以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の第1実施の形態である駆動力調整機構60a,60bが搭載された四輪駆動車1について説明する。本実施の形態の駆動力調整機構60a,60bは、原動機10から出力される駆動力を後輪70a,70bにそれぞれ分配するものである。
図1は、駆動力調整機構60a,60bが搭載された四輪駆動車1を示した概略図である。なお、図1に示す矢印Xは、四輪駆動車1の前後方向を示しており、矢印Yは、四輪駆動車1の左右方向を示している。
図1に示すように、四輪駆動車1は、内燃機関であり駆動力を発生する原動機10と、その原動機10から連結軸91を介して入力された駆動力を変速部21により変速して出力するトランスミッション20と、そのトランスミッション20から連結軸92を介して入力された駆動力を前後駆動力分配装置分配部31により連結軸96と中央ドライブシャフト94とに分配する前後駆動力分配装置30と、その前後駆動力分配装置30によって連結軸96に分配された駆動力を前側ドライブシャフト93a,93bに分配する前輪デファレンシャルギヤ部32と、その前輪デファレンシャルギヤ部32で前側ドライブシャフト93a,93bに分配された駆動力が伝達されて回転動作する一対の前輪40a,40bと、前後駆動力分配装置30によって中央ドライブシャフト94に分配された駆動力が伝達され、その伝達された駆動力を後側ドライブシャフト95a,95bに分配する駆動力分配機構50と、その駆動力分配機構50により後側ドライブシャフト95a,95bに分配される駆動力の割合を調整する駆動力調整機構60a,60bと、その駆動力調整機構60a,60bによって後側ドライブシャフト95a,95bそれぞれに調整された駆動力が伝達されて回転動作する一対の後輪70a,70bと、駆動力調整機構60a,60bの各種制御を行う制御装置80とを有して構成されている。なお、駆動力分配機構50と駆動力調整機構60a,60bとは、箱形のケース61の内部に回転可能に固定されている。
その箱形のケース61は、駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aを収容する第1ケース62aと、駆動力分配機構50を収容する第2ケース63aとで構成されている。第1ケース62aと第2ケース63aとは、後に詳細に説明する(図2及び図3参照)。
なお、前輪デファレンシャルギヤ部32は、連結軸96から伝達される駆動力を前側ドライブシャフト93a,93bに分配すると共に連結軸96の回転数を前側ドライブシャフト93a,93bに分配する作動装置である。
駆動力分配機構50は、中央ドライブシャフト94と連結される入力ギヤユニット51と、入力ギヤユニット51に対して直交する方向(図1矢印Y方向)に配置される出力ギヤユニット52とを有して構成されている。よって、駆動力分配機構50は、入力ギヤユニット51に入力された駆動力を、出力ギヤユニット52により分配し、駆動力分配機構50の左右(図1矢印Y方向両側)に配置された駆動力調整機構60a,60bに駆動力を分配するものである。これにより、入力ギヤユニット51(入力軸)に入力された駆動力を、出力ギヤユニット52の回転軸521(入力軸)を介して、後側ドライブシャフト95a(出力軸)に連結されるシャフト113aに伝達させている。
駆動力調整機構60a,60bは、駆動力分配機構50の左右(図1矢印Y方向)に対称に設置され、出力ギヤユニット52の両端部にそれぞれ連結されている。なお、駆動力調整機構60a,60bは、駆動力分配機構50の右側(図1矢印Y方向右側)が駆動力調整機構60aであり、駆動力分配機構50の左側(図1矢印Y方向左側)が駆動力調整機構60bである。
駆動力調整機構60aは、駆動力の伝達を調整する駆動力調整部100aと、駆動力調整部100aにオイルを送り出すオイル供給機構200aと、そのオイル供給機構200aにより圧送されたオイルの液圧を検出する圧力検出機構300aとを有して構成されている。駆動力調整部100aは、伝達される駆動力の調整をオイル供給機構200aがオイルを送り出すことで発生する液圧により行なわれる。また、その液圧は圧力検出機構300aにより検出され、その圧力検出機構300aの検出結果は制御装置80に入力される。駆動力調整機構60bは、駆動力調整機構60aと同様に構成されており、駆動力調整部100bと、オイル供給機構200bと、圧力検出機構300bとを有して構成されている。
制御装置80は、圧力検出機構300a,300bからの入力線81a,81bとオイル供給機構200a,200bへの出力線82a,82bとが接続されるI/Oポート83と、主に液圧の情報に基づきオイル供給機構200a,200bを制御する圧力制御プログラム87と、その圧力制御プログラム87が書き込まれた記憶装置であるROM84と、その圧力制御プログラム87に基づき演算する演算装置であるCPU85と、I/Oポート83とROM84とCPU85とを電気的に接続する接続回路であるバスライン86とを有して構成されている。なお、本実施の形態では、制御装置80は、圧力検出機構300a,300bの検出結果に基づき、駆動力調整部100a,100bが作動するために必要なオイルを供給するオイル供給機構200a,200bを個別にフィードバック制御している。
次に、図2及び図3を参照して、駆動力調整機構60a(図1参照)の駆動力調整部100aの詳細な構成について説明する。なお、図2及び図3の説明においては、駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aについて説明し、駆動力調整機構60bの駆動力調整部100bは、駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aと同様に構成されているため、その詳細な説明は省略する。図2は、駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aの断面図であり、駆動力調整部100aとケース61とを示している。図3は、図2のA部分を拡大した断面図であり、駆動力調整部100aとケース61との一部とを示している。
また、図2及び図3に示す矢印Xは、四輪駆動車1の前後方向であり駆動力分配機構50の回転軸芯T方向を示しており、矢印Yは、四輪駆動車1の左右方向である。なお、駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aの回転軸芯P方向に対応する。
図2に示すように、駆動力調整部100aは、駆動力分配機構50の出力ギヤユニット521により入力される駆動力が伝達される割合を調整する接続機構101aと、その接続機構101aに与える押圧力を増幅するカム機構131aと、そのカム機構131aに押圧力を与えるピストン機構151aと、カム機構131aにピストン機構151aとは逆の付勢力を与えるリリース機構171aとを有して構成されている。また、上記したように、駆動力分配機構50と駆動力調整機構60a,60bとは、箱形のケース61の内部に回転可能に固定されている。
まず、図2を参照して、駆動力分配機構50と駆動力調整機構60a,60bとを内部に収容する箱形のケース61について説明する。
図2に示すように、そのケース61は、駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aを収容する第1ケース62aと、駆動力分配機構50を収容する第2ケース63aとで構成される。また、第1ケース62aと第2ケース63aとは結合されて内部にオイル溜め室61a1を形成している。
図2に示すように、第1ケース62aは、出力ギヤユニット52(図1参照)の回転軸521に遊嵌して後側ドライブシャフト95aと連結するシャフト113aを軸支している。また、駆動力分配機構50側が開口する円筒状に形成され、駆動力分配機構50側に開口する第1開口部62a1と、駆動力分配機構から離間する側に設けられる第1側面部62a2と、その第1側面部62a2と第1開口部62a1との間に連設される第1円筒部62a4とを有して構成されている。
第1円筒部62a4は、オイル溜め室61a1側に第1内周面62a5を有して構成され、第1側面部62a2は、オイル溜め室61a1側に第1内側面62a3を有して構成されている。その第1ケース62aは、第1軸受部62a6を介して、シャフト113aの軸芯方向で、シャフト113aの後側ドライブシャフト95a側の端部を軸支している。第1軸受部62a6の外側(ドライブシャフト95a側)には、第2ケース63aとシャフト113aとの間にシャフト側オイルシール157aが配設されて、ケース61aから出力ギヤユニット52側にオイルが漏れるのを防止している。
