JP2009011910A - ハニカム構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】排気中の粒子状物質(PM)の捕集効率が高く、初期圧力損失が小さいと共に、PMの捕集に伴う圧力損失の増大が抑制されたハニカム構造体を提供する。
【解決手段】ハニカム構造体10は、多孔質セラミックスで構成され単一の方向に延びて列設された複数の隔壁2により区画された複数のセル3、及び、複数のセルが一方向に開放したセル3aと他方向に開放したセル3bとが交互となるように、それぞれのセルの一端を封止する封止部6を備え、水銀圧入法により測定された隔壁の気孔直径の平均値が1μm〜20μmであり、気孔直径を常用対数で表した場合の気孔径分布の標準偏差が0.20以下であり、隔壁の厚さd、セルが延びる軸方向のセルの長さL、及び軸方向の封止部の長さDは、d<DかつD<L/10の関係を満たしている。
【選択図】図1

Description

本発明は、ハニカム構造体に関するものであり、特に、ディーゼルエンジンの排気から粒子状物質を除去するために適したハニカム構造体に関するものである。
ディーゼルエンジンから排出されるガスに含まれるスス等の粒子状物質(パティキュレートマター。以下、「PM」と称する)を捕集し、除去するフィルタとして、従来より、多孔質セラミックスで構成され単一の方向に延びて列設された複数の隔壁により区画された、複数のセルを備えるハニカム構造体が用いられている。このようなハニカム構造体では一般的に、一端が封止されたセルと他端が封止されたセルとが交互に配されており、ガスは一方向に開口したセルから流入し、多孔質の隔壁を通過してから、他方向に開口したセルから流出する。そして、ガスが隔壁を通過する際に、ガス中のPMが多孔質の隔壁の表面及び気孔内に捕集され、除去される。
そのため、気孔径が大きすぎる場合は、捕集されずに隔壁を通過してしまうPMが増加し、捕集効率が低下する。一方、気孔径が小さすぎる場合は、ガスの通過に対する抵抗により圧力損失が大きくなり、エンジンへの負荷が増大する。そこで、隔壁を構成する多孔質セラミックスの気孔径及び気孔径分布を制御することにより、相反する関係にある捕集効率と圧力損失との調和を図ったフィルタが提案されている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
これらのフィルタは、隔壁の気孔径を限られた狭い範囲内となるように設定することにより、PMの捕集に適した気孔の相対数を多くすることを意図したものであり、水銀圧入法によって測定された気孔径の平均値を、前者(特許文献1)では1μm〜15μm、後者(特許文献2)では20μm〜60μmとし、気孔径を常用対数で表した場合の気孔径分布における標準偏差を、共に0.20以下としている。
特許3272746号公報 特開2002−242655号公報
しかしながら、PMはガスが隔壁を通過する際に捕集されるため、ガスが流通可能な隔壁の面積によっても圧力損失の大きさが左右されてしまい、上記のように気孔径や気孔径分布を制御したとしても、捕集効率が高く圧力損失の小さいハニカム構造体として不充分であるという問題があった。
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、排気中の粒子状物質(PM)の捕集効率が高く、初期圧力損失が小さいと共に、PMの捕集に伴う圧力損失の増大が抑制されたハニカム構造体の提供を課題とするものである。
上記の課題を解決するため、本発明にかかるハニカム構造体は、「多孔質セラミックスで構成され単一の方向に延びて列設された複数の隔壁により区画された複数のセル、及び、複数の前記セルが一方向に開放したセルと他方向に開放したセルとが交互となるように、それぞれの前記セルの一端を封止する封止部を備えたハニカム構造体であって、水銀圧入法により測定された前記隔壁の気孔直径の平均値が1μm〜20μmであり、前記気孔直径を常用対数で表した場合の気孔径分布の標準偏差が0.20以下であり、前記隔壁の厚さd、前記セルが延びる軸方向の前記セルの長さL、及び前記軸方向の前記封止部の長さDは、d<DかつD<L/10の関係にある」ものである。
