JP2009013192A - 複合硬質炭素膜及びその製造方法並びに摺動部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】窒化炭素膜の摩擦初期におけるなじみ特性を良好にして、摩擦初期の極力早い段階から超低摩擦状態を達成する。
【解決手段】本発明に係る複合硬質炭素膜20は、基材10上に形成された窒化炭素膜21と、この窒化炭素膜21上に形成されたカーボンコーティング膜22とから構成されている。カーボンコーティング膜22の膜厚は1〜500nmであることが好ましく、2〜4nmであることがより好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は複合硬質炭素膜及びその製造方法並びに摺動部材に関し、詳しくは窒化炭素膜を含む複合硬質炭素膜及びその製造方法、並びに基材表面に同複合硬質炭素膜を形成してなる摺動部材に関する。本発明に係る複合硬質炭素膜及び摺動部材は、例えば、車両用エンジン部品としてのバルブリフタ、ピストンリングやピストンスカートに好適に利用することができる。
近年、硬質薄膜の工業的利用が増加している。硬質薄膜は、潤滑油の使用困難な過酷な環境下における低摩擦、耐摩耗性の要求から、広く研究されてきている。
例えば、構造用鋼あるいは高合金鋼からなる摺動部品において、耐摩耗性向上や低摩擦係数化のために、各種表面処理により硬質炭素膜やDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜をコーティングすることが行われている。
また近年、硬質薄膜の中で、特に窒化炭素膜(CNx膜)は新しいトライボロジー(摩擦)材料として注目されている。
例えば、特許文献1には、窒素ガス雰囲気において乾燥摩擦条件下で充分に低い摩擦係数を得ることのできる、窒化炭素膜が摺動面に形成された摺動部材が記載されている。
この摺動部材では、摺動の相手材に窒化珪素(Si)球を用い、窒素ガス雰囲気下、無潤滑で行うピンオンディスク試験において、試験開始時には0.15〜0.3程度であった摩擦係数が、繰り返し摩擦後には0.01程度以下にまで低下する。このように繰り返し摩擦後に超低摩擦状態となるのは、窒素ガス分子が摺動面に対してどのように作用しているかは定かではないが、窒素ガス分子の何らかの作用により、良好ななじみと、それに伴う表面の平滑化とが生じるとともに、最表面のグラファイト化が促進されたことによるものと推察される。
特開2002−339056号公報
しかし、窒化炭素膜が摺動面に形成された上記従来の摺動部材では、使用初期において、摩擦係数が低下して低摩擦係数で安定するまでに時間がかかり、なじみ性が不十分であるという問題があった。
すなわち、上記従来の摺動部材では、摩擦初期においては摩擦係数が0.15〜0.3程度と高い。摩擦初期における摩擦係数が高いと、初期摩耗が大きくなるため、耐久性が低下する原因となる。このため、摺動部材の耐久性のさらなる向上を図る上では、摩擦初期の極力早い段階から超低摩擦状態とすることが重要である。
また上述のとおり、窒化炭素膜においては、摩擦初期で高かった摩擦係数が窒素中における繰り返し摩擦により通常減少する。しかし、本発明者の実験では、窒化炭素膜であっても、時折、摩擦初期に窒化炭素膜の剥離と激しい摩耗が観察され、窒素中における繰り返し摩擦後に超低摩擦状態とならないものがあった。このため、繰り返し摩擦後に超低摩擦状態とするためには、摩擦初期におけるなじみ特性を良好にして、摩擦初期における膜の剥離や摩耗を防ぐことが重要となる。
さらに、窒化炭素膜の使用最大面圧は、摩擦初期のなじみ過程における最大面圧に依存している。すなわち、摩擦初期のなじみ過程における最大面圧が増加すれば、使用最大面圧も増大して、窒化炭素膜の耐久性を向上させることができる。このため、摩擦初期におけるなじみ特性を良好にして、摩擦初期の早い段階から超低摩擦状態とすることが重要である。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、窒化炭素膜の摩擦初期におけるなじみ特性を良好にして、摩擦初期の極力早い段階から超低摩擦状態を達成することを解決すべき技術課題とするものである。
