以下、図面を参照し、この発明の実施の形態を説明する。
<第1実施形態>
図1は、この発明の第1実施形態である下顎動作検出装置150を含む吹奏ユニット100の構成を示す斜視図である。また、図2は図1に示す下顎動作検出装置150のI−I’線における断面構造を示す図である。なお、図2には、下顎動作検出装置150の理解を容易にするため、演奏者の下顎付近の部分が吹奏ユニット100とともに図示されている。また、図2には、吹奏検出装置110も図示されているが、図面が煩雑になるのを防ぐため、吹奏検出装置110については透視図が示されている。
図1に示すように、電子フルートの頭管1には、その管軸方向に所定間隔を空けて2枚のフランジ2Aおよび2Bが固定されている。吹奏ユニット100は、回動軸101を有しており、この回動軸101は、頭管1の管軸と平行な向きで、このフランジ2Aおよび2Bの各々に設けられた軸受け(図1ではフランジ2Aの軸受け21のみが図示されている)に軸支されている。このような構成としたため、本実施形態における吹奏ユニット100は、ある程度の力を加えることにより回動軸101廻りに回動させることが可能である。なお、吹奏ユニット100は、回動しないように、フランジ2Aおよび2B間に固定してもよい。
吹奏ユニット100は、大別して、吹奏検出装置110と、下顎動作検出装置150と、これらの吹奏検出装置110および下顎動作検出装置150を頭管1の管軸方向両側から挟んで固定する側板部190Aおよび190Bとにより構成されている。
吹奏検出装置110の上部には、演奏者の上唇までの距離を測定する上唇近接センサ111が設けられている。この上唇近接センサ111は、例えば赤外線リフレクタ等により構成されている。また、吹奏検出装置110において、演奏者の口と対向する前面部分には、コーン状のジェットコレクタ112が設けられている(図2参照)。このジェットコレクタ112は、演奏者の口から吹き込まれる呼気を集め、吹奏検出装置110の内部に設けられたジェット流量センサ113へと導く役割を果たす。このジェット流量センサ113は圧力センサである。
図2に示すように、下顎動作検出装置150は、軸受けベース160と、可動式のリッププレートであるリッププレート上部170と、リッププレート下部180とを有する。ここで、軸受けベース160は、その管軸方向両側において側板部190Aおよび190B(図1参照)に固定されている。軸受けベース160は、吹奏時に斜め上方にある演奏者の口と対面する平面部を有しており、この平面部にシート状の感圧抵抗162が固定されている。
本実施形態における下顎動作検出装置150は、リッププレート上部170およびリッププレート下部180の取り付けおよび取り外しが可能な構成となっている。図1および図2には、リッププレート上部170およびリッププレート下部180が取り付けられた状態の下顎動作検出装置150が図示されている。
リッププレート上部170は、吹奏時において演奏者の口のある方向に出っ張ったリップ当接面171Sを有するリップ当接部171と、このリップ当接部171から突き出した板部172と、この板部172の端部に形成された円柱状の回動軸173とからなる。リッププレート上部170において、リップ当接面171Sとは反対側の面は、所定間隔を空けて感圧抵抗162と対向しており、この面には感圧抵抗162側に突出した押圧部174が設けられている。この押圧部174は、例えばゴム等のような弾性材料により構成されている。リッププレート上部170が演奏者の下唇付近の部分によって押されていない状態では、押圧部174は、感圧抵抗162から離れている。
リッププレート下部180は、表面が緩やかに外側に膨らむように湾曲した部材であり、その裏面には、リッププレート上部170の回動軸173を収容する凹部181が形成されている。上述した軸受けベース160にも、回動軸173を収容する凹部163が形成されている。リッププレート下部180の凹部181は、この軸受けベース160の凹部163とともに軸受け用の孔を形成し、この軸受け用の孔は、リッププレート上部170の回動軸173を回動自在に支持する。この軸受け用の孔に回動軸173を支持されたリッププレート上部170は、リップ当接面171Sが演奏者の下唇付近の部分によって押されることにより感圧抵抗162側に回動する。この回動により、押圧部174の頂上面は、最大限、感圧抵抗162の表面まで移動する。このようにリッププレート上部170の回動により押圧部174の頂上面が感圧抵抗162に到達したときに押圧部174の頂上面が感圧抵抗162の表面と面接触するように、押圧部174の頂上面は、リッププレート上部170の感圧抵抗162との対向面に対してやや斜めに傾いている。
軸受けベース160において感圧抵抗162が配置されていない余白の部分には、永久磁石301が固定されている。また、リッププレート上部170におけるリップ当接面171Sの反対側の面には、永久磁石301と対向する位置に永久磁石302が固定されている。これらの永久磁石301および302は、互いのN極同士またはS極同士を対向させ、反発し合っており、その反発力は、リッププレート上部170を感圧抵抗162から引き離す方向に付勢する付勢力として働く。
