(発明の詳細な説明)
炎症および損傷応答は、AD、パーキンソン病(PD)、前頭側頭型痴呆、脳血管疾患、多発性硬化症、およびニューロパシーにおけるニューロン変性と常に関連している。脳およびCNSは、それら自身が免疫学的に活性であるだけでなく、複雑な末梢性の免疫学的相互作用を有する。Fialaら(1998 Mol Med.Jul;4(7):480−9)は、アルツハイマー病において、血液脳関門の透過性および化学走性の変化(一部、ケモカインおよびサイトカインによって媒介される)が、末梢細胞の漸増および脳実質への末梢細胞の経血管内皮性通過を可能にし得ることを示した。血液脳関門のパラダイムは、インビボにおいて観察された解剖学的特徴および生理学的特徴を有するヒト脳血管内皮細胞および星状膠細胞を利用して構築された。このモデルは、血液脳関門モデルの脳側においてAβl−42によってチャレンジされた場合、単球/マクロファージの血管外遊出能力を試験するために使用した。そのモデルにおいて、Aβ1−42および脳側にある単球は、血液側から脳側への単球の血管外遊出を増加させた。いくらかの個体において、循環する単球/マクロファージは、活性化ミクログリアおよびマクロファージによって生成されたケモカインによって補充された場合、アルツハイマー病における脳の炎症性の破壊に加わることができた。
本発明者らは、血清中で同時に測定された多くの分泌マーカーの相対的濃度のモニタリングが、完成された任意の単一の生化学マーカーの絶対濃度よりも疾患の進行をモニターするためにより感度のよい方法であることを主張する。複合材(composite)またはアレイは、AD、PD、前頭側頭型痴呆、脳血管疾患、多発性硬化症、およびニューロパシーにおけるニューロン変性と関連する炎症および損傷応答のマーカーを検出するために、表7中の5種、10種、20種、30種、40種、50種、60種、70種、80種、90種、100種、110種、120種、130種、140種、150種、160種、170種、180種、190種、200種のマーカーを同時に使用することを具現化し、固体支持体に結合した抗体または固体支持体に結合したタンパク質からなる。
本発明者らは、ADの診断、ADの診断の補助、AD患者におけるADのモニター(例えば、AD患者における疾患進行の追跡(これは、AD患者における薬物療法または外科的療法の効果を追跡するために有用であり得る)、AD患者の層別化、および軽度認知障害(MCI)の診断またはMCIの診断の補助、ならびに認知障害の診断または認知障害の診断の補助のために有用な生化学マーカーの集合(まとめて「ADバイオマーカー」という)を発見した。上記ADバイオマーカーは、個体の生物学的流体中に存在する。いくつかの例において、上記ADバイオマーカーは、特に、脳脊髄液サンプルを採取するために一般に使用されている腰椎穿刺手順と比較した場合に比較的非侵襲性である手順によってサンプル採取が可能である個体の末梢性の生物学的流体(例えば、血液)中に存在する。
(定義)
本明細書において使用される場合、用語「アルツハイマー患者」、「AD患者」、および「ADと診断された個体」は全て、ADと診断されたかまたは推定アルツハイマー病(AD)と診断される個体に言及する。
本明細書において使用される場合、語句「ADバイオマーカー」とは、AD診断バイオマーカーであるバイオマーカーをいう。
用語「ADバイオマーカーポリヌクレオチド」とは、本明細書において使用される場合、ADバイオマーカーをコードするポリヌクレオチド配列、関連するトランス作用性制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、および他の遺伝子調節配列)、および/または上記ADバイオマーカーをコードするmRNAのうちのいずれかに言及する。
本明細書において使用される場合、「診断を補助する」ための方法とは、ADまたはMCIの存在または性質に関する臨床決定を行うことを補助する方法をいい、確定的な診断に関して決定的であってもよいしそうでなくてもよい。従って、例えば、ADの診断を補助するための方法は、個体由来の生物学的サンプル中の1種以上のADバイオマーカーの量を測定する工程を包含し得る。
本明細書において使用される場合、用語「層別化(する)」とは、神経学的疾患の特徴に基づいて、異なる分類または階層に個体を分類することをいう。例えば、アルツハイマー病を有する個体集団の層別化は、疾患の重症度(例えば、軽度、中等度、進行性など)に基づいて、個体を割り当てる工程を包含する。
本明細書において使用される場合、用語「推定(する)」とは、個体が、特定の神経学的疾患を発現させる可能性が有意に高いことを見つけ出すことをいう。
本明細書において使用される場合、語句「神経学的疾患」とは、中枢神経系の疾患または障害をいう。神経学的疾患としては、多発性硬化症、ニューロパシー、および神経変性障害(例えば、AD、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、軽度認知障害(MCI)および前頭側頭型痴呆)が挙げられる。
本明細書において使用される場合、「生物学的流体サンプル」とは、個体から得られた種々の流体サンプルの型を包含し、診断アッセイまたはモニタリングアッセイにおいて使用され得る。この定義は、血液、脳脊髄液(CSF)、尿および生物起源の他の液体サンプルを包含する。この定義はまた、それらの獲得後の何らかの方法で(例えば、試薬での処理、可溶化、または特定の成分(例えば、タンパク質またはポリヌクレオチド)の富化によって)操作されたサンプルを包含する。
本明細書において使用される場合、用語「末梢性の生物学的流体サンプル」とは、中枢神経系に由来しない(すなわち、CSFサンプルではない)生物学的流体サンプルをいい、血液サンプルおよびCNSに由来しない他の生物学的流体を含む。
「血液サンプル」は、血液、好ましくは、末梢血(または循環血液)に由来する生物学的サンプルである。血液サンプルは、例えば、全血、血漿または血清であり得る。
「個体」は、哺乳動物、より好ましくは、ヒトである。哺乳動物としては、ヒト、霊長類、家畜、競技用動物(sport animal)、齧歯類および愛玩動物が挙げられるが、これらに限定されない。
「正常」個体または「正常」個体由来のサンプルは、定量的データおよび定性的データに関して本明細書において使用される場合、ADもMCIも有さないと医師によって評価されたまたは評価され、かつミニメンタルステート検査(Mini−Mental State Examination;MMSE)(Folsteinら,J.Psychiatr.Res 1975;12:1289−198において参照されている)スコアを有するかまたは25〜30の範囲のMMSEスコアを達成する個体をいう。「正常」個体は、一般に、5〜10年の範囲内で年齢をマッチングさせている。これらの個体としては、評価されるべき個体で年齢をマッチングさせている個体が挙げられるが、これらに限定されない。
「軽度ADを有する個体」は、(a)ADと診断されたかまたは推定ADと診断された個体、および(b)ミニメンタルステート検査(MMSE)(Folsteinら,J.Psychiatr.Res 1975;12:1289−198において参照されている)で評価されて22〜27のスコアを有するか、またはMMSE検査の際に22〜27のスコアを達成するかのいずれかの個体である。従って、「軽度AD」は、MMSEで評価されかつ22〜27のスコアを有するか、またはMMSE検査の際に22〜27のスコアを達成するかのいずれかである個体におけるADをいう。
「中等度ADを有する個体」は、(a)ADと診断されたかまたは推定ADと診断された個体、および(b)MMSEで評価されて16〜21のスコアを有するか、またはMMSE検査の際に16〜21のスコアを達成するかのいずれかである個体である。従って、「中等度AD」とは、MMSEで評価されて16〜21のスコアを有するか、またはMMSE検査の際に16〜21のスコアを達成するかのいずれかである個体におけるADをいう。
「重症ADを有する個体」は、(a)ADと診断されたかまたは推定ADと診断された個体、および(b)MMSEで評価されて12〜15のスコアを有するか、またはMMSE検査の際に12〜15のスコアを達成するかのいずれかである個体である。従って、重症AD」とは、MMSEで評価されて12〜15のスコアを有するか、またはMMSE検査の際に12〜15のスコアを達成するかのいずれかである個体におけるADをいう。
本明細書において使用される場合、用語「処置」とは、症状の緩和、改善および/または安定化、ならびに特定疾患の症状の進行における遅延をいう。例えば、ADの「処置」は、ADの1種以上の症状の除去、ADの1種以上の症状の減少、ADの症状の安定化(例えば、ADのより進行した病期へ進行しない)、およびADの1種以上の症状の進行(すなわち、悪化)における遅延、のうちのいずれか1つ以上を包含する。
本明細書において使用される場合、語句「倍数差」とは、ADバイオマーカーについての測定された値と参照値との間の数値的大きさの差をいう。倍数差は、数値で表した測定された値を数値で表した参照値で除算することにより数学的に計算される。例えば、ADバイオマーカーの測定された値が20ナノグラム/ミリリットル(ng/ml)でありかつその参照値が10ng/mlである場合、その倍数差は2(20/10=2)である。あるいは、ADバイオマーカーの測定された値が10ナノグラム/ミリリットル(ng/ml)でありかつその参照値が20ng/mlである場合、その倍数差は、10/20すなわち0.50または50%である。
本明細書において使用される場合、「参照値」とは、絶対値;相対値;上限および/または下限を有する値;値の範囲;平均値;中央値、平均値、または特定のコントロールもしくはベースライン値と比較した場合の値であり得る。参照値は、個々のサンプル値(例えば、AD、MCIまたは認知障害を有する個体由来のサンプルから得られた値、しかし早期時点では、試験されている個体以外のAD患者またはADと診断されていない個体である「正常」個体由来のサンプルから得られた値に基づき得る。上記参照値は、多数のサンプル(例えば、AD患者由来または正常個体由来)に基づいてもよいし、試験されるべきサンプルを含むかまたは排除しているサンプルのプールに基づいていてもよい。
本明細書において使用される場合、「a」、「an」および「the」は、別段示されない限り、単数または複数(すなわち、1以上)を意味し得る。
(発明の方法)
(バイオマーカー同定のための方法)
本発明は、神経学的疾患の診断のため、診断において補助するため、階層毎に分類するため、リスクを評価するため、モニターするため、および/または予見するために有用な1つ以上のバイオマーカーを同定するための方法を提供する。本発明の特定の局面では、一群のバイオマーカーのレベルが、1つ以上の個体からの末梢生物学的流体サンプルのセットについて得られる。これらサンプルは、それらが神経学的疾患の基礎を基に、1つ以上のサブセットに分離され得るように選択される(例えば、正常個体および筋萎縮性側索硬化症と診断された個体からのサンプル、または軽度のアルツハイマー病をもつ個体ならびに重症のアルツハイマー病および/または神経変性疾患のようなその他の神経学的疾患をもつ個体からのサンプル)。これらサンプルから測定された値は、互いと比較され、上記サブセット間で有意に異なるようなバイオマーカーを同定する。これらサブセット間で有意に変動するようなバイオマーカーは、次いで、神経学的疾患の判断で補助するため、診断のため、階層毎に分類するため、モニターするため、および/または予見のための方法で用いられ得る。本発明の別の局面では、1つ以上の個体からの末梢生物学的流体サンプルのセット(ここで、これらサンプルは、神経学的疾患の基礎を基に1つ以上のサブセットに分離され得る)に対する測定値が比較され、ここで有意に変動するバイオマーカーは、神経学的疾患の判断で補助するため、診断のため、階層毎に分類するため、モニターするため、および/または予見のために有用である。本発明のさらなる局面では、1つ以上の個体からの末梢生物学的流体サンプルのセット(ここで、これらサンプルは、神経学的疾患の基礎を基に1つ以上のサブセットに分離され得る)のレベルが、生成された測定値に対して測定され、ここで、有意に変動するバイオマーカーは、神経学的疾患の判断で補助するため、診断のため、階層毎に分類するため、モニターするため、および/または予見のために有用である。
本発明は、1つ以上の個体に由来する、血液サンプルのような、末梢生物学的流体サンプルのセットを利用する。サンプルのこのセットは、それが神経学的疾患の基礎に基き1つ以上のサブセットに分割され得るように選択される。サブセットへの分割は、疾患の存在/不在、疾患の階層毎の分類(例えば、軽度 対 中程度)、または疾患のサブ分類(例えば、再発/軽減 対 進行性再発)の基礎に基き得る。本発明の実施で測定されるバイオマーカーは、末梢生物学的流体サンプル中に見出される任意のタンパク質様の生物学的マーカーであり得る。表7および8は、例示のバイオマーカーのコレクションを含む。さらなるバイオマーカーは、本明細書において実施例中に記載される。
従って、本発明は、神経変性性障害のような神経学的疾患の診断において補助するため、診断するため、検出するため、階層に分類するため、そして/または予見するために用いられ得る1つ以上のバイオマーカーを同定する方法を提供する。本発明の方法は、末梢生物学的流体サンプルのセットからの複数のバイオマーカーについて測定された値のセットを得ることにより実施され得、ここで、この抹消生物学的流体サンプルのセットは、各バイオマーカーについて上記サブセット間で測定された値を比較し、そしてこれらサブセット間で有意に異なるバイオマーカーを同定して、神経学的疾患に関して少なくとも2つのサブセットに分割可能である。
上記測定された値を比較するプロセスは、当該技術分野で公知の任意の方法によって実施され得、Significance Analysis of Microarrays、Tree Harvesting、CART、MARS、Self Organizing Maps、Frequent Item Set、またはBayesianネットワークを含む。
1つの局面では、本発明は、神経学的疾患の診断のために有用な1つ以上のバイオマーカーを同定する方法を提供し、複数のバイオマーカーについて末梢生物学的流体サンプルのセットから測定された値を得る工程であって、ここで、この末梢生物学的流体サンプルのセットは、神経学的疾患の基礎を基にサブセットに分割可能である工程、少なくとも1つのバイオマーカーについて各サブセットからの測定された値を比較する工程、および上記測定された値がこれらサブセット間で有意に異なるを少なくとも1つのバイオマーカーを同定する工程による。いくつかの実施形態では、上記比較する工程は、Significance Analysis of Microarraysを用いて実施される。特定の実施形態では、上記神経変性性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)からなる群からである。
別の局面では、本発明は、神経学的疾患の診断で補助するために有用な1つ以上のバイオマーカーを同定する方法を提供し、複数のバイオマーカーについて末梢生物学的流体サンプルのセットから測定された値を得る工程であって、ここで、この末梢生物学的流体サンプルのセットは、神経学的疾患の基礎を基にサブセットに分割可能である工程、少なくとも1つのバイオマーカーについて各サブセットからの測定された値を比較する工程;および上記測定された値がこれらサブセット間で有意に異なるを少なくとも1つのバイオマーカーを同定する工程による。
さらなる局面では、本発明は、神経学的疾患を階層毎に分類するために有用な少なくとも1つのバイオマーカーを同定する方法を提供し、複数のバイオマーカーについて末梢生物学的流体サンプルのセットから測定された値を得る工程であって、ここで、この末梢生物学的流体サンプルのセットは、神経学的疾患の階層の基礎を基にサブセットに分割可能である工程、少なくとも1つのバイオマーカーについて各サブセットからの測定された値を比較する工程;および上記測定された値がこれらサブセット間で有意に異なるバイオマーカーを同定する工程による。
別の局面では、本発明は、神経学的疾患のモニタリングのために有用な少なくとも1つのバイオマーカーを同定する方法を提供し、複数のバイオマーカーについて末梢生物学的流体サンプルのセットから測定された値を得る工程であって、ここで、この末梢生物学的流体サンプルのセットは、神経学的疾患の階層の基礎を基にサブセットに分割可能である工程、少なくとも1つのバイオマーカーについて各サブセットからの測定された値を比較する工程;および上記測定された値がこれらサブセット間で有意に異なるバイオマーカーを同定する工程による。別の実施例では、上記測定された値は、変動する供給源の末梢生物学的流体サンプルから得られる。
なお別の局面では、本発明は、神経学的疾患の予見のために有用な少なくとも1つのバイオマーカーを同定する方法を提供し、複数のバイオマーカーについて末梢生物学的流体サンプルのセットから測定された値を得る工程であって、ここで、この末梢生物学的流体サンプルのセットは、神経学的疾患の基礎を基にサブセットに分割可能である工程、少なくとも1つのバイオマーカーについて各サブセットからの測定された値を比較する工程;および上記測定された値がこれらサブセット間で有意に異なるバイオマーカーを同定する工程による。その他の実施例では、上記測定された値は、変動する供給源の末梢生物学的流体サンプルから得られる。
(認識機能を評価する方法)
本明細書に提供されるのは、認識機能を評価する、認識損傷を評価する、認識損傷を診断するか、またはその診断を補助するための方法であり、例えば、個体からの末梢生物学的流体サンプルのような個体からの生物学的流体サンプル中の1つ以上のAD診断の測定されたレベルを得る工程、およびこれらの測定されたレベルを参照レベルと比較する工程による。「AD診断マーカー」、「ADバイオマーカー」および「バイオマーカー」(本明細書では交換可能に用いられる)への参照は、本明細書に記載されるマーカーおよびそれらの使用を参照するための便宜の用語であり、そしてこれらマーカーがADを診断するために用いられるに過ぎないことを示すことは意図されない。本開示が明瞭にするように、これらのマーカーは、例えば、認識機能を評価するため、MCIを評価するため、ADを発症するリスクを評価するため、ADを階層に分類するためなどに有用である。ADバイオマーカーは、制限されないで、例えば、全血、血漿または血清を含む血液;尿;脳脊髄液;涙;および唾液のような、ヒトの生物学的流体(すなわち、生物学的流体サンプル)中に存在する分泌タンパク質または代謝物を含む。生物学的流体サンプルは臨床サンプルを包含し、そしてまた、血清、血漿、およびその他の生物学的流体を含む。血液サンプルは、例えば、血小板、リンパ球、多形核細胞、マクロファージ、赤血球を含む血液中に存在する種々の細胞タイプを含み得る。
本明細書に記載されるとき、結果の評価は、データが、本明細書に記載される定性的または定量的方法および/または用いられる参照点のタイプによって得られたか否かに依存し得る。例えば、実施例4に記載されるように、別のADバイオマーカーのレベルに対してであり得る別の参照レベルに対するADバイオマーカーのレベルの定量的測定が得られ得る。実施例7におけるような、本明細書に記載されるその他の方法では、生物学的流体サンプル中のタンパク質濃度である定量値または絶対値が得られ得る。「定量的」結果またはデータは、サンプルに対する分子のpg/mlまたはng/mlでのバイオマーカーの濃度を含み得る。定量値の例は、例えば、ELISAによるタンパク質の濃度のレベルの直接的測定である。「定性的」結果またはデータは、参照値に対する比較としてである相対値を提供する。本明細書中のいくつかの例(実施例4)では、定性的測定は、フィルター時用の信号強度によって評価される。本明細書中のいくつかの例では、ADバイオマーカーに特異的な複数の抗体が適切な、例えば、スライドまたはフィルターのような表面に付着される。本明細書の実施例11および12に記載されるように、結果の定性的評価は、標準化データを含み得る。本開示では、種々のセットのバイオマーカーが記載される。本発明は、これらセットのいずれか、これらセットの1つ以上のメンバーのいずれか、およびこれらセットを含む複数のマーカーの使用を企図することが理解される。
1つの局面では、本発明は、アルツハイマー病(「AD」)の診断を補助する方法、およびADを診断する方法を提供し、例えば個体からの末梢生物学的流体のような個体からの生物学的流体サンプル中の1つ以上のAD診断バイオマーカーの測定されたレベルを得る工程、およびこれらの測定されたレベルを参照レベルと比較する工程による。いくつかの例では、末梢生物学的流体サンプルは血漿である。
いくつかの例では、上記AD診断バイオマーカーは、表7に示される群から選択される。いくつかの例では、上記AD診断バイオマーカーは以下の群から選択される;GCSF;IFN−g;IGFP−1;BMP−6;BMP−4;Epotaxin−2;IGFBP−2;TARC;RANTES;ANG;PARC;Acrp30;AgRP(ART);TMP−1;TMP−2;ICAM−1;TRAIL R3;uPAR;IGFBP−4;LEPTIN(OB);PDGF−BB;EGF;BDNF;NT−3;NAP−2;IL−1ra;MSP−a;SCF;TGF−b3;TNF−b;MIP−1d;IL−3;FGF−6;IL−6R;sTNF RII;AXL;bFGF;FGF−4;CNTF;MCP−1;MIP−1b;TPO;VEGF−B;IL−8;FAS;およびEGF−R。いくつかの例では、上記AD診断バイオマーカー(単数または複数)は、表8中に示される群から選択される。さらに、表9A1〜9A2および9Bは、年齢合致正常コントロール、プラス、例えば、PDおよびPNのような神経変性のその他の非AD形態に比較される(すなわち、すべてのコントロールに比較されるとき)、AD中の有意に増加(9A−1〜9A−2)または減少(9B)しているバイオマーカーの列挙を提供する(本明細書中に記載されるような方法によって、スコア値に基く各クラスター内で最も高いランクのバイオマーカーから最も低いランクのバイオマーカーの順でクラスター化されている)。一般に、適切なコントロールに比較されるとき、バイオマーカーにおける有意な増加は、ADの指標であり、そして適切なコントロールに比較されるとき、バイオマーカーにおける有意な減少は、ADの指標である。表9A1〜9A2および9B中、左から右までのカラムは、バイオマーカー名、スコア(d);倍変化;q−値(%);およびクラスター数である。表9A1〜9A2および9Bに列挙される任意の1つ以上のバイオマーカー、すなわち、バイオマーカーに特異的な試薬は、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示される方法で用いられ得る。いくつかの例では、表9A1〜9A2および9Bに列挙される任意の1つ以上のバイオマーカーは、例えば、PDおよびPNのような非AD神経変性疾患または障害から区別されるようなADを診断するために用いられ得る。
