JP2009006876A - 操舵装置、自動車及びラックハウジング取り付け方法 - Google Patents

操舵装置、自動車及びラックハウジング取り付け方法 Download PDF

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敏彦 岡野
Takuma Suzuki
卓馬 鈴木
Hisataka Usui
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Abstract

【課題】ステアリングジオメトリを変更する機構を比較的簡単な構成で実現すること。
【解決手段】操向輪3FL、3FRにタイヤ横力が作用したときに、ラックハウジング15が当該ラックハウジング15よりも車両前後方向前側の点Cを瞬間回転中心としてヨー軸回りに回転変位するように、ラックハウジング15と車体取り付け部11FL、11FRとの接続部に車両前後方向に対して傾いた設定方向への変位を許容するようにした。そのため、操向輪3FL、3FRにタイヤ横力が作用すると、ステアリングラック7とタイロッド6FL、6FRとの接続部に車幅方向変位量に当該ステアリングラック7の各端部間で差を生じさせることができ、内外輪の車輪切れ角を互いに異ならせ、アッカーマン傾向を強めることやパラレル傾向を強めることができ、ステアリングジオメトリを変更する機構を比較的簡単な構成で実現できる。
【選択図】図2

Description

本発明は、ステアリングジオメトリを変更可能な操舵装置、自動車及びラックハウジング取り付け方法に関する。
従来、この種の技術としては、例えば、螺旋状の雌ねじ部を有するラック移動機構をアクチュエータで駆動し、ラックハウジングを車両前後方向に移動することで、ステアリングジオメトリを変更するものがある(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−127876号公報
しかしながら、上記従来の技術にあっては、ラック移動機構やアクチュエータを用いるため、構造が複雑になり、コストの増加や設計空間の制約が生じる可能性がある。
本発明は、上記従来の技術に鑑みてなされたものであって、ステアリングジオメトリを変更する機構を比較的簡単な構成で実現できる操舵装置、自動車及びラックハウジング取り付け方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る操舵装置は、操向輪を回転自在に支持するナックルと、前記ナックルにタイロッドを介して接続されたステアリングラックと、前記ステアリングラックを収容するラックハウジングと、前記ラックハウジングを車体に取り付ける車体取り付け部材と、を備え、前記車体取り付け部材は、前記操向輪にタイヤ横力が作用したときに、前記ラックハウジングがヨー軸回り(車両上下方向に伸びている軸回り)に回転変位するように、前記ラックハウジングと当該車体取り付け部との接続部に車両前後方向に対して傾いた設定方向への変位を許容することを特徴とする。
また、本発明に係る自動車は、車体の車両前後方向前側に配置された操向輪と、前記操向輪を回転自在に支持するナックルと、前記ナックルにタイロッドを介して接続されたステアリングラックと、前記ステアリングラックを収容するラックハウジングと、前記ラックハウジングを前記車体に取り付ける車体取り付け部材と、を備え、前記車体取り付け部材は、前記操向輪にタイヤ横力が作用したときに、前記ラックハウジングがヨー軸回りに回転変位するように、前記ラックハウジングと当該車体取り付け部との接続部に車両前後方向に対して傾いた設定方向への変位を許容することを特徴とする。
さらに、本発明に係るラックハウジング取り付け方法は、操向輪にタイヤ横力が作用したときに、ラックハウジングがヨー軸回りに回転変位するように前記ラックハウジングを車体に取り付けることを特徴とすることを特徴とする。
本発明に係る操舵装置にあっては、操向輪にタイヤ横力が作用し、ラックハウジングに車幅方向の力が作用すると、ラックハウジングがヨー軸回りに回転変位するため、ステアリングラックとタイロッドとの接続部に車幅方向変位量に当該ステアリングラックの各端部間で差を生じさせることができ、内外輪の車輪切れ角を互いに異ならせ、アッカーマン傾向を強めることやパラレル傾向を強めることができる。その結果、例えば、螺旋状の雌ねじ部やアクチュエータを用いてステアリングジオメトリを変更する機構を構成する方法に比べ、ステアリングジオメトリを変更する機構を比較的簡単な構成で実現できる。
