JP2009096855A - 高発熱量燃料油組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ディーゼルエンジン用途にも使用でき、ハイカロリーで、環境負荷物質である硫黄分が低く、フィルター目詰まりの原因となる残留炭素分も十分に低い燃料油組成物を提供する。
【解決手段】密度が0.89g/cm3以上で、硫黄分が0.3質量%以下で、セタン指数が45以上で、引火点が70℃以上で、10%残油の残留炭素分が0.03質量%以下で、流動点が−10℃以下で、HFRR試験での摩耗痕径が460μm以下で、総発熱量が39,500kJ/L以上で且つCCAIが840以下であることを特徴とする高発熱量燃料油組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、高発熱量燃料油組成物、特には、ボイラー、ガスタービン、工業炉等の外燃機器用途にも、自家発電や漁船等のディーゼルエンジン用途にも使用可能な高発熱量燃料油組成物に関するものである。
近年、地球温暖化問題、国家エネルギーセキュリティーの観点から、化石燃料の使用量削減が課題であり、燃費改善が強く求められ、種々の研究開発が続けられている。そして、現在、我が国では、ボイラー、ガスタービン、工業炉等の外燃機器用途に加え、自家発電や漁船等のディーゼルエンジン用としても、A重油が広く使用されているため、発熱量の高いA重油(ハイカロリーA重油)が精力的に研究されている。
例えば、特許文献1(特開2001−055587号公報)には、高カロリーで、かつゴム膨潤性が小さく、各種の燃焼機器に適した燃料油の提供を目的とした発明が記載されており、分解軽油に直脱軽油、軽質脱硫軽油又は脱硫脱ろう軽油を配合することにより、燃料油の総発熱量を下げずに、アニリン点を高くできることが記載されている。具体的には、50℃における動粘度が20cSt以下で、硫黄分が0.3wt%以下で、引火点が60℃以上で、アニリン点が40℃以上で、かつ総発熱量が9,400kcal/L以上である燃料油が記載されている。また、例えば、特許文献1の実施例には、かかる燃料油として、動粘度2.99cSt、硫黄分0.04wt%、総発熱量9,550kcal/L、残留炭素0.22%、セタン指数41の燃料油が記載されている。
また、特許文献2(特開2001−098287号公報)には、硫黄分を0.1wt%以下の所望のレベルに合わせようとすると、低密度で低発熱量の燃料となってしまうという問題を解決することを目的として、重油の直接脱硫により得られる重質の軽油留分を用いて製造した、硫黄分が0.1wt%以下で、密度が0.8762g/cm3以上の燃料油の発明が記載されている。また、例えば、特許文献2の実施例には、密度0.8829g/cm3、硫黄分0.06wt%、セタン指数41、発熱量9,480kcal/Lの燃料油が記載されている。
さらに、特許文献3(特開2000−239675号公報)には、2環及び3環以上のアロマ分の合計量を調整することにより、発熱量が高くボイラー用に適しており、超低硫黄で環境に優しく、さらにセタン指数を特定値以上有することにより、内燃機関用としても使用できるA重油組成物に関する発明が記載されている。具体的には、全芳香族分15〜50容量%で、2環芳香族分と3環以上芳香族分の合計含有量が4〜13容量%で、硫黄含有量が0.03質量%以下で、かつ、10%残油の残留炭素分が0.2質量%を超え、更に、40以上のセタン指数を有することを特徴とする超低硫黄A重油組成物が記載されている。
特開2001−055587号公報 特開2001−098287号公報 特開2000−239675号公報
我が国では、ボイラー用の燃料としてA重油やC重油が使用されてきたが、ハウス加温機等には、燃料費の削減、CO2削減の為、ハイカロリーA重油が広く利用されてきた。該ハイカロリーA重油は、一般に汎用A重油と比較して発熱量が高く、燃費改善に寄与してきたが、着火性が悪いことから、ディーゼルエンジン用には使用できないという欠点があった。
一方、汎用A重油は、ディーゼルエンジンに使用されてきたが、硫黄分が高く、環境負荷が大きいこと、発熱量が低く、燃費が悪いこと、また、残留炭素分が多く、フィルター目詰まりが起きやすいこと等の問題があった。
