JP2009018951A - 金属化合物のコーティング方法および金属化合物被覆粉体 - Google Patents

金属化合物のコーティング方法および金属化合物被覆粉体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、複数の金属酸化物を所望の組成で被覆することが可能であり、且つ大量の処理も可能である金属化合物のコーティング方法を提供することを課題とする。また、本発明は、当該方法により製造される金属化合物被覆粉体を提供することも目的とする。
【解決手段】本発明に係る金属化合物のコーティング方法は、有機キレート形成剤と金属化合物から有機金属キレート水溶液を調製する工程;上記有機金属キレート水溶液へ核となる粉体を分散させてスラリーを得る工程;上記スラリーを噴霧乾燥して、有機金属キレートにより被覆された粉体を得る工程;および、上記被覆粉体を焼成することにより有機金属キレート中の有機成分を除去し且つ金属成分を酸化する工程;を含むことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、核粉体に金属化合物をコーティングする方法、および当該方法で製造される金属化合物被覆粉体に関するものである。
核となる粉体に金属化合物が被覆しているものは、トナーなどの磁性体、触媒、顔料などとして利用価値が高い。しかし、固体である金属化合物粒子を核粉体へ均一に付着させるのは技術的に難しい。
例えば特許文献1には薄片状無機基質と金属酸化物粒子を含む懸濁液を噴霧乾燥した後に焼成することによって、金属酸化物層で被覆された薄片状無機基質を製造する方法が記載されている。また、この特許文献1には金属酸化物層はほぼ均一に被覆している旨の記載もある。しかし、薄片に金属酸化物が均一に被覆されるように懸濁液中における両者の量を調整するのはほぼ不可能であり、また、固体同士を混合している限り分子レベルでは金属酸化物を均一に被覆することができないことは明らかである。
そこで、金属アルコキシドなどを用いて核粉体表面に金属化合物を均一にコーティングした後に焼成することにより金属酸化物を被覆する方法が開発されている。
例えば特許文献2と3には、金属アルコキシド溶液に粒子を分散させた上で金属アルコキシドを加水分解して粒子の表面に付着させ、さらに当該複合体を加熱する粉体の製造方法が記載されている。しかし金属アルコキシドは一般的に高価であり、所望の金属酸化物を大量に被覆する技術としては問題がある。
金属アルコキシドを用いない技術としては、チタニル硫酸溶液または四塩化チタン水溶液に板状硫酸バリウムを懸濁し、加熱して加熱分解させることにより酸化チタンに被覆された板状硫酸バリウムを製造する方法が特許文献4に記載されている。特許文献5には、薄片状基質の懸濁液にTiイオン等を含む水溶液を滴下し、当該懸濁液を塩基性にして生じた固形物を焼成するパール顔料の製法が開示されている。
しかし、これら方法を複数の金属化合物で被覆された粉体の製造に適用すると、金属化合物の加水分解速度や金属の溶解度積はその種類により異なるため、所望の組成の被覆層が得られないという問題がある。
また、特許文献6にはジヒドロキシビス(ラクテート)チタンモノアンモニウム塩などの水溶液をアルミナ粒子懸濁液に加えた後に噴霧乾燥し、さらに焼成する技術が開示されている。しかし当該方法は酸化チタンに被覆されたアルミナ粒子の製造に限定されたものである。
特開2001−288383号公報 特開平5−58605号公報 特開平10−67503号公報 特開平8−176459号公報 特開平10−279828号公報 特開2004−331444号公報
本発明が解決すべき課題は、複数の金属化合物を所望の組成で被覆することが可能であり、且つ大量の処理も可能である金属化合物のコーティング方法を提供することにある。また、本発明は、当該方法により製造される金属化合物被覆粉体を提供することも目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた。その結果、有機金属キレート水溶液を用いて核粉体を有機金属キレートで被覆した上で焼成すれば上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成した。
本発明に係る金属化合物のコーティング方法は、有機キレート形成剤と金属化合物から有機金属キレート水溶液を調製する工程;上記有機金属キレート水溶液へ核となる粉体を分散させてスラリーを得る工程;上記スラリーを噴霧乾燥して、有機金属キレートにより被覆された粉体を得る工程;および、上記被覆粉体を焼成することにより有機金属キレート中の有機成分を除去し且つ金属成分を酸化する工程;を含むことを特徴とする。
