JP2009013483A - 樹脂部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリカーボネート上に意匠性に富んだ被膜を形成した部材を提供する。
【解決手段】エンジニアリングプラスチック用無電解ニッケルめっきを行うことによって、ポリカーボネート上に導電性を付与し、その上にアルミニウムコーティング法の中でも低温で緻密な厚膜を形成することができるジメチルスルホン系電気アルミニウムめっき膜を形成する。更に、アルミニウムめっき膜表面を陽極酸化し、着色・封孔することによって、金属質感を持ち、カラーバリエーションに富んだ表面を得ることができる。
【選択図】なし
【解決手段】エンジニアリングプラスチック用無電解ニッケルめっきを行うことによって、ポリカーボネート上に導電性を付与し、その上にアルミニウムコーティング法の中でも低温で緻密な厚膜を形成することができるジメチルスルホン系電気アルミニウムめっき膜を形成する。更に、アルミニウムめっき膜表面を陽極酸化し、着色・封孔することによって、金属質感を持ち、カラーバリエーションに富んだ表面を得ることができる。
【選択図】なし
Description
樹脂の高意匠被膜形成方法及びそれを用いて生成した樹脂製品に関する。
ポリカーボネートは樹脂の中でも比較的耐熱性があり、強度も高く、また寸法安定性、耐衝撃性に優れていることから様々な用途に使用されている。更に付加価値を与えるため金属でコーティングする技術も検討され、自動車部品の意匠性、電子機器筐体の電磁波シールド対策などに使用されている。金属をコーティングする技術としては、蒸着、溶射、めっきなどが挙げられるが、ポリカーボネート上に成膜するにはポリカーボネートの耐熱温度(110℃)以下で処理する必要がある。従って、低温での成膜が可能なめっき技術が古くから注目されてきた。
ポリカーボネート樹脂へのめっき技術としては、アンカー効果によりめっき膜との密着性を向上させるためのエッチングを行い、触媒付与などにより表面を活性化させた後、無電解めっきを行う方法が主流である。また、この後必要に応じて電気めっきを行い、所望の材質の膜を表面に形成する。例えば、特許文献1ではポリカーボネート又はABS樹脂製の携帯電話筐体に銅/ニッケルの二層めっきを施すことにより樹脂製筐体の剛性と静的強度を向上すると共に高耐衝撃性を付与することが可能であるとしている。
特許第3456473号
上述のように、ポリカーボネート上にめっき法により金属調の膜を形成することができるが最表面層がニッケルめっき層であるため、例えばアルミニウムの陽極酸化膜で得られるような金属光沢感のあるカラーバリエーションを得ることは非常に困難であった。アルミニウム膜の製膜方法としては溶射、溶融めっきが一般的であるが、成膜中に試料が高温に曝されるため、耐熱温度の低い樹脂にめっきすることは不可能である。低温で成膜する方法としては蒸着がよく知られているが、製膜速度が遅く、着色するのに十分な厚さを有する酸化膜を形成するには非常に時間がかかる。
一方、比較的低温で短時間のうちにアルミニウムを製膜する方法として電気アルミニウムめっき法がある。電気アルミニウムめっき法は、実用化された例は少ないものの、めっき膜に環境および人体に影響を与える重金属を含まないことから古くから研究が行われている。水溶液中におけるアルミニウム電析の電位は水素発生の電位よりも卑であるため、水溶液からめっきを行う場合、アルミニウムの電析よりも先に水の電気分解が生じるので、水溶液からの電気アルミニウムめっきは不可能とされている。従って、電気アルミニウムめっき溶媒にはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエン等の非水溶媒や塩化ナトリウム−塩化カリウム−塩化アルミニウム溶融塩が使用されている。アルミニウム源となる溶質には、アルミニウムハロゲン化物やアルキルアルミニウムが用いられる。これらの溶質は水分と反応しやすく、空気中の水分を容易に吸収するため、電気アルミニウムめっきでは雰囲気の制御が重要である。めっき温度は使用する溶媒によって異なっており、トルエン浴では100℃、塩化ナトリウム溶融塩めっきでは150℃〜180℃である。ポリカーボネートにめっきを行うには耐熱温度以下でめっきを行う必要がある。また、めっき温度において溶剤によりポリカーボネートが侵食されないめっき液でなければならない。
したがって本発明の目的は、樹脂材料からなる部材の表面に、着色するのに十分な厚さを有するアルミニウム酸化膜を形成した樹脂部材を提供することにある。