本発明者は、窒化炭素膜のなじみ性を良好なものとすべく鋭意検討を重ねた結果、摩擦の繰り返しにより窒化炭素膜の極表面で起こるグラファイト化によって窒化炭素膜が低摩擦係数化する、というメカニズムを積極的に利用することを考えた。そして、本発明者は、このような考察に基づいて多くの実験と研究を行うことにより、窒化炭素膜の上にカーボンコーティング膜を予め形成しておくことで、摩擦初期の早い段階から超低摩擦状態を達成でき、しかもそのカーボンコーティング膜の膜厚を適切に制御することで、超低摩擦状態の早期達成の効果を飛躍的に増大させうることを知見して、本発明を完成した。
すなわち、本発明の複合硬質炭素膜は、基材上に形成された窒化炭素膜と、前記窒化炭素膜上に形成されたカーボンコーティング膜と、を備えていることを特徴とするものである。
本発明の複合硬質炭素膜は、窒化炭素膜上にカーボンコーティング膜が予め形成されている。このカーボンコーティング膜は、摺動時に固体潤滑層として作用する。このため、摩擦初期のなじみ過程において早い段階で極低摩擦状態が達成される。また、カーボンコーティング膜がCNx膜を保護することで、CNx膜の摩耗量を低減させることができる。
本発明の複合硬質炭素膜において、前記カーボンコーティング膜の膜厚は1〜500nmであることが好ましく、2〜4nmであることがより好ましい。
本発明の複合硬質炭素膜の製造方法は、基材上に窒化炭素膜を形成するCNx膜形成工程と、前記窒化炭素膜上にカーボンコーティング膜を形成するC膜形成工程と、を備え、前記C膜形成工程では、電子ビーム蒸着法により前記カーボンコーティング膜を形成することを特徴とするものである。
本発明の複合硬質炭素膜の製造方法において、前記CNx膜形成工程では、窒素イオンビーム照射によるイオン注入と電子ビーム蒸着によるカーボンの蒸着とを同時に行うダイナミックミキシング法により、前記窒化炭素膜を形成することが好ましい。
本発明の複合硬質炭素膜の製造方法において、前記CNx膜形成工程と前記C膜形成工程とを同一の装置内で連続的に行うことが好ましい。
本発明の摺動部材は、基材と、この基材上に形成された窒化炭素膜と、この窒化炭素膜上に形成されたカーボンコーティング膜と、を備えていることを特徴とするものである。
本発明の摺動部材において、前記カーボンコーティング膜の膜厚は1〜500nmであることが好ましく、2〜4nmであることがより好ましい。
本発明に係る複合硬質炭素膜及び摺動部材によれば、使用初期段階のなじみ過程において、極力早い時期に超低摩擦状態を達成することができる。このため、使用最大面圧が増大し、耐久性の向上を図ることが可能となる。
また、本発明に係る複合硬質炭素膜及び摺動部材を例えば車両の動力系部品に適用した場合には、摩擦抵抗によるエネルギー損失が少なくなるため、車両の燃費を向上させることができる。
本発明に係る複合硬質炭素膜は、基材上に形成されたものであって、基材上に窒化炭素膜(以下、CNx膜と称する)と、このCNx膜上に形成されたカーボンコーティング膜とを備えている。
本発明に係る複合硬質炭素膜が形成される基材の材質は、膜の密着性を確保できるものであれば特に限定されず、鉄系材料であっても、非鉄系材料であってもよく、あるいはセラミックスであってもよい。例えば、鉄板、機械構造用の炭素鋼や各種合金鋼、焼入れ鋼等の鋼材、片状黒鉛鋳鉄や球状黒鉛鋳鉄等の鋳鉄材料、あるいはAl合金やMg合金等を好適に用いることができる。
CNx膜は、窒素ガス雰囲気において非常に低い摩擦係数を示す。このCNx膜における窒素/炭素組成比(以下、N/C比と称する)は、原子比において、0.07〜0.5程度とすることができ、0.1〜0.4とすることが好ましい。N/C比が小さすぎると、窒化による低摩擦係数化の効果が発揮されず、大きすぎるとCNx膜の強度が低下してしまう。
このCNx膜は、結晶質部分の占める割合ができるだけ少なく、非晶質部分の占める割合ができるだけ多いa−CNx膜(非晶質窒化炭素膜)であることが好ましい。CNx膜において結晶質部分の占める割合が多くなると、硬くなりすぎるため、相手材の摩耗が増加する。
なお、CNx膜中には、膜の硬さ等を調整すべく、必要に応じてSi、Ti、Cr、Fe、W、Bなどの添加元素を含有させてもよい。
CNx膜の厚さは特に限定されず、適用する部品の用途や求められる特性に応じて、50〜2000nm程度の範囲内で適宜設定することができる。
