JP2009003065A - 偏光変換素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】厚さの薄い水晶よりなる位相差板を偏光分離素子上に容易に形成することができるとともに、取り扱い易く、しかも作業性に優れた偏光変換素子の製造方法を提供する。【解決手段】偏光分離素子11の一方の面に、エッチングストップ層13が形成される。そして、エッチングストップ層13の表面に、1/2λ位相差機能を備えた水晶位相差板120が貼り合わされる。そして、レジスト14が水晶位相差板120の表面にパターニングされる。そして、反応性イオンエッチングによりレジスト14の覆われていない領域の水晶位相差板120のエッチングが行なわれる。そして、多数に分離された1/2λ位相差板12上のレジスト14がアセトンなどのフォトレジスト剥離剤を用いて剥離される。これにより、偏光分離素子11上に一枚の板状の水晶位相差板120がストライプ状に多数に分離された1/2λ位相差板12を備えた偏光変換素子10が完成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、画像を投写表示するプロジェクタに用いられる偏光変換素子の製造方法に関する。
画像を投写表示するプロジェクタは、電気光学装置を用いて、照明光学系から射出された照明光を画像情報(画像信号)に応じて変調し、変調された光線束をスクリーン上に投写して画像が表示される。このようなプロジェクタによって表示される画像は、均一で明るいことが好ましく、これに用いられる照明光学系の光の利用効率が高いことが望まれる。
照明光学系には、一般的に、光の利用効率を向上させる観点から、光源から射出された非偏光な光(白色光)を複数の中間光線束に分割するインテグレータと、分割された複数の中間光線束を1種類の直線偏光光に変換するための偏光変換素子などが使用されている。
図6は、一般的な偏光変換素子を説明するための模式図であり、図6(a)は偏光変換素子の斜視図であり、図6(b)は図6(a)を+z方向から見た偏光変換素子の平面図である。
図6(a)および図6(b)において、偏光変換素子50は、入射した光を二種類の偏光光に分離するための偏光分離素子(PBS)51と、偏光分離素子51の光射出面側に選択的に配置され、二種類の偏光光の一方を他方の偏光光に変換するための位相差板としての1/2λ位相差板52とを備えている。なお、偏光変換素子50に入射する光は、その主光線(中心軸)が、組み込まれて用いられるプロジェクタにおける照明光学系のシステム光軸100aに略平行に入射する。
偏光分離素子51は、システム光軸100aに直交する光入射面と、光入射面に略平行な光射出面と、光入射面および光射出面と所定の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた複数の透光性基板としてのガラス材51aと、複数の界面に交互に設けられた複数の偏光分離膜51b(図中に実線で示す)および反射膜51c(図中に破線で示す)とを備えている。
複数の界面の光入射面(光射出面)との所定の角度は、一般的に45°であり、ガラス材51aは、x−y軸方向において略平行四辺形の断面形状を有しz軸方向に延伸する柱状を成している。
偏光分離膜51bは誘電体多層膜で形成され、入射した光線束(s偏光光+p偏光光)を、s偏光の部分光線束(s偏光光)とp偏光の部分光線束(p偏光光)とに分離して、s偏光光を反射し、p偏光光を透過する機能を有する。一方、反射膜51cは誘電体多層膜または金属膜で形成され、反射膜51cに入射したs偏光光を反射する機能を有する。
λ/2位相差板52は、ストライプ状に配列して設けられた位相差層52aと開口層52bとによって構成されている。位相差層52aは、ガラス材51aに形成された偏光分離膜51bを透過したp偏光光が入射する光射出面側の面に配置され、入射するp偏光光を、偏光方向が直交するs偏光光に変換する機能を有している。一方、開口層52bは、反射膜51cで反射されて入射するs偏光光をそのまま透過する機能を有している。
