JP2009014371A - 外力補償を行う動電式振動試験装置 - Google Patents

外力補償を行う動電式振動試験装置 Download PDF

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Abstract

【課題】試験体と試験体載置部との間の相互作用を減少させることができる動電式振動試験装置の提供
【解決手段】制御部141は、試験体載置部に載置された試験体が当該試験体載置部に対して与える相互作用、及び、ダンパーの減衰係数Cd及びバネの弾性係数Kdに基づくモデル化誤差、を考慮した外力値dfを算出する外力算出制御を実行する。また、動電式振動試験装置1では、変位センサ131から得られる試験体載置部の変位量xs及び加速度センサ133から得られる加速度値(dxs/dt)、及び電流計135から得られる駆動コイル125の電流値Iを用いて外力算出処理を実行する。
【選択図】 図5

Description

本発明は、動電式振動試験装置であって、特に、試験体と試験体載置部との間の相互影響を外力補償により排除するものに関する。
従来の振動試験装置の一つである油圧式振動試験装置を図13に示す。油圧式振動試験装置100は、サーボアンプ101、サーボ弁102、ピストン103、シリンダ104、静圧継手105、及び試験体載置テーブル106を有している。シリンダ104は、サーボアンプ101、サーボ弁102、ピストン103により構成されている。
試験体107を載置した試験体載置テーブル106は、静圧継手105によりシリンダ104と連結されている。シリンダ104は、サーボ弁102を介してサーボアンプ101によって駆動される。また、制御部108は、変位、速度、加速度、シンリンダ内圧差を用いる状態量フィードバック、及び、積分器によるフィードフォワード補償を実行する。
また、制御部108は、試験体107から試験体載置テーブル106に加わる反力を実時間で推定し、フィードフォワード的に相殺する処理を行っている。なお、試験体107から試験体載置テーブル106に加わる反力は、ピストン103と試験体載置テーブル106との間に外乱として作用することを考慮すると、反力は、ピストン内の差圧及び試験体載置テーブル106の加速度によって、算出することができる。
伊藤健介、他5名、「外乱オブザーバによる供試体反力補償」、日本機会学会論文集(C編)、社団法人日本機械学会、2006年1月、第72巻、第713号、P.61-P.67
前述の油圧式振動試験装置100に対して動電式振動試験装置がある。動電式振動試験機は、磁界中に存在する駆動コイルを用いて力を発生することによって試験体の振動試験を行うものである。動電式振動試験装置は、油圧式振動試験装置に比べて加振力が小さいという特徴がある。このため、動電式振動試験装置には以下の問題点がある。前述のように動電式振動試験装置では、油圧式振動試験装置に比べて加振力が小さいため、振動試験装置と試験体との間の相互作用の影響が大きくなる、という問題点がある。また、動電式振動試験装置では、試験体の影響により、被制御系の特性が非線形性であることに起因する制御の困難性が大きくなる、という問題点がある。
そこで、本発明では、試験体と試験体載置との間の相互作用を減少させることができる動電式振動試験装置の提供を目的とする。
本発明に関する課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
本発明に係る動電式振動試験装置は、試験体を載置する試験体載置部、及び、入力波形に基づいて前記試験体載置部を加振する加振部を有する被制御系、前記試験体載置部の変位量及び加速度値、さらに、前記加振部の電流値を獲得する振動状態量獲得部、前記試験体載置部における力のつり合いから、前記変位量、前記加速度値、及び前記電流値を用いて、少なくとも前記試験体と前記試験体載置部との間の相互作用による力を含む外力値として算出し、算出した前記外力値が前記試験体載置部に生じていないように前記入力波形を補正する制御部、を有する。
これにより、試験中における試験体の状態変化にともなう被制御系の特性変化があっても、当該特性や特性変化を外力値として算出することができる。つまり、当該特性変化を表す、前記試験体と前記試験体載置部との間の相互作用による力に影響されることなく、入力波形に基づいて前記試験体載置部を振動させることができる。
