に摺接して、展張布類の上面側を左右に拡張する(皺延ばしする)。尚、搬出コンベア上の展張布類はそのまま連続して後送されており、順次展張布類の上面側全面がきれいに展張される。
ところで、各拡張ベルトが展張布類の上面に摺接すると、布類1枚当たりではごく微量ではあるが該布類から布埃(微細な糸屑や糸繊維)が剥離されるが、布類上面拡張装置の近傍に布埃吸引装置を設けているので、布類から剥離した布埃を順次布埃吸引装置で吸引することができる。尚、布埃吸引装置で吸引した布埃は、集塵機に集めたりダクトを通して屋外に排出したりすることができる。
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の布類展張搬送機において、布埃吸引装置の吸気源として、この布類展張搬送機に装備された既存の吸引装置の吸気ファンを共用していることを特徴としている。
ところで、この種の布類展張搬送機においては、例えば図10〜図12の公知例のもののように展張吊上げ布類の下部を吸引ボックス内に吸引するための吸引装置が用いられているが、この吸引装置には吸気ファンが使用されている。
そして、本願請求項2の布類展張搬送機では、搬送装置の搬出コンベア上に設けられる布埃吸引装置の吸気源として既存の吸引装置の吸気ファンを共用しているので、布埃吸引装置の吸気源として専用の吸気ファンを設ける必要がない。
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の布類展張搬送機では、展張布類を左右に拡張(皺延ばし)する布類上面拡張装置を搬出コンベア(展張布類を次工程側に搬送するためのもの)上に設けているが、搬出コンベア部分は単に展張布類が搬送させるだけのものであるので、布類上面拡張装置を搬出コンベア上に設けると、該布類上面拡張装置の構成を簡略化することができる。即ち、特許文献2(図14、図15)のように布類前面用拡張ベルトを布類背面用拡張ベルトの対面位置に設ける場合には、拡張ベルトを使用位置と退避位置との間で移動させる左右動装置と、該拡張ベルトを展張吊上げ布類に対して接触・離間させるための接離移動装置とが必要であるが、搬出コンベア上に布類上面拡張装置を設ける場合には、上記左右動装置と接離移動装置とを単一のもので共用でき、その分、布類上面拡張装置を簡単且つ安価に製作できるという効果がある。
又、この請求項1の布類展張搬送機では、搬出コンベア上の布類上面拡張装置の近傍に布埃吸引装置を設置しているので、該布類上面拡張装置(拡張ベルト)が布類に擦れることによって発生する布埃を該布埃吸引装置で吸引でき、布類上面拡張装置付近に布埃が付着するのを防止できる(布埃の掃除が不要となる)という効果がある。さらに、搬出コンベア上に設置した布類上面拡張装置の近傍に布埃吸引装置を設ける場合は、搬出コンベアが単に展張布類を搬送させるためのものであるので、該布埃吸引装置を設置するためのスペースが十分確保でき、従って布埃吸引装置を簡単に設置できるという効果がある。
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の布類展張搬送機において、布埃吸引装置の吸気源として、この布類展張搬送機に装備された既存の吸引装置の吸気ファンを共用しているので、該布埃吸引装置の吸気源として専用の吸気ファンを設ける必要がない。
従って、この請求項2の布類展張搬送機では、上記請求項1の効果に加えて、布埃吸引装置専用の吸気ファンが不要になるので、その分、部材点数を少なくできるとともに安価にできるという効果がある。
以下、図1〜図9を参照して本願実施例の布類展張搬送機を説明する。尚、この実施例の布類展張搬送機は、シーツのような1枚ものの布類も何ら問題なく展張させることができるが、図13(A)に示す中央部に丸ぐり部Tを有する布団包布や図13(B)に示す袋状の布団包布のような布類Sを展張させるのに適したものである。
まず、この実施例の布類展張搬送機の基本構成を図1及び図2を参照して説明する。この布類展張搬送機は、投入装置1と、左右展張装置2と、吸引装置3と、受渡し装置4と、搬送装置5と、布類背面拡張装置6と、布類上面拡張装置7と、布埃吸引装置8とを有している。