次に、図1および図2に加えて、図3(a)および(b)を参照し、本実施形態による下顎動作検出装置150の特徴をさらに具体的に説明する。ここで、図3(a)は、本実施形態において、仮に付勢手段たる永久磁石301および302を設けず、押圧部174を感圧抵抗162に常時接触させる構成とした場合におけるリッププレート上部170への圧力と後述するリップ圧センサの出力電圧との関係を示す図である。ここで、リップ圧センサは、感圧抵抗162に流れる電流に基づいて、演奏者の下顎の動きを示す制御信号を出力するセンサである。また、図3(b)は、本実施形態におけるリッププレート上部170への圧力とリップ圧センサの出力電圧との関係を示す図である。
演奏者は、オクターブ切り換えを行おうとするとき、図2に示すように、下顎を前後方向に微妙に動かす。ここで、演奏者が下唇付近の部分をリップ当接部171Sに当接させて、下顎を前方に移動させると、リッププレート上部170を感圧抵抗162側に移動させる方向のトルクが演奏者の下唇付近の部分からリッププレート上部170に与えられる。ここで、付勢手段たる永久磁石301および302がなく、押圧部174が感圧抵抗162に常時接触していると、リッププレート上部170に与えられる圧力は、そのまま感圧抵抗162に伝達される。このため、図3(a)に示すように、リッププレート上部170に与えられる圧力に比例した電圧値の制御信号がリップ圧センサから出力される。これでは、下顎の僅かな動きにより、リップ圧センサの出力信号値がオクターブ切り換えの指示を発生させるか否かの基準レベルである閾値を越えるため、オクターブ切り換えの指示のための操作が演奏者にとって困難であるという問題が発生する。しかし、本実施形態では、以下説明するように、この問題が解決される。
まず、本実施形態においてリッププレート上部170には、永久磁石301および302により、感圧抵抗162から引き離す方向の付勢力が与えられる。そして、演奏者によってこの付勢力に打ち勝つ圧力が与えられたときに、リッププレート上部170は感圧抵抗162側に移動してゆく。その際、リッププレート上部170が感圧抵抗162側に進むにつれて、永久磁石301および302間の距離が短くなるため、感圧抵抗162から引き離す方向の付勢力は強くなってゆく。しかし、押圧部174が感圧抵抗162から離れた状態では、感圧抵抗162に伝達される圧力は0である。従って、図3(b)に示すように、リッププレート上部170に圧力が加わっても、その圧力が小さくて、押圧部174が感圧抵抗162から離れている期間は、リップ圧センサの出力電圧は0Vである。
そして、リッププレート上部170への圧力がある値に達すると、リッププレート上部170に設けられた押圧部174が感圧抵抗162に到達し、以後、リッププレート上部170の移動が止まる。これにより、リッププレート上部170に与えられる圧力が押圧部174を介して感圧抵抗162に伝達されるようになり、図3(b)に示すように、リッププレート上部170に与えられる圧力の増加に応じてリップ圧センサの出力電圧値が増加する。なお、図3(b)において、破線は図3(a)に示す特性を表している。
以上が本実施形態における吹奏ユニット100の構成の詳細である。
図4は本実施形態における電子フルートの電気的構成を示すブロック図である。図4において、複数の演奏用キーセンサ201は、電子フルートの主管部および足管部に設けられた演奏用キー(図示略)の状態を各々検出するセンサである。これらの演奏用キーセンサ201により、演奏用キーの各々がON状態(演奏用キーが押下されており、主管部または足管部のトーンホールを塞いだ状態)であるかOFF状態(演奏用キーが押下されておらず、トーンホールが開いた状態)であるかを示す運指パターンが発生され、制御部210に供給される。
リップ圧センサ162Sは、図2における感圧抵抗162に流れる電流に比例した電圧を発生し、演奏者の下顎の動きを示す制御信号(アナログ信号)として出力する信号発生手段である。ジェット流量センサ113および上唇近接センサ111については、図1および図2を参照して説明した通りである。
A/D変換器202、203および204は、リップ圧センサ162S、ジェット流量センサ113および上唇近接センサ111から出力される各アナログ信号のA/D変換を行い、デジタル形式のリップ圧信号、呼気流量信号および対上唇間距離信号を制御部210に出力する。
制御部210は、後段のMIDI音源220等、この電子フルートの各部の制御を行う装置であり、例えばCPUと、CPUによってワークエリアとして使用されるRAMと、CPUにより実行される各種のプログラムやCPUによって参照される各種のテーブルを記憶したROMにより構成されている(いずれも図示略)。図4には、制御部210のCPUがROM内のプログラムに従って実行する各種の処理が図示されている。
制御部210により実行される処理は、ノートナンバ、エクスプレッション値、ブレスコントロール値等、MIDI音源220を制御するMIDIメッセージの構成要素となるパラメータを生成する処理を含む。以下、これらの各処理について説明する。
ノートナンバ発生処理211では、複数の演奏用キーセンサ201から与えられる運指パターンに基づき、MIDI音源220に形成させる楽音信号のノートナンバを演算する。また、ノートナンバ発生処理211では、A/D変換器202から出力されるリップ圧信号を閾値と比較し、リップ圧信号が閾値を越えた場合に演奏者が下顎を動かしてオクターブ切り換えの指示を行ったとみなし、運指パターンに基づいて決定されるノートナンバを1オクターブ高いノートナンバに切り換える。