また、本発明に係る自動車にあっては、操向輪にタイヤ横力が作用し、ラックハウジングに車幅方向の力が作用すると、ラックハウジングがヨー軸回りに回転変位するため、ステアリングラックとタイロッドとの接続部に車幅方向変位量に当該ステアリングラックの各端部間で差を生じさせることができ、内外輪の車輪切れ角を互いに異ならせ、アッカーマン傾向を強めることやパラレル傾向を強めることができる。その結果、例えば、螺旋状の雌ねじ部やアクチュエータを用いてステアリングジオメトリを変更する機構を構成する方法に比べ、ステアリングジオメトリを変更する機構を比較的簡単な構成で実現できる。
さらに、本発明に係るラックハウジング取り付け方法にあっては、操向輪にタイヤ横力が作用し、ラックハウジングに車幅方向の力が作用すると、ラックハウジングがヨー軸回りに回転変位するため、ステアリングラックとタイロッドとの接続部に車幅方向変位量に当該ステアリングラックの各端部間で差を生じさせることができ、内外輪の車輪切れ角を互いに異ならせ、アッカーマン傾向を強めることやパラレル傾向を強めることができる。その結果、例えば、螺旋状の雌ねじ部やアクチュエータを用いてステアリングジオメトリを変更する機構を構成する方法に比べ、ステアリングジオメトリを変更する機構を比較的簡単な構成で実現できる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
<第1実施例>
<構成>
まず、本実施形態の自動車の構成について説明する。
図1は、本実施形態の自動車の構成を示す構成図であり、図2は、操舵装置の構成を示す構成図である。
自動車1は、図1及び図2に示すように、車体2、操向輪3FL、3FR、ナックル4FL、4FR及び操舵装置5を備え、操舵装置5は、タイロッド6FL、6FR及びステアリングラック7を備える。
これらのうち、ナックル4FL、4FRは、操向輪3FL、3FRのホイールセンタに取り付けられ、車輪後側方向で且つ車体内側方向に伸びているナックルアーム8FL、8FRが設けられている。
タイロッド6FL、6FRは、一端がナックルアーム8FL、8FRにナックルボールジョイント9FL、9FRを介して接続され、他端がステアリングラック7の各端部にタイロッドボールジョイント10FL、10FRを介して接続されている。
ステアリングラック7は、車幅方向に沿って、操向輪3FL、3FRのホイールセンタ間を結ぶ線及びタイロッドボールジョイント10FL、10FR間を結ぶ線よりも車両前後方向後側に配置され、車幅方向に離れた2カ所で車体取り付け部材11FL、11FRを介して車体2に取り付けられている。そして、ハンドル(不図示)の操舵方向に応じて車幅方向に並進運動し、タイロッド6FL、6FR、ナックル4FL、4FRを介して操向輪3FL、3FRを転舵する。
図3(a)(b)は、車体取り付け部材11FL、11FRの構成を示す構成図であり、図4は、車体取り付け部材11FL、11FRの構成を拡大して示す構成図である。
車体取り付け部材11FL、11FRは、図3(a)(b)及び図4に示すように、ブラケット12FL、12FR、ブッシュ13FL、13FR及び支持軸14FL、14FRを備える。
ブラケット12FL、12FRは、車体2の車幅方向に離れた2カ所に取り付けられ、対応するブッシュ13FL、13FRを収容する。
ブッシュ13FL、13FRは、ブラケット12FL、12FRに対応する位置、つまり、ステアリングラック7を保持するラックハウジング15の車幅方向に離れた2カ所に外周側が固定され、軸方向が車両前後方向に向けられている。また、車幅方向左側のブッシュ13FLは、内周の車両前後方向前側で且つ車幅方向左側が拡径され、車幅方向右側のブッシュ13FRは、内周の車両前後方向前側で且つ車幅方向右側が拡径されている。
支持軸14FL、14FRは、ブッシュ13FL、13FRに挿通され、端部がブラケット12FL、13FRに固定されている。また、車幅方向左側の支持軸14FLは、ブッシュ13FLとの間に僅かな隙間が生じるように外周の車両前後方向前側で且つ車幅方向左側が拡径され、車幅方向右側の支持軸14FRは、ブッシュ13FRとの間に僅かな隙間が生じるように車両前後方向前側で且つ車幅方向右側が拡径されている。
そして、車体取り付け部材11FL、11FRは、ステアリングラック7に車幅方向右向きの力が作用すると、車幅方向左側のブッシュ13FLの拡幅部の内周面が支持軸14FLの拡幅部の外周面に押しつけられ、車両前後方向後向きで且つ車幅方向右向きの剪断力がブッシュ13FLに作用し、車幅方向左側のタイロッドボールジョイント10FLが車両前後方向後側で且つ車幅方向右側に移動する。また、同時に、車幅方向右側のブッシュ13FRが支持軸14FRに押しつけられ、車両前後方向前向きで且つ車幅方向右向きの剪断力がブッシュ13FRに作用し、車幅方向右側のタイロッドボールジョイント10FRが車両前後方向前側で且つ車幅方向右側に移動する。すなわち、ブッシュ13FL、13FRとラックハウジング15との接続部に変位を許容する方向を示す軸線、つまり、車体取り付け部材11FL、11FRの変位軸線が車両前後方向に対して傾いて設けられ、変位軸線の車両前後方向前側が車体外側に向けられており、ラックハウジング15よりも車両前後方向前側の点Cを瞬間回転中心としてラックハウジング15を車両平面視で左回り、つまり、ヨー軸回り(車両上下方向に伸びている軸回り)に左回りに回転させる。