投入装置1は、展張すべき布類Sの一辺の両端角部を掴持する一対の投入チャック11,11を有し、該各投入チャック11,11を昇降装置12(図2)で上下動させ得るようにしたものである。尚、昇降装置12にはロッドレスシリンダが使用されている。
各投入チャック11,11は、人の肩幅程度の間隔で左右に並置されている。そして、この各投入チャック11,11は、昇降装置12により投入作業高さとなる低位置(図1、図2の高さ)と布類全体を吊下げ得る高位置(布類の掴持部分を後述の受取チャック21に受け渡し得る高さ)との間で上下動せしめられる。そして、低位置において、布類の一辺の両端角部を各投入チャック11,11で掴持させた後(布類が図1の符号S′の状態となる)、昇降装置12で受け渡し高さまで上昇せしめられる。
尚、この実施例では、投入装置1は左右に2基設けており、何れの投入装置1,1からでも布類を投入することができるようになっている。又、各投入装置1,1は、待機状態では、図1に示すように機体の幅中心から左右に振り分けた各位置に位置しているが、布類掴持後に上動する際には、機体の幅中心位置に移動するようになっている。
左右展張装置2は、所定高位置において投入装置1の各投入チャック11,11から布類の両端角部をそれぞれ受け取る一対の受取チャック21,21を有し、該各受取チャック21,21をそれぞれ左右動装置(可逆回転可能なサーボモータを使用)22,22で左右方向に移動させ得るようにしたものである。各受取チャック21,21は、図1に示すように待機状態では機体の幅中央部において投入装置1の各投入チャック11,11の間隔と同間隔で待機しており、布類の両端角部を受け取った後(図1のS″の状態)、左右動装置22,22により布類の上辺部が緊張するまで左右外方に移動せしめられる(布類Sが図1の展張吊上げ状態となる)。
吸引装置3(図2)は、受取チャック21,21が左右移動する部分の下方位置に吸気ボックス31を設けるとともに、該吸気ボックス31内の空気を吸気ファン33で吸引し得るものが採用されている。吸気ボックス31と吸気ファン33とを連続させる吸気通路32中には、切換ダンパー36が設けられており、該切換ダンパー36が図2の鎖線図示する符号36′の側に位置するときに、吸気ボックス31内が吸気ファン33によって吸引されるようになっている。又、吸気ボックス31の前壁上端部には、左右2本の送込みローラ34,34が設けられている。この各送込みローラ34,34は、それぞれモータ35,35によって所定タイミングで送込み方向に回転せしめられる。
そして、この吸引装置3は、布類Sが展張吊上げ状態において、送込みローラ34を送込み方向に回転させるとともに、吸気ボックス31内を吸引することにより、展張吊上げ状態の布類Sの下部側を送込みローラ34を乗り越えて吸気ボックス31内に吸引し、そのとき布類の下部側にテンション作用が働いて、展張吊上げ状態の布類Sを下方に展張させる機能が発生する。
この吸引装置3の吸気ファン33は、後述するように布埃吸引装置8の吸気源として共用している関係で、該吸気ファン33で吸引した布埃をファン吐出口から放出するようになっているが、該ファン吐出口に集塵機を接続したり廃棄ダクトを接続して、吸引した布埃が屋内に再放出されないようにすることが好ましい。
受渡し装置4は、各受取チャック21,21により展張吊上げ状態で支持されている布類Sの上縁部を受け取る吸着ボックス41と、該吸着ボックス41内を吸気する吸気フアン42と、吸着ボックス41を前後に進退させる伸縮シリンダ43とを有している。吸着ボックス41の先端部上面(布類受取面)には、多数の小孔を形成しており、該吸着ボックス41内を吸気ファン42で吸引することにより、布類受取面に布類上縁部を吸着(保持)させ得るようになっている。そして、この受渡し装置4は、吸着ボックス41が前位置にある状態で布類受取面に布類上縁部を吸着させた後、該吸着ボックス41を図2に鎖線図示(符号41′)する位置まで後退させる間に、該布類上縁部を搬送装置5(吸着コンベア51)の始端部上に移乗させるように作動する。