音量制御パラメータ発生処理212は、A/D変換器202から与えられるリップ圧信号およびA/D変換器203から与えられる呼気流量信号に基づき、音量制御パラメータであるエクスプレッション値またはブレスコントロール値を決定する処理である。ベロシティ発生処理213は、A/D変換器203から与えられる呼気流量信号に基づき、楽音の立ち上がり時の強さを指示するベロシティを決定する処理である。
ピッチベンド制御処理214は、運指パターン、A/D変換器203から与えられる呼気流量信号、A/D変換器204から与えられる対上唇間距離信号に基づき、ピッチベンド値PBを決定する処理である。具体的には、対上唇間距離信号が示す演奏者の上唇から上唇近接センサ111までの距離が短くなったとき、その程度に応じてピッチをダウンさせるピッチベンド値PBを発生する。
MIDIメッセージ組立処理215は、以上説明した各処理により発生されるパラメータを用いてMIDIメッセージを組み立て、MIDI音源220に送信する処理である。さらに詳述すると、MIDIメッセージ組立処理215は、A/D変換器203から出力される呼気流量信号の値が閾値を越え、ノートオンの条件が満たされると、その時点においてノートナンバ発生処理211から与えられるノートナンバと、ベロシティ発生処理213から与えられるベロシティ値とを用いて、ノートオンメッセージを組み立て、MIDI音源220に送信する。
ノートオンは、呼気流量信号の値が閾値よりも高く、運指パターンが同一パターンを維持する期間持続する。このノートオン期間中、MIDIメッセージ組立処理215では、音量制御パラメータ発生処理212から与えられるエクスプレッション値またはブレスコントロール値を用いて、コントロールチェンジメッセージを組み立ててMIDI音源220に送信し、ピッチベンド制御処理214から与えられるピッチベンド値PBを用いて、ピッチベンドメッセージを組み立てMIDI音源220に送信する。ここで、演奏者が下顎を微妙に動かしてオクターブ切り換えの指示を行った場合、ノートナンバ発生処理211では、リップ圧信号に基づいてこのオクターブ切り換えの指示が検知され、この指示に従ってノートナンバの切り換えが行われる。この場合には、MIDIメッセージ組み立て処理215では、切り換え後の新たなノートナンバへの変更を指示するMIDIメッセージを組み立ててMIDI音源220に送る。そして、呼気流量信号の値が閾値を下回り、あるいは運指パターンが変化した場合、MIDIメッセージ組立処理215は、ノートオン中である楽音信号を終了させるノートオフメッセージをMIDI音源220に送るのである。
MIDI音源220は、以上のようにして制御部210から送信されるMIDIメッセージに従い、デジタル形式の楽音信号を形成する装置である。サウンドシステム230は、MIDI音源220から出力される楽音信号をアナログ楽音信号に変換するD/A変換器と、このアナログ楽音信号を増幅するアンプと、このアンプにより駆動されるスピーカにより構成されている(図示略)。
以上が本実施形態による電子フルートの詳細である。
本実施形態によれば、演奏者は、リッププレート上部170側からの反発力(すなわち、永久磁石301および302による付勢力)を感じつつ、ある限度を越えてリッププレート上部170を感圧抵抗162側に押し込んだとき、押圧部174が感圧抵抗162と接触し、リップ圧センサ162Sの出力電圧が0Vから上昇し、この出力電圧が閾値を越えたときにオクターブ切り換えが行われる。従って、演奏者は、下顎をどの程度動かせばオクターブ切り換えが行われるかを容易に把握することができ、下顎を動かすことによるオクターブ切り換えの指示操作を容易に行うことができる。また、本実施形態において、演奏者は、ピッチベンドダウンを行おうとするとき、上唇を上唇近接センサ111に近づける。このとき、演奏者の下唇付近の部分がリッププレート上部170を押す可能性があるが、そのような場合でも、本実施形態では、押圧部174は感圧抵抗162から離れており、リッププレート上部170は感圧抵抗162から離れる方向に付勢されているため、演奏者の意図に反してリップ圧センサ162Sが作動してオクターブ切り換えが行われる不具合を防止することができる。
以上説明した実施形態では、付勢手段として互いに反発し合う永久磁石301および302をリッププレート上部170および軸受けベース160間に設けたが、付勢手段の構成はこれに限定されるものではない。図5(a)〜(c)は、付勢手段の他の例を示す図である。図5(a)に示す下顎動作検出装置150Aではコイルバネ303が、図5(b)に示す下顎動作検出装置150Bでは板バネ304が、図5(c)に示す下顎動作検出装置150Cでは発泡ゴム305が、付勢手段としてリッププレート上部170および軸受けベース160間に設けられている。ここで、押圧部174が感圧抵抗162から離れている状態におけるリッププレート上部170に与えられる圧力とリッププレート上部170の変位との関係と、押圧部174が感圧抵抗162から接触している状態におけるリッププレート上部170に与えられる圧力とリップ圧センサ162Sの出力電圧との関係は、リッププレート上部170および軸受けベース160間に介挿された付勢手段の弾性特性により定まる。従って、付勢手段として如何なる部材を用いるかは、どの程度の圧力がリッププレート上部170に加わったときに押圧部174を感圧抵抗162に接触させるかに基づいて、適切な弾性特性を持った部材を選択すればよい。また、上記実施形態において、リップ圧信号を2値化してオクターブ切り換えの制御に用いるだけでなく、2値化前のリップ圧信号を音色制御に用いるような態様も考えられる。このような態様では、リッププレート上部170への圧力の変化と音色の変化との関係についての目標特性に基づいて、適切な弾性特性を持った部材を選択すればよい。