また、車体取り付け部材11FL、11FRは、ステアリングラック7に車幅方向左向きの力が作用すると、車幅方向右側のブッシュ13FRの拡幅部の内周面が支持軸14FRの拡幅部の外周面に押しつけられ、車両前後方向後向きで且つ車幅方向左向きの剪断力がブッシュ13FRに作用し、車幅方向右側のタイロッドボールジョイント10FRが車両前後方向後側で且つ車幅方向左側に移動する。また、同時に、車幅方向左側のブッシュ13FLが支持軸14FLに押しつけられ、車両前後方向前向きで且つ車幅方向左向きの剪断力がブッシュ13FLに作用し、車幅方向左側のタイロッドボールジョイント10FLが車両前後方向前側で且つ車幅方向左側に移動する。すなわち、車体取り付け部材11FL、11FRの変位軸線の車両前後方向前側が車体外側に向けられており、ラックハウジング15よりも車両前後方向前側の点Cを瞬間回転中心としてラックハウジング15を車両平面視で右回り、つまり、ヨー軸回りに右回りに回転させる。
<動作>
次に、本実施形態の自動車の動作について説明する。
まず、ドライバによってハンドルが右方向に操舵され、操向輪3FL、3FRが右方向に転舵されて、車両が右旋回を開始したとする。すると、左操向輪3FLに車輪右向きの比較的大きいタイヤ横力(旋回外輪横力)が作用し、ステアリングラック7の車幅方向左端側に車幅方向右向きの力が作用すると、車幅方向左側のブッシュ13FLとラックハウジング15との接続部が車両前後方向後側で且つ車幅方向右側に比較的大きく移動する。
また、同時に、右操向輪3FRのホイールセンタに車輪右向きの比較的小さいタイヤ横力が発生し、ステアリングラック7の車幅方向右端側に車幅方向右向きの力が作用すると、車幅方向右側のブッシュ13FRとラックハウジング15との接続部が車両前後方向前側で且つ車幅方向右側に比較的小さく移動する。つまり、ラックハウジング15よりも車両前後方向前側の点Cを瞬間回転中心として、ラックハウジング15が車両平面視で左回りに回転変位することになる。その結果、車幅方向左側のタイロッドボールジョイント10FL、Aが車体内側に比較的大きく引き込まれ、車幅方向右側のタイロッドボールジョイント10FR、Bが車体外側に比較的小さく押し出され、左操向輪3FLの転舵角を減少させる切れ角変化、つまり、切り戻し角δoutが右操向輪3FRの切り戻し角δinよりも大きくなることで、左操向輪3FLの転舵角よりも右操向輪3FRの転舵角が大きくなり、アッカーマン傾向が強くなる方向にステアリングジオメトリを変更することができる。
以上、本実施形態では、図1のナックル7が特許請求の範囲に記載のナックルを構成し、以下同様に、図1のタイロッド6FL、6FRがタイロッドを構成し、図1のステアリングラック7がステアリングラックを構成し、図3(a)(b)のラックハウジング15がラックハウジングを構成し、図3(a)(b)の車体取り付け部材11FL、11FRが車体取り付け部材を構成し、図2のタイロッドボールジョイント10FL、10FRがラックハウジングと車体取り付け部材との接続部を構成し、図1の操向輪3FL、3FRが操向輪を構成する。
<作用・効果>
(1)このように、本実施形態の操舵装置にあっては、操向輪3FL、3FRにタイヤ横力が作用したときに、ラックハウジング15が当該ラックハウジング15よりも車両前後方向前側の点Cを瞬間回転中心としてヨー軸回りに回転変位するように、ラックハウジング15と車体取り付け部11FL、11FRとの接続部に車両前後方向に対して傾いた設定方向への変位を許容するようにした。そのため、操向輪3FL、3FRにタイヤ横力が作用し、ラックハウジング15に車幅方向の力が作用すると、ラックハウジング15が当該ラックハウジング15よりも車両前後方向前側の点Cを瞬間回転中心としてヨー軸回りに回転変位し、ステアリングラック7とタイロッド6FL、6FRとの接続部(タイロッドボールジョイント10FL、10FR)の車幅方向変位量に当該ステアリングラック7の各端部間で差を生じさせることができ、内外輪の車輪切れ角を互いに異ならせ、アッカーマン傾向を強めることやパラレル傾向を強めることができる。その結果、例えば、螺旋状の雌ねじ部やアクチュエータを用いてステアリングジオメトリを変更する機構を構成する方法に比べ、ステアリングジオメトリを変更する機構を比較的簡単な構成で実現でき、また、設計空間の確保や軽量化、省エネルギ化を図ることもできる。