表10A1〜10A2および10Bは、健常年齢合致コントロールに比較されるAD中の有意に増加(10A1〜10A2)または減少(10B)しているバイオマーカーの列挙を提供する(クラスター化されておらず、そしてスコア値に基き、最も高いランクのバイオマーカー〜最も低いランクのバイオマーカーの順である)。表10A1〜10A2および10B、表11A1〜11A2および11B、および表12A〜12B中、左から右までのカラムは、バイオマーカー名、スコア(d);倍変化;およびq−値(%)である。表10A1〜10A2および10Bに基き、健常年齢合致コントロールと比較したとき有意に増加されると同定されるバイオマーカーは、(スコアに基き、下降する順に):BTC;ANG−2;MIF;IGFBP−6;spg130;CTACK;IGFBP3;MIP−1a;TRAIL R4;IL−12 p40;AR;NT−4;VEGF−D;OSM;OST;IL−11;sTNF R1;I−TAC;Eotaxin;TECK;PIGF;bNGF;リンホタクシン;MIP−3b;HCC−4;ICAM−3;DTK;IL−1 RI;IGF−1 SR;GRO;GITR−Light;HGF;IL−1R4/ST;IL−2 Ra;ENA−78;およびFGF−9を含む。表10A1〜10A2および10Bに基き、健常年齢合致コントロールと比較したとき有意に減少されると同定されるバイオマーカーは、(スコアに基き、下降する順に):MCP−2;M−CSF;MCP−3;MDC;MCP−4;IL−1b;IL−4;IL−1a;BLC;CK b8−1;IL−2;IL−15;MIP3a;MIG;SCF;IL−6;IL−16;Eotaxin−3;I−309;TGF−β;TGF−α;GDNF;LIGHT;SDF;IFG−1;フラクタルカイン;IL−5;Fit−3リガンド;GM−CSF;およびGCP−2を含む。表10A1〜10A2および10Bに列挙される任意の1つ以上のバイオマーカー、すなわち、バイオマーカーに特異的な試薬は、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示される方法で用いられ得る。いくつかの例では、バイオマーカーは、例えば、0.05以下のp値を有するADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示される方法における使用のために選択される。表10A1〜10A2(増加または正に相関するバイオマーカー)について、バイオマーカーGRO、GITR−Light、IGFBP、HGF、IL−1R4/ST、IL−2Ra、ENA−78、およびFGF−9は、0.05より大きいP値を有する。従って、いくつかの例では、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書に開示されるような方法における使用のための正に相関するバイオマーカーは、表10A1〜10A2中に列挙されるバイオマーカーからなる群から選択され、バイオマーカーGRO、GITR−Light、IGFBP、HGF、IL−1R4/ST、IL−2Ra、ENA−78、およびFGF−9は除く。表10B(減少または負に相関するバイオマーカー)については、バイオマーカーBMP−4、Fit3リガンド、GM−CSF、IGFBP−4、GCP−2、およびTARCは、0.05より大きいp値を有する。従って、いくつかの例では、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書に開示されるような方法における使用のための負に相関するバイオマーカーは、表10B中に列挙されるバイオマーカーからなる群から選択され、バイオマーカーBMP−4、Fit3リガンド、GM−CSF、IGFBP−4、GCP−2、およびTARCは除く。
表11A1〜11A2および11Bは、年齢合致変性コントロールに比較されるAD中の有意に増加(11A1〜11A2)または減少(11B)しているバイオマーカーの列挙(クラスター化されておらず、そしてスコア値に基き、最も高いランクのバイオマーカーから最も低いバイオマーカーの順にある)を提供する。表11A1〜11A2および11Bに基き、年齢合致のその他の非AD神経変性コントロールに比較されるとき、ADにおいて有意に増加されると同定されるバイオマーカーは、(スコアに基く下降順で):TRAIL R4;Eotaxin;IL−12 p40;BTC−1;MIF;OST;MIP−1a;sTNF R1;IL−11;リンホタクチン;NT−4;VEFG−D;HGF;IGFBP3;IGFBP−1;OSM;IL−1R1;PIGF;IGF−1 SR;CCL−28;IL−2 Ra;IL−12 p70;GRO;IGFBP−6;IL−17;CTACK;I−TAC;ICAM−3;ANG−2;MIP−3b;FGF−9;HCC−4;IL−1R4/ST;GITR;およびDTKを含む。表11A1〜11A2および11Bに基き、年齢合致のその他の非AD神経変性コントロールに比較されるとき、ADにおいて有意に減少されると同定されるバイオマーカーは、(スコアに基く下降順で):MCP−2;M−CSF;MCP−3;MDC;MCP−4;IL−1b;IL−1a;BLC;CKb8−1;IL−2;IL−15;MIP3a;MIG;SCF;IL−6;IL−16;Epotaxin−3;I−309;TGF−β;TNF−α;GDNF;LIGHT;SDF−1;IFG−1;フラクタルカイン;IL−5;Fit−3リガンド;GM−CSF;およびGCP−2を含む。表11A1〜11A2および11Bに列挙される任意の1つ以上のバイオマーカー、すなわち、バイオマーカーに特異的な試薬は、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示される方法で用いられ得る。表11A1〜11A2(増加または正に相関するバイオマーカー)について、バイオマーカーIL−1ra、IL−2ra、PARC、FAS、IL−12p70、NAP−2、GRO、NT−3、IGFBP−6、TIMP−1、LI−17、IGFBP−2、CTACK、I−TAC、ICAM−3、ANG−2、FGF−4、MIP−3b、FGF−9、HCC−4、IL−1R4/ST、ANG、GITR、DTK、IL−6R、EGF−Rは、0.05より大きいP値を有する。従って、いくつかの例では、ADの診断において補助するため、またはADを診断するための本明細書に開示されるような方法における使用のための正に相関するバイオマーカーは、表11A1〜11A2中に列挙されるバイオマーカーからなる群から選択され、バイオマーカーIL−1ra、IL−2ra、PARC、FAS、IL−12p70、NAP−2、GRO、NT−3、IGFBP−6、TIMP−1、LI−17、IGFBP−2、CTACK、I−TAC、ICAM−3、ANG−2、FGF−4、MIP−3b、FGF−9、HCC−4、IL−1R4/ST、ANG、GITR、DTK、IL−6R、EGF−Rは除く。表11B(減少または負に相関するバイオマーカー)については、バイオマーカーIL−1a、MCP−2、IGFBP−4、spg130、SDF−1、M−CSF、MIP−1d、IL−10、GM−CSF、TNF−a、MDC、FGF−6、TNF−b、IFN−γ、およびGDNFは、0.05より大きいp値を有する。従って、いくつかの例では、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書に開示されるような方法における使用のための負に相関するバイオマーカーは、0.05より小さいp値を有するIL−1a、MCP−2、IGFBP−4、spg130、SDF−1、M−CSF、MIP−1d、IL−10、GM−CSF、TNF−a、MDC、FGF−6、TNF−b、IFN−γ、およびGDNFからなる群から選択される。0.05より大きいp値を有するバイオマーカーもまた、適切なコントロールが用いられる限り、本明細書中に記載のような方法で用いられ得る。いくつかの例では、方法は、0.05より小さいp値を有する少なくとも1つのバイオマーカーとともに、0.05より大きいp値を有する少なくとも1つのバイオマーカーの使用を含む。
表12A1〜12Bは、年齢合致コントロールを参照して、ADプラスその他の非AD神経変性コントロールにおいて有意に増加(12A)または減少(12B)しているバイオマーカーの列挙(クラスター化されておらず、そしてスコア値に基き、最も高いランクのバイオマーカーから最も低いバイオマーカーの順にある)を提供する。表12A〜12B中に列挙されるバイオマーカーの任意の1つ以上、すなわち、バイオマーカーに特異的な試薬は、例えば、ADを含む神経変性疾患の診断において補助するため、またはそれを診断するためのような、本明細書中に開示される方法で用いられ得る。さらなる例では、このAD診断バイオマーカーは、リンホタクチンおよびIL−11から選択され、そしてその他の例では、リンホタクチンおよびIL−11を含む。さらなる例では、AD診断マーカーは、実施例に記載されるように、BTC;SDF−1;MCP−2;IFN−γ;IGFBP−4;IGF−1SR;IL−8;GM−CSF;およびANG−2からなる群から選択される。さらなる例では、AD診断マーカーは、実施例に記載されるように、INF-γおよびIL−8からなる群から選択される。なおその他の例では、AD診断バイオマーカーは、実施例中に記載されるように、バイオマーカーsTNF RII;MSP−α;uPAR;TPO;MIP−1β;VEGF−β;FAS;MCP−1;NAP−2;ICAM−1;TRAIL R3;PARC;ANG;IL−3;MIP−1δ;IFN−γ;IL−8;およびFGF−6からなる群から選択される。さらなる例では、AD診断バイオマーカーは、BDNF、PDGF−BB、レプチンおよびRANTESからなる群から選択される。これらの例において本明細書中に示されるように、定量的レプチンおよびBDNFレベルは、MMSEスコアと統計学的に有意な正の相関を有し;定量的PDGF−BBレベルは、男性におけるMMSEスコアと統計学的に有意な負の相関を有し;そして定量的RANTESレベルは、PDGF−BBおよびBDNFと統計学的に有意な正の相関を有する。いくつかの例では、アルツハイマー病(「AD」)の診断を補助する方法およびADを診断する方法における使用のためのAD診断バイオマーカーは、以下の4つのバイオマーカーの2つ以上を含む:BDNF、PDGF−BB、レプチンおよびRANTES。さらなる例では、アルツハイマー病(「AD」)の診断を補助する方法およびADを診断する方法における使用のためのAD診断バイオマーカーは、レプチンおよびRANTES;レプチンおよびBDNF;レプチンおよびPDGF−BB;レプチン、RANTESおよびBDNF;レプチン、RANTESおよびPDGF−BB;レプチン、BDNFおよびPDGF−BB;RANTESおよびBDNF;RANTESおよびPDGF−BB;RANTES、BDNF、およびPDGF−BB;BDNFおよびPDGF−BB;またはレプチン、RANTES、BDNFおよびPDGF−BBを含む。いくつかの例では、ADの診断を補助する方法またはADを診断する方法における使用のためのAD診断ハマーカーは、レプチン、RANTES、BDNFおよびPDGF−BBを含む。その他の例では、ADの診断を補助する方法またはADを診断する方法における使用のためのAD診断ハマーカーは、レプチン、RANTES、BDNFおよびPDGF−BBから本質的に成るか、またはそられからなる。
いくつかの例では、本明細書中に提供されるのは、神経変性疾患のような神経学的疾患の診断を補助する方法、および神経変性疾患のような神経学的疾患を診断する方法であり、例えば、個体からの末梢生物学的流体サンプルのような、個体からの生物学的流体サンプルにおいて、健常年齢合致コントロールと比較した神経変性コントロール中の表12A〜12B中に示される1つ以上のAD診断バイオマーカー(それぞれ増加されるか、または減少されるバイオマーカー)の測定されたレベルを得る工程、およびこれらの測定されたレベルを参照レベルと比較する工程による。このような方法は、例えば、神経学的疾患のための初期スクリーニングとして用いられ得る。いくつかの例では、本明細書に記載のような、ADの診断を補助するための方法および/またはADを診断する方法は、神経学的疾患の診断を補助するための方法および神経学的疾患を診断する方法の前またはそれと同時に、あるいは、例えば、二次スクリーニングとしてその後に用いられ得る。さらに、またはそれに代わって、ADの診断を補助する方法、またはADを診断する方法、および/またはADをその他のAD神経学的疾患から区別する方法は、例えば、個体からの末梢生物学的流体サンプルのような、個体からの生物学的流体サンプルにおいて、表9A1〜9A2および9B中に示される1つ以上のAD診断バイオマーカーの測定されたレベルを得る工程、およびこれらの測定されたレベルを参照レベルと比較する工程を包含し得る。
本明細書中に記載のような認識機能を評価する方法、ADの診断を補助する方法およびADを診断する方法は、以下の工程の任意を包含し得、すなわち、個体からの生物学的流体サンプルを得る工程、このサンプル中の少なくとも1つのAD診断バイオマーカーのレベルを測定する工程およびこの測定されたレベルを適切な参照と比較する工程;サンプル中の少なくとも1つのAD診断バイオマーカーの測定されたレベルを得る工程およびこの測定されたレベルを適切な参照と比較する工程;サンプルから得た少なくとも1つのAD診断バイオマーカーの測定されたレベルを適切な参照と比較する工程;サンプル中の少なくとも1つのAD診断バイオマーカーのレベルを測定する工程;サンプル中の少なくとも1つのAD診断バイオマーカーのレベルを測定する工程およびこの測定されたレベルを適切な参照と比較する工程;測定されたレベルの適切な参照への比較に基きADを診断する工程;またはサンプル中の少なくとも1つのAD診断バイオマーカーについて測定された値を得る工程である。AD診断バイオマーカーの測定されたレベルを参照レベルと比較する工程、またはサンプル中のAD診断バイオマーカーについての測定された値を得る工程は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多いAD診断バイオマーカーについて実施され得る。本発明はまた、本明細書に記載される分析方法の結果を評価する方法を提供する。このような評価は、一般に、このような結果を再検討することをともない、そして、例えば、臨床的そして/または診断フォローアップそして/または処置オプションに関してアドバイスする際に支援し得る。本発明はまた、以下:認識機能および/または機能障害;MCI;AD;例えば、軽度、中程度、重症のようなADの程度;ADの進行;の1つ以上の指標について、本明細書に記載されるようなAD診断バイオマーカーのレベルを測定すること、またはその測定されたレベルを得ることにより、生物学的流体サンプルを評価するための方法を提供する。認識機能障害を評価する方法は、ADAS−COGを含み、これは、一般に、MMSEスコアリングに等価であることが受け入れられている。
本明細書に提供されるのは、以下の工程:処置を受ける個体(単数または複数)からの生物学的流体サンプルを得る工程;このサンプル中の少なくとも1つのAD診断バイオマーカーのレベルを測定する工程およびこの測定されたレベルを、いくつかの例では処置の前に個体(単数または複数)から得られた流体サンプル中のバイオマーカーの測定されたレベルである適切な参照と比較する工程;個体(単数または複数)からのサンプル中の少なくとも1つのAD診断バイオマーカーの測定されたレベルを得る工程およびこの測定されたレベルを適切な参照と比較する工程;個体(単数または複数)からのサンプルから得られた少なくとも1つのAD診断バイオマーカーの測定されたレベルを適切な参照と比較する工程;個体(単数または複数)からのサンプル中の少なくとも1つのAD診断バイオマーカーのレベルを測定する工程;個体(単数または複数)からのサンプル中の少なくとも1つのAD診断バイオマーカーを測定する工程およびこの測定されたレベルを適切な参照と比較する工程;測定されたレベルの適切な参照への比較に基づき処置の効き目を診断する工程;またはサンプル中の少なくとも1つのAD診断バイオマーカーについて測定された値を得る工程のいずれか1つを含む、損傷された認識機能をもつ、そして/またはADと診断された、単一または複数収集センターからのような、個体または個体の集団における処置様式の効き目を評価するための方法である。少なくとも1つのAD診断バイオマーカーの測定されたレベルは、この処置様式の評価の間に一回または複数回得られ得る。
本明細書に記載されるようなADを診断する方法のために、上記参照レベルは、一般に、特定のAD診断バイオマーカーについて「正常」と考えられる所定のレベルである(例えば、ADとは診断されない年齢合致個体の平均レベル、またはAD以外の神経学的傷害と診断された年齢合致個体および/または健常年齢合致個体の平均レベル)が、同時代に決定される参照レベル(例えば、試験されているサンプルを含むサンプルのプール由来の参照値)もまた企図される。また提供されるのは、アルツハイマー病(「AD」)の診断の際に補助する方法であり、例えば、個体からの末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中の少なくとも1つのAD診断バイオマーカーの測定されたレベルを、参照レベルと比較する工程による。さらに提供されるのは、アルツハイマー病(「AD」)の診断の際に補助する方法であり、例えば、個体からの末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中の少なくとも1つのAD診断バイオマーカーを測定する工程による。本明細書に開示されるAD診断バイオマーカーについて、参照レベル未満またはそれを超えるマーカーの測定は、ADの診断を示唆(すなわち、その診断において補助)またはADを示す。
別の局面では、本発明は、軽度認識機能障害(MCI)をもつ個体を同定する方法を提供し、例えば、個体からの末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中のRANTESの定量的測定レベルを得る工程、およびそのレベルを参照レベルと比較する工程による。一般に、RANTESに対する参照レベルは、RANTESについて「正常」と考えられる所定のレベルであり、そしてRANTESについて年齢合致正常レベルであり得るが、同時代に決定される参照レベル(例えば、試験されているサンプルを含むサンプルのプール由来である参照値)もまた企図される。また提供されるのは、MCIの診断の際に補助する方法であり、例えば、個体からの末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中のRANTESの定量的測定レベルを、参照レベルと比較する工程による。さらに提供されるのは、MCIの診断の際に補助する方法であり、例えば、個体からの末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中のRANTESのレベルを測定する工程による。RANTESの定量的レベルが、例えば、個体からの末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中で低い(参照レベル未満)である知見は、MCIを示唆(すなわち、その診断の際の補助)またはその診断を示す。特定の実施形態では、このような方法はさらに、例えば、末梢生物学的サンプルのような生物学的流体サンプル中のレプチンの定量的レベルを測定する工程、得る工程、および/または比較する工程を含む。RANTESおよびレプチンの両方のレベルが利用されるとき、定量的RANTESレベルが低く、その一方定量的レプチンレベルが低くない(すなわち、レプチン参照レベルと実質的に同じであるか、より高い)という知見は、MCIの診断を示唆(すなわち、その診断の際に補助)またはその診断を示す。従って、本発明は、軽度の認識機能障害(MCI)の診断の際に補助するための方法を提供し、個体から得られる生物学的流体サンプル中のRANTESについての測定されたレベルを参照レベルと比較する工程を包含する。いくつかの例では、これらの方法は、個体から得られる生物学的流体サンプル中のレプチンについての測定されたレベルを参照レベルと比較する工程をさらに包含する。なおその他の例では、これらの方法は、上記生物学的流体サンプル中のレプチンのレベルを測定する工程をさらに包含し、それによって、レプチンについて上記測定された値を生成する。なおその他の例では、これらの方法は、上記生物学的流体サンプル中のRANTESのレベルを測定する工程を包含し、それによって、RANTESについて上記測定された値を生成する。なおその他の例では、上記生物学的流体サンプルは、末梢流体サンプルである。
さらなる局面では、本発明は、AD患者におけるADの進行をモニターする方法を提供する。実施例7に示されるように、本発明者らは、RANTESの定量的レベルが、疑わしいADをもつAD患者中で減少し(MMSE=25−28);しかも、RANTESの定量的レベルが、軽度のADをもつAD患者で減少し(MMSE=20−25)、そしてRANTESレベルが、ADの重症度が強くなるときさらに減少することを見出した。定量的データ(絶対測定とも呼ばれる)について本明細書で用いられるとき、「疑わしいAD」をもつ個体は、(a)ADと診断されたか、またはADの可能性の診断がなされた、および(b)Mini−Mental状態検査(MMSE)(Folsteinら、J.Psychiatr.Res 1975;12:1289〜198で参照される)で評価され、そして25−28のスコアであるか、またはMMSE試験で25−28のスコアを達成するであろういずれかの個体である。従って、「疑わしいAD」は、MMSEでスコア25−28を有し、そして/またはMMSE試験に際し、25−28のスコアを達成し得る個体におけるADをいう。上記参照レベルは、特定のRANTESについて「正常」と考えられる所定のレベル(例えば、ADまたはMCIと診断されない年齢合致個体についての平均レベル)であり得るか、または特定の患者について歴史的参照レベル(例えば、同じ個体に由来するサンプルからであるが、時間がより早い点で得られたRANTESレベル)であり得る。同時代に決定される参照レベル(例えば、試験されているサンプルを含むサンプルのプールに由来する参照値)もまた企図される。従って、本発明は、AD患者におけるADの進行をモニターする方法を提供し、例えば、末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプルからRANTESの定量値を得る工程、および測定値を参照値と比較する工程による。また提供されるのは、AD患者におけるADの進行をモニターする方法であり、例えば、末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中のレプチンの測定値を参照値と比較する工程による。さらに提供されるのは、AD患者におけるADの進行をモニターする方法であり、例えば、末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中のレプチンのレベルを測定する工程による。この測定された値における減少は、AD患者におけるADの進行(例えば、重症度における増加)を示すか、または示唆する(診断するか、または診断を示唆する)。
さらなる局面では、本発明者らは、定量的レプチンレベルが、疑わしいADをもつAD患者で減少し;しかも、定量的レプチンレベルが、軽度のADをもつ患者で減少し、そして定量的レプチンレベルが、ADの重症度が強くなるときさらに減少し;そしてこの定量的レプチンレベルが、(実施例7に記載されるような)MMSEスコアと正の相関を有することを見出した。参照レベルは、特定のレプチンについて「正常」と考えられる所定のレベル(例えば、ADまたはMCIと診断されない年齢合致個体の平均レベル)であり得るか、または特定の患者の歴史的参照レベル(例えば、同じ個体に由来であるが、より早い時点で得られたレプチンレベル)であり得る。同時代に決定される定量的参照レベル(例えば、試験されているサンプルを含むサンプルのプール由来である参照値)もまた企図される。従って、本発明は、AD患者におけるADの進行をモニターする方法を提供し、例えば、末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプルからレプチンの定量的測定値を得る工程による。また提供されるのは、AD患者におけるADの進行をモニターする方法であり、例えば、末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中のレプチンの測定値を参照値と比較する工程による。さらに提供されるのは、AD患者におけるADの進行をモニターする方法であり、例えば、末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中のレプチンのレベルを測定する工程による。この測定された値における減少は、AD患者におけるADの進行(例えば、重症度における増加)を示すか、または示唆する(診断するか、または診断を示唆する)。