近年、CO2削減の観点から、漁船や自家発電用ディーゼルエンジンの燃費改善が特に望まれているが、上述のように、ハイカロリーA重油は、着火性が悪いことから、ディーゼルエンジンには使用できない。
そこで、本発明の目的は、ディーゼルエンジン用途にも使用でき、ハイカロリーで、環境負荷物質である硫黄分が低く、フィルター目詰まりの原因となる残留炭素分も十分に低い燃料油組成物を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、脱硫軽油、低蝋分重質軽油、分解軽油、軽質高引火点高発熱量炭化水素等の特定の密度、蒸留性状等を有する石油系炭化水素を配合することにより、所望の性状を満足する燃料油組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の高発熱量燃料油組成物は、
・密度が0.89g/cm3以上で、
・硫黄分が0.3質量%以下で、
・セタン指数が45以上で、
・引火点が70℃以上で、
・10%残油の残留炭素分が0.03質量%以下で、
・流動点が−10℃以下で、
・HFRR試験での摩耗痕径が460μm以下で、
・総発熱量が39,500kJ/L以上で且つ
・CCAIが840以下である
ことを特徴とし、例えば、低蝋分重質軽油40〜70容量%、好ましくは50〜60容量%と、分解軽油15〜35容量%、好ましくは20〜30容量%と、脱硫軽油30容量%以下と、軽質高引火点高発熱量炭化水素30容量%以下、好ましくは20容量%以下とを配合して製造することができる。
本発明の高発熱量燃料油組成物は、ナトリウム含有量が0.1質量ppm以下で、カルシウム含有量が0.1質量ppm以下で、カリウム含有量が0.1質量ppm以下、バナジウム含有量が0.1質量ppm以下で且つ水銀含有量が0.1質量ppm以下であることが好ましい。
また、本発明の高発熱量燃料油組成物は、前記セタン指数が50以上であることが好ましい。
さらに、本発明の高発熱量燃料油組成物は、前記総発熱量が40,000kJ/L以上であることが好ましい。
また、本発明の高発熱量燃料油組成物は、脂肪酸低級アルコールエステルを1質量%〜5質量%含み、トリグリセリド含有量が0.01質量%以下で、低級アルコール含有量が0.01質量%以下で、酸価が0.13mgKOH/g以下で、有機酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸の総和)含有量が0.003質量%以下で且つ酸化安定性が0.12mgKOH/g以下であることが好ましく、該高発熱量燃料油組成物は、例えば、上記石油系炭化水素と共に、バイオディーゼルを1〜5容量%配合して製造することができる。
なお、本明細書で使用される各種パラメーターは、以下の方法に準拠して測定されたものをいう。
密度:JIS K 2249「原油及び石油製品密度試験方法」に規定された方法(15℃)
硫黄分:JIS K 2541−6「硫黄分試験方法(紫外蛍光法)」に規定された方法
セタン指数:JIS K 2204−1992「石油製品−軽油」に規定された方法
引火点:JIS K 2265−3「引火点の求め方」に規定された方法
10%残油の残留炭素分:JIS K 2270「残留炭素分試験方法」に規定された方法
流動点:JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」に規定された方法
HFRR試験での摩耗痕径:JPI−5S−50−98「軽油−潤滑性試験方法」に規定された方法
総発熱量:JIS K 2279「発熱量試験方法」に規定された方法
CCAI:ISO 8217「Specification of Marine Fuels」に規定された方法
脂肪酸低級アルコールエステル含有量(脂肪酸メチルエステル含有量):液体クロマトグラフィー法
トリグリセリド含有量:液体クロマトグラフィー法
低級アルコール含有量(メタノール含有量):酸素検出式ガスクロマトグラフ法
酸価:JIS K 2501「中和価試験方法」に規定された方法
有機酸含有量:水抽出イオンクロマトグラフ法
酸化安定性:ISO 12205の酸化安定性試験において、試料温度を95℃から115℃に変更し、試料350mL中に、酸素を供給量3L/h、供給圧98kPaにて、16時間供給した後、試料を氷で冷却して室温に戻す酸化試験を行う。酸化試験後の酸価から試験前の酸価を減じた値を酸化安定性とする。