第1軸受部62a6は、シャフト113aに嵌合される第1軸受部材62a7と、第1ケース62aに形成される第1軸受ボス部62a8とで構成される。第1軸受部材62a7は、第1ケース62aの第1内側面62a3からシャフト113aの軸芯方向で、オイル溜め室61a1側に突出した状態で配設されている。
第1軸受ボス部62a8は、第1ケース62aの第1内側面62a3をシャフト113aの軸芯方向でオイル溜め室側(内側)に突出させてシャフト113aの軸芯を含む断面で三角形状に形成され、第1ケース62aの内側面62a3に、シャフト113aに近づくに従ってオイル溜め室61a1側への突出量が増大するケース傾斜面部62a9を有して構成されている。
図2に示すように、第2ケース63aは、出力ギヤユニット52の一部を構成する回転軸521のシャフト113a側の端部を軸支している。また、第2ケース63aは、第1ケース62aの第1円筒部62a4に嵌合する第2蓋部63a1を有して構成され、その第2蓋部63a1は、駆動力分配機構50と駆動力調整機構60aの駆動力調整部100aとの間に第2側面部63a2を有して構成され、第2側面部63a2はオイル溜め室61a1室側(内側)に第2内側面63a3を有して構成されている。
第2内側面63a3は、出力ギヤユニット52の回転軸521側に凹んだシリンダ部152a(後述する)を有して構成され、そのシリンダ部152aには、後述するピストン本体153aが内嵌されて後述するピストン室154aが形成される。第2軸受部63a4のオイル溜め室61a1室側(内側)には、第2ケース63aとクラッチドラム部105aの筒状部102a1との間にドラム側オイルシール158aが配設されて、ケース61aの内部からオイルが漏れるのを防止している。
第2軸受部63a4は、出力ギヤユニット52の回転軸521に嵌合される第2軸受部材63a5と、第2ケース63aに形成される第2軸受ボス部63a6とで構成される。第2軸受部材63a5は、第2側面部63a2から出力ギヤユニット52の回転軸521の軸芯方向で、その回転軸521側(外側)に突出した状態で配設されている。第2軸受ボス部63a6は、第2ケース63aの第2側面部63a2を出力ギヤユニット52の回転軸521の軸芯方向で出力ギヤユニット52の回転軸521側(外側)に突出させて、シャフト113aの軸芯を含む断面で三角形状に形成されている。
また、図2に示すように、第1ケース62aは、第2ケース63a側に拡径する円筒形状に形成されている。即ち、シャフト113aの軸芯を含む断面で、第1ケース62aの第1側面部62a2側の端部より第1ケース62aの開口部62a1側の端部がシャフト113aから離間するように、第1ケース62aの内周面62a5を傾斜させて設けている。
このように、第1ケース62aを第2ケース63a側に拡径する円筒状に形成しているので、拡径する側である第2ケース63a側の第2内側面63a3の面積を、第1ケース62aの第1内側面62a3の面積より、広く設定することができる。このため、第2ケース63aの第2内側面63a3に、後述するシリンダ部152aを設けるスペースを確保することができる。
一方、図2に示すように、オイル供給機構200b(図1参照)によって、第2ケース63aに設けられるシリンダ部152aと、このシリンダ部152aに嵌合されるピストン本体部153aとで形成されるピストン室154aにオイルが供給される。その供給されたオイルは、そのピストン室154aから排出され、その排出されたオイルが、オイル溜め室61a1に貯留されている。
オイル溜め室61a1に貯留されたオイルは、後述するクラッチドラム部105aの回転により、攪拌されてオイル溜め室61a1の上方に跳ね上げられる。上方に跳ね上げられたオイルは、重力によって下方に流されて、シャフト113aの外周面と接続機構101aを構成するクラッチプレート108aのシャフト側の端部との間に設けられる隙間に流入されて、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとを潤滑している。
これにより、シャフト113aにシャフト113aの軸芯方向に延出するオイル通路と径方向に開口する連通孔とを形成して、そのオイル通路内のオイルを連通孔から流出させて液圧式の接続機構を潤滑する必要がないので、オイル通路と径方向に開口する連通孔とを不要とすることができる。
このように、シャフト113aの軸芯方向に延出するオイル通路及び径方向に開口する連通孔と、潤滑用のオイルポンプとが不要となった分、液圧式の接続機構101aの構造を簡易化できると共に、液圧式の接続機構101aを備えた駆動力伝達装置の軽量化を図ることができる。
併せて、オイル通路とオイルポンプ等とに貯留するオイルが不要となるので、少量のオイルで液圧式の接続機構101aを潤滑することができる。
尚、貯留されたオイルの油量を多くすると潤滑的には有利であるが、背反として引き摺りトルクが大きくなり、その傾向は低温時に特に顕著に現れてしまう。
従って、オイル溜め室61a1に貯留されるオイルの量は、できるだけ少ない方が好ましい。なお、本発明の各実施の形態では、クラッチドラム部105aとドライブプレート106aとの内嵌部位にオイル溜め室61a1に貯留されるオイルの油面が設定されている。
次に、図3を参照して、駆動力調整部100aの接続機構101aについて説明する。
図3に示すように、接続機構101aは、出力ギヤユニット52から伝達される駆動力が入力されるハブ部102aと、そのハブ部102aに連結される略円筒形状のクラッチドラム部105aと、そのクラッチドラム部105aの内側(回転軸芯Pに向かう方向)に連結される複数のドライブプレート106a(本実施の形態では8個7個)と、その複数のドライブプレート106aの間に交互に一枚ずつ配置される複数のドリブンプレート107a(本実施の形態では7個)と、そのドリブンプレート107a及びドライブプレート106aに隣接して配置され、駆動力調整部100aの回転軸芯P方向に並列される各プレート106a,107aの最も外側(矢印Y方向右側)に位置するクラッチリテーナ108aとを有して構成されている。なお、本実施の形態ではハブ部102aとクラッチドラム部105aとは一体に形成されている。
ハブ部102aは、略環状に形成され、出力ギヤユニット52の一部を構成する回転軸521に嵌合し略筒状に形成された筒状部102a1と、クラッチドラム部105aと連結される皿状に形成された皿状部102a2とを有して構成されている。筒状部102a1の内側面の一部には、ハブ嵌合部103aが形成されており、そのハブ嵌合部103aと出力ギヤユニット52の出力シャフトスプライン部55とによりスプライン継ぎ手が形成される。
よって、ハブ部102aは、出力シャフトスプライン部55から伝達された駆動力をクラッチドラム部105aに伝達することができる。
図3に示すように、クラッチリテーナ108aクラッチリテーナ108aは、略円板形状の板であり、クラッチドラム部105aに内嵌されるものである。また、クラッチリテーナ108aは、ドライブプレート106a及びドリブンプレート107aと第1ケース62aの第1内側面62a3との間に配設され、そのクラッチリテーナ108aの中心部に、シャフト113aが挿通されるリテーナ穴部108a1を有して構成されている。クラッチリテーナ108aのシャフト113a側の端部は、シャフト113aの近傍まで延出され、そのクラッチリテーナ108aのシャフト113a側の端部とシャフト113aの外周との間には所定の隙間が設けられている。
また、クラッチリテーナ108aのシャフト113a側の端部は、ドリブンプレート107a側に、ドリブンプレート107a側に傾斜するリテーナ傾斜部108a1と、第1ケース62aの第1内側面62a3側に、シャフト113aの軸芯方向に延出するリテーナ平面部108a2とを有して構成されている。
クラッチリテーナ108aのリテーナ穴部108a1に挿通されるシャフト113aの外周面は、リテーナ傾斜部108a1と対向するシャフト傾斜部113a1を有して構成されている。
なお、クラッチリテーナ108aは、クラッチドラム部105aに内嵌されるスナップリングS1aによりクラッチドラム部105aに対して駆動力調整部100aの回転軸芯P方向右側(図3矢印Y方向右側)への動きが規制されている。
図3に示すように、ドライブプレート106aは、略円板形状の板であり、ドライブプレート106aの外縁に形成されるドライブプレート突起部110aと、クラッチドラム部105aの内側面に形成される複数のドラム溝部109aとによりスプライン継ぎ手が形成されており、クラッチドラム部105aに内嵌されている。