このように機能するλ/2位相差板52は、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムなどよりなる位相差層52aをトリアセチルセルロース(TAC)フィルムで挟み込んだ形態の位相差フィルムである。したがって、開口層52bは、TACフィルムにより構成されている。
なお、偏光変換素子50は、偏光変換素子50に入射する光が偏光分離膜51bのみに入射し、反射膜51cには入射しないように配列された遮光板60(図6(b)中に二点鎖線で示す)が、光入射面側に配設されて用いられる。
遮光板60としては、アルミニウム板などの遮光性を有する金属板に開口部60aを設けて遮光部60bを形成したものが例示される。その他の例として、ガラス板などの平板状の透明板に、クロムなどの遮光性の膜を遮光部(60b)としてストライプ状に形成したものが挙げられる。
このように構成された偏光変換素子50は、図6(b)に示すように、遮光板60の開口部60aより偏光分離素子51のガラス材51aに入射した光(s偏光光+p偏光光)が、偏光分離膜51bにおいてs偏光光とp偏光光の2つの部分光線束に分離される。そして、偏光分離膜51bで分離された一方のs偏光光が、反射膜51cにおいて反射されるとともに、分離された他方のp偏光光が偏光分離膜51bを透過してλ/2位相差板52においてs偏光光に変換される。すなわち、偏光変換素子50において1種類の偏光光に変換されたs偏光光が、偏光変換素子50からシステム光軸100aと略平行方向に射出される。
また、偏光変換素子50は、偏光分離膜51bで分離されて反射膜51cにおいて反射されるs偏光光の光射出面側の面に、λ/2位相差板52の位相差層52aを配置することにより、入射する光(s偏光光+p偏光光)が1種類のp偏光光に変換されて射出することができる偏光変換素子50が得られる。
以上のように、偏光変換素子50を構成するλ/2位相差板52として、有機材料系の位相差フィルムが用いられた従来の偏光変換素子50は、光源から射出された光が通過することによって、位相差フィルムが黄変したり、発熱したりして、位相差フィルムの光学特性の劣化を招く。すなわち耐熱性および耐光性の信頼性に劣るという問題を有している。こうした問題に対応するために、λ/2位相差板を水晶を用いて構成した偏光変換素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−302523号公報
しかしながら水晶で形成された1/2λ位相差板は、可視光波長域(400nm〜700nm)の略全帯域に対応する所定の機能を得るためには、300μm程度以下の薄い板厚で構成される。また、偏光分離素子の光射出面側の位相差層として、短冊状に加工された1/2λ位相差板を、一枚ずつストライプ状に配列して貼り合わされて偏光変換素子が製造されている。こうした偏光変換素子は、短冊状に加工あるいはその後の工程間の取り扱いにおいて、割れ、クラックなどが多発し易い。
水晶は破損し易く、水晶で形成された1/2λ位相差板を備えた偏光変換素子には、取り扱い易く、しかも作業性に優れた新たな製造方法が求められている。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本適用例にかかる偏光変換素子の製造方法は、偏光分離素子が、光入射面および前記光入射面に略平行な光射出面に所定の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた複数の透光性基板と、前記複数の界面に交互に設けられた偏光分離膜および反射膜とを含み構成され、前記偏光分離素子の前記光射出面に選択的に配置された位相差板が、水晶を用いて構成された偏光変換素子の製造方法であって、少なくとも、前記偏光分離素子の前記光射出面に平板の前記位相差板を貼り合せる位相差板貼り合せ工程と、前記光射出面に貼り合された前記位相差板の前記複数の界面に交互に設けられた前記偏光分離膜または前記反射膜のどちらか一方の光が入射する領域をエッチングするエッチング工程とを備えたことを特徴とする。