本発明者らは、定量的BDNFレベルが、軽度のADをもつAD患者中で減少し、しかも、女性における定量的BDNFレベルがMMSEスコアと相関し、そしてBDNFレベルが(実施例7に記載されるように)ADの重症度が強くなるときさらの減少することを見出した。参照レベルは、特定のBDNFについて「正常」と考えられる所定のレベル(例えば、ADまたはMCIと診断されない年齢合致個体についての平均レベル)であり得るか、または特定の患者について歴史的参照レベル(例えば、同じ個体に由来するサンプルからであるが、より早い時点で得られたBDNFレベル)であり得る。同時代に決定される参照レベル(例えば、試験されているサンプルを含むサンプルのプールに由来する参照値)もまた企図される。従って、本発明は、AD患者におけるADの進行をモニターする方法を提供し、例えば、末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプルからBDNFの定量的測定値を得る工程による。また提供されるのは、AD患者におけるADの進行をモニターする方法であり、例えば、末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中のBDNFの定量的測定値を参照値と比較する工程による。さらに提供されるのは、AD患者におけるADの進行をモニターする方法であり、例えば、末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中のBDNFのレベルを測定する工程による。一般的にいえば、この測定された値における減少は、AD患者におけるADの進行(例えば、重症度における増加)を示すか、または示唆する(診断するか、または診断を示唆する)。
本発明者らは、定量的PDGF−BBレベルが、疑わしいADをもつAD患者中で減少し;PDGF−BBレベルが、軽度のADと比較して疑わしいADで減少し;しかも、男性AD患者のMMSEスコアが、(実施例7に記載されるように)PDGF−BBレベルと負に相関することを見出した。参照レベルは、PDGF−BBについて「正常」と考えられる所定のレベル(例えば、ADまたはMCIと診断されない年齢合致男性個体についての平均レベル)であり得るか、または特定の患者について歴史的参照レベル(例えば、同じ男性個体に由来するサンプルからであるが、より早い時点で得られたBPDGF−BBレベル)であり得る。同時代に決定される参照レベル(例えば、試験されているサンプルを含むサンプルのプールに由来する参照値)もまた企図される。従って、本発明は、AD患者におけるADの進行をモニターする方法を提供し、例えば、末梢生物学的流体サンプルのような男性からの生物学的流体サンプルからPDGF−BBの測定値を得る工程、および測定された値を参照値と比較する工程による。また提供されるのは、AD患者におけるADの進行をモニターする方法であり、例えば、末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中のPDGF−BBの測定値を参照値と比較する工程による。さらに提供されるのは、AD患者におけるADの進行をモニターする方法であり、例えば、末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中のPDGF−BBのレベルを測定する工程による。この測定された値における減少は、AD患者におけるADの進行(例えば、重症度における増加)を示すか、または示唆する(診断するか、または診断を示唆する)。
さらに、本発明は、ADと診断された(またはADであり得る診断を有する)個体を階層に分ける方法を提供する。本発明者らは、末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中のBDNF、またはBDNFおよびPDGF−BBのレベルの分析がこの生物学的流体サンプルが由来するAD患者中のADの重症度に関する情報を提供することを見出した。本発明のこれらの局面で用いられるBDNFおよびPDGF−BBの参照値は、試験されているサンプルの供給源であるAD患者以外のAD患者の集団から最も一般的に得られる(例えば、多数のAD患者に由来する平均または中央値)が、同時代に決定されるBDNFおよびPDGF−BBの参照レベル(例えば、試験されているサンプルを含むサンプルのプール由来である参照値)もまた企図される。従って、本発明は、ADの、軽度、およびより進行した(例えば、中程度および重症)ステージにAD患者を階層分け(「ステージ分け」)する方法を提供し、BDNFの測定されたレベルを得る工程、およびこの測定された値をBDNFの参照値と比較する工程による。従って、本発明は、AD患者におけるADを階層分けする方法を提供し、末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中のBDNFおよび必要に応じてPDGF−BBの測定値を得る工程、およびこの測定されたレベルを参照レベルと比較する工程による。本発明はまた、AD患者におけるADを階層分けする方法を提供し、末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中のBDNFおよび必要に応じてPDGF−BBの測定値を参照値と比較する工程による。本発明はさらに、AD患者におけるADを階層分けする方法を提供し、末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプル中のBDNFおよび必要に応じてPDGF−BBを測定する工程による。実施例4に記載されるように、そして定性的結果を提供する実施例4に開示される実験条件下で、参照レベルより低いBDNFレベルを有するサンプルは軽度のADを示唆または示し、その一方、参照レベルより高いBDNFレベルをもつサンプルは、より進行したAD(すなわち、中程度または重症AD)を示唆する。参照レベルより高いBDNFレベルをもつようなサンプルの中で、参照レベル未満のPDGF−BBレベルをもまた有するサンプルは中程度ADを示唆または示し、その一方、参照レベルを超えるPDGF−BBレベルをもまた有するようなサンプルは重症ADを示唆または示す。疑いのあるAD(25〜28の範囲のMMSE)については、レプチンおよびPDGF−BBのレベルは有意に増加し、その一方、BDNFおよびRANTESは、有意に変化しないことが見出された。軽度のAD(20−25の範囲のMMSEスコア)〜中程度AD(10−20の範囲のMMSEスコア)では、レプチンのレベルは低下せず、その一方、RANTES、BDNFおよびPDGF−BBのレベルは減少することが見出された。従って、(実施例7からの上記のMMSEスコアによって規定されるような)いくつかの実施形態では、軽度のADは、定量的アッセイで、参照として疑いのあるADと比較したとき、レプチンおよび/またはPDGF−BBのレベルが有意に増加するが、その一方、BDNFおよびRANTESが有意に変化しないときに示される。従って、(実施例7からの上記のMMSEスコアによって規定されるような)いくつかの実施形態では、中程度のADは、参照としての軽度のADと比較したとき、レプチンは低下せず、その一方、RRNTES、BDNFおよびPDGFのレベルが低下するときに示される。従って、本明細書で提供されるのは、上記患者からの生物学的流体サンプル中のRANTESおよびレプチンのレベルの測定された値をRANTESおよびレプチンの参照値と比較する工程;上記患者からの生物学的流体サンプル中の脳由来の神経栄養因子(BDNF)、レプチン、およびRANTESの測定値のレベルを、BDNF、レプチン、およびRANTESの参照値と比較する工程;上記患者からの生物学的流体サンプル中のレプチンおよびBBホモダイマー血小板由来成長因子(PDGF−BB)レベルの測定値を、レプチンおよびPDGF−BBの参照値と比較する工程を包含する方法である。従って、本発明は、個体におけるアルツハイマー病(AD)を階層分けするための方法を提供し、上記患者からの生物学的流体サンプル中の脳由来神経栄養因子(BDNF)およびBBホモダイマー血小板由来成長因子(PDGF−BB)レベルの測定値を、BDNFおよびPDGF−BBの参照値と比較する工程を包含する。いくつかの例では、これらの方法は、レプチンおよびRantesレベルの測定値をレプチンおよびRantesの参照値と比較する工程をさらに包含し、ここで、BDNF、PDGF−BB、レプチンおよびRantesの参照値は、25〜28のMMSEスコアをもつ個体からのサンプルについてであり、ここで、レプチンおよびPDGF−BBレベルにおける増加、そしてここでBDNFおよびRANTESのレベルが実質的に同じにとどまる場合、20−25のMMSEスコアによって示されるように軽度のADを示す。本発明はまた、レプチンおよびRantesレベルの測定値をレプチンおよびRantesの参照値と比較する工程をさらに包含する方法を提供し、ここで、BDNF、PDGF−BB、レプチンおよびRantesの参照値は、例えば、20−25のMMSEをもつ個体からであり、ここでRantes、BDNF、およびPDGFレベルにおける減少、およびここでレプチンのレベルが実質的に同じに留まる場合は、10−20のMMSEスコアによって示される中程度のADを示す。個体において本明細書中に記載されるようなADを階層分けするための方法で有用なさらなるバイオマーカーは、リンホタクチンおよびIL−11を含む。「実質的に同じ」に留まるバイオマーカーは、有意な変化がなく、しかもこれらの値がほぼ同じに留まることを意味する。いくつかの実施形態では、実質的に同じは、約12%、10%、5%、2%、1%のいずれかより小さい変化である。いくつかの実施形態では、有意な変化は、当該技術分野で標準的な方法を用いて統計学的に有意でないことを示す。上記の方法はまた、ADの進行を評価するための方法に適用可能である。本明細書中で上記マーカーよって示される認識機能は、本明細書中で提供されるMMSEスコアとほぼ同じレベルの認識機能に対応する結果または印をともなうその他の測定によってであり得ることが理解される。
本発明はまた、アルツハイマー病(「AD」)の診断を補助する方法を提供し、個体からの生物学的流体サンプル中の少なくとも1つのAD診断バイオマーカーの測定レベルを、測定された各バイオマーカーのバイオマーカーの参照レベルと比較する工程を包含し、ここで、この少なくとも1つのAD診断バイオマーカーは、表7から選択され、そしてMMSEスコアとのBDNFおよび/またはレプチン相関に匹敵する、MMSEスコアとの統計学的に有意な正の相関を有し、そしてここで、この少なくとも1つのAD診断バイオマーカーは、年齢とは統計学的に相関しない。MMSEスコアとのBDNFおよび/またはレプチン相関に匹敵する、MMSEスコアとの統計学的に有意な正の相関を有するAD診断バイオマーカーは、このバイオマーカーがAD診断マーカーであることを意味する。いくつかの例では、このAD診断バイオマーカーは、GCSF;IFN−g;IGFBP−1;BMP−6;BMP−4;エポタキシン−2;IGFBP−2;TARC;RANTES;ANG;PARK;Acrp30;AgRP(ART);TIMP−1;TIMP−2;ICAM−1;TRAIL R3;uPAR;IGFBP−4;LEPTIN(OB);PDGF−BB;EGF;BDNF;NT−3;NAP−2;IL−1ra;MSP−a;SCF;TGF−b3;TNF−b;MIP−1d;IL−3;FGF−6;IL−6;IL−6R;sTNF RII;AXL;bFGF;FGF−4;CNTF;MCP−1;MIP−1b;TPO;VEGF−B;IL−8;FAS;EGF−Rからなるバイオマーカーの群から選択され、そしてその他の例では、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF);BBホモダイマー血小板由来成長因子(PDGF−BB);脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF−6)、インターロイキン−3(IL−3)、可溶性インターロイキン−6レセプター(sIL−6R)、レプチン(obとしてもまた知られる)、マクロファージ炎症性タンパク質−1Δ(MIP−1δ)、マクロファージ刺激性タンパク質α鎖(MSP−α)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、神経栄養活性化ペプチド−2(NAP−2)、RANTES、可溶性腫瘍壊死因子レセプター−2(sTNF RII)、幹細胞因子(SCF)、トロンボポイエチン(TPO)、メタロプロテイナーゼ−1の組織インヒビター(TIMP−1)、メタロプロテイナーゼ−2の組織インヒビター(TIMP−2)、トランスホーミング成長因子−β3(TGF−β3)、および腫瘍壊死因子β(TNF−β)からなるバイオマーカーの群から選択される。さらなるバイオマーカーは表8に提供される。さらに、表9A1〜9A2および9Bは、例えば、PDおよびPNのような、年齢合致正常コントールプラスその他の非AD形態と比較した(すなわち、すべてのコントロールと比較されるような)AD中の有意に減少(9A1〜9A2)または増加(9B)する、スコア値に基づく各クラスター内で最も高いランクのバイオマーカーから最も低いバイオマーカーの順序の(本明細書中に記載される方法によってクラスター化された)バイオマーカーの列挙を提供する。表9A1〜9A2および9B中の左から右へのカラムは、バイオマーカー名、スコア(d);変化倍数;q−値(%);およびクラスター数である。表9A1〜9A2および9B中に列挙された任意1つ以上のバイオマーカー、すなわち、このバイオマーカーに特異的な試薬は、例えば、ADの診断の際の補助のための方法、またはADを診断する方法のような本明細書中に開示される方法で用いられ得る。いくつかの例では、表9A1〜9A2および9B中に列挙された任意1つ以上のバイオマーカーがADを診断するために用いられ得る。いくつかの例では、表9A1〜9A2および9B中に列挙された任意1つ以上のバイオマーカーが、例えば、PDおよびPNのような、その他の非AD神経変性性疾患または傷害から区別されるとしてADを診断するために用いられ得る。
表10A1〜10A2および10Bは、健常年齢合致コントロールと比較されるAD中の有意に増加(10A1〜10A2)または減少(10B)する、(クラスター化されておらず、そしてスコア値に基づく最も高いランクのバイオマーカーから最も低いバイオマーカーの順序の)バイオマーカーの列挙を提供する。表10A1〜10A2および10B中、表11A1〜11A2および11B中、ならびに表12Aおよび12B中の左から右へのカラムは、バイオマーカー名、スコア(d);変化倍数;q−値(%)である。表10A1〜10A2および10Bに基づき、健常な年齢合致コントロールと比較したときAD中で有意に増加すると同定されたバイオマーカーは、(スコアに基づく下降順に):BTC;ANG−2;MIF;IGFBP−6;spg130;CTACK;IGFBP3;MIP−1a;TRAIL R4;IL−12p40;AR;NT−4;VEGE−D;OSM;OST;IL−11;sTNF R1;I−TAC;エポタキシン;TECK;PIGF;bNGF;リンホタクチン;MIP−3b;HCC−4;ICAM−3;DTK;IL−1 RI;IGF−1 SR;GRO;GITR−Light;HGF;IL−1R4/ST;IL−2 Ra;ENA−78;およびFGF−9を含む。表10A1〜10A2および10Bに基づき、健常な年齢合致コントロールと比較したときAD中で有意に減少すると同定されたバイオマーカーは、(スコアに基づく下降順に);MCP−2;M−CSF;MCP−3;MDC;MCP−4;IL−1b;IL−4;IL−1a;BLC;CKb8−1;IL−2;IL−15;MIP3a;MIG;SCF;IL−6;IL−16;エポタキシン−3;I−309;TGF−β;TGF−α;GDNF;LIGHT;SDF;IGF−1;フラクタルカイン;IL−5;Fit−3リガンド;GM−CSF;およびGCP−2を含む。
表10A1〜10A2および10B中に列挙された任意1つ以上のバイオマーカー、すなわち、このバイオマーカーに特異的な試薬は、例えば、ADの診断の際の補助のための方法、またはADを診断する方法のような本明細書中に開示される方法で用いられ得る。いくつかの例では、バイオマーカーは、0.05に等しいかまたはそれより小さいp値(または5.00に等しいかそれより小さいq値(%))を有するADの診断の際の補助のための方法、またはADを診断する方法のような本明細書中に開示される方法で用いられ得る。表10A1〜10A2(増加または正に相関するバイオマーカー)については、バイオマーカーGRO、GITR−Light、IGFBP、HGF、IL−1R4/ST、IL−2Ra、ENA−78、およびFGF−9は、0.5より大きいP値を有する。従って、いくつかの実施例では、ADの診断において補助するため、またはADを診断するために本明細書で開示されるような方法における使用のための正に相関するバイオマーカーは、表10A1〜10A2に列挙されたバイオマーカーからなる群から選択され、GRO、GITR−Light、IGFBP、HGF、IL−1R4/ST、IL−2Ra、ENA−78、およびFGF−9は除く。表10B(減少または負で相関するバイオマーカー)については、バイオマーカーBMP−4、Fit−3リガンド、GM−CSF、IGFBP−4、GCP−2、およびTARCが0.005より大きいp値を有する。従って、いくつかの例では、ADの診断において補助するため、またはADを診断するために本明細書で開示されるような方法における使用のための負に相関するバイオマーカーは、表10Bに列挙されたバイオマーカーからなる群から選択され、BMP−4、Fit−3リガンド、GM−CSF、IGFBP−4、GCP−2、およびTARCは除く。
表11A1〜11A2および11Bは、年齢合致変性コントロールと比較されるAD中の有意に増加(11A1〜11A2)または減少(11B)する、(クラスター化されておらず、そしてスコア値に基づく最も高いランクのバイオマーカーから最も低いバイオマーカーの順序の)バイオマーカーの列挙を提供する。表11A1〜11A2および11Bに基づき、年齢合致のその他の非AD神経変性コントロールと比較したときAD中で有意に増加すると同定されたバイオマーカーは、(スコアに基づく下降順に):TRAIL R4;エポタキシン;IL−12 p40;BTC−1;MIF;OST;MIP−1a;sTNF R1;IL−11;リンホタクチン;NT−4;VEFG−D;HGF;IGFBP3;IGFBP−1;OSM;IL−1R1;PIGF;IGF−1 SR;CCL−28;IL−2 Ra;IL−12p70;GRO;IGFBP−6;IL−17;CTACK;I−TAC;ICAM−3;ANG−2;MIP−3b;FGF−9;HCC−4;IL−1R4/ST;GITR;およびDTKを含む。表11A1〜11A2および11Bに基づき、年齢合致のその他の非AD神経変性コントロールと比較したときAD中で有意に減少すると同定されたバイオマーカーは、(スコアに基づく下降順に):MCP−2;M−CSF;MCP−3;MDC;MCP−4;IL−1b;IL−4;IL−1a;BLC;CKb8−1;IL−2;IL−15;MIP3a;MIG;SCF;IL−6;IL−16;エオタキシン−3;I−309;TGF−β;TNF−α;GDNF;LIGHT;SDF−1;IFG−1;フラクタルカイン;IL−5;Fit−リガンド;GM−CSF;およびGCP−2を含む。表11A1〜11A2および11Bに列挙される任意の1つ以上のバイオマーカー、すなわち、バイオマーカーのために特異的な試薬は、例えば、ADの診断の際に補助するためまたはADの診断のための、本明細書に開示される方法で用いられ得る。表11A1〜11A2(増加または正に相関するバイオマーカー)については、バイオマーカーIL−1ra、IL−2ra、PARC、FAS、IL−12p70、NAP−2、GRO、NT−3、IGFBP−6、TIMP−1、IL−17、IGFBP−2、CTACK、I−TAC、ICAM−3、ANG−2、FGF−4、MIP−3b、FGF−9、HCC−4、IL−1R4/ST、ANG、GITR、DTK、IL−6R、EGF−Rは、0.05より大きいp値を有する。従って、いくつかの実施例では、ADの診断において補助するため、またはADを診断するために本明細書で開示されるような方法における使用のための正に相関するバイオマーカーは、表11A1〜11A2に列挙されたバイオマーカーからなる群から選択され、IL−1ra、IL−2ra、PARC、FAS、IL−12p70、NAP−2、GRO、NT−3、IGFBP−6、TIMP−1、IL−17、IGFBP−2、CTACK、I−TAC、ICAM−3、ANG−2、FGF−4、MIP−3b、FGF−9、HCC−4、IL−1R4/ST、ANG、GITR、DTK、IL−6R、EGF−Rは除く。表11B(減少または負に相関するバイオマーカー)については、バイオマーカーIL−1a、MCP−2、IGFBP−4、spg130、SDF−1、M−CSF、MIP−1d、IL−10、GM−CSF、TNF−a、MDC、FGF−6、TNF−b、IFN−γ、およびGDNFが0.05より小さいp値を有する。従って、いくつかの例では、ADの診断において補助するため、またはADを診断するために本明細書で開示されるような方法における使用のための負に相関するバイオマーカーは、0.05より小さいp値を有するバイオマーカーIL−1a、MCP−2、IGFBP−4、spg130、SDF−1、M−CSF、MIP−1d、IL−10、GM−CSF、TNF−a、MDC、FGF−6、TNF−b、IFN−γ、およびGDNFからなる群が選択される。
表12A〜12Bは、年齢合致コントロールを参照して、ADプラスその他の非AD変性コントール中で有意に増加(12A)または減少(12B)する、(クラスター化されておらず、そしてスコア値に基づく最も高いランクのバイオマーカーから最も低いバイオマーカーの順序の)バイオマーカーの列挙を提供する。表12A〜12B中に列挙される任意の1つ以上のバイオマーカー、すなわち、バイオマーカーに特異的な試薬はは、例えば、ADを含む神経学的疾患の診断において補助するためまたはそれを診断するために、本明細書に開示される方法で用いられ得る。さらなる例では、このAD診断バイオマーカーは、リンホタクチンおよびIL−11から選択され、そしてその他の例では、リンホタクチンおよびIL−11を含む。さらなる例では、AD診断マーカーは、実施例に記載されるように、BTC;SDF−1;MCP−2;IFN−γ;IGFBP−4;IGF−1SR;IL−8;GM−CSF;およびANG−2からなる群から選択される。さらなる例では、AD診断マーカーは、実施例で記載されるように、IFN−γおよびIL−8からなる群から選択される。なおその他の例では、AD診断バイオマーカーは、実施例に記載のように、バイオマーカーsTNF RII;MSP−α;uPAR;TPO;MIP−1β;VEGF−β;FAS;MCP−1;NAP−2;ICAM−1;TRAIL R3;PARC;ANG;IL−3;MIP−1δ;IFN−γ;IL−8;およびFGF−6からなる群から選択される。