ナトリウム含有量、カルシウム含有量、カリウム含有量、バナジウム含有量:プラズマ発光分光法
水銀含有量:原子吸光法
動粘度:JIS K 2283「原油及び石油製品の動粘度試験方法並びに石油製品粘土指数算出方法」
蒸留性状:JIS K 2254「燃料油蒸留試験方法」に規定された方法
本発明によれば、ディーゼルエンジン着火性が良好で、高カロリー、低硫黄、低残留炭素分を全て兼ね備えており、ボイラーや工業炉などの外燃機器用途に加え、自家発電や漁船などのディーゼルエンジン用途にも好適な燃料油組成物を提供することが可能となる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の燃料油組成物は、密度が0.89g/cm3以上で、硫黄分が0.3質量%以下で、セタン指数が45以上で、引火点が70℃以上で、10%残油の残留炭素分が0.03質量%以下で、流動点が−10℃以下で、HFRR試験での摩耗痕径が460μm以下で、総発熱量が39,500kJ/L以上で且つCCAIが840以下であることを特徴とする。本発明の燃料油組成物は、総発熱量が高く、低硫黄分であり、10%残油の残留炭素分が低く、かつセタン指数が高く、着火性の指標であるCCAI(Calculated Carbon Aromaticity Index)が比較的低いので、ボイラー、農業ハウス用加温機や工業炉などの外燃機関用途、並びに漁船などの船舶や自家発電などのディーゼルエンジン用途の燃料として好適に使用することができる。
本発明の燃料油組成物は、密度が0.89g/cm3以上、好ましくは0.89〜0.91g/cm3である。燃料油組成物の密度が0.89g/cm3未満の場合は、総発熱量の高い燃料油組成物が得られない場合がある。
本発明の燃料油組成物は、好ましくは5%留出温度が190〜250℃、より好ましくは200〜235℃である。190℃未満の場合、引火点が低くなる場合がある。250℃を超えると着火性が悪化する場合がある。
本発明の燃料油組成物は、好ましくは95%留出温度が380〜430℃、より好ましくは400〜420℃である。380℃未満の場合、充分な発熱量が得られない場合がある。430℃を超えると低温流動性や着火性が悪化する場合がある。
本発明の燃料油組成物は、総発熱量が39,500kJ/L以上、好ましくは40,000kJ/L以上である。本発明の燃料油組成物は、高発熱量であるため、燃費が向上すると共に、環境に対する負荷が低減され、ハイカロリー燃料油組成物として、ハウス加温機、ボイラー、工業炉などの外燃機器用途及び自家発電や漁船などのディーゼルエンジン用途に好適に使用できる。
本発明の燃料油組成物は、硫黄分が0.3質量%以下、好ましくは0.2質量%以下である。燃料油組成物中の硫黄分が少ない程、硫黄酸化物の排出量が少なくなり、好ましい燃料となる。硫黄分が0.3質量%を超えると、外燃機関用途においては燃焼機器や煙道などの腐食が問題となる場合があり、ディーゼルエンジン用途においては、排ガス処理触媒等の劣化が問題となる場合がある。
本発明の燃料油組成物は、HFRR(High Frequency Reciprocating Rig)試験での摩耗痕径が460μm以下、好ましくは400μm以下である。一般に、硫黄分が少ない燃料油は、潤滑性が低い傾向があり、また、上述のように、本発明の燃料油組成物は、硫黄分が0.3質量%以下であるが、本発明の燃料油組成物は、HFRR試験での摩耗痕径が460μm以下であるため、燃料供給系のポンプなどに対して良好な潤滑性を有している。
また、本発明の燃料油組成物は、セタン指数が45以上で且つCCAIが840以下である。一般に、密度が高く、総発熱量が大きい燃料油は、芳香族分が多く、パラフィン分が少ないため、セタン指数が低くなる傾向があるが、本発明の燃料油組成物は、セタン指数が高く、CCAIが低い(即ち、着火遅れが少ない)ため、着火性が良好であり、漁船などの船舶用や自家発電などのディーゼルエンジン用途に好適に使用することができる。なお、上記セタン指数は、好ましくは47以上であり、更に好ましくは50以上である。また、上記CCAIは、好ましくは837以下、更に好ましくは835以下である。