これによれば、少なくとも、偏光分離素子の光射出面に水晶の平板よりなる位相差板を貼り合せる位相差板貼り合せ工程と、光射出面に貼り合された位相差板の複数の界面に交互に設けられた偏光分離膜または反射膜のどちらか一方の光が入射する領域をエッチングするエッチング工程とを備えることにより、一枚の平板よりなる位相差板がストライプ状に多数に分離された位相差板が形成される。よって、こうした工程を含む製造方法により製造された偏光変換素子は、厚さの薄い水晶よりなる位相差板を偏光分離素子上に容易に形成することができるとともに、エッチングされて短冊状に加工された位相差板を一枚ずつストライプ状に配列して貼り合わすことなく、取り扱い易く、しかも作業性に優れた偏光変換素子の製造方法が得られる。
[適用例2]
上記適用例にかかる偏光変換素子の製造方法は、前記位相差板貼り合せ工程前に、前記偏光分離素子の表面にエッチングストップ層を形成するエッチングストップ層形成工程を備えるのが好ましい。
これによれば、位相差板貼り合せ工程前に、偏光分離素子の表面にエッチングストップ層を形成するエッチングストップ層形成工程を備えることにより、エッチング工程におけるエッチングの際に、偏光分離素子へのオーバーエッチングなどを防ぐことができる。すなわち、偏光分離素子の機能を損なうのを防ぐことができる。
[適用例3]
上記適用例にかかる偏光変換素子の製造方法は、前記エッチングストップ層は、真空蒸着して形成されたフッ化マグネシウム(MgF2)膜であることが好ましい。
これによれば、エッチングストップ層が真空蒸着して形成されたフッ化マグネシウム(MgF2)膜であることにより、エッチング工程におけるエッチングの際に、偏光分離素子へのオーバーエッチングを確実に防ぐことができる。
[適用例4]
上記適用例にかかる偏光変換素子の製造方法は、前記位相差板貼り合せ工程において貼り合わされた平板の前記位相差板を、所定の厚さに研磨する研磨工程を、さらに備えるのが好ましい。
これによれば、位相差板貼り合せ工程において貼り合わされた平板の水晶位相差板を、所定の厚さに研磨する研磨工程を、さらに備えることにより、位相差板貼り合せ工程において所定の厚さよりも厚い水晶位相差板を貼り合わせた後に、研磨工程において所定の厚さに研磨されるので、より取り扱い易く、より作業性に優れた偏光変換素子の製造方法が得られる。
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る偏光変換素子の概略構成を示す斜視図である。
図1において、偏光変換素子10は、入射した光を二種類の偏光光に分離するための偏光分離素子(PBS)11と、偏光分離素子11の一方の面に選択的に配置された多数の1/2λ位相差板12とを備えている。この偏光変換素子10の光入射面は、偏光分離素子11の1/2λ位相差板12が配置された面に相対する面である。
この偏光変換素子10は、上記図6に示した一般的な偏光変換素子50を構成するλ/2位相差板52の基材が、位相差フィルムにより構成されているのに対して、水晶を用いて形成されていることのみが異なる。したがって、偏光分離素子11の構成、偏光分離素子11の機能(機能動作)および1/2λ位相差板12の機能についての説明は、省略または簡略化する。
偏光分離素子11は、略平行四辺形の断面形状を有する柱状のガラス材11a(但し、両側最端部は三角柱形状のガラス材)が、複数貼り合わされて構成されている。それぞれのガラス材11aの界面には、図1中に実線で示す偏光分離膜11bと、破線で示す反射膜11cとが交互に設けられている。偏光分離膜11bは、誘電体多層膜で形成され、入射する光線束を偏光方向の異なる二つの偏光光に分離する機能を有する。反射膜は、誘電体多層膜または金属膜で形成され、偏光分離膜で分離されて入射する偏光光を反射する機能を有する。すなわち、偏光分離膜11bは、入射した光線束(s偏光光+p偏光光)を、s偏光の部分光線束(s偏光光)とp偏光の部分光線束(p偏光光)とに分離して、s偏光光を反射し、p偏光光を透過する。一方、反射膜11cは、偏光分離膜11bで分離されて反射膜11cに入射したs偏光光を反射する機能を有する。