核粉体としては、金属酸化物からなるものが好ましい。安価で利便性が高いからである。
本発明においては、焼成工程の後さらに加熱処理することにより核粉体と被覆層との界面に中間層を形成させる工程を実施することもできる。かかる高温の加熱処理により界面反応を起こさせ、優れた特性を有する新たな中間層を形成したり、或いは被覆層の結晶化を促進することも可能になり得る。
有機キレート形成剤としては、特にニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸からなる群より選択される1種または2種以上が好適である。これらアミノカルボン酸キレート形成剤は、例えば有機酸などに比べて配位子の数が多いことから、pH等の変動などにかかわらず様々な金属イオンを水溶液中で安定化することができるため、本発明方法で非常に有用である。
本発明の金属化合物被覆粉体は、上記方法で製造されることを特徴とする。
本発明方法によれば、金属化合物による被覆粉体を製造するに当たり、被覆層の量を極めて容易に調整することができる。また、複数の金属化合物による被覆粉体を製造する場合においても、被覆層中における金属化合物の組成の制御が可能である。この様な効果は、水溶液から金属化合物を析出させつつ核粉体に担持する従来方法では発揮できないものである。さらに本発明方法は、大量処理にも適用可能であり、且つ実施コストも低い。
従って本発明方法は、触媒や顔料、磁性体など様々な利用分野が考えられる金属化合物の被覆粉体の製造方法に適用できるものとして、産業上非常に有用である。
本発明に係る金属化合物のコーティング方法は、有機キレート形成剤と金属化合物から有機金属キレート水溶液を調製する工程;上記有機金属キレート水溶液へ核となる粉体を分散させてスラリーを得る工程;上記スラリーを噴霧乾燥して、有機金属キレートにより被覆された粉体を得る工程;および、上記被覆粉体を焼成することにより有機金属キレート中の有機成分を除去し且つ金属成分を酸化する工程;を含むことを特徴とする。以下、実施の順番に従って本発明方法を説明する。
(1) 有機金属キレート水溶液の調製工程
本発明方法では、先ず、有機キレート形成剤と金属化合物から有機金属キレート水溶液を調製する。
本発明方法で使用する有機キレート形成剤は、被覆層を構成する金属化合物の原料となる金属イオンを安定的に捕捉できるものであれば特に制限されない。例えば、エチレンジアミン四酢酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ジアミノプロパノール四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヘキサメチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンジ(o−ヒドロキシフェニル)酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、エチレンジアミン二こはく酸、1,3−ジアミノプロパン二こはく酸、グルタミン酸−N,N−二酢酸、アスパラギン酸−N,N−二酢酸、メチルグリシン二酢酸、3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジこはく酸などの水溶性のアミノカルボン酸キレート形成剤;グルコン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などのヒドロキシカルボン酸キレート形成剤;およびこれら2種以上の混合物を用いることができる。また、これらのモノマーやオリゴマー、ポリマーも使用可能である。これらの中でも、200℃程度までの高温では分解しないアミノカルボン酸キレート形成剤、特にニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸からなる群より選択される1種または2種以上が好適である。これらアミノカルボン酸キレート形成剤は、例えば有機酸などに比べて配位子の数が多いことから、pH等の変動などにかかわらず様々な金属イオンを水溶液中で安定化することができるため、本発明方法で非常に有用である。実際には、金属とのキレート生成定数や、有機金属キレートの安定性や溶解性などを考慮して、使用する金属ごとに適切なものを適宜選択することが好ましい。