搬送装置5は、手前側に多数の小孔を設けた吸着コンベア51と、その後端部に連続する搬出コンベア52有している。吸着コンベア51の始端部は、前位置にある吸着ボックス41の先端部(布類受取面)よりやや後側の直下近傍に位置している。吸着コンベア51の上面走行部の下面には、吸気ボックス53が設置されていて、該吸気ボックス53内を吸気することで、吸着コンベア51の上面に布類上縁部を吸着させ得るようになっている。
吸着コンベア51側の吸気ボックス53内は、上記吸引装置3の吸気ファン33を共用して、吸引装置3の吸気ボックス31とは択一的に吸気される。即ち、図2において、切換ダンパー36が実線図示にあるときには、吸引装置3側の吸気ボックス31内の吸気が停止する一方、吸着コンベア51側の吸気ボックス53内がダクト54を通して吸気され、切換ダンパーが鎖線図示する符号36′側に切換わると、逆に吸着コンベア51側の吸気ボックス53内の吸気が停止する一方、吸引装置3側の吸気ボックス31内が吸気されるようになっている。
搬出コンベア52は、吸着コンベア51から展張布類Sを受け取って、該展張布類Sを次工程側(例えばプレス機側)の受入コンベア56に受け渡すものである。
布類背面拡張装置6は、展張吊上げ布類Sの背面を左右に展張させるもので、左右一対ある。この各布類背面拡張装置6,6はそれぞれ拡張ベルト61,61を有している。この各拡張ベルト61,61は、吸着コンベア51の始端部より僅かに前側の直下近傍位置において、機体の幅中央部から左右に振り分けた各位置に設置されている。又、該各拡張ベルト61,61は、前面がほぼ鉛直面になる左右横長姿勢で設置されており、前面がそれぞれ左右外方向に走行するようにそれぞれモータ62,62で駆動される。尚、以下の説明では、この布類背面拡張装置6,6の各拡張ベルト61,61を背面側拡張ベルトということがある。
各背面側拡張ベルト61,61は、多数の小孔を設けた通気性のあるベルトを使用している。そして、各背面側拡張ベルト61,61の前面走行部の裏側には、それぞれ吸気ボックス63が配置されており、該吸気ボックス63内を吸引することにより、背面側拡張ベルト61の前面に布類の背面を吸着させ得るようにしている。各吸気ボックス63内は、それぞれダクト64を介して吸気フアン65の吸気口にそれぞれ接続されており、該吸気フアン65の吸気により該各吸気ボックス63内を吸引し、それによって各背面側拡張ベルト61,61の前面走行部の各小孔から周囲の空気を吸引し得るようになっている。
そして、この各布類背面拡張装置6,6は、次のように機能する。即ち、図3及び図4に示すように、展張布類(S2,S3)が奥側に引き込まれていく際に、その布類背面が各背面側拡張ベルト61,61(前面が左右各外側に走行している)に接触し、該布類背面が該各背面側拡張ベルト61,61で左右各外側に拡張される。このとき、布類背面に皺や波打ち部分があっても、各背面側拡張ベルト61,61が左右各外側に摺動することにより、布類背面の皺取りがなされる。
尚、各背面側拡張ベルト61,61が展張布類Sの背面に摺接すると、該布類Sが各拡張ベルト61で擦られて該布類Sから布埃(微細な糸屑や糸繊維)が剥離されることがあるが、この背面側拡張ベルト61,61は、多数の穴空きベルトが使用され且つ裏面側から吸気されているので、該背面側拡張ベルト61で布類から剥離された布埃は、その大部分がベルトの小孔を通して吸気ボックス63内に吸引される。従って、背面側拡張ベルト61,61で剥離された布埃がこの布類展張搬送機の前面部付近に付着することはない。尚、吸気ボックス63内に吸引された布埃は、吸気ファン65の吐出口から放出されるが、この吸気ファン65の吐出口も必要に応じて集塵機に接続したり廃棄ダクトを接続したりすることができる。