1/2λ位相差板12は、入射する光の偏光状態を変換して射出する機能を有する。1/2λ位相差板12は、偏光分離素子11を構成するガラス材11aに形成された各偏光分離膜11bを透過したp偏光光が入射する光射出面側の面に配置されている。したがって、図1に示す本実施形態における1/2λ位相差板12は、ガラス材11aに形成されたそれぞれの偏光分離膜11bに対応する位置に、1/2λ位相差板12が配置されている。
この1/2λ位相差板12は、偏光分離膜11bを透過して1/2λ位相差板12に入射するp偏光光を、偏光方向が直交するs偏光光に変換する(図6(b)参照)。また、1/2λ位相差板12は水晶で形成されている。なお、本実施形態における水晶とは、SiO2の単結晶であり、人工水晶または天然水晶のどちらであってもよい。
このように構成された偏光変換素子10は、入射する光(s偏光光+p偏光光)を1種類のs偏光光に変換して射出する偏光変換素子として、プロジェクタなどの照明光学系に用いることができる。
次に、この偏光変換素子10の製造方法について説明する。なお、以下に示す偏光変換素子10の製造方法は、既に加工されて完成状態の偏光分離素子11の光射出面に、多数の1/2λ位相差板12を形成する場合で説明する。これについては、以後に説明する製造方法2の場合についても同様である。
[製造方法1]
製造方法1は、ドライエッチング法を用いて偏光分離素子11の光射出面に1/2λ位相差板12を形成する偏光変換素子10の製造方法である。
図2は、製造方法1における偏光変換素子の製造方法を模式的に示す工程図である。なお、以下に示す図面においては、説明の便宜のために各構成要素の寸法や比率を実際のものとは異ならせてある。
偏光変換素子10は、エッチングストップ層形成工程(図2(a))、水晶位相差板貼り合せ工程(図2(b))、レジストパターニング工程(図2(c))、エッチング工程(図2(d))、レジスト剥離工程(図2(e))の各工程が、この順に行なわれて加工される。
図2(a)において、エッチングストップ層形成工程は、既に完成した偏光分離素子11の一方の面(光射出面)に、エッチングストップ層13が形成される。エッチングストップ層13は、MgF2(フッ化マグネシウム)を蒸着源として、真空蒸着して形成される。形成されるエッチングストップ層13の膜厚は200nm程度である。このMgF2よりなるエッチングストップ層13は、後工程のエッチング工程におけるエッチングの際に、偏光分離素子11へのオーバーエッチングなどを防ぐ機能を有する。
そして、水晶位相差板貼り合せ工程に移行する。
図2(b)に示す水晶位相差板貼り合せ工程では、エッチングストップ層13の表面に、1/2λ位相差機能を備えた水晶位相差板120が貼り合わされる。
図3は、水晶位相差板貼り合せ工程において水晶位相差板120が貼り合わされた態様を示す斜視図である。貼り合される水晶位相差板120は一枚の平板(単板)であり、図3中に実線の矢印で示すように、光学軸に平行な面がエッチングストップ層13の表面(偏光分離素子11の光射出面)となるように、配置される。また、水晶位相差板120は、予め300μm未満の所定の厚さに加工されている。
水晶位相差板120の貼り合わせには、接着加工が容易で、比較的高温度に耐えうる一液性エポキシまたは一液性アクリル系の紫外線硬化型接着剤を用いることが望ましい。望ましい紫外線硬化型接着剤の一例としては、サンライズMSI株式会社製のPHOTOボンド(登録商標)が挙げられる。紫外線硬化型接着剤は、塗布した後、ケミカルランプや高圧水銀灯を用いて積算光量600mj/cm2(照度2mW/cm2)程度、照射して硬化される。硬化された接着剤の厚さは、30nm〜300nmが好ましい。
なお、貼り合わされる水晶位相差板120は、接着時の取り扱い性の面などを考慮して、予め所定の厚さに加工されたものに代えて、所定の厚さよりも厚い水晶位相差板をエッチングストップ層13の表面(偏光分離素子11の光射出面上)に貼り合わした後に、貼り合わされた水晶位相差板の表面を所定の厚さに研磨してもよい。この場合には、水晶位相差板貼り合せ工程の次に研磨工程が設けられる。
