JP2009007935A - ターボチャージャ - Google Patents

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Abstract

【課題】
ホワール音対策で円周溝13を設けると、油膜強度を確保する面積が減少し、外周面が摩耗しやすくなるため浮動ブッシュ2に充分な耐摩耗性を確保する。
【解決手段】
回転軸1と、その回転軸1と摺動接触する円筒形状の浮動ブッシュ2と、その浮動ブッシュ2の外周側において浮動ブッシュ2と摺動接触する軸受9とからなる浮動ブッシュ軸受において、浮動ブッシュ2の外周面に表面硬化処理を施す。本発明によれば、表面硬化処理として例えばTiNコーティングを施すことにより、表面硬度が向上して、耐摩耗性の向上が可能となる。
【選択図】図2

Description

本発明はターボチャージャの浮動ブッシュ軸受に関し、特にタービンインペラの回転をコンプレッサインペラに伝達するタービン軸を支えている軸受を有するターボチャージャの浮動ブッシュ軸受に関する。
ターボチャージャは、エンジンの排気ガスを利用し、エンジンに圧縮した空気を過給する装置である。
高速軽荷重で回転する回転軸をもつ軸受装置は回転に伴い潤滑油膜にオイルホワールと呼ばれる自励振動が発生し振動騒音となる。そのため、振動抑制に浮動ブッシュの中央に円周方向の溝を設けたり、浮動ブッシュ外周面とハウジング内周面の間の軸受すきま半径を大きくしたりしている(例えば非特許文献1参照)。
一方、摺動部の耐摩耗性向上方法として溶射皮膜が知られている(例えば特許文献3参照)。しかし、溶射法は溶融を利用するため皮膜処理時に高い温度を必要とするため低融点合金、例えば亜鉛、を多く含む金属に対しては不向きである。低融点金属は高温成膜下で溶融,蒸発し性質・形状に悪影響を与えるため低温での成膜が望ましい。
そのため、一般的に溶射法は亜鉛を多く含有する高力黄銅には適さない。
特公平5−36486号公報 特公昭53−044135号公報 特開2004−346417号公報 山本雄二、兼田さだ宏(「さだ」は木へんに貞と表記)共著「トライボロジー」理工学社、1998年2月28日発行P93−P95
上記したように、浮動ブッシュの外周面に円周溝を設けると油膜強度を確保する面積が減少するため、従来の高力黄銅系合金を使用した場合、溝のない浮動ブッシュよりも外周面が摩耗しやすくなると言う問題がある。
また、軸外部からの固体粒子の侵入などによる異物が起こす摩耗なども考えられる。
そこで、本発明の目的は上記課題に鑑みて、円周溝を設けた浮動ブッシュに十分な耐摩耗性を与えることである。
上記目的を達成するために、本発明の浮動ブッシュは高力黄銅系合金若しくは鉄系合金製で、当該浮動ブッシュに低温プラズマPVD法(イオンプレーティング法)を用い、外周面若しくは内外周両面に硬化皮膜処理を施したものである。
本発明によれば、浮動ブッシュの母材に比べ表面の硬度が向上し、摺動面が非金属的性質となるため摩擦係数が小さくなり、耐摩耗性が向上する。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。尚、図面において同一部分は同一符号にて説明している。
図1に基づき本発明が実施されるターボチャージャの基本構成を説明する。
図示省略されるエンジンの排気ガスにより、図1に示すタービンインペラ3が回転しタービンインペラ3と一体となっている回転軸1と、コンプレッサインペラ4が回転する。コンプレッサインペラ4が回転することで空気を加速・圧縮しエンジンへ過給する。
このときに回転する回転軸1の垂直方向の荷重を支えるのが浮動ブッシュ2でありハウジング5である。
回転軸1は高速で回転するため、図2に示すように回転軸1と浮動ブッシュ2、浮動ブッシュ2と軸受9(ハウジング5の摺動部分)のすきまにそれぞれ内周側および外周側油膜10,11を供給する構造がとられている。これを浮動ブッシュ軸受という。浮動ブッシュ軸受では、回転軸1,浮動ブッシュ2,軸受9のすきまに形成される油膜により制振効果が得られる。
また、ターボチャージャの回転軸を支える軸受の浮動ブッシュ材として従来、摺動性銅基合金(例えば特許文献1参照)や高力黄銅系合金(例えば特許文献2参照)が用いられている。
浮動ブッシュ軸受では浮動ブッシュ2が回転することにより回転軸1と浮動ブッシュ2の速度差が小さくなり内周側油膜10に働くせん断応力は小さくなる、そのためせん断力に比例するエネルギー損失が小さくなる。
