JP2009007387A - 植物油廃油配合重油 - Google Patents

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Abstract

【課題】植物油廃油として液状の菜種油や大豆油等や、固状のヤシ油やパーム油などをA重油に配合してA重油1号の品質品質規格に適合した植物油廃油配合重油にする。
【解決手段】常温で液状の植物油廃油とA重油とからなり、植物油廃油を20〜40容量%含むようA重油に対し配合し、乳化機で攪拌混合すれば、乳化状を持続する植物油廃油配合重油が得られる。また、常温で固状の植物油廃油を加温して液状にしたものとA重油とからなり、植物油廃油を20〜30容量%含むようA重油に対し配合し、乳化機で攪拌混合すれば、乳化状を持続する植物油廃油配合重油が得られる。
【効果】植物油廃油配合重油は重油特有の異臭が無く作業環境を改善し、燃焼炉用燃料等として硫黄分、残留炭素、窒素分の濃度が低く、大気汚染緩和や植物油使用による地球温暖化防止にも貢献する。
【選択図】 なし

Description

本発明は植物油である、常温で液状の菜種油や大豆油などや、固状のヤシ油やパーム油などの廃棄される状態のものをA重油に配合して有用な植物油廃油配合重油にしようとするものである。
従来、素揚げものやてんぷら、フライなどに使用される植物油には菜種油や大豆油など常温で液状のものとヤシ油やパーム油など固状のものとがあるが、これら植物油は使用を繰り返すと酸化物等が蓄積して不純なものとなり、使用に適さなくなり廃棄処分される。本出願において使用済みとなり廃棄される状態の植物油を植物油廃油と略記するが、植物油廃油はかつてそのまま下水や河川に流し捨てたり、凝固剤により固化処理して捨てたり、焼却されたり、土中に埋められたりしていたので公害を招くのみであった。これを改善すべく、液状の植物油廃油の場合、軽油に混合してディーゼル代替燃料として使用されているが、冬季の使用で流動性が問題となり、燃料フィルターの目詰まりを招くこともあり、燃料として品質基準に適合するものが殆どないとも謂われており、設備費がかさみ経済性にも問題があり、製造時の洗浄排水の処理や副製化学品の処理も問題になっていて植物油廃油利用の方策としてはいまだ定着していない。
ヤシ油やパーム油などは常温で固状なので、これらの植物油廃油をそのまま燃料とするのは容易でなく、主に家畜の飼料として利用されているが、病害遺伝子の移転が懸念されるので食品衛生上問題があり、他の利用方法が求められている。
従来、特許文献1によれば、植物油廃油をメタノールとエステル交換反応させ、脂肪酸メチルエステルとしたものがディーゼル燃料として好適であるとされている。また、特許文献2によればディーゼルエンジンの代替燃料として植物油廃油と重油とからなるもが示され重油を20〜90容量%配合するとしているが、均一な液状物が得られるか否か甚だ疑問があるばかりでなく、上述のごとく、植物油廃油は軽油と混合してさえいまだ充分に実用化されていない。同一文献によれば、代替燃料により排ガス中の窒素酸化物濃度が高くなるので、これを抑えるのに重油含量が高い程よいと述べ、また噴射ノズル先端へのカーボンの蓄積を防止するため、植物油廃油をエステル化して用いたほうがよく、それが植物油廃油と重油との混合をよくする効果もあると述べているほどであるから、植物油廃油と重油とからなるディーゼルエンジン代替燃料には無理があるとみられる。
さらに、特許文献3によれば、植物油廃油とメタノールとのエステル交換反応で得られる高級脂肪酸メチルエステルを精製してディーゼル燃料とし、さらに副製物からグリセリンを分離し、残りの高級脂肪酸の一部をエステル化反応によりメチルエステルとし、高級脂肪酸のメチルエステルと高級脂肪酸を重油バーナー用燃料にするとあり、植物油廃油のかたちで重油バーナー用燃料に使用するということは示されていない。このほか、特許文献4には、植物油廃油と廃潤滑油を主原料としてその混合油を熱分解してガス化し、冷却して得られる凝縮液から不要成分を除去して改質燃料とすることが示されている。