本発明の燃料油組成物は、流動点が−10℃以下、好ましくは−12.5℃以下、更に好ましくは−15.0℃以下である。本発明の燃料油組成物は、流動点が低いため、低温特性が良好であり、冬期など外気温が低下する場合でも、ハウス加温機用、ボイラー用、ディーゼルエンジン用として好適に使用できる。
また、本発明の燃料油組成物は、10%残油の残留炭素分が0.03質量%以下、好ましくは0.02質量%以下であり、更に好ましくは0.01質量%以下である。本発明の燃料油組成物は、10%残油の残留炭素分が低いため、燃料フィルターの詰まり問題が低減ないしは抑制され、また、ディーゼルエンジンのシリンダーやノズル等へのデポジットも低減ないしは抑制される。
さらに、本発明の燃料油組成物は、引火点が70℃以上、好ましくは73℃以上、更に好ましくは75℃以上である。本発明の燃料油組成物は、引火点が高いため、取扱が容易であるというメリットも有する。
加えて、本発明の燃料油組成物は、金属分が低いことが好ましく、具体的には、ナトリウム含有量、カルシウム含有量、カリウム含有量、バナジウム含有量及び水銀含有量が、金属元素としてそれぞれ0.1質量ppm以下であることが好ましい。これらの金属分が0.1質量%以下であることにより、エンジンやガスタービン等での摩耗を防ぐことができる。
本発明の燃料油組成物の製造方法については特に限定されないが、本発明の燃料油組成物に配合する基材としては、例えば、脱硫軽油、低蝋分重質軽油、分解軽油、軽質高引火点高発熱量炭化水素、バイオディーゼルが好ましく使用でき、これらを適宜組みあわせて配合することが好ましい。
<脱硫軽油>
本発明の燃料油組成物の配合に用いる基材としては、脱硫軽油が挙げられる。該脱硫軽油とは、直留軽油留分を水素化精製した留分である。ここで、直留軽油留分の水素化精製は、一般的な水素化精製の条件で行えばよい。本発明に係る燃料油組成物の基材として好適な脱硫軽油留分としては、例えば、5%留出温度が200〜250℃、95%留出温度が340〜380℃、硫黄分が10質量ppm以下の留分が挙げられる。該脱硫軽油は、低硫黄分であるので、燃料油組成物の硫黄分を下げる役割を果たす。なお、本発明の燃料油組成物中の脱硫軽油の配合量は、30容量%以下とすることが好ましい。
<低蝋分重質軽油>
本発明の燃料油組成物の配合に用いる基材としては、低蝋分重質軽油が好ましい。該低蝋分重質軽油とは、常圧蒸留装置から留出される5%留出温度が300〜330℃、95%留出温度が390〜460℃の重質軽油留分を水素化脱硫した後、脱蝋装置で蝋分を分解除去して得られる留分であり、例えば、5%留出温度が250〜310℃、95%留出温度が400〜430℃の留分が挙げられる。低蝋分重質軽油は、密度が比較的高く、総発熱量が高い留分であり、燃料油組成物の発熱量を上げる役割を果たすので、本発明の燃料油組成物の配合に好適に使用できる。なお、本発明の燃料油組成物中の低蝋分重質軽油の使用量は、通常40〜70容量%、更には50〜60容量%とすることが好ましい。
<分解軽油>
本発明の燃料油組成物に配合する基材としては、分解軽油も好ましい。該分解軽油とは、流動接触分解装置から留出される留分であり、例えば、5%留出温度が200〜250℃、95%留出温度が340〜380℃である留分が挙げられる。該分解軽油は、芳香族含有量が高く、高密度で、発熱量の高い留分であり、また、比較的流動点も低いので、燃料油組成物の総発熱量を上げ、流動点を下げる役割を果たすため、本発明の燃料油組成物の配合に好適に使用できる。なお、本発明の燃料油組成物中の分解軽油の使用量は、通常15〜35容量%、更には20〜30容量%とすることが好ましい。
<軽質高引火点高発熱量炭化水素>
本発明の燃料油組成物に配合する基材としては、軽質高引火点高発熱量炭化水素留分も挙げられる。該軽質高引火点高発熱量炭化水素とは、ノルマルパラフィン製造装置から残留分として得られるラフィネート留分のうち、5%留出温度が180〜210℃、95%留出温度が220〜260℃である留分を指す。軽質高引火点高発熱量炭化水素は、低硫黄分、高引火点で、流動点が極めて低い留分であるので、軽質高引火点高発熱量炭化水素留分を本発明の燃料油組成物に配合することにより、燃料油組成物の硫黄分を下げ、流動点を下げることができる。なお、本発明の燃料油組成物中の軽質高引火点高発熱量炭化水素留分の使用量は、通常30容量%以下、さらには20容量%以下が好ましい。なお、該軽質高引火点高発熱量炭化水素と上述の脱硫軽油との総配合量は、15容量%以上とすることが好ましい。
