JP2009022191A - ヒトチトクロームp450(cyp)2d6遺伝子変異の検出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】CYP2D6遺伝子の欠損又は重複の検出において、CYP2D6遺伝子及びCYP2D8遺伝子に共通で且つCYP2D7遺伝子は異なる配列であって、且つ、CYP2D6遺伝子のExon9領域の86位、90位、及び93位の塩基の一以上を含む配列と、相補的な配列を含むプライマーを用いる。
【選択図】 なし
Description
Droll,K et.al. 1998 Skoda et. al. 1988 Steen et.al. 1995 Johansson et.al. 1996 Elke Schaeffeler et.al.2005 Erik Soderback et.al.2005
CYP2D6遺伝子の欠失および重複を検出する方法として、CYP2D6遺伝子およびCYP2D8遺伝子を共通のプライマーを用いて増幅し、その増幅産物量を比較するという方法が開示されていることは、背景技術で記載した通りである。しかしながら、この方法では、プライマーをExon6領域に設計しているため、酵素活性のないCYP2D6*36をもCYP2D6遺伝子数として計数されてしまう。
以下に、核酸プローブ固定化基体を用いた増幅産物の測定について説明する。核酸プローブは上述のように、検出配列と相補的な配列を含む。核酸プローブには、DNA、RNA、PNA、LNA、メチルホスホネート骨格の核酸、その他の人工核酸鎖を用いてよいが、これらに限定されない。基体に固定するために、核酸プローブの末端を、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロシル基、チオール基又はスルホン基のような反応性官能基で修飾してもよい。官能基とヌクレオチドの間にスペーサーを導入してもよい。例えばアルカン骨格又はエチレングリコール骨格などのスペーサーを用いることができる。
核酸プローブ固定化基体の一実施態様の模式図を図5に示した。核酸プローブは、基体1上の固定化領域2に固定化される。基体1は例えばシリコン基板などから製造することができるが、これに限定されない。核酸プローブの固定化は、公知の手段によって行えばよい。1つの基体1に固定化される核酸プローブは1種でも複数種類であってもよく、その配置や数は当業者が必要に応じて適宜設計変更することが可能である。後述するように、核酸プローブを蛍光検出する場合には、本実施態様のような核酸プローブ固定化基体を用いることができる。
核酸プローブと増幅産物とのハイブリダイゼーションは適切な条件下で行う。適切な条件は、増幅産物の種類や構造、検出配列に含まれる塩基の種類、核酸プローブの種類によって異なる。例えば、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液中で行う。反応溶液中には、ハイブリダーゼション促進剤である硫酸デキストラン、並びにサケ精子DNA、牛胸腺DNAやEDTAおよび界面活性剤などを添加しても良い。反応温度は、例えば10℃〜90℃の範囲で行い、攪拌や振盪などで反応効率を高めても良い。反応後の洗浄には、例えばイオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液を用いればよい。
前記基体に固定化された核酸プローブと増幅産物とがハイブリダイズすると2本鎖核酸が生じる。この2本鎖核酸は、電流又は蛍光により検出することができる。
電気化学的に2本鎖核酸を検出する方法を説明する。この方法では、2本鎖核酸を特異的に認識する2本鎖認識体を用いる。2本鎖認識体の例には、例えば、ヘキスト33258、アクリジンオレンジ、キナクリン、ドウノマイシン、メタロインターカレーター、ビスアクリジン等のビスインターカレーター、トリスインターカレーター、ポリインターカレーターなどが含まれるが、これらに限定されない。更に、これらの物質を電気化学的に活性な金属錯体、例えばフェロセン、ビオロゲンなどで修飾することも可能である。
蛍光によって2本鎖核酸を検出する方法を説明する。予め、プライマーを蛍光学的に活性な物質で標識しておく。又は、蛍光学的に活性な物質で標識した2次プローブを用いて検出する。或いは、複数の標識を使用してもよい。蛍光学的に活性な物質は、これらに限定されないが、FITC、Cy3、Cy5、もしくはローダミンなどの蛍光色素を含む。蛍光物質は、例えば蛍光検出器を用いて検出される。標識の種類に応じた適宜の検出装置を用い、標識された検出配列又は2次プローブを検出する。
本発明の一つの態様において、LAMP法が用いられる。LAMP法とは、核酸を等温条件下60〜65℃で増幅する技術である。LAMP法はPCR法と比較して、短時間で多量の増幅産物が得られるという利点を有する。
LAMP増幅産物中には1本鎖領域が存在する。図7では、F2領域とF1領域の間(F2領域を含む)、及び、B2領域とB1領域の間(B2領域を含む)が1本鎖となる。この1本鎖の部分はプローブとのハイブリダイゼーションに都合よく用いることができる(特許文献3 特開2005-143492)。よって、プローブで検出される検出配列がこの1本鎖部分となるように、各プライマーを設計する。
