以下、本発明の実施の形態によるダンプトラックの走行駆動装置を、後輪駆動式のダンプトラックを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図12は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は本実施の形態で採用したダンプトラックで、このダンプトラック1は、図1に示すように頑丈なフレーム構造をなす車体2と、該車体2上に起伏可能に搭載された荷台としてのベッセル3とにより大略構成されている。
そして、ベッセル3は、例えば砕石物等の重い荷物を多量に積載するため全長が10〜13m(メートル)にも及ぶ大型の容器として形成され、その後側底部が、車体2の後端側にピン結合部4等を介して起伏(傾転)可能に連結されている。また、ベッセル3の前側上部には、後述のキャビン5を上側から覆う庇部3Aが一体に設けられている。
5は庇部3Aの下側に位置して車体2の前部に設けられたキャビンで、該キャビン5は、ダンプトラック1の運転者が乗降する運転室を形成し、その内部には運転席、起動スイッチ、アクセルペダル、ブレーキペダル、操舵用のハンドルおよび複数の操作レバー(いずれも図示せず)等が設けられている。
そして、ベッセル3の庇部3Aは、キャビン5を上側からほぼ完全に覆うことにより、例えば岩石等の飛び石からキャビン5を保護すると共に、車両(ダンプトラック1)の転倒時等にもキャビン5内の運転者を保護する機能を有しているものである。
6,6は車体2の前部側に回転可能に設けられた左,右の前輪で、該各前輪6は、ダンプトラック1の運転者によって操舵(ステアリング操作)される操舵輪を構成するものである。そして、前輪6は後述の後輪7と同様に、例えば2〜4mに及ぶタイヤ径(外径寸法)をもって形成されている。
7,7は車体2の後部側に回転可能に設けられた左,右の後輪で、該各後輪7は、ダンプトラック1の駆動輪を構成し、図3、図4に示す後述の走行駆動装置11により車輪取付筒19と一体に回転駆動される。そして、後輪7は、2本のタイヤ7A,7Aと、該各タイヤ7Aの内側に配設されるリム7B,7Bと、該各リム7Bのうち軸方向外側のリム7Bに着脱可能に嵌合して設けられるホイールキャップ7C(図1参照)等とにより構成されるものである。
8はキャビン5の下側に位置して車体2内に設けられる原動機としてのエンジンで、該エンジン8は、例えば大型のディーゼルエンジン等により構成され、図2に示すように発電機としてのオルタネータ9を駆動するものである。また、エンジン8は、油圧源となる油圧ポンプ(図示せず)等を回転駆動し、後述の起伏シリンダ83、パワーステアリング用の操舵シリンダ(図示せず)等に圧油を給排させる機能も有している。
10はダンプトラック1の制御装置を構成する電気コントローラで、該電気コントローラ10は、図1に示すようにキャビン5の後側に位置して車体2上に立設された配電盤等により構成されている。そして、電気コントローラ10は、図2に示すオルタネータ9で発生した電気をバッテリ(図示せず)を充電させると共に、この電気を後述の電動モータ17に出力し、電動モータ17の回転数を個別にフィードバック制御する機能等を有している。
11はダンプトラック1の後輪7側に設けられた走行駆動装置で、該走行駆動装置11は、後述のアクスルハウジング12、電動モータ17、車輪取付筒19および減速機構24等により構成されている。そして、走行駆動装置11は、電動モータ17の回転を減速機構24により減速し、車両の駆動輪となる後輪7を車輪取付筒19と一緒に大なる回転トルクで走行駆動するものである。
12は車体2の後部側に設けられた後輪7用のアクスルハウジングで、該アクスルハウジング12は、図2に示すように左,右の後輪7,7間を軸方向に延びる筒状体として形成されている。そして、アクスルハウジング12は、ショックアブソーバ等の緩衝器(図示せず)を介して車体2の後部側に取付けられる中間の懸架筒13と、該懸架筒13の左,右両側にそれぞれ設けられた後述のモータ収容筒14および筒状スピンドル15とにより構成されるものである。
14,14は懸架筒13の両端側に設けられた駆動源収容部としてのモータ収容筒で、該各モータ収容筒14は、図3、図4および図6に示す如くテーパ形状をなす筒体として形成され、その大径部14A側が図2に示す懸架筒13にボルト等を用いて着脱可能に固着される。また、モータ収容筒14の小径部14B側には、図4、図6に示すように後述の筒状スピンドル15がボルト16等を介して着脱可能に固着され、その内部は後述する第1の減速機収容空間Aとなっている。
そして、モータ収容筒14内には、後輪7の駆動源となる後述の電動モータ17が収容されるものである。また、モータ収容筒14の内周側には、電動モータ17との間に環状の仕切板14Cが設けられ、この仕切板14Cは、後述する油溜まり57内の潤滑油100が電動モータ17の周囲に漏出するのを抑えるものである。
15はアクスルハウジング12の先端側開口部を構成する筒状スピンドルで、該筒状スピンドル15は、例えば80〜100cm程度の内径寸法をもった大径の段付筒状体からなり、その内部は図3、図4、図6に示すように1段目の遊星歯車減速機構25を収容する第1の減速機収容空間Aとして形成されている。また、筒状スピンドル15の外周面は、後述の軸受20,21を介して後輪7側の車輪取付筒19を回転可能に支持する構成となっている。
ここで、筒状スピンドル15の軸方向中間部には、その内周面から径方向内向きに突出する環状凸部15Aが一体に形成され、この環状凸部15Aには、後述する1段目のキャリア30が固定して取付けられている。また、筒状スピンドル15は、軸方向の一側(基端側)がモータ収容筒14にボルト16等を介して連結される連結部15Bとなり、軸方向の他側(先端側)には、図6、図7に示す如く径方向外向きに突出する環状の鍔部15Cが一体に形成されている。
そして、筒状スピンドル15の鍔部15Cには、後述する最終段のキャリア39が固定して取付けられるものである。この場合、鍔部15Cの外周側は、筒状スピンドル15のうち外径寸法が最も大きい最大外径部となり、鍔部15Cの外径は、後述する軸受20,21の外径寸法にほぼ等しい寸法に形成されている。
また、筒状スピンドル15の下側位置には、図6、図7に示すように環状凸部15Aを前,後(軸方向)に貫通して延びる油孔15Dが穿設されている。そして、筒状スピンドル15内に後述の如く供給された潤滑油100は、この油孔15Dを通じて環状凸部15Aの前,後(筒状スピンドル15の軸方向)に流通する。これにより、後述の油溜まり57内に溜められた潤滑油100は、その液面レベルが油孔15Dの前,後で均一化されるものである。
そして、筒状スピンドル15は、後述の如く遊星歯車減速機構25,34のキャリア30,39が固定して設けられることにより、頑丈な構造をなす有蓋筒状体として組立てられ、その外周側で車輪取付筒19(後輪7)を内側から高い剛性(強度)をもって支持できるものである。また、筒状スピンドル15は、後述の遊星歯車減速機構25,34に発生する回転反力等を、キャリア30,39を介して十分な強度で受承する機能を有するものである。
ここで、第1の減速機収容空間Aは、図4、図6に示す如くモータ収容筒14、筒状スピンドル15に囲まれ、その軸方向一側(内側)が仕切板14Cと後述の電動モータ17で閉塞され、軸方向他側(外側)が後述のカップリング33等により覆われている。そして、減速機収容空間Aの内部には、後述する1段目の遊星歯車減速機構25が収容されるものである。
17はアクスルハウジング12のモータ収容筒14に着脱可能に設けられる駆動源としての電動モータで、該電動モータ17は、図2に示す如く左,右の後輪7,7を互いに独立して回転駆動するため、アクスルハウジング12の両側に位置する左,右のモータ収容筒14,14内にそれぞれ取付けられている。