測定値(単数または複数)と参照値(単数または複数)との間の比較の結果は、ADまたはMCIを診断するため、またはその診断において補助するため、それらの疾患の重症度に従って階層分けするため、またはAD患者におけるADの進行をモニターするために用いられる。従って、この比較が、ADまたはMCIの示唆/指標である測定値(単数または複数)と参照値(単数または複数)との間で差異(すなわち、増加または減少)を示す場合、そのときは、適切な診断が補助されるか、またはなされる。逆に、測定レベル(単数または複数)の参照レベル(単数または複数)に対する比較が、ADまたはMCIの診断を示唆または示す差異を示さない場合、そのときは、適切な診断は補助されないか、またはなされない。同様に、AD患者に由来するサンプル中のレプチンの測定レベルの比較が、参照値と比較して減少するとき、患者のADの進行の診断がなされるか、または補助される。同様に、AD患者から得られたサンプル中のBDNFおよびPDGF−BBレベルのレベルの比較が、ADの特定ステージを示唆または示唆するとき、ADの特定ステージ(軽度、中程度または重症)の診断が補助されるか、またはなされる。
当業者によって理解されるように、本発明のAD診断方法(すなわち、ADを診断する方法またはADの診断の際に補助する方法)の実施において、1つ以上のAD診断バイオマーカーが用いられるが、これらのマーカーは、ADの診断を明白には示唆または示さず、この「多数決」の示唆または指標(例えば、上記方法が5つのAD診断バイオマーカーを利用し、その3つがADを示唆/示すとき、この結果は、この個体についてADの診断を示唆また示すとして考慮され得る)が、アッセイの結果と考慮される。しかし、少なくとも2つの診断バイオマーカーの測定値が得られ、そして測定値の1つがレプチンに対してであり、レプチンのこの測定値が参照値より小さいに違いないくつかの実施形態では、ADの診断を示すか、または示唆する。当業者によって認識されるように、本明細書に記載される方法は、種々の生物学的マーカーのいずれ(これらはADマーカーでもよいし、なくてもよい)の使用も含み得、生物学的サンプル(単数または複数)の整合性および/または特徴を決定する。例えば、女性で一般により高いレプチンレベルは、性別のマーカーとして測定され得る。
本発明の特定の実施形態では、ADバイオマーカーのレベルが、1つ以上の時点で個体から得られる。このような「系列」サンプリングは、AD患者中のADの進行をモニターすることに関連する本発明の局面に良好に適合される。系列サンプリングは、月毎、季節毎(すなわち、3ヶ月毎)、半年毎、一年毎、二年毎、またはより少ない頻度のような任意の所望の時系列で実施され得る。測定レベルと参照レベルとの間の比較は、新たなサンプルが測定されるときごとに実施され得るか、またはレベルに関連するデータは、より少ない頻度の分析のために保持され得る。
当業者によって理解されるように、末梢生物学的流体サンプルを含む生物学的流体サンプルは、ADを有するか、ADまたはMCIを発症していると疑われる個体から通常収集される。本発明はまた、認識評価が所望される個体からのサンプルを企図する。あるいは、個体(または、例えば研究に関与する他者および/または臨床医)は、任意のAD、疑われるAD、ADのリスクにあることなくしてこのような評価を所望し得る。例えば、正常個体は、このような情報を所望し得る。このような個体は、最も一般的には65歳以上であるが、末梢生物学的流体サンプルのような生物学的流体サンプルが、本発明の方法における使用のためにとられる個体は、初期発症ADまたは家族ADが疑われるとき、35〜40歳程度のような若さであり得る。
本発明はまた、ADおよび/またはMCIの処置のための候補薬剤のスクリーニングのための方法を提供し、有望な候補薬剤をADバイオマーカーを調節することにおける活性についてアッセイすることによる。このスクリーニングアッセイは、インビトロおよび/またはインビボのいずれかで実施され得る。本明細書に記載のスクリーニング方法で同定された候補薬剤は、ADおよび/またはMCIの処置のための治療薬として有用であり得る。
複合物が、この複合物中に存在するマーカーの任意のサブセットより予測的である確立Pは、数学的に:P=1−(1−P1)(1−P2)(1−P3)....(1−Pn)として表され得る。
ここで、確立P1、P2、Pnは、臨床表現型を予見し得る個々のマーカーの確立を表し、そしてここで1−Pnは、その確立の補数を表す。この複合物の任意のサブセットは、それ故、Pについてより小さな値を有する。
本発明のさらなる実施形態に従って、表7、および本明細書中に記載されるその他の表中に引用されるバイオマーカーの血清、CSF、またはその他の流体中の相対濃度は、5以上の要素からなる複合物、または集合、またはこのような複合物もの任意のサブセットとして、AD、PD、前部側頭部痴呆、脳血管疾患、多発性硬化症、および神経障害の臨床表現型の予測、疾患検出、階層分け、モニタリング、および処置における任意の個々のマーカーの絶対濃度よりもより予測的である。
(AD診断バイオマーカー)
免疫機構は、宿主防御システムの本質的部分であり、そして代表的には炎症性応答において顕著な特徴である。増加する数の研究が、この免疫系とCNSとの間の興味をそそる連携を発見している。例えば、このCNSは免疫監視から完全に保護されず、しかも種々の免疫細胞が血液−脳関門を横切り得ることが明瞭になった。侵入する白血球はこのCNS中の標的抗原を攻撃し得るか、または変性に対してニューロンを保護し得る成長因子を生成し得る(Hohlfeldら、2000、J.Neuroimmunol.107、161〜166)。これらの応答は、種々のタンパク質メディエーターを通じて惹起され、制限されないで、ニューロン、グリア細胞、内皮細胞および白血球を横切る細胞内伝達における、免疫および炎症システム中のサイトカイン、ケモカイン、神経栄養因子、コレクチン、キニン、および急性期タンパク質を含む。理論によって拘束されることなく、表7に列挙されるサイトカイン、ケモカイン、神経栄養因子、コレクチン、キニン、および急性期タンパク質は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、および神経障害のような神経変性および炎症性疾患に付随して血清中で異なって発現されると仮定される。サイトカインは、免疫系および炎症性応答を含む、多くの機能の活性化に関連するポリペプチドメディエーターの不均質群である。末梢サイトカインはまた、活性輸送機構を経由して直接的に、または迷走神経刺激を経由して間接的に血液−脳関門を貫通する。サイトカインは、このサイトカインを放出する細胞の挙動に影響して自己分泌様式で作用し得るか、または隣接する細胞の挙動に影響してパラ分泌様式で作用し得る。いくつかのサイトカインは、遠隔の細胞の挙動に影響して内分泌様式で作用し得るが、これは、それらの循環に入る能力おびそれらの半減期に依存する。このサイトカインファミリーは、制限されないで、インターロイキン(IL−Iα、IL−Iβ、ILIraおよびIL−2〜IL−18)、腫瘍壊死因子(TNF−αおよびTNF−β)、インターフェロン(INF−α、βおよびγ)、コロニー刺激因子(G−CSF、M−CSF、GM−CSF、IL−3およびいくつかのその他のIL)、および成長因子(EGF、FGF、PDGF、TGFα、TGFβ、BMP、GDF、CTGF、およびECGF)を含む。
本発明者らは、末梢体液中に存在する生化学的マーカーのコレクションが、ADを診断またはADの診断における補助を含む、認識機能を評価するために用いられ得ることを発見した。これらの「AD診断マーカー」は、制限されないで、GCSF;INF−g;IGFBP−1;BMP−6;BMP−4;エオタキシン−2;IGFBP−2;TARC;RANTES;ANG;PARC;Acrp30;AgRP(ART);TIMP−1;TIMP−2;ICAM−1;TRAIL R3;uPAR;IGFBP−4;LEPTIN(OB);PDGF−BB;EGF;BDNF;NT−3;NAP−2;IL−1ra;MSP−a;SCF;TGF−b3;TNF−b MIP−1d;IL−3;FGF−6;IL−6R;sTNF RII;AXL;bFGF;FGF−4;CNTF;MCP−1;MIP−1b;TPO;VEGF−B;IL−8;FAS;EGF−Rを含む。その他の例では、これらの「AD診断バイオマーカー」は:塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、BBホモダイマー血小板由来成長因子(PDGF−BB)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子6(FGF−6)、インターロイキン−3(IL−3)、可溶性インターロイキン−6レセプター(sIL−6R)、レプチン(obとしてもまた知られる)、マクロファージ炎症性タンパク質−1δ(MIP−1δ)、マクロファージ刺激性タンパク質α鎖(MSP−α)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)、RANTES、可溶性腫瘍壊死因子レセプター−2(sTNF RII)、幹細胞因子(SCF)、トロンボポイエチン(TPO)、メタロプロテアーゼ−1の組織インヒビター(TIMP−1)、メタロプロテアーゼ−2の組織インヒビター(TIMP−2)、トランスホーミング成長因子−β3(TGF−β3)、腫瘍壊死因子β(TNF−β)てある。その他の例では、AD診断マーカーは、レプチン、RANTES、PDGF−BBおよびBDNFの1つ以上を含む。
さらに、表9A1〜9A2および9Bは、年齢合致正常コントロール、プラス、例えば、PDおよびPNのような神経変性のその他の非AD形態に比較される(すなわち、すべてのコントロールに比較されるとき)、AD中の有意に増加(9A−1〜9A−2)または減少(9B)しているバイオマーカーの列挙を提供する(本明細書中に記載されるような方法によって、スコア値に基く各クラスター内で最も高いランクのバイオマーカーから最も低いランクのバイオマーカーの順でクラスター化されている)。表9A1〜9A2および9B中、左から右までのカラムは、バイオマーカー名、スコア(d);倍変化;q−値(%);およびクラスター数である。表9A1〜9A2および9Bに列挙される任意の1つ以上のバイオマーカー、すなわち、バイオマーカーに特異的な試薬は、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示される方法で用いられ得る。いくつかの例では、表9A1〜9A2および9Bに列挙される任意の1つ以上のバイオマーカーは、例えば、PDおよびPNのような非AD神経変性疾患または障害から区別されるようなADを診断するために用いられ得る。
表10A1〜10A2および10Bは、健常年齢合致コントロールに比較されるAD中の有意に増加(10A1〜10A2)または減少(10B)しているバイオマーカーの列挙を提供する(クラスター化されておらず、そしてスコア値に基き、最も高いランクのバイオマーカー〜最も低いランクのバイオマーカーの順である)。表10A1〜10A2および10B、表11A1〜11A2および11B、および表12A〜12B中、左から右までのカラムは、バイオマーカー名、スコア(d);倍変化;およびq−値(%)である。表10A1〜10A2および10Bに基き、健常年齢合致コントロールと比較したとき有意に増加されると同定されるバイオマーカーは、(スコアに基き、下降する順に):BTC;ANG−2;MIF;IGFBP−6;spg130;CTACK;IGFBP3;MIP−1a;TRAIL R4;IL−12 p40;AR;NT−4;VEGF−D;OSM;OST;IL−11;sTNF R1;I−TAC;Eotaxin;TECK;PIGF;bNGF;リンホタクシン;MIP−3b;HCC−4;ICAM−3;DTK;IL−1 RI;IGF−1 SR;GRO;GITR−Light;HGF;IL−1R4/ST;IL−2 Ra;ENA−78;およびFGF−9を含む。表10A1〜10A2および10Bに基き、健常年齢合致コントロールと比較したとき有意に減少されると同定されるバイオマーカーは、(スコアに基き、下降する順に):MCP−2;M−CSF;MCP−3;MDC;MCP−4;IL−1b;IL−4;IL−1a;BLC;CK b8−1;IL−2;IL−15;MIP3a;MIG;SCF;IL−6;IL−16;Eotaxin−3;I−309;TGF−β;TGF−α;GDNF;LIGHT;SDF;IFG−1;フラクタルカイン;IL−5;Fit−3リガンド;GM−CSF;およびGCP−2を含む。表10A1〜10A2および10Bに列挙される任意の1つ以上のバイオマーカー、すなわち、バイオマーカーに特異的な試薬は、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示される方法で用いられ得る。いくつかの例では、バイオマーカーは、例えば、0.05以下のp値(または5.00以下のq−値(%))を有するADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示される方法における使用のために選択される。表10A1〜10A2(増加または正に相関するバイオマーカー)について、バイオマーカーGRO、GITR−Light、IGFBP、HGF、IL−1R4/ST、IL−2Ra、ENA−78、およびFGF−9は、0.05より大きいP値を有する。従って、いくつかの例では、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書に開示されるような方法における使用のための正に相関するバイオマーカーは、表10A1〜10A2中に列挙されるバイオマーカーからなる群から選択され、バイオマーカーGRO、GITR−Light、IGFBP、HGF、IL−1R4/ST、IL−2Ra、ENA−78、およびFGF−9は除く。表10B(減少または負に相関するバイオマーカー)については、バイオマーカーBMP−4、Fit3リガンド、GM−CSF、IGFBP−4、GCP−2、およびTARCは、0.05より大きいp値を有する。従って、いくつかの例では、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書に開示されるような方法における使用のための負に相関するバイオマーカーは、表10B中に列挙されるバイオマーカーからなる群から選択され、バイオマーカーBMP−4、Fit3リガンド、GM−CSF、IGFBP−4、GCP−2、およびTARCは除く。
表11A1〜11A2および11Bは、年齢合致変性コントロールに比較されるAD中の有意に増加(11A1〜11A2)または減少(11B)しているバイオマーカーの列挙(クラスター化されておらず、そしてスコア値に基き、最も高いランクのバイオマーカーから最も低いバイオマーカーの順にある)を提供する。表11A1〜11A2および11Bに基き、年齢合致のその他の非AD神経変性コントロールに比較されるとき、ADにおいて有意に増加されると同定されるバイオマーカーは、(スコアに基く下降順で):TRAIL R4;Eotaxin;IL−12 p40;BTC−1;MIF;OST;MIP−1a;sTNF R1;IL−11;リンホタクチン;NT−4;VEFG−D;HGF;IGFBP3;IGFBP−1;OSM;IL−1R1;PIGF;IGF−1 SR;CCL−28;IL−2 Ra;IL−12 p70;GRO;IGFBP−6;IL−17;CTACK;I−TAC;ICAM−3;ANG−2;MIP−3b;FGF−9;HCC−4;IL−1R4/ST;GITR;およびDTKを含む。表11A1〜11A2および11Bに基き、年齢合致のその他の非AD神経変性コントロールに比較されるとき、ADにおいて有意に減少されると同定されるバイオマーカーは、(スコアに基く下降順で):MCP−2;M−CSF;MCP−3;MDC;MCP−4;IL−1b;IL−1a;BLC;CKb8−1;IL−2;IL−15;MIP3a;MIG;SCF;IL−6;IL−16;Epotaxin−3;I−309;TGF−β;TNF−α;GDNF;LIGHT;SDF−1;IFG−1;フラクタルカイン;IL−5;Fit−3リガンド;GM−CSF;およびGCP−2を含む。表11A1〜11A2および11Bに列挙される任意の1つ以上のバイオマーカー、すなわち、バイオマーカーに特異的な試薬は、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示される方法で用いられ得る。表11A1〜11A2(増加または正に相関するバイオマーカー)について、バイオマーカーIL−1ra、IL−2ra、PARC、FAS、IL−12p70、NAP−2、GRO、NT−3、IGFBP−6、TIMP−1、LI−17、IGFBP−2、CTACK、I−TAC、ICAM−3、ANG−2、FGF−4、MIP−3b、FGF−9、HCC−4、IL−1R4/ST、ANG、GITR、DTK、IL−6R、EGF−Rは、0.05より大きいP値を有する。従って、いくつかの例では、ADの診断において補助するため、またはADを診断するための本明細書に開示されるような方法における使用のための正に相関するバイオマーカーは、表11A1〜11A2中に列挙されるバイオマーカーからなる群から選択され、バイオマーカーIL−1ra、IL−2ra、PARC、FAS、IL−12p70、NAP−2、GRO、NT−3、IGFBP−6、TIMP−1、LI−17、IGFBP−2、CTACK、I−TAC、ICAM−3、ANG−2、FGF−4、MIP−3b、FGF−9、HCC−4、IL−1R4/ST、ANG、GITR、DTK、IL−6R、EGF−Rは除く。表11B(減少または負に相関するバイオマーカー)については、バイオマーカーIL−1a、MCP−2、IGFBP−4、spg130、SDF−1、M−CSF、MIP−1d、IL−10、GM−CSF、TNF−a、MDC、FGF−6、TNF−b、IFN−γ、およびGDNFは、0.05より大きいp値を有する。従って、いくつかの例では、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書に開示されるような方法における使用のための負に相関するバイオマーカーは、0.05より小さいp値を有するIL−1a、MCP−2、IGFBP−4、spg130、SDF−1、M−CSF、MIP−1d、IL−10、GM−CSF、TNF−a、MDC、FGF−6、TNF−b、IFN−γ、およびGDNFからなる群から選択される。
表12A1〜12Bは、年齢合致コントロールを参照して、ADプラスその他の非AD神経変性コントロールにおいて有意に増加(12A)または減少(12B)しているバイオマーカーの列挙(クラスター化されておらず、そしてスコア値に基き、最も高いランクのバイオマーカーから最も低いバイオマーカーの順にある)を提供する。表12A〜12B中に列挙されるバイオマーカーの任意の1つ以上、すなわち、バイオマーカーに特異的な試薬は、例えば、ADを含む神経変性疾患の診断において補助するため、またはそれを診断するためのような、本明細書中に開示される方法で用いられ得る。さらなる例では、このAD診断バイオマーカーは、リンホタクチンおよびIL−11から選択され、そしてその他の例では、リンホタクチンおよびIL−11を含む。さらなる例では、AD診断マーカーは、実施例に記載されるように、BTC;SDF−1;MCP−2;IFN−γ;IGFBP−4;IGF−1SR;IL−8;GM−CSF;およびANG−2からなる群から選択される。さらなる例では、AD診断マーカーは、実施例に記載されるように、INF-γおよびIL−8からなる群から選択される。なおその他の例では、AD診断バイオマーカーは、実施例中に記載されるように、バイオマーカーsTNF RII;MSP−α;uPAR;TPO;MIP−1β;VEGF−β;FAS;MCP−1;NAP−2;ICAM−1;TRAIL R3;PARC;ANG;IL−3;MIP−1δ;IFN−γ;IL−8;およびFGF−6からなる群から選択される。
本発明者らによって発見されたAD診断バイオマーカーは、すべてが既知に分子である。脳由来神経栄養因子(BDNF)は、例えば、Rosenthalら、1991、Encocrinology 129(3):1289〜94に記載されている。塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)は、例えば、Abrahamら、1986、EMBO J.5(10):2523〜28に記載されている。上皮成長因子(EGF)は、例えば、Grayら、1983、Nature 303(5919):722〜25に記載されている。線維芽細胞成長因子6(FGF−6)は、例えば、Maricsら、1989、Oncogene 4(3):335〜40に記載されている。インターロイキン−3(IL−3)は、例えば、Yangら、1986、Cell 47(1):3〜10に記載されている。可溶性インターロイキン−6レセプター(sIL−6R)は、例えば、Tagaら、1989、Cell 58(3):573〜81に記載されている。レプチン(「ob」としても知られる)は、例えば、Masuzakiら、1995、Diatetes 44(7):855〜58に記載されている。マクロファージ炎症性タンパク質−1δ(MIP−1δ)は、例えば、Wangら、1998、J.Clin.Immunol.18(3):214〜22に記載されている。マクロファージ刺激性タンパク質α鎖(MSP−α)は、例えば、Yoshimuraら、1993、J.Biol.Chem.268(21)、15461〜68およびYoshimuraら、1999、Arch.Biochem.Biophys.363(2):356〜60に記載されている。好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)は、例えば、Walzら、1991、Adv.Exp.Med.Biol.305:39〜46に記載されている。ニュートロフィン−3(NT−3)は、例えば、Hohnら、1990、Nature 344(6264):339〜41に記載されている。BBホモダイマー血小板由来成長因子(PDGF−BB)は、例えば、Collisら、1985、Nature 316(6030):748〜50に記載されている。RANTESは、例えば、Schallら、1988、J.Immunol.141(3):1018〜25中に記載されている。幹細胞因子(SCF)は、例えば、Zseboetら、1990、Cell 63(1):213〜24中に記載されている。可溶性腫瘍壊死因子レセプター−2(sTNF RII)は、例えば、Schallら、1990、Cell 61(2):361〜70中に記載されている。トランスフォーミング成長因子−βは、例えば、Dijkeら、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85(13):4715〜19中に記載されている。メタロプロテアーゼ−1(TIMP−1)の組織インヒビターは、例えば、Dochetryら、1985、Nature 318(6041):66〜69およびGassonら、1985、Nature 315(6022):768〜71に記載されている。メタロプロテアーゼ−2(TIMP−2)の組織インヒビターは、例えば、Stetler−Stevensonら、1190、J.Biol.Chem.265(23):13933〜38に記載されている。腫瘍壊死因子β(TNF−β)は、例えば、Grayら、1984、Nature 312(5996):721〜24に記載されている。トロンボポイエチン(TPO)は、例えば、Fosterら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91(26):13023〜27に記載されている。