なお、車体取り付け部材11FL、11FRとしては、リンク機構、変心カム等を利用して、操向輪3FL、3FRにタイヤ横力が作用したときに、ラックハウジング15の回転変位を誘発する機構を有するものも挙げられる。
(2)また、本実施形態では、車体取り付け部材11FL、11FRの変位軸線の車両前後方向前側が車体外側に向けられている例を示したが、例えば、図5に示すように、変位軸線の車両前後方向前側が車体内側に向けられているものも挙げられる。
そのようにすれば、車両旋回時に、旋回外側のブッシュ13FL、13FRとラックハウンジ15との接続部(タイロッドボールジョイント11FL、11FR)が車両前後方向前側で且つ車体内側に移動し、旋回内側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Bが車両前後方向後側で且つ車体外側に移動する。つまり、ステアリングラック7よりも車両前後方向後側の点Cを瞬間回転中心として、ラックハウジング15がヨー軸回りに回転変位することになる。その結果、旋回外側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Aが車体内側に比較的大きく引き込まれ、旋回内側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Bが車体外側に比較的小さく押し出され、旋回外輪の切り戻し角δoutが旋回内輪の切り戻し角δinよりも大きくなることで、旋回外輪の転舵角よりも旋回内輪の転舵角が大きくなり、アッカーマン傾向が強くなる方向にステアリングジオメトリを変更することができる。
(3)さらに、本実施形態の自動車にあっては、操向輪3FL、3FRにタイヤ横力が作用したときに、ラックハウジング15がヨー軸回りに回転変位するように、ラックハウジング15と車体取り付け部11FL、11FRとの接続部に車両前後方向に対して傾いた設定方向への変位を許容するようにした。そのため、操向輪3FL、3FRにタイヤ横力が作用し、ラックハウジング15に車幅方向の力が作用すると、ラックハウジング15がヨー軸回りに回転変位し、ステアリングラック7とタイロッド6FL、6FRとの接続部の車幅方向変位量に当該ステアリングラック7の各端部間で差を生じさせることができ、内外輪の車輪切れ角を互いに異ならせ、アッカーマン傾向を強めることやパラレル傾向を強めることができる。その結果、例えば、螺旋状の雌ねじ部やアクチュエータを用いてステアリングジオメトリを変更する機構を構成する方法に比べ、ステアリングジオメトリを変更する機構を比較的簡単な構成で実現できる。
(4)また、本実施形態のラックハウジング取り付け方法にあっては、操向輪3FL、3FRにタイヤ横力が作用したときに、ラックハウジング15がヨー軸回りに回転変位するようにラックハウジング15を車体2に取り付けるようにした。そのため、操向輪3FL、3FRにタイヤ横力が作用し、ラックハウジング15に車幅方向の力が作用すると、ラックハウジング15がヨー軸回りに回転変位し、ステアリングラック7とタイロッド6FL、6FRとの接続部の車幅方向変位量に当該ステアリングラック7の各端部間で差を生じさせることができ、内外輪の車輪切れ角を互いに異ならせ、アッカーマン傾向を強めることやパラレル傾向を強めることができる。その結果、例えば、螺旋状の雌ねじ部やアクチュエータを用いてステアリングジオメトリを変更する機構を構成する方法に比べ、ステアリングジオメトリを変更する機構を比較的簡単な構成で実現できる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
<構成>
図6は、第2実施形態の操舵装置の構成を示す構成図である。
この第2実施形態は、図6に示すように、ステアリングラック7を、操向輪3FL、3FRのホイールセンタ間を結ぶ線及びタイロッドボールジョイント10FL、10FR間を結ぶ線よりも車両前後方向前側に配置した点が前記第1実施形態と異なる。
なお、本実施形態にあっては、車体取り付け部材11FL、11FRの変位軸線は、車両前後方向前側が車体内側に向けられて構成されている。
<作用・効果>