ドリブンプレート107aは、略円板形状の板であり、ドリブンプレート107aの内側面に形成されるドリブンプレート突起部111aと、シャフト113aの一部に成型されるプレートスプライン軸部112aとによりスプライン継ぎ手が形成され、シャフト113aに外嵌されている。
なお、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとは、後述するカム機構131aのメインカム132aからの押圧力を受けることで、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの微小な隙間を詰めながらクラッチリテーナ108aクラッチリテーナ108aに動きを規制されるまで、駆動力調整部100aの回転軸芯P方向右側(図3矢印Y方向右側)に動作可能に構成されている。
よって、後述するカム機構131aのメインカム132aからの押圧力をドライブプレート106aとドリブンプレート107aとが受けてドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの隙間が詰められると、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に摩擦力が発生する。そのドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に発生する摩擦力は、カム機構131aのメインカム132aからの押圧力に応じて増加され、その押圧力に応じた駆動力がドライブプレート106aからドリブンプレート107aへと伝達される。その結果、クラッチドラム部105aからシャフト113aへ伝達される駆動力の割合が調整される。
なお、図3に示すように、本発明の接続機構101aは、更にクラッチリテーナ108aに沿って延出されるガイドリテーナ115aを有して構成されており、第1ケース62aは、第1内側面62a3に沿ってシャフト113aの径方向に延出する内側面リブ61a2を有して構成されている。なお、その内側面リブ61a2は、請求項3に記載されるリブに相当するものである。そのガイドリテーナ115aと内側面リブ61a2とについては、後に詳細に説明する。
次に、図3を参照して、駆動力調整機構100aのカム機構131a(図3参照)について詳細に説明する。カム機構131aは、クラッチドラム部105aから伝達される駆動力を利用した増幅機構であり、駆動力調整部100の回転軸芯P方向(図3矢印Y方向)において、ドライブプレート106a及びドリブンプレート107aとクラッチドラム部105aのハブ部102aに形成された皿状部102a2との間に配設されている。
図3に示すように、カム機構131aは、ピストン機構151aにより押圧される押し圧部材140aと、その押し圧部材140aに押圧される複数(本実施の形態では2枚)のプライマリードライブプレート135aと、そのプライマリードライブプレート135aの間に配置されるプライマリードリブンプレート136aと、そのプライマリードリブンプレート136aに連結されるプライマリーカム133aと、シャフト113aに連結されるメインカム132aと、プライマリーカム133aとメインカム132aとに狭持される複数(本実施の形態では6個)のボール134aと、プライマリーカム133aに隣接するベアリングB2aとを有して構成されている。
図3に示すように、プライマリードライブプレート135aは、略円板形状の板であり、プライマリードライブプレート135aの外縁に形成されるプライマリードライブプレート突起部137aと、クラッチドラム部105aの内側面に形成される複数のドラム溝部109aとによりスプライン継ぎ手が形成され、クラッチドラム部105aに内嵌されている。
プライマリードリブンプレート136aは、略円板形状の板であり、プライマリードリブンプレート136aの内側面に形成されるプライマリードリブンプレート突起部138aと、プライマリーカム突起部139aとによりスプライン継ぎ手が形成され、プライマリーカム133aに外嵌されている。
よって、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aは、後述するピストン機構151aからの押圧力を受けることでプライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの微小な隙間を詰めながら駆動力調整部100aの回転軸芯Pの軸芯方向右側(図2矢印Y方向右側)に動作可能に構成されている。また、プライマリードライブプレート135aは、クラッチドラム部105aに内嵌されるスナップリングS2aにより、クラッチドラム部105aに対して駆動力調整部100aの回転軸芯Pの軸芯方向右側(図2矢印Y方向右側)への動きが規制されている。
このように、ピストン機構151aからの押圧力をプライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとが受けて、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの隙間が詰まると、プライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの間に摩擦力が発生する。
そのプライマリードライブプレート135aとプライマリードリブンプレート136aとの間に発生する摩擦力は、ピストン機構151aからの押圧力に応じて増加され、その押圧力に応じた駆動力がプライマリードライブプレート135aからプライマリードリブンプレート136aへと伝達される。その結果、プライマリーカム133aへ伝達される駆動力の割合が調整される。
また、図3に示すように、プライマリーカム133aのメインカム132aに対向する面には、プライマリーカム溝部141aが形成されており、メインカム132aのプライマリーカム133aに対向する面には、メインカム溝部142aが形成されている。そのプライマリーカム溝141aとメインカム溝142aとの間に、ボール134aが挟持されている。更に、メインカム132aの内周面には、メインカム突起部144aが形成されており、そのメインカム突起部144aとシャフト113aに形成されるカムスプライン軸部143aとによりスプライン継ぎ手が形成される。
次に、図3を参照して、駆動力調整機構100aのピストン機構151aについて詳細に説明する。図3に示すように、ピストン機構151aは、オイル供給機構200a(図1参照)から送られてくるオイルの液圧により、押圧力を発生し、その押圧力をカム機構131a(図3参照)に伝達する機構であり、オイル供給機構200aから送られてくるオイルで満たされるピストン室154aと、オイル供給機構200aから送られてくるオイルの液圧により押圧力を発生させるピストン本体部153aと、ピストン本体部153aに外嵌されるシリンダ部152aと、ピストン室154aに満たされたオイルに混入した気体(空気)を放出するステムブリーダ155a(図3参照)と、ピストン本体部153aに対して駆動力調整部100aの回転軸芯Pを中心として回転しているカム機構131aの押し圧部材140aにピストン本体部153aからの押圧力を円滑に伝達するベアリングB3aと、ピストン本体部153aとシリンダ部152aとの間に配設されてピストン室154aからのオイルの漏れを防止するピストンシール156aとを有して構成されている。
図3に示すように、ピストン室154aは、略環形状をしたピストン本体部153aが略環形状をしたシリンダ部152aに内嵌されることにより形成される空間であり、オイル供給機構200a(図1参照)から送られてくるオイルで満たされている。そのピストン室154aの上部(図2矢印X方向上部)には、貫通孔であるステムブリーダ155aが形成されており、ピストン室154aは、オイル回収室64aとステムブリーダ155aを介して連通されている。よって、オイル供給機構200aからピストン室154aへ送られてきたオイルは、そのオイルに混入した気体(空気)と共にオイル回収室64aへと放出される。
図3に示すように、ベアリングB3aは、ピストン本体部153aと、カム機構131aの押し圧部材140aとの間に隣接して配置されおり、カム機構131aの押し圧部材140aは、ハブ部102aの回転に伴って回転するのでピストン本体部153aに対して回転している。即ち、ベアリングB3aは、回転差による抵抗を発生させないように作動しており、ピストン本体部153aから伝達される押圧力は、カム機構131aの押し圧部材140aに円滑に伝達されている。