18は電動モータ17の出力軸を構成する回転軸を示し、この回転軸18は、電動モータ17によって正方向または逆方向に回転駆動されるものである。ここで、回転軸18は、図3、図4に示すようにモータ収容筒14内から筒状スピンドル15内へと減速機収容空間A内を軸方向に延びている。そして、回転軸18の先端側外周には、後述の太陽歯車26が一体回転するようにスプライン結合されている。
この場合、回転軸18の先端は、図6、図7、図11に示すように太陽歯車26の内周側を軸方向に貫通して延び、その先端側端面は後述のスラスト受け61に対向(正対)している。そして、電動モータ17の回転により軸方向のスラスト荷重Fが回転軸18に付加されるようなときには、このスラスト荷重Fをスラスト受け61が受承して回転軸18の軸方向変位を規制し、回転軸18の回転は円滑化(安定化)されるものである。
19は車輪としての後輪7と一体に回転する車輪取付筒で、該車輪取付筒19は、所謂ホイールハブを構成し、その外周側には、後輪7のリム7B,7Bが圧入等の手段を用いて着脱可能に取付けられるものである。そして、車輪取付筒19は、図6に示す如く軸受20,21間にわたって軸方向に延びる一側筒部19Aと、該一側筒部19Aの端部から後述のリングギヤ36に向けて軸方向に延び、内周面19B1 が一側筒部19Aよりも大なる内径に形成された他側筒部19Bとにより段付筒状体として形成されている。
また、車輪取付筒19の一側筒部19Aには、その内周側に後述の軸受20,21が嵌合して取付けられる軸受取付部19C,19Dが段差となって設けられている。また、一側筒部19Aの内周側には、軸方向一側の端面と軸受取付部19Cとの間に位置してテーパ状に拡開し、後述するシール装置70のリテーナ73が取付けられる拡開部としてのリテーナ取付部19Eが形成されている。
ここで、車輪取付筒19の他側筒部19Bは、その内周面19B1 が後述のディスク保持筒22とほぼ等しい内径寸法をもって形成されている。そして、他側筒部19Bは、筒状スピンドル15の鍔部15C等を径方向外側から取囲み、後述の減速機収容空間Bから環状空間Cに向けて潤滑油100を円滑に流通させる機能を有するものである。
また、車輪取付筒19の他側筒部19Bには、後述のリングギヤ36とディスク保持筒22とが長尺ボルト43等を用いて一体的に固着され、これにより車輪取付筒19は、リングギヤ36と一体に回転される。即ち、車輪取付筒19には、電動モータ17の回転を減速機構24で減速することにより大トルクとなった回転がリングギヤ36を介して伝えられる。そして、車輪取付筒19は、車両の駆動輪となる後輪7を大なる回転トルクで回転させるものである。
この場合、車輪取付筒19、ディスク保持筒22およびリングギヤ36の内周側は、後述する2段目の遊星歯車減速機構34が収容される第2の減速機収容空間Bとして形成されている。そして、第2の減速機収容空間Bは、軸方向一側に位置する第1の減速機収容空間Aとの間が後述のカップリング33等により取囲まれ、軸方向の他側(外側)は、後述のキャリア39、内側キャップ42およびシール装置81等で覆われるものである。
また、車輪取付筒19と筒状スピンドル15との間は、筒状スピンドル15の外周側を環状に取囲んだ環状空間Cとなり、環状空間Cの下側部位は、後述の油溜まり58となって潤滑油100が収容されるものである。そして、この環状空間Cは、軸受21内の隙間等を介して第2の減速機収容空間Bと常に連通している。
また、車輪取付筒19の一側筒部19Aは、軸受取付部19C,19D間に位置する内周面が図4、図6、図7に示す如く軸受21側から軸受20側に向けて漸次拡径するテーパ状のガイド面(以下、傾斜面19Fという)として形成されている。そして、環状空間C内の潤滑油100は、この傾斜面19Fにより後述の排出管79側に向けてガイドされるものである。また、車輪取付筒19の軸方向一側(内側)には、アクスルハウジング12のモータ収容筒14、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間となる位置に後述のシール装置70等が設けられている。
20,21は筒状スピンドル15の外周側で車輪取付筒19を回転可能に支持する軸受で、該軸受20,21は、例えば同一の円錐ころ軸受等を用いて構成される。そして、軸受20,21は、車輪取付筒19の一側筒部19Aと筒状スピンドル15との間に軸方向に離間して配設されている。
即ち、一方の軸受20は、車輪取付筒19の軸受取付部19C内に嵌合して取付けられ、他方の軸受21は、車輪取付筒19の軸受取付部19D内に嵌合して取付けられている。そして、軸受20,21の外径寸法(軸受取付部19C,19Dの内径寸法)は、図7に示すように一側筒部19Aの内径よりも大きく、他側筒部19Bの内径(内周面19B1 )よりも小さく形成されている。
22は車輪取付筒19の一部をリングギヤ36と共に構成するディスク保持筒で、該ディスク保持筒22は、図4に示すように車輪取付筒19の軸方向外側となる位置に後述のリングギヤ36を挟んで取付けられ、後述の各長尺ボルト43を用いて車輪取付筒19に着脱可能に固着されるものである。
そして、ディスク保持筒22には、図5に示すようにリング状(環状)をなすディスク23が抜止め、廻止め状態で取付けられ、このディスク23は、後述のディスクブレーキ56により制動力が付与される。即ち、後輪7と車輪取付筒19は、ディスク保持筒22およびディスク23と一体に回転し、該ディスク23に付与されるブレーキ力により走行時の回転が停止(制動)されるものである。
24は筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間に設けられた減速機構で、該減速機構24は、後述する1段目の遊星歯車減速機構25と2段目の遊星歯車減速機構34とにより構成され、後輪7側の車輪取付筒19に対し回転軸18の回転を減速して伝えるものである。
25はアクスルハウジング12の筒状スピンドル15内に設けられた1段目の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構25は、図3、図4、図6および図7に示すように回転軸18の先端側にスプライン結合された太陽歯車26と、該太陽歯車26とリングギヤ27の内歯27Aとに噛合し、該太陽歯車26の回転に従って自転する例えば3個の遊星歯車28,28,…(図8、図9参照)と、該各遊星歯車28を支持ピン29を介して回転可能に支持した後述のキャリア30とにより構成されている。
また、1段目のリングギヤ27は、筒状スピンドル15の内周側に小さな径方向隙間(例えば、2〜5mm程度)を介して相対回転可能に配置されている。そして、リングギヤ27は、太陽歯車26、各遊星歯車28、支持ピン29およびキャリア30等を径方向外側から取囲む短尺の筒形歯車として形成され、その内周側には、各遊星歯車28に噛合する内歯27Aが設けられている。
ここで、1段目の遊星歯車減速機構25は、後述のキャリア30が筒状スピンドル15に固定されることにより、遊星歯車28の公転(キャリヤ30の回転)が拘束される。そして、1段目の遊星歯車減速機構25は、電動モータ17の回転軸18によって太陽歯車26が一体に回転されると、この太陽歯車26の回転を複数の遊星歯車28の自転に変換する。
そして、1段目の遊星歯車減速機構25は、各遊星歯車28の自転(回転)をリングギヤ27の減速した回転として取出すと共に、このリングギヤ27の回転を後述のカップリング33を介して2段目の遊星歯車減速機構34に伝えるものである。
また、各遊星歯車28の支持ピン29には、図6、図7に示すように潤滑油100を供給するための油路29Aが形成され、この油路29Aには、筒状スピンドル15内を軸方向に延びる後述の導管45が接続される。そして、この導管45から油路29A内に導かれる潤滑油100は、遊星歯車28の軸受28A等に向けて噴射するように供給され、これらの軸受28Aおよび遊星歯車28の歯面等を潤滑状態に保つものである。