本発明者らは、AD診断方法の実施のために単一のAD診断バイオマーカーで感受性および特異性の受容可能なレベルを見出したが、本発明のAD診断方法の方法の有効性(例えば、感度および/または特異性)は、少なくとも2つのAD診断バイオマーカーが利用されるとき一般に増大される。いくつかの例では、本発明のAD診断方法の方法は、一般に、少なくとも4つのAD診断バイオマーカーが利用されるとき増大される。複数のAD診断バイオマーカーは、種々の方法によって本明細書中に開示されるAD診断バイオマーカーから選択され得、「q値」を含み、そして/またはクラスター多様性を選択することによる。AD診断バイオマーカーは、「q値」を基に選択され得、これは、本発明者らがAD診断バイオマーカーを同定するとき誘導した統計学的値である(実施例1中の表3を参照のこと)。AD診断バイオマーカーの選択のための「q値」は、約0.0001未満〜約0.05の範囲であり、そしていくつかの例では、約0.01〜約0.05の範囲である。あるいは(またはそれに加えて)、AD診断バイオマーカーは、選択されたタンパク質のクラスター多様性またはサンプル多様性を保存するように選択され得る。本発明者らは、これらのAD診断バイオマーカーを多くのクラスターに分離した(表1を参照のこと)。AD診断マーカーのさらなるクラスターは、表9A1〜9A2および9Bに見出される。ここで、これらクラスターは、最も緊密に相関する各バイオマーカーに対する定量的測定によって形成される。本明細書で用いられるとき、「相関する」または「相関」は、MMSEスコアおよび定量的タンパク質濃度または定性的タンパク質濃度のような、2つの数値が与えられたランダム変数の値における同時変化である。本明細書で用いられるとき、「識別する」または「識別」は、所定の変数について2つ以上のサンプル間の定量的または定性的差異をいう。このようなクラスターの次のクラスターは、このクラスターに最も緊密に相関するクラスターである。バイオマーカー間およびクラスター間の相関は、cluto.ccgb.umn.edu/cgi−bin/wCluto/wCluto.cgiで入手可能なwCLUTOと呼ばれるパブリックウェブベースのソフトウェアを用いる非監視クラスタリングによって生成される階層的ツリーによって代表され得る。1つ以上のAD診断バイオマーカーが、試験のために選択される場合、いくつかの例では、これら選択されたバイオマーカーは、少なくとも部分的には多様性であり(すなわち、これらのAD診断バイオマーカーは、例えば、表1中のクラスター4からのレプチン、BDNFおよび/またはPDGF−BB、および表1のクラスター3からのRANTESを含むAD診断バイオマーカーのセット少なくとも2つの異なるクラスターを代表する)、そしていくつかの例では、これらAD診断バイオマーカーは、完全に多様性である(すなわち、選択されたAD診断バイオマーカーの2つは、同じクラスターからではない)。従って、本発明は、ADを診断するか、またはADの診断における補助のための多くの異なる実施形態を提供する。
いくつかの実施形態において、末梢性の生物学的流体サンプル中の単一のAD診断バイオマーカーのレベルを測定し、その測定されたレベルを参照レベルと比較し、ADを診断するかまたはADの診断を補助する。単一のAD診断バイオマーカーの測定されたレベルが本発明の実施に際して得られる特定の実施形態において、その測定されたレベルは末梢性の生物学的流体サンプルのRANTESに関するものである。
他の実施形態において、末梢性の生物学的流体サンプル中の少なくとも2種類のAD診断バイオマーカーのレベルが測定され、上記マーカー類の各々の参照レベルと比較される。したがって、本発明は少なくとも2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、15種または20種のAD診断バイオマーカーのレベルを測定し、それらの測定されたレベルを参照レベルと比較することによって、ADを診断するための方法および/またはADの診断を補助するための方法を提供する。例示の実施形態は、2種、3種、4種または5種のAD診断バイオマーカーを用いる。いくつかの実施形態において、本明細書には、少なくともレプチン、RANTES、BDNF、およびPDGF−BBのレベルを測定することによってADを診断するための方法ならびに/またはADの診断を補助するための方法が提供される。他の例において、本明細書には、例えば、リンホタクチンおよびIL−11からなる群より選択される少なくとも1種バイオマーカーのレベルを測定することによってADを診断するためならびに/またはADの診断を補助するためなどの方法が提供される。他の例において、バイオマーカーは、リンホタクチンおよびIL−11を含む。さらなる例において、AD診断マーカーは、上記の例において記載されるように、BTC;SDF−1;MCP−2;IFN−γ;IGFBP−4;IGF−1SR;IL−8;GM−CSF;およびANG−2からなる群より選択される。さらなる例において、AD診断マーカーは、上記の例に記載されるように、IFN−γおよびIL−8からなる群より選択される。なお他の例において、AD診断バイオマーカーは、上記の例に記載されるように、sTNF RII;MSP−α;uPAR;TPO;MIP−1β;VEGF−β;FAS;MCP−1;NAP−2;ICAM−1;TRAIL R3;PARC;ANG;IL−3;MIP−1δ;IFN−γ;IL−8;およびFGF−6からなる群より選択される。1種より多いAD診断バイオマーカーを使用する実施形態(すなわち測定された値が1種よりAD診断バイオマーカーで得られる実施形態)において、表3に示すAD診断バイオマーカーの例示の組み合せは、(1)レプチンと任意のその他のAD診断バイオマーカーとの組み合せ(すなわち、レプチンとBDNF、レプチンとbFGF、レプチンとEGF、レプチンとFGF−6、レプチンとIL−3、レプチンとsIL−6R、レプチンとMIP−1δ、レプチンとMSP−α、レプチンとNAP−2、レプチンとNT−3、レプチンとPDGF−BB、レプチンとRANTES、レプチンとSCF、レプチンとsTNR RII、レプチンとTGF−β3、レプチンとTIMP−1、レプチンとTIMP−2、レプチンとTNF−β、およびレプチンとTPO)、(2)任意のその他のAD診断バイオマーカーと組み合せたRANTES(すなわち、RANTESとBDNF、RANTESとbFGF、RANTESとEGF、RANTESとFGF−6、RANTESとIL−3、RANTESとsIL−6R、RANTESとレプチン、RANTESとMIP−1δ、RANTESとMSP−α、RANTESとNAP−2、RANTESとNT−3、RANTESとPDGF−BB、RANTESとSCF、RANTESとsTNR RII、RANTESとTGF−β3、RANTESとTIMP−1、RANTESとTIMP−2、RANTESとTNF−β、およびRANTESとTPO);(3)任意のその他のAD診断バイオマーカーと組み合せたPDGF−BB(すなわち、PDGF−BBとBDNF、PDGF−BBとbFGF、PDGF−BBとEGF、PDGF−BBとFGF−6、PDGF−BBとIL−3、PDGF−BBとsIL−6R、PDGF−BBとレプチン、PDGF−BBとMIP−1δ、PDGF−BBとMSP−α、PDGF−BBとNAP−2、PDGF−BBとNT−3、PDGF−BBとRANTES、PDGF−BBとSCF、PDGF−BBとsTNR RII、PDGF−BBとTGF−β3、PDGF−BBとTIMP−1、PDGF−BBとTIMP−2、PDGF−BBとTNF−β、およびPDGF−BBとTPO);(4)任意のその他のAD診断バイオマーカーとの組み合せたBDNF(すなわち、BDNFとbFGF、BDNFとEGF、BDNFとFGF−6、BDNFとIL−3、BDNFとsIL−6R、BDNFとレプチン、BDNFとMIP−1δ、BDNFとMSP−α、BDNFとNAP−2、BDNFとNT−3、BDNFとPDGF−BB、BDNFとRANTES、BDNFとSCF、BDNFとsTNR RII、BDNFとTGF−β3、BDNFとTIMP−1、BDNFとTIMP−2、BDNFとTNF−β、およびBDNFとTPO);(5)RANTES、PDGF−BBおよびNT−3;(6)レプチン、PDGF−BBおよびRANTES;(7)BDNF、PDGF−BBおよびRANTES;(8)BDNF、レプチンおよびRANTES;(9)BDNF、レプチン、PDGF−BB;(10)PDGF−BB、EGF、およびNT−3;(11)PDGF−BB、NT3、およびレプチン;(12)BDNF、レプチン、PDGF−BB、RANTES;ならびに(13)RANTES、PDGF−BB、NT−3、EGF、NAP−2、およびレプチンを含む。AD診断バイオマーカーのさらなる例示の組み合せは、(14)本明細書に開示される任意の他のAD診断バイオマーカーとの組み合せたレプチン(すなわち、レプチンとGCSF、レプチンとIFN−γ、レプチンとIGFBP−1、レプチンとBMP−6、レプチンとBMP−4、レプチンとエオタキシン−2、レプチンとIGFBP−2、レプチンとTARC、レプチンとANG、レプチンとPARC、レプチンとAcrp30、レプチンとAgRP(ART)、レプチンとICAM−1、レプチンとTRAIL R3、レプチンとuPAR、レプチンとIGFBP−4、レプチンとIL−1Ra、レプチンとAXL、レプチンとFGF−4、レプチンとCNTF、レプチンとMCP−1、レプチンとMIP1b、レプチンとVEGF−B、レプチンとIL−8、レプチンとFASおよびレプチンとEGF−R)、(15)本明細書に記載される任意の他のAD診断バイオマーカーとの組み合せたRANTES(すなわちRANTESとGCSF、RANTESとIFN−γ、RANTESとIGFBP−1、RANTESとBMP−6、RANTESとBMP−4、RANTESとエオタキシン−2、RANTESとIGFBP−2、RANTESとTARC、RANTESとANG、RANTESとPARC、RANTESとAcrp30、RANTESとAgRP(ART)、RANTESとICAM−1、RANTESとTRAIL R3、RANTESとuPAR、RANTESとIGFBP−4、RANTESとIL−1Ra、RANTESとAXL、RANTESとFGF−4、RANTESとCNTF、RANTESとMCP−1、RANTESとMIP1b、RANTESとVEGF−B、RANTESとIL−8、RANTESとFASおよびRANTESとEGF−R)、(16)本明細書に開示される任意のその他のAD診断バイオマーカーと組み合せたPDGF−BB(すなわち、PDGF−BBとGCSF、PDGF−BBとIFN−γ、PDGF−BBとIGFBP−1、PDGF−BBとBMP−6、PDGF−BBとBMP−4、PDGF−BBとエオタキシンー2、PDGF−BBとIGFBP−2、PDGF−BBとTARC、PDGF−BBとANG、PDGF−BBとPARC、PDGF−BBとAcrp30、PDGF−BBとAgRP(ART)、PDGF−BBとICAM−1、PDGF−BBとTRAIL R3、PDGF−BBとuPAR、PDGF−BBとIGFBP−4、PDGF−BBとIL−1Ra、PDGF−BBとAXL、PDGF−BBとFGF−4、PDGF−BBとCNTF、PDGF−BBとMCP−1、PDGF−BBとMIP1b、PDGF−BBとVEGF−B、PDGF−BBとIL−8、PDGF−BBとFASおよびPDGF−BBとEGF−R)、(17)本明細書に開示される任意のその他のAD診断バイオマーカーと組み合わせたBDNF(すなわちBDNFとGCSF、BDNFとIFN−γ、BDNFとIGFBP−1、BDNFとBMP−6、BDNFとBMP−4、BDNFとエオタキシ ンー2、BDNFとIGFBP−2、BDNFとTARC、BDNFとANG、BDNFとPARC、BDNFとAcrp30、BDNFとAgRP(ART)、BDNFとICAM−1、BDNFとTRAIL R3、BDNFとuPAR、BDNFとIGFBP−4、BDNFとIL−1Ra、BDNFとAXL、BDNFとFGF−4、BDNFとCNTF、BDNFとMCP−1、BDNFとMIP1b、BDNFとVEGF−B、BDNFとIL−8、BDNFとFAS、そしてBDNFとEGF−R)を含む。
(ADバイオマーカーレベルの測定)
サブセット間で著しく変動するバイオマーカーを同定する統計的試験は一般的t検定を含めて多数ある。しかし、測定するバイオマーカーの数が増えるにつれて、SAMのようなより複雑な方法を使用するのが一般的に有益である(Tusherら,2001,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98(9):5116−21)。その他の有用な方法としてはツリーハーベスティング(Hastieら,Genome Biology 2001,2:research0003.1−0003.12)、自己組織化マップ(Kohonen,1982b,Biological Cybernetics 43(1):59−69)、頻出アイテムセット(Agrawalら,1993「Mining association rules between sets of items in large databases.」In Proc.of the ACM SIGMOD Conference on Management of Data,207−216ページ,Washington,D.C.,1993年5月)、ベイジアンネットワーク(Gottardo,Statistical analysis of microarray data,A Bayesian approach.Biostatistics(2001),1,1,pp1−37)、および一般に使用できるソフトウエアパッケージ類、CARTおよびMARSなどがある。
SAM法は反復測定値の標準偏差に対する発現の変化に基づいて各バイオマーカーにスコアを割り当てる。調節可能の閾値よりも高いスコアを有するバイオマーカーでは、アルゴリズムにより上記反復測定値の組み合せを使用して、特定のバイオマーカーが偶然に同定される確率(「q値」として計算される)、または精度の測定のために使用される偽陽性率が推定される。SAM法はマイクロアレイの有意性分析と呼ばれる一般に手に入るソフトウエアを用いて行うことができる(www−stat class.stanford.edu/−〜tibs/clickwrap/sam.htmlを参照のこと)。
バイオマーカーが、試験された末梢性の生物学的サンプルのサブセット間で有意に異なるとき、そのバイオマーカーは神経学的疾患の診断において補助し、神経学的疾患を診断し、階層化し、モニターし、および/または予測するのに有用であることが「同定された」と見なされる。バイオマーカーのレベルは、上記特定のバイオマーカーが偶然に同定される確率があらかじめ決められた数値より低い場合に「有意に異なる」。このような確率の計算法はサブセット間のレベルを比較するために用いる正確な方法に依存する(例えばSAMを用いる場合、q値は誤同定の確率を与え、p値はt検定(または同様な統計分析)を使用する場合の確率を与えると考えられる)。当業者には明らかなように、あらかじめ決められた数値はサンプルごとに測定するバイオマーカーの数および使用するサンプルの数に依存して変化する。したがって、あらかじめ決められた数値は50%と高いレベルから20、10、5、3、2または1%と低いレベルまでの範囲になる。
本明細書に記載されるように、少なくとも1種のAD診断バイオマーカーのレベルを個体由来の生物学的サンプルで測定する。そのADバイオマーカーレベルは、生物学的サンプル中の上記ADバイオマーカーのレベルを特異的に決定することができる任意の使用可能の測定法を用いて測定できる。上記測定が、上記末梢性の生物学的流体サンプル中のADバイオマーカーレベルが参照値より高いか低いかを決めることができる限り、その測定は定量的でも定性的でもよい。
測定されたレベルは、特定のバイオマーカーのレベルの一次測定値(バイオマーカーそのものの量の測定(実施例7におけるような定量的データ)、例えばサンプル中のバイオマーカー分子数の検出によるもの)でもよいし、上記バイオマーカーの二次測定値(上記バイオマーカーの量を必ずしも導き出さない測定値(実施例4におけるような定性的データ)、例えば酵素活性の測定された値(バイオマーカーが酵素である場合)または上記バイオマーカーをコードするmRNAの測定値など)でもよい。定性的データはまた、一次測定から誘導されても、一次測定から得られてもよい。
いくつかのアッセイフォーマットでは末梢性の生物学的流体サンプルを前処理せずに試験することができるとはいえ、大部分の末梢性の生物学的流体サンプルは試験の前に処理することが期待される。処理は、一般に、細胞(有核および無核)、例えば血液中の赤血球、白血球、および血小板などの除去の形態をとり、そしていくつかの凝固カスケードタンパク質などの特定のタンパク質を血液から除去することも含み得る。いくつかの実施例において、末梢性の生物学的流体サンプルはEDTAを含む容器に集められる。さらなるサンプル回収手順については、実施例12を参照のこと。一般に、ADバイオマーカーレベルは、親和性をベースにする測定技術を用いて測定される。抗体に関係する「親和性」とは当業者には十分理解されている用語であり、抗体が結合パートナー、例えば本明細書に記載されるAD診断バイオマーカーなど(またはそのエピトープ)に結合する程度または強度を意味する。親和性は当業者に公知の多くの方法によって測定および/または表現され、その方法としては、平衡解離定数(KDまたはKd)、見かけ平衡解離定数(KD’またはKd’)、およびIC50(競合アッセイにおいて50%阻害を起こすのに必要な量;本明細書では「I50」と交換可能に用いられる)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の目的に関して、親和性はエピトープに結合する抗体の所定の集団に対する平均親和性であることが、理解される。本明細書においてmlあたりmg IgGまたはmg/mlの表現で報告されるKD’の値は、血清(血漿も使用できる)mlあたりのmg Igを示す。
親和性ベースの測定技術は測定すべきADバイオマーカーに特異的に結合する分子(抗体またはアプタマーなどの「親和性試薬」)を利用する。ただしその他の方法、例えば、分光法ベースの技術(例えばマトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型、またはMALDI−TOF、分光法)または生体活性を測定するアッセイ(例えば、増殖因子の有糸分裂誘発性を測定するアッセイなど)を使用してもよい。
親和性ベースの技術には抗体ベースのアッセイ(イムノアッセイ)およびアプタマー(他の分子に特異的に結合する核酸分子)を使用するアッセイ(例えば、ELONA)がある。さらに、抗体とアプタマーとを両方使用するアッセイも、企図される(例えば、捕捉のための抗体と検出のためのアプタマーとを利用するサンドイッチフォーマットアッセイ)。
イムノアッセイ技術を使用する場合、生物学的サンプル中のADバイオマーカーレベルを定量的または定性的に測定できる任意のイムノアッセイ法が使用できる。適切なイムノアッセイ法にはラジオイムノアッセイ、免疫蛍光アッセイ、酵素イムノアッセイ、化学発光アッセイ、ELISA、免疫−PCR、およびウェスタンブロットアッセイなどがある。
同様に、生物学的サンプル中のADバイオマーカーレベルを定量的または定性的に測定できるアプタマーベースのアッセイが本発明の方法に使用できる。概して、アプタマーは、イムノアッセイのほとんど全てのフォーマットにおいて抗体の代わりとなり得るが、アプタマーはその他のアッセイフォーマット(例えば、PCRのような核酸増幅技術(米国特許第4,683,202号)または複合プライマーを用いる等温的増幅(米国特許第6,251,639号および同第6,692,918号)など)も可能である。
広範な種々の親和性ベースのアッセイが、当該分野で公知である。親和性ベースのアッセイは、目的のADバイオマーカーから誘導される少なくとも1種のエピトープを利用し、多くの親和性ベースのアッセイフォーマットは、1種より多くのエピトープを利用する(例えば「サンドイッチ」フォーマットアッセイには2つ以上のエピトープが関与する;少なくとも1種のエピトープを用いて上記マーカーを捕捉し、少なくとも1種の別のエピトープを用いてそのマーカーを検出する)。
親和性ベースのアッセイは競合フォーマットまたは直接反応フォーマットにおいてサンドイッチ型フォーマットを利用することができ、さらに不均質(例えば、固体支持体を使用する)または均質(例えば単一相にあらわれる)でもよく、そして/または免疫沈降を利用することができる。大部分のアッセイは、標識化親和性試薬(例えば、抗体、ポリペプチド、またはアプタマー)の使用を含む;上記標識は、例えば、酵素分子、蛍光分子、化学発光分子、放射性分子または色素分子であり得る。プローブからのシグナルを増幅するアッセイもまた、公知である;その例は、ビオチンとアビジンを使用するアッセイ、および酵素標識イムノアッセイおよび酵素媒介性イムノアッセイ(例えば、ELISAアッセイおよびELONAアッセイ)である。本明細書において、「定量的データ」について参照される実施例では、バイオマーカー濃度は、ELISAを用いて得られた。バイオマーカーまたはそのバイオマーカーに特異的な試薬のいずれかが、ある表面に結合することができ、レベルを直接または間接的に測定できる。
不均質フォーマットにおいて、上記アッセイは二相(一般的には水性液および固体)を使用する。代表的に、ADバイオマーカーに特異的な親和性試薬は固体支持体に結合し、生物学的サンプルの塊からADバイオマーカーを容易に分離させる。親和性試薬/ADバイオマーカー複合体を形成させるのに十分な時間反応させた後、代表的に、上記抗体を含む固体支持体または表面を洗い、その後、結合したポリペプチドを検出する。ADバイオマーカーを測定するアッセイにおいて親和性試薬を支持体(固体または半固体)上に提供することができるか、あるいは、上記サンプル中のポリペプチドを支持体または表面に固定することもできる。使用できる支持体の例は、ニトロセルロース(例えば、膜またはマイクロタイターウェル形態)、ポリ塩化ビニル(例えばシートまたはマイクロタイターウェル)、ポリスチレンラテックス(例えばビーズまたはマイクロタイタープレート)、ポリフッ化ビニリデン、ジアゾ化紙、ナイロン膜、活性化ビーズ、ガラスおよびプロテインAビーズなどである。これらのアッセイのための標準的フォーマットおよび競合的フォーマットは、当該分野において公知である。したがって、少なくとも1種のAD診断バイオマーカーに特異的な試薬に結合したそのバイオマーカーを含む複合体が、ここに提供され、その試薬は、表面に結合している。また、少なくとも1種のAD診断バイオマーカーに特異的な試薬に結合したそのバイオマーカーを含む複合体であって、そのバイオマーカーが表面に結合している上記複合体も提供される。
本発明の方法を複数のADバイオマーカーを使用して実施する場合、アレイ型不均質アッセイは、ADバイオマーカーレベルを測定するのに適切である。本発明の方法の実施において使用するアレイ型アッセイは一般には固体基材と、あらかじめ決められたパターン(例えば格子)で上記基材に結合する異なるADバイオマーカーに特異的な2つ以上の捕捉試薬とを使用する。末梢性の生物学的流体サンプルが上記基材に塗布され、サンプル中のADバイオマーカーは上記捕捉試薬によって結合される。サンプルの除去(および適切な洗浄)後、結合したADバイオマーカーを、種々のADバイオマーカーに特異的に結合する適切な検出試薬の混合物を使用して検出する。検出試薬の結合は蛍光色素をベースとするシステムなどの視覚的システムを用いて行われる。その捕捉試薬はあらかじめ決められたパターンで基材上に配置されるので、アレイ型アッセイはマルチプレックス検出システムを必要とせずに複数のADバイオマーカーを検出するという利点を与える。