そして、レジストパターニング工程に移行する。
図2(c)に示すレジストパターニング工程では、レジスト14が水晶位相差板120の表面にパターニングされる。
レジスト14のパターニングは、一般的なパターニング法を用いて行なわれる。それは、フォトリソ用のレジスト(フォトレジスト)が水晶位相差板120の表面に塗布されるレジスト塗布工程と、レジストの緻密化と密着性の強化のためにレジストを乾燥するプレベーキング工程と、所定の露光パターンを有するフォトマスクを位置合わせして露光する露光工程と、現像液で現像を行なう現像工程と、パターニングされたレジストの密着性を高めるためのポストベーキング工程とにより行なわれる。
このレジストパターニングは、偏光分離素子11を構成するガラス材11aに形成された各偏光分離膜11bを透過したp偏光光が入射する光射出面側のそれぞれの面に、レジスト14がパターニングされる。パターニングされたレジスト14は、次工程のエッチング工程においてポジ型のエッチングレジストとして機能する。
そして、エッチング工程に移行する。
図2(d)に示すエッチング工程では、ドライエッチング法の反応性イオンエッチング(RIE)により水晶位相差板120のエッチングが行なわれる。
エッチングは、真空容器内に配備された二つの電極のうちの一方の電極(陰極)にレジスト14がパターニングされた偏光分離素子11を配置して、真空容器内を真空に排気した後、反応性ガスとしてトリフロメタン(CHF3)およびO2(酸素)が導入される。そして、反応性ガスに電磁波を与えてプラズマ化するとともに、陰極に高周波が印加されて、レジスト14の覆われていない領域の水晶位相差板120がエッチングされる。エッチングレートは1nm/sec程度が望ましい。
このエッチング工程により、一枚の板状の水晶位相差板120がストライプ状に多数(本実施形態の場合は4個)に分離された1/2λ位相差板12が形成される。そして、レジスト剥離工程に移行する。
図2(e)に示すレジスト剥離工程では、多数に分離された1/2λ位相差板12上のレジスト14が剥離される。レジスト14の剥離は、アセトンなどのフォトレジスト剥離剤を用いて剥離される。これにより、偏光分離素子11と1/2λ位相差板12とを備えた偏光変換素子10が完成する(図1参照)。
完成した偏光変換素子10は、偏光分離素子11の偏光分離膜11bに入射する光(s偏光光+p偏光光)が、s偏光光とp偏光光とに分離されて、偏光分離膜11bを透過したp偏光光をs偏光光に変換し、偏光分離膜11bおよび反射膜11cで反射されたs偏光光とともに偏光変換素子10から射出する機能を有する(図6(b)参照)。
なお、完成した偏光変換素子10には、偏光分離素子11と1/2λ位相差板12との間に、エッチングストップ層13として形成されたMgF2(フッ化マグネシウム)の単結晶薄膜層が残存することになるが、MgF2は紫外線領域から中赤外線領域の広範囲な透過波長領域を有するために弊害とならない。
また、完成した偏光変換素子10は、一方の面または双方の面に、反射防止(AR)層を設けてもよい。AR層としては、例えば、二酸化珪素、酸化チタンなどの物質を蒸着またはスパッタリング処理、あるいはフッ素系物質を薄く塗布することにより形成することができる。さらに、完成した偏光変換素子10は、透過型プロジェクタ、反射型プロジェクタなどの照明光学系に好ましく用いることができる。
[製造方法2]
製造方法2は、ウエットエッチング法を用いて偏光分離素子11の光射出面側の面に1/2λ位相差板12を形成する偏光変換素子10の製造方法である。
図4は、製造方法2における偏光変換素子の製造方法を模式的に示す工程図である。
偏光変換素子10は、エッチングストップ層形成工程(図4(a))、水晶位相差板貼り合せ工程(図4(b))、プロテクト層形成工程(図4(c))、レジストパターニング工程(図4(d))、プロテクト層エッチング工程(図4(e))、水晶エッチング工程(図4(f))、プロテクト層・レジスト剥離工程(図4(g))の各工程が、この順に行なわれて加工される。なお、以下に説明する製造方法において、上記製造方法1(ドライエッチング法)と同一工程については、説明を省略または簡略化する。