次に、図3を参照して、駆動力調整機構100aのリリース機構171aについて詳細に説明する。図3に示すように、リリース機構171aは、皿ばねであり、メインカム132aがプライマリーカム133aにクラッチドラム部105aからの駆動力が伝達されていない時の位置である基準位置に向かって移動するようにメインカム132aを、ドライブプレート106a及びドリブンプレート107a、クラッチリテーナ108aから離間する方向に(図3矢印Y方向左側)に付勢しており、複数のドライブプレート106aと、複数のドリブンプレート107aとの引きずりを低減させるものである。また、リリース機構171aは、略環状の弾性部材であり、図4に示すように、メインカム132aと、プレートスプライン軸部112aとの間に狭持固定されている。よって、メインカム132aが、ドライブプレート106a及びドリブンプレート107a、クラッチリテーナ108a側(図3矢印Y方向右側)に移動すると、ドライブプレート106a及びドリブンプレート107a、クラッチリテーナ108aから離間する方向(図3矢印Y方向左側)への付勢力が発生する。
また、リリース機構171aは、メインカム132aとドライブプレート106aとに働くオイルの粘着力と、メインカム132aの内周面に形成されるメインカム突起部144aとシャフト113aに形成されるカムスプライン軸部143aとの摩擦力と、ボール134aの転がり抵抗力とプライマリードライブプレート135a及びプライマリードリブンプレートの引きずりにより発生されるメインカム132aの反力とをあわせた力を上回る付勢力を発生するように構成されている。
つまり、リリース機構171aには、上記複数の力より大きな付勢力を発生するばね定数や初期荷重が設定されている。その結果、カム機構131からの押圧力の供給がなくなると、リリース機構171aの付勢力によりメインカム132aは作動位置から基準位置に向かって移動し、ドライブプレート106aとメインカム132aとの引きずりを低減することができる。従って、引きずりによって余分な駆動力がクラッチドラム部105aからシャフト113aに伝達されることを低減することができる。
次に、図3を参照して、ガイドリテーナ115aについて詳細に説明する。本実施の形態においては、クラッチドラム部105aの回転によって攪拌されてオイル溜め室62a1の上方に跳ね上げられ、第1ケース62aの内周面62a5に付着したオイル等を、シャフト113a側に流し、更に、シャフト113aに沿ってシャフト113aの軸芯方向に流すために、ガイドリテーナ115aが設けられている。
図3に示すように、ガイドリテーナ115aは、シャフト113aの軸芯方向から見て円環状に形成されると共にシャフト113aが貫通するガイド穴部115a1を有して構成されている。そのガイドリテーナ115aは、第1ケース62aの第1内側面62a3にボルト116a(図2参照)で固定されている。
ガイドリテーナ115aは、クラッチドラム105aに内嵌されるクラッチリテーナ108aと一緒に連れ回るオイルを掻き落すために設けられるものであって、第1ケース62aの第1内側面62a3とクラッチリテーナ108aとの間に配設されている。そのガイドリテーナ115aによって、クラッチリテーナ108aと一緒に連れ回るオイルの量を少なくすることができる。
更に、そのガイドリテーナ115aは、クラッチリテーナ108aの回転による影響を第1ケース62aの第1内側面62a3に与えないように、クラッチリテーナ108aと第1ケース62aの第1内側面62a3との間に設けられる隙間をクラッチリテーナ108a側と第1ケース62aの第1内側面62a3側とに区切る機能を有している。
詳述すると、第1ケース62aの第1内側面62a3に対向するクラッチリテーナ108aは、クラッチドラム部105aと共に回転する。そのため、重力により、第1ケース62aの第1内側面62a3に沿って、シャフト113a側に流れようとするオイルが、クラッチリテーナ108aの回転により、そのクラッチリテーナ108aと一緒に連れ回るオイルの影響を受けて、シャフト113a側に流れることができない。
そこで、第1ケース62aの第1内側面62a3とクラッチリテーナ108aとの間にガイドリテーナ115aが配設されることにより、そのガイドリテーナ115aによって、クラッチリテーナ108aと第1ケース62aの第1内側面62a3との間に設けられる隙間は、クラッチリテーナ108a側と第1内側面側62a3とに区切られている。
このように、ガイドリテーナ115aによって、クラッチリテーナ108aと第1ケース62aの第1内側面62a3との間に設けられる隙間は、クラッチリテーナ108a側と第1内側面62a3側とに区切られることができるので、重力により第1ケース62aの第1内側面62a3に沿って下方(シャフト113a側)に流れようとするオイル(自然落下しようとするオイル)は、クラッチリテーナ108aと一緒に連れ回るオイル(クラッチリテーナ108aの回転による影響を受けるオイル)から切り離されることができる。
このように、ガイドリテーナ115aによって、第1ケース62aの第1内側面62a3側の隙間がクラッチリテーナ108a側の隙間から切り離されるので、クラッチリテーナ108aの回転によって発生する回転力の影響を受けることなく、第1ケース62aの内周面62a5に付着したオイルは、第1ケース62aの第1内側面62a3に沿って自然落下して、シャフト113a側に流れることができ、効率よく液圧式の接続機構101aを潤滑することができる。
図3に示すように、ガイドリテーナ115aは、シャフト113aの近傍までクラッチリテーナ108aに沿って延出される対向面部115a2と、シャフト113aに沿って延出されるガイド部115a4とを有してシャフト113aの軸芯を含む断面でL字状に形成されている。
図3に示すように、ガイドリテーナ115aの対向面部115a2は、シャフト113aから径方向に離間する側の端部を有して構成されている。そのシャフト113aから径方向に離間する側の端部は、クラッチドラム部105aの回転を確保すべくクラッチドラム部105aと一定の隙間を介して、クラッチドラム部105aのドラム溝部109aと対向して配置されている。
ガイドリテーナ115aの対向面部115aは、内側に突出する第1軸受部62a6に沿ったガイド傾斜部115a3を有してクランク形状に構成されると共に、ガイドリテーナ115aのガイド部115a4に連続して形成されている。
また、ガイドリテーナ115aの対向面部115a2は、上記したように、第1ケース62aの第1内側面62a3とクラッチリテーナ108aとの間に設けられる隙間をクラッチリテーナ108a側と第1ケース62aの第1内側面62a3とに区画しており、その隙間は第1ケース62aの第1内側面62a3がクラッチリテーナ108a側より大きくなるように設定されている。
従って、ガイドリテーナ115aの対向面部115a2によって、第1ケース62aの第1内側面62a3に流れるオイルを、クラッチドラム部105aの回転によりクラッチリテーナ108aと一緒に連れまわるオイルから切り離すことができるので、重力によってオイルを第1ケース62aの第1内側面62a3に沿って下方に流してシャフト113a側に導くことができる。
また、クラッチドラム部105aによって、第1ケース62aの円筒状に形成された第1内周面62a5に沿って掻き上げられたオイルは、第1ケース62aの第1内周面62a3に沿ってシャフト113aの軸芯方向に延出する内周面リブ61a3に衝突し、その内周面リブ61a3に沿って流れることで、第1ケースの62aの第1内側面62a3側に集められる。
更に、第1ケース62aの第1内側面62a3側の隙間は、クラッチリテーナ108a側の隙間より大きくなるように設定されているので、多量のオイルを第1ケース62aの第1内側面62a3に沿って流すことができ、ドライブプレート106a、ドリブンプレート107a及びクラッチリテーナ108a等を効率よく潤滑することができる。
図3に示すように、ガイドリテーナ115aのガイド部115a4は、クラッチリテーナ108aとシャフト113aとの間で、リテーナ平板部108a3に沿ってシャフト113aの軸芯方向に延出されて、シャフト113aの軸芯方向でプレート106a,107aに近接する側の端部を有して構成されている。そのプレート106a,107aに近接する側の端部は、リテーナ平板部108a3とリテーナ傾斜部108a2との分岐点まで延出されている。
更に、ガイドリテーナ115aのガイド部115a4は、クラッチリテーナ108aとシャフト113aの外周面との間に設けられる隙間を、クラッチリテーナ108a側とシャフト113a側とに区切ると共に、その隙間は、シャフト113a側がクラッチリテーナ108a側より大きくなるように設定されている。