図12に示すように、CYP2D6 Exon9開始塩基から181位の塩基以降は、CYP2D6とCYP2D8の相同性が低くなる。よって、F1、F2、F3、B1c、B2c、B3c、計6つのLAMPプライマー設計領域は、180位の塩基より上流に設計されるのが好ましい。さらに、CYP2D6 Exon9開始塩基から86位、90位、及び93位の塩基の一以上がプライマーに含まれるように設計する。さらに、CYP2D6及びCYP2D8の検出配列を、それぞれのExon9開始塩基から117位から134位までの領域の一部または全部を含むように設計する。このような制約があるため、CYP2D6 Exon9開始塩基から86位、90位、及び93位の塩基の一以上を含む領域がB1c領域とされ、また、検出配列はB1cとB2cの間に位置するように設計される。さらに、検出配列をB1cとB2cの間に設計しているため、Loopプライマーは、F2領域からF1領域の間に設計するのが好ましい。
CYP2D6の遺伝子数が1、2、3、3以上の場合、CYP2D8とCYP2D6の増幅量比は各々2:1、2:2、2:3、2:3以上となる。検出のためのプローブ数と比較して、LAMP産物中の検出配列が多すぎると、プローブのほとんどがLAMP産物と結合してしまう。このため、プローブから得られる信号が飽和状態となり、CYP2D8について得られる信号と、CYP2D6について得られる信号に差異が生じないことがある。
本発明が対象とする検体は特に限定される物ではなく、例えば、ヒトから採取した血液、血清、白血球、毛根、口腔粘膜などを用いることができる。これら検体試料から核酸成分の抽出を行い、検出試験に供される標的核酸を得る。CYP2D6遺伝子、CYP2D8遺伝子などを含む標的核酸を含有する溶液を試料溶液と称する。抽出方法は特に限定されないが、例えば、市販の核酸抽出方法QIAamp(QIAGEN社製)、スマイテスト(住友金属社製)等を利用することも可能である。
従来の方法により、日本人のゲノム19検体のCYP2D6遺伝子型を決定した。サザンブロット解析、PCR-RFLP解析、Nested PCR解析を行った。
DNA(3μg)をXbaIで処理し、0.5%のアガロースゲルで電気泳動した。その後、ナイロン膜(ベーリンガー社製)に転写した。ハイブリダイゼーションには、DIG標識されたCYP2D6 cDNAプローブを用い、DIGシステムのスタンダードプロトコールに従い検出を行った(ベーリンガー社製)。
日本人で高頻度に出現する*1、*2、*10、*14を検出するために、一塩基多型C100T、C2850T、G4180CについてPCR-RFLP解析を行った。各一塩基多型のために用いたプライマーを以下に示す:
C100T:
2D6*2A以外検出用
Fプライマー:5’- ACCAGGCCCCTCCACCGG -3’
Rプライマー:5’- TCTGGTAGGGGAGCCTCAGC -3’
2D6*2A検出用
Fプライマー:5’- ACCAGGCCCCTCCACCGG -3’
Rプライマー:5’- GTGGTGGGGCATCCTCAGG -3’
(Johansson et.al. 1994 primer 9, primer10, primer10B)
C2850T:
Fプライマー:5’-GCAGCTTCAATGATGAGAACCTG-3’
Rプライマー:5’-GGGTGTCCCAGCAAAGTTCAT-3’
G4180C:
Fプライマー:5’-CCATGGTGTCTTTGCTTTCC-3’
Rプライマー5’-AGAGTTGGGTCAGTGGGGGACATG-3’
pyrobest DNA ポリメラーゼ(TAKARA Bio)および添付のバッファーを用い、表1に記載の条件で増幅した。ゲノムは50μl反応液中30ng添加した。
XbaI-RFLP解析で44kbpのバンドが得られた場合、日本人では、ほとんどの場合、2D6*36-*10である(Soyama et.al. 2006)。しかしながら、白人ではCYP2D7AP-CYP2D7BP-CYP2D6のようなCYP2D7の重複型である場合が報告されている。
本発明の方法に従って、LAMP法を用いて日本人のゲノム19検体のCYP2D6遺伝子欠損および重複を決定した。
LAMP法に用いた5種のプライマーの位置を図18に示した。各プライマーの配列を以下に記載する:
F3プライマー:5’-AGCCAGGCTCACTGACG-3’、
B3プライマー:5’-CTAGCGGGGCACAGC-3’、
FIPプライマー:5’-GGTGAAGAAGAGGAAGAGC(F1c)-ACAGGCCGCCGTG(F2)-3’、
BIPプライマー:5’-TCTCGGTGCCCAC(B1c)-AAAGCTCATAGGGGGATGG(B2)-3’、
FLcプライマー:5’- ATGCGGGCCAGGGG-3’。
CYP2D6およびCYP2D8の検出配列を以下に示す。CYP2D6検出配列はExon9開始塩基から117から134塩基目までの領域、CYP2D8検出配列は同じくExon9開始塩基から117から134塩基目までの領域を含むように設計した。
