JP2009022985A - 冷間圧延における形状制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】圧延荷重,形状制御手段の制御量,素材クラウン量,圧延前形状及びワークロールクラウン量を変数とし板端から距離が異なる複数の箇所について板幅中央に対する伸び率差を表す数式モデルと前方張力及び後方張力を変数とし圧延荷重を表す数式モデルを予め作成し、素材クラウン量と圧延前形状の実測値及びワークロールクラウン量を前記伸び率差を表す数式モデルに代入し、伸び率差が目標値に一致するように形状制御手段の制御量及び圧延荷重を算出するとともに、算出した圧延荷重と前記圧延荷重を表す数式モデルから得られる圧延荷重が一致するように前方張力及び後方張力を算出し、算出した形状制御手段の制御量,前方張力及び後方張力を設定する。
【選択図】図8
Description
高速応答性で形状制御するため、圧延荷重の変動が圧延材の形状変化に影響を及ぼしているとの前提に立って、板形状の直接測定に代えて圧延荷重を測定し、圧延荷重の測定値に基づいて各形状制御手段の制御量を補正する種々の方式が提案されている(例えば特許文献1,2,3参照)。
このような問題を解消するため、本発明者等は、板幅方向に沿った複数箇所で伸び率差を取り込んだ数式モデルを使用することにより、圧延荷重の変動に応じて形状制御手段の制御量を補正し、板幅全体にわたって良好な形状をもつ鋼帯を製造する方法を開発し、特許文献4で紹介した。
しかし、特許文献4で紹介した方法は、素材クラウンの影響を考慮することなく、圧延荷重及び形状制御手段の関数で形状予測式を表している。したがって、大径ワークロールを使用する4段圧延機等による圧延では、ワークロールのたわみ変形が小さく、素材クラウンの影響が大きくなる。このような圧延で形状検出器による形状の測定結果に基づいた圧延中の形状制御に先立って、数式モデルにより形状制御手段を初期設定すると、圧延の初期に形状不良が発生しやすい。また、形状検出器が設置されていない圧延機による圧延では、圧延荷重の変動に応じて形状制御手段の制御量を補正する場合、圧延開始時から圧延終了時まで素材クラウンの影響が考慮されていないため、コイル全長にわたって形状不良を生じることもある。
このため、本発明者等は、素材クラウンと圧延前形状の両方の影響を取り込んだ数式モデルを用いてプリセット制御及び圧延中の形状制御を行うことにより、圧延開始時よりコイル全長にわたって良好な形状をもつ鋼帯を製造する方法を開発し、特許文献5で紹介した。
そこで、本発明者等は、ワークロールクラウン量の影響を取り込んだ数式モデルを用いて適正なワークロールクラウン量を算出し、ワークロールに付与することにより、広範囲な圧延条件に対応して圧延開始時よりコイル全長にわたって良好な形状をもつ鋼帯を製造する方法を開発し、特許文献6で提案した。
以下、4段圧延機を対象に本発明の形状制御方法について説明するが、6段以上の多段圧延機に対しても同様に本発明が適用されることは勿論である。
そこで、本発明においては、圧延形状を板端から距離が異なる複数の箇所における伸び率と板幅中央の伸び率との差で評価する。具体的には、板端部及びクォータ部の板幅中央に対する伸び率差εe及びεqで圧延形状を定義する。伸び率差εe及びεqは板端部の伸び率をele,クォータ部の伸び率をelq,板幅中央の伸び率をelcとするとき、それぞれ式(1)及び(2)で表される。
εe=ele−elc (1)
εq=elq−elc (2)
ε0e=el0e−el0c (3)
ε0q=el0q−el0c (4)
なお、板端部及びクォータ部の測定位置については、形状を適切に表し、且つ精度の良い数式モデルが得られるように経験的に定められる。