このように、ガイドリテーナ115aのガイド部115a4は、クラッチリテーナ108aとシャフト113aの外周面との間に設けられる隙間を、クラッチリテーナ108a側とシャフト113a側とに区切るので、ガイドリテーナ115aの対向面部115a2によってシャフト113a側に導かれたオイルを、ガイドリテーナ115aのガイド部115a4によって、シャフト113aに沿ってシャフト113aの軸芯方向に流すことができる。
このように、シャフト113aに沿ってシャフト113aの軸芯方向にオイルを流すので、シャフト113aの軸芯方向でガイドリテーナ115aと隣接するクラッチリテーナ108a、シャフト113aの軸芯方向でそのクラッチリテーナ108aと隣接するドライブプレート106a及びシャフト113aの軸芯方向でそのドライブプレート106aと隣接するドリブンプレート107aを潤滑することができる。
更に、シャフト113aとガイドリテーナ115aのガイド部115a4との間に設けられる隙間は、クラッチリテーナ108aとガイドリテーナ115aのプレート106a,107aに近接する側の端部との間に設けられる隙間より、大きくなるように設定されているので、より多量のオイルをシャフト113aに沿って流すことができ、ドライブプレート106a、ドリブンプレート107a及びクラッチリテーナ108a等を効率よく潤滑することができる。
次に、ガイドリテーナ115aによるオイルの流れについて説明する。そのクラッチリテーナ108aとガイドリテーナ115aとの間に設けられる隙間では、ガイドリテーナ115aによりクラッチリテーナ108aから掻き落されたオイルが、シャフト113a側から外側(第1ケース62aの第1内側面62a3)に向かって流れる。
また、クラッチリテーナ108a側の隙間は、第1ケース62aの第1内側面側62a3の隙間より小さく設定されているので、クラッチリテーナ108aと一緒に連れ回るオイルの量は、第1ケース62aの第1内側面62a3に沿ってシャフト113a側に流れるオイルの量より少なくなっている。
ガイドリテーナ115aの対向面部115a2と第1ケース62aの第1内側面62a3aとの間に設けられる隙間では、クラッチドラム部105aにより攪拌されてその第1ケース62aの第1内側面62a3で上方に跳ね上げられたオイル、及び上方に跳ね上げられて第1ケース62aの第1内側面62a3で第1ケース62aの第1内周面62a5に付着したオイル等は、ガイドリテーナ115aの対向面部115a2によって第1ケース62aの第1内側面62a3に沿ってシャフト113a側に流れる(自然落下する)。
そして、ガイドリテーナのガイド部115a4とシャフト113aの外周面との間に設けられる隙間では、ガイドリテーナ115aの対向面部115a2によって第1ケース62aの第1内側面62a3に沿って下方に流れたオイルが、ガイドリテーナのガイド部によって、シャフト113aに沿ってシャフト113aの軸芯方向に流される。
そのシャフト113aの軸心方向に流されたオイルが、摩擦力が発生するドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの接続部分(ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に設けられる僅かな隙間)に、シャフト113a側から流入するので、ドライブプレート106a、ドリブンプレート107a及びクラッチリテーナ108a等を効率よく潤滑することができる。
更に、図2に示すように、クラッチドラム部105aが収容される第1ケース62aは、第2ケース63a側に拡径する円筒形状に形成されており、クラッチドラム部105aと第1ケース62aの第1内周面62a5との間に設けられる隙間は、第1ケース62aの第1開口部62a1側より第1ケース62aの第1内側面62a3側で小さく設定されることとなる。
また、拡径する側である第2ケース63aの第2内側面63a3にシリンダ部152aが形成されている。従って、そのシリンダ部152aを形成するために第ケース61の径を大きくする必要がないので、クラッチドラム部105aと第1ケース62aの第1内周面62a5との間に設けられる隙間は、比較的狭く設定される。このため、クラッチドラム部105aと第1ケース62aの第1内周面62a5との間に設けられる隙間は、オイルが充填された状態となっており、しかも、その隙間は、第1ケース62aの第1開口部62a1から第1ケース62aの第1開口部62a1側に向かって狭くなる、つまり絞られている。
従って、クラッチドラム部105aと第1ケース62aの第1内周面62a5との間に設けられる隙間を流れるオイルは、クラッチドラム部105aの回転により、第1ケース62aの第1開口部62a1から第1ケース62aの第1内側面62a3側に向かって、流速が高められて、第1ケース62aの第1内側面62a3側に集中することとなる。これにより、第1ケース62aの第1内側面62a3側にオイルを集中させることができるので、多量のオイルが、第1ケース62aの第1内側面62a3側に偏倚されることとなる。
このように、第1ケース62aの第1内側面62a3側に偏倚した多量のオイルは、第1ケース62aの第1内側面62a3側とガイドリテーナ115aの対向面部115a2との間に設けられる隙間をシャフト113a側に流れると共に、ガイドリテーナ115aのガイド部115a4により、シャフト113aに沿ってシャフト113aの軸芯方向に流れるので、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとを効率よく潤滑することができる。
しかも、図2に示すように、シャフト113aの軸芯方向で内側に突出する第1軸受ボス部62a8のケース傾斜面62a9部によって、ガイドリテーナ115aと第1ケース62aの第1内側面62a3との間に設けられる隙間を第1ケース62aの第1内周面62a5側よりシャフト113a側で絞る(狭くする)ので、下方に流れるオイルの流速が高められる。
そのように流速が高められたオイルが、シャフト113a側に流れて、ガイドリテーナ115aのガイド部115a4によりシャフト113aに沿ってシャフト113aの軸芯方向に流れるので、ドライブプレート106a、ドリブンプレート107a及びクラッチリテーナ108a等を効率よく潤滑することができる。
また、図3に示すように、クラッチリテーナ108aは、シャフト113a側の端部にドリブンプレート107a及びドライブプレート106a側に傾斜するリテーナ傾斜部108a2を備え、リテーナ傾斜部108a2とシャフト113aの外周面との間に、ガイドリテーナ115aによってシャフト113aに沿ってシャフト113aの軸芯方向に流れるオイルを導入するオイル導入通路117aを設けている。
このように、クラッチリテーナ傾斜部108a2とシャフト113aの外周面との間に、オイル導入通路117aを設けたので、ガイドリテーナ115aのガイド部115a4によってシャフト113aの軸芯方向に流れたオイルを、シャフト113aの径方向に逃すことなく、シャフト113aの軸芯方向に流してドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に設けられる隙間等に流入させることができる。
詳述すると、図3に示すように、クラッチリテーナ108aのシャフト113a側の端部は、ガイドリテーナ115a側に、ガイドリテーナ115aのガイド部115a4と対向するリテーナ平面部108a3と、プレート106a,107a側に、プレート106a,107aに近づくにつれてシャフト113aの軸芯から離間するように傾斜されるリテーナ傾斜部108a2とを有して構成される。
図3に示すように、シャフト113aのプレートスプライン軸部112aは、シャフト113aの他の外周部分よりシャフト113aの軸径方向に突出させて成型されており、その突出部分のクラッチリテーナ108a側に、クラッチリテーナ108aのリテーナ傾斜部108a2と同様に、プレート106a,107aに近づくにつれてシャフト113aの軸芯から離間するように傾斜されるシャフト113a傾斜部113a1を有して構成されている。
上記したように、ガイドリテーナ115aのガイド部115a4は、リテーナ平面部108a3に沿って、リテーナ平面部108a3とリテーナ傾斜部108a2との分岐点まで延出されているので、リテーナ傾斜部108a2とシャフト傾斜部113a1との間に設けられる隙間は、ガイドリテーナ115aのガイド部115a4とシャフト113aの外周面との間に設けられる隙間と連続することとなる。
このように、リテーナ傾斜部108a2とシャフト傾斜部113a1との間に設けられる隙間は、ガイドリテーナ115aのガイド部115a4とシャフト113aの外周面との間に設けられる隙間に連続しているので、リテーナ傾斜部108a2とシャフト傾斜部113a1との間に設けられる隙間は、ドリブンプレート107a及びドライブプレート106a側にオイルが流れるオイル導入通路117aとして機能することができる。
