JP2009016145A - 電解質−電極接合体の製造方法および燃料電池の製造方法 - Google Patents

電解質−電極接合体の製造方法および燃料電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 電極を十分に多孔質化することが可能な電解質−電極接合体の製造方法および燃料電池の製造方法を提供する。
【解決手段】 電解質−電極接合体(100)の製造方法は、電気化学セルを構成する電解質−電極接合体(100)の製造方法であって、電解質上に電極材料をアモルファスの状態で成膜することによって電極材料からなる電極(30)を形成する電極形成工程を含む。燃料電池(200)の製造方法は、水素分離膜(10)上に形成されプロトン伝導性を有する電解質(20)上に、カソード活性を有する電極材料をアモルファスの状態で成膜することによって電極材料からなるカソード(30)を形成する工程を含む。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電解質−電極接合体の製造方法および燃料電池の製造方法に関する。
燃料電池は、一般的には水素および酸素を燃料として電気エネルギを得る装置である。この燃料電池は、環境面において優れており、また高いエネルギ効率を実現できることから、今後のエネルギ供給システムとして広く開発が進められてきている。
燃料電池において電気化学反応(発電反応)を促進するためには、電解質と電極(触媒)と反応ガスとで構成される三相界面が十分に確保されることが必要である。そこで、電解質上に形成した電極にレーザを照射することによって、この電極を多孔質化する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、反応ガスが供給される空間が形成されるため、上記三相界面を形成することができる。
特開2006−79889号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、電極の十分な多孔質化が困難である。
本発明は、電極を十分に多孔質化することが可能な電解質−電極接合体の製造方法および燃料電池の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る電解質−電極接合体の製造方法は、電気化学セルを構成する電解質−電極接合体の製造方法であって、電解質上に電極材料をアモルファスの状態で成膜することによって電極材料からなる電極を形成する電極形成工程を含むことを特徴とするものである。アモルファスの電極を結晶化させることによって、電極において原子配列の変化に伴って微小な亀裂が生じる。それにより、電極が十分に多孔質化する。この場合、電解質と電極との界面に、電解質と電極と反応ガスが供給される空間とで構成される三相界面が十分に形成される。
電極形成工程は、所定の温度以下の成膜温度で電極を成膜する工程であってもよい。電極は、ペロブスカイト構造を有していてもよい。電極材料は、LaSrCoOであってもよい。所定の温度は、400℃であってもよい。
上記製造方法は、電極にエネルギを付与することによって電極を結晶化させる結晶化工程をさらに含んでいてもよい。この場合、電極において原子配列の変化に伴って微小な亀裂が生じる。それにより、電極が多孔質化する。また、結晶化工程は、電極に熱処理を行うことによって電極を結晶化させる工程であってもよい。
結晶化工程において、電気化学セルにおける電気化学反応時に発生する熱を電極に付与することによって電極にエネルギを付与してもよい。この場合、電極を結晶化させる前に電解質−電極接合体をユーザに出荷し、ユーザが電解質−電極接合体に電気化学反応をさせることによって電極を結晶化させてもよい。この場合、製造工程を短縮化できるとともに、コストの低減化を図ることができる。なお、電気化学セルは、燃料電池であってもよい。
本発明に係る燃料電池の製造方法は、水素分離膜上に形成されプロトン伝導性を有する電解質上に、電極材料をアモルファスの状態で成膜することによって電極材料からなるカソードを形成する工程を含むことを特徴とするものである。アモルファスのカソードを結晶化させることによって、カソードにおいて原子配列の変化に伴って微小な亀裂が生じる。それにより、カソードが十分に多孔質化する。この場合、電解質と電極との界面に、電解質と電極と酸化剤ガスが供給される空間とで構成される三相界面が十分に形成される。
上記製造方法は、カソードにエネルギを付与することによって電極を結晶化させる結晶化工程をさらに含んでいてもよい。この場合、カソードにおいて原子配列の変化に伴って微小な亀裂が生じる。それにより、カソードが多孔質化する。