したがって、形状変化に及ぼす主要因は、圧延荷重,形状制御手段の制御量,素材クラウン量,圧延前形状及びワークロールクラウン量ということができる。そこで、圧延荷重,形状制御手段の制御量,素材クラウン量,圧延前形状及びワークロールクラウン量が圧延形状に及ぼす定量的な影響を検討した。
圧延荷重の変化は、ロール撓みの変化となって現れ、圧延材の形状を変化させる。圧延荷重とロール撓み量との関係は弾性領域における変形を対象としていることからほぼ線形的な関係にある。したがって、式(1),(2)で表される伸び率差εe,εqも図1に示すように圧延荷重Pと線形関係にある。
素材クラウン量は板端部と板幅中央の板厚差で定義した。図3に示すように素材クラウン量Crと伸び率差εe,εqとの間も線形関係にある。
図4,5に示すように圧延前素材の伸び率差ε0e,ε0qと圧延後の伸び率差εe,εqとの間も線形関係にある。
ワークロールクラウン量はワークロール端とワークロール中央との直径差で定義した。図6に示すようにワークロールクラウン量Wrと伸び率差εe,εqとの間も線形関係にある。
εe=ae・P+be・B+ce+de・Cr+ee・ε0e+fe・Wr (5)
εq=aq・P+bq・B+cq+dq・Cr+eq・ε0q+fq・Wr (6)
影響係数ae,be,ce,de,ee,fe,aq,bq,cq,dq,eq,fqは、板幅,板厚及び材質等の製造品種によって定まる定数であり、実験又はロールの弾性変形解析と素材の塑性変形解析とを連成させた解析モデルによるシミュレーションからそれぞれ求められる。各影響係数は、板幅,板厚,材質等の各区分毎にテーブル設定し、或いは板幅,板厚,材質等の関数として数式化される。
また、圧延前形状が良好であったり、圧下率が大きく圧延前形状が残存しにくい場合には、圧延前形状の形状に及ぼす影響は小さい。この場合には、式(5),(6)において圧延前素材の伸び率差ε0e,ε0qをゼロとして圧延前形状の影響項を無視することも可能である。
P=xp・Tf+yp・Tb+zp (7)
影響係数xp,yp,zpは、板幅,板厚及び材質等の製造品種によって定まる定数であり、実験又はロールの弾性変形解析と素材の塑性変形解析とを連成させた解析モデルによるシミュレーションからそれぞれ求められる。各影響係数は、板幅,板厚,材質等の各区分毎にテーブル設定し、或いは板幅,板厚,材質等の関数として数式化される。
J=we(εe−εe 0)2+wq(εq−εq 0)2 (8)
式中、we,wqは、重み係数を示す。
そして、算出した圧延荷重Pと式(7)から得られる圧延荷重が一致するように前方張力Tf及び後方張力Tbを算出し、算出したワークロールベンダー力B,前方張力Tf及び後方張力Tbを設定する。
また、算出した圧延荷重Pが前方張力及び後方張力の仕様範囲から定まる上下限値を超える場合には、前方張力Tf及び後方張力Tbを上下限値に設定し、式(8)で示す評価関数Jが最小となるようにワークロールベンダー力Bを算出し、設定する。
P=Pm+xp・ΔTf+yp・ΔTb (9)
εe=ae・P+be・B+ce+de・Cr+ee・ε0e+fe・Wr+ge・I (10)
εq=aq・P+bq・B+cq+dq・Cr+eq・ε0q+fq・Wr+gq・I (11)
ここで、Iは中間ロールベンダー力、ge,gqは影響係数である。
そして、算出した圧延荷重Pと式(7)から得られる圧延荷重が一致するように前方張力Tf及び後方張力Tbを算出し、算出したワークロールベンダー力B,前方張力Tf及び後方張力Tbを初期設定する。
本圧延機においては、伸び率0.6%〜3.2%の範囲でスキンパス圧延を行っており、同一のクラウンロールで圧延すると、伸び率が0.6%と小さい場合には圧延荷重が小さくなるため中伸びが生じ易く、伸び率が3.2%と大きい場合には圧延荷重が大きくなるため耳伸びが生じ易い。そこで、伸び率が0.6%の場合(実施例1)と伸び率が3.2%の場合(実施例2)について本発明法により形状制御を行い、圧延後の形状をオフラインの形状測定器で測定した。