図4(a)において、エッチングストップ層形成工程は、上記製造方法1(ドライエッチング法)の場合と同様に、既に完成した偏光分離素子11の一方の面(光射出面)に、エッチングストップ層13が形成される。エッチングストップ層13は、MgF2(フッ化マグネシウム)を蒸着源として、真空蒸着して形成される。形成されるエッチングストップ層13の膜厚は200nm程度である。
そして、水晶位相差板貼り合せ工程に移行する。
図4(b)に示す水晶位相差板貼り合せ工程では、エッチングストップ層13の表面に、水晶位相差板120が貼り合わされる。
貼り合わされる水晶位相差板120は、予め300μm未満の所定の厚さに加工された面がエッチングストップ層13の表面となるように、紫外線硬化型接着剤を用いてエッチングストップ層13の表面に貼り合わされる(図3参照)。
なお、貼り合わされる水晶位相差板120は、予め所定の厚さに加工されたものに代えて、所定の厚さよりも厚い水晶位相差板をエッチングストップ層13の表面に貼り合わした後に、貼り合わされた水晶位相差板の表面を所定の厚さに研磨してもよい。この場合には、水晶位相差板貼り合せ工程の次に研磨工程が設けられる。
そして、プロテクト層形成工程に移行する。
図4(c)に示すプロテクト層形成工程では、水晶位相差板120の表面にプロテクト層150が成膜される。プロテクト層150は、真空蒸着法またはスパッタ法を用いて下地層としてクロム(Cr)、その上層に金(Au)の金属膜が成膜される。このプロテクト層150は、後工程のエッチング工程におけるエッチングの際に、エッチング液により水晶位相差板120の表面が粗くなるのを防ぐなどの機能を有する。
そして、レジストパターニング工程に移行する。
図4(d)に示すレジストパターニング工程では、レジスト14がプロテクト層150の表面にパターニングされる。
レジスト14のパターニングは、一般的なパターニング法を用いて行なわれる。それは、フォトリソ用のレジスト(フォトレジスト)がプロテクト層150の表面に塗布されるレジスト塗布工程、レジストの緻密化と密着性の強化のためにレジストを乾燥するプレベーキング工程、マスク合わせして露光する露光工程、現像液で現像を行なう現像工程、およびパターニングされたレジストの密着性を高めるためのポストベーキング工程により行なわれる。
このレジストパターニングは、偏光分離素子11を構成するガラス材11aに形成された各偏光分離膜11bを透過したp偏光光が入射する光射出面側のそれぞれの面に対応した位置に、レジスト14がパターニングされる。
そして、プロテクト層エッチング工程に移行する。
図4(e)に示すプロテクト層エッチング工程では、パターニングされたレジスト14をポジ型のエッチングレジストとして、エッチング液を用いてプロテクト層150のウエットエッチングが行なわれる。エッチング液としては、例えば、ペルオキソ2硫酸アンモニウム水溶液などの過硫酸アンモニウム水溶液、亜硫酸ナトリウムを含むアンモニア水溶液、またはフェリシアン化カリウムを含むアルカリ性水溶液などが用いられる。ウエットエッチング法は、エッチング液を処理面に吹き付けるスプレー法や、エッチング液を処理面に滴下するスピン法などを用いることができる。これにより、レジスト14に覆われていない領域のプロテクト層150がエッチングされて、レジスト14の下層にそれぞれ分離されたプロテクト層(分離プロテクト層)15が形成される。
そして、水晶エッチング工程に移行する。
図4(f)に示す水晶エッチング工程では、パターニングされたレジスト14および分離プロテクト層15をポジ型のフォトマスクとして、水晶位相差板120のウエットエッチングが行なわれる。
エッチング液として、例えば、フッ化アンモニウム(H4FN)が用いられる。これにより、レジスト14および分離プロテクト層15に覆われていない領域の水晶位相差板120がエッチングされる。エッチングレートは20nm/sec程度が望ましい。
この水晶エッチング工程により、一枚の平板の水晶位相差板120から多数に分離された1/2λ位相差板12が形成される。