(1)そのため、本実施形態の操舵装置にあっては、車両旋回時に、旋回外側のブッシュ13FL、13FRとラックハウンジ15との接続部(タイロッドボールジョイント11FL、11FR)が車両前後方向後側で且つ車体内側に移動し、旋回内側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Bが車両前後方向前側で且つ車体外側に移動する。つまり、ステアリングラック7よりも車両前後方向前側の点Cを瞬間回転中心として、ラックハウジング15がヨー軸回りに回転変位することになる。その結果、旋回外側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Aが車体内側に比較的大きく引き込まれ、旋回内側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Bが車体外側に比較的小さく押し出され、旋回外輪の転舵角を増加させる切れ角変化、つまり、旋回外輪の切り増し角δoutが旋回内輪の切り増し角δinよりも大きくなることで、旋回外輪の転舵角が旋回内輪の転舵角に近づき、パラレル傾向が強くなる方向にステアリングジオメトリを変更することができる。
ちなみに、アッカーマン傾向が強いと、図7(a)に示すように、車両旋回時には、旋回内輪の転舵角が旋回外輪の転舵角よりも大きくなる。また、左右の操向輪3FL、3FR間の距離、すなわち、前輪トレッドが旋回半径に対して十分小さい場合には、左右の操向輪位置における速度の方向は略一致する。そのため、転舵角が大きい旋回内輪では、速度の方向と車輪の方向とのずれ角、つまり、車輪スリップ角は大きくなる。
また、車輪スリップ角に対するタイヤ横力の変化の様子は、図7(b)に示すように、車輪荷重によって変化し、車輪荷重が低いほどより小さなスリップ角でタイヤ横力が飽和するようになる。そのため、旋回内輪のスリップ角が大きくなるアッカーマンジオメトリでは、車輪荷重が小さくなる旋回内輪のタイヤ横力が旋回外輪よりも早く飽和し(図中Q点)、また、旋回外輪のタイヤ横力が当該タイヤ横力の最大値に対して余力を残すようになるため(図中P点)、タイヤ横力を十分に使い切ることができない。
これに対し、パラレル傾向が強いと、図8に示すように、車両旋回時には、左右の操向輪3FL、3FRの転舵角が互いに等しくなり、速度の方向と車輪の方向とのずれ角(車輪スリップ角)は左右の操向輪3FL、3FRで互いに等しくなる。そのため、車輪荷重が小さくなる旋回内輪のスリップ角を低減させて、タイヤ横力の飽和を抑制でき、また、旋回外輪のスリップ角を増大させて、タイヤ横力を十分に使いきることができる。
そのため、操向輪3FL、3FRにタイヤ横力が作用していない初期状態において、アッカーマン傾向が強くなるようにステアリングジオメトリを設計することで、低速走行時の旋回性やハンドル復元性を向上でき、また、高横G領域でタイヤ横力が作用したときに、旋回外輪の切り増しによってパラレル傾向を強めることができるため、高速走行時の操向輪3FL、3FRのタイヤ横力を増大でき、応答性や安定性を向上できる。
(2)なお、本実施形態では、車体取り付け部材11FL、11FRの変位軸線の車両前後方向前側が車体外側に向いている例を示したが、例えば、図9に示すように、変位軸線の車両前後方向前側が車体内側に向いているものも挙げられる。
そのようにすれば、車両旋回時に、旋回外側のブッシュ13FL、13FRとラックハウンジ15との接続部(タイロッドボールジョイント11FL、11FR)が車両前後方向前側で且つ車体内側に移動し、旋回内側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Bが車両前後方向後側で且つ車体外側に移動する。つまり、ステアリングラック7よりも車両前後方向後側の点Cを瞬間回転中心として、ラックハウジング15がヨー軸回りに回転変位することになる。その結果、旋回外側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Aが車体内側に比較的大きく引き込まれ、旋回内側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Bが車体外側に比較的小さく押し出され、旋回外輪の切り戻し角δoutが旋回内輪の切り戻し角δinよりも大きくなることで、旋回外輪の転舵角が旋回内輪の転舵角に近づき、パラレル傾向が強くなる方向にステアリングジオメトリを変更することができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
<構成>
図10は、第3実施形態の操舵装置の構成を示す構成図である。
この第3実施形態は、図10に示すように、車体取り付け部材11FL、11FRが、車両前後方向に対して斜め方向への変位のみを許容する傾斜変位部16FL、16FR、及び車両前後方向への変位のみを許容する並行変位部17FL、17FRを備えるようにした点が前記第1実施形態と異なる。