<第2実施形態>
図6はこの発明の第2実施形態である下顎動作検出装置150Dの構成を示す断面図である。上記第1実施形態では、リッププレート上部170を軸受けベース160から引き離す方向に付勢する付勢手段として、リッププレート上部170および軸受けベース160間の距離が縮まろうとするのに反発する部材を設けた。これに対し、本実施形態では、リッププレート上部170を軸受けベース160から引き離す方向に付勢する付勢手段として、リッププレート上部170をリッププレート下部180側に引き付ける力を発生する部材を設ける。具体的には、本実施形態では、リッププレート上部170およびリッププレート下部180の互いに向き合った各面に、永久磁石311および312を各々固定する。ここで、永久磁石311と永久磁石312は、各々のN極とS極または各々のS極とN極を突き合わせている。
図7(a)における実線のグラフは、リッププレート上部170に対する圧力を増加させて、押圧部174が感圧抵抗162と接触していない状態から接触した状態に移行させる場合におけるリッププレート上部170に対する圧力とリップ圧センサ162Sの出力電圧との関係を示す図である。また、図7(b)における実線のグラフはリッププレート上部170に対する圧力を減らし、押圧部174が感圧抵抗162と接触した状態から接触していない状態に移行させる場合におけるリッププレート上部170に対する圧力とリップ圧センサ162Sの出力電圧との関係を示す図である。なお、図7(a)および(b)の各特性間の関係の理解を容易にするため、図7(a)には図7(b)における実線のグラフが粗めの破線で示されており、図7(b)には図7(a)における実線のグラフが粗めの破線で示されている。また、図7(a)および(b)には、仮に付勢手段たる永久磁石311および312を設けず、押圧部174を感圧抵抗162に常時接触させる構成とした場合におけるリッププレート上部170への圧力とリップ圧センサ162Sの出力電圧との関係を示すグラフが細かめの破線により示されている。後に他の実施形態において参照する図10(a)および(b)、図13(a)および(b)、図15(a)および(b)においても同様な方法による図示がなされている。
永久磁石311および312間の吸着力は、リッププレート上部170がリッププレート下部180から離れておらず、永久磁石311および312が接触しているときに最大となる。従って、リッププレート上部170に与えられる圧力を0Paから増加させた場合において、その圧力がこの最大の吸着力に満たない期間には、リッププレート上部170がリッププレート下部180側に止まり、図7(a)に示すように、リップ圧センサ162Sの出力電圧は0Vとなる。
リッププレート上部170に対する圧力が、接触した状態の永久磁石311および312間の吸着力を越えると、永久磁石311が永久磁石312から離れ、リッププレート上部170は、与えられる圧力に応じて感圧抵抗162側に移動する。この間、永久磁石311および312間の吸着力は、リッププレート上部170が感圧抵抗162側へ移動して、永久磁石311および312間の距離が長くなるのに従って弱くなる。そして、リッププレート上部170に対する圧力がある限度を越えると、リッププレート上部170の押圧部174が感圧抵抗162に接触し始める(より具体的には点接触または線接触から面接触に移行し、接触面積を増加させる)。これによりリッププレート上部170に与えられる圧力が押圧部174を介して感圧抵抗162に伝わるようになり、図7(a)に示すように、リップ圧センサ162Sの出力電圧が立ち上がる。
押圧部174が感圧抵抗162に完全に接触した状態では、永久磁石311および312間の吸着力は弱くなっている。このため、リッププレート上部170に与えられる圧力の殆どが押圧部174を介して感圧抵抗162に伝達され、リップ圧センサ162Sの出力電圧はリッププレート上部170に対する圧力の増加に対して直線的に増加する。
そして、押圧部174が感圧抵抗162に完全に接触した状態では永久磁石311および312間の吸着力が極めて弱いため、リッププレート上部170に対する圧力を減少させる過程では、前述したリッププレート上部170に対する圧力を増加させる過程においてリップ圧センサ162Sの出力電圧が立ち上がったときの圧力よりも、リッププレート上部170に対する圧力を減少させないと、押圧部174が感圧抵抗162から離れ始めない。このため、リッププレート上部170に対する圧力を減少させる場合には、図7(b)に示すように、前述したリッププレート上部170に対する圧力を増加させる過程においてリップ圧センサ162Sの出力電圧が立ち上がったときの圧力よりも低い圧力において、リップ圧センサ162Sの出力電圧が立ち下がる。
以上が本実施形態における下顎動作検出装置150Dの動作である。