本発明に係る動電式振動試験装置では、前記制御部は、さらに、前記変位量、前記加速度値、及び前記電流値を用いて、前記試験体載置部に関する力のうち算出可能な力を算出し、当該試験体載置部における力のつり合いから、前記試験体載置部に関する力のうち前記変位量、前記加速度値、及び前記電流値を用いては算出不可能な力を、外力値として算出する
これにより、容易に外力値を算出することができる。
本発明に係る動電式振動試験装置では、前記制御部は、さらに、前記被制御系をモデル化する際に生ずるモデル化誤差を含む前記外力値を算出する。
これにより、モデル化誤差が生ずる場合であっても、前記試験体載置部を振動させることができる。
本発明に係る外力算出装置では、試験体を載置する試験体載置部、及び、入力波形に基づいて前記試験体載置部を加振する加振部を有する被制御系、前記試験体載置部の変位量及び加速度値、さらに、前記加振部の電流値を獲得する振動状態量獲得部、を有する動電式振動試験装置に対して、前記試験体載置部における力のつり合いから、前記変位量、前記加速度値、及び前記電流値を用いて、少なくとも前記試験体と前記試験体載置部との間の相互作用による力を含む外力値として算出する。
試験中における試験体の状態変化にともなう被制御系の特性変化があっても、当該特性や当該特性変化の影響を含む外力値を算出することができる。
本発明に係る動電式振動試験装置の制御方法では、試験体を載置する試験体載置部、及び、入力波形に基づいて前記試験体載置部を加振する加振部を有する被制御系、前記試験体載置部の変位量及び加速度値、さらに、前記加振部の電流値を獲得する振動状態量獲得部、を有する動電式振動試験装置に対して、前記試験体載置部における力のつり合いから、前記変位量、前記加速度値、及び前記電流値を用いて、少なくとも前記試験体と前記試験体載置部との間の相互作用による力を含む外力値として算出し、算出した前記外力値が前記試験体載置部に生じていないように前記入力波形を補正する。
これにより、試験中における試験体の状態変化にともなう被制御系の特性変化があっても、当該特性や特性変化を外力値として算出することができる。つまり、当該特性変化を表す、前記試験体と前記試験体載置部との間の相互作用による力に影響されることなく、入力波形に基づいて前記試験体載置部を振動させることができる。
本発明に係る動電式振動試験装置の外力算出方法では、試験体を載置する試験体載置部、及び、入力波形に基づいて前記試験体載置部を加振する加振部を有する被制御系、前記試験体載置部の変位量及び加速度値、さらに、前記加振部の電流値を獲得する振動状態量獲得部、を有する動電式振動試験装置に対して、前記試験体載置部における力のつり合いから、前記変位量、前記加速度値、及び前記電流値を用いて、少なくとも前記試験体と前記試験体載置部との間の相互作用による力を含む外力値として算出する。
試験中における試験体の状態変化にともなう被制御系の特性変化があっても、当該特性や当該特性変化の影響を含む外力値を算出することができる。
ここで、請求項に記載されている構成要素と実施例における構成要素との対応関係を示す。動電式振動試験装置は動電式振動試験装置1に、試験体載置部は試験体載置部121に、加振部は励磁コイル123、駆動コイル125及び励磁電源129に、振動状態獲得部は変位センサ131、加速度センサ133、電流計135に、制御部は制御部141に、それぞれ対応する。さらに、入力波形はドライブ波形に、試験体と試験体載置部との間の相互作用による力は反力dfに、それぞれ対応する。
さらに、外力算出装置は動電式振動試験装置1のうち、制御部141のCPU411が実行する外力算出処理に関するものに対応する。
本発明における動電式振動試験装置1の実施例を以下において説明する。
1. 動電式振動試験装置1の構成
簡略化した動電式振動試験装置1の全体構成を図1に示す。動電式振動試験装置1は、動電式振動発生機111、変位センサ131、加速度センサ133、電流計135、及び制御部141を有している。
図1における動電式振動発生機111の構成を図1aに示す。動電式振動発生機111は、主に試験体載置部121、励磁コイル123、駆動コイル125、サスペンションシステム127、及び励磁電源129(図示せず)から構成される。