30は1段目の遊星歯車減速機構25に用いる1段目のキャリアで、該キャリア30は、図6ないし図9に示すように回転軸18の軸方向で前,後に離間した2枚の環状板部30A,30Bと、環状板部30A,30B間を周方向の3箇所で一体的に連結した略扇形状の連結部30C,30C,…とによって大略構成され、環状板部30A,30Bのうち一側の環状板部30Aは、他側の環状板部30Bよりも大径に形成されている。
ここで、キャリア30の環状板部30A,30B間には、各連結部30Cによって仕切られた空間内にそれぞれ遊星歯車28が各支持ピン29を介して回転可能に取付けられるものである。また、環状板部30Aの外周側には、図8、図9に示す如く多数のボルト孔30D,30D,…が間隔をもって穿設され、これらのボルト孔30Dには、図6、図7に示すボルト31がそれぞれ締結(螺着)される。
そして、キャリア30の環状板部30Aは、その外周側が各ボルト31を用いて筒状スピンドル15の環状凸部15Aに着脱可能に固定される。これにより、1段目のキャリア30は、筒状スピンドル15内に非回転状態で設けられ、複数の遊星歯車28等と共に筒状スピンドル15の減速機収容空間A内に収容されるものである。
また、キャリア30の環状板部30A,30Bには、図8、図9に示す如く後述の潤滑油ガイド66よりも下側に位置する2つの連結部30C,30Cを、軸方向に貫通して延びる油通路30E,液通路30Fが穿設されている。そして、油通路30Eは、後述の分岐管49と導管50との間をキャリア30の前,後で連通させ、液通路30Fは、後述するブレーキ配管53,54の間をキャリア30の前,後で連通させるものである。
32はキャリア30の中心側に設けられた環状の軸受取付部で、該軸受取付部32は、図7、図8、図11に示す如くキャリア30のうち環状板部30Bの内周側に一体に形成されている。そして、この軸受取付部32内には、後述するスラスト受け61のスラスト軸受62が嵌合して取付けられるものである。また、キャリア30の環状板部30Bには、スラスト軸受62に対して潤滑油を導く後述の潤滑油ガイド66等が設けられている。
33は1段目のリングギヤ27と一体に回転する回転伝達部材としてのカップリングで、該カップリング33は、1段目の遊星歯車減速機構25と2段目の遊星歯車減速機構34との間に位置する環状の板体として形成され、その外周側は1段目のリングギヤ27にスプライン等の手段で結合されている。
また、カップリング33の内周側は、後述する2段目の太陽歯車35にスプライン等の手段で結合されている。そして、カップリング33は、1段目のリングギヤ27の回転を2段目の太陽歯車35に伝え、この太陽歯車35をリングギヤ27と一体的に同一の速度で回転させるものである。なお、カップリング33には、第1の減速機収容空間A内の潤滑油100を第2の減速機収容空間B側に向けてカップリング33の前,後で流通させる複数の油穴(図示せず)等を形成してもよい。
34は本実施の形態で採用した最終段となる2段目の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構34は、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間に1段目の遊星歯車減速機構25を介して配設され、1段目の遊星歯車減速機構25と共に回転軸18の回転を減速して車輪取付筒19に大なる回転トルクを発生させるものである。
この場合、2段目の遊星歯車減速機構34は、回転軸18と同軸に配置されカップリング33と一体的に回転する筒状の太陽歯車35と、該太陽歯車35とリングギヤ36の内歯36A(図7参照)とに噛合し、太陽歯車35の回転に従って自転する例えば3個の遊星歯車37(1個のみ図示)と、該各遊星歯車37を支持ピン38を介して回転可能に支持したキャリア39等とにより構成されている。
そして、2段目のキャリア39は、その外周側が筒状スピンドル15の鍔部15Cにボルト40(図7参照)等を用いて非回転状態で、かつ着脱可能に固定されている。これによりキャリア39は、筒状スピンドル15の開口端で減速機収容空間Aを外側から覆う蓋体を兼用するものである。また、キャリア39の内周側には、図7に示すように軸受41等が設けられ、この軸受41は、カップリング33との間で太陽歯車35を軸方向両側から回転可能に支持している。
一方、2段目のリングギヤ36は、太陽歯車35、遊星歯車37、支持ピン38およびキャリア39等を径方向外側から取囲む短尺の筒状体として形成され、車輪取付筒19とディスク保持筒22との間に後述の長尺ボルト43を用いて一体的に固着して設けられている。そして、リングギヤ36の内周側には、各遊星歯車37に噛合する内歯36A(図7参照)が形成されている。
ここで、最終段となる2段目の遊星歯車減速機構34は、キャリア39が筒状スピンドル15に固定されることにより、遊星歯車37の公転(キャリヤ39の回転)が拘束される。そして、2段目の遊星歯車減速機構34は、太陽歯車35がカップリング33と一体に回転すると、この太陽歯車35の回転を複数の遊星歯車37の自転に変換しつつ、この自転(回転)をリングギヤ36から減速した回転として取出す。
即ち、この場合のリングギヤ36は、ディスク保持筒22と共に車輪取付筒19に一体化して設けられている。そして、後輪7側の車輪取付筒19には、1段目の遊星歯車減速機構25と2段目の遊星歯車減速機構34とで2段階に減速された大出力の回転トルクが伝えられるものである。
また、各遊星歯車37の支持ピン38には、図7に示すように油路38Aが形成され、該油路38Aには、キャリア39の外側から後述の供給管51が接続される。そして、供給管51から油路38A内に導かれる潤滑油100は、遊星歯車37の軸受37A等に向けて噴射するように供給され、これらの軸受37Aおよび遊星歯車37の歯面等を潤滑状態に保つものである。
一方、遊星歯車減速機構34のキャリア39には、図7に示すように筒状スピンドル15の鍔部15Cに沿って上,下方向に延びる油溝39Aが形成されている。そして、キャリア39の径方向内側と外側とは、この油溝39Aを介して常時連通し、第1,第2の減速機収容空間A,B内に供給された潤滑油100は、油溝39Aを介して車輪取付筒19の下側となる位置に向けて流通するものである。
即ち、油溝39Aは、筒状スピンドル15とキャリア39との間で後述の油溜まり57,58を互いに連通させる油通路として形成され、油溜まり57,58のうち筒状スピンドル15内に溜められた潤滑油100は、鍔部15Cの端面側で油溝39Aに沿って下向きに流下する。そして、筒状スピンドル15(油溜まり57)内と車輪取付筒19(油溜まり58)内とで潤滑油100の液面レベルは、油溝39Aによって均一化されるものである。
42はキャリア39の内周側を施蓋する内側キャップで、該内側キャップ42は、図7に示すようにキャリア39の内周側にボルト等を介して着脱可能に設けられ、軸受41等をキャリア39との間で抜止め状態に保持している。そして、内側キャップ42は、筒状スピンドル15の開口端側をキャリア39と共に施蓋し、第2の減速機収容空間B内の潤滑油100等がキャリア39の内側から漏洩するのを防ぐものである。
43,43,…はディスク保持筒22を車輪取付筒19に固定するための固定手段である長尺ボルトで、これらの長尺ボルト43は、図5に示すようにディスク保持筒22の周方向に予め決められた間隔をもって取付けられている。そして、長尺ボルト43は、図6に示すように車輪取付筒19とディスク保持筒22との間にリングギヤ36を挟んだ状態で、ディスク保持筒22とリングギヤ36とを車輪取付筒19の他側筒部19Bに着脱可能に固着するものである。
44はアクスルハウジング12内に設けられた潤滑油供給手段としての第1の潤滑油供給路で、この潤滑油供給路44は、筒状スピンドル15内を軸方向に延びた導管45と、各遊星歯車28の支持ピン29内に形成された前記油路29A等とにより構成されている。そして、導管45の一側(基端側)は、図6に示す仕切板14Cの位置で潤滑油の供給配管46に接続され、この供給配管46は、潤滑油100の供給源となる車載の潤滑油ポンプ(図示せず)等に接続されるものである。