本実施形態によれば、リッププレート上部170がリッププレート下部180側に止まっており、永久磁石311および312が接触した状態において永久磁石311および312の吸着力は最大となる。そして、本実施形態では、この最大の吸着力で吸着し合っている永久磁石311および312を引き離すのに要する圧力が大きく、リッププレート上部170の動作を開始させるためにリッププレート上部170に与えることが必要な圧力が大きいので、演奏者の下顎の微妙な動きにより演奏者の意図に反してリップ圧センサ162Sが作動してオクターブ切り換えが行われる不具合を、上記第1実施形態よりも効果的に防止することができる。また、本実施形態では、図7(a)および(b)に示すように、リッププレート上部170への圧力の増減に対するリップ圧センサ162Sの出力電圧の変化がヒステリシス特性を呈する。従って、リップ圧センサ162Sの出力電圧に対応したリップ圧信号を閾値により2値化してオクターブ切り換えの制御に用いる場合において、リップ圧信号が閾値を越えてオクターブ切り換えの指示が発生された後は、リップ圧信号が多少変動しても、発生されたオクターブ切り換えの指示が解除されることはない。すなわち、本実施形態によれば、オクターブ切り換えの動作を安定させることができる。
本実施形態には、図8(a)および(b)に示す変形例が考えられる。この変形例における下顎動作検出装置150Eには、図8(a)に示すように、上記実施形態におけるものと同様な永久磁石311および312が設けられるとともに、永久磁石312の位置を調整するための位置調整機構320がリッププレート下部180に設けられている。図8(b)はこの位置調整機構320の詳細を示す拡大断面図である。
この位置調整機構320において、リッププレート下部180に設けられた空洞321は、リッププレート上部170側が開口しており、この開口部を介して永久磁石312を永久磁石311と対面させた状態で永久磁石312を収容している。この空洞321において、リッププレート上部170と反対側は、壁322が設けられている。ボルト323は、リッププレート下部180の外側からこの壁322に設けられた雌ネジ孔に螺着され、壁322を貫通している。永久磁石312には、永久磁石311とは反対側にボルト連結部324が固定されている。空洞321内において、ボルト323の先端部はボルト連結部324に回動自在に連結されている。
この構成において、ボルト323を右回転させると、ボルト323の先端が進み、永久磁石312を永久磁石311に近づける。逆にボルト323を左回転させると、ボルト323の先端が後退し、永久磁石312を永久磁石311から離す。
この態様によれば、永久磁石311および312間の距離を調整することができるため、リッププレート上部170の動作を開始させるためにリッププレート上部170に与えることが必要な圧力の大きさを調整することができる。
<第3実施形態>
図9(a)および(b)はこの発明の第3実施形態である下顎動作検出装置150Fの構成を示す断面図である。この下顎動作検出装置150Fでは、内側に空洞を持ち、小径の円筒と大径の円筒とを連結したような外形の弾性部材401が用いられており、この弾性部材401は大径の円筒部分がリッププレート上部170に固定され、小径の円筒部分を感圧抵抗162に接触させている。本実施形態において、弾性部材401は、リッププレート上部170を感圧抵抗162から引き離す方向に付勢する付勢手段としての役割を果たすとともに、リッププレート上部170への圧力を感圧抵抗162に伝える圧力伝達手段としての役割を果たす。また、弾性部材401は、リッププレート上部170を介して与えられる圧力に応じて変形し、その圧力を吸収し、変形が限度に達した場合にはリッププレート上部170への圧力の大部分を感圧抵抗に伝える非線形な弾性特性を持っている。さらに弾性部材401に与える圧力の変形の程度との関係は、圧力を増加させたときと減少させたときとで同じではなく、ヒステリシス特性を呈する。図9(a)にはリッププレート上部170が回動しておらず、弾性部材401が変形していない状態が示されている。また、図9(b)には、リッププレート上部170が回動して弾性部材401が変形し、その変形が限度に至った状態が示されている。
図10(a)における実線のグラフは、本実施形態においてリッププレート上部170への圧力を増加させた場合におけるリッププレート上部170に対する圧力とリップ圧センサ162Sの出力電圧との関係を示す図、図10(b)における実線のグラフは、リッププレート上部170に対する圧力を減少させた場合におけるリッププレート上部170に対する圧力とリップ圧センサ162Sの出力電圧との関係を示す図である。
図10(a)に示すように、リッププレート上部170への圧力を増加させる場合、圧力がある限度を越えるまでは、弾性部材401が変形しつつ圧力を吸収するため、感圧抵抗162に伝わる圧力は僅かであり、リップ圧センサ162Sの出力電圧はほぼ0Vである。そして、リッププレート上部170への圧力がある限度を越えると、弾性部材401は変形の限度に達する。このため、リッププレート上部170への圧力と弾性部材401が元の形状に戻ろうとする復元力が感圧抵抗162に伝達され、リップ圧センサ162Sの出力電圧が立ち上がる。さらにリッププレート上部170への圧力を増加させると、それに合わせてリップ圧センサ162Sの出力電圧は上昇してゆく。リッププレート上部170への圧力を減少させると、弾性部材401はリッププレート上部170を感圧抵抗162から遠ざけて元の形状に復元しようとする。しかし、変形した状態の弾性部材401が元に戻ろうとする力は弱い。このため、リッププレート上部170に対する圧力を減少させる場合には、図10(b)に示すように、前述したリッププレート上部170に対する圧力を増加させる過程においてリップ圧センサ162Sの出力電圧が立ち上がったときの圧力よりも低い圧力において、リップ圧センサ162Sの出力電圧が立ち下がる。