励磁電源129を用いて励磁コイル123に励磁電流を流すことによって、磁界が、例えば矢印A方向に、生じる。この磁界中に存在する駆動コイル125に駆動電流を流すと、加振力が発生する。加振力は試験体載置部121を矢印B方向に振動させる。試験体載置部121には試験体(図示せず)が取り付けられており、試験体載置部121が振動することによって試験体も振動する。
図1に戻って、変位センサ131は、所定の軸に沿った試験体載置部121の変位量を検出する。加速度センサ133は、試験体載置部121に生ずる加速度を検出する。電流計135は、駆動コイル125に流れる電流値を検出する。
制御部141をCPU411を用いて実現した場合のハードウェア構成を図1bに示す。制御部141は、CPU411、メモリ412、ハードディスク413、ディスプレイ416、CD−ROMドライブ417、D/A変換回路418及びA/D変換回路419を有している。
CPU411は、ハードディスク413に記録されているオペレーティング・システム(OS)、外力算出プログラム、外力補償プログラム、ドライブ波形生成プログラム等その他のアプリケーションに基づいた処理を行う。メモリ412は、CPU211に対して作業領域を提供する。ハードディスク413は、オペレーティング・システム(OS)、外力算出プログラム、外力補償プログラム、ドライブ波形生成プログラム等その他のアプリケーション、及び各種のパラメータを記録保持する。
ディスプレイ416は、ユーザインターフェイス等を表示する。CD−ROMドライブ417は、CD−ROM410から外力算出プログラム、外力補償プログラム、ドライブ波形生成プログラム、目標波形を読み取る等、CD−ROMからのデータの読み取りを行う。A/D変換回路418は、アナログ信号をデジタル信号へ変換する。D/A変換回路419は、デジタル信号をアナログ信号へ変換する。
2. 動電式振動試験装置1の数学モデル
動電式振動試験装置1の機能モデルを図2に示す。ここで、図2に示す動電式振動試験装置1の機能モデルと図1aに示す構成との対応関係を示す。試験体載置部21は試験体載置部121に、駆動部25は励磁コイル123、駆動コイル125及び励磁電源129に、減衰部27及び弾性部29はサスペンション127に、それぞれ対応する。
試験体11と試験体載置部21との間の相互作用を反力dfとして、図2における動電式振動試験装置1の数学モデルを考える。なお、数学モデルを考えるにあたっては、サスペンションシステム127は1次の振動系で表すことができると仮定している。
試験体載置部21の運動方程式は、以下の数(1)となる。
Figure 2009014371
ここで、msは試験体載置部21の質量を、xsは試験体載置部21の変位量を、Fsは駆動部25が試験体載置部21を振動させる加振力を、Kdは弾性部29の弾性係数を、Cdは減衰部27の減衰係数を、dfは試験体11からの反力を、それぞれ表す。
試験体11の運動方程式は、以下の数(2)となる。
Figure 2009014371
ここで、mlは試験体11の質量を、xlは試験体11の変位量を、dfは試験体載置部21からの反力を、それぞれ表す。
また、駆動コイル125の等価回路を図3に示す。駆動コイル125に発生する起電力をFs、逆起電力をEcとすると、起電力は以下の数(3)となり、逆起電力Ecは以下の数(4)となる。
Figure 2009014371
Figure 2009014371
ここで、Bは駆動コイル125に与えられる磁束密度(つまり、励磁コイル123が発生する磁束密度)を、lは駆動コイル125の長さを、Iは駆動コイル125に流れる電流値を、それぞれ表す。
よって、図3の等価回路より、以下の数(5)が得られる。
Figure 2009014371
ここで、Eは駆動コイル125に与えられる入力電圧を、R1は等価回路の抵抗値を、L1は駆動コイル125のインダクタンスを、それぞれ表す。
また、駆動コイル125への入力電圧Eは、ドライブ波形に基づく入力電圧usを振幅増幅(ゲインGa)することによって得られることから、以下の数(6)となる。
Figure 2009014371
以上の数(1)〜数(6)から得られる動電式振動試験装置1のブロック図を図4に示す。