板幅1020mm,板厚1.0mmで素材クラウン量が18μm、急峻度が0.5%の耳伸び形状の熱延鋼帯を4段圧延機1に送り込み、直径600mm、クラウン量が45μmのワークロール5により伸び率0.6%でスキンパス圧延した。なお、伸び率差εe,εqの目標値εe 0,εq 0はいずれも0とした。比較のため、前記特許文献6で紹介した方法により形状制御を行った。
本発明法により形状制御を行った鋼帯は図9に示すように、圧延開始からコイル全長にわたって急峻度が0.5%以内に収められており、良好な形状に圧延されていた。これに対し、ワークロールクラウンは適正化されているが、形状に大きく影響する圧延荷重の変化を前後方張力の制御によって抑制していない従来法では、圧延荷重が小さ過ぎるため、圧延開始からコイル全長にわたって急峻度が約0.7%前後の中伸びを生じていた。
板幅1020mm,板厚1.0mmで素材クラウン量が15μm、急峻度が0.5%の耳伸び形状の熱延鋼帯を4段圧延機1に送り込み、直径600mm、クラウン量が45μmのワークロール5により伸び率3.2%でスキンパス圧延した。なお、伸び率差εe,εqの目標値εe 0,εq 0はいずれも0とした。比較のため、前記特許文献6で紹介した方法により形状制御を行った。
本発明法により形状制御を行った鋼帯は図10に示すように、圧延開始からコイル全長にわたって急峻度が0.5%以内に収められており、良好な形状に圧延されていた。これに対し、ワークロールクラウンは適正化されているが、形状に大きく影響する圧延荷重の変化を前後方張力の制御によって抑制していない従来法では、圧延荷重が大き過ぎるため、圧延開始からコイル全長にわたって急峻度が約0.7%前後の耳伸びを生じていた。
3:上位コンピュータ 4:プロセスコンピュータ
5:ワークロール 6:荷重計
Claims (2)
- 圧延荷重,形状制御手段の制御量,素材クラウン量,圧延前形状及びワークロールクラウン量を変数とし板端から距離が異なる複数の箇所について板幅中央に対する伸び率差を表す数式モデルと前方張力及び後方張力を変数とし圧延荷重を表す数式モデルを予め作成し、素材クラウン量と圧延前形状の実測値及びワークロールクラウン量を前記伸び率差を表す数式モデルに代入し、伸び率差が目標値に一致するように形状制御手段の制御量及び圧延荷重を算出するとともに、算出した圧延荷重と前記圧延荷重を表す数式モデルから得られる圧延荷重が一致するように前方張力及び後方張力を算出し、算出した形状制御手段の制御量,前方張力及び後方張力を設定することを特徴とする冷間圧延における形状制御方法。
- 前方張力及び後方張力の変更量を変数とし圧延荷重の変化量を表す数式モデルを予め作成しておくとともに、圧延荷重,形状制御手段の制御量,素材クラウン量,圧延前形状及びワークロールクラウン量を変数とし板端から距離が異なる複数の箇所について板幅中央に対する伸び率差を表す数式モデルと前方張力及び後方張力を変数とし圧延荷重を表す数式モデルを予め作成し、素材クラウン量と圧延前形状の実測値及びワークロールクラウン量を前記伸び率差を表す数式モデルに代入し、伸び率差が目標値に一致するように形状制御手段の制御量及び圧延荷重を算出するとともに、算出した圧延荷重と前記圧延荷重を表す数式モデルから得られる圧延荷重が一致するように前方張力及び後方張力を算出し、算出した形状制御手段の制御量,前方張力及び後方張力を初期設定した後に、圧延中に圧延荷重を連続的に測定し、この測定値を前記圧延荷重の変化量を表す数式モデルに代入し、圧延荷重が目標値に一致するように前方張力及び後方張力を補正することを特徴とする冷間圧延における形状制御方法。
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