具体的には、車体取り付け部材11FL、11FRは、ブッシュ13FL、13FRの外筒の車両前後方向後端とブラケット12FL、12FRとの間の隙間にストッパーが設けられている。そして、ストッパーによりブッシュ13FL、13FRとラックハウジング15との接続部(タイロッドボールジョイント10FL、10FR)の動きが規制されることで、タイヤ横力が作用していない状態において、ラックハウジング15よりも車両前後方向前側に、変位軸線の車両前後方向前側が車体外側に向けられている傾斜変位部16FL、16FRが形成され、ラックハウジング15よりも車両前後方向後側に並行変位部17FL、17FRが形成されている。
なお、ストッパーとしては、金属材料、ゴム材料、硬質プラスチック材料等、各種弾性材料が挙げられる。
なお、本実施形態では、図10の傾斜変位部16FL、16FRが特許請求の範囲に記載の傾斜変位部を構成し、同様に、図10の並行変位部17FL、17FRが並行変位部を構成する。
<作用・効果>
(1)そのため、本実施形態の操舵装置にあっては、車両旋回時に、操向輪3FL、3FRにタイヤ横力が発生すると、旋回外側のブッシュ13FL、13FRとラックハウジング15との接続部(タイロッドボールジョイント11FL、11FR)の車体内側への移動が規制され、旋回内側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Bが車両前後方向前側で且つ車体外側に移動する。つまり、ステアリングラック7よりも車両前後方向前側で且つ旋回外輪側の点Cを瞬間回転中心として、ラックハウジング15がヨー軸回りに回転変位することになる。その結果、旋回外側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Aが車体内側に比較的小さく引き込まれ、旋回内側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Bが車体外側に比較的大きく押し出され、旋回内輪の切り戻し角δinが旋回外側の切り戻し角δoutよりも大きくなることで、旋回外輪の転舵角が旋回内輪の転舵角に近づき、パラレル傾向が強くなる方向にステアリングジオメトリを変更することができる。
ちなみに、パラレル傾向が強くなるように、ナックルボールジョイント9FL、9FRの車幅方向の配置を車体外側に移動させる方法では、ステアリングラック7が、操向輪3FL、3FRのホイールセンタ間を結ぶ線及びタイロッドボールジョイント10FL、10FR間を結ぶ線よりも車両前後方向後ろ側に配置されていると、ブレーキディスクやホイールとの干渉を生じる恐れがあるため、適切にパラレル化できない可能性がある。
(2)また、車体取り付け部材11FL、11FRが、車両前後方向に対して斜め方向への変位のみを許容する傾斜変位部16FL、16FR、及び車両前後方向への変位のみを許容する並行変位部17FL、17FRを備えるようにした。そのため、車両旋回時に、ラックハウジング15の瞬間回転中心を車両前後方向にずらすとともに、車幅方向にもずらすことができ、タイロッドボールジョイント10FL、10FRの車幅方向変位量の差を調整でき、ステアリングジオメトリをより適切に変更することができる。
(3)さらに、操向輪3FL、3FRのホイールセンタ間を結んだ線よりもステアリングラック7を車両前後方向後側に配置し、傾斜変位部16FL、16FRの変位軸線の並行変位部17FL、17FRから遠い側を車体外側に向けるようにした。そのため、車両旋回時に、旋回内側のステアリングラック7とタイロッド6FL、6FRとの接続部(タイロッドボールジョイント11FL、11FR、B)が車両外側に比較的大きく押し出され、旋回内輪の切り戻し角δinが比較的大きくなることで、ラック後配置のステアリング構造においてパラレル傾向をより強めることができる。
(4)なお、本実施形態では、傾斜変位部16FL、16FRの変位軸線の車両前後方向前側が車体外側に向けられている例を示したが、例えば、図11に示すように、タイヤ横力が作用していない状態において、ラックハウジング15よりも車両前後方向後側に、変位軸線の車両前後方向前側が車体内側に向けられている傾斜変位部16FL、16FRが形成され、ラックハウジング15よりも車両前後方向前側に並行変位部17FL、17FRが形成されているものも挙げられる。
そのようにすれば、車両旋回時に、操向輪3FL、3FRにタイヤ横力が発生すると、旋回外側のブッシュ13FL、13FRとラックハウジング15との接続部(タイロッドボールジョイント11FL、11FR)の車体内側方向への移動が規制され、旋回内側のタイロッドボールジョイント11FL、11FRが車両前後方向後側で且つ車体外側に移動する。つまり、ステアリングラック7よりも車両前後方向後側で且つ旋回外輪側の点Cを瞬間回転中心として、ラックハウジング15がヨー軸回りに回転変位することになる。その結果、旋回外側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Aが車体内側に比較的小さく引き込まれ、旋回内側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Bが車体外側に比較的大きく押し出され、旋回内輪の切り戻し角δinが旋回外側の切り戻し角δoutよりも大きくなることで、旋回外輪の転舵角が旋回内輪の転舵角に近づき、パラレル傾向が強くなる方向にステアリングジオメトリを変更することができる。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態を図面に基づいて説明する。