「セラミックス」は特に限定されず、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、アルミナ、ムライト等を使用することができる。また、封止部を構成する材料も特に限定されないが、隔壁を構成するセラミックスと同一、あるいは、熱膨張率が近い材料であれば、熱膨張率の差異に起因する剥離や亀裂が生じ難く、好適である。
「水銀圧入法」は、圧力をかけて水銀を開気孔に浸入させ、圧力値とそのときに浸入した水銀の体積とを用いて、円柱状と仮定した気孔の径をWashburnの式から算出する方法であり、セラミックス成形体について規定されたJIS R1655を準用することができる。また、「水銀圧入法により測定された気孔直径の平均値」とは、累積気孔体積が全気孔体積の50%のときの直径(メディアン径)を指している。
封止部の軸方向の長さが短すぎる場合、セルに流入したガスは隔壁を通過するよりも優先的に封止部を通過して流出してしまうため、隔壁によるPMの捕集機能を充分に発揮することができない。また、封止部が短すぎる場合は、隔壁と当接する面積も小さくなるため、接合力の不足により封止部がセルから脱落してしまうおそれもある。一方、封止部の軸方向の長さが必要以上に大きい場合は、ガスが流通可能な隔壁の面積が少なくなり、圧力損失が増大すると共に、PMの捕集効率が低下する。
発明者は、検討の結果、隔壁の厚さd、軸方向のセルの長さL、及び軸方向の封止部の長さDについて、d<DかつD<L/10の関係を満たす範囲に設定することで、上記の相反する作用の調和を図ることができることを見出した。
従って、上記構成の本発明によれば、隔壁の気孔径及び気孔径分布を、PMの捕集に適した範囲に制御し、かつ、隔壁を通過せず優先的に封止部から流出するガスの流れを抑止でき、また、封止部がセルから脱落するおそれを低減できる程度に、封止部を短くすることにより、ガスが通過可能な隔壁の面積を大きく確保することができる。これにより、初期圧力損失の小ささを維持しつつ、高い捕集効率でPMを捕集することができる。なお、DとLとの関係は、D<L/15であればより望ましく、D<L/20であれば更に望ましい。
本発明にかかるハニカム構造体は、「前記多孔質セラミックスは、炭化珪素である」ものとすることもできる。
上記構成の本発明によれば、多孔質セラミックスとして、高強度で耐熱性に優れる炭化珪素を用いることにより、空隙の多い構造であり、高温の環境下で使用されるハニカム構造体として、より適したものとなる。また、優れた耐熱性を有することにより、堆積したPMを燃焼させるためにハニカム構造体を加熱する場合であっても、加熱による変形や溶損の生じ難いものとなる。
本発明にかかるハニカム構造体は、上記構成に加え、「前記封止部は、炭化珪素で構成されている」ものとすることができる。
上記構成の本発明によれば、隔壁を構成するセラミックスと同一の材料で封止部を構成させることにより、隔壁と封止部との間に熱膨張率の差異に起因する剥離や亀裂が生じ難く、亀裂等を介してガスが流出するおそれを低減することができる。また、高強度で耐熱性に優れる炭化珪素を、隔壁に加えて封止部にも用いることにより、ハニカム構造体全体における機械的強度や耐熱性を、より高めることができる。
以上のように、本発明の効果として、排気中のPMの捕集効率が高く、初期圧力損失が小さいと共に、PMの捕集に伴う圧力損失の増大が抑制されたハニカム構造体を提供することができる。
以下、本発明の最良の一実施形態であるハニカム構造体について、図1乃至図5に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態のハニカム構造体の構成を模式的に示す側断面図であり、図2は図1のハニカム構造体におけるガスの流れを模式的に示す側断面図であり、図3は平均気孔直径と初期圧力損失との関係を示すグラフであり、図4は平均気孔直径と圧縮強度との関係を示すグラフであり、図5は本実施形態のハニカム構造体についてPM堆積量の増加に伴う圧力損失の変化を比較例と対比して示すグラフである。なお、本実施形態では、本発明のハニカム構造体を、ディーゼルエンジンの排気からPMを捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、「DPF」と称する)として適用する場合を例示する。