特開平7−197047号 特開平10−17875号 特許第3028282号 特開2006−97671号
ここで植物油の化学成分について言及しておくが、液状植物油は主成分がそれぞれ組成を異にする各種脂肪酸のグリセリンエステルの混合物であり、固状植物油であるヤシ油は棕櫚科の核内部の含脂部から搾取される脂肪で主成分がミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、カプロン酸、カプリン酸等のグリセリンエステルで、凝固点が20〜28℃であり、石鹸やマーガリン製造等の原料としても使用されている。また、パーム油は棕櫚科の果肉から得られる脂肪で主成分はパルミチン酸、オレイン酸のグリセリンエステルで凝固点が27〜43℃であり、石鹸製造や脂肪酸やグリセリン製造の原料等にも使用されている。ヤシ油は俗称ココ椰子が、またパーム油は油椰子がそれぞれ原料となっており、ヤシ油とパーム油は含有脂肪成分が類似するけれども両者は互いに異なる素材である。
本発明は植物油廃油として液状の菜種油や大豆油などや、固状のヤシ油やパーム油などをA重油と如何にすればよく混和し、有用な植物油廃油配合重油が得られるかということである。
ここにおいて、本発明者は種々試みた結果、常温で液状の植物油廃油とA重油とからなり、植物油廃油を20〜40容量%含むよう、植物油廃油に固形異物が混在すれば濾過後、A重油に対し配合し、乳化剤の存在なしに市販の乳化機で攪拌混合すれば、乳化状になり、その状態を持続して広範囲の用途が期待できる、低濃度硫黄重油であるA重油1号の品質規格に適合した植物油廃油配合重油が得られることを見出し、また、常温で固状の植物油廃油を加温して液状としたものとA重油とからなり、植物油廃油を20〜30容量%含むよう、植物油廃油に固形異物が混在すれば濾過後、A重油に対し配合し、乳化剤の存在なしに市販の乳化機で攪拌混合すれば、乳化状になり、その状態を持続して同様に広範囲の用途が期待できる、A重油1号の品質規格に適合した植物油廃油配合重油が得られることを見出すに至った。なお、本願において配合用のA重油として低濃度硫黄のA重油1号または汎用のA重油15号を使用することができ、両者は硫黄分濃度に差があるだけで類似しており(第1 表参照)共にA重油1号の品質規格適合品をもたらしている。
このように、本発明は第一に、植物油廃油をA重油と配合しても両者が分離せず均一な液状物になるよう、市販の乳化機の採用により解決して植物油廃油配合重油として、A重油1号の品質規格適合品が得られた。
第二に、得られた植物油廃油配合重油はA重油1号代替品として各種の用途が期待できるのであるが、とくに重油燃焼炉用燃料としての用途も得られるようにその流動性を考慮して植物油廃油の好適な配合割合を検討した。その結果、植物油廃油配合重油の製造にあたり、菜種油や大豆油など液状の植物油廃油の場合、A重油に対する植物油廃油の配合割合が多すぎると、得られたものの燃焼炉での噴射状態が悪くなり、着火が円滑におこなわれなくなるばかりでなく、燃料としての流動点が上昇して冬季に支障をきたしやすく不適当であることに着目し、液状植物油廃油の場合、A重油に対する当該廃油の配合割合を製品中、20〜40容量%としておくと好適であり、また、ヤシ油やパーム油など固状植物油廃油の場合も、同様な理由により、これらを加温し液状にしたもののA重油に対する配合割合を製品中、20〜30容量%としておくと好適であることを見出したのである。
なお、ヤシ油やパーム油など固状の植物油廃油が菜種油、大豆油、ごま油など液状の植物油廃油を適宜含む場合も、上記を考慮して配合すれば、A重油1号の品質規格に適合した植物油廃油配合重油が得られる。ここにおいて、植物油廃油として固状のヤシ油やパーム油に液状の植物油廃油が適宜混合使用されているのは、てんぷらやフライ等食品の仕上がりの性状を良くするためとされている。