均質フォーマットにおいては、上記アッセイは単一相(例えば、水性液相)で行われる。代表的に、生物学的サンプルを、ADバイオマーカーに特異的な親和性試薬と一緒に溶液中でインキュベートする。例えば、それは、形成される任意の親和性試薬/抗体複合体を沈殿する条件下にあり得る。これらのアッセイのための標準的フォーマットおよび競合的フォーマットの両方は、当該分野で公知である。
標準的(直接反応)フォーマットにおいて、ADバイオマーカー/親和性試薬複合体のレベルを直接モニターする。これは、例えば、ADバイオマーカー/親和性試薬複合体に結合されている標識された検出試薬の量を測定することによって達成され得る。競合的フォーマットにおいて、サンプル中のADバイオマーカー量は、複合体中の既知量の標識ADバイオマーカー(例えばその他の競合するリガンド)の結合に与える競合的効果をモニターすることによって推測される。結合または複合体形成の量は、定性的または定量的に測定できる。
この特許に記載される方法は、これらの方法を実施できる任意のデバイスを用いて実施できる。使用できるデバイスの例としては、あらゆる型のコンピューターを含む電気的コンピューターデバイスが挙げられるが、これに限定されない。この特許に記載される方法がコンピューターで実施されるとき、これらの方法の工程を行うためのコンピューターを構成するために使用できるコンピュータープログラムは、そのコンピュータープログラムを含むことができる任意のコンピューター読み取り可能媒体に含まれる。使用できるコンピューター読み取り可能媒体の例としては、ディスケット、CD−ROM、DVD、ROM、RAM、およびその他のメモリーならびにコンピューター保存デバイスが挙げられるが、これらに限定されない。本方法の工程を実施するためのコンピューターを構成するために使用できるコンピュータープログラムは電気的ネットワーク、例えば、インターネット、ワールドワイドウェブ、イントラネットまたはその他のネットワークによって提供され得る。
一実施例において、この特許に記載される方法はプロセッサーおよびコンピューター読み取り可能媒体を含むシステムにおいて実施され得る。上記コンピューター読み取り可能媒体は上記システムにこの特許に記載される方法の工程を行わせるためのプログラムコード手段を含む。プロセッサーは、上記方法を実施するために必要な操作を行うことができる任意のプロセッサーであり得る。プログラムコード手段は、上記システムで実施することによりそのシステムが本特許に記載の工程を行うことができる任意のコードであり得る。プログラムコード手段の例としては、C++、Java(登録商標)、またはフォルトランなどの高レベルのコンピューター言語で書かれた、本特許記載の方法を実施するための説明資料;アセンブリー言語のような低レベルのコンピューター言語で書かれた、本特許記載の方法を実施するための説明資料;またはコンパイルおよびリンクされた機械言語のようなコンピューター実行可能な形態における、本特許に記載の方法を行うための説明資料が挙げられるが、これらに限定されない。
ADバイオマーカーと親和性試薬を含んで形成される複合体は、そのアッセイフォーマットおよび使用者の好みに依存して、当業者に公知の多数の方法のいずれかによって検出できる。例えば、標識されていない親和性試薬はDNA増幅技術(例えば、アプタマーおよびDNA標識抗体のためのもの)または上記親和性試薬に結合する標識「二次抗体」で検出できる。あるいは、親和性試薬が、標識され得、そして複合体の量を直接的(色素(蛍光または可視)標識された親和性試薬、ビーズ標識された親和性試薬、または酵素標識された親和性試薬に対して)または間接的(ビオチン、発現タグなどで「タグを付けた」親和性試薬に対して)に測定してもよい。本明細書において化学発光を用いる「定性的データ」フィルターベースの抗体アレイとして提供される実施例を用いて、バイオマーカーの測定値を得ることができた。
当業者によって理解されるように、シグナルの検出モードは、そのアッセイで使用する正確な検出システムに依存する。例えば、放射性検出試薬を用いる場合、シグナルは生物学的サンプルからのシグナルを定量でき、生物学的サンプルからのそのシグナルを参照サンプルからのシグナルと比較できる技術、例えばシンチレーションカウンティング、オートラジオグラフィー(代表的に、走査濃度計と連結している)などを使用して測定される。化学発光体検出システムを用いる場合、上記シグナルは、代表的に、ルミノメータを用いて検出される。検出システムからのシグナルを検出する方法は、当該分野において周知であり、ここでさらに記載する必要はない。
1種類より多いADバイオマーカーを測定する場合、生物学的サンプルは多数のアリコートに分けられ、別個のアリコートを用いて異なるADバイオマーカーを測定する(ただし、ある特定サンプル中のADバイオマーカーのレベルを複数測定できるように、生物学的サンプルを多数のアリコートに分割することも、企図される)。あるいは、生物学的サンプル(またはそれから得られるアリコート)を試験して、異なるADバイオマーカーの個々のレベルを、1回の分析試験、例えば、アレイ型アッセイまたはマルチプレックス検出法を用いるアッセイ(例えば、異なる蛍光色素マーカーで標識した検出試薬を使用するアッセイなど)で測定できるアッセイを用い、単一反応で複数のADバイオマーカーのレベルを測定することができる。
バイオマーカーを測定する場合「反復」測定を行うことは、当該分野において一般的である。反復測定はサンプルを複数のアリコートに分割し、同じアッセイ系の別々の反応でバイオマーカーを別々に測定することによって得るのが普通である。反復測定は本発明の方法には必ずしも必要でないが、本発明の多くの実施形態は反復試験(特に、二重の試験および三重の試験)を行う。
(参照レベル)
あるADバイオマーカーについて測定されたレベルと比較するために使用する参照レベルは前述の議論から明らかなように、実施する発明の局面に依存して変化し得る。AD診断法では、「参照レベル」は、代表的に、あらかじめ決められた参照レベル、例えばADまたはMCIに罹っていない集団から得られる平均レベルであるが、いくつかの例では、参照レベルは、AD患者を含む個体群の平均または中間レベルであり得る。いくつかの例において、あらかじめ決められた参照レベルは、年齢をマッチングさせている集団から得られるレベルから誘導される(例えば平均値または中央値)。本明細書中に開示されるいくつかの例において、年齢をマッチングさせている集団は、非AD神経変性障害を有する個体を含む。実施例11および実施例12を参照のこと。
MCI診断法(すなわちMCIを診断する方法またはMCIの診断において補助する方法)では、参照レベルは、代表的に、ADまたはMCIに罹っていない集団から得られる平均レベルなどのあらかじめ決められた参照レベルであるが、いくつかの例では参照レベルはMCIおよび/またはAD患者を含む個体群からの平均または中間レベルであり得る。いくつかの例において、あらかじめ決められた参照レベルは年齢をマッチングさせている集団から得られるレベルから誘導される(例えばこれらレベルのまたは中間レベル)。
ADモニタリング法(例えば、AD患者のAD進行を診断する方法、またはAD進行の診断において補助する方法)では、参照レベルはADまたはMCIにかかっていない集団およびMCIまたはADと診断された集団から得られる平均レベルなどのあらかじめ決められたレベルでよく、いくつかの場合では、参照レベルは、MCIおよび/またはAD患者を含む個体群からの平均または中間レベルでよい。あるいは、参照レベルは特定の患者の歴史的参照レベルでよい(例えば、同じ個体に由来するサンプルからであるが、より早い時点で得られたレプチンレベル)。いくつかの場合において、あらかじめ決められたレベルは年齢をマッチングさせている集団から得られるレベルから誘導される(例えば平均または中央値)。
ADの階層化法(すなわちAD患者を軽度、中程度および重症のAD期に分類する方法)では、参照レベルは通常、ADまたはMCIと診断された集団(より好ましくはADと診断された集団)からの平均または中間レベルであるあらかじめ決められた参照レベルである。いくつかの場合において、あらかじめ決められた参照レベルは年齢をマッチングさせている年齢がマッチした集団から得られるレベルから誘導される(例えば平均または中央値)。
年齢をマッチングさせている集団(この集団から参照値が得られる)は試験すべき個体と同じ年齢であるのが理想的であるが、ほぼ年齢をマッチングさせている集団も容認される。ほぼ年齢をマッチングさせている集団は、試験される被験体の年齢から1、2、3、4または5歳以内の個体でよい。ほぼ年齢をマッチングさせている集団は、2、3、4、5、6、7、8、9、または10年以内の増加分でよい(例えば62歳の個体のための参照値の供給源として役立つ「5年増加」群は、58〜62歳の個体群、59〜63歳の個体群、60〜64歳の個体群、61〜65歳の個体群または62〜66歳の個体群を含み得る)。
(ADバイオマーカーのレベルの比較)
測定された値および参照値を比較するプロセスは、問題のADバイオマーカーの測定された値および参照値の型に適した任意の都合のよい方法で行うことができる。上で考察されるように、「測定すること」は定量的または定性的測定法によって行われ、測定された値と参照値を比較する方法は使用する測定技術に依存して変わり得る。例えば定性的比色アッセイを用いてADバイオマーカーレベルを測定する場合、それらのレベルは、着色した反応産物の強度を視覚的に比較することによってか、または着色した反応産物の濃度測定または分光測定からのデータ(測定デバイスから得られる、例えば、棒チャートなどの数字的データまたはグラフ的データ)を比較することによって比較できる。しかし、本発明の方法に使用される測定された値は最も一般的には定量的数値(例えばサンプル1ミリリットルあたりのADバイオマーカーのナノグラム、または絶対量などの定量的濃度測定値)である。他の例において、測定された値は、定性的である。定性的測定に関しては比較は数字的データの検査、データ表示の検査によって(例えば、棒グラフまたは線グラフのようなグラフ的表現を検査することによって)行うことができる。
測定された値が参照値の少なくとも95%である場合、一般に、その測定された値は参照値と比較して実質的に等しいか、またはより大きいと見なされる(例えば1.71の測定された値は、1.80の参照値に実質的に等しいと見なされる)。測定された値が参照値の95%未満である場合、その測定された値は参照値より小さいと見なされる(例えば、測定された値1.7は参照値1.80より小さいと見なされる)。測定された値が参照値よりも少なくとも5%大きい場合、その測定された値は参照値よりも大きいと見なされる(例えば、測定された値1.89は参照値1.80よりも大きいと見なされる)。
比較するためのプロセスは、手動(方法の実施者による視覚的検査)でもよいし、自動自動化されていてもよい。例えばアッセイデバイス(化学発光体シグナルを測定するためのルミノメータなど)はあるADバイオマーカーの測定された値と参照値との比較を可能にする回路およびソフトウェアを含むことができる。あるいは、別のデバイス(例えば、デジタルコンピューター)を使用して測定された値と参照値とを比較することができる。比較のための自動化デバイスは測定すべきADバイオマーカーの保存された参照値を含むことができ、または上記測定された値を、同時に測定した参照サンプルから得られる参照値と比較することができる。
いくつかの実施形態において、本発明の方法は測定されたレベルと参照レベルとの間の「単純(simple)」比較または「二元(binary)」比較を用いる(例えば、測定されたレベルと参照レベルとの間の比較は、測定されたレベルが参照レベルより高いかまたは低いかを決定する)。AD診断バイオマーカーについて、上記バイオマーカーの測定された値が参照値より低いことを示す比較は、ADの診断を示すか、またはそれを示唆する。MCIの診断に関する方法では、RANTESの測定された値が参照値より低いことを示す比較は、ADの診断を示すか、またはそれを示唆する。さらにレプチンの測定された値を利用するMCI診断に関する実施形態において、RANTESが参照値より低い一方で、レプチンが参照レベルに実質的に等しいかまたは参照レベルより大きいことを示す比較は、MCIの診断を示唆するか、またはそれを示す。
本明細書中に記載されるように、生物学的流体サンプルは、定量的(絶対値)または定性的(相対値)に測定され得る。所定の評価のための関連するADバイオマーカーレベルは重複してもよいし、しなくてもよい。本明細書中に記載されるように、いくつかの実施形態では、定性的データは認識障害の所定のレベル(軽度、中程度または重症のAD)(それはMMSEスコアによって測定できる)を示し、他の実施形態では、定量的データが認識障害の所定のレベルを示す。実施例4および実施例4に与えられる条件下(定性的データ)で示されるように、ADの階層化に関する実施形態において、参照レベルより低いBDNFレベルを示す比較は軽度ADを示唆するか、またはそれを示し、その一方で参照レベルより高いBDNFレベルを示す比較は、より進行したAD(すなわち中程度または重症のAD)を示唆し、参照レベルより高いBDNFレベルを有するサンプルの間で、参照レベルを下回るPDGF−BBレベルも有するものは中程度ADを示唆するか、またはそれを示し、その一方で参照レベルを上回るPDGF−BBレベルも有するサンプルは重症ADを示唆するか、またはそれを示す。実施例7に示されるようなADの階層化に関する実施形態において(定量的データ)、参照レベルより低いBDNFレベルを示し、その参照レベルが正常である場合の比較は軽度ADを示唆するか、またはそれを示し、その一方で、参照レベルより低いBDNFレベルを示し、その際その参照レベルが軽度ADからのものであるという比較はより進んだAD(すなわち中程度、重症のAD)を示唆し、その一方で参照レベルと等しいレプチンレベルを有するサンプルであって、その参照レベルが、参照レベルを下回るRANTESレベルを有する軽度ADからのものであるという比較は中程度ADを示唆するか、またはそれを示し、その一方で参照レベルに等しいレプチンレベルを有するサンプルであって、その参照レベルが、参照レベルより低いPDGF−BB、RANTESまたはBDNFレベルを有する中程度ADからのものであるという比較は、重症ADを示唆するか、またはそれを示す。
しかし、本発明の特定の局面において、上記比較は測定された値と参照値との間の差の大きさ(例えば測定された値と参照値との間の差の「倍数」またはパーセンテージ)を決定するために行われる。本明細書に開示される最小倍数差にほぼ等しいかまたはより大きい倍数差は、実施する特定の方法に即して、AD、MCI、MCIからADへの進行、または軽度ADから中程度ADへの進行を示唆するか、またはそれを示す。倍数差はタンパク質の絶対濃度を測定し、それを参照の絶対値と比較することによって測定できる。または倍数差は参照値とサンプル値との間の相対的差によって測定でき、その際いずれの数値も絶対濃度の測定値でなく、そして/または、両方の数値が同時に測定される。倍数差は10%〜95%の範囲にある。ELISAは、タンパク質の絶対含有量または絶対濃度が測定され、それらから変化倍数が標準としての同じタンパク質の絶対濃度に比較して決定される。抗体アレイは相対的濃度を測定し、それから変化倍数が決定される。したがって、特定の診断を示唆するか、またはそれを示す測定された値と参照値との間の差の大きさは、測定された値および使用する参照値を得るために測定される特定のADバイオマーカーに依存すると考えられる(使用する参照値自体、使用する方法に依存する)。表2A〜2Bには、測定された値と参照値とを比較する際に倍数差を利用する本発明の方法に使用するADバイオマーカーの最小倍数差が列挙される。倍数差の値を利用する実施形態において、表2Aに示される倍数差周辺の倍数差は、ADの診断を示唆し、その際、変化倍数は負の値である。例えば、本明細書に記載されるように、BDNFレベル(ELISAによって測定される場合)は、軽度ADを有するAD患者では減少し、ADの重症度が増すにつれてBDNFレベルは減少する。表6に示すように、−46%のBDNF変化倍数はBDNFレベルの46%の減少を意味する。表2Aに示すように、抗体を使用する定性的測定では、0.60のBDNF変化倍数は、BDNFレベルの60%の減少を意味する。表2Bは、変化倍数に関するさらなる情報を提供する。
当業者に明らかであるように、試験されるバイオマーカーの反復測定を行う場合、参照値と比較される測定された値は、上記反復測定値を考慮に入れた値である。反復測定値は、測定された値の平均または中央値のいずれかを「測定された値」として使用することによって考慮に入れることができる。
(ADバイオマーカー調節活性のための有望な薬剤のスクリーニング)
本発明は、ADバイオマーカー調節活性のための有望な候補薬剤をアッセイすることによってADおよび/またはMCIを処置する候補薬剤をスクリーニングする方法も提供する。上記スクリーニングアッセイは、インビトロおよび/またはインビボで行われる。本明細書に記載されるスクリーニング法によって同定される候補薬剤は、ADおよび/またはMCIを処置する治療剤として有用であると考えられる。
本発明のスクリーニング法は、本明細書中に記載されるADバイオマーカーと、「薬物標的」としてのADバイオマーカーポリヌクレオチドを使用する。有望な薬剤は、アッセイ系における薬物標的を調節する活性を試験する。当業者によって理解されるように、活性の調節に関する試験の様式は、使用するADバイオマーカーおよび薬物標的の形態(例えば、タンパク質または遺伝子)に依存する。広範な種々の適切なアッセイが、当該分野で公知である。
ADバイオマーカータンパク質そのものが薬物標的である場合、上記タンパク質自体のレベルまたは活性を調節する活性について、上記有望な薬剤を試験する。ADバイオマーカーのレベルの調節は、例えば、そのバイオマーカータンパク質の半減期の増加または減少によって達成できる。ADバイオマーカーの活性の調節は、上記ADバイオマーカーの、その同種のレセプターまたはリガンドへの結合可能性を増加または減少させることによって達成できる。
ADバイオマーカーポリヌクレオチドが薬物標的である場合、上記ADバイオマーカーの合成を調節する活性について上記有望な薬剤を試験する。有望な作用物質の調節活性を試験する正確な様式は、当然に、試験のために選ばれたADバイオマーカーポリヌクレオチドの形態に依存する。例えば、薬物標的がADバイオマーカーポリヌクレオチドである場合、調節活性は、代表的に、遺伝子から転写されるmRNAの測定(転写調節)またはこのような転写の結果として生成するタンパク質の測定(翻訳調節)のいずれかによって試験される。当業者によって理解されるように、多くのアッセイフォーマットは、(例えば、酵素のような発現マーカーまたはオリゴ−ヒスチジンのような発現タグまたはmycのようなまた別のタンパク質に由来する配列をコードする)異種配列がADバイオマーカータンパク質をコードする配列に融合される(または取って代わることさえある)ADバイオマーカーの前記改変形態が使用される。このような異種配列は、上記薬物標的から転写されるタンパク質レベルの都合のよい検出を可能にする。
本発明のスクリーニング法に使用する有望な薬剤は、有機分子および無機分子の両方(およびそれらの複合体)を含むあらゆる種類の化合物および/または複合体でよい。当該分野において理解されるように、ADバイオマーカー調節活性のスクリーニングが最も一般的に行われるのは有機分子である。いくつかの状況において、標的ADバイオマーカータンパク質は、試験のために有望な薬剤からは除外される。
スクリーニングアッセイは、当該分野で公知の任意のフォーマットであり得、そのフォーマットとしては、無細胞インビボアッセイ、細胞培養アッセイ、器官培養アッセイ、およびインビボアッセイ(すなわちADおよびMCIの動物モデルを使用するアッセイ)が挙げられる。したがって、本発明は、有望な薬剤をスクリーニングし、ADおよび/またはMCIを処置するための候補薬剤を同定する種々の実施形態を提供する。
いくつかの実施形態において、無細胞アッセイで有望な薬剤をスクリーニングし、ADおよび/またはMCIを処置するための候補薬剤を同定する。有望な各薬剤を無細胞環境において上記薬物標的と共にインキュベートし、ADバイオマーカーの調節を測定する。本発明の方法のスクリーニングに有用な無細胞環境は、細胞溶解物(薬物標的がADバイオマーカー遺伝子である場合に、特に有用である)および生物学的流体(例えば、全血、またはそれから誘導される血漿および血清などの分画された流体(ADバイオマーカータンパク質が薬物標的である場合に、特に有用である)を含む。薬物標的がADバイオマーカー遺伝子である場合、測定された調節は、転写または翻訳の調節であり得る。薬物標的がADバイオマーカータンパク質である場合、上記調節は上記タンパク質の半減期または上記ADバイオマーカータンパク質の、その同種のレセプターまたはリガンドに対する結合可能性の調節であり得る。
他の実施形態において、有望な薬剤をスクリーニングして、ADおよび/またはMCIを処置する候補薬剤を、細胞ベースのアッセイによって同定する。有望な各薬剤を培養細胞と共にインキュベートし、標的ADバイオマーカーの調節を測定する。特定の実施形態において、培養する細胞は星状膠細胞、神経細胞(海馬ニューロンなど)、線維芽細胞、またはグリア細胞である。薬物標的がADバイオマーカー遺伝子である場合、転写または翻訳の調節が測定され得る。薬物標的がADバイオマーカータンパク質である場合、そのADバイオマーカータンパク質も上記アッセイ混合物に添加され、そのタンパク質の半減期の調節または上記ADバイオマーカータンパク質のその同種レセプターまたはリガンドへの結合可能性の調節が、測定される。
さらなる実施形態は、有望な薬剤をスクリーニングしてADおよび/またはMCIを処置するための候補薬剤を、器官培養ベースのアッセイで同定することに関する。このフォーマットにおいて、有望な各薬剤を非ヒト動物に由来する器官全体または器官の一部(例えば、脳切片などの脳組織の一部)のいずれかと共にインキュベートし、標的ADバイオマーカーの調節を測定する。薬物標的がADバイオマーカー遺伝子である場合、転写または翻訳の調節が測定される。薬物標的がADバイオマーカータンパク質である場合、そのADバイオマーカータンパク質も上記アッセイ混合物に加えられ、上記タンパク質の半減期の調節またはADバイオマーカータンパク質の、その同種レセプターへの結合可能性の調節が、測定される。
さらなる実施形態は有望な薬剤をスクリーニングして、インビボアッセイに用いるADおよび/またはMCIの処置のための候補薬剤を同定することに関係する。このフォーマットにおいて、有望な各薬剤を非ヒト動物に投与し、標的ADバイオマーカーの調節を測定する。特定の薬物標的ならびに取り組むべきADおよび/またはMCIの局面に依存して、このようなアッセイに使用する動物は「正常」動物(例えばC57マウス)またはADまたは、MCIのモデルである動物のどちらでもよい。ADの多数の動物モデルが、当該分野で公知であり、その動物モデルとしては、3xTg−ADマウス(Caccamoら,2003,Neuron 39(3):409−21)、ヒトアミロイドβ前駆体タンパク質(APP)およびプレセニリン遺伝子を発現するマウス(Westawayら,1997,Nat.Med.3(1):67−72)およびその他のもの(Higginsら,2003、Behav.Pharmacol.14(5−6):419−38を参照)が挙げられる。薬物標的がADバイオマーカー遺伝子である場合、転写または翻訳の調節が測定される。薬物標的がADバイオマーカータンパク質である場合、上記標的ADバイオマーカーの半減期の調節またはADバイオマーカータンパク質の、その同種レセプターまたはリガンドへの結合可能性の調節が、測定される。標的ADバイオマーカーの調節を測定する正確な様式は、当然に、上記ADバイオマーカーの同一性、アッセイフォーマット、および実施者による選択に依存する。転写、翻訳、タンパク質半減期、タンパク質の利用性および、測定できるその他の局面の調節を測定するための広範な種々の方法が、当該分野で公知である。これらの方法の一般的知識を考慮すると、それらは、本明細書中でさらに記載される必要はない。