本実施形態によれば、リッププレート上部170への圧力がある限度を越えたときに、リップ圧センサ162Sが作動してオクターブ切り換えが行われるため、微妙な下顎の動きにより意図せずリップ圧センサ162Sが作動してオクターブ切り換えが行われる不具合を防止することができる。また、本実施形態では、図10(a)および(b)に示すように、リッププレート上部170への圧力の増減に対するリップ圧センサ162Sの出力電圧の変化がヒステリシス特性を呈する。従って、上記第2実施形態と同様、オクターブ切り換えの動作を安定させることができる。
<第4実施形態>
図11はこの発明の第4実施形態である下顎動作検出装置150Gの構成を示す断面図である。この下顎動作検出装置150Gでは、タクトスイッチ402が用いられており、このタクトスイッチ402は台部がリッププレート上部170に固定され、この台部から突出した棒部の先端を感圧抵抗162に接触させている。本実施形態において、タクトスイッチ402は、リッププレート上部170を感圧抵抗162から引き離す方向に付勢する付勢手段としての役割を果たすとともに、リッププレート上部170への圧力を感圧抵抗162に伝える圧力伝達手段としての役割を果たす。また、タクトスイッチ402は、リッププレート上部170側からの圧力が閾値を越えた場合にOFFからONに切り換わるスイッチであって、OFFからONに切り換わるときにリッププレート上部170を介して演奏者にクリック感を与える役割を果たす。
図12は、本実施形態におけるリップ圧センサ162Sの電気的構成を示す回路図である。このリップ圧センサ162Sにおいて、電源Vccおよび接地間には、感圧抵抗162および抵抗値が固定である抵抗164が直列に挿入されている。また、感圧抵抗162および抵抗164の接続点と電源Vccとの間にはタクトスイッチ402が介挿されている。そして、感圧抵抗162および抵抗164の接続点の電圧がリップ圧センサ162Sの出力信号として図4のA/D変換器202に供給される。
図13(a)における実線のグラフは、本実施形態においてリッププレート上部170への圧力を増加させた場合におけるリッププレート上部170に対する圧力とリップ圧センサ162Sの出力電圧との関係を示す図、図13(b)における実線のグラフは、リッププレート上部170に対する圧力を減少させた場合におけるリッププレート上部170に対する圧力とリップ圧センサ162Sの出力電圧との関係を示す図である。
リッププレート上部170への圧力を0Paから増加させた場合、リッププレート上部170への圧力がOFF状態のタクトスイッチ402を介して感圧抵抗162に伝達される。従って、図13(a)に示すように、リッププレート上部170への圧力の増加に応じて感圧抵抗162の抵抗値が低下し、リップ圧センサ162Sの出力電圧が増加する。
リッププレート上部170に対する圧力が、タクトスイッチ402がOFFからONへ切り換わる圧力の閾値th1に近づくと、感圧抵抗162の抵抗値が非線形に変化する。そして、リッププレート上部170への圧力が閾値th1を越えると、タクトスイッチ402がONに切り換わる。このため、リッププレート上部170への圧力が閾値th1を越えて増加するとき、リップ圧センサ162Sの出力電圧は、図13(a)に示すように非線形に変化した後、電源Vccのレベルに急激に立ち上がる。
タクトスイッチ402がONからOFFへ切り換わる圧力の閾値th2は、閾値th1よりも低い。タクトスイッチ402がONである状態において、リッププレート上部170への圧力を減少させ、圧力が閾値th2より低くなると、タクトスイッチ402はOFF状態となる。そして、感圧抵抗162の抵抗値は、タクトスイッチ402がONからOFFになるとき、非線形に変化する。このため、リッププレート上部170への圧力が閾値th2を越えて減少するとき、リップ圧センサ162Sの出力電圧は、図示のように急激に立ち下がった後、非線形に変化し、その後、直線的に減少してゆく。
好ましい態様では、リッププレート上部170への圧力が閾値th1を越え、リップ圧センサ162Sの出力電圧が電源Vccのレベルに急激に立ち上がるときの立ち上がり前後の両電圧の中間の基準レベルVrefが予め求められる。そして、制御部210によるノートナンバ発生処理211(図4参照)では、リップ圧信号が示す電圧がこの基準レベルVrefを越えたか否かによりオクターブ切り換えを行うか否かが判断される。
この態様によれば、タクトスイッチ402がOFFの状態では、リッププレート上部170への圧力を増加させてもオクターブ切り換えの指示が発生せず、タクトスイッチ402がONに切り換わり、その際のクリック感を演奏者が感じ取るときにオクターブ切り換えの指示が発生する。従って、演奏者は、オクターブ切り換えの指示が発生するのをクリック感として体感しつつ演奏を行うことができる。
図14は本実施形態におけるリップ圧センサ162Sの変形例の電気的構成を示す回路図である。この変形例では、スライドスイッチ403が感圧抵抗162と抵抗164との間に介挿されている。このスライドスイッチ403は、接点403a、403bおよび403cを有しており、接点403bは感圧抵抗162に、接点403cは抵抗164に接続されている。そして、スライドスイッチ403は、第1の状態および第2の状態を有しており、スライド操作により、第1の状態から第2の状態へ、あるいは第2の状態から第1の状態へ切り換えることができる。ここで、第1の状態では、図14に示すように接点403aおよび403b間が開放状態、接点403bおよび403c間が短絡状態となる。また、第2の状態では、接点403aおよび403b間が短絡状態、接点403bおよび403c間が開放状態となる。