上記のごとく、植物油廃油をA重油に対し配合し、その混合方法を考慮すれば、乳化状態を持続して利用性の高いA重油1号の品質規格に適合したA重油1号代替品ともいうべき植物油廃油配合重油が得られ、得られる製品は配合前のA重油よりも硫黄分濃度が可成り低くなり、残留炭素濃度も低下して、燃料にすれば大気汚染を緩和する利点があるので、将来、植物油の生産価格が量産等により低減すれば本発明を植物油廃油の利用にとどめず、新規植物油にも適用することができるとものと考える次第である。
なお、上記における攪拌混合は、いずれの植物油廃油の場合も市販の乳化機として、縦型あるいは横型の円筒体内で高速回転する回転軸に多段にわたり硬質の線状突起物を放射状に固着した回転子を有するものでおこなうと好適であり、連続運転が可能である。
また、植物油廃油として常温で固状のヤシ油やパーム油などから植物油廃油配合重油を製造する本発明品の製造工程において、液状の植物油廃油を、適合する配合範囲内において工程の途中で適宜配合することができることはいうまでもない。
本発明において植物油廃油をA重油に配合し、その際の配合割合を考慮して攪拌混合方法を工夫した結果、植物油廃油配合による悪影響が認められず、産廃物としの植物油廃油が有効利用されることになり、省エネルギーに貢献してA重油1号の品質規格に適合した、A重油1号代替品として重油燃焼炉用燃料等広範囲の用途が期待できる有用な植物油廃油配合重油が得られた。植物油廃油配合重油は重油特有の異臭が消失しているので、取扱いの作業環境が改善される。
なお、本発明品の植物油廃油配合重油は使用したA重油における各成分の含有濃度よりも低下した濃度を示しており、それはA重油と各種植物油廃油それぞれの密度と両者における各成分の含有率の相違などに起因すると思われるが、なかでも硫黄分濃度が可成り低下しているので当該酸化物による大気汚染を緩和し、とくに、配合相手がA重油15号の場合にはA重油1号の場合に比し硫黄分濃度の低下効果が大であるから、その使用価値が大きい。また、植物油の利用によりCO2 の削減が計上されれば地球温暖化防止にも貢献する。
植物油廃油が液状の菜種油や大豆油などの場合、植物油廃油とA重油とからなり、植物油廃油を20〜40容量%含むよう、固形異物を濾過除去してから、濾液をA重油に対し配合し、乳化剤の添加なしに、市販の乳化機で攪拌混合すれば、乳化状になり、その状態を持続してA重油1号の品質規格に適合する植物油廃油配合重油が得られる。
また、植物油廃油が固状のヤシ油やパーム油などの場合は、植物油廃油とA重油とからなり、植物油廃油を20〜30容量%含むよう、加温して液状とした植物油廃油に固形異物が混在すれば遠心分離機や濾過器を適宜使用して濾過後、A重油に対し配合し、乳化剤の存在なしに、市販の乳化機で攪拌混合すれば、乳化状になり、その状態を持続してA重油1号の品質規格に適合する植物油廃油配合重油が得られる。なお、市販の乳化機はいずれの場合も、特開2003−159519号に開示されているものに準じたものが好適である。
以下に、本発明の植物油廃油配合重油を得るに好適な実施例を実施例1ないし実施例4に示し、得られた製品の性状分析を専門の検定機関に依頼し、その試験結果をそれぞれ表2ないし表5に示す。なお、本実施例で使用した市販のA重油1号およびA重油15号の品質測定値をあらかじめ、表1に示しておく。
Figure 2009007387
液状の植物油廃油である菜種油とA重油1号とからなり、菜種油を20容量%含むよう、菜種油から遠心分離機および濾過器を使用して液中の固形異物を濾過除去してから、濾液をA重油1号に対し配合し、乳化剤の添加なしに、市販の乳化機(回転軸の回転数15,000rpm、以下同様)を用いて攪拌混合したところ乳化状になり、その状態を持続し、表2に示すごとくA重油1号の品質規格に適合する植物油廃油配合重油を得た。
Figure 2009007387