よって、ガイドリテーナ115aのガイド部115a4によってシャフト113aの軸芯方向に流れるオイルは、オイル導入通路117aにより、ドライブプレート106aとクラッチリテーナ108aとの間に設けられる隙間、及びドライブプレート106aとドリブンプレート107aとの間に設けられる隙間に流されるので、ドライブプレート106aとドリブンプレート107aとを潤滑することができる。
また、図3に示すように、リテーナ傾斜部108a2のプレート106a,107a側の端部は、リテーナ傾斜部108a2のガイドリテーナ115a側の端部より、遠心力が発生する方向、即ちシャフト113aから離間する第1ケース62aの内周面62a5側に配置されているので、遠心力によりオイルの流速が高められてプレート106a,107a側に流され、ドライブプレート106a及びドリブンプレート107aを効率よく潤滑することができる。
次に、図2及び図4を参照して、クラッチドラム部105aによって区画される一方の空間と他方の空間との間にオイルを循環させるオイル循環通路118aについて説明する。図4(a)は、ドリブンプレート107aの正面図であり、図4(b)は、IVb−IVb線におけるドリブンプレートの断面図である。
図4に示すように、シャフト113aに内嵌されるドリブンプレート107aは、そのドリブンプレート107aの中心部分でシャフト113aの軸芯方向に開口するシャフト嵌合穴107aと、シャフト113aの軸芯方向に開口するプレート連通穴107a2とを有して構成されている。
そのプレート連通穴107a2によって、このシャフト113a側に流れたオイルは、シャフト113aの軸芯方向に流れて、複数のドライブプレート106aとドリブンプレート107aとを潤滑することができる。また、クラッチドラム部105aは、シャフト113aの軸芯方向に開口するドラム連通穴105a1を有して構成されている。そのドラム連通穴105a1によって潤滑したオイルは、オイル溜め室に戻される。
図2に示すように、そのようなプレート連通穴107a2とドラム連通穴105a1とにより、クラッチドラム部105aによって区画される一方の空間と他方の空間との間にオイルを循環させるオイル循環通路118aを設けている。
図2に示すように、プレート連通穴107a2は、全てのドリブンプレート107aに形成されると共に、シャフト113aの軸芯で隣接されるドライブプレート106aと重なることなく、図4に示すように、シャフト嵌合穴107a1の周囲に設けられる(本実施の形態では8個)。また、それらのプレート連通穴107a2は、シャフト113aの軸芯方向で重なるように配置されている。
このように、プレート連通穴107a2は、全てのドリブンプレート107aに形成されるので、プレート連通穴107a2から流出したオイルは、シャフト113aの軸芯方向に流される。このようにオイルはシャフトの軸芯方向113aに流されるので、クラッチドラム部105aの内側に連結される複数のドライブプレート106aと、その複数のドライブプレート106aの間に交互に一枚ずつ配置される複数のドリブンプレート107aとのすべてを潤滑することができる。
図2に示すように、ドラム連通穴105a1は、クラッチドラム部105aハブ部102aに形成された皿状部102aに設けられ、シャフト113aの軸芯方向で、第2ケース63aに設けられるシリンダ部152aのシャフト113a側と重なるように配置されている。
このように、ドラム連通穴105a1は、プレート106a,107aを潤滑し、更にシャフト113aの軸芯方向に流れてオイル溜め室61a1に戻される。そのプレート106a,107aを潤滑したオイルを、更にシャフト113aの軸芯方向に流すので、プレート106a,107aとクラッチドラム部105aのハブ部102aとの間に配置されるメインカム132a、ボール134a及びプライマリーカム133a等のカム機構131aを潤滑した後、オイルをオイル溜め室61a1に戻すことができる。
次に、図3及び図5を参照して、第1ケース62aの内側面リブ61a2について説明する。図5は、第1ケース62aからクラッチドラム部105aを取り外した状態のV−V線における第1ケース62aの断面図であり、主要な構成(第1ケース62a、内側面リブ61a、内周面リブ61a2及びガイドリテーナ115)のみ表示し、他の構成は省略している。
図3に示すように、内側面リブ61a2は、第1ケース62aの第1内周面62a5から第1ケース62aの第1内側面62a3に沿って第1軸受ボス部62a8のケース傾斜面部62a9までシャフト113aの径方向に延出されている。その内側面リブ61a2は、ガイドリテーナ115aと対向して配設されている。
クラッチドラム部105aの回転により、オイル溜め室61a1に貯留されたオイルは、クラッチドラム部105aに攪拌されて、第1ケース62aの第1内周面62a5に沿って跳ね上げられる。その第1ケース62aの第1内周面62a5に沿って跳ね上げられたオイルは、内側面リブ61a2によって、第1ケース62aの第1内側面62a3側で受け止められて、シャフト113aの軸芯に向かって積極的にオイルが流される。このようにシャフト113aの軸芯に向かって積極的にオイルが流されるので、効率よくドライブプレート106aとドリブンプレート107aとを潤滑することができる。
即ち、内側面リブ61a2によって、第1ケース62aの第1内側面62a3側で受け止められたオイルは、ガイドリテーナ115aによって、クラッチリテーナ108aの回転によって発生する回転力の影響を受けることなく、第1ケース62aの第1内側面62a3とガイドリテーナ115aの対向面部115a2との間でシャフト113aの軸芯に向かって積極的に流されて、ガイドリテーナのガイド部115a4とシャフト113aの外周面との間に設けられる隙間に効率よく流入している。その隙間に流入したオイルが、シャフト113aに沿ってシャフト113aの軸芯方向に流れるので、効率よくドライブプレート106aとドリブンプレート107aとを潤滑することができる。
図5に示すように、本発明の第1実施の形態において、その内側面リブ61a2は、オイル溜め室61a1の上面から最も離間する位置である第1ケース62aの第1内周面62a5の上部から、シャフト113aの軸芯に向かって、第1ケース62aの第1内側面62a3に沿って重力方向で鉛直下方に垂下させている。また、クラッチドラム部105aの回転により、その内側面リブ61a2とクラッチドラム部105aとが干渉するのを防止すべく、その内側面リブ61a2のクラッチリテーナ108a側端面は、クラッチドラム部105aとの間に一定の隙間を保持している。
クラッチドラム部105aの回転速度が速い場合又はオイル溜め室61a1に貯留されたオイルの量が多い場合は、クラッチドラム部105aの回転によって、オイル溜め室61a1に貯留されたオイルは、クラッチドラム部105aにより掻き上げられて、第1ケース62aの第1内周面62a5に沿って、重力方向で第1ケース62aの第1内周面62a5の上部まで跳ね上げられ、第1ケース62aの第1内周面62a5に沿ってオイル溜め室61a1に戻されている。
そこで、図5に示すように、その内側面リブ61a2を重力方向で第1ケース62aの第1内周面62a5の上部から、シャフト113aの軸芯に向かって、第1ケース62aの第1内側面62a3に沿って、重力方向で垂下させることにより、第1ケース62aの第1内周面62a5の上部まで跳ね上げられたオイルを効率よく受け止めて、第1ケース52aの内周面62a5に沿って回転方向に移動しようとするオイルの向きをシャフト113aの軸芯方向に変更させて、シャフト113aの軸芯に向かって積極的に流すことができる。
上記したように、多量のオイルが、第1ケース62aの第1内側面62a3側に偏倚されるため、この第1ケース62aの第1内側面62a3側で偏倚した多量のオイルが、クラッチドラム部105aにより攪拌されて、第1ケース62aの第1内周面62a5に沿って、重力方向で第1ケース62aの第1内周面62a5の上部まで跳ね上げられる。この跳ね上げられた多量のオイルは、重力方向で第1ケース62aの第1内周面62a5の上部から垂下される内側面リブ61a2によって受け止められて内側面リブ61a2に沿って流れるので、シャフト113aの軸芯に向かって積極的に流されることとなる。
図3に示すように、本実施の形態では、第1ケース62aは、更に内側面リブ61a2に連続する内周面リブ61a3を有して構成され、内側面リブ61a2及びその内側面リブ61a2に連続する内周面リブ61a3とは、全体で、シャフト113aの軸芯を含む断面で内側面リブ61a2を短辺側とすると共に内周面リブ61a3を長辺側とするL字型に形成されている。