また、導管45の他側(先端側)は、支持ピン29の油路29Aに接続され、この油路29A内には、前記潤滑油ポンプから吐出された潤滑油が供給配管46、導管45を介して導かれる。そして、油路29A内の潤滑油100は、遊星歯車28の軸受28A等に向けて噴射するように供給され、これらの軸受28Aおよび遊星歯車28の歯面等を潤滑状態に保つものである。
なお、1段目のキャリア30には、例えば3個の遊星歯車28が支持ピン29を介して取付けられ、図6中には示していない他の遊星歯車28に対しても、導管45の途中位置から後述の継手48等により分岐された分岐管(図示せず)を介して同様に潤滑油が供給されるものである。
47は2段目の遊星歯車減速機構34に潤滑油100を供給する潤滑油供給手段としての第2の潤滑油供給路で、この潤滑油供給路47は、図6に示すように前記導管45の途中位置から継手48を介して分岐された分岐管49と、該分岐管49の先端側が接続されるキャリア30の油通路30E(図8参照)と、この油通路30Eを介して分岐管49に接続された潤滑油の導管50と、後述の供給管51等とにより構成されるものである。
ここで、潤滑油の導管50は、図6、図7中に二点鎖線で示す如く2段目の太陽歯車35の内側を隙間をもって軸方向に延び、その先端側が内側キャップ42に取付けられている。そして、内側キャップ42から外部に引出された導管50の端部には、後述の供給管51が接続されている。また、導管50の基端側は、前述の如く1段目のキャリア30に穿設した油通路30E等を介して分岐管49に接続されている。
51,51,…は2段目の遊星歯車減速機構34に潤滑油100を供給する他の導管としての供給管で、これらの供給管51は、図5に示すようにキャリア39の外側となる位置で各支持ピン38の油路38A(図7参照)に接続されている。また、これらの供給管51には、図7中に二点鎖線で示す導管50等が接続され、前記分岐管49側から潤滑油が供給される。そして、この潤滑油100は、各供給管51を介して各支持ピン38の油路38A内へと噴射状態で供給されるものである。
52は内側キャップ42の外側に設けられた戻し管で、この戻し管52は、図5に示す如く供給管51の最下流側に接続され、供給管51内で余剰となった潤滑油を図7に示す如く内側キャップ42の内部に戻すものである。そして、この戻り油(潤滑油)は、内側キャップ42と太陽歯車35との間の軸受41等に供給された後に、後述の油溜まり58内に徐々に落下して収容される。
53は筒状の太陽歯車35内に隙間をもって配置され軸方向に延びたブレーキ配管で、このブレーキ配管53は、潤滑油の導管50と同様に先端側が内側キャップ42に取付けられ、内側キャップ42から外部に引出されている。また、ブレーキ配管53の基端側(一側)は、1段目のキャリア30に向けて延び、キャリア30の液通路30F(図8参照)等を介して他のブレーキ配管54に接続されている。
また、他のブレーキ配管54は、図4、図6に示すように筒状スピンドル15の減速機収容空間A内を軸方向に延び、その基端側は車両に搭載されたブレーキ用の液圧制御弁等を介してマスタシリンダ(図示せず)に接続されている。そして、ブレーキ操作時には、前記マスタシンダからのブレーキ液圧がブレーキ配管54、キャリア30の液通路30F(図8参照)を介してブレーキ配管53側へと供給される。
また、内側キャップ42から外部に引出されたブレーキ配管53の先端側は、例えば可撓性ホース等からなる合計3本の分岐管55,55,…(図5参照)に接続されている。そして、これらの分岐管55は、ブレーキ配管53側からのブレーキ液圧を後述の各ディスクブレーキ56にそれぞれ供給するものである。
56,56,…はディスク23と共にブレーキ手段を構成する複数のディスクブレーキで、該各ディスクブレーキ56は、図7に示すように最終段となる2段目のキャリア39に軸方向の外側(減速機収容空間Aの外側)からボルト56A等を用いて取付けられている。また、ディスクブレーキ56は、図5に示すようにディスク23の周方向に間隔をもって合計3個設けられている。
そして、ディスクブレーキ56は、前記マスタシリンダからのブレーキ液圧がブレーキ配管54,53および各分岐管55等を介して供給されることにより、ディスク23を軸方向の両側から挟持し、ディスク23と一体に回転する車輪取付筒19(後輪7)に制動力を付与するものである。
57は筒状スピンドル15の内部に設けられた油溜まりで、この油溜まり57は、前述した第1の減速機収容空間Aの下側となる位置に形成され、1段目の遊星歯車減速機構25を構成する太陽歯車26および各遊星歯車28等に供給された潤滑油100を、例えば図6に示す液面高さで収容するものである。
58は車輪取付筒19の内部に設けられた油溜まりで、この油溜まり58は、前述した第2の減速機収容空間Bおよび環状空間Cの下側となる位置に形成され、2段目(最終段)の遊星歯車減速機構34を構成する太陽歯車35および各遊星歯車37等に供給された潤滑油100を、筒状スピンドル15内の油溜まり57と一緒に収容するものである。
この場合、油溜まり57,58内の潤滑油100は、油液の撹拌抵抗を小さく抑えるために、遊星歯車28、支持ピン29の中心軸線(導管45)よりも下方となる液面高さ(例えば、図6中に示す液面高さ)をもって収容されるものである。即ち、油溜まり57,58内に収容する潤滑油100の油量は、必要最小限の油量(例えば、内容積の1/5〜1/3程度)に設定されている。
これにより、油溜まり57,58内の潤滑油100は、遊星歯車減速機構25,34のリングギヤ27,36、自転する遊星歯車28,37およびカップリング33等に与える回転抵抗(潤滑油の粘性抵抗による回転負荷)を小さく抑えると共に、軸受20,21およびリングギヤ27,36等を常に潤滑状態に保つものである。
59は車輪取付筒19の最下部位に形成されたドレン孔で、このドレン孔59は、図6、図7に示すようにリングギヤ36およびディスク保持筒22を貫通して軸方向に延び、その先端側はプラグ60により着脱可能に閉塞されている。そして、プラグ60を取外したときには、油溜まり57,58(車輪取付筒19)内に溜まった潤滑油100をドレン孔59を通じて外部に排出するものである。
61は回転軸18からのスラスト荷重を受承するスラスト受けで、該スラスト受け61は、図7、図10、図11に示す如くキャリア30の中心側(図10中の軸線O−O上)に位置し、環状板部30Bの内周側に環状の軸受取付部32を介して設けられている。そして、スラスト受け61は、回転体65と同軸(軸線O−O上)に配置された後述のスラスト軸受62と回転体65とにより構成されている。
62は環状板部30Bの内周側に軸受取付部32を介して取付けられたスラスト軸受で、該スラスト軸受62は、図10、図11に示す如くスラスト荷重を受承可能なボールベアリング等が用いられ、後述のシール体63によりシール付き軸受として構成されている。そして、スラスト軸受62は、環状の軸受取付部32内に嵌合された外輪62Aと、該外輪62Aの内周側に転動子としての複数のボール62B,62B,…を介して回転可能に設けられた内輪62Cとにより構成されている。
63はスラスト軸受62の外輪62Aと内輪62Cとの間に設けられた環状のシール体で、該シール体63は、例えば環状のパッキン材等により形成され、後述の潤滑油ポケット69とは反対側になる位置でスラスト軸受62内に装着されている。そして、シール体63は、潤滑油ポケット69から各ボール62B等に供給された潤滑油100を外輪62Aと内輪62Cとの間に保持し、このときの潤滑油100が太陽歯車26側に漏出するのを抑えるものである。
64は軸受取付部32内でスラスト軸受62を抜止め状態に保持する止め具を示し、該止め具64は、例えばC型の止め輪等により構成され、軸受取付部32の内周側に着脱可能に取付けられている。そして、止め具64は、スラスト軸受62の外輪62Aに当接し、軸受取付部32内におけるスラスト軸受62の軸方向変位等を規制するものである。