本発明ではポリカーボネート用無電解ニッケルめっきプロセスと、次いでジメチルスルホンを溶媒としたアルミニウムめっき液を用いて電気めっきすることによりアルミニウムを成膜することで上記課題を解決した。このアルミニウムめっき液は90〜110℃での処理が可能であり、ポリカーボネートとも反応し難いので、無電解ニッケルめっき膜にピンホールがあってもポリカーボネート素地を侵すことなくアルミニウムの成膜が可能である。
ニッケルめっき膜の役割は樹脂表面に電気を流すためである。したがってニッケルめっき膜に代えて導電性材料からなる他の膜、例えば銅めっき膜を採用することも可能であるが、ニッケルめっき膜が好ましい理由は、樹脂上へのめっき技術で実用レベルにあるのはニッケルめっきのみだからである。
前処理として使用するNiめっき膜厚は1〜10μmが好ましい。膜厚が1μm未満ではアルミニウムめっき時にNiめっき膜のピンホールを通してアルミニウムめっき液が浸入するためポリカーボネート/ニッケル間の密着力が低下する。逆に膜厚が10μmを超えると、めっき膜の内部応力が増大するためポリカーボネート/ニッケル間の密着性が低下する。
アルミニウムめっき液の組成としてはジメチルスルホンと塩化アルミニウムのモル比が10:2〜10:4が好ましい。特に好ましくは10:3〜10:4である。塩化アルミニウムの割合が2以下になると、アルミニウムイオンが減少するため、めっき中に過剰電子による副反応(ヤケ)を生じやすくなる。一方、塩化アルミニウムの割合が4以上となるとめっき液の融点が上昇すると共に、アノードとなるアルミニウム板に不溶性の酸化物が生成しやすくなる。めっき温度は90〜110℃が好ましい。めっき温度が90℃以下になると、めっきの析出核が減少し、不均一な被膜が生成する。めっき温度が110℃以上となると樹脂の耐熱温度を超えるため、試料の変形を生ずる。アルミニウムめっき膜厚は10〜100μmであることが好ましい。膜厚が10μm未満になると、アルミニウムめっき膜のピンホールが顕著となり、後の表面酸化の際にニッケルめっきしたマグネシウム合金素地を侵食する恐れがある。一方、アルミニウムめっき膜厚が100μmを超えると瘤状めっきなどが顕著となり外観不良となる。
本発明を用いれば、ポリカーボネート樹脂上に無電解ニッケルめっき膜/電気アルミニウムめっき膜の二層構造を持つ膜をめっきにより作製し、更にアルミニウム膜の一部を陽極酸化することで、意匠性に富んだ被膜を得ることができる。
本発明のポリカーボネート用意匠性コーティングについて、その一例を以下に述べる。なお、ニッケルめっき及びアルミニウムめっき液は実施例に記載のものに限らず、どのようなめっき液にも適用可能である。
(実施例1)
被めっき部材には、80mm×80mm×2mm厚のポリカーボネート板を使用した。サンドブラスト処理の後、奥野製薬工業製エンジニアリングプラスチック用無電解NiめっきプロセスによりNiめっき膜を成膜した。その工程を以下に示す。
熱処理 120℃、2h
溶剤処理(サーフPC−724) 40℃、4min
湯洗 40℃、2min
酸エッチング(98%硫酸 600ml/L) 70℃、10min
エッチング(無水クロム酸 400g/L、98%硫酸 200ml/L)
70℃、5min
中和(36%塩酸 100ml/L) 25℃、2min
表面調整(コンディライザーFR 100ml/L)
40℃、4min
プリディップ(OPC−SALM 260g/L)
25℃、1min
触媒付与(OPC−80キャタリストM 45ml/L、OPC−SALM 260g/L)
25℃、4min
活性化(OPC-500アクセレーターMX−1 100ml/L)
40℃、4min
無電解ニッケル(トップニコロンTOM−SLF 200ml/L)
90℃、30min
乾燥
被めっき部材には、80mm×80mm×2mm厚のポリカーボネート板を使用した。サンドブラスト処理の後、奥野製薬工業製エンジニアリングプラスチック用無電解NiめっきプロセスによりNiめっき膜を成膜した。その工程を以下に示す。
熱処理 120℃、2h
溶剤処理(サーフPC−724) 40℃、4min
湯洗 40℃、2min
酸エッチング(98%硫酸 600ml/L) 70℃、10min
エッチング(無水クロム酸 400g/L、98%硫酸 200ml/L)
70℃、5min
中和(36%塩酸 100ml/L) 25℃、2min
表面調整(コンディライザーFR 100ml/L)
40℃、4min