ところで、この実施例の布類展張搬送機では、処理すべき布類Sとして中央部に丸ぐり部Tを有した布団包布を採用しているが、この布団包布Sでは、丸ぐり部Tの周囲の生地Scが2枚重ね状態となっている。尚、袋状の布団包布でも、生地が表裏2枚重ねとなっている。そして、丸ぐり部Tを有した布類Sを展張させる際には、図1に示すように丸ぐり部Tが前面側に向く姿勢で吊上げ展張するが、この場合、各布類背面拡張装置6,6の拡張ベルト61,61は前面側にある丸ぐり部周囲部分の2枚重ね部分Scには拡張作用はほとんど働かない。従って、布類前面の2枚重ね部分Scには皺や波打ち部分Yが残ったままになることがある。尚、この丸ぐり部Tを有した布類Sは、布類展張搬送機の前面部で吊上げ展張された後、受渡し装置4及び搬送装置5により後送されるが、搬送装置5(搬出コンベア52)上では丸ぐり部Tが上側になる状態で載せられている。
そこで、この実施例の布類展張搬送機には、搬送装置5の搬出コンベア52上に展張布類Sの上面(丸ぐり部Tがある側)をきれいに展張させるための左右一対の布類上面拡張装置7,7を設けている。
この各布類上面拡張装置7,7は、図2〜図7に示すように、それぞれ拡張ベルト71をモータ73で走行させるようにしたものである。尚、以下の説明では、各布類上面拡張装置7,7の拡張ベルト71,71を上面側拡張ベルトということがある。
この各上面側拡張ベルト71,71は、この実施例では、ベルト外周面にブラシ71aを植設したものが使用されている。このように拡張ベルト71としてブラシベルトを使用したものでは、ブラシの撓みによりベルト下面を確実に布類上面に摺接させることができる。
各上面側拡張ベルト71,71は、搬出コンベア52上を搬送される展張布類Sの左右外側部寄り上面Sd(図5)を含む位置において、左右に長い一連のケーシング72内に収容した状態で設置されている。各上面側拡張ベルト71,71用の各モータ73,73は、ケーシング72の側面に取付けられている。そして、この各上面側拡張ベルト71,71は、それぞれモータ73,73により、ベルト下面側がそれぞれ左右外側に走行するように駆動される。
各布類上面拡張装置7,7には、搬出コンベア52上を搬送される展張布類Sに対して、各上面側拡張ベルト71,71の下面(ブラシ71a)を接触・離間させるための接離移動装置9が設けられている。この接離移動装置9は、ケーシング72の左右両端部にそれぞれブラケット92,92を設け、該各ブラケット92,92を左右の取付台91,91に軸93,93で支持しているとともに、各取付台91,91と各ブラケット92,92との間に伸縮シリンダ94,94を介設している。そして、この接離移動装置9は、各伸縮シリンダ94,94の押し引き操作により、図8に示すように上面側拡張ベルト71の下面(ブラシ71aの下端)が搬出コンベア52上を搬送される展張布類Sの上面より若干高さ(例えば20〜30mm程度)だけ離間する位置と、図9に示すように上面側拡張ベルト71の下面(ブラシ71aの下端)が搬出コンベア52上を搬送される展張布類Sの上面に接触する位置との間で上下動させ得るようになっている。
又、この接離移動装置9の伸縮シリンダ94,94は、展張布類Sが各上面側拡張ベルト71,71の直下に位置するか否かを検出する検出器95,95からの信号で作動せしめられる。この検出器95,95は、各上面側拡張ベルト71,71の搬出コンベア上手側近傍位置(ケーシング72の側面)に設置されている。そして、各検出器95,95がOFF状態では、図8に示すように各伸縮シリンダ94が縮小状態にあって布類上面拡張装置7を持ち上げており(上面側拡張ベルトのブラシ71a下端が搬出コンベア52の上面から20〜30mm程度離間している)、搬出コンベア52上を搬送される展張布類Sの先行端部Sa(図8)が上面側拡張ベルト71の直前位置に達したときに検出器95が布類先行端部Saを検出し(検出器95がONとなる)、その所定タイマー後に(図9に示すように布類先行端部Saが上面側拡張ベルト71の直下を例えば10mm程度通過した時点で)伸縮シリンダ94を伸長させて、図9に示すように布類上面拡張装置7を下動させる(上面側拡張ベルトのブラシ71aを展張布類S上面に接触させる)ようになっている。又、図9のように布類上面拡張装置7を下動させた後、展張布類Sの後行端部Sbが検出器95の検出位置を通過した時点で、該検出器95がOFFとなって各伸縮シリンダ94を縮小させ、布類上面拡張装置7を図8に示す上方待機位置に戻すようになっている。