3. 制御部141の動作
制御部141の動作について図4aを用いて説明する。制御部141のCPU411は、動電式試験体検査装置1の電源が入ると、各パラメータをハードディスク413からメモリ412にロードする(S401)。CPU411は、CD−ROMドライブ417を介してCD−ROM410から目標波形を獲得すると(S403)、ドライブ波形生成処理を実行する(S405)。CPU411は、ドライブ波形生成処理で生成したドライブ波形をD/A変換回路418を介して動電式振動発生機111へ出力する(S407)。
CPU411は、動電式振動発生機111の状態量を取得し、取得した状態量に基づく外力算出処理を実行する(S409)。外力算出処理では、試験体載置部に載置された試験体が当該試験体載置部に対して与える相互作用、及び、ダンパーの減衰係数及びバネの弾性係数に基づくモデル化誤差、を考慮した外力値(後述)を算出する。さらに、CPU411は、外力算出処理によって算出した外力値を用いて、ドライブ波形を修正する外力補償処理を実行する(S411)。外力補償処理では、見かけ上、算出した外乱値が試験体の振動に影響を与えないようにドライブ波形を修正する。図4のブロック図に外力算出処理及び外力補償処理を加えたインナーループにおけるブロック図を図5に示す。
図4aに戻って、CPU411は、外力補償処理を行ったドライブ波形をD/A変換回路418を介して動電式振動発生機111へ出力し(S413)、その結果得られた応答波形をメモリ412に一時記憶する(S415)。
CPU411は、ドライブ波形の出力が終了するまでステップS409〜S415の処理を繰り返す。CPU411は、ドライブ波形の出力が終了した後(S417)、ドライブ波形の修正命令を取得すると(S419)、ドライブ波形の修正をすべく、再度、ドライブ波形生成処理(S405)を実行する。
以下において、ドライブ波形生成処理(S405)、外力算出処理(S409)、及び外力補償処理(S411)を説明する。
3.1. 外力算出処理
(1)外力値の考え方
外力算出処理にあたっては、a)試験体載置部21に載置された試験体が当該試験体載置部21に対して与える影響、及び、b)ダンパー27の減衰係数Cd及びバネ29の弾性係数Kdに基づくモデル化誤差、を考慮する。以下において、上記a)、b)をどのように考慮して、外力値を算出するのかを説明する。
a)試験体載置部に載置された試験体が当該試験体載置部に対して与える影響
試験体載置部21は、載置している試験体11からの相互作用として反力を受けている。試験体11からの反力については、試験体11を載置した試験体載置部21を振動させることによって初めて明らかとなり、各種センサ等を用いて直接的には正確な値を算出することが困難である。したがって、実際に試験体11を載置した試験体載置部21を振動させることによって得られるデータを用いて反力を算出することが必要となる。動電式振動試験装置1では、変位センサ131から得られる試験体載置部21の変位量及び加速度センサ133から得られる加速度値、及び電流計135から得られる駆動コイル125の電流値を用いて反力を算出する。
図5より、反力dfは、以下の数(7)により算出できる。
Figure 2009014371
なお、数(7)においては、(dxs/dt)に関する係数項の分母にωpが加算されている。これは、加速度(dxs/dt)から速度を算出するためには、加速度(dxs/dt)を積分する必要がある。加速度(dxs/dt)を積分するにあたって、数(2)の(dxs/dt)に関する係数項において、分母にsが現れ、低周波領域におけるゲインが強調されることとなる。よって、この低周波領域のゲイン強調を調整すべく調節パラメータωpを設定している。
なお、反力の算出にあたっては、変位量xs若しくは加速度(dxs/dt)のどちらか一つと電流値Iを用いることも可能である。しかし、変位量xsと電流値Iとを用いる場合では、高域のゲインが非常に高くなるので、高域において変位応答におけるノイズの影響が大きくなり、実用的でない、という問題がある。また、加速度(dxs/dt)と電流値Iとを用いる場合では、低域のゲインが非常に高くるので、低域において変位応答におけるノイズの影響が大きくなり、実用的でない、という問題がある。