プリディップ(OPC−SALM 260g/L)
25℃、1min
触媒付与(OPC−80キャタリストM 45ml/L、OPC−SALM 260g/L)
25℃、4min
活性化(OPC-500アクセレーターMX−1 100ml/L)
40℃、4min
無電解ニッケル(トップニコロンTOM−SLF 200ml/L)
90℃、30min
乾燥
次に、ジメチルスルホン5.0molに対して無水塩化アルミニウム1.0molを溶融させて作製しためっき液(110℃)を用いて電気アルミニウムめっきを行った。その外観写真を図1に示す。透明なポリカーボネート樹脂上に白色無光沢のアルミニウム被膜を形成することができた。図2に図1のニッケルめっき膜とアルミニウムめっき膜の断面写真及び各層のEDX分析結果を示す。ポリカーボネート3の表面に導電性確保のための薄いNi-Pめっき膜2とその上に緻密なアルミニウムめっき膜1が生成していることが分かる。
この被膜の密着性試験結果を図3に示す。碁盤目剥離試験(JIS K 5400)後も密着性は良好である。
(実施例2)
実施例1と同じ条件でポリカーボネート板に無電解ニッケルめっき膜と電気アルミニウムめっき膜を成膜し、電気アルミニウムめっき膜の表面に硫酸系の化成液(25℃(室温))を用いてアルマイト処理を施した。その結果を図4に示す。バルクのアルミニウム材と同様の金属質感を持つポリカーボネート板を得ることができる。
実施例1と同じ条件でポリカーボネート板に無電解ニッケルめっき膜と電気アルミニウムめっき膜を成膜し、電気アルミニウムめっき膜の表面に硫酸系の化成液(25℃(室温))を用いてアルマイト処理を施した。その結果を図4に示す。バルクのアルミニウム材と同様の金属質感を持つポリカーボネート板を得ることができる。
本発明は、樹脂材料からなる部材に金属光沢感のあるカラーバリエーションを付与することができるため、意匠性が求められる機器、例えば携帯電話、パーソナルコンピュータ、カメラ、時計等の樹脂製筐体に適用することができる。
Claims (2)
- 樹脂材料からなる被めっき部材にニッケルめっき層又は銅めっき層およびアルミニウムめっき層を形成した樹脂部材であって、前記樹脂材料と前記アルミニウムめっき層との間に前記ニッケルめっき層又は前記銅めっき層が形成されることを特徴とする樹脂部材。
- 前記アルミニウムめっき層の一部を酸化して酸化アルミニウム膜とする請求項1記載の樹脂部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007178770A JP2009013483A (ja) | 2007-07-06 | 2007-07-06 | 樹脂部材 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2007178770A JP2009013483A (ja) | 2007-07-06 | 2007-07-06 | 樹脂部材 |
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Family
ID=40354745
Family Applications (1)
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JP2007178770A Pending JP2009013483A (ja) | 2007-07-06 | 2007-07-06 | 樹脂部材 |
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---|---|
JP (1) | JP2009013483A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014229223A (ja) * | 2013-05-27 | 2014-12-08 | アルプス電気株式会社 | 入力装置 |
-
2007
- 2007-07-06 JP JP2007178770A patent/JP2009013483A/ja active Pending
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JP2014229223A (ja) * | 2013-05-27 | 2014-12-08 | アルプス電気株式会社 | 入力装置 |
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