CNx膜は、摩擦の繰り返しにより膜表面から窒素が離脱して、膜の極表面がグラファイト化する。これにより、CNx膜の極表面が軟らかい固体潤滑層として作用し、低摩擦係数化が達成される。本発明に係る複合硬質炭素膜では、このCNx膜上にカーボンコーティング膜が形成されている。このため、カーボンコーティング膜が摩擦初期の早期段階からグラファイト化して固体潤滑層としての作用を果たし、なじみ特性が良好となる。すなわち、なじみ過程において摩擦初期の早い段階から超低摩擦状態となる。
このカーボンコーティング膜は実質的に炭素のみからなる膜である。ただし、カーボンコーティング膜には、製造過程において不可避的に含まれてしまう炭素以外の不純物元素がごく微量なら含まれていてもよい。例えば、カーボンコーティング膜に、原子比で0.05程度以下のごく微量の窒素やアルゴンが含まれていてもよい。ただし、酸素がカーボンコーティング膜に含まれていると、カーボンコーティング膜のグラファイト化が酸素により阻害され、その結果低摩擦係数化が達成されなくなる。したがって、カーボンコーティング膜に不可避的不純物として含まれる酸素の含有量はO/C原子比で0.05程度以下であることが好ましく、酸素が含まれていないことがより好ましい。
カーボンコーティング膜の膜厚は1〜500nmであることが好ましい。カーボンコーティング膜が1nmよりも薄くなると、カーボンコーティング膜を形成することによる低摩擦係数化の効果を十分に達成することが困難になる。一方、カーボンコーティング膜が500nmよりも厚くなっても、低摩擦係数化の効果を十分に達成することが困難になり、また耐摩耗性も低下する。
また、カーボンコーティング膜の膜厚は2〜4nmであることがより好ましく、3nmであることが特に好ましい。カーボンコーティング膜の膜厚が2〜4nmであれば、摩擦初期の極めて早い段階から超低摩擦状態を達成することができる。
このカーボンコーティング膜は、結晶質部分の占める割合ができるだけ少なく、非晶質部分の占める割合ができるだけ多い非晶質カーボンコーティング膜であることが好ましい。カーボンコーティング膜において結晶質部分の占める割合が多くなると、硬くなりすぎて脆くなる。
なお、本発明に係る複合硬質炭素膜は、基材上に直接形成してもよいし、あるいは中間層を介して形成してもよい。中間層は、基材と複合硬質炭素膜との密着性を向上させるためのもので、必要に応じて、基材上に形成することができる。この中間層の種類としては、基材と複合硬質炭素膜(複合硬質炭素膜を構成するCNx膜)との密着性を向上させることのできるものであれば特に限定されず、基材の材質に応じて適宜選定することができる。例えば、Cr、Ti、Si、WやB等の金属元素の1種又は2種以上の組み合わせを中間層として用いることができる。
また、基材と複合硬質炭素膜との密着性をより向上させる観点より、前記中間層は、前記金属元素よりなる金属層と、前記金属元素と炭素よりなるとともに両者の比率を傾斜的に(金属層に近接するほど金属の割合が多くなるように)変化させた傾斜混合層とから構成することもできる。
中間層の形成方法は特に限定されず、イオン化蒸着法、プラズマCVD法、アークイオンプレーティング法やスパッタリング法等を採用することができる。
前記CNx膜の成膜方法は特に限定されないが、より安定した低摩擦特性を得るためには、窒素イオンビーム照射によるイオン注入と、電子ビーム蒸着によるカーボンの蒸着とを同時に行うダイナミックミキシング法を利用することが好ましい。ただし、プラズマCVD法、アンバランスドマグネトロンスッパタ法や陰極アーク法等を利用してもよい。
また、前記カーボンコーティング膜の成膜方法は特に限定されないが、より安定した低摩擦特性を得るためには、電子ビーム蒸着を利用することが好ましい。ただし、プラズマCVD法、アンバランスドマグネトロンスッパタ法や陰極アーク法等を利用してもよい。
すなわち、本発明に係る複合硬質炭素膜は、好適には、本発明に係る複合硬質炭素膜の製造方法により形成することができる。
本発明に係る複合硬質炭素膜の製造方法は、基材上に窒化炭素膜を形成するCNx膜形成工程と、前記窒化炭素膜上にカーボンコーティング膜を形成するC膜形成工程と、を備えている。