本発明によれば、電極を十分に多孔質化することができる。それにより、電極と電解質との界面に、電解質と電極と反応ガスが供給される空間とで構成される三相界面が十分に形成される。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1(a)〜図1(d)は、本発明の第1実施例に係る電解質−電極接合体100およびそれを備えた燃料電池200の製造方法を示す製造フロー図である。図1(e)は、燃料電池200の動作を示す図である。まず、図1(a)〜図1(d)を参照しつつ、電解質−電極接合体100および燃料電池200の製造方法について説明する。
まず、図1(a)に示すように、水素分離膜10を準備する。水素分離膜10は、緻密な水素透過性金属膜からなる。本実施例に係る水素分離膜10は、水素が水素原子またはプロトンの状態で透過する程度に、密な構造を有している。水素分離膜10を構成する材料は、緻密で水素透過性および導電性を有していれば特に限定されるものではない。
水素分離膜10としては、例えば、Pd(パラジウム)、V(バナジウム)、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)等の金属、またはこれらの合金等を用いることができる。また、これらの水素透過性金属膜の両面に、水素解離能を有するパラジウム、パラジウム合金等の膜が形成されたものを水素分離膜10として用いてもよい。水素分離膜10の膜厚は、特に限定されないが、例えば5μm〜100μm程度である。水素分離膜10は、自立膜であってもよく、多孔質状の卑金属板によって支持された薄膜であってもよい。
次に、図1(b)に示すように、水素分離膜10上に、電解質膜20を形成する。本実施例においては水素分離膜10が緻密な構造を有していることから、電解質膜20を十分に薄膜化することができる。それにより、電解質膜20における膜抵抗を小さくすることができる。
電解質膜20としては、プロトン伝導性電解質であれば特に限定されないが、例えば、ペロブスカイト型電解質(SrZrInO等)、パイロクロア型電解質(LnZr(Ln:La(ランタン)、Nd(ネオジム)、Sm(サマリウム)等))、モナザイト型希土類オルトリン酸塩電解質(LnPO(Ln:La、Pr(プラセオジム)、Nd、Sm等))、ゼニタイプ型希土類オルトリン酸塩電解質(LnPO(Ln:La、Pr、Nd、Sm等))、希土類メタリン酸塩電解質(LnP(Ln:La、Pr、Nd、Sm等))、希土類オキシリン酸塩電解質(Ln18(Ln:La、Pr、Nd、Sm等))等を用いることができる。
電解質膜20の成膜法は特に限定されるものではない。電解質膜20は、例えば、気相成膜法、ゾルゲル法等により成膜することができる。気相成膜法としては、例えばPVD法、CVD法等を用いることができる。PVD法としては、イオンプレーティング法、パルスレーザ成膜法、スパッタリング法等を用いることができる。
次いで、図1(c)に示すように、電解質膜20上に、アモルファス状のカソード30を形成する。カソード30は、本発明に係る電極に相当する。例えば、PVD法(PLD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法等)、メッキ法等を用いてカソード30を形成することができる。カソード30の膜厚は、少なくとも数十nm程度である。なお、電解質膜20とカソード30とを総称して、電解質−電極接合体100と称する。また、水素分離膜10と電解質膜20とカソード30とを総称して、燃料電池200と称する。
カソード30は、触媒活性および電子伝導性を有する電極材料からなる。ここでは、触媒活性は、酸素と電子とプロトンとの反応を促進する性質のことをいう。カソード30を構成する電極材料は、例えば、酸素イオン伝導性セラミックス(例えば、La0.6Sr0.4CoO、La0.5Sr0.5MnO、La0.5Sr0.5FeO等のペロブスカイト)、触媒活性金属(例えば、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Pt(白金)、Ni(ニッケル)、Rh(ロジウム)、Ru(ルテニウム)等)等を用いることができる。電極材料がセラミックスからなる場合は、カソード30の成膜雰囲気は酸素雰囲気である。一方、電極材料が触媒活性金属からなる場合は、カソード30の成膜雰囲気は真空または不活性雰囲気である。
図1(c)においては、カソード30がアモルファスの状態で成膜されるように成膜温度を設定する。成膜温度は、カソード30を構成する電極材料の種類に応じて設定される。カソード30がアモルファスになる成膜温度は、実験によって得ることができる。例えば、酸素イオン伝導性セラミックスを用いる場合には、成膜温度は室温〜400℃程度である。なお、カソード30がアモルファスになるか否かは成膜温度以外の要因によっても変化するが、その変化量は微小である。したがって、成膜温度だけを制御することによって、カソード30をアモルファス化させることが可能である。