65はキャリア30の軸受取付部32内にスラスト軸受62により回転可能に支持された段付き円板状の回転体で、該回転体65は、スラスト軸受62の内輪62C内に圧入等の手段を用いて嵌合され、外輪62Aに対し各ボール62Bを介して内輪62Cと一体に回転する。そして、回転体65は、図11に示すように回転軸18の先端側端面に当接する凸面部65Aを有し、該凸面部65Aは、回転軸18からのスラスト荷重Fをスラスト軸受62等を介して受承する。
即ち、電動モータ17の回転によって軸方向のスラスト荷重Fが回転軸18に付加されるようなときには、回転軸18の先端側端面が回転体65の凸面部65Aに当接し、該回転体65は、回転軸18に追従して回転する。そして、回転体65は、このときのスラスト荷重Fを凸面部65A側で受承し、回転軸18の軸方向変位を規制するものである。
66はキャリア30の環状板部30Bに設けられた潤滑油ガイドで、該潤滑油ガイド66は、スラスト受け61の上側に位置して環状板部30Bに穿設された貫通穴67と、該貫通穴67とスラスト受け61との間に配置される後述の潤滑油ポケット69とにより構成されている。
そして、潤滑油ガイド66は、例えばリングギヤ27により油溜まり57から掻き上げられてキャリア30の環状板部30Bに付着した潤滑油が自然落下(自重)等により下方へと流下するときに、この潤滑油を貫通穴67、後述の潤滑油ポケット69を介してスラスト受け61へと導き、このスラスト受け61を潤滑状態に保つものである。
ここで、潤滑油ガイド66の貫通穴67は、図8ないし図11に示すように略コ字形状の段付開口として形成され、潤滑油ポケット69の上側となる位置には貫通穴67を取囲むようにリブ状突起68が設けられている。そして、このリブ状突起68は、キャリア30の壁面等に付着した潤滑油を図11中の矢示D,E方向に導き、貫通穴67を介して後述の潤滑油ポケット69内へと流下(滴下)させるものである。
69はスラスト受け61に供給すべき潤滑油を溜める潤滑油ポケットで、該潤滑油ポケット69は、図8ないし図11に示すようにキャリア30の環状板部30Bに一体形成され、環状板部30Bの外側面からポケット状をなして突出(膨出)している。そして、潤滑油ポケット69は、キャリア30の軸受取付部32(スラスト受け61)を外側から取囲むように略円形の蓋状体として形成された下側の膨出カバー部69Aと、該膨出カバー部69A内に潤滑油を捕集するため該膨出カバー部69Aの上側に一体形成された略四角形の膨出窓部69B等とにより構成されている。
ここで、潤滑油ポケット69の膨出窓部69Bは、貫通穴67にほぼ等しい開口幅をもって該貫通穴67の下側位置に配置されている。また、潤滑油ポケット69には、膨出窓部69Bの内側となる位置に略四角形状の連通穴部69Cが設けられ、この連通穴部69Cは、キャリア30の軸受取付部32のうち上,下方向の上側部位を四角形状に切欠くことにより形成されている。
そして、潤滑油ポケット69は、キャリア30の壁面に沿って図11中の矢示D,E方向に流下(滴下)してくる潤滑油を膨出窓部69Bの上端から内部に取込みつつ、この潤滑油を連通穴部69Cを介して膨出カバー部69A内に導き、内部に捕集する。この場合、膨出カバー部69Aは、図11に示す如くスラスト受け61のスラスト軸受62等を軸方向の外側から隙間をもって覆い、内部に捕集した潤滑油100をスラスト軸受62の外輪62A,内輪62C間等に供給(給脂)するものである。
また、膨出カバー部69Aの中心側(図10中の軸線O−O上)には、回転体65と対向する位置に円形の打抜き穴69Dが形成され、この打抜き穴69Dは、例えば鋳造等の手段でキャリア30を潤滑油ポケット69と一体成形するときの成形作業性を高めるために設けたものである。なお、この打抜き穴69Dは、必ずしも設ける必要はなく、場合によっては膨出カバー部69Aから打抜き穴69Dを廃止してもよいものである。
70は筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間を液密にシールするシール装置で、該シール装置70は、図4、図6、図12に示すように所謂フローティングシールにより構成されている。そして、シール装置70は、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間の環状空間C内に収容した潤滑油100が後述するリテーナ71の外部に漏洩するのを抑えると共に、土砂、雨水等が環状空間C内に侵入するのを防止するものである。
ここで、シール装置70は、図12に示すようにアクスルハウジング12のモータ収容筒14と筒状スピンドル15との間にボルト16等を介して挟持された固定側のリテーナ71と、車輪取付筒19のリテーナ取付部19E内に位置し軸方向一側の端面にボルト72等を介して取付けられた回転側のリテーナ73と、これらのリテーナ71,73との間でシール部材としての一対のOリング74,74を挟持し、互いに軸方向で対向して配置された一対のシールリング75,75とにより構成されている。
そして、シール装置70は、リテーナ71,73とシールリング75,75との間で一対のOリング74を弾性変形させ、リテーナ71,73と各Oリング74との間をシールすると共に、Oリング74の弾性復元力で各シールリング75に対して軸方向の押圧力を付与する。これにより、一対のシールリング75,75は、軸方向で互いに摺接し合うようになり、両者の摺接面を液密にシールするものである。
また、固定側のリテーナ71は、図12に示すように筒状スピンドル15の外周側に嵌合される筒部71Aと、該筒部71Aの基端側から径方向内向きに突出しモータ収容筒14と筒状スピンドル15との間に挟持される環状突部71Bと、筒部71Aの基端側から径方向外向きに突出しOリング74の保持部71Cが一体形成された環状のフランジ部71Dとにより構成されている。
そして、リテーナ71の環状突部71Bは、筒部71Aを筒状スピンドル15の外周側に嵌合させるときに、筒状スピンドル15の軸方向一側(基端側)の端面に後述のシム板77を介して当接され、ボルト76により筒状スピンドル15の端面側に固定される。また、リテーナ71は、後述する潤滑油排出部78の一部であるシール取付体を構成し、そのフランジ部71Dには、後述の排出管79が接続されるものである。
77は固定側のリテーナ71と筒状スピンドル15との間にボルト76を用いて挟持されたシム板で、該シム板77は、筒状スピンドル15の基端側端面に沿って周方向に延びる環状平板として形成されている。そして、シム板77は、その板厚または枚数に応じてリテーナ71の環状突部71Bと筒状スピンドル15の端面との間の間隔S(図12参照)を可変に調節する。
この場合、筒状スピンドル15の外周側に嵌合するリテーナ71の筒部71Aは、その先端側が軸受20の内輪に当接し、この軸受20に対する軸方向のセット荷重(スラスト荷重)を、シム板77の厚さまたは枚数に応じて可変に調整する。また、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間に配設された他の軸受21についても、その内輪側が図6に示す如く筒状スピンドル15の鍔部15C側に当接しているので、軸受21のセット荷重(スラスト荷重)は、シム板77の厚さまたは枚数に応じて可変に調整されるものである。
78は油溜まり57,58内の潤滑油100を車輪取付筒19の外部に吸引して排出する潤滑油排出手段としての潤滑油排出部で、該潤滑油排出部78は、前述したリテーナ71のフランジ部71Dに排出管79を接続して設けることにより構成されている。ここで、潤滑油の排出管79は、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間で最も下側となる最下部位に配設されている。