CNx膜形成工程では、前述のとおり、プラズマCVD法、アンバランスドマグネトロンスッパタ法や陰極アーク法等を利用してもよいが、窒素イオンビーム照射によるイオン注入と、電子ビーム蒸着によるカーボンの蒸着とを同時に行うダイナミックミキシング法を利用することが好ましい。このとき、カーボンの蒸着条件と窒素イオン照射の条件との兼ね合いでCNx膜の組成比を調整することができる。
C膜形成工程では、電子ビーム蒸着法を利用する。これにより、安定した低摩擦特性を得ることが可能となる。
ここに、CNx膜と、このCNx膜上に形成されるカーボンコーティング膜とは、同一の装置内で連続的に形成することが好ましい。こうすることで、生産性を向上させることができるとともに、酸素等の不純物がカーボンコーティング膜等に含まれることを防ぐことができる。
したがって、本発明の複合硬質炭素膜の製造方法において、前記CNx膜形成工程では、窒素イオンビーム照射によるイオン注入と電子ビーム蒸着によるカーボンの蒸着とを同時に行うダイナミックミキシング法により、前記窒化炭素膜を形成し、前記CNx膜形成工程と前記C膜形成工程とを同一の装置内で連続的に行うことが好ましい。こうすることで、生産性を向上させることができるとともに、酸素等の不純物がカーボンコーティング膜等に含まれることを確実に防ぐことができる。
本発明に係る複合硬質炭素膜が基材上に形成されてなる本発明に係る摺動部材によれば、なじみ性や耐摩耗性を良好に向上させることができる。よって、この摺動部材は、例えば、車両用エンジン部品としてのバルブリフタ、ピストンリングやピストンスカートに好適に利用することができる。
また、本発明に係る複合硬質炭素膜及び摺動部材における相手材としては、特に限定されず、Si、ZrO2、SUJ2、SUS440CやCNx等とすることができるが、超低摩擦状態を達成する上ではSiが特に好ましい。
以下、実施例により、本発明を更に詳しく説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
この実施例では、摺動ユニットの一対の摺動部材のうち、本発明に係る複合硬質炭素膜を形成した一方の摺動部材として以下に示すディスク試験片を製作し、この摺動部材と摺動する他方の摺動部材として、以下に示すボール試験片を製作した。
(実施例1)
すなわち、図1に示される実施例1に係る摺動部材は、基材10と、基材10上に形成された複合硬質炭素膜20とから構成されている。そして、この複合硬質炭素膜20は、基材10上に形成されたCNx膜(a−CNx膜)21と、このCNx膜21上に形成されたカーボンコーティング膜(非晶質のカーボンコーティング膜)22とから構成されている。
基材10は、表面粗さRyが0.003μmの円板状のSi(100)基板よりなる。
CNx膜21は、炭素と窒素とからなり、N/C比が0.1で、膜厚が150nmである。
カーボンコーティング膜22は、実質的に炭素のみからなり、膜厚が3nmである。なお、このカーボンコーティング膜22は、不純物としての酸素を含まず、またごく微量(原子比で0.05程度以下)の窒素を含む。
上記構成を有する実施例1に係る摺動部材は、図2に示されるIBAD(Ion Beam Assisted mixing Deposition)装置(アルバック社製)を用いて、以下に示すように基材10上に複合硬質炭素膜20を形成することにより製造した。
まず、基材10の円部表面がターゲット31と対向するように、基材10をホルダ32に保持させた後、真空チャンバ33内を1.3×10−4Pa以下の真空度とした。なお、ターゲット31としては純度99.999%の炭素を用いた。そして、真空チャンバ33内に窒素ガスを導入して1.05×10−2Paに調整した。なお、基材10の表面温度は100℃以下とした。
<CNx膜形成工程>
そして、窒素イオンビーム照射によるイオン注入と電子ビーム蒸着によるカーボンの蒸着とを同時に行うダイナミックミキシング法により、基材10上にCNx膜21を形成した。
すなわち、アルゴンイオン源(1kV,100mA)から4.0SCCM(Standard Cubic Centimeter per Minute)の流量でアルゴンイオン34をターゲット31に照射し、カーボンスパッタ粒子35にすると同時に、窒素イオン源から加速電圧0.5KV、電流密度30μA/cm、2.0SCCMの流量で窒素イオン36を基材10に向けて照射して、成膜を行った。