通常、浮動ブッシュ2と回転軸1,浮動ブッシュ2と軸受9の間には潤滑油が供給され内周側および外周側油膜10,11が形成されているが、始動・停止時などには潤滑油が十分に供給されず浮動ブッシュ2と回転軸1、浮動ブッシュ2と軸受9は摺動する。また、異物付着などによりタービンインペラ3もしくはコンプレッサインペラ4のバランスが悪くなると、軸受に加わる負荷が大きくなるため、潤滑油に加わる圧力が大きくなり、潤滑油膜厚さが減少するため、浮動ブッシュ2と軸受9は摺動する。
本発明を適用した浮動ブッシュの基本構成を図2に基づき説明する。
図2(a)は、浮動ブッシュ2の軸方向に垂直な面における断面図、図2(b)は側面図である。
浮動ブッシュ軸受は、回転軸1と軸受9の間に円筒形状の浮動ブッシュ2を設けた構成となっている。
浮動ブッシュ2は、内周面,外周面ともに真円に加工され、外周面の円周方向に円周溝13が加工されていて、内周から外周へ貫通する給油孔12が設けられている。また材質は高力黄銅系合金で低温プラズマPVD法(イオンプレーティング法)を用いて外周面にTiNコーティングを施している。
回転軸1の外周、軸受9の内周はともに真円である。
一般に、TiNコーティングを施すことにより、表面が高硬度,低摩擦係数になり、耐摩耗性,耐焼付性を与える特徴がある。
図示省略されるエンジンの排気ガスにより、図1に示すタービンインペラ3が回転すると、タービンインペラ3と一体となっている回転軸1が回転し、それに連れて浮動ブッシュ2も回転を始める。回転に伴い、浮動ブッシュ2には遠心力が作用する。
一般に、図2の浮動ブッシュ2の円周溝13は荷重を支えないため、円周溝13が設けられていない場合よりも油膜厚さが減少し、偏心率が大きくなる。一般に、偏心率が大きくなることで軸受の油膜の安定性が良くなり、オイルホワールを抑えられることが知られている。(例えば非特許文献1参照)だが、同時に浮動ブッシュ2と軸受9が摺動しやすくなる。以上のことから、表面に硬化処理を施すことで、摺動でおこる摩耗を抑制し長寿命化に効果がある。
次に本発明の実施例をより具体的に説明する。
本発明の実施例として、従来使用している浮動ブッシュ2の外周面に低温プラズマPVD法(イオンプレーティング法)で硬質皮膜のコストがもっとも低いTiNコーティングを施したものと、従来品とを比較した。従来品は母相がα+β相の混合組織である高力黄銅合金である。
耐摩耗性を比較するため、摩耗促進過酷試験を行った。摩耗が生じるように図1のターボチャージャで、図2の潤滑油の内周側および外周側油膜10,11の厚さが減少し、摺動面が接触するように浮動ブッシュ2の外周面の負荷を通常起こりえないほど大きく(PV値≒650[MPa・m/s])して30分間回転軸1を回転させた。以上のような条件で、従来品とTiNコーティングを施した従来品との耐摩耗性を比較した結果、従来品では外周面に摺動跡が見られ、直径で2[μm]摩耗したが、TiNコーティングを施こしたものは摺動跡もなく、まったく摩耗していない。よって、TiNコーティングを施すことで、耐摩耗性の向上を図ることができる。
更に、過酷条件として硬質の異物が入った場合を想定し、図1のターボチャージャで潤滑油供給路6より、ハウジング砂型の鋳砂を投入し、15万[r/min ]で10分間回転軸1を回転させた。このときの摺動面の負荷は通常通りとした(PV値≒15[MPa・m/s])。以上のような条件で、高力黄銅の従来品とTiNコーティングを施した従来品との耐異物性を比較した。結果、従来品が直径で14〜22[μm]摩耗したのに対し、TiNコーティングを施したものは直径で0〜9[μm]摩耗とほぼ半分以下になる。よって、TiNコーティングを施すことで、表1のように耐異物性の向上も図れる。
Figure 2009007935
本実施例によれば、母材を鉄系合金とした場合には、硬質皮膜の密着性が向上し、材料コスト,製造コストの低減に効果がある。
また、母材を高力黄銅系合金製とした場合には、硬質皮膜が無くなっても、浮動ブッシュが摩耗・焼付きを起こし難いと言う利点がある。
本実施例の最良の形態は、浮動ブッシュ材に高力黄銅系合金を用い、低温プラズマPVD法(イオンプレーティング法)による硬質皮膜をもっとも処理コストを抑えられるTiN硬質皮膜したものである。
本発明は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンのターボチャージャだけでなく、高速回転する回転軸を浮動ブッシュで軸受けしている回転装置に広く適用できる。
本発明になるターボチャージャの軸方向断面図である。 本発明の浮動ブッシュ軸受の実施形態を示し、(a)は軸垂直面断面図、(b)は側面図である。
符号の説明
1 回転軸
2 浮動ブッシュ
3 タービンインペラ
4 コンプレッサインペラ
5 ハウジング
6 潤滑油供給路
7 スラストカラー
8 スラスト軸受
9 軸受
10 内周側油膜
11 外周側油膜
12 給油孔
13 円周溝