第1の状態では、感圧抵抗162が抵抗164に接続されるため、リップ圧センサ162Sの回路構成は前掲図12のものと同様になる。このため、リッププレート上部170への圧力を増減したときのリップ圧センサ162Sの出力電圧の変化は、前掲図13(a)および(b)のものと同様になる。一方、第2の状態では、感圧抵抗162が抵抗164から切り離される。図15(a)における実線グラフは、この第2の状態において、リッププレート上部170への圧力を増加させた場合におけるリッププレート上部170に対する圧力とリップ圧センサ162Sの出力電圧との関係を示す図、図15(b)における実線のグラフは、リッププレート上部170に対する圧力を減少させた場合におけるリッププレート上部170に対する圧力とリップ圧センサ162Sの出力電圧との関係を示す図である。図15(a)に示すように、リッププレート上部170に対する圧力が増加するときは、リップ圧センサ162Sの出力電圧は、圧力が閾値th1よりも低く、タクトスイッチ402がOFFであるときは0V、圧力が閾値th1を越え、タクトスイッチ402がONであるときは電源Vccのレベルとなる。また、図15(b)に示すように、リッププレート上部170に対する圧力が減少するときは、リップ圧センサ162Sの出力電圧は、圧力が閾値th2よりも高く、タクトスイッチ402がONであるときは電源Vccのレベル、圧力が閾値th2を下回り、タクトスイッチ402がOFFであるときは0Vとなる。
このように第2の状態では、リップ圧センサ162Sの出力電圧値に感圧抵抗162の抵抗値の変化が現れず、0V、Vccの2値しか取らない。従って、この第2の状態は、リップ圧信号を連続的な音色の制御等に用いるのには不向きである。しかし、リップ圧信号を2値的なオクターブ切り換えに用いるのであれば、雑音に強く、安定した動作が得られるという点において有利である。
<第5実施形態>
図16はこの発明の第5実施形態である下顎動作検出装置150Hの構成を示す断面図である。この下顎動作検出装置150Hは、感圧抵抗162を有しておらず、タクトスイッチ402がリッププレート上部170と軸受けベース160との間に介挿されており、リッププレート上部170への圧力に応じてタクトスイッチ402のON/OFF切り換えが行われるようになっている。また、本実施形態では、タクトスイッチ402および抵抗値が固定の抵抗を電源Vccおよび接地間に直列に介挿した回路構成のリップ圧センサ162Sが用いられ、抵抗の両端の電圧がリップ圧センサ162Sの出力電圧とされる(図示略)。なお、図16に示す例では、タクトスイッチ402の台部が軸受けベース160に固定され、棒部の先端がリッププレート上部170に接触させているが、台部をリッププレート上部170に固定し、棒部の先端を軸受けベース160に接触させてもよい。
本実施形態において、リッププレート上部170への圧力を増加および減少させた各場合におけるリップ圧センサ162Sの出力電圧の変化は、前掲図15(a)および(b)に示したものと同様なものとなる。
本実施形態においても、演奏者は、オクターブ切り換えの指示が発生するのをクリック感として体感しつつ演奏を行うことができる。また、本実施形態では、上記第4実施形態の変形例と同様、リップ圧センサ162Sの出力電圧は、感圧抵抗162の抵抗値の変化が現れず、0V、Vccの2値しか取らない。従って、本実施形態は、リップ圧信号を2値的なオクターブ切り換えに用いる場合において、雑音に強く、安定した動作が得られるという利点がある。
なお、上述した第4実施形態および本実施形態では、クリック感を持ったスイッチとして、台部と棒部を持ったタクトスイッチをリッププレート上部170および軸受けベース160間に設けたが、他の構成のスイッチを設けてもよい。
図17(a)および(b)は、クリック感を持ったスイッチの他の構成例を示すものである。図17(a)に示すように、このスイッチは、ゴム等の弾性材を成形した中空のドーム部404と、このドーム部404の内部において、天井部分に固定された接点405aと、底部分に固定された接点405bとにより構成されている。そして、スイッチは、例えばドーム部404の底部分が例えば軸受けベース160(感圧抵抗162でもよい)に固定され、天井部分をリッププレート上部170に接触させた状態とされる。
リッププレート上部170への圧力がない状態では、このスイッチのドーム部404は図17(a)に示すようにドーム形状をなしている。そして、リッププレート上部170に圧力が加えられると、スイッチのドーム部404は弾性変形して天井部分を下げる。そして、リッププレート上部170への圧力がある閾値を越えると、図17(b)に示すように、ドーム部404の天井部分が底部に向けて落下し、接点405aおよび405bが接触し、スイッチがONとなる。
リッププレート上部170への圧力を減らしてゆくと、天井部分が底部に向けて落下したときの閾値よりも低い閾値まで圧力が減ったとき、天井部分が元の位置に復帰し、スイッチがOFFに戻る。このようなスイッチを用いた場合でも、上記第4および第5実施形態と同様な効果が得られる。
<第6実施形態>