そして、排出管79は、例えば第1,第2の減速機収容空間A,Bおよび環状空間C内に前述の如く供給されて油溜まり57,58に溜められた潤滑油100を、車載の潤滑油ポンプ等により環状空間Cの外部に向けて図6、図12中の矢示G方向に吸引しつつ、排出させるものである。
この場合、排出管79は、一方の端部が吸込口79Aとなってリテーナ71に取付けられ、この吸込口79Aは、筒状スピンドル15の下側で軸受20のころ(転動子)と同等の高さ位置に配置されている。そして、排出管79は、吸込口79Aの位置からリテーナ71を介してアクスルハウジング12(モータ収容筒14)の外部に引き出されている。また、排出管79の下流側となる他方の端部79Bは、モータ収容筒14の大径部14A側に取付けられ、図2に示すアクスルハウジング12の懸架筒13側から他の配管、フィルタ、冷却装置(いずれも図示せず)等を介して前記潤滑油ポンプの吸込側に接続されるものである。
また、前記モータ収容筒14の小径部14B側には、例えば油溜まり57,58内に収容した潤滑油100の液面高さを検知する検知器(図示せず)等が設けられている。そして、油溜まり57,58内の液面高さが予め決められた基準液面よりも高くなったときには、油溜まり57,58内の潤滑油100は、例えばドレン孔59等から外部に排出される。
これによって、油溜まり57,58内の潤滑油100は、図6に例示する液面高さ(例えば、遊星歯車28、支持ピン29の中心軸線と同等、またはこれよりも僅かに下側となる液面高さ)に設定されているものである。なお、排出管79から排出された潤滑油は、前記フィルタで異物を除去し、前記冷却装置で冷却された後に、再び供給配管46側に供給されるものである。
80はモータ収容筒14の仕切板14Cに設けられたエア排出管で、該エア排出管80は、図6に示すように仕切板14Cの上部側に取付けられ、例えば減速機収容空間A内のエアを外部に排出する。これにより、筒状スピンドル15と車輪取付筒19内は、常に大気圧と同等またはそれ以下の圧力に保たれるものである。
81は車輪取付筒19の軸方向外側となる位置に配設された他のシール装置で、該シール装置81は、所謂フローティングシールとして構成され、図6、図7に示すようにディスク保持筒22と最終段(2段目)のキャリア39との間に固定側のリテーナ81A等を介して設けられている。そして、このシール装置81も、車輪取付筒19の軸方向一側(内側)に配設した図6、図12に示すシール装置70とほぼ同様に構成され、第2の減速機収容空間B内の潤滑油100がディスク保持筒22とキャリア39側のリテーナ81Aとの間から外部に漏洩するのを抑えると共に、外部の土砂、雨水等が侵入するのを防止するものである。
82は後輪7を車輪取付筒19の外周側に着脱可能に固定する楔部材で、該楔部材82は、図3および図4に示すように、車輪取付筒19の軸方向外側から後輪7のリム7Bと車輪取付筒19との間に圧入され、後輪7を車輪取付筒19に対して抜止め、廻止め状態に保持するものである。
このため、楔部材82は、車輪取付筒19の周方向に間隔をもって10個以上設けられ、これらの楔部材82を脱着することによって、後輪7は車輪取付筒19から取外されるものである。なお、図6、図7中では、車輪取付筒19の外周側から後輪7と楔部材82等を取外した状態を示している。
また、83は図1に示すダンプトラック1のベッセル3を起伏させるための起伏シリンダで、該起伏シリンダ83は、図1に示す如く前輪6と後輪7との間に位置して車体2の左,右両側に配設されている。そして、起伏シリンダ83は、外部から圧油が給排されることにより上,下方向に伸縮し、後部側のピン結合部4を中心にしてベッセル3を起伏(傾転)させるものである。
84は作動油タンクで、該作動油タンク84は、図1に示すようにベッセル3の下方に位置して車体2の側面等に取付けられている。そして、作動油タンク84内に収容した作動油は、前記油圧ポンプにより圧油となって起伏シリンダ83およびパワーステアリング用の操舵シリンダ等に給排されるものである。
本実施の形態によるダンプトラック1の走行駆動装置11は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、ダンプトラック1のキャビン5に乗り込んだ運転者が、図2に示すエンジン8を起動すると、油圧源となる油圧ポンプ(図示せず)が回転駆動されると共に、オルタネータ9により発電が行われ、この電気がバッテリ等に充電されつつ、電気コントローラ10等に給電される。
そして、車両を走行駆動するときには、電気コントローラ10から後輪7側の各電動モータ17に駆動電流が供給され、このときに電気コントローラ10は、左,右の電動モータ17,17の回転数を個別にフィードバック制御する。これにより、車両の駆動輪となる左,右の後輪7,7は、互いに独立して回転駆動され、直進走行時には互いに同一の回転数で駆動される。
即ち、ダンプトラック1の後輪7側に設けられた走行駆動装置11は、電動モータ17(回転軸18)の回転を複数段の遊星歯車減速機構25,34により、例えば30〜40程度の減速比で減速し、駆動輪となる後輪7を車輪取付筒19と一緒に大なる回転トルクで走行駆動するものである。そして、左,右の後輪7は、左,右の電動モータ17により独立した回転数で駆動される。
また、1段目,2段目の遊星歯車減速機構25,34等には、車載の潤滑油ポンプ(供給源)から吐出された潤滑油100が図6に示す供給配管46を通じて第1の潤滑油供給路44と第2の潤滑油供給路47とに供給され、それぞれの太陽歯車26,35、遊星歯車28,37等が潤滑状態に保持される。そして、このときの潤滑油100は、それぞれの歯面等を潤滑しつつ、重力の作用で下方の油溜まり57,58内に順次滴下して溜められる。
この場合、第1の潤滑油供給路44では、供給配管46から導管45を介して支持ピン29の油路29A内に導かれた潤滑油100を、各遊星歯車28の軸受28A等に向けて噴射させる。そして、自転する各遊星歯車28は、その回転による遠心力で潤滑油100を径方向の外側へと導き、遊星歯車28と太陽歯車26、リングギヤ27との噛合面等を潤滑状態に保つことができる。
また、第2の潤滑油供給路47では、図6に例示したように導管45の途中位置から継手48を介して分岐された分岐管49、キャリア30内の油通路30E(図8、図9参照)、導管50(図7、図8参照)および各供給管51(図5参照)等を通じて支持ピン38の油路38A内に導かれた潤滑油100を、各遊星歯車37の軸受37A等に向けて噴射させる。そして、これらの遊星歯車37は、その回転による遠心力で潤滑油100を径方向の外側へと導き、遊星歯車37と太陽歯車35、リングギヤ36との噛合面等を潤滑状態に保つことができる。
また、図5に示す供給管51の最下流側には戻し管52が接続され、供給管51内で余剰となった潤滑油を戻し管52により内側キャップ42の内部に戻す。そして、この戻り油(潤滑油)は、内側キャップ42と太陽歯車35との間の軸受41等に供給された後に、油溜まり58内に徐々に滴下して収容される。
また、油溜まり57,58内に収容された潤滑油100は、回転する1段目,2段目のリングギヤ27,36の内歯27A,36A等により順次上方へと掻き上げられ、遊星歯車減速機構25,34に対する掻き上げ潤滑等を行うことができる。そして、第1の減速機収容空間A(筒状スピンドル15)内で油溜まり57に溜められた潤滑油100は、1段目のキャリア30よりも下側に位置して筒状スピンドル15の環状凸部15Aに形成した油孔15Dを通じてキャリア30の前,後に流通し、その液面レベルを油孔15Dの前,後で常に均一化することができる。
また、最終段のキャリア39と筒状スピンドル15の鍔部15Cとの間には、キャリア39の端面を上,下方向に切欠くことにより筒状スピンドル15の鍔部15Cに沿って下向きに延びる油溝39Aを設けている。そして、油溜まり57,58のうち筒状スピンドル15内に溜められた潤滑油100は、鍔部15Cの端面側で油溝39Aに沿って下向きに流下するので、その液面レベルを、筒状スピンドル15内と車輪取付筒19内とで油溝39Aにより均一化することができる。