Claims (7)

  1. 回転軸と、前記回転軸の一方の端部に取り付けられたタービンインペラと、他方の端部に取り付けられたコンプレッサインペラと、前記回転軸を収容するハウジングと前記ハウジング内に収容され、前記回転軸の外周に内周側が摺動接触する断面真円形状の円筒状浮動ブッシュと、前記浮動ブッシュの外周側に摺動接触する軸受とから構成されるターボチャージャにおいて、
    前記浮動ブッシュの外周面に円周溝があり、
    かつ、前記浮動ブッシュの外周面に、硬質皮膜処理を施したことを特徴とするターボチャージャ。
  2. 前記浮動ブッシュの内周面に硬質皮膜処理を施したことを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャ。
  3. 前記浮動ブッシュ材質が高力黄銅系合金で、前記硬質皮膜処理がTiNコーティングであることを特徴とする請求項1若しくは2に記載のターボチャージャ。
  4. 前記浮動ブッシュ材質が高力黄銅系合金で、前記硬質皮膜処理がTiCNコーティングであることを特徴とする請求項1若しくは2に記載のターボチャージャ。
  5. 前記浮動ブッシュ材質が高力黄銅系合金で、前記硬質皮膜処理がTiAlNコーティングであることを特徴とする請求項1若しくは2に記載のターボチャージャ。
  6. 前記浮動ブッシュ材質が高力黄銅系合金で、前記硬質皮膜処理がCrNコーティングであることを特徴とする請求項1若しくは2に記載のターボチャージャ。
  7. 前記浮動ブッシュ材質が鉄系合金で、前記硬質皮膜処理がTiNコーティングであることを特徴とする請求項1若しくは2に記載のターボチャージャ。
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