有機金属キレート水溶液を調製するために用いる金属化合物は、水溶媒中で上記有機キレート形成剤と反応することにより有機金属キレートを形成できるものであれば特に制限されない。例えば、金属の酸化物や水酸化物などのほか、炭酸塩などの塩を用いることができる。特に好ましいのは反応後に余分なイオン等が残留しない炭酸塩や水酸化物、酸化物である。なお、目的物である金属化合物被覆粉体の被覆層に、例えば塩素、リン、硫黄、ホウ素、珪素などの非金属元素が含まれるべき場合には、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、珪酸塩などを併用してもよい。ここで用いる金属化合物は、最終的に被覆層を構成する金属化合物と同一であっても異なっていてもよい。
但し、機能性金属化合物を製造する際に一番問題となるのは不純金属成分の混入である。殊に、ナトリウムやカリウムなどは熱分解後も被覆層内に残留して組成を乱す要因になるので、被覆層内に積極的に取り込む場合を除いて使用は極力避けるべきである。また塩素、硫黄、リン等を含む無機酸;塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩;チオール化合物などの有機物も、被覆層組成内に塩素などの非金属成分を積極的に含有させる場合を除けば、同様の理由で使用すべきではない。熱分解や焼成により分解されるものであれば必要により適量加えても構わないが、大量に加えると混入する不純物により汚染されることもあるので、必要最小限に止めるべきである。
なお、Crのように金属としての反応性が乏しい金属や、或いは例えばTiのように炭酸塩、硝酸塩、水酸化物の形態をとらず、且つ酸化物が反応性に乏しい金属を用いる場合は、先ず塩化物や硫酸塩を用いて有機金属キレート水溶液を製造し、次いで晶析などにより高純度の有機金属キレート結晶を予め調製しておき、これを原料として使用することが望ましい。
有機金属キレートを構成する金属成分の組成は、目的物における被覆層の金属組成と同一にすればよい。
有機キレート形成剤は、全ての金属化合物を溶解するために十分量用いる。具体的には、全金属化合物に対して、通常、1.0〜1.5倍モル用いることが好ましい。
有機金属キレート水溶液は、常法により調製すればよい。例えば、先ず有機キレート形成剤を水に溶解した後に金属化合物を加え反応させて溶解すればよい。核粉体に2種以上の金属化合物を被覆する場合には、対応する2種以上の金属化合物を加える。或いは、事前に固体状の有機金属キレートを調製しておき、水に溶解してもよい。また、核粉体に2種以上の金属化合物を被覆する場合には、対応する2種以上の金属イオンを含む有機金属キレートや有機金属キレート水溶液を調製しておき、それらを混合してもよい。有機キレート形成剤または有機金属キレートが溶解しない場合には、アンモニアや有機アミン等を加えてもよいし、加温してもよい。金属化合物は順次加えてもよいし、水は有機キレート形成剤と金属化合物が溶解するよう十分に用いればよいが、多過ぎると除去に手間がかかるため、通常は有機キレート形成剤と金属化合物を合わせた固形分の濃度が1〜60質量%程度になるようにすればよい。また、加熱温度は特に制限されないが、通常、50℃から加熱還流条件とする。
(2) スラリーの調製方法
次いで、上記の様にして調製された有機金属キレート水溶液へ核粉体を添加して分散させることによりスラリーを調製する。核粉体の材質は、溶媒である水に溶解しないものであれば特に制限されず、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属ケイ化物などの金属化合物や;活性炭、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラファイトなどの炭素材料などを用いることができる。これらのうち、安価で且つ安定であることから、好適には金属酸化物を用いる。金属酸化物としては、例えば酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化カルシウム(カルシア)などが挙げられる。なお、使用する核粉体は1種類である必要はなく、2種以上の併用ももちろん可能である。
核粉体の形態は特に制限されず、所望のものを用いればよい。例えば、肉眼では粉状であっても、ミクロ的には球状以外に薄片状であってもよく、また、多孔体や破砕物等であってもよい。その大きさも特に制限されないが、触媒などでは表面積が大きいほど性能が良いので小さくすることが好ましく、その一方で小さ過ぎると取扱時に飛散するなど作業性が悪化するおそれがある。一般的には、粒度分布計で粒度分布を測定した結果から得られる50%累積径で0.1μm以上、50μm以下程度にすることが好ましい。ここで50%累積径とは、粒子の粒度分布を一般的な粒度分布計により測定した上で、累積グラフにおける50体積%での粒径をいう。かかる50%累積径は、篩い分けなどにより調整することができる。