<C膜形成工程>
そして、CNx膜形成工程と連続的にC膜形成工程を行い、CNx膜21上にカーボンコーティング膜22を形成した。
すなわち、上記ダイナミックミキシング後に、窒素イオン36の照射を止めて、カーボンスパッタ粒子35のみを基材10のCNx膜21に向けて照射して、成膜を行った。
なお、CNx膜21及びカーボンコーティング膜22の成膜時には、ホルダ32と共に基材10を4rpmの回転速度で回転させた。
(実施例2)
カーボンコーティング膜22の膜厚を3nmから5nmに変更すること以外は、実施例1と同様である。
すなわち、C膜形成工程の成膜時間を実施例1よりも長くすること以外は、実施例1と同様の方法により、CNx膜(炭素と窒素とからなり、N/C比が0.1、膜厚が150nm)21と、カーボンコーティング膜(実質的に炭素のみからなり、膜厚が5nm)22とから構成された複合硬質炭素膜20が基材10上に形成されてなる、実施例2に係る摺動部材を製造した。
(比較例1)
カーボンコーティング膜22を形成しないこと以外は、実施例1と同様である。
すなわち、C膜形成工程を実施しないこと以外は、実施例1と同様の方法により、CNx膜(炭素と窒素とからなり、N/C比が0.1、膜厚が150nm)21が基材10上に形成されてなる、比較例1に係る摺動部材を製造した。
(摩擦試験)
実施例1、2及び比較例1に係る摺動部材について、環境制御型のボールオンディスク摩擦試験装置を用いて、摩擦試験を行った。
なお、試験条件は、荷重:33MPa、すべり速度:0.13m/s、相手材:Si球、雰囲気:窒素、温度:室温である。
実施例1の試験結果を図3及び図4に示す。実施例2の試験結果を図5及び図6に示す。比較例1の試験結果を図7及び図8に示す。
カーボンコーティング膜が形成されていない比較例1では、初期摩擦係数が0.1〜0.15であり、1000サイクル程度まで摩擦を繰り返した後に、摩擦係数が約0.08で一定値となった。
これに対し、膜厚が3nmのカーボンコーティング膜22が形成された実施例1では、初期摩擦係数が0.05であり、100サイクルの繰り返し摩擦後に、摩擦係数が0.01程度まで減少して一定値となった。
また、膜厚が5nmのカーボンコーティング膜22が形成された実施例2では、初期摩擦係数が0.15と高かく、500サイクルまで摩擦係数の値は不安定に0.05〜0.15の範囲で変動した。その後、700サイクル以降は、0.01〜0.015の摩擦係数で一定となった。
したがって、CNx膜21上にカーボンコーティング膜22を形成することで、摺動部材の使用初期において、摺動により摩擦係数を速やかにかつ大きく低下させて、早期に超低摩擦状態で安定させることができることが確認できた。
また、カーボンコーティング膜22の膜厚を適切に制御することにより、具体的には5nm未満の2〜4nmとすることで、摩擦係数をより速やかに低下させて、より早期に超低摩擦状態で安定させることができることが確認できた。
ここに、発明者は、カーボンコーティング膜22の膜厚が500nm以下であれば、カーボンコーティング膜22を形成しない比較例1と比べて摩擦係数低下の効果があること、及びカーボンコーティング膜22の膜厚が550nm以上になると比較例1と同程度の摩擦係数低下の効果しかなく、また、耐摩耗性も低下することを確認している。
(カーボンコーティング膜の組成分析)
カーボンコーティング膜22の膜厚を3nmとした実施例1に係る複合硬質炭素膜20において、カーボンコーティング膜22の組成が摩擦試験の前後でどのように変化するかをAES(Auger Electron Spectroscopy、オージェ電子分光分析法)で分析した。
このオージェ分析結果が図9に示されるように、摩擦試験前においては、カーボンコーティング膜22中にごく微量(原子比で0.05程度以下)の窒素が検出されたが、摩擦試験後には窒素が検出されなかった。また、この実施例1に係るカーボンコーティング膜22には、摩擦試験前及び摩擦試験後のいずれであっても酸素の含有が認められなかった。
(比較例2)
比較例2に係る複合硬質炭素膜は、基材10の上に形成された実施例1と同様のCNx膜21と、このCNx膜21上に形成された酸素含有カーボンコーティング膜とから構成されている。