なお、電極材料が触媒活性金属である場合にカソード30のアモルファス化を容易にするために、触媒活性金属に他の金属を添加してもよい。例えば、触媒活性金属としてパラジウムを用いる場合、電極材料としてPdSi(Si:シリコン)、PdZr(Zr:ジルコニウム)等を用いることができる。この場合、成膜温度を極低温等に制御しなくてもカソード30をアモルファス化することができる。
次に、図1(d)に示すように、カソード30が結晶化するように、カソード30にエネルギを付与する。エネルギ付与の方法としては、例えば、カソード30への熱処理が挙げられる。熱処理温度は、カソード30を構成する電極材料の種類に応じて設定される。カソード30が結晶化する温度は、実験によって得ることができる。例えば、酸素イオン伝導性セラミックスを用いる場合には、熱処理温度は、図1(c)の成膜温度を上回る温度(例えば、400℃を上回る温度)である。熱処理の方法としては、燃料電池200全体を加熱する方法、カソード30にレーザを照射する方法等がある。レーザ照射法を用いれば、カソード30以外の構成部材への影響を抑制することができるとともに、カソード30の結晶化が容易である。
カソード30が結晶化すると、カソード30において原子配列の変化に伴って微小な亀裂が生じる。それにより、カソード30が多孔質化する。この場合、電解質膜20とカソード30との界面に、電解質と電極(触媒)と反応ガスが供給される空間とで構成される三相界面が十分に形成される。なお、本実施例においては原子配列の変化を伴うことから、結晶化したカソード30にレーザ照射等の処理を施してカソード30を多孔質化する方法に比較して、三相界面を十分に形成することができる。
続いて、図1(e)を参照しつつ、燃料電池200の動作について説明する。まず、水素を含有する燃料ガスが、図示しないガス流路を介して水素分離膜10に供給される。燃料ガス中の水素は、プロトンまたは水素原子の状態で水素分離膜10を透過する。それにより、水素原子および/またはプロトンは、電解質膜20に到達する。電解質膜20に到達した水素原子は、プロトンと電子とに解離する。プロトンは、電解質膜20を伝導し、カソード30に到達する。
一方、酸素を含有する酸化剤ガスは、図示しないガス流路を介してカソード30に供給される。カソード30が多孔質化していることから、酸化剤ガスは、カソード30を十分に透過する。カソード30と電解質膜20との界面においては、酸化剤ガス中の酸素とカソード30に到達したプロトンと電子とが反応し、水が発生する。それに伴い、電力が発生する。以上の動作により、燃料電池200において発電(電気化学反応)が行われる。
本実施例に係る電解質−電極接合体100においては、カソード30と電解質膜20との界面に三相界面が十分に形成されていることから、酸素とプロトンと電子とによる反応が促進される。それにより、燃料電池200における電気化学反応が促進される。その結果、燃料電池200の発電効率が向上する。
なお、本実施例においては図1(d)の工程においてカソード30を結晶化させているが、図1(d)の工程は必ずしも必要な工程ではない。例えば燃料電池200の運転温度が高い場合、図1(a)から図1(c)までの工程を経た燃料電池200を購入したユーザが、燃料電池200の運転時にカソード30を結晶化させてもよい。この場合、製造工程を短縮化できるとともに、コストの低減化を図ることができる。なお、燃料電池200は電気化学反応を起こす際に発熱することから、この電気化学反応に伴って発生する熱をカソード30に付与してもよい。
また、図1(a)および図1(b)の工程は、必ずしも必要な工程ではない。例えば、水素分離膜10上に電解質膜20が形成された水素分離膜−電解質膜接合体を購入して、図1(c)の工程を行ってもよい。
続いて、本発明の第2実施例に係る電解質−電極接合体100aおよびそれを備えた燃料電池200aの製造方法について説明する。図2(a)〜図2(d)は、電解質−電極接合体100aおよび燃料電池200aの製造方法を示す製造フロー図である。図2(e)は、燃料電池200aの動作を示す図である。まず、図2(a)〜図2(d)を参照しつつ、電解質−電極接合体100aおよび燃料電池200aの製造方法について説明する。
まず、図2(a)に示すように、電解質膜20aを準備する。電解質膜20aは、プロトン伝導性を有する電解質からなり、実施例1に係る電解質膜20と同様の材料から構成される。本実施例においては、電解質膜20aは、自立膜である。