有機金属キレート水溶液と核粉体の混合比は、次工程における噴霧乾燥においてアトマイジング可能なスラリー特性を有していれば特に制限されることはないが、核粉体表面における被覆層の厚さやコストを考慮して適宜調整すればよい。通常、有機金属キレート水溶液と核粉体との質量比で、有機金属キレート水溶液:核粉体=10:90〜90:10程度とする。
有機金属キレート水溶液へ核粉体を添加する際には、スラリーの安定化を目的として分散剤を適量添加することも有効である。分散剤は、核粉体の種類や、ゼータ電位など核粉体と有機金属キレート水溶液との相性により選択すればよい。分散剤としては、例えばポリカルボン酸系やポリアクリル酸系等のものを用いることができる。但し、それらのナトリウム塩やカリウム塩などは、熱分解後も残留して被覆層中の組成を乱す要因になるのでできるだけ使用は避け、熱分解により元素が残留しない成分で構成されている分散剤を選択するのがより好ましい。
(3) 有機金属キレートによる被覆粉体の調製工程
次に、上記スラリーを噴霧乾燥することによって、有機金属キレートにより被覆された粉体を得る。
噴霧乾燥する際の条件は、スラリーの特性や供給速度、噴霧空気量、熱風空気量などによって適宜設定すればよい。但し、乾燥温度は有機物が分解しない温度を上限とし、また、液滴を十分に乾燥できるように調節すればよい。かかる観点から、乾燥温度は通常100〜250℃程度とし、より一般的なのは140〜200℃である。
得られる噴霧乾燥粉末の粒径は、噴霧乾燥の条件、特に噴霧条件により調整することが可能である。また、得られる噴霧乾燥粉末は、条件にもよるが、一般的には核粉体の凝集体の周りに有機金属キレートがコーティングされている形態をとる。
(4) 焼成工程
次に、噴霧乾燥により得られた粉体を焼成することによって、有機金属キレート中の有機成分を除去し且つ金属成分を酸化し、金属酸化物からなる被覆層を有する金属酸化物被覆粉体を得る。上記により得られた噴霧乾燥粉末は、そのまま焼成すると噴霧乾燥粉末中の有機金属キレート由来の有機成分が熱分解し、且つ金属成分が酸化されて金属酸化物となる。つまり、有機金属キレート水溶液の金属組成を所望の被覆層の金属組成と同一のものとすれば、核粉体の凝集体の表面に所望の被覆層を形成することが可能である。なお、金属成分によっては、焼成工程を経ても金属酸化物とはならず金属または金属イオンのままである場合がある。
焼成温度は有機キレート形成剤の種類や被覆層中に含まれる金属の酸化傾向などにより適宜選択すればよいが、通常は400℃以上、1000℃以下程度とする。400℃以上であれば一般的な有機成分は全て分解消失する。また、1000℃程度であれば十分に金属を酸化することができる。
焼成時の雰囲気は空気で十分であるが、酸素富化雰囲気で行ってもよい。
焼成時間も特に制限されず、予備実験や、或いは有機成分の分解状態や金属の酸化状態をチェックしつつ、適宜決定すればよい。通常は1〜5時間程度焼成する。
(5) 中間層形成工程
本発明においては、焼成工程の後さらに加熱処理することにより核粉体と被覆層との界面に中間層を形成させる工程を実施してもよい。かかる高温の加熱処理によって被覆層から核粉体へ或いは核粉体から被覆層へ金属成分が拡散し、新たな組成の金属酸化物からなる中間層が形成される場合がある。この中間層自体が優れた機能を示す場合があり、金属化合物被覆粉体全体としての機能を改良し得る。また、新たに形成された中間層が結晶性を示す場合もあり、結晶性中間層の形成に伴ってアモルファス状の被覆層も結晶化される場合もあり得る。
当該加熱処理の温度は拡散されるべき金属成分や、各層の金属成分などにより適宜調整すればよい。例えば、当該温度が高いほど中間層は形成され易くなるので上限は特に制限されないが、通常は2000℃程度以下とする。
当該加熱処理の時間は特に制限されず、予備実験などにより適宜決定すればよい。通常は1〜30時間程度焼成する。
中間層の形成は加熱温度に依存し、雰囲気には依存しない。よって、中間層の形成工程は空気などの酸化性雰囲気中でも実施できるし、或いは後述するように還元性雰囲気中で加熱処理することにより被覆層中の金属酸化物の一部の還元と中間層の形成を同時に行ってもよい。
即ち、本発明の焼成工程後においては、上記中間層形成工程と還元工程の両方を実施してもよい。これら工程は何れを先に実施してもよいが、例えば還元工程を先に行った上で酸化雰囲気下で中間層形成工程を行うといったん還元した金属成分が再び酸化されてしまうおそれがあるため、中間層形成工程の雰囲気には注意する必要がある。また、還元性雰囲気下で中間層形成工程を実施することにより、中間層の形成と共に、金属酸化物の一部を還元することができる。
(6) 還元工程
本発明においては、焼成工程の後にさらに水素を含む雰囲気中で金属酸化物の一部または全部を還元してもよい。金属酸化物の一部を還元することによって、さらなる機能が生じ得るからである。