一方、試験体載置部21の変位量xs、加速度値(dxs/dt)及び駆動コイル25を流れる電流値Iの三つのパラメータによって制御することによって、低域、高域におけるノイズの影響を解消することができるという特徴がある。
b)ダンパーの減衰係数及びバネの弾性係数に基づくモデル化誤差
ダンパーの減衰係数及びバネの弾性係数に基づくモデル化誤差は、以下の理由により発生する。ダンパーの減衰係数Cdやバネの弾性係数Kdは、ある一つの値によって表される。これらの値は、ダンパーやバネの可動範囲のある範囲における値である。つまり、ダンパーの減衰係数Cdやバネの弾性係数Kdは、代表値であり、一般的にノミナル値と呼ばれている。このため、ノミナル値である減衰係数Cdや弾性係数Kdは、ダンパーやバネの実際の運動範囲の全てに適合するを代表する値ではない。ノミナル値であるダンパーの減衰係数Cd及びバネの弾性係数Kdを用いて試験体載置部の運動方程式を導いていることから、試験体載置部において運動方程式が表す運動と実際の運動とは、全ての運動範囲において必ずしも一致するわけではない。つまり、実際の運動を運動方程式でモデル化する際には、両者の間に誤差(モデル化誤差)が生ずる。これが、モデル化誤差が生ずる理由である。
ここで、前述の反力dfを考える。反力dfは、直接的に算出することができないので、駆動コイル125の駆動力から試験体載置部に生ずる力、ダンパーの減衰力、及びバネの弾性力を減算することによって算出している。ダンパーの減衰力及びバネの弾性力はノミナル値である減衰係数Cd、弾性係数Kdをそれぞれ用いて算出しているため、反力dfは、実際に試験体載置部に生じている反力だけでなく、ダンパーの減衰力及びバネの弾性力に基づくモデル化誤差も包含した外乱値となっている。以降、図4における反力dfを、外力値dfとする。
このように外力値dfを考えることによって、試験体が試験体載置部に与える影響に加えて、各種のモデル化誤差も考慮することができる。よって、各種のモデル化誤差を、試験体載置部が載置している試験体から受ける反力とは別に考える必要はない。
(2)外力算出処理のフローチャート
CPU411が行う外力算出処理を図5aに示すフローチャートを用いて説明する。CPU411は、A/D変換部417を介して、変位センサ31から変位量、加速度センサ33から加速度値、及び電流計35から電流値を取得する(S501)。CPU411は、ステップS501で取得した各センサーの値、及び、ステップS401(図4a参照)で取得した各パラメータの値を用いて、数(7)より外力値dfを算出する(S503)。
(3)変位量、加速度値、電流値を用いることの効果
算出した外力値を排除するように、試験体11及び試験体載置部21の運動を制御することによって、試験中に、試験体11及び試験体載置部21の特性が変化し反力が変化した場合(例えば、試験体の一部が破損した場合)であっても、試験体11及び試験体載置部21の運動を制御することができる。また、ノミナル値を基準とした数学モデルでは実際の動電式振動試験装置1の全ての運動を表すことができない場合であっても、数学モデルと実際の運動との差をモデル化誤差として吸収することができるので、試験体11及び試験体載置部21の運動を制御することができる。
3.2. 外力補償処理
制御部41は、図5aのフローチャートにより算出した外乱値を用いて外力補償処理を行う。外力補償処理にあたり、パラメータR1、L1、B、Gaに対する摂動を加法的不確かさと考える。加法的不確かさを考慮した駆動コイル125のブロック図を図6に示す。また、R1、L1、B、Gaに対して設定する摂動範囲を図7に示す。
図6より、ドライブコイルの入力電圧Eから電流Iまでの伝達関数は、1/(Lds+Rd)となる。1/(Lds+Rd)の加法的不確かさの周波数応答の全てをカバーするように、ドライブコイルに対する不確かさの周波数重み関数Wdを設定する。なお、考慮しきれていない不確かさが存在すると仮定する場合には、高周波帯域での重み関数Wdのゲインを大きくするようにしてもよい。
また、図6より、増幅器に対する不確かさは、以下の数(8)となる。
Figure 2009014371
さらに、図6より、磁束密度に対する不確かさは、以下の数(9)となる。
Figure 2009014371