上記したように、クラッチドラム部105aと第1ケース62aの第1内周面62a5との間に設けられる隙間を流れるオイルは、クラッチドラム部105aの回転により、第1ケース62aの第1開口部62a1から第1ケース62aの第1内側面62a3に向かって流速が高められる。この流速が高められたオイルは、内周面リブ61a3にガイドされて第1ケース62aの第1内側面62a3側に流れるので、更に効率よく第1ケース62aの第1内側面62a3にオイルを集めることができる。
なお、図3に示すように、その内側面リブ61a2はシャフト113aの軸芯を含む断面で、第1ケース62aの傾斜に沿って第1ケース62aの第1開口部62a1から第1ケース62aの第1内側面62a3に向かって幅狭となるように形成されている。即ち、クラッチドラム部105aと内側面リブ61a2との隙間は一定になるように設定されている。従って、その内側面リブ61a2によってクラッチドラム部105aの外周面と一緒に連れまわるオイルを掻き落とすことができる。
また、図3に示すように、ピストン本体部153aは、シャフト113aから離間する側の端部を第2ケース63aの第2内側面63a3に沿って上方に突出させて突出部153a1を有して構成されている。そのピストン本体部153aの突出部153a1は、押し圧部材140aにより押圧されると、第2ケース63a第2内側面63a3に圧接されて、ピストン本体部153aの動きが規制されている。
そのピストン本体部153aの突出部153a1は、クラッチドラム部105aとハブ部102aとの連結部分(ハブ部102aの皿状部102a2のシャフト113aから離間する側の端部)と、シャフト113aの軸芯方向で重なるように配置されている。そこで、内側面リブ61a2は、ピストン本体部153aの突出部153a1との干渉を避けるべく、第2ケース63aの第2内側面63a3側の端部に、第1ケース62aの第1内側面62a3側に傾斜するリブ傾斜部61a21を有して構成されている。
次に、図6を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態の内側面リブ61a2は、重力方向で第1ケース62aの第1内周面62a5の上部から、シャフト113aの軸芯に向かって、重力方向で鉛直下方に垂下しているのに対して、第2実施の形態の内側面リブ161a2は、重力方向で第1ケース162aの第1内周面162a5の上部より低い位置からシャフト113aの軸芯に向かって斜めに延出させている。なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。図6は第1ケース162aからクラッチドラム部105aを取り外した状態における第1ケース162aの径方向における断面図であって、主要な構成(第1ケース162a、内側面リブ161a、内周面リブ161a2及びガイドリテーナ115)のみ表示し、他の構成は省略している。
上記したように、内側面リブ161a2を斜めに延出させるのは、オイル溜め室161a1に貯留されるオイルが少ない場合であってシャフト113aの回転速度が遅い場合に対応させたためである。
即ち、オイル溜め室161a1に貯留されるオイルが少ない場合であってシャフト113aの回転速度が遅い場合、クラッチドラム部105aの回転によって、オイル溜め室161a1に貯留されたオイルは、クラッチドラム部105aにより掻き上げられるが、重力方向で第1ケース162aの第1内周面162a5の上部までは跳ね上げられず、重力方向で第1ケース162aの第1内周面162a5の上部より低い位置までしか跳ね上げられないこととなる。
そこで、図6に示すように、内側面リブ161a2を、重力方向で第1ケース162aの第1内周面162a5の上部より低い位置から、シャフト113aの軸芯に向かって、斜めに延出させている。
これにより、重力方向で第1ケース162aの第1内周面162a5の上部より低い位置までしか跳ね上げられないオイルであっても、内側面リブ161a2によって受け止められて、ガイドリテーナ115aの対向面部115a2と、ガイドリテーナ115aのガイド部115a4とによってシャフト113aの軸芯に向かって積極的に流されている。
次に、図7を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施の形態の内側面リブ61a2は、重力方向で第1ケース62aの第1内周面62a5の上部から、シャフト113aの軸芯に向かって、重力方向で鉛直下方に垂下しているのに対して、第3実施の形態の内側面リブ161a2は、その内側面リブ161a2の外側端部と第1ケース162aの第1内周面162a5の上部より低い部分との間に所定の隙間を設けた状態で、第1ケース162aの第1内側面162a3に沿ってシャフト113aの軸芯に向かって斜め下方に延出させて設けられている。なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
第1ケース162aの第1内周面162a5に沿って掻き上げられ、内周面リブ161a3と衝突して第1ケース162aの第1内側面162a5側に集められたオイルは、第1ケース162aの第1内側面162a3に沿って垂下して流れることとなる(図7矢印方向)。
その垂下して流れるオイルを、オイル導入通路117a(図3参照)にできるだけ多く取り入れるために、第1ケース162aの第1内側面162a3に設けられる内側面リブ161a2をシャフト113aの軸芯に向かって下向きに傾斜させて配設し、その内側面リブ161a2で垂下してくるオイルを受けることにより、オイル導入通路117aにオイルを積極的に集めることができる。
次に、図8を参照して第4実施の形態について説明する。第1実施の形態の第1ケース62aは第2ケース側に拡径する円筒状に形成されると共に、第2ケースは第1ケース62aの第1円筒部62a4に嵌合する第2蓋部63a1を有して構成されていたのに対し、第4実施の形態の第2ケース363aは、第1ケース362a側に拡径する円筒状に形成されると共に、第1ケース362aは、第2ケース363aの第2円筒部363a8に嵌合する第1蓋部362a10を有して構成されている。なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図8に示すように、第2ケース363aは、円筒状に形成され、駆動力分配機構50から離間する側に設けられる第2開口部363a7と、駆動力分配機構50に近接する側に設けられる第2側面部363a2と、その第2側面部363a2と第2開口部363a7との間に連設される第2円筒部363a8とを有して構成される。また、第1ケースは、第2ケース363aの第2円筒部363a8に嵌合する第1蓋部362a10を有して構成されている。
そして、図8に示すように、第2ケース363aは、シャフト113aの軸芯を含む断面で、第2ケース363aの第2側面部363a2側の端部より第2ケース363aの第2開口部363a7側の端部がシャフト113aから離間するように、第2ケース363aの第2内周面363a9を傾斜させて設けている。
このように、第1ケース362a側が拡径するように第2ケース363aの第2内周面363a9を傾斜させて設けるので、オイル溜め室361a1に貯留可能なオイルの量を、ガイドリテーナ115aと内側面リブ361a2とが配設される第2ケース363aの第2開口部363a7側で多く設定することができる。
また、このように、第2ケース363aは、第1ケース362a側に拡径する円筒状に形成されると、縮径する側である第2ケース363aの第2内側面363a3は、拡径する側である第1ケース362aの第1内側面362a3より、面積が狭く設定される。このように、第1ケース362aの第1内側面362a3より面積が狭く設定された第2ケース363aの第2内側面363a3に、ピストン室154aを構成するシリンダ部152aを形成するため、第2ケース363aの第2内側面363a3の面積は、第1実施の形態の場合に比べて、大きく設定されている。
即ち、第2ケース363aの第2円筒部363a8は、シリンダ部152aのスペースを確保すべく、図2で示す第1実施の形態の第1ケース62aの第1開口部62a4と比べて、径大に設定されている。
従って、図2に示すように、第1実施の形態(第1ケース62aに第1円筒部62a4を形成した場合、図2参照)に比べて、図8に示すように、第3実施の形態(第2ケース363aに第2円筒部363a8を形成した場合)は、クラッチドラム部105aと第2ケース363aの第2内周面363a9との間に設けられる隙間は、クラッチドラム部105aと第1ケース62aの第1内周面62a5(図2参照)との間に設けられる隙間より、大きく設定されることとなる。