<構成>
図12は、第4実施形態の操舵装置の構成を示す構成図である。
この第4実施形態は、図12に示すように、車体取り付け部材11FL、11FRが、車両前後方向に対して斜め方向への変位のみを許容する傾斜変位部16FL、16FR、及び車両前後方向への変位のみを許容する並行変位部17FL、17FRを備えるようにした点が前記第2実施形態と異なる。
具体的には、車体取り付け部材11FL、11FRは、タイヤ横力が作用していない状態において、ラックハウジング15よりも車両前後方向前側に、変位軸線の車両前後方向前側が車体内側に向けられている傾斜変位部16FL、16FRが形成され、ラックハウジング15よりも車両前後方向後側に並行変位部17FL、17FRが形成されている。
<作用・効果>
(1)そのため、本実施形態の操舵装置にあっては、車両旋回時に、操向輪3FL、3FRにタイヤ横力が発生すると、旋回外側のブッシュ13FL、13FRとラックハウジング15との接続部(タイロッドボールジョイント11FL、11FR)が車両前後方向前側で且つ車体内側に移動し、旋回内側のタイロッドボールジョイント11FL、11FRの車体外側方向への移動が規制される。つまり、ステアリングラック7よりも車両前後方向後側で且つ旋回内輪側の点Cを瞬間回転中心として、ラックハウジング15がヨー軸回りに回転変位することになる。その結果、旋回外側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Aが車体内側に比較的大きく引き込まれ、旋回内側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Bが車体外側に比較的小さく押し出され、旋回外輪の切り増し角δoutが旋回内輪の切り増し角δinよりも大きくなることで、旋回外輪の転舵角が旋回内輪の転舵角に近づき、パラレル傾向が強くなる方向にステアリングジオメトリを変更することができる。
ちなみに、タイヤ横力が作用していない状態において、ラックハウジング15よりも車両前後方向前側に並行変位部17FL、17FRを形成し、ラックハウジング15よりも車両前後方向後側に、変位軸線の車両前後方向前側が車体外側に向けられている傾斜変位部16FL、16FRを形成する方法にあっては、内外輪の切り増し角δin、δoutの大小関係が入れ替わり、アッカーマン傾向が強くなる方向にステアリングジオメトリを変更することができる。そのため、パラレル傾向が強くなりやすいステアリングレイアウト、すなわち、ラックハウジング15が操向輪3FL、3FRのホイールセンタ間を結ぶ線よりも車両前後方向前側に配置されるレイアウトであっても、タイヤ横力が作用したときにアッカーマン傾向が強くなる方向にステアリングジオメトリを変更することができる。
(2)また、操向輪3FL、3FRのホイールセンタ間を結んだ線よりもステアリングラック7を車両前後方向後側に配置し、傾斜変位部16FL、16FRの変位軸線の並行変位部17FL、17FRから遠い側を車体外側に向けるようにした。そのため、車両旋回時に、旋回外側のステアリングラック7とタイロッド6FL、6FRとの接続部(タイロッドボールジョイント11FL、11FR、A)が車両内側に大きく引き込まれ、旋回外輪の切り増し角δoutが大きくなることで、ラック前配置のステアリング構造においてパラレル傾向をより強めることができる。
(3)なお、傾斜変位部16FL、16FRの変位軸線の車両前後方向前側が車体内側に向けられている例を示したが、例えば、図13に示すように、タイヤ横力が作用していない状態において、ラックハウジング15よりも車両前後方向後側に、変位軸線の車両前後方向前側が車体外側に向けられている傾斜変位部16FL、16FRが形成され、車両前後方向前側に並行変位部17FL、17FRが形成されているものも挙げられる。