一方、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間には、環状空間C内に潤滑油100を封止するシール装置70が設けられ、このシール装置70のシール取付体となるリテーナ71には、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との最下部位に潤滑油排出部78の排出管79を接続して設けている。そして、排出管79の下流側となる端部を、フィルタ、冷却装置(いずれも図示せず)等を介して前記潤滑油ポンプの吸込側に接続している。
これにより、この潤滑油ポンプを作動させると、1段目,2段目の遊星歯車減速機構25,34等には潤滑油ポンプから吐出された潤滑油100を、第1,第2の潤滑油供給路44,47から供給でき、油溜まり57,58内に溜められた潤滑油100を、排出管79から強制的に外部に排出することができる。そして、このときに排出油(潤滑油)内の異物を、前記フィルタで濾過して除去できると共に、前記冷却装置により潤滑油を冷却することができる。
ところで、走行駆動装置11(例えば、筒状スピンドル15)の内部に収容する潤滑油100は、必要最小限の油量(例えば、内容積の1/5〜1/3程度)に設定しているので、例えば装置の中心側に位置して回転軸18からのスラスト荷重Fを受承するスラスト受け61等には、油溜まり57内の潤滑油100を十分に供給するのが難しくなる。特に、1段目の遊星歯車減速機構25では、非回転となったキャリア30の中心側にスラスト受け61を設けているため、このスラスト受け61に対して潤滑油を供給するのが難しくなる。
そこで、本実施の形態によれば、キャリア30の環状板部30Bに潤滑油ガイド66を設け、この潤滑油ガイド66を、スラスト受け61の上側に位置して環状板部30Bに穿設された貫通穴67と、該貫通穴67とスラスト受け61との間に配置され内部に潤滑油100を捕集して溜める潤滑油ポケット69とから構成している。
このため、例えばリングギヤ27等の回転により油溜まり57内からキャリア30の上部側に掻き上げられた潤滑油は、キャリア30の壁面等に沿って図11中の矢示D方向に流れ落ちるときに、潤滑油ポケット69の膨出窓部69Bから膨出カバー部69A内に捕集される。そして、この膨出カバー部69A内に捕集した潤滑油100を、図11に示す如くスラスト受け61のスラスト軸受62等に供給することができ、スラスト受け61を潤滑状態に保つことができる。
また、このときには、キャリア30の環状板部30A,30B間で遊星歯車28の回転により、例えば支持ピン29の油路29Aから噴出するように供給された潤滑油がキャリア30の内側面等に付着し、この潤滑油が自然落下(自重)等によって図11中の矢示E方向に下方へと流下する。そして、潤滑油ガイド66は、この潤滑油を貫通穴67を介して潤滑油ポケット69内に捕集しつつ、スラスト受け61を潤滑状態に保つことができる。
そして、電動モータ17の回転により軸方向のスラスト荷重Fが回転軸18に付加されるようなときには、回転軸18の先端側端面がスラスト受け61の回転体65(凸面部65A)に当接し、該回転体65は、回転軸18に追従して円滑に回転することにより、このときのスラスト荷重Fを凸面部65A側で受承できると共に、回転軸18の回転を円滑化(安定化)することができる。
このように、走行駆動装置11の内部に収容する潤滑油100の油量を必要最小限の油量(例えば、内容積の1/5〜1/3程度)に設定した場合でも、当該装置の中心側で回転軸18からのスラスト荷重Fを受承するスラスト受け61には、潤滑油ガイド66を通じて潤滑油100を十分に供給することができ、スラスト受け61のスラスト軸受62等を潤滑状態に保つことができる。
この結果、回転軸18からのスラスト荷重Fをスラスト受け61で安定して受承でき、回転軸18を長尺な軸体として形成した場合でも該回転軸18の円滑な回転を補償できると共に、当該装置の耐久性、寿命を向上することができる。
また、スラスト軸受62の外輪62Aと内輪62Cとの間には環状のシール体63を設け、スラスト軸受62をシール付き軸受として構成しているので、潤滑油ガイド66からスラスト軸受62に導かれた潤滑油100を軸受内部に保持することができ、スラスト軸受62内を潤滑状態に保ち、油膜切れ等の発生を防ぐことができる。
また、本実施の形態にあっては、車両の後輪7側に設けるアクスルハウジング12を、モータ収容筒14と、該モータ収容筒14の軸方向外側に着脱可能に設けられる筒状スピンドル15等とにより構成し、筒状スピンドル15の外周側でその下側となる部位には、油溜まり57,58内の潤滑油100を車輪取付筒19と筒状スピンドル15との間の環状空間Cから外部に吸引して矢示G方向に排出する潤滑油排出部78を設ける構成としている。
そして、この潤滑油排出部78は、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間で環状空間C内に潤滑油100を封止するシール装置70のリテーナ71に対し、筒状スピンドル15よりも下側となる位置で排出管79の吸込口79Aを接続することによって構成され、この排出管79は、環状空間C内の潤滑油100をリテーナ71の外部に吸込口79Aから排出する構成としている。
このため、油溜まり57,58内の潤滑油100を排出管79の吸込口79Aから外部に吸引して排出するときには、この潤滑油100が筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間の環状空間Cを通って外部に排出されることになり、環状空間C内に油温の高い古い潤滑油100が滞留するのを防止でき、環状空間C内での潤滑油100の循環(排出)性能を高めることができる。
そして、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間に設ける軸受20,21には、環状空間C内を排出管79の吸込口79Aに向けて流通する循環性の高い潤滑油100を供給でき、軸受20,21を常に新しい潤滑油100で潤滑状態に保つことができると共に、このときの潤滑油100を車輪取付筒19(環状空間C)の外部に排出管79を介して円滑に排出することができる。
また、最終段のキャリア39と筒状スピンドル15との間には、両者の最下部位に油通路としての油溝39Aを設けているので、例えば潤滑油供給路44から供給された潤滑油100を、筒状スピンドル15内から車輪取付筒19内に油溝39Aを通じて滑らかに流通させ、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間における潤滑油100の循環性能を高めることができる。
しかも、遊星歯車減速機構25,34のキャリア30,39を筒状スピンドル15に非回転状態で設ける構成としているので、キャリア30,39の回転を筒状スピンドル15により拘束することができ、キャリア30,39を製造する上で重心位置の管理等を特別に行う必要がなくなり、キャリア30,39に組付ける複数の支持ピン29,38および遊星歯車28,37の荷重配分等を容易に行うことができる。
そして、キャリア30,39は、複数の遊星歯車28,37を回転可能に支持するために十分な剛性を確保し、頑丈な構造に形成できると共に、このキャリア30,39を走行駆動装置11の非回転部分(例えば、筒状スピンドル15等)に対する強度部材として活かすことができ、装置全体の強度、剛性を高めることができる。また、これにより筒状スピンドル15の肉厚等を小さくして軽量化を図ることができる。
従って、本実施の形態によれば、キャリア30,39等を製造する上での作業性、生産性を高めることができると共に、遊星歯車減速機構25,34の組立時における作業性を向上することができる。また、遊星歯車減速機構25,34のリングギヤ27,36、スラスト受け61等に対して新しい潤滑油100を供給し続けることができ、軸受20,21やリングギヤ27,36およびスラスト受け61等の耐久性や寿命を向上することができる。