(キット)
本発明は、本明細書に記載される任意の方法を実施するためのキットを提供する。本発明のキットはADバイオマーカーに特異的な少なくとも1種の試薬を備え得、さらに本明細書に記載の方法を実施するための説明書を備え得る。キットはADバイオマーカーの参照サンプル(すなわち、参照値として有用である)も含むことができる。キットは、任意のバイオマーカーおよび/または本明細書中に記載されるようなバイオマーカーのセットを備える。本明細書に記載されるキットに使用するための「AD診断マーカー」としては、GCSF;IFN−g;IGFBP−1;BMP−6;BMP−4;エオタキシン−2;IGFBP−2;TARC;RANTES;ANG;PARC;Acrp30;AgRP(ART);TIMP−1;TIMP−2;ICAM−1;TRAIL R3;uPAR;IGFBP−4;レプチン(OB);PDGF−BB;EGF;BDNF;NT−3;NAP−2;IL−1ra;MSP−a;SCF;TGF−b3;TNF−b;MIP−1d;IL−3;FGF−6;IL−6R;sTNF RII;AXL;bFGF;FGF−4;CNTF;MCP−1;MIP−1b;TPO;VEGF−B;IL−8;FAS;EGF−Rが挙げられるが、これらに限定されない。他の例において、本明細書中に記載されるキットに使用するための「AD診断バイオマーカー」としては、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF);BBホモダイマー血小板由来増殖因子(PDGF−BB);脳由来神経栄養因子(BDNF);上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子6(FGF−6)、インターロイキン−3(IL−3)、可溶性インターロイキン−6レセプター(sIL−6R)、レプチン(obとしても公知である)、マクロファージ炎症性タンパク質−1δ(MIP−1δ)、マクロファージ刺激タンパク質α鎖(MSP−α)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)、RANTES、可溶性腫瘍壊死因子レセプター−2(sTNF RII)、幹細胞因子(SCF)、トロンボポイエチン(TPO)、組織性メタロプロテアーゼインヒビタ−1(TIMP−1)、組織性メタロプロテアーゼインヒビタ−2(TIMP−2)、トランスフォーミング増殖因子−β3(TGF−β3)、腫瘍壊死因子β(TGF−β)が挙げられるが、これらに限定されない。他の例において、キットはAD診断マーカー;レプチン、RANTES、PDFG−BBおよびBDNFの任意の1、2、3または4種類を備える。他の例において、本明細書中に記載されるキットに使用するための「AD診断バイオマーカー」としては、年齢をマッチングさせている正常コントロールに加えて例えばPDおよびPNなどの神経変性の他の非AD形態と比較される(すなわち、全てのコントロールと比較される)場合にADにおいて有意に増加(9A1〜9A2)または減少(9B)する、表9A1〜9A2および表9Bにおいて列挙されるバイオマーカーからなる群より選択される少なくとも1種のバイオマーカーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例において、表9A1〜9A2および表9Bに列挙されるバイオマーカーのうちの任意の1種以上(すなわち、そのバイオマーカーに特異的な試薬である)は、本明細書中に開示されるような方法(例えば、ADを診断するため、または例えばPDおよびPNなどの他の非AD神経変性疾患または非AD神経変性障害と区別してADを診断するための方法を含む)に使用するためのキットにおいて使用され得る。
表10A1〜10A2および表10Bは、健康な年齢をマッチングさせているコントロールと比較した場合にADにおいて有意に増加(10A1〜10A2)または減少(10B)するバイオマーカーのリストを提供する。表10A1〜10A2および表10Bに列挙されるバイオマーカーのうちの任意の1種以上(すなわち、そのバイオマーカーに特異的な試薬である)は、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示される方法に使用するためのキットにおいて使用され得る。いくつかの例において、0.05以下のp値(または5.00以下のq値(%))を有するバイオマーカーは、ADの診断において補助するため、またはADを診断するための本明細書中に開示される方法において使用するために選択される。表11A1〜11A2および表11Bは、年齢をマッチングさせている変性コントロールと比較した場合にADにおいて有意に増加(11A1〜11A2)または減少(11B)するバイオマーカーのリストを提供する。表11A1〜11A2および表11Bに列挙されるバイオマーカーのうちの任意の1種以上(すなわち、そのバイオマーカーに特異的な試薬である)は、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示される方法に使用するためのキットにおいて使用され得る。
表12A〜12Bは、年齢をマッチングさせているコントロールを参照して、ADに加えて他のAD神経変性コントロールにおいて有意に増加(12A)または減少(12B)するバイオマーカーのリストを提供する。表12A〜12Bに列挙されるバイオマーカーのうちの任意の1種以上(すなわち、そのバイオマーカーに特異的な試薬である)は、例えば、神経変性疾患(ADを含む)の診断において補助するため、または神経変性疾患を診断するためのような本明細書中に開示される方法に使用するためのキットにおいて使用され得る。さらなる例において、キットは、リンホタクチンおよび/またはIL−11に特異的な試薬;ならびに/あるいはBTC;SDF−1;MCP−2;IFN−γ;IGFBP−4;IGF−1SR;IL−8;GM−CSF;および/またはANG−2に特異的な試薬;ならびに/あるいはIFN−γおよび/またはIL−8に特異的な試薬、ならびに/あるいはsTNF RII;MSP−α;uPAR;TPO;MIP−1β;VEGF−β;FAS;MCP−1;NAP−2;ICAM−1;TRAIL R3;PARC;ANG;IL−3;MIP−1δ;IFN−γ;IL−8;および/またはFGF−6に特異的な試薬を備える。さらなる例において、キットは、実験から得たデータを正規化するのに使用するために、少なくとも1種のAD診断バイオマーカーを備える。いくつかの例において、キットは、データを正規化するのに使用するために、TGF−βおよびTGF−β3のうちの少なくとも1種を備え、そして他の例において、キットは、データを正規化するのに使用するために、TGF−βおよびTGF−β3の両方を備える。より一般的に、本発明のキットは、少なくとも2種の異なるADバイオマーカー特異的親和性試薬を備え、各試薬は、異なるADバイオマーカーに特異的である。いくつかの実施形態において、キットは、ADバイオマーカーに特異的な少なくとも5種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種または少なくとも10種の試薬を備える。いくつかの実施形態において、ADバイオマーカーに特異的な試薬は、親和性試薬である。
ADバイオマーカーに特異的な単一の試薬を備えるキットは、一般に、容器(例えばバイアル、アンプルまたはその他の適切な保存容器)内に封入された試薬を備える;ただし基材(例えばアッセイ反応容器の内面など)に結合した試薬を備えるキットも考慮される。同様に、1種より多い試薬を備えるキットは容器内にそれらの試薬を(別々にまたは混合物として)備えることもでき、または基材に結合した試薬を備えることもできる。
いくつかの実施形態において、ADバイオマーカーに特異的な試薬は、検出を容易にするために検出可能マーカー(例えば、蛍光色素または検出可能酵素)で標識するか、または改変される(例えばアビジンまたはストレプトアビジンをベースとする検出システムで検出するためにビオチニル化される)。他の実施形態において、ADバイオマーカーに特異的な試薬は、直接は標識化されないか、または改変されない。
本発明のいくつかのキットは結合ADバイオマーカー特異的試薬を検出するための薬剤も1種類以上含む。当業者に明らかであるように、検出剤の独自性は上記キットに含まれるADバイオマーカー特異的試薬の型に依存する。検出剤としては、ADバイオマーカー特異的試薬に特異的な抗体類(例えば二次抗体)、ヌクレオチドをベースとするADバイオマーカー特異的試薬を増幅するためのプライマー(例えばアプタマー)、またはADバイオマーカー特異的試薬に結合したヌクレオチド「タグ」の増幅のためのプライマー、ビオチン改変ADバイオマーカー特異的試薬の検出のためのアビジン結合体またはストレプトアビジン結合体などが挙げられる。検出システムは、当該分野で周知であり、ここでさらに記載する必要はない。したがって、RANTESに特異的な少なくとも1種類の試薬と;その方法を実施するための説明書とを含んでなる、軽度認識障害(MCI)を有する個体を同定するためのキットが本明細書に提供される。いくつかの実施例において、上記キットは、レプチンに特異的な試薬をさらに備える。他の例において、レプチンに特異的な少なくとも1種類の試薬;およびその方法を実施するための説明書を含んでなる、AD患者のアルツハイマー病(AD)の進行をモニターするためのキットが、本明細書中に提供される。脳由来神経栄養因子(BDNF)に特異的な少なくとも1種類の試薬;BBホモダイマー血小板由来増殖因子(PDGF−BB)に特異的な少なくとも1種類の試薬;およびその方法を実施するための説明書を含んでなる、アルツハイマー病(AD)患者を階層化するためのキットも、本明細書中に提供される。
ADバイオマーカーの捕捉のための改変された基材またはその他のシステムも本発明のキットに含まれ得る;それらキットがサンドイッチ−フォーマットアッセイに使用するために設計される場合には特にこれが言える。捕捉系はADバイオマーカーアッセイ系に有用な任意の捕捉系(例えば、ADバイオマーカー特異的試薬でコーティングしたマルチウェルプレート、ADバイオマーカー特異的試薬でコーティングしたビーズ)でよい。捕捉系は、当該分野で周知であり、本明細書中でさらに記載される必要はない。
特定の実施形態において、本明細書中に開示される方法に使用するためのキットは、アレイの形態で試薬を含む。上記アレイは、あらかじめ決められたパターン(例えば格子)で基材に結合した、ADバイオマーカーに特異的な少なくとも2種の異なる試薬(各試薬は異なるADバイオマーカーに特異的である)を含む。したがって、本発明は、非制限的にGCSF;IFN−g;IGFBP−1;BMP−6;BMP−4;エオタキシン−2;IGFBP−2;TARC;RANTES;ANG;PARC;Acrp30;AgRP(ART);TIMP−1;TIMP−2;ICAM−1;TRAIL R3;uPAR;IGFBP−4;レプチン(OB);PDGF−BB;EGF;BDNF;NT−3;NAP−2;IL−1ra;MSP−a;SCF;TGF−b3;TNF−b MIP−1d;IL−3;FGF−6;IL−6R;sTNF−RII;;AXL;bFGF;FGF−4;CNTF;MCP−1;MIP−1b;TPO;VEGF−B;IL−8;FAS;EGF−Rを含む、「AD診断マーカー」からなるアレイを提供する。他の例において、「AD診断バイオマーカー」は、非制限的に、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF);BBホモダイマー血小板由来増殖因子(PDGF−BB);脳由来神経栄養因子(BDNF);上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子6(FGF−6)、インターロイキン−3(IL−3)、可溶性インターロイキン−6レセプター(sIL−6R)、レプチン(obとしても公知である)、マクロファージ炎症性タンパク質−1δ(MIP−1δ)、マクロファージ刺激タンパク質α鎖(MSP−α)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)、RANTES、可溶性腫瘍壊死因子レセプター−2(sTNF RII)、幹細胞因子(SCF)、トロンボポイエチン(TPO)、組織性メタロプロテアーゼインヒビタ−1(TIMP−1)、組織性メタロプロテアーゼインヒビタ−2(TIMP−2)、トランスフォーミング増殖因子−β3(TGF−β3)、および腫瘍壊死因子β(TNF−β)を含む。他の例において、アレイは、AD診断マーカーであるレプチン、RANTES、PDFG−BBおよびBDNFのうちの任意の1、2、3または4種を含む。種々のADバイオマーカー特異的試薬(「捕捉試薬」)の位置を推定すれば、同じ反応における多数の種々のADバイオマーカーのレベルの測定が可能になる。アレイの形態で試薬を含むキットは、一般に、サンドイッチフォーマットであり、したがってそのようなキットは検出試薬も備え得る。通常、上記キットは種々の検出試薬を備え、各検出試薬は異なるADバイオマーカーに対して特異的である。このような実施形態における検出試薬は、通常、基材に結合する試薬と同じADバイオマーカーに特異的な試薬であり(ただし上記検出試薬は、代表的に、ADバイオマーカー標的の、基材結合試薬の結合部位とは異なる部分または部位に結合するのが普通である)、それは、一般に、親和性型検出試薬である。その他の任意のフォーマットのアッセイのための検出試薬の場合と同様に、上記検出試薬は検出可能部分に関して改変され、別個の検出可能部分が結合できるように改変されても、改変されていなくともよい。改変されていないか、または別個の検出可能部分が結合できるように改変された検出試薬を含むアレイ型キットはさらなる検出可能部分も含むことができる(例えば、検出試薬に結合する検出可能部分、例えば非改変検出試薬に結合する標識された抗体、またはビオチン改変検出試薬を検出するための検出可能部分で改変されたストレプトアビジン)。
本発明を実施するためのキットの使用に関する説明書は、一般的には、本発明の方法を実施するためのキットの内容物の使用法を説明する。説明書は、サンプルの必要事項(例えば形態、アッセイ前処理、およびサイズ)、ADバイオマーカーの測定に必要な工程、および結果の解釈などの情報を含む。
本発明のキットにおいて提供される説明書は、一般には標識または包装内挿入物(例えば、キットに含まれるペーパーシート)に関する、書面による説明書であるが、機械で読み取り可能な説明資料(例えば、磁気または任意の保存ディスクで運ばれる説明資料)でもよい。特定の実施形態において、機械で読み取り可能な説明資料は、キットに含まれる試薬を使用して得られる測定された値を比較するための、プログラムされたデジタルコンピューターのためのソフトウェアを含む。
下記の実施例は本発明を説明するために提供されるが、決して本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1:AD診断バイオマーカー)
アルツハイマー病患者(平均年齢74歳)から集めた32例の血清中の120種のタンパク質に関するタンパク質発現レベルを、コントロール群(平均年齢74歳)から集めた19例の血清中のそれらと比較した。アルツハイマー病患者は、神経科医によって臨床的にADと診断され、26〜14の範囲のMini Mental State Exam(MMSE)を示した。
血漿サンプルを、ニトロセルロースフィルタ基材上でサンドイッチ−フォーマットELISAを用いてアッセイした。血漿サンプルをリン酸緩衝液で1:10に希釈し、捕捉基材(捕捉抗体をスポットしたニトロセルロース膜)と共にインキュベートした。サンプルを捕捉基材と共に2時間室温でインキュベートし、その後、捕獲基材からデカントした。基材を2mlの洗浄緩衝液(1×PBS;0.05%Tween−20)で室温で2回洗い、その後ビオチニル化検出抗体と共に室温で2時間インキュベートした。捕捉抗体溶液を傾瀉し、基材を洗浄緩衝液で5分間で2回洗った。洗った基材を西洋ワサビペルオキシダーゼ/ストレプトアビジン結合体と共に45分間インキュベートし、その結合体溶液を傾瀉し、膜を洗浄緩衝液で5分間2回洗った。基材を一片の濾紙上に移し、Raybiotech,Incs.から購入した高性能化学発光(ECL)検出緩衝溶液中でインキュベートした。化学発光を、検出し、化学発光画像化カメラで定量した。シグナル強度を、基材上にブロットした標準タンパク質に対して標準化し、これを用いてバイオマーカーの相対的レベルを計算した。他の例において、シグナル強度を中央値に標準化し、これを用いてバイオマーカーの相対的レベルを計算した。任意の個体のバイオマーカーの測定されたレベルは、同じ個体由来の2種以上のバイオマーカーの測定されたレベルの平均値または中央値のレベルを比較することによって正規化され得る。
血漿中の相対的バイオマーカーレベルを、以下の46の識別バイオマーカーをあらわすコントロール群とAD群との間で比較した:GCSF;IFN−g;IGFBP−1;BMP−6;BMP−4;エオタキシン−2;IGFBP−2;TARC;RANTES;ANG;PARC;Acrp30;AgRP(ART);TIMP−1;TIMP−2;ICAM−1;TRAIL R3;uPAR;IGFBP−4;レプチン(OB);PDGF−BB;EGF;BDNF;NT−3;NAP−2;IL−1ra;MSP−a;SCF;TGF−b3;TNF−b MIP−1d;IL−3;FGF−6;IL−6R;sTNF RII;;AXL;bFGF;FGF−4;CNTF;MCP−1;MIP−1b;TPO;VEGF−B;IL−8;FAS;EGF−R。46の識別マーカーを教師なしクラスター化(unsupervised clustering)した結果(すなわち上記クラスター化アルゴリズムはどの例がADで、どの例が正常であるかを知らない)、それらのサンプルは2つの群またはクラスター、コントロールサンプルのクラスターとADサンプルのクラスター、にクラスター化された。感度は、ADクラスターに正しく分類されたADサンプルの数/ADサンプルの総数として計算された。それは29/32または90.6%である。特異性はコントロールクラスターに正しく分類されたコントロールサンプルの総数/コントロールの総数として計算され、それは(14/19=73.6%)であった。
バイオマーカーレベルをコントロール群とAD群との間で比較し、その2つの群の間で示差的に調節される20種のバイオマーカー(各バイオマーカーはADではコントロールに比較して減少する)が明らかになった(表3に示される)。統計分析を行って、任意のバイオマーカーにおいて示差的レベルの測定結果が誤差である確率(「q」値)を見いだした。バイオマーカーを示差的レベルおよび関連するq値(パーセント値として示される)と共に表3に示す(変化倍数はコントロール対ADサンプルにおけるレベル間の変化倍数を示す)。感度は、ADクラスターのADサンプル数/ADサンプル総数として計算した。それは29/32または90.6%である。特異性は正しく予測された総AD数/総予測AD数として計算された(29/34=85%)。
(実施例2:AD診断マーカーデータからの決定木)
実施例1から得られるデータをさらに分析すると、AD診断バイオマーカーを用いるAD診断のための2つの異なる決定木が形成された。
第一の決定木はsIL−6R、IL−8、およびTIMP−1レベルを使用する。上記決定木を作成する規則は、以下である:(1)sIL−6R≦5.18およびIL−8≦0.957であれば、正常と示される;(2)sIL−6R≦5.18およびIL−8>0.957である場合、ADが示される;(3)sIL−6R>5.18およびTIMP−1≦7.978である場合、ADが示される;(4)sIL−6R>5.18およびTIMP−1>7.978である場合、正常と示される。ここに表される値は相対的濃度である。
この決定木の精度をCARTの10回交差検定試験機能を利用して測定し、学習サンプルおよび試験サンプルの誤分類率を算出した。感度は、試験スコアから、ADと正しく予測されたADサンプルの数/ADサンプル総数として計算された(29/32=0.906)。特異性は、試験スコアから、ADと正しく予測された総症例数/ADと予測された総症例数として計算された(29/33=0.878)。
第二の決定木は、BDNF、TIMP−1およびMIP−1δレベルを用いて作成された。決定木を作る規則は、以下である:(1)BDNF>4.476である場合、正常と示される;(2)BDNF≦4.476で、TIMP−1≦8.942である場合、ADが示される;(3)BDNF≦4.476、TIMP−1>8.942、そしてMIP−1δ≦1.89である場合、ADが示される;(4)BDNF>4.476、TIMP−1>8.942、そして、MIP−1δ>1.89である場合、正常と示される。この決定木の精度をCARTの10回交差検定試験機能を利用して測定し、学習サンプルおよび試験サンプルの誤分類率を計算した。感度は、試験スコアから、正しくADと予想されたADサンプルの数/ADサンプルの総数(0.875)として計算された。特異性は、試験スコアから、正しく予想されたAD症例の総数/ADと予想された症例の総数(0.82)として計算された。
(実施例3:MCIの診断)
RANTESおよびレプチンのレベルをコントロール被験体(平均年齢=74)からの18サンプルおよび軽度認識障害(MCI)と診断された患者からの6サンプルで測定した。MCI患者は神経科医によって臨床的に診断され、5未満のAULT−A7スコアおよび30〜28の範囲のMini Mental State Exam(MMSE)スコアを示した。コントロール被験体は5以上のAULT−A7スコアおよび30〜28の範囲のMMSEスコアを示した。
RANTESおよびレプチンレベルをR&D systems社からのELISAキットを使用し、製造業者の説明書にしたがって測定した。生のELISA発現値を、全サンプルの中央値によって各値を除算することによって正規化した。データの分析は、以下を示した:(a)レプチンはMCI患者ではコントロール被験体に比較して減少しない(6MCIサンプルにおいてレプチンはコントロール被験体より実際11%高かった)、および(b)RANTESの二峰性分布、この際MCI患者は1.043と1.183との間のRANTESレベルを有した(コントロール被験体からのレベルは≦1.043または>1.183であった)。しかしデータをより綿密に調べると、RANTES≦1.043を有するコントロール被験体が誤って正常と分類されていた(MCIと診断すべきであった)ことが判明した。
RANTES≦1.043を有するコントロール被験体をMCI患者として再分類することは、単純な規則を可能にする:RANTES≦1.183およびレプチン≧0.676である場合、MCIが示される。実施例2に記載のように計算した感度および特異性はそれぞれ83.3%および88.88%であった。
(実施例4:AD患者のモニタリングおよび階層化)