還元工程の雰囲気は、水素を含む還元性雰囲気であればよいが、例えばアルゴン/水素混合雰囲気や窒素/水素混合雰囲気とすることができる。
還元工程における温度は、還元されるべき金属成分により適宜調整すればよいが、一般的には800℃以上とする。800℃以上であれば金属成分のほとんどを還元することができる。一方、上限は特に制限されないが、金属成分の還元に1600℃を超えるような高温は必要でないため、一般的には1600℃以下とする。
還元工程に要する時間は特に制限されず、予備実験などにより適宜決定すればよい。通常は30分間〜5時間程度焼成する。
以上で説明した方法を経て製造される金属化合物被覆粉体は、通常、核粉体の凝集体の周りが金属化合物被覆層で被覆されているという構造を有する。かかる凝集体はバルクと異なりほとんど融着していないため、容易に解砕することが可能である。また解砕後は粒径の揃った略球状を維持しているため、粉砕、分級工程を必要としない。さらに本発明の金属化合物被覆粉体は、核の表面が被覆層で被覆されているという構造を有することから、噴霧乾燥工程を経ても中空は存在せず、十分な強度を有する。よって、樹脂などの中に分散させる場合であっても形状を維持することができる。また、本発明に係る金属化合物の被覆層は、金属酸化物、0価金属や金属イオン、またはこれらの混合体から構成されており、これら各成分による作用効果を発揮することができる。
従って、本発明に係る金属化合物被覆粉体は、磁性体、触媒、顔料、蛍光体、焼結体原料などの原料として、非常に有用性の高いものである。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1
2Lビーカーにエチレンジアミン四酢酸(166.3g)と水(533.7g)を加えた後、アンモニア水(75g)を加えて溶解させた。当該混合物を60℃まで加温し、攪拌しながら炭酸イットリウム三水和物(115.4g)を吹きこぼれないようにゆっくりと投入した。その後100℃で3時間攪拌を続けると、pH5.0となって完全溶解した。当該反応混合物に水を加えて総量を1500gとし、無色透明の有機金属キレート水溶液を得た。
この溶液(15g)に酸化チタン粉末(関東化学社製、ルチル型、50%累積径:3μm、15g)を添加し、スターラーで6時間攪拌することによりスラリーを得た。このスラリーを噴霧乾燥法により乾燥温度160℃で粉末化すると、乾燥粉末(13g)が得られた。この粉末を大気開放型電気炉を用いて800℃で3時間焼成することによって、金属酸化物被覆粉体を得た。
得られた金属酸化物被覆粉体を走査電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、図1に示す通り、核となる酸化チタン粉体の凝集体の周りに金属酸化物がコーティングされている構造を有する。また、当該金属酸化物被覆粉体をX線構造回折で分析したところ、図2に示す通り、核粉体を構成するTiO2と被覆層を構成するY23の2相が存在することが確認された。さらに、つまり得られた酸化物粉末は、球状に凝集したTiO2粒子の表面がY23でコーティングされた金属酸化物被覆粉体である。
実施例1の金属酸化物被覆粉体の走査電子顕微鏡写真である。 実施例1の金属酸化物被覆粉体のX線構造回折結果である。

Claims (5)

  1. 核粉体に金属化合物をコーティングする方法であって、
    有機キレート形成剤と金属化合物から有機金属キレート水溶液を調製する工程;
    上記有機金属キレート水溶液へ核となる粉体を分散させてスラリーを得る工程;
    上記スラリーを噴霧乾燥して、有機金属キレートにより被覆された粉体を得る工程;および
    上記被覆粉体を焼成することにより有機金属キレート中の有機成分を除去し且つ金属成分を酸化する工程;
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 核粉体として金属酸化物からなるものを用いる請求項1に記載の方法。
  3. 焼成工程の後さらに加熱処理することにより核粉体と被覆層との界面に中間層を形成させる工程を含む請求項1または2に記載の方法。
  4. 有機キレート形成剤として、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸からなる群より選択される1種または2種以上を用いる請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法により得られることを特徴とする金属化合物被覆粉体。
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