ここで、Ga(チルダ)、B(チルダ)は実パラメータを、wg、wbは重み係数を、それぞれ表している。
なお、ダンパーの減衰係数及びバネの弾性係数に存在するモデル化誤差については、前述の外力値によって考慮しているため、ここでは考慮しない。
図6に示すような不確かさを設定した駆動コイル125を制御するにあたって、ロバスト制御手法のμ−シンセシスを導入する。
まず、図8に示すフィードバック構造を考える。ここで、Kfはフィードバック制御器を表している。また、dfは、図5におけるの外力値を表している。以下において、図8における各パラメータについて説明する。
・外力の抑制性能に対する重み関数Ws
駆動コイル125の制御性能を改善するために、制御周波数帯のゲインをロバスト安定性が得られる中で大きくなるように、外力の抑制性能に対する重み関数Wsを設定する。
・高周波に対する重み関数Wuh
変位センサの一般的な伝達特性を図9に示す。図9から明らかなように、変位センサは、高周波帯域でのゲインが小さい。よって、変位センサは、高周波帯域でのSN比が低いので、高周波帯域でのゲインが小さくなるように、高周波に対する重み関数Wuhを設定する。
・低周波に対する重み関数Wul
加速度センサの一般的な伝達特性を図10に示す。図10から明らかなように、加速度センサは、低周波帯域でのゲインが小さい。よって、加速度センサは、低周波帯域でのSN比が低いので、低周波帯域でのゲインが小さくなるように、低周波に対する重み関数Wulを設定する。
以上より、図8に示す閉ループを有するフィードバック構造における各重み関数を決定できたので、μ−シンセシスの枠組みで制御目的を取り扱うために図11に示す一般化プラントPを構成する。ここで、不確かさΔのブロック構造を以下のように定義する。
Figure 2009014371
ここで、|δg|≦1、|δb|≦1、|δd|≦1、‖δp‖≦1とする。Δpは、ロバスト性能に対する仮想の不確かさブロックである。
次に、Pを以下のような2入力2出力の系として考える。
Figure 2009014371
KfとPによる線形分数変換を以下の数(12)のように定義する。
Figure 2009014371
以上より、ロバスト性能を満たす条件は、以下の数(13)に示す構造化特異値μに関する条件式で表すことができる。
Figure 2009014371
インナーループ制御部41による制御が数(13)に示す条件を満たすようにD−Kイテレーションを実行する。D−Kイテレーションによって得られた結果によって、インナーループ制御部41による制御を実行する。
4. ドライブ波形生成処理
4.1. インナーループ制御とアウターループ制御との併用
動電式振動試験装置1では、外力算出処理及び外力補償処理に基づくフィードバック制御(閉ループ制御)をインナーループとし、さらに、ドライブ波形生成処理に基づく目標追従制御(開ループ制御)をアウターループとする二重ループ制御を行っている。動電式振動試験装置1における二重ループ制御の概要を図12に示す。
インナーループにおける外力算出処理及び外力補償処理では、試験体11と試験体載置部21との間に生ずる反力及び動電式振動試験装置1を数学モデルとする際に生ずるモデル化誤差を外乱値として算出し、算出した外乱値による影響が試験体載置部21及び試験体11に及ばないように、試験体載置部21の振動を制御する。
一方、アウターループにおけるドライブ波形生成処理では、実際に試験体載置部21に生ずる加速度を目標波形から得られる目標加速度に追従させることによって、目標波形による振動を試験体載置部21において正確に再現するために、図5に示す伝達関数の逆特性を求め、求めた逆特性と目標波形とをたたみ込み積分し、動電式振動試験装置1の被制御系に入力するドライブ波形を生成する。なお、伝達関数の逆特性を求めるにあたっては、各パラメータについてのノミナル値を用いている。
このように、インナーループにおいて試験体11の運動に対する外力値による影響を補償することによって、試験体11と試験体載置部21との間の反力及びモデル化誤差の影響を排除することができる。さらに、アウターループにおいて、伝達関数の逆特性を考慮したドライブ波形を生成し、応答波形に基づき修正を行うことによって、目標波形に対する目標追従性を高めることができる。
4.2. フローチャート