本実施形態のハニカム構造体10は、図1に示すように、多孔質セラミックスで構成され単一の方向に延びて列設された複数の隔壁2により区画された複数のセル3、及び、複数のセル3が一方向に開放したセル3aと他方向に開放したセル3bとが交互となるように、それぞれのセル3a,3bの一端を封止する封止部6を備え、水銀圧入法により測定された隔壁2の気孔直径の平均値が1μm〜20μmであり、気孔直径を常用対数で表した場合の気孔径分布の標準偏差が0.20以下であり、かつ、隔壁の厚さd、軸方向のセルの長さL、及び軸方向の封止部の長さDについて、d<DかつD<L/10の関係を満たすものとされている。
加えて、本実施形態では、隔壁2を構成する多孔質セラミックス、及び、封止部6を構成する材料は、共に炭化珪素である。
かかる構成のハニカム構造体10では、図2に一点鎖線で示したように、PMを含むディーゼル排気をセル3aの開端から流入させると、ガスは多孔質の隔壁2を通過してから、他方向に開口したセル3bの開端から流出する。そして、ガスが隔壁2を通過する際に、隔壁2の表面及び気孔内にPMが捕集される。
次に、気孔径と初期圧力損失、及び気孔径と圧縮強度との関係について検討した結果を示す。検討には、平均気孔直径以外は上記の構成であり、気孔率約57%、セル密度169セル/平方インチ(2.62セル/10−3)であるハニカム構造体について、平均気孔径(直径)の異なるものを複数作製して使用した。また、初期圧力損失は、サイズが直径約100mm,長さ約140mmの円柱状のハニカム構造体を、PMを全く捕集させていない状態でガス流路に設置し、流量5Nm/minの空気を流通させ、流入側と流出側の差圧を測定して求めた。なお、平均気孔径は、島津製作所製ポアサイザ9310を使用して水銀圧入法により測定した気孔径分布からメディアン径として求めた。また、気孔率は、アルキメデス法により求めた。
その結果、図3に示すように、平均気孔直径が約25μm以上の範囲では、初期圧力損失はほぼ一定で6kPa未満と小さいが、平均気孔径が十数μmより小さくなると、初期圧力損失は急激に増大した。
一方、上記の複数のハニカム構造体について、ガスを流通させる方向(A axis)及びこれに直交する方向(B axis)の圧縮強度を、自動車技術会規格JASO M505−87に基づいてクロスヘッドスピード1mm/minで測定し、気孔径と圧縮強度との関係について調べた。その結果を、図4に示す。一般的に、機械的強度と気孔径とは相反する関係にあるが、図4においてもその傾向は顕著であり、20μm前後を境として、それより気孔直径が大きくなると、圧縮強度は大きく低下した。
以上の結果より、気孔径が大きいほど初期圧力損失を小さくすることができるが、機械的強度をある程度維持しつつ、気孔直径を大きくすることができる限度は、20μm程度であると考えられた。従って、上記のように、気孔直径の平均値が1μm〜20μmに設定された本実施形態のハニカム構造体によれば、機械的強度をある程度維持しつつ、初期圧力損失を小さく抑えることができる。
以下、本実施形態の具体的な実施例について、比較例と対比しつつ説明する。実施例及び比較例1,2のハニカム構造体は、何れも平均粒径(直径)12μmのSiC粉末75重量%、平均粒径(直径)10μmのSi粉末20重量%、及び、平均粒径(直径)15μmのC粉末5重量%の混合粉末を原料とし、この原料混合粉末を有機バインダー(メチルセルロース)、水、界面活性剤と混合、混練し、次いで、混練物を押出成形によりハニカム状に成形した。このとき、押出成形の金型の設定により、実施例及び比較例1,2の隔壁の厚さを異なるものとした。その後、上記と同一の混練物で各セルの一端を封止し、それぞれの成形体を非酸化性雰囲気下で2300℃,10分間焼成することにより、ハニカム構造体を作製した。なお、それぞれのハニカム構造体は、何れもセル密度を200セル/平方インチ(3.10セル/10−3)とし、直径約140mm,長さ約150mmの円柱状とした。
得られたハニカム構造体について、上記の装置を用いて、水銀圧入法により気孔径分布を測定し、累積気孔径分布より平均気孔直径(メディアン径)を求め、更に、水銀圧入法により測定された気孔直径を常用対数で表した場合の気孔径分布の標準偏差を求めたところ、平均気孔径は8μm、標準偏差は0.16であった。