次に、図2(b)に示すように、電解質膜20aの第1面に、アモルファス状のアノード10aを形成する。アノード10aは、本発明に係る電極に相当する。例えば、PVD法等を用いてアノード10aを形成することができる。アノード10aの膜厚は、少なくとも数十nm程度である。アノード10aは、アノード活性および電子伝導性を有する電極材料からなる。ここで、アノード活性とは、水素のプロトン化を促進する性質のことをいう。例えば、アノード10aとして、Pd、Ag、Pt、Ni、Rh、Ru等を用いることができる。
図2(b)においては、アノード10aがアモルファスの状態で成膜されるように成膜温度を設定する。成膜温度は、アノード10aを構成する電極材料の種類に応じて設定される。アノード10aがアモルファスになる成膜温度は、実験によって得ることができる。
次いで、図2(c)に示すように、電解質膜20aの第2面に、アモルファス状のカソード30aを形成する。カソード30aは、本発明に係る電極に相当する。例えば、PVD法等を用いてカソード30aを形成することができる。カソード30aの膜厚は、少なくとも数十nm程度である。カソード30aは、カソード活性および電子伝導性を有する電極材料からなる。ここで、カソード活性とは、酸素と電子とプロトンとの反応を促進する性質のことをいう。カソード30aを構成する電極材料は、実施例1に係るカソード30と同様である。
なお、アノード10a、電解質膜20aおよびカソード30aを総称して、燃料電池200aと称する。また、アノード10aおよび電解質膜20aを総称して電解質−電極接合体と称することができ、カソード30aおよび電解質膜20aを総称して電解質−電極接合体と称することができる。
次に、図2(d)に示すように、アノード10aおよびカソード30aが結晶化するように、アノード10aおよびカソード30aにエネルギを付与する。エネルギ付与の方法としては、例えば、アノード10aおよびカソード30aへの熱処理が挙げられる。熱処理温度は、アノード10aを構成する電極材料およびカソード30aを構成する電極材料の種類に応じて設定される。電極材料が結晶化する温度は、実験によって得ることができる。熱処理の方法としては、燃料電池200a全体を加熱する方法、アノード10aおよびカソード30aにレーザを照射する方法等がある。
アノード10aが結晶化すると、アノード10aにおいて原子配列の変化に伴って微小な亀裂が生じる。それにより、アノード10aが多孔質化する。同様に、カソード30aは、結晶化に伴って多孔質化する。この場合、電解質膜20aとアノード10aとの界面に、電解質と電極(触媒)と燃料ガスが供給される空間とで構成される三相界面が十分に形成される。一方、電解質膜20aとカソード30aとの界面に、電解質と電極(触媒)と酸化剤ガスが供給される空間とで構成される三相界面が十分に形成される。
続いて、図2(e)を参照しつつ、燃料電池200aの動作について説明する。まず、水素を含有する燃料ガスが、図示しないガス流路を介してアノード10aに供給される。アノード10aが多孔質化していることから、燃料ガスは、アノード10aを十分に透過する。燃料ガス中の水素は、アノード10aと電解質膜20aとの界面において、プロトンと電子とに解離する。プロトンは、電解質膜20aを伝導し、カソード30aに到達する。
一方、酸素を含有する酸化剤ガスは、図示しないガス流路を介してカソード30aに供給される。カソード30aが多孔質化していることから、酸化剤ガスは、カソード30aを十分に透過する。カソード30aと電解質膜20aとの界面においては、酸化剤ガス中の酸素とカソード30aに到達したプロトンと電子とが反応し、水が発生する。それに伴い、電力が発生する。以上の動作により、燃料電池200aにおいて発電(電気化学反応)が行われる。
本実施例に係る電解質−電極接合体においては、アノード10aと電解質膜20aとの界面に三相界面が十分に形成されていることから、水素のプロトン化が促進される。また、カソード30aと電解質膜20aとの界面に三相界面が十分に形成されていることから、酸素とプロトンと電子との反応が促進される。以上のことから、燃料電池200aにおける電気化学反応が促進される。その結果、燃料電池200aの発電効率が向上する。
なお、本実施例においては図2(d)の工程においてアノード10aおよびカソード30aを結晶化させているが、図2(d)の工程は必ずしも必要な工程ではない。例えば燃料電池200aの運転温度が高い場合、図2(a)から図2(c)までの工程を経た燃料電池200aを購入したユーザが、燃料電池200aの運転時にアノード10aおよびカソード30aを結晶化させてもよい。この場合、製造工程を短縮化できるとともに、コストの低減化を図ることができる。なお、燃料電池200aは電気化学反応を起こす際に発熱することから、この電気化学反応に伴って発生する熱をアノード10aおよびカソード30aに付与してもよい。