制御部141のCPU411が実行するドライブ波形生成処理を図12aを用いて説明する。CPU411は、目標波形を獲得すると、ハードディスク413から被制御系の逆関数を取得する(S1101)。ここで、被制御系の逆関数について説明する。試験を始める前に被制御系の伝達関数を測定するために、所定の波形を入力して試験体11及び試験体載置部21を加振する試加振を実行する。試加振の結果から、被制御系の伝達関数を算出する。算出した伝達関数の逆関数を算出し、ハードディスク413に記憶しておく。
CPU411は、目標波形を取得して最初にドライブ波形を生成する場合であるか否かを判断する(S1103)。CPU411は、最初にドライブ波形を生成する場合であると判断すると、目標波形からドライブ波形を算出する(S1105)。ドライブ波形の算出にあたっては、目標波形に逆関数を乗算する。
一方、CPU411は、ステップS1103において最初にドライブ波形を生成する場合でない、つまり、既にドライブ波形が生成され、1回若しくは数回の試験が行われていると判断すると、メモリ412から目標波形を取得する(S1110)。また、CPU411は、直前の試験における応答波形をメモリ412から取得する(S1111)。
CPU411は、取得した目標波形と応答波形との間の制御誤差を算出する(S1113)。CPU411は、制御誤差を打ち消すような応答が発生するようなドライブ波形の補正項(ドライブ補正項)を、制御誤差を打ち消すような応答に逆関数を乗算することによって算出する(S1115)。CPU411は、メモリ412に記憶されているドライブ波形、つまり前回の試験で用いたドライブ波形を取得する(S1116)。CPU411は、算出したドライブ補正項をドライブ波形に加算することによってドライブ波形を修正し、新たなドライブ波形を算出する(S1117)。なお、ドライブ波形の補正項をドライブ波形に加算するにあたっては、ドライブ補正項に安全係数を乗算しておく。
CPU411は、算出したドライブ波形をメモリ412へ一時記憶しておく(S1119)。
[その他の実施例]
(1)外力補償制御
前述の実施例1においては、外力補償制御にロバスト制御手法を用いたが、外力値を用いて外力補償ができるものであれば例示のもに限定されない。例えば、増幅器(Ga)の入力から駆動部25の出力までの逆特性と各種フィルタを用いて構成した簡易な制御系であってもよい。
(2)ダンパー27、バネ29
前述の実施例1においては、サスペンション127の機能としてダンパー機能、及びバネ機能を例示した。しかし、いずれか一方の機能としてもよい。また、他の機能を付加し、数学モデルを形成するようにしてもよい。
(3)外力値
前述の実施例1においては、外力値を算出するにあたり、駆動コイル125の加振力、ダンパー27の減衰力、バネ29の弾性力を考慮することしたが、他の力を考慮するようにしてもよい。
(4)変位センサ131、加速度センサ133、電流計135
前述の実施例1においては、被制御系の状態量として、試験体載置部121の変位量、加速度値、及び、駆動コイル125の電流値を例示したが、取得できる状態量であれば他の状態量であってもよい。
(5)ドライブ波形生成処理
前述の実施例1においては、ドライブ波形の修正にあたりドライブ補正項を用いることとしたが、他の方法によりドライブ波形を修正するようにしてもよい。
(6)インナーループ、アウターループ
前述の実施例1においては、アウターループは、応答波形が目標波形に追従するように、制御誤差に基づきドライブ波形を修正する一重の開ループを例示したが、複数のループを形成するようにしてもよい。この場合、各ループにおいて、制御に必要な処理を行わせるようにすればよい。インナーループについても同様である。
また、前述の実施例1においては、インナーループにおける処理は試験中にリアルタイムで行い、アウターループにおける処理は試験後に行うこととしたが、インナーループ及びアウターループ、いずれの処理についてもリアルタイムで行うようにしてもよい。