アルツハイマー病と診断された36名の患者(平均年齢74)から集めた血清サンプルにおいて、R&D systems社からのELISAキットを用い、製造業者からの説明書にしたがって、RANTES、レプチン、PDNF−BBおよびBDNFのレベルを測定した。生のELISA発現値は、各値を全サンプルの中央値で除算することによって正規化された。これらのサンプルをMMSEスコアに基づいて次の3群に分類した:クラス1(軽度AD)、MMSE27〜22;クラス2(中程度AD)、MMSE21〜16;クラス3(重症AD)、MMSE15〜12。
ELISAデータの分析において、BDNFおよびPDNF−BBを使用する決定木を作成した。この決定木を作成する規則は、以下である:(1)BDNF≦0.626である場合、軽度ADが示される;(2)BDNF>0.626およびPDNF−BB≦0.919である場合、中程度ADが示される;(3)BDNF>0.626およびPDNF−BB>0.919である場合、重症ADが示される。表される値は中央値に対して正規化された相対的濃度である。レプチンの平均正規化レベルは:クラスI=0.886;クラスII=0.757;クラスIII=0.589であった。BDNFの平均正規化レベルは:クラスI=0.595;クラスII=0.956;クラスIII=1.23であった。「試験」データセットに適用した場合、上記決定木は試験サンプルの58%、47%および57%を軽度、中程度、および重症カテゴリーに正しく階層化した。
(実施例5:4種類の識別マーカー)
ELISAによって測定した4種類だけの識別マーカー、BDNF、PDGF−BB、レプチン、およびRANTESの血漿中の絶対濃度を用いてサンプルを分類した。ELISAキットはR&D Systems社から購入し、測定値を、製造業者の推奨にしたがって得た。例えばRANTESでは以下のプロトコルにしたがった。
1.50μLの標準、サンプルまたはコントロールを適切なウェルに加える。
2.50μL抗−RANTESビオチン結合体を各ウェルに加える。
3.ウェルを37℃で1時間インキュベートする。
4.吸引し、洗浄緩衝液でウェルを4回洗う。
5.100μLストレプトアビジン−HRP結合体を各ウェルに加える。
6.室温で30分間インキュベートする。
7.吸引し、洗浄緩衝液でウェルを4回洗う。
8.安定化クロモゲン100μLを各ウェルに加える。
9.暗所において室温で30分間インキュベートする。
10.停止溶液100μLを各ウェルに加える。
11.450nmの吸光度を読み取る。
上のプロトコルにしたがって、cluto.ccgb.umn.edu/cgi−bin/wCluto/wCluto.cgiで一般に利用できる、ウェブ−ベースのクラスター化ソフトウェアwCLUTOを用い、BDNF、PDGF−BB、レプチン、およびRANTESの教師なしクラスター化を行った。ここで上記4種類のタンパク質のクラスター化によって、サンプルは2つの群またはクラスター、すなわちコントロールサンプルクラスターおよびADサンプルクラスターにまとめられた。感度は、ADサンプル中の正しく分類されたADサンプル数/総ADサンプル数として計算され、21/24または87.5%である。特異性は、コントロールクラスター中の正しく分類されたコントロールサンプルの総数/コントロールの総数として計算され、20/24=83.3%である。
さらに、BDNF、PDGF−BB、およびレプチンについて血漿中の絶対バイオマーカーレベル(ELISAによって測定)をMMSEスコア(範囲12〜30)と関連づけた。ADは12〜28の範囲のMMSEスコアで同定でき、コントロールサンプルは25〜30の範囲のMMSEスコアで同定された。表4は相関性およびそれらの統計的有意性(p値)を示す。より高い相関性およびより低い相関は、MMSEスコア範囲の上端とバイオマーカー濃度がより相関しているか、またはMMSEスコア範囲の下端とバイオマーカー濃度がより相関しているかを示す。したがってこれらの相関は、BDNFおよびレプチンのより高いレベルがより良いMMSEスコアと有意に相関すること、およびBDNFおよびレプチン濃度の基準点、またはより早い採取時点からの増加は、MMSEによって測定した際の認識改善の兆候であることを示す。同時に、またはそれ自体、男性のPDGF−BBのより低いレベルはより良いMMSEスコアと有意に相関し、男性のサンプルのPDGF−BBの濃度が同じ男性のより早い採取時点のそれと比較した際の減少は、MMSEによって測定した認識の改善の兆候である。
これらの結果(表4)は、ADに関する3種類の識別タンパク質の血中濃度と被験体のMMSEスコアとの間の相関性、およびADに関して識別タンパク質の濃度間の相関性を示す。AD被験体の間でMMSEスコアと年齢との相関も、AD被験体の間で年齢と血漿中のBDNF、PDGF−BBまたはレプチン濃度との相関もなかった。p値は相関性が統計的に有意であることを示す。カウントは症例数を示す。BDNFはMMSEスコアと統計的に有意な正の相関を有する。PDGF−BBは男性においてMMSEスコアと統計的に有意な負の相関を有する。レプチンはMMSEスコアと統計的に有意な正の相関を有する。この実験は、PDGF−BB、レプチン、およびBDNFの血中濃度を使用して認識低下の進行をモニターできることを実証する。
コントロールとAD症例とは、年齢がマッチングしており、平均年齢74歳であった。AD症例(n=24)の平均MMSEスコアは20であり、コントロール症例(n=24)の平均MMSEスコアは30であった。サンプルの分類はタンパク質濃度の教師なしクラスター化で行われた。分類の全体的精度は85.4%であった。この結果は、ELISAによって測定されるBDNF、PDGF−BB、レプチン、およびRANTESの血中タンパク質濃度を使用してADとコントロールとの間を正確に区別できることを証明した。
(実施例6:ADおよびコントロールの平均タンパク質濃度のELISA法による確認)
AD(n=95)対年齢的にマッチしたコントロール(n=88)の血漿サンプルにおけるタンパク質、レプチン、BDNFおよびRANTESのタンパク質濃度を図1A〜1Cに示す。本発明者らが測定した4種類のタンパク質のうちの1つは脳由来神経栄養因子(BDNF)であった。AD血漿におけるBDNFの平均濃度は8.1ng/ml(SE±0.4)であり、これに対してコントロール血漿の平均は10.8ng/ml(SE±0.68)であった。その差は統計的に極めて有意であることが判明した(p値=0.0006)。ADに比べてその他の形の痴呆ではBDNFの濃度がより低い(5.74ng/ml、n=20)ことを本発明者らは見いだした。AD血漿中の第二のタンパク質であるレプチンの平均濃度は10.9ng/ml(SE±1.06)であり、これに対してコントロール血漿の平均値は17.4ng/ml(SE±1.8)であることが判明した。その差は統計的に非常に有意であることが判明した(p値=0.0018)。AD血漿中の第三のタンパク質であるRANTESの平均濃度は66.3ng/ml(SE±2.4)であり、これに対してコントロールサンプルでは74.5ng/ml(SE±3.2)であることが判明した。この差は統計的に非常に有意であることが判明した(p値=0.0403)。MMSEスコア≧20を有するAD患者(n=54)とMMSEスコア<20(n=41)のAD患者との間ではRANTES、PDGF−BB、およびBDNFの濃度の平均値の差は認められなかった。
(実施例7:血漿中のバイオマーカーの絶対濃度)
さらに、血漿中のバイオマーカーの絶対濃度をBDNFについて測定し、コントロールの平均濃度をMCI(軽度認識障害)、MMSE25〜28、MMSE20〜25、およびMMSE10〜20と比較した。この実験の目的のために下記の実施例において使用した指数は:疑わしいAD=25〜28の範囲のMMSEスコア;軽度AD=20〜25の範囲のMMSEスコア;中程度AD=10〜20の範囲のMMSEスコアおよび重症AD=10〜20の範囲のMMSEスコアである。実施例7の目的から、疑わしいADを有すると評価された全ての患者は、医師によってADに罹っていると診断された。図2は、MMSE25〜28;MMSE20〜25;MMSE10〜20を示す血漿中のBDNFの平均濃度は、コントロール(正常、平均年齢74)の平均濃度より有意に低く、MCIのBDNF濃度はコントロールおよび全てのAD症例より有意に高いことを示す。図2。
さらに、異なる4カ所のアルツハイマー施設から集めた血漿サンプルのBDNFの絶対濃度をAD(女性)およびコントロール(女性)とAD(男性)およびコントロール(男性)との間の性別差に関して比較した。図3は、AD女性のBDNF濃度をコントロール女性と比較すると40%の差があり、その差は統計的に高度に有意である(p値=0.004)ことを示している。全AD症例のBDNFの平均濃度と、全コントロール症例のそれとの差は統計的に極めて有意であることが判明した(p値=0.0006)。
分割変数の値がないので、全体の結果は個々のセルの結果と一致しないかも知れない。
分割変数の値がないので、全体の結果は個々のセルの結果と一致しないかも知れない。
さらに、血漿中のバイオマーカーの絶対濃度を異なる4カ所のアルツハイマー施設から集めた血漿サンプル中のRANTESについて測定し、コントロールの平均濃度を、MCI(軽度認識障害)、MMSE25〜28;(MMSE20〜25;MMSE10〜20;およびMMSE10〜20の平均濃度と比較した。指数は上に記載されている。軽度ADと中程度ADとの差、軽度ADと正常との差、軽度ADと重症ADとの差、中程度ADと正常との差、疑わしいADと正常との差、正常と重症ADとの差は全て統計的に有意であることが判明した。図4。
さらに、血漿中のバイオマーカーの絶対濃度を、異なる4カ所のアルツハイマー施設から集めた血漿サンプル中のレプチンについて測定し、コントロールの平均濃度をMCI(軽度認識障害);MMSE25〜28;MMSE20〜25;MMSE10〜20;およびMMSE10〜20と比較した。疑わしいADとMCIとの間、軽度ADと正常との間、軽度ADと疑わしいADとの間、疑わしいADと正常との間、中程度ADと正常との間の平均差は全て統計的に有意であることが判明した。図5。
その他に血漿中のバイオマーカーの絶対濃度を、異なる4カ所のアルツハイマー施設から集めた血漿サンプル中のPDGF−BBについて測定し、コントロールの平均濃度をMCI(軽度認識障害);MMSE25〜28;MMSE20〜25;MMSE10〜20;およびMMSE10〜20の平均濃度と比較した。軽度ADと疑わしいADとの比較、重症ADと軽度ADとの比較、重症ADと中程度ADとの比較、疑わしいADと正常との比較、および重症ADと正常との比較の平均差は全て統計的に有意であることが判明した。図6。
さらに、血漿中のバイオマーカーの絶対濃度を、4カ所の異なるアルツハイマー施設から集めた血漿サンプル中のBDNFについて測定し、コントロールの平均濃度をMCI(軽度認識障害)、疑わしいAD(MMSE25〜28)と比較した。MCIと軽度AD、MCIと疑わしいAD、軽度ADと正常、軽度ADと重症AD、中程度と正常、正常と疑わしいADおよび正常と重症の平均差は全て統計的に有意であることが判明した。図7。
疑わしいAD(25〜28の範囲のMMSEスコア)では、レプチンおよびPDGF−BBのレベルは上昇し、その一方でBDNFおよびRANTESは有意には変化しないことが判明した。軽度AD(20〜25の範囲のMMSEスコア)から中程度AD(10〜20の範囲のMMSEスコア)では、レプチンレベルは減少せず、RANTES、BDNFおよびPDGF−BBのレベルは減少することが判明した。
(実施例8)
ADの末梢免疫系において変化するタンパク質を同定する目的で、AD患者32名および年齢的にマッチしている痴呆でないコントロール19名から得た血漿について120種のサイトカイン、ケモカイン、および増殖因子の発現レベルをフィルター上の斑点抗体マイクロアレイを用いて測定した。統計分析により、ADとコントロールとの間で有意に異なる20種のタンパク質が同定された。これらのうち、脳由来神経栄養因子(BDNF)およびNT−3、およびPDGF−BB、EGF、FGF−6、bFGF、TGF−b3を含む6種類は既知の神経栄養活性を有し、AD血漿中では有意に減少していた。BDNFレベルは、mini mental state exam(MMSE)によるより良い認識機能と相関を示した。200のAD症例およびコントロールからの血漿について、市販のサンドイッチELISAを用いて得られたBDNF測定された値は、AD症例において25%という高度に有意な減少を示した。アレイデータと一致して、減少した血中BDNFレベルは記憶機能障害と関連していた。BDNFは神経細胞の維持、生存および機能のために重要である。理論によって裏付けられているわけではないが、ADではニューロトロフィンおよびBDNFの血中レベルの減少が神経変性および認識機能異常と関連しているらしい。
(実施例9:その他のバイオマーカー)
さらに、GDNF、SDF−1、IGFBP3、FGF−6、TGF−b3、BMP−4、NT−3、EGF、BDNF、IGFBP−2の定性的バイオマーカーレベルはADサンプル(MMSEの範囲12〜28)およびコントロールサンプル(MMSEの範囲25〜30)ではMMSEスコア(MMSEの範囲12〜30)と関連していた。表5は相関性およびそれらの統計的有意性(p値)を示す。より高い相関およびより低い相関は、MMSEスコアの範囲の上端とバイオマーカー濃度、またはMMSEスコアの範囲の下端とバイオマーカー濃度、のどちらがより大きく相関しているかを示す。負の相関はバイオマーカーレベルが減少するにつれてMMSEスコアは高まることを意味し、その逆も同様である。正の相関は、バイオマーカーレベルの増加につれてMMSEスコアが増加することを意味する。
(実施例10)
この実施例は、表6、すなわちADを同定および階層化する定量的マーカーの一覧を示す。
したがって、本発明は、個体から得られる生物学的流体サンプル中の少なくとも4種類のAD診断バイオマーカーの測定されたレベルを各AD診断バイオマーカーの参照レベルと比較することを含んでなる、アルツハイマー病(「AD」)の診断を補助する方法を提供し、その際前記バイオマーカーはBDNF、PDGF−BB、レプチンおよびRANTESを含む。したがって、BDNFの参照レベルに比較して少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、または約30%減少したBDNFは、例えばADの兆候のような認識障害を示すものであるという方法が提供される。よってレプチン参照レベルに比較して少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%または約30%減少したレプチンは、例えばADの兆候のような認識障害を示すものであるという方法が提供される。よってRANTES参照レベルに比較して少なくとも約5%、約10%、または約15%減少したRANTESは例えばADの兆候のような認識障害を示すものであるという方法が提供される。したがって、PDGF−BB参照レベルに比較して少なくとも約80%、約85%または約90%減少したPDGF−BBは例えば重症ADの兆候のような認識障害を示すものであるという方法が提供される。
(実施例11)
この実施例は、ADバイオマーカーのレベルを測定し、そして/またはADバイオマーカーのレベルの測定に関してデータを分析し、そして/またはADバイオマーカーのレベルの測定に基づいてデータを関連付け、そして/または異なる試験施設にわたる被験体由来の生物学的サンプルから得たADバイオマーカーのレベルの測定に基づいてデータを分析および/もしくは関連付けることによってADバイオマーカーを同定するために有用な方法を記載する。これらの方法はまた、個体および/または単一の回収施設から得た生物学的サンプルに適用可能である。その方法は、回収手順および/または保存条件および取り扱い条件から生じる試験施設変動を最小化するか、またはそれらを減少させるように設計される。この実施例は、実施例12と一緒に、ADの検出に有用であるさらなるバイオマーカーを同定するための方法を提供し、その方法は、高い程度の感度(その実験に使用したADサンプルの総数によって除算したADクラスターにおけるADサンプルの数として計算される)および特異性(ADを診断するための実験において使用したコントロールの総数によって除算したコントロールクラスターにおけるコントロールの数として計算される)を提供するマーカー、ならびにこのようなバイオマーカーを同定することを含む。
回収手順ならびに保存条件および取り扱い条件は、AD被験体およびコントロール被験体の生物学的サンプル(例えば、血漿)において測定されるバイオマーカーの濃度における変動を誘導し得る。これは、次に、適切な正規化および/または標準化ならびに/あるいは制御を伴わない被験体の誤分類を引き起こし得る。例えば、タンパク質濃度は、部分的に、特定の血漿サンプルが血小板に富んでいるかまたは血小板に乏しいかによって影響され得る。一般に、血小板に富んでいる血漿サンプルは、より大きい定量的レベルの多くのバイオマーカーを有するが、血小板に乏しいサンプルは、減少した定量的レベルの多くのバイオマーカーを有する(適切なコントロール(例えば、集団コントロール)と比較した場合)。例えば、血小板内に堅く保持されるBDNFの濃度を、血小板脱顆粒による血小板からのBDNFの放出の代理として測定した。慎重に調製した血小板に乏しい血漿は10pg/mlに等しいBDNFの濃度を有するのに対して、血小板に富んでいる血漿調製物は20ng/mlと同程度に高い濃度を有し得ることが、観察された。ELISAによって測定したBDNFと斑点フィルター抗体アレイによって測定したBDNFとの相関は、p<0.0001でr=0.679を有する。上記実験設計において使用したサンプルを、BDNFの血小板に乏しい調製物を含まないような様式で調製した。なぜならば、これらは、慣行におきて代表的な血漿回収ではないからである。
いくつかの例において、血清よりもむしろ、血漿が、生物学的サンプルとして本明細書中で開示される方法のために使用される。血漿を、実施例1の方法、および実施例11〜14の方法において使用した。これは、部分的に、血清を作製するために使用される血液凝固プロセスに関与する変数に起因する。これらの変数は、血清に含まれるバイオマーカーの変化する程度のタンパク質分解をもたらし得る。また、血漿を使用する場合、目的のタンパク質を偶然に除去する機会は少ない。大量のフィブリノゲンまたはアルブミンが問題を与える場合、これらのタンパク質の血漿を枯渇させるために公に利用可能な枯渇キットは存在するが、これが行われる場合、関連するタンパク質も除去され得る。枯渇キットを使用する場合、適切なコントロールをその関連するタンパク質の除去をモニターするためにその方法において使用し得る。
プロテアーゼインヒビターによって予めロードされた無菌の血液回収チューブ、ならびに赤血球および血小板を除去するための自給式システムは、公に利用可能である。例えば、bd.com/vacutainer/products/venous/ordering info tubes.asp.におけるBeckton Dickenson Company製品一覧を参照のこと。
下のプロトコルは、サンプル回収手順の1つの説明例である。
Becton Dickenson BD P100チューブを、使用するまで、4℃に保存する。最大8.5mLの血液を、約2.5〜3mLの血漿を産生するために回収する。回収した直後、そのチューブを、プロテアーゼインヒビターおよび抗凝固剤(anticoagulent)とその血液サンプルとを混合するために8〜10回転倒する。そのチューブを、遠心分離前に濡れた氷においた。(遠心分離は、回収の30分以内に行うべきである)。そのチューブを、2000〜3000RCFで4℃にて15分間遠心分離する。(rpmをRCFに変換するBD P100パッケージ挿入物を参照のこと)。3000g、または10,000RCFを超えてはならない。
遠心分離の30分以内に、上記血漿を、1mLアリコートで予め標識したFisherbrand 4mL自立式クライオバイアル(Fisher Scientific # 0566966)に移し、そしてそのバイアルを、直ちにドライアイス上におく。アリコートを、使用するまで、−80℃にて凍結させる。(凍結融解サイクルを避けるなければならない)。微小血小板(microplatelet)を除去するために、その血漿を、異なる遠心チューブに移し、そしてそのチューブを、12,000gで4℃にて15分間遠心分離する。
この実験の目的は、部分的に、方法を決定することであり、その方法は、AD被験体を高い程度の特異性および感度で同定しつつ免疫応答における個体バリエーションならびに回収条件および保存条件によってもたらされるバリエーションを最小化するデータを分析するのに使用するために、適切なコントロールの同定を含む。
上記実験において使用した方法は、表8に列挙したバイオマーカーである上記タンパク質に特異的な120種の抗体からなるフィルターベースの抗体アレイを用いた、実施例1に記載した方法と同じである。いくつかの先の実施形態において、表8に列挙したバイオマーカー(表8、表9A1〜9A2および9B、表10A1〜10A2および10B、表11A1〜11A2および11B、ならびに表12A〜12Bにおける各バイオマーカー名の後の「_1」の表示は、上記プログラムの機能であり、各バイオマーカー名の部分ではない)に特異的な120種種の抗体のフィルターベースの抗体アレイを使用したいくつかの先の実験において、シグナルが検出されなかった場合、これが偽陰性の結果(例えば、特定の試薬の使用による問題に起因する)であるかまたは真に陰性の結果であるかは、明確ではなかった。以下の実験において、その試薬の製造業者(RayBiotech)によってもたらされる改良に起因して、シグナルは上記抗体アレイを使用してスクリーニングした120種のタンパク質の全てに対して検出され得ることが、決定された。試薬におけるこの改良は、バイオマーカーが先の実験において検出可能であっても検出可能でなくてもよい本明細書中に開示するような方法(例えば、ADの診断を補助するための方法および/またはADを診断するための方法のような)における用途についてのさらなるバイオマーカー(実施例12に示されるような)の同定をもたらした。
この実験において、表8に列挙した120種のバイオマーカーのレベルを、ADを有する8人の被験体(後に剖検によってADを有すると同定された)から1.5年の間隔で集められた16個のサンプルを含む5つの異なるアルツハイマー病の施設において集められた生物学的サンプル(n=34、平均年齢=74、平均MMSE=20)について測定し、コントロール(例えば、2つの施設から集められた年齢をマッチングさせているコントロール(n=17)ならびにパーキンソン病と診断された4人の被験体および末梢神経障害と診断された12人の被験体からなる他の非AD神経変性性の年齢をマッチングさせているコントロール(n=16))と比較した。検出力の計算は、ADを同定した10人のサンプルの剖検が0.001のAlphaおよび0.999の検出力を有する必要があることを示す。
全120種のバイオマーカーについての実験データを、Biodiscoveryのライセンスを受けたソフトウェアを使用して抽出した。その抽出したデータを、次いで、ブロット上にスポットされた実験についてポジティブコントロールに対して正規化した。ポジティブコントロールの例は、IgGである。それぞれ個々のバイオマーカーについてのデータを、次いで、上記抗体アレイによって測定された全120種のタンパク質の濃度の中央値に対して正規化した。マイクロアレイの有意性分析(SAM)を、各バイオマーカーの有意性を決定するために使用した。ブロット実験から抽出されたデータを正規化するためのこの方法は、個体の免疫応答状態に基づいて僅かにより高いかまたはより低いタンパク質のレベルを有し得るという事実に起因する変動性を、最小化するか、または減少させる。SAMを使用した有意性の決定後、0.1%