また、本実施例においてはアノード10aおよびカソード30aをアモルファス化させているが、いずれか一方をアモルファス化させてもよい。この場合においても、アノード側およびカソード側のいずれかにおいて三相界面が十分に形成されるからである。また、図2(b)の工程と図2(c)の工程とを逆にしてもよい。
続いて、本発明の第3実施例に係る電解質−電極接合体100bおよびそれを備えた燃料電池200bについて説明する。図3(a)〜図3(d)は、電解質−電極接合体100bおよび燃料電池200bの製造方法を示す製造フロー図である。図3(e)は、燃料電池200bの動作を示す図である。まず、図3(a)〜図3(d)を参照しつつ、電解質−電極接合体100bおよび燃料電池200bの製造方法について説明する。
まず、図3(a)に示すように、電解質膜20bを準備する。電解質膜20bは、酸素イオン伝導性を有する電解質からなる。電解質膜20bとして、例えば、ZrO(ジルコニア)にY(イットリア)を混合したイットリア安定化ジルコニア等を用いることができる。本実施例においては、電解質膜20bは、自立膜である。
次に、図3(b)に示すように、電解質膜20bの第1面に、アモルファス状のアノード10bを形成する。例えば、PVD法等を用いてアノード10bを形成することができる。アノード10bの膜厚は、少なくとも数十nm程度である。アノード10bは、アノード活性および電子電導性を有する電極材料からなる。例えば、アノード10bは、アノード10aと同様の材料からなる。
図3(b)においては、アノード10bがアモルファスの状態で成膜されるように成膜温度を設定する。成膜温度は、アノード10bを構成する電極材料の種類に応じて設定される。アノード10bがアモルファスになる成膜温度は、実験によって得ることができる。
次いで、図3(c)に示すように、電解質膜20bの第2面に、アモルファス状のカソード30bを形成する。例えば、PVD法等を用いてカソード30bを形成することができる。カソード30bの膜厚は、少なくとも数十nm程度である。カソード30bは、カソード活性および電子電導性を有する電極材料からなる。カソード30bは、カソード30と同様の材料から構成される。
図3(c)においては、カソード30bがアモルファスの状態で成膜されるように成膜温度を設定する。成膜温度は、カソード30bを構成する電極材料の種類に応じて設定される。カソード30bがアモルファスになる成膜温度は、実験によって得ることができる。
なお、アノード10b、電解質膜20bおよびカソード30bを総称して、燃料電池200bと称する。また、アノード10bおよび電解質膜20bを総称して電解質−電極接合体と称することができ、カソード30bおよび電解質膜20bを総称して電解質−電極接合体と称することができる。
次に、図3(d)に示すように、アノード10bおよびカソード30bが結晶化するように、アノード10bおよびカソード30bにエネルギを付与する。エネルギ付与の方法としては、例えば、アノード10bおよびカソード30bへの熱処理が挙げられる。熱処理温度は、アノード10bを構成する電極材料およびカソード30bを構成する電極材料の種類に応じて設定される。電極材料が結晶化する温度は、実験によって得ることができる。熱処理の方法としては、燃料電池200b全体を加熱する方法、アノード10bおよびカソード30bにレーザを照射する方法等がある。
アノード10bが結晶化すると、アノード10bにおいて原子配列の変化に伴って微小な亀裂が生じる。それにより、アノード10bが多孔質化する。同様に、カソード30bは、結晶化に伴って多孔質化する。この場合、電解質膜20bとアノード10bとの界面に、電解質と電極(触媒)と燃料ガスが供給される空間とで構成される三相界面が十分に形成される。一方、電解質膜20bとカソード30bとの界面に、電解質と電極(触媒)と酸化剤ガスが供給される空間とで構成される三相界面が十分に形成される。
続いて、図3(e)を参照しつつ、燃料電池200bの動作について説明する。まず、酸素を含有する酸化剤ガスが、図示しないガス流路を介してカソード30bに供給される。カソード30bが多孔質化していることから、酸化剤ガスは、カソード30bを十分に透過する。カソード30bと電解質膜20bとの界面においては、酸化剤ガス中の酸素とアノード10bからカソード30bに流れる電子とから酸素イオンが発生する。酸素イオンは、電解質膜20bを伝導し、アノード10bに到達する。
一方、水素を含有する燃料ガスは、図示しないガス流路を介してアノード10bに供給される。アノード10bが多孔質化していることから、燃料ガスは、アノード10bを十分に透過する。アノード10bと電解質膜20bとの界面においては、燃料ガス中の水素とアノード10aに到達した酸素イオンとが反応し、水が発生するとともに電子が発生する。それに伴い、電力が発生する。電子は、上述したように、カソード30bに流れる。以上の動作により、燃料電池200bによる発電が行われる。