本発明における動電式振動試験装置1の全体構成図である。 動電式振動発生機111の構成図である。 制御部141をCPU411を用いて実現した場合のハードウェア構成図である。 図1の動電式振動試験装置1のモデルを示した図である。 図1の駆動コイル125の等価回路を示した図である。 動電式振動試験装置1のブロック図である。 制御部141の動作を示すフローチャートである。 動電式振動試験装置1のブロック図である。 外力算出処理を示すフローチャートである。 加法的不確かさを考慮した駆動コイル125のブロック図である。 R1、L1、B、Gaの摂動範囲を示す図である。 μ−シンセシスにおけるフィードバック構造を示す図である。 変位センサの一般的な伝達特性を示す図である。 加速度センサの一般的な伝達特性を示す図である。 一般化プラントPを示す図である。 動電式振動試験装置1における二重ループ制御の概要を示す図である。 ドライブ波形生成処理を示すフローチャートである。 従来の振動試験装置を示す図である。
符号の説明
1・・・動電式振動試験装置
11・・・試験体
121・・・試験体載置部
123・・・励磁コイル
125・・・駆動コイル
127・・・サスペンション
129・・・励磁電源
131・・・変位センサ
133・・・加速度センサ
135・・・電流計
141・・・制御部

Claims (6)

  1. 試験体を載置する試験体載置部、及び、入力波形に基づいて前記試験体載置部を加振する加振部を有する被制御系、
    前記試験体載置部の変位量及び加速度値、さらに、前記加振部の電流値を獲得する振動状態量獲得部、
    前記試験体載置部における力のつり合いから、前記変位量、前記加速度値、及び前記電流値を用いて、少なくとも前記試験体と前記試験体載置部との間の相互作用による力を含む外力値として算出し、算出した前記外力値が前記試験体載置部に生じていないように前記入力波形を補正する制御部、
    を有する動電式振動試験装置。
  2. 請求項1に係る動電式振動試験装置において、
    前記制御部は、さらに、
    前記変位量、前記加速度値、及び前記電流値を用いて、前記試験体載置部に関する力のうち算出可能な力を算出し、当該試験体載置部における力のつり合いから、前記試験体載置部に関する力のうち前記変位量、前記加速度値、及び前記電流値を用いては算出不可能な力を、外力値として算出すること、
    を特徴とする動電式振動試験装置。
  3. 請求項2に係る動電式振動試験装置において、
    前記制御部は、さらに、
    前記被制御系をモデル化する際に生ずるモデル化誤差を含む前記外力値を算出すること、
    を特徴とする動電式振動試験装置。
  4. 試験体を載置する試験体載置部、及び、入力波形に基づいて前記試験体載置部を加振する加振部を有する被制御系、
    前記試験体載置部の変位量及び加速度値、さらに、前記加振部の電流値を獲得する振動状態量獲得部、
    を有する動電式振動試験装置に対して、
    前記試験体載置部における力のつり合いから、前記変位量、前記加速度値、及び前記電流値を用いて、少なくとも前記試験体と前記試験体載置部との間の相互作用による力を含む外力値として算出する外力算出装置。
  5. 試験体を載置する試験体載置部、及び、入力波形に基づいて前記試験体載置部を加振する加振部を有する被制御系、
    前記試験体載置部の変位量及び加速度値、さらに、前記加振部の電流値を獲得する振動状態量獲得部、
    を有する動電式振動試験装置に対して、
    前記試験体載置部における力のつり合いから、前記変位量、前記加速度値、及び前記電流値を用いて、少なくとも前記試験体と前記試験体載置部との間の相互作用による力を含む外力値として算出し、
    算出した前記外力値が前記試験体載置部に生じていないように前記入力波形を補正すること、
    を特徴とする動電式振動試験装置の制御方法。
  6. 試験体を載置する試験体載置部、及び、入力波形に基づいて前記試験体載置部を加振する加振部を有する被制御系、
    前記試験体載置部の変位量及び加速度値、さらに、前記加振部の電流値を獲得する振動状態量獲得部、
    を有する動電式振動試験装置に対して、
    前記試験体載置部における力のつり合いから、前記変位量、前記加速度値、及び前記電流値を用いて、少なくとも前記試験体と前記試験体載置部との間の相互作用による力を含む外力値として算出する動電式振動試験装置の外力算出方法。
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