ところで、各上面側拡張ベルト71,71が展張布類Sの上面に摺接すると、該布類Sから布埃(微細な糸屑や糸繊維)が剥離することがあるが、本願では、各布類上面拡張装置7,7の近傍に、布類から剥離した布埃を吸引するための布埃吸引装置8,8を設けている。
この各布埃吸引装置8,8は、図7に拡大図示するように、上面側拡張ベルト71,71のケーシング72の側面(搬出コンベア52の下流側側面)における該各上面側拡張ベルト71,71が対応する位置にそれぞれ吸引ボックス81,81を設けているとともに、該各吸引ボックス81,81内をそれぞれダクト82,82を介して上記吸引装置3の吸気ファン33で吸引するようにしたものである。
この各布埃吸引装置8,8の吸引ボックス81,81は、図7に示すように、下面側が開放され且つ上面側拡張ベルト71,71のケーシング72に連通する状態で設置している。従って、各上面側拡張ベルト71,71のブラシ71aでケーシング72内に掻き上げた布埃も各吸引ボックス81,81から吸引し得るようになっている。尚、各吸引ボックス81,81はケーシング72の側面に固定されているので、上記接離移動装置9によりケーシング72が上下動されると該各吸引ボックス81,81も上下動する関係で、各吸引ボックス81,81に接続された各ダクト82,82は、フレキシブルなものを使用している。
尚、この実施例では、各吸引ボックス81,81内を吸引する吸気源として、展張吊上げ布類の下部を吸引する吸引装置3の吸気ファン33を共用しているが、他の実施例では布埃吸引装置8,8に専用の吸気ファンを用いてもよい。
次に、この実施例の布類展張搬送機の作動方法を説明する。尚、運転時の初期状態では、吸引装置3の吸気フアン33、布類背面拡張装置6の吸気フアン65、各背面側拡張ベルト61,61のモータ62,62、搬送装置5の吸着コンベア51及び搬出コンベア52等はそれぞれ作動している。又、搬出コンベア52上の布類上面拡張装置7,7は図8に示す上方退避位置にあり、その各上面側拡張ベルト71,71のモータ73,73は作動している。さらに布埃吸引装置8,8の各吸引ボックス81,81内は吸気ファン33により連続して吸引されている。
そして、布類を布類展張搬送機に供給するには、作業位置において布類の一辺の両端角部を捜し出し、図1に示すようにその両端角部を投入装置1の各投入チャック11,11にそれぞれ掴持させる(図1、図2の符号S′の状態)。次に各投入チャック11,11が布類両端角部掴持したまま所定高さまで上動して、布類両端角部を上方で待機している各受取チャック21,21に受け渡し(図1、図2の符号S″の状態)、続いて各受取チャック21,21が左右離間方向に移動して布類を吊上げ状態で左右に展張させる。
次に、展張吊上げ布類が図2の符号S″の状態から、送込みローラ34が送込み方向に高速回転するとともに、切換ダンパー36が鎖線図示(符号36′)側に切換えられて吸気ボックス31内の空気が吸引され、布類の下端側が吸気ボックス31内に吸い込まれる(展張吊上げ布類が図2の符号S1の状態になる)。このとき、この展張吊上げ布類S1には、吸気ファン33の吸引作用により、下方へのテンションがかけられて、該布類が方形状に展張される。
その後、切換ダンパー36′が実線図示側に切換えられ(吸着コンベア51の吸気ボックス53内が吸気される)、各受取チャック21,21が開放されて、布類の上辺部分が吸着ボックス41の先端側上面に吸着・保持される。続いて、吸着ボックス41が図3に実線図示する位置を経て鎖線図示(符号41′)する位置まで後退するが、その間に布類上辺部分が吸着コンベア51上に移乗される(図4の符号S3の状態)。