また、筒状スピンドル15、車輪取付筒19内に収容する潤滑油100の油量を、必要最小限の液面レベルまで下げることにより装置内での撹拌抵抗を低減でき、発熱を抑えることができると共に、装置の回転負荷等を軽減することができる。
また、筒状スピンドル15の内側には、1段目の遊星歯車減速機構25を収容しているので、2段目の遊星歯車減速機構34が筒状スピンドル15から軸方向外側に張出す寸法を小さく抑えることができ、走行駆動装置11全体の軸方向長さ(全長)を短くできると共に、装置全体の小型化、軽量化等を図ることができる。
しかも、遊星歯車減速機構25,34のキャリア30,39を、筒状スピンドル15に非回転状態で設ける構成としているので、遊星歯車28,37を回転可能に支持する支持ピン29,38をキャリア30,39と共に非回転状態に保つことができ、潤滑油供給路44,47の導管45,50等を支持ピン29,38内の油路29A,38Aに対して安定した状態で接続することができる。
そして、このような支持ピン29,38は、太陽歯車26,35の周囲に定間隔をもって配置され各遊星歯車28,37の回転中心をなしているので、前記導管45,50から支持ピン29,38の油路29A,38A内に供給された潤滑油を、遊星歯車28,37の自転に伴う遠心力の作用で放射状に噴射させることができ、例えば遊星歯車28,37と太陽歯車26,35との噛合面、遊星歯車28,37とリングギヤ27,36との噛合面等に対して霧状に微細化された潤滑油をほぼ均等に供給することができる。
これにより、減速機構24に対する潤滑油の供給を効率的に行うことができ、減速機構24の各構成部品(歯車)の耐久性、寿命等を向上することができる。また、前記各歯車の噛合面等に供給された潤滑油は、自然落下により油溜まり57,58内に溜められ、例えばリングギヤ27,36の内歯27A,36A等を潤滑できると共に、回転する車輪取付筒19と非回転の筒状スピンドル15との間で軸受20,21等を潤滑状態に保つことができる。
また、筒状スピンドル15内に非回転状態で設けたキャリア30には、各遊星歯車28から周方向に離間した位置に図8中に点線で示すように油通路30Eを形成し、潤滑油供給路47の分岐管49と導管50とをキャリア30の前,後で油通路30Eにより連通させることができ、キャリア30の油通路30Eを潤滑油の供給通路として活用することができる。
次に、図13は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、スラスト受けを、キャリアの中心側に円筒状のブッシュを介して回転可能に設けられた段付円板状の回転体により構成したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、91は回転軸18からのスラスト荷重Fを受承するスラスト受けで、該スラスト受け91は、第1の実施の形態で述べたスラスト受け61とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合のスラスト受け91は、後述のブッシュ92と回転体93とにより構成されている点で異なるものである。
92は環状板部30Bの内周側に軸受取付部32を介して取付けられたブッシュで、該ブッシュ92は、耐摩耗性の高い硬質材料により円筒状のリングとして形成され、例えば圧入等の手段を用いて環状の軸受取付部32内に嵌合(固定)されている。そして、ブッシュ92は、回転軸18と同軸に配置され、第1の実施の形態で述べた止め具64により軸受取付部32内での軸方向変位が規制されている。
93はキャリア30の軸受取付部32内にブッシュ92を介して回転可能に設けられた段付き円板状の回転体で、該回転体93は、第1の実施の形態で述べた回転体65と同様に構成され、回転軸18の先端側端面に当接する凸面部93Aを有している。しかし、この場合の回転体93には、後述の油路94,95等が穿設されている。
94は回転体93の中心側に穿設された潤滑油用の油路で、この油路94は、回転体93内を軸方向に貫通し、凸面部93Aの端面に開口している。そして、油路94は、後述の潤滑油ガイド96から導かれた潤滑油100を回転軸18との当接面に供給するものである。
95,95,…は回転体93の径方向に穿設された他の油路で、これらの油路95は、例えば全体として十字状をなして回転体93の径方向に延び、油路94と常時連通している。そして、油路95は、ブッシュ92との摺接面に潤滑油100を供給し、ブッシュ92と回転体93との摺接面を潤滑状態に保つものである。
96はキャリア30の環状板部30Bに設けられた潤滑油ガイドで、該潤滑油ガイド96は、第1の実施の形態で述べた潤滑油ガイド66とほぼ同様に、貫通穴67と潤滑油ポケット98とにより構成されている。そして、潤滑油ガイド96の潤滑油ポケット98は、第1の実施の形態で述べた潤滑油ポケット69と同様に構成され、下側の膨出カバー部98A、上側の膨出窓部98Bおよび連通穴部98Cを有している。
しかし、この場合の潤滑油ポケット98は、打抜き穴69D(図11参照)が廃止され、膨出カバー部98Aは、スラスト受け91の回転体93等を軸方向の外側から完全に覆う構成となっている。このため、潤滑油ポケット98の膨出カバー部98A内には、例えば油路94に対応する高さ位置まで潤滑油100が収容されるものである。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、回転体93を回転軸18の先端側端面に当接させることにより、回転軸18からのスラスト荷重Fをブッシュ92と回転体93とで滑らかに受承でき、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
特に、本実施の形態では、キャリア30の中心側にブッシュ92を介して回転可能に設けた回転体93により、スラスト受け91を簡単な構造で構成することができる。そして、回転体93に設けた油路94,95により、潤滑油ガイド96から導かれた潤滑油100を回転軸18との当接面に供給できると共に、ブッシュ92と回転体93との摺接面にも潤滑油100を供給することができ、前記当接面および摺動面を潤滑状態に保ち、油膜切れ等の発生を防ぐことができる。
なお、前記実施の形態では、1段目のキャリア30を筒状スピンドル15の環状凸部15Aにボルト31で固定する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば鋳造または鍛造等の手段を用いて1段目のキャリアを筒状スピンドル15内に一体形成する構成としてもよく、1段目のキャリアを筒状スピンドル内に非回転状態で設ける構成とすればよいものである。
また、前記実施の形態では、2段目のキャリア39を筒状スピンドル15の鍔部15Cにボルト40を用いて固定する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば鋳造または鍛造等の手段を用いて最終段のキャリアを筒状スピンドル15の開口端側に一体形成する構成としてもよい。
また、前記実施の形態では、減速機構24を1段目,2段目の遊星歯車減速機構25,34により構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば減速機構を3段以上の遊星歯車減速機構により構成してもよいものである。
また、前記実施の形態では、電動モータ17を駆動源として用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧モータ等を走行駆動装置の駆動源として用いてもよいものである。
さらに、前記実施の形態にあっては、後輪駆動式のダンプトラック1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば前輪駆動式または前,後輪を共に駆動する4輪駆動式のダンプトラックに適用してもよいものである。