そして、プロテクト層・レジスト剥離工程に移行する。
図4(g)に示すプロテクト層・レジスト剥離工程では、多数に分離された1/2λ位相差板12上のレジスト14および分離プロテクト層15が剥離される。レジスト14の剥離は、アセトンなどのフォトレジスト剥離剤を用いて剥離される。また、分離プロテクト層(Cr/Auの金属膜)15は、Cr剥離液およびAu剥離液用いて剥離される。Cr剥離液およびAu剥離液は、プロテクト層エッチング工程において用いたエッチング液を用いることもできる。これにより、偏光分離素子11と1/2λ位相差板12とを備えた偏光変換素子10が完成する(図1参照)。
以上の製造方法によれば、偏光分離素子11の一方の面(光射出面)に、一枚の平板(単板)よりなる1/2λ位相差機能を備えた水晶位相差板120が貼り合わされた(水晶位相差板貼り合せ工程)後に、水晶位相差板120のエッチングが行なわれ(エッチング工程)、一枚の平板の水晶位相差板120がストライプ状に多数に分離された1/2λ位相差板12が形成される。したがって、こうした工程を含む製造方法により製造された偏光変換素子10は、厚さの薄い1/2λ位相差板12を偏光分離素子11上に容易に形成することができるとともに、短冊状に加工された1/2λ位相差板を、一枚ずつストライプ状に配列して貼り合わすことなく、取り扱い易く、しかも作業性に優れた偏光変換素子の製造方法が得られる。
また、偏光分離素子11の1/2λ位相差板12が形成される一方の面の表面に、真空蒸着してMgF2(フッ化マグネシウム)よりなるエッチングストップ層13が形成されていることにより、エッチング工程におけるエッチングの際に、偏光分離素子11へのオーバーエッチングなどを防ぐことができる。すなわち、偏光分離素子11の機能を損なうのを防ぐことができる。
また、位相差板貼り合せ工程において所定の厚さよりも厚い平板(単板)の水晶位相差板120を貼り合わせた後に、所定の厚さに研磨する研磨工程をさらに備えることにより、より取り扱い易く、より作業性に優れた偏光変換素子の製造方法が得られる。
さらに、1/2λ位相差板12が水晶で形成されていることにより、有機材料系の位相差フィルムが用いられた従来の偏光変換素子に比べて、耐熱性および耐光性が向上し、光学特性の劣化を低減することができる。
さらにまた、この偏光変換素子の製造方法に基づいて得られる偏光変換素子10は、透過型プロジェクタや反射型プロジェクタなどの照明光学系に組み込まれて用いられることにより、変換効率に優れた明るい画像を得ることができる。
なお、本実施形態は、以下の変形例として挙げられているような形態であっても、本実施形態と同様な効果を得ることが可能である。
(変形例1)
偏光分離素子11の光射出面側の面に形成される水晶位相差板は、1/2λ位相差機能を備えた2枚の平板を積層した構成の場合であってもよい。
図5(a)は、変形例1における水晶位相差板貼り合せ工程において水晶位相差板が貼り合わされた態様を示す斜視図であり、図5(b)は、変形例1に係る偏光変換素子の斜視図である。
以下、偏光変換素子20の製造方法について説明するが、偏光変換素子20の製造方法は、上記製造方法1および製造方法2における水晶位相差板貼り合せ工程のみが異なる。したがって水晶位相差板貼り合せ工程以外の工程については省略する。
図5(a)において、水晶位相差板貼り合せ工程は、偏光分離素子11上に形成されたエッチングストップ層13(図示せず)の表面に、予め積層して貼り合わされた2枚の1/2λ位相差機能を備えた水晶位相差板121,122が、水晶位相差板121を偏光分離素子11側にして、紫外線硬化型接着剤を用いて貼り合わされる。
そして、レジストパターニング工程(製造方法1の場合)、またはプロテクト層形成工程(製造方法2の場合)に移行する。その後、その工程に続く各工程における加工が行なわれて、図5(b)に示す偏光変換素子20が完成する。
この偏光変換素子20の製造方法によれば、偏光分離素子11上(エッチングストップ層13の表面)に貼り合わされる水晶位相差板121に、予め水晶位相差板122が貼り合わされていることから、一枚(単板)の水晶位相差板を用いた場合に比べて厚さが厚くなるので取り扱いがし易くなる。