CYP2D8検出配列:CCAGAAAGCCGACGACACGAGAGTGG
<プローブ固定化電極の作製>
プローブの塩基配列を以下に示す。プローブの塩基配列は検出配列の相補鎖である。
CYP2D6検出用プローブ:AGCCACCATGGTGTCTTTGCTTTCCTGGT
CYP2D8検出用プローブ:CCACTCTCGTGTCGTCGGCTTTCTGG
上記3種のプローブは、3’SH修飾した。ネガティブプローブは、CYP2D6及びCYP2D8遺伝子の配列とは全く無関係な配列を用いた。
1−4電極 ネガティブプローブ
5−8電極 CYP2D6検出用プローブ
9−12電極 CYP2D8検出用プローブ
<増幅産物の測定>
上記のLAMP増幅産物の量を、作製したプローブ固定化電極を用いて測定した。増幅産物に終濃度2×SSCの塩のみを添加してサンプル1とした。また、終濃度2×SSCの塩および終濃度1.25×1014copy/mlのブロック核酸を添加してサンプル2とした。サンプル1及び2を、それぞれ上記で作製したプローブ固定化電極と反応させ、55℃で20分間静置した。その後、超純水で軽く洗浄した。各電極を挿入剤であるヘキスト33258溶液を50μM含むリン酸緩衝液中に10分間浸漬した後、ヘキスト33258分子の酸化電流応答を測定した。
CYP2D8用ブロック核酸:ACTCTCGTGTCGTCGGCT
その結果を図19に示す。図19(a)はサンプル1(*1/*1検体)の結果であり、(b)はサンプル1(*1/*5検体)の結果である。ブロック核酸を添加しなかったサンプル1は、*1/*1検体の信号パターンと、*1/*5検体の信号パターンとで差異が生じなかった。よって、CYP2D6遺伝子数2とCYP2D6遺伝子数1の検体の区別ができなかった。
ブロック核酸を添加した条件で、日本人19検体を検出した。その結果を図20に示した。図に示すとおり、遺伝子数0、1、2、3の検体の位置が明確に分離した。また、遺伝子数が2であって*36を保有していない検体と、遺伝子数が2であって*36を2つ保有している検体とが、ほぼ同じ場所に位置した。このことから、*36が遺伝子数として計数されることなく、遺伝子数を精確に検出できることが明らかとなった。
Claims (12)
- CYP2D6遺伝子の欠損又は重複の検出方法であって、
プライマー対を用いてCYP2D6遺伝子及びCYP2D8遺伝子を増幅する工程と、
CYP2D6遺伝子及びCYP2D8遺伝子のそれぞれの増幅産物の量を測定する工程と、
CYP2D6遺伝子の増幅産物について得られた測定結果と、CYP2D8遺伝子の増幅産物について得られた測定結果を比較する工程とを具備し、
前記プライマー対の一方が、CYP2D6遺伝子及びCYP2D8遺伝子に共通で且つCYP2D7遺伝子は異なる配列であって、且つ、CYP2D6遺伝子のExon9領域の86位、90位、及び93位の塩基の一以上を含む配列と相補的な配列を含むことを特徴とする、CYP2D6遺伝子の欠損または重複の検出方法。 - 前記プライマー対の他方が、CYP2D6遺伝子及びCYP2D8遺伝子に共通な配列であって、CYP2D6遺伝子のExon9領域の180位の塩基より上流の配列と相補的な配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の検出方法。
- 前記増幅産物の測定が、前記CYP2D6遺伝子の増幅産物及び前記CYP2D8遺伝子の増幅産物のそれぞれに特異的な検出配列を検出することによって行われる、請求項1又は2に記載の検出方法。
- 前記検出配列が、CYP2D6遺伝子及びCYP2D8遺伝子のそれぞれの、Exon9領域の117位から134位の塩基の領域の一部又は全部を含むことを特徴とする、請求項3に記載の検出方法。
- 前記増幅産物が、前記検出配列と相補的な核酸プローブを用いて検出されることを特徴とする、請求項3又は4に記載の検出方法。
- 前記遺伝子が、LAMP法によって増幅されることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の検出方法。
- 前記核酸プローブが基体に固定化されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の検出方法。
- 前記増幅産物を測定する工程において、ブロック核酸を添加することを特徴とする、請求項6又は7に記載の検出方法。
- 請求項1〜8の何れか一項に記載の検出方法に用いるための、前記プライマー対を具備するキット。
- 請求項1又は2に記載のプライマーを含むLAMP法のためのプライマーを具備する、請求項6に記載の検出方法に用いるためのキット。
- 前記検出配列と相補的な核酸プローブをさらに具備する、請求項9又は10に記載のキット。
- 請求項1〜8の何れか一項に記載の検出方法に用いるための、請求項5に記載の核酸プローブを固定化したプローブ固定化基体。
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