この酸素含有カーボンコーティング膜は、膜厚が3nmで、O/C原子比が0.1である。
比較例2に係る複合硬質炭素膜は、以下のようにして製造した。
CNx膜形成工程により、基材10上にCNx膜21を形成するまでは実施例1と同様である。
そして、その後のC膜形成工程において、実施例1の電子ビーム蒸着法ではなく、ECR(Electron Cyclotron Resonance、電子サイクロトロン共鳴)スパッタリング法を実施することで、CNx膜21上に酸素含有カーボンコーティング膜を形成した。
すなわち、CNx膜21を形成した基材10をIBAD装置から取り出し、シャワー装置(エリオニクス(株)社製、「EIS−200」)」にセットして、ECRスパッタリング法を実施した。
このECRスパッタリング法では、加速電圧:2.5kV、マイクロ波電力:1500W、チャンバ内真空度:1.0×10−4Pa、成膜時のチャンバ内圧力:5.0×10−3〜5.0×10−2Pa、ターゲットホルダの回転速度:0.7rpm、ターゲットホルダ角度:35度、ガス流量:1.2secの成膜条件で、酸素含有カーボンコーティング膜を形成した。
酸素含有カーボンコーティング膜を有する比較例2の摺動部材について、前述したのと同様の摩擦試験を行った。その結果、比較例1の摺動部材と同程度の摩擦係数低下効果しか認められなかった。
また、この酸素含有カーボンコーティング膜のAES分析結果を図10に示すように、窒素が検出されず、また、多くの酸素が検出された。
したがって、超低摩擦化を達成する上では、CNx膜21上に形成されるカーボンコーティング膜22が酸素を含まない方が好ましいことが確認された。
実施例1に係る摺動部材を模式的に示す断面図である。 実施例1に係る複合硬質炭素膜を成膜する際に用いた装置構成を模式的に示す図である。 実施例1に係る摺動部材について、摩擦試験により摩擦係数及びなじみ性を調べた結果を示す図である。 実施例1に係る摺動部材について、摩擦試験により摩擦係数及びなじみ性を調べた結果を示す図である。 実施例2に係る摺動部材について、摩擦試験により摩擦係数及びなじみ性を調べた結果を示す図である。 実施例2に係る摺動部材について、摩擦試験により摩擦係数及びなじみ性を調べた結果を示す図である。 比較例1に係る摺動部材について、摩擦試験により摩擦係数及びなじみ性を調べた結果を示す図である。 比較例1に係る摺動部材について、摩擦試験により摩擦係数及びなじみ性を調べた結果を示す図である。 実施例1に係る複合硬質炭素膜のカーボンコーティング膜について、オージェ分析結果を示す図である。 比較例2に係る複合硬質炭素膜の酸素含有カーボンコーティング膜について、オージェ分析結果を示す図である。
符号の説明
10…基材 20…複合硬質炭素膜
21…CNx膜 22…カーボンコーティング膜

Claims (7)

  1. 基材上に形成された窒化炭素膜と、
    前記窒化炭素膜上に形成されたカーボンコーティング膜と、を備えていることを特徴とする複合硬質炭素膜。
  2. 前記カーボンコーティング膜の膜厚が1〜500nmであることを特徴とする請求項1に記載の複合硬質炭素膜。
  3. 前記カーボンコーティング膜の膜厚が2〜4nmであることを特徴とする請求項1に記載の複合硬質炭素膜。
  4. 基材上に窒化炭素膜を形成するCNx膜形成工程と、
    前記窒化炭素膜上にカーボンコーティング膜を形成するC膜形成工程と、を備え、
    前記C膜形成工程では、電子ビーム蒸着法により前記カーボンコーティング膜を形成することを特徴とする複合硬質炭素膜の製造方法。
  5. 前記CNx膜形成工程では、窒素イオンビーム照射によるイオン注入と電子ビーム蒸着によるカーボンの蒸着とを同時に行うダイナミックミキシング法により、前記窒化炭素膜を形成することを特徴とする請求項4に記載の複合硬質炭素膜の製造方法。
  6. 前記CNx膜形成工程と前記C膜形成工程とを同一の装置内で連続的に行うことを特徴とする請求項4又は5に記載の複合硬質炭素膜の製造方法。
  7. 基材と、請求項1乃至3のいずれか一つに記載された複合硬質炭素膜とを備えていることを特徴とする摺動部材。
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