そのようにすれば、車両旋回時に、操向輪3FL、3FRにタイヤ横力が発生すると、旋回内側のブッシュ13FL、13FRとラックハウジング15との接続部(タイロッドボールジョイント11FL、11FR)の車体外側方向への移動が規制され、旋回外側のタイロッドボールジョイント11FL、11FRが車両前後方向後側で且つ車体内側に移動する。つまり、ステアリングラック7よりも車両前後方向前側で且つ旋回外輪側の点Cを瞬間回転中心として、ラックハウジング15がヨー軸回りに回転変位することになる。その結果、旋回外側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Aが車体内側に比較的大きく引き込まれ、旋回内側のタイロッドボールジョイント11FL、11FR、Bが車体外側に比較的小さく押し出され、旋回外輪の切り増し角δoutが旋回内側の切り増し角δinよりも大きくなることで、旋回外輪の転舵角が旋回内輪の転舵角に近づき、パラレル傾向が強くなる方向にステアリングジオメトリを変更することができる。
自動車の構成を示す構成図である。 操舵装置の構成を示す構成図である。 車体取り付け部材の構成を示す構成図である。 車体取り付け部材の構成を示す構成図である。 車体取り付け部材の構成を拡大して示す構成図である。 操舵装置の変形例の構成を示す構成図である。 第2実施形態の操舵装置の構成を示す構成図である。 自動車の動作を説明するための図である。 自動車の動作を説明するための図である。 操舵装置の変形例の構成を示す構成図である。 第3実施形態の操舵装置の構成を示す構成図である。 操舵装置の変形例の構成を示す構成図である。 第4実施形態の操舵装置の構成を示す構成図である。 操舵装置の変形例の構成を示す構成図である。
符号の説明
1は自動車、2は車体、3FL、3FRは操向輪、4FL、4FRはナックル、5は操舵装置、6FL、6FRはタイロッド、7はステアリングラック、8FL、8FRはナックルアーム、9FL、9FRはナックルボールジョイント、10FL、10FRはタイロッドボールジョイント、11FL、11FRは車体取り付け部材、12FL、12FRはブラケット、13FL、13FRはブッシュ、14FL、14FRは支持軸、15はラックハウジング、16FL、16FRは傾斜変位部、17FL、17FRは並行変位部

Claims (6)

  1. 操向輪を回転自在に支持するナックルと、前記ナックルにタイロッドを介して接続されたステアリングラックと、前記ステアリングラックを収容するラックハウジングと、前記ラックハウジングを車体に取り付ける車体取り付け部材と、を備え、
    前記車体取り付け部材は、前記操向輪にタイヤ横力が作用したときに、前記ラックハウジングがヨー軸回りに回転変位するように、前記ラックハウジングと当該車体取り付け部との接続部に車両前後方向に対して傾いた方向への変位を許容することを特徴とする操舵装置。
  2. 前記車体取り付け部材は、前記接続部に車両前後方向に対して傾いた設定方向への変位のみを許容する傾斜変位部と、前記接続部に車両前後方向への変位のみを許容する並行変位部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の操舵装置。
  3. 前記ラックハウジングは、前記操向輪のホイールセンタ間を結んだ線よりも車両前後方向後側に配置され、
    前記傾斜変位部は、前記設定方向の前記並行変位部から遠い側が車体外側に向いていることを特徴とする請求項2に記載の操舵装置。
  4. 前記ラックハウジングは、前記操向輪のホイールセンタ間を結んだ線よりも車両前後方向前側に配置され、
    前記傾斜変位部は、前記設定方向の前記並行変位部から遠い側が車体内側に向いていることを特徴とする請求項2に記載の操舵装置。
  5. 車体の車両前後方向前側に配置された操向輪と、前記操向輪を回転自在に支持するナックルと、前記ナックルにタイロッドを介して接続されたステアリングラックと、前記ステアリングラックを収容するラックハウジングと、前記ラックハウジングを前記車体に取り付ける車体取り付け部材と、を備え、
    前記車体取り付け部材は、前記操向輪にタイヤ横力が作用したときに、前記ラックハウジングがヨー軸回りに回転変位するように、前記ラックハウジングと当該車体取り付け部との接続部に車両前後方向に対して傾いた設定方向への変位を許容することを特徴とする自動車。
  6. 操向輪にタイヤ横力が作用したときに、ラックハウジングがヨー軸回りに回転変位するように前記ラックハウジングを車体に取り付けることを特徴とすることを特徴とするラックハウジング取り付け方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012071741A (ja) * 2010-09-29 2012-04-12 Toyota Motor Corp サスペンション装置
CN104097687A (zh) * 2014-07-18 2014-10-15 刘海云 一种汽车智能转向机构

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