<バイオディーゼル>
本発明の燃料油組成物には、バイオディーゼルを配合してもよい。本発明において、バイオディーゼルとは、植物油、動物油及び魚油といった生物由来の油脂を原料にして化学処理して製造される脂肪酸低級アルコールエステルを指す。また、本発明において、脂肪酸低級アルコールエステルとは、炭素数が1〜4の直鎖状又は分枝鎖状アルコールを用いて脂肪酸をエステル化したものを指し、例えば、脂肪酸メチルエステル、脂肪酸エチルエステル、脂肪酸プロピルエステル、脂肪酸ブチルエステル又はこれらの混合物である。酸化安定性、収率の面からは、該脂肪酸低級アルコールエステルは、好ましくは脂肪酸メチルエステル、脂肪酸エチルエステル又はこれらの混合物であり、特に好ましくは脂肪酸メチルエステルである。本発明に係る燃料油組成物の一つは、バイオディーゼルを配合して製造するため、植物油由来の油脂から製造されるバイオディーゼルを使用した場合、二酸化炭素削減、即ち、地球温暖化対策としても有効である。また、バイオディーゼルを添加することにより潤滑性を向上させるメリットがある。
上記植物油としては、特に限定されるものではないが、コーン油、大豆油、オリーブ油、なたね油、ごま油、落花生油、ジャトロファ油及びパーム油を挙げることができる。また、上記動物油としては、特に限定されるものではないが、肝油、鯨油、牛脂、牛酪脂、馬油、豚油、羊脂を挙げることができる。また、上記魚油としては、特に限定されるものではないが、鮪油、鰯油、鰊油、イカ油、サンマ油を挙げることができる。
このようなエステル化油脂は、当業者に知られた任意の手段を用いて製造でき、例えば、酸又はアルカリの存在下で上記油脂とメタノール、エタノールなどの低級アルコールとを反応させ、水洗等で精製する方法によって製造することができる。
本発明の燃料油組成物中にバイオディーゼルを配合する場合、該バイオディーゼルの配合量は、燃料油組成物の全量に対して合計で1.0質量%以上とすることが好ましい。但し、バイオディーゼルは、品質が劣化し易く、スラッジの発生によりフィルターの目詰まり等を引き起こすおそれがあるため、バイオディーゼルを本発明に係る燃料油組成物に配合する場合には、燃料油組成物中の含有量を最大でも合計で5.0質量%に抑え、とりわけ脂肪酸メチルエステルを5.0質量%以下とすることが好ましい。
また、燃料油組成物中におけるトリグリセリド含有量は0.01質量%以下、脂肪酸低級アルコールエステルに対応する低級アルコール含有量は0.01質量%以下であることが好ましい。燃料油組成物の酸化安定性を維持するためには、トリグリセリド含有量を0.01質量%以下、低級アルコール含有量を0.01質量%以下とすることが必要である。
本発明の燃料油組成物は、酸価が0.13mgKOH/g以下、有機酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸の総和)含有量が0.003質量%以下であることが好ましく、また、燃料油組成物としての酸化安定性は0.12mgKOH/g以下であることが好ましい。これは脂肪酸低級アルコールエステルに酸化防止剤を添加することにより達成可能である。
さらに、本発明の燃料油組成物には、当業界で公知の燃料油添加剤の1種又は2種以上を必要に応じて更に配合することができる。これらの配合量は適宜選べるが、エンジンデポジット生成を抑制するため、通常は添加剤の合計配合量を0.1質量%以下に維持することが好ましい。本発明の燃料油組成物に使用可能な燃料油添加剤を例示すれば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アルキルアクリレート共重合体、ポリアルキルアクリレート等のポリマー系、アルケニルコハク酸アミド等の界面活性剤型の低温流動性向上剤、硝酸アルキル系のセタン価向上剤、脂肪酸系やエステル系の潤滑性向上剤などを挙げることができる。
以下に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