このように、クラッチドラム部105aと第2ケース363aの第2内周面363a9との間に設けられる隙間は、比較的大きく設定されるため、その隙間では、オイルが充填状態ではなく、飛散状態となっている。
図8に示すように、ガイドリテーナ115aとクラッチリテーナ108aとが配設される側である第2ケース363aの第2開口部363a7側において、このように飛散したオイルをできるだけ多く集めるべく、シャフト113aの軸芯を含む断面で、第2ケース363aの第2側面部363a2側の端部より第2ケース363aの第2開口部363a7側の端部がシャフト113aから離間するように第2ケース363aの内周面363a9を傾斜させて設けている。
即ち、第2ケース363aの第2内周面363a9を第1ケース362aの第1内側面362a3側で径大となるように傾斜させて設けることで、クラッチドラム部105aと第2ケース363aの第2内周面363a9との間に設けられる隙間を、第2ケース363aの第2内側面363a3側より、第2ケース363aの第2開口部363a7側で大きく設定することができるので、その隙間内で飛散したオイルを多く集めることができる。
尚、第4実施の形態の場合においては、内側面リブ361a2は、図6に示す第2実施の形態のように、内側面リブ361a2を重力方向で第2ケース363aの第2内周面363a9の上部より低い位置からシャフト113aの軸芯に向かって第2ケース363aの第2内側面363a3に沿って斜めに延出させることが有効である。
詳述すると、上記したように、ガイドリテーナ115aとクラッチリテーナ108aとが配設される側である第2ケース363aの第2開口部363a7ではオイルが飛散状態となっているため、クラッチドラム部105aの回転によって、オイルは第2ケース363aの第2内周面363a9に沿って、重力方向で第2ケース363aの第2内周面363a9の上部までは跳ね上げられない。
そこで、内側面リブ361a2をオイル溜め室361a1の上面から最も離間する位置である第2ケース363aの第2内周面363a9の上部より、重力方向で低い位置からシャフト113aの軸芯に向かって第1ケース362aの第1内側面362a3に沿って斜めに延出させることにより、効率よくオイルを集めることができる。
従って、第2ケース363aの第2内周面363a9に沿って跳ね上げられたオイルは、内側面リブ361a2によって、第1ケース362aの第1内面面362a3側で受け止められて、シャフト113aの軸芯に向かって積極的に流されるので、効率よくドライブプレート106a、ドリブンプレート107a及びクラッチリテーナ108a等を潤滑することができる。
次に、図9及び図10を参照して第5実施の形態について説明する。第1実施の形態のガイドリテーナ115aは、シャフト113aの軸芯方向から見て、円環状に形成されると共にシャフト113aが貫通するガイド穴部115a1と、シャフト113aの近傍までクラッチリテーナ108aに沿って延出される対向面部115a2と、シャフト113aに沿って延出されるガイド部115a4とを有して構成されていたのに対し、第5実施の形態のガイドリテーナリテーナ215aは、第1ケース462aの第1内周面462a5に対向して開口するガイド収集口部215a5、ドリブンプレート107aに対向して開口するガイド供給口部215a、及びガイド収集口部215a5とガイド供給口部215a7との間に連設されるガイド通路部215a6を有して構成されると共に、シャフト113aの軸芯方向からみて、ガイド収集口部215a5側を底辺とすると共にガイド供給口部215a7を頂部とする三角形状の漏斗形に形成されている。
なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。図9は、駆動力調整機構460aの断面図である。なお、図9においては、断面線を省略して図示してある。また、図10は、第1ケース462aからクラッチドラム部105aを取り外した状態のIX−IX視における第1ケース462aの断面図であり、主要な構成(第1ケース462a、内側面リブ461a、内周面リブ461a2及びガイドリテーナ215)のみ表示し、他の構成は省略している。
第5実施の形態において、図9及び図10に示すように、ガイドリテーナ215aは、第1ケース462aの第1内周面462a5に対向して開口するガイド収集口部215a5、ドリブンプレート107aに対向して開口するガイド供給口部215a、及びガイド収集口部215a5とガイド供給口部215a7との間に連設されるガイド通路部215a6を有して構成されている。
そのガイド収集口部215a5から取り入れられたオイルは、ガイド通路部215a6に沿ってシャフト113a側に流れて、ガイド供給口部215a7によりシャフト113aの軸芯側に流してドリブンプレート107aのプレート連通穴1072aに向かって流される。
また、図9に示すように、ガイドリテーナ215aのガイド通路部215a6は、シャフト113aの長手方向からみて、第1ケース462aの第1内側面462a3側に配設されるリテーナ傾斜部108a2に沿って、斜め下方に延出されている。このため、ガイドリテーナ215aのガイド通路部215a6は、クラッチリテーナ108aと第1ケース462aの第1内側面462a3から突出する第1軸受ボス部462a8とに干渉させることなく、クラッチリテーナ108aと第1ケース462aの第1内側面462a3との間に配設されることができる。
また、ガイドリテーナのガイド通路部215a6を斜め下方に延出させるので、ガイド収集口部215a5は、最も第1ケース462aの第1内側面462a3に近接させて配設される共に、ガイド供給口部215a7は、最もドリブンプレート107aに近接させて配設されている。このため、内側面リブ461a1によって受け止められたオイルは、ドリブンプレート107aの近傍でガイド供給口部215aからドリブンプレート106a側に流されるので、ドライブプレート106a及びドリブンプレート107a等を効率よく潤滑することができる。
更に、図10に示すように、ガイドリテーナ215aは、シャフト113aの軸芯方向からみて、ガイド収集口部215a5側を底辺とすると共にガイド供給口部215a7を頂部とする三角形状の漏斗形に形成される。このように、ガイド収集口部215a5はガイド供給口部215a6より幅広に形成されるので、第1ケース462aの第1内側面462a3側で、多量のオイルを集めることができ、そのオイルは、ガイド通路部215a6に沿ってシャフト113aの軸芯側に流されて、ガイド供給口部215a7によりシャフト113aに沿って流すことができる。
図9に示すように、第4実施の形態における内側面リブ461a2は、第1ケース462aの第1内周面462a5からクラッチドラム部105aの第1ケース462a側端部とシャフト113aの軸芯方向で重なる位置までしか延出されておらず、他の実施の形態に比べて短くなっている。
そもそも、内側面リブ461a2は、第1ケース462aの第1内側面462a3側で第1ケース462aの第1内周面462a5に沿って跳ね上げられたオイルをシャフト113aの軸芯側に向けるためのものであるため、第1ケース462aの第1内側面462a3に沿って下方に延出する部分を有していれば十分機能することとなる。
即ち、内側面リブ461a2は、第1ケース462aの第1内側面462a3に沿って下方に延出する部分を有していれば、クラッチドラム部105aの回転によって飛散したオイルが、第1ケース462aの内周面462a5に沿って更にクラッチドラム105aの回転方向に移動しようとするのを、シャフト113aの軸芯方向に変更させることができるので、シャフト113aとプレート106a,107aとの間に流入させることができる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、本発明の内側面リブ61a2は、第1ケース62aと一体的に成形されるが、必ずしも一体的に成形する必要はなく、板金で形成した別体のリブを溶接等により第1ケース62aに固着させてもよい。また、内側面リブ61a2は、第1ケース62aの第1内側面62a3から、この第1ケース62aの第1内側面62a3と直交する方向であるシャフト113aの軸芯方向に延出させたが、この内側面リブは、第1ケース62aの第1内側面62a3側に傾斜するように、シャフト113aの軸芯方向に対して斜めに延出されてもよい。この場合には内側面リブ61a2のオイルを受け止める部分の面積を拡大させることができるので、より効率よくオイルを集めることができる。
また、上記各実施の形態では、リリース機構171aに皿ばねを用いたが、必ずしも皿ばねである必要はなく、例えば、環形のゴム状弾性体を用いても良い。