本実施例に係る電解質−電極接合体においては、カソード30bと電解質膜20bとの界面に三相界面が十分に形成されていることから、酸素の酸素イオン化が促進される。また、アノード10bと電解質膜20bとの界面に三相界面が十分に形成されていることから、水素と酸素イオンとの反応が促進される。以上のことから、燃料電池200bにおける電気化学反応が促進される。その結果、燃料電池200bの発電効率が向上する。
なお、本実施例においては図3(d)の工程においてアノード10bおよびカソード30bを結晶化させているが、図3(d)の工程は必ずしも必要な工程ではない。例えば燃料電池200bの運転温度が高い場合、図3(a)から図3(c)までの工程を経た燃料電池200bを購入したユーザが、燃料電池200bの運転時にアノード10bおよびカソード30bを結晶化させてもよい。この場合、製造工程を短縮化できるとともに、コストの低減化を図ることができる。なお、燃料電池200bは電気化学反応を起こす際に発熱することから、この電気化学反応に伴って発生する熱をアノード10bおよびカソード30bに付与してもよい。
また、本実施例においてはアノード10bおよびカソード30bをアモルファス化させているが、いずれか一方をアモルファス化させてもよい。この場合においても、アノード側およびカソード側のいずれかにおいて三相界面が十分に形成されるからである。また、図2(b)の工程と図2(c)の工程とを逆にしてもよい。
なお、上記各実施例においては電気化学セルの1つである燃料電池に本発明が適用されているが、それに限られない。本発明は、電解質上に電極が形成される電気化学セルに適用可能である。例えば、本発明は、酸素ポンプ、水素ポンプ等の他の電気化学セルに適用してもよい。
本発明の第1実施例に係る電解質−電極接合体および燃料電池の製造方法を示す製造フロー図である。 本発明の第2実施例に係る電解質−電極接合体および燃料電池の製造方法を示す製造フロー図である。 本発明の第3実施例に係る電解質−電極接合体および燃料電池の製造方法を示す製造フロー図である。
符号の説明
10 水素分離膜
10a,10b アノード
20,20a,20b 電解質膜
30,30a,30b カソード
100 電解質−電極接合体
200,200a,200b 燃料電池

Claims (11)

  1. 電気化学セルを構成する電解質−電極接合体の製造方法であって、
    電解質上に電極材料をアモルファスの状態で成膜することによって前記電極材料からなる電極を形成する電極形成工程を含むことを特徴とする電解質−電極接合体の製造方法。
  2. 前記電極形成工程は、所定の温度以下の成膜温度で前記電極を成膜する工程であることを特徴とする請求項1記載の電解質−電極接合体の製造方法。
  3. 前記電極は、ペロブスカイト構造を有することを特徴とする請求項1または2記載の電解質−電極接合体の製造方法。
  4. 前記電極材料は、LaSrCoOであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電解質−電極接合体の製造方法。
  5. 前記所定の温度は、400℃であることを特徴とする請求項3または4記載の電解質−電極接合体の製造方法。
  6. 前記電極にエネルギを付与することによって前記電極を結晶化させる結晶化工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電解質−電極接合体の製造方法。
  7. 前記結晶化工程は、前記電極に熱処理を行うことによって前記電極を結晶化させる工程であることを特徴とする請求項6記載の電解質−電極接合体の製造方法。
  8. 前記結晶化工程において、前記電気化学セルにおける電気化学反応時に発生する熱を前記電極に付与することによって前記電極にエネルギを付与することを特徴とする請求項6記載の電解質−電極接合体の製造方法。
  9. 前記電気化学セルは、燃料電池であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電解質−電極接合体の製造方法。
  10. 水素分離膜上に形成されプロトン伝導性を有する電解質上に、電極材料をアモルファスの状態で成膜することによって前記電極材料からなるカソードを形成する工程を含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。
  11. 前記カソードにエネルギを付与することによって前記電極を結晶化させる結晶化工程をさらに含むことを特徴とする請求項10記載の燃料電池の製造方法。
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