図18はこの発明の第6実施形態である下顎動作検出装置150Iの構成を示す断面図である。本実施形態は、上記第1および第2実施形態において、リッププレート上部170を感圧抵抗162から引き離す方向に付勢する付勢手段として、モータ501と、モータ制御装置502と、ギア列503とを用いたものである。この構成において、モータ501が発生するトルクは、ギア列503を介して、リッププレート上部170の回動軸173に伝達され、感圧抵抗162から引き離す方向の付勢力(図示の例では、時計廻りの方向のトルク)がリッププレート上部170に与えられるようになっている。モータ制御装置502は、ギア列503を介して回動軸173に連結されたモータ501の回動軸の角度を検出し、この角度からリッププレート上部170の移動量を検出する。そして、モータ制御装置502は、演奏者の下唇付近の部分に押されてリッププレート上部170が感圧抵抗162側に移動するとき、その移動量に応じた適切な付勢力がリッププレート上部170に与えられるようにモータ501が発生するトルクを制御する。
本実施形態においても、上記各実施形態と同様、演奏者の下顎の微妙な動きにより、演奏者の意図に反してオクターブ切り換えの指示が発生されるのを防止することができるという効果が得られる。また、本実施形態は、モータ制御装置502が行うトルク制御の内容を適切に定めることにより、リッププレート上部170の移動量とリッププレート上部170に与える付勢力との関係を柔軟に調整することができるという利点がある。
<第7実施形態>
図19(a)は、この発明の第7実施形態である下顎動作検出装置150Jの断面図、図19(b)は図10(a)のリッププレート上部170およびリッププレート下部180を軸受けベース160側から見た図である。
これまでに挙げた各実施形態では、リッププレート上部170は回動自在にリッププレート下部180および軸受けベース160間に支持されていた。これに対し、本実施形態では、リッププレート上部170は、リッププレート下部180に摺動自在に支持されている。
さらに詳述すると、本実施形態では、図示のように、リッププレート上部170にレール176が設けられ、リッププレート下部180にはレール176を案内するガイド溝186が設けられている。そして、リッププレート上部170は、レール176をリッププレート下部180のガイド溝186に収容させ、リップ当接面171Sと反対側の面の押圧部174を感圧抵抗162に対向させた状態で、リッププレート下部180に摺動自在に支持されている。そして、リッププレート上部170と軸受けベース160との間には、上記第1実施形態と同様、リッププレート上部170を感圧抵抗162から引き離す方向に付勢するコイルバネ303aおよび303bが介挿されている。
本実施形態においても上記第1実施形態と同様な効果が得られる。
なお、図19(a)および(b)では、摺動自在な関係にあるリッププレート上部170およびリッププレート下部180を持った構成に上記第1実施形態を適用したが、上記第3〜第5実施形態を適用してもよい。
<他の実施形態>
以上、この発明の各実施形態を説明したが、この発明には他にも実施形態があり得る。例えば次の通りである。
(1)上記各実施形態では、リッププレート上部170において演奏者の下唇付近の部分と接触するリップ当接面171Sの表面形状は、外側に膨らんだ緩やかな曲面形状とした。しかし、緩やかな曲面に局所的に出っ張った部分を設けてもよい。あるいは、リップ当接面171Sの表面形状を曲面とせず、平面にしてもよい。
(2)上記実施形態では、リッププレート下部180および軸受けベース160の両方にリッププレート上部171の回動軸173を収容する凹部を設けたが、いずれか一方のみに凹部を設けてもよい。
(3)上記実施形態において、制御部210のノートナンバ発生処理211では、リップ圧信号を1種類の閾値と比較したが、大きさの異なった複数の閾値と比較し、比較結果に基づき、放音する楽音のノートナンバを運指パターンにより決定されるノードナンバから何オクターブだけシフトするかを決定するようにしてもよい。すなわち、例えば2種類の閾値Vref0、Vref1(>Vref0)を用意し、リップ圧信号の値PlipがPlip≦Vref0の範囲内であるときはオクターブ切り換えを行わず、Vref0<Plip≦Vref1の範囲内であるときは1オクターブだけノートナンバをシフトし、Vref1<Plipの範囲内であるときは2オクターブだけノートナンバをシフトする、といった制御の態様が考えられる。また、この場合において、リップ圧センサ162Sの特性に、例えば図7(a)および(b)、図10(a)および(b)に示すように、リップ圧センサ162Sの出力電圧が急激に立ち上がる区間と、リッププレート上部170への圧力に対してほぼ直線的に変化する区間とがある場合、前者の区間においてリップ圧センサ162Sの出力電圧の立ち上がり前後の値の中間レベルをVref0とし、後者の区間に属するリップ圧センサ162Sの出力電圧の範囲の中からVref1を選択してもよい。
1……頭管、100……吹奏ユニット、150,150A〜150J……下顎動作検出装置、160……軸受けベース、162……感圧抵抗、163……凹部、170……リッププレート上部、171……リップ当接部、173……回動軸、174……押圧部、180……リッププレート下部、181……凹部、162S……リップ圧センサ、401……弾性部材、402……タクトスイッチ、404……ドーム部、405a,405b……接点、501……モータ、502……モータ制御装置、503……ギア列。