実施例及び比較例1,2について、隔壁の厚さd、軸方向のセルの長さL、及び軸方向の封止部の長さDの関係を、それぞれ表1に示す。すなわち、d<DかつD<L/10の条件の内、比較例1はD<L/10を満たさず、封止部がセルの長さに対して長すぎる例であり、比較例2はd<Dを満たさない例である。
Figure 2009011910
これらの実施例及び比較例1,2のハニカム構造体について、圧力損失の評価を行った結果を図5に示す。評価は、ガス流路に設置したハニカム構造体に、PMを含むガスを流量5Nm/minで流通させ、PMの堆積量の増加に伴う圧力損失の変化を測定することにより行った。
図5に示されるように、PMの捕集が開始された直後の段階では、比較例1と実施例の圧力損失にさほどの差はないのに対し、PMの捕集が進むにつれて、比較例1では実施例に比べて大きく圧力損失が増大した。これは、比較例1では、実施例に比べて、ガスを流通させるために有効な隔壁の面積が小さいため、PMの堆積がガスの通過抵抗に及ぼす影響がより大きいためと考えられた。
比較例2では、封止部の一部が脱落して、両端が開放するセルが生じたために、その部分では隔壁を通過することなくハニカム構造体からガスが流出した。そのため、充分にPMの捕集を行うことができず、圧力損失の評価も正しく行うことができなかった。
以上のように、「水銀圧入法により測定された気孔直径の平均値が1μm〜20μm」「気孔直径を常用対数で表した場合の気孔径分布の標準偏差が0.20以下」の二要件に加え、封止部の軸方向の長さが、隔壁の厚さ及び隔壁の軸方向の長さに対して適切に設定されることにより、実用的なDPFとして適したハニカム構造体となると考えられた。そして、封止部の長さを、d<DかつD<L/10の関係を満たす範囲に設定することにより、隔壁を通過することなく優先的に封止部から流出するガスの流れを防止し、また、封止部がセルから脱落するおそれを低減できる程度に、封止部を短くすることができる。これにより、ガスが通過可能な隔壁の面積を大きく確保して、初期圧力損失の小ささを維持しつつ、高い捕集効率でPMを捕集することができると考えられた。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、多孔質セラミックスとして炭化珪素を用いた場合を例示したが、これに限定されず、窒化珪素、コージェライト、アルミナ、ムライト等を使用することができる。また、熱膨張率が小さく耐熱衝撃性に優れたチタン酸アルミニウム等を使用することもできる。
また、本発明のハニカム構造体をDPFとして適用する場合を例示したが、これに限定されず、例えば、ガソリンエンジンやボイラー等の内燃機関から排出されるガスを浄化するフィルタとして、広く適用することができる。
本実施形態のハニカム構造体の構成を模式的に示す側断面図である。 図1のハニカム構造体におけるガスの流れを模式的に示す側断面図である。 平均気孔直径と初期圧力損失との関係を示すグラフである。 平均気孔直径と圧縮強度との関係を示すグラフである。 本実施形態のハニカム構造体についてPM堆積量の増加に伴う圧力損失の変化を比較例と対比して示すグラフである。
符号の説明
2 隔壁
3,3a,3b セル
6 封止部
10 ハニカム構造体

Claims (3)

  1. 多孔質セラミックスで構成され単一の方向に延びて列設された複数の隔壁により区画された複数のセル、及び、複数の前記セルが一方向に開放したセルと他方向に開放したセルとが交互となるように、それぞれの前記セルの一端を封止する封止部を備えたハニカム構造体であって、
    水銀圧入法により測定された前記隔壁の気孔直径の平均値が1μm〜20μmであり、
    前記気孔直径を常用対数で表した場合の気孔径分布の標準偏差が0.20以下であり、
    前記隔壁の厚さd、前記セルが延びる軸方向の前記セルの長さL、及び前記軸方向の前記封止部の長さDは、d<DかつD<L/10の関係にある
    ことを特徴とするハニカム構造体。
  2. 前記多孔質セラミックスは、炭化珪素であることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
  3. 前記封止部は、炭化珪素で構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハニカム構造体。
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