図5(b)において、完成した偏光変換素子20は、入射した光を二種類の偏光光に分離するための偏光分離素子11の一方の面に、1/2λ位相差板12aと1/2λ位相差板12bとが積層された1/2λ位相差板12Bが選択的に配置されてストライプ状に形成されている。この偏光変換素子20は、位相差の波長依存性を抑えた広域波長板として機能することができる。なお、波長域は、1/2λ位相差板12a,12bの各板厚を調整することで可能である。
(変形例2)
変形例1を含む本実施形態の偏光変換素子10,20は、いずれも入射する光(s偏光光+p偏光光)が1種類のs偏光光に変換されて射出することができる構成の場合で説明したが、入射する光が1種類のp偏光光に変換されて射出することができる構成であってもよい。
また、水晶位相差板貼り合せ工程は、予め積層して貼り合わされた2枚の1/2λ位相差機能を備えた水晶位相差板121,122に代えて、予め所定の厚さに加工された水晶位相差板121を偏光分離素子11上に形成されたエッチングストップ層の表面に、紫外線硬化型接着剤を用いて貼り合わした後に、水晶位相差板121の表面に所定の厚さよりも厚い水晶位相差板122を紫外線硬化型接着剤を用いて貼り合わせて、水晶位相差板122の表面を所定の厚さに研磨してもよい。
本実施形態に係る偏光変換素子の概略構成を示す斜視図。 製造方法1における偏光変換素子の製造方法を模式的に示す工程図。 水晶位相差板貼り合せ工程において水晶位相差板が貼り合わされた態様を示す斜視図。 製造方法2における偏光変換素子の製造方法を模式的に示す工程図。 (a)は、変形例1における水晶位相差板貼り合せ工程において水晶位相差板が貼り合わされた態様を示す斜視図であり、(b)は、変形例1に係る偏光変換素子の斜視図。 従来の一般的な偏光変換素子を説明するための模式図であり、(a)は偏光変換素子の斜視図、(b)は(a)を+z方向から見た偏光変換素子の平面図。
符号の説明
10,20…偏光変換素子、11…偏光分離素子、11a…ガラス材、11b…偏光分離膜、11c…反射膜、12,12a,12b…1/2λ位相差板、13…エッチングストップ層、14…レジスト、15…分離プロテクト層、120,121,122…水晶位相差板、150…プロテクト層。

Claims (4)

  1. 偏光分離素子が、光入射面および前記光入射面に略平行な光射出面に所定の角度を成す複数の界面で順次貼り合わされた複数の透光性基板と、前記複数の界面に交互に設けられた偏光分離膜および反射膜とを含み構成され、
    前記偏光分離素子の前記光射出面に選択的に配置された位相差板が、水晶を用いて構成された偏光変換素子の製造方法であって、
    少なくとも、前記偏光分離素子の前記光射出面に平板の前記位相差板を貼り合せる位相差板貼り合せ工程と、前記光射出面に貼り合された前記位相差板の前記複数の界面に交互に設けられた前記偏光分離膜または前記反射膜のどちらか一方の光が入射する領域をエッチングするエッチング工程とを備えたことを特徴とする偏光変換素子の製造方法。
  2. 請求項1に記載の偏光変換素子の製造方法において、
    前記位相差板貼り合せ工程前に、前記偏光分離素子の表面にエッチングストップ層を形成するエッチングストップ層形成工程を備えたことを特徴とする偏光変換素子の製造方法。
  3. 請求項2に記載の偏光変換素子の製造方法において、
    前記エッチングストップ層は、真空蒸着して形成されたフッ化マグネシウム(MgF2)膜であることを特徴とする偏光変換素子の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の偏光変換素子の製造方法において、
    前記位相差板貼り合せ工程において貼り合わされた平板の前記位相差板を、所定の厚さに研磨する研磨工程を、さらに備えたことを特徴とする偏光変換素子の製造方法。
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