その結果、すべての実施例に共通するが、得られる配合製品は重油特有の異臭が消失しており、植物油廃油が消臭効果を有していることが判明している。表2をみると、A重油1号が含有する成分の濃度が減少し、A重油1号の規定濃度値に対し硫黄分濃度は質量%で0.032%と可成り低く、残留炭素濃度も0.18%と低いものになっている。ここで、硫黄分の濃度が低いということは、燃焼した場合の酸化物濃度が希薄となることを意味するので、大気汚染の緩和に貢献し、残留炭素濃度も低いということは燃焼時、煤煙が希釈されるので好ましいことである。そしてこれらの傾向は他の実施例にも共通している。
液状の植物油廃油である菜種油とA重油15号とからなり、菜種油を30容量%含むよう、菜種油から遠心分離機および濾過器を使用して液中の固形異物を濾過除去してから、濾液をA重油15号に対し配合した以外は実施例1と同様におこない、表3に示すごとくA重油1号の品質規格に適合する植物油廃油配合重油が得られた。
Figure 2009007387
表3をみると、硫黄分はA重油15号の配合前の濃度0.63%とA重油1号の規定濃度値0.5%に対しも0.39%と低く、残留炭素濃度も0.17%と低い。なお、実施例1の場合に比し植物油廃油の配合比が増加したことで、流動点は−17.5℃から−12.5℃に若干上昇しているので、厳冬の使用時には外気温度に注意を要する。また、総発熱量(kj/kg)は植物油廃油を30容量%も配合した割には、44,940から42,970に数%低下していることが別途認められ、希釈がさほど影響していないことも判明しており、燃料としての実用性が認められる。
固状の植物油廃油であるパーム油とA重油1号とからなり、パーム油を20容量%含むよう、40℃に加温して液状となし、次いで、遠心分離機および濾過器を使用して液中の固形異物を濾過除去後、A重油1号に対し配合し、乳化剤の添加なしに、市販の乳化機を用いて攪拌混合したところ乳化状になり、表4に示すごとくA重油1号の品質規格に適合する植物油廃油配合重油が得られた。
Figure 2009007387
表4をみると、硫黄分濃度はA重油15号の配合前の成分濃度0.63%ならびにA重油1号の規定値0.5%以下に対し0.045%と可成り低く、硫黄分濃度の低下効果が顕著であり、残留炭素濃度も0.22%と低い。なお、流動点に関し、液状の植物油廃油(実施例1)と固状の植物油廃油(実施例3)の場合で差がなく、ともに−17.5℃となっている。
固状の植物油廃油であるパーム油とA重油1号とからなり、パーム油を30容量%含むよう、A重油1号に対し配合した以外は実施例3と同様におこない、表5に示すごとくA重油1号の品質規格に適合する植物油廃油配合重油が得られた。
Figure 2009007387
表5をみると、硫黄分濃度はA重油1号の規定値0.5%以下に対し0.041%と可成り低く、残留炭素濃度も0.27%と低い。なお、配合比が実施例3の場合の20容量%に比し30容量%と増加したことにより、流動点が−17.5℃から−12.5℃に若干上昇しているので、厳冬の使用時には外気温度に注意を要する。
年間相当な量の排出が見込まれている植物油廃油を植物油廃油配合重油に組み込んで利用できるので、当該製品の産業を興し、相当量のA重油使用量が節減でき省エネルギーになる。とくに、配合相手としてA重油15号を選択すれば硫黄分濃度の低下効果が顕著な製品が得られるので大気汚染の一層の緩和がはかられ、また植物油廃油を使用するということで地球温暖化防止にも貢献し、国際的責任を果たす上で寄与することができる。

Claims (2)

  1. 常温で液状の植物油廃油とA重油とからなり、植物油廃油を20〜40容量%含むようA重油に対し配合し、乳化状に攪拌混合して得られるA重油1号の品質規格に適合する植物油廃油配合重油。
  2. 常温で固状の植物油廃油を加温して液状にしたものとA重油とからなり、植物油廃油を20〜30容量%含むようA重油に対し配合し、乳化状に攪拌混合して得られるA重油1号の品質規格に適合する植物油廃油配合重油。
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