そして、該展張布類S3(図4)が吸着コンベア51によって奥側に引き込まれていくが、このとき展張布類S3の背面が各背面側拡張ベルト61,61の前面に接触・吸引され、且つ該各背面側拡張ベルト61,61がそれぞれ左右外向きに走行していることにより、展張布類S3の背面が順次左右に拡張される(布類背面の皺取りが行われる)。尚、このとき各背面側拡張ベルト61,61は、布類背面に対して拡張作用が働くものの、2枚重ね部分の前面部(丸ぐり部の外周部)にはほとんど拡張作用は働かない(皺や波打ち部分Yが残ったままになり易い)。
吸着コンベア51側に引き込まれた展張布類は、吸着コンベア51上から搬出コンベア52上に移乗される(図2の符号Sの状態)。そして、図8に示すように、展張布類Sの先行端部Saが上面側拡張ベルト71の直前位置まで搬送されたときに、該布類先行端部Saを検出器95で検出し、その検出信号によって所定タイマー後(図9に示すように布類先行端部Saが上面側拡張ベルト71の直下から10mm程度通過した時点)に接離移動装置9の伸縮シリンダ94,94を伸長させて、各上面側拡張ベルト71,71の下面(ブラシ71a先端)を展張布類Sの上面に接触させる。すると、各上面側拡張ベルト71,71がそれぞれ左右外側に走行していることにより、順次展張布類Sの上面が左右外側に拡張され、布類上面の皺取りが行われる。
このとき、各上面側拡張ベルト71,71の下面(ブラシ71a)が布類上面に摺接することで該布類Sから布埃(微細な糸屑や糸繊維)が剥離されるが、布埃吸引装置8,8の吸引ボックス81,81内が吸引されていることにより、布類Sから剥離した布埃を各吸引ボックス81,81内からそれぞれダクト82,82を通して吸気ファン33(図2)で吸引するようになっている。従って、この布類展張搬送機では、各上面側拡張ベルト71,71が布類上面に摺接することによって発生する布埃が搬出コンベア52付近に付着することがない。尚、吸気ファン33で吸引した布埃は、集塵機で回収したりダクトで屋外に排出させたりすることができる。
そして、搬出コンベア52上の展張布類Sの後行端部Sbが各上面側拡張ベルト71,71の直下(検出器95)を通過すると、検出器95がOFFとなって接離移動装置9の各伸縮シリンダ94,94が縮小して布類上面拡張装置7,7が上方退避位置(図8)に移動し、次の展張布類Sが搬送されてくるまで該布類上面拡張装置7,7が上方退避位置で待機する。
このように、この実施例の布類展張搬送機では、布類背面拡張装置6,6によって布類背面が左右に拡張(皺取り)される一方、布類上面拡張装置7,7によって布類上面(背面の反対面)が左右に拡張(皺取り)されるので、2枚重ねを有する布団包布のような布類Sであっても、表裏各面をきれいに展張させた状態(皺のない状態)で次工程(プレス工程)側に供給でき、次工程において高精度の処理ができる。
又、布類上面拡張装置7,7を搬出コンベア52上に設置すると、該搬出コンベア52部分に布類上面拡張装置7,7を設置するための邪魔物がないので、布類背面拡張装置6,6の対面位置に設置する場合に比して、布類上面拡張装置7,7の設置が簡単となるとともに該布類上面拡張装置7,7として比較的簡単な構成のものを採用できる。
さらに、布類上面拡張装置7,7の近傍に布埃吸引装置8,8を設けているので、布類から剥離した布埃を順次布埃吸引装置8,8で吸引できるので、該布埃で周囲を汚すことがない。又、この布埃吸引装置8,8も、邪魔物がない搬出コンベア52部分に設置されるので、該布埃吸引装置8,8の設置が簡単になるとともに、その構成も簡単なものでよい。
尚、この実施例の布類展張搬送機で、シーツのような1枚ものの布類を処理する際には、布類上面拡張装置7,7を使用しないでもよい。又、シーツのような1枚ものの布類専用の機種では、この実施例で使用している布類背面拡張装置6,6のないものでもよい。
1は投入装置、2は左右展張装置、3は吸引装置、4は受渡し装置、5は搬送装置、6は布類背面拡張装置、7は布類上面拡張装置、8は布埃吸引装置、9は接離移動装置、33は吸気ファン、61は拡張ベルト(背面側拡張ベルト)、71は拡張ベルト(上面側拡張ベルト)、71aはブラシ、81は吸引ボックス、82はダクト、Sは布類である。