表1に示す炭化水素系燃料油基材を用意し、表2に示す割合で配合して、実施例1〜4の燃料油組成物を調製した。また、比較として、市販のA重油(比較例1)、市販の軽油(比較例2)及び市販のハイカロリーA重油(比較例3)を準備した。これら実施例及び比較例の燃料油組成物の性状を表2及び表3に示す。なお、各基材は、次の方法で用意した。
脱硫軽油(基材A):常圧蒸留装置から留出される直留軽油を水素化精製して得られる5%留出温度が227℃、95%留出温度が349℃の留分である。
低蝋分重質軽油(基材B):常圧蒸留装置から留出される直留重質軽油を水素化精製した後、接触脱蝋して得られる5%留出温度が280℃、95%留出温度が421℃の留分である。
分解軽油(基材C):流動接触分解装置から留出される5%留出温度が224℃、95%留出温度が365℃の留分である。
軽質高引火点高発熱量炭化水素(基材D):ノルマルパラフィン製造装置から残留分として得られるラフィネートのうち、5%留出温度が195℃、95%留出温度が241℃の留分である。
バイオディーゼル(基材E):パーム油をメタノールでエステル交換して得られる脂肪酸メチルエステルで、5%留出温度が327℃、95%留出温度が350℃の留分である。
Figure 2009096855
Figure 2009096855
Figure 2009096855
表2から、本発明に従う実施例の燃料油組成物は、密度が高く、総発熱量が大きいため、燃費改善に有効である上、セタン指数が高く且つCCAIが低いため、着火性に優れ、また、10%残油の残留炭素分が低いため、燃料フィルターを詰まらせ難く、更には、HFRR摩耗痕が小さいため、潤滑性も良好であり、また、流動点が低いため、低温特性が良好である上、硫黄分が少ないため、硫黄酸化物の排出量を低減できることが分かる。
一方、表3から、市販のA重油(比較例1)は、密度が低く、発熱量が低いため、燃費を改善できない上、硫黄分が多いため、硫黄酸化物の排出量を増加させてしまい、また、10%残油の残留炭素分が高いため、燃料フィルターを詰まらせ易く、また、セタン指数が低いため、着火性が悪く、ディーゼルエンジン用燃料として不適であることに加え、流動点が高いため、低温特性が悪いことが分かる。
また、市販の軽油(比較例2)は、密度が低く、発熱量が低いため、燃費を改善できないことが分かる。
更に、市販のハイカロリーA重油(比較例3)は、10%残油の残留炭素分が多いため、燃料フィルターを詰まらせ易く、また、セタン指数が低いため、着火性が悪く、ディーゼルエンジン用燃料として不適であることに加え、流動点が高いため、低温特性が悪いことが分かる。

Claims (5)

  1. 密度が0.89g/cm3以上で、硫黄分が0.3質量%以下で、セタン指数が45以上で、引火点が70℃以上で、10%残油の残留炭素分が0.03質量%以下で、流動点が−10℃以下で、HFRR試験での摩耗痕径が460μm以下で、総発熱量が39,500kJ/L以上で且つCCAIが840以下であることを特徴とする高発熱量燃料油組成物。
  2. ナトリウム含有量が0.1質量ppm以下で、カルシウム含有量が0.1質量ppm以下で、カリウム含有量が0.1質量ppm以下で、バナジウム含有量が0.1質量ppm以下で且つ水銀含有量が0.1質量ppm以下である請求項1に記載の高発熱量燃料油組成物。
  3. 前記セタン指数が50以上である請求項1又は2に記載の高発熱量燃料油組成物。
  4. 前記総発熱量が40,000kJ/L以上である請求項1〜3の何れか一項に記載の高発熱量燃料油組成物。
  5. 脂肪酸低級アルコールエステルを1質量%〜5質量%含み、トリグリセリド含有量が0.01質量%以下で、低級アルコール含有量が0.01質量%以下で、酸価が0.13mgKOH/g以下で、有機酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸の総和)含有量が0.003質量%以下で且つ酸化安定性が0.12mgKOH/g以下である請求項1〜4の何れか一項に記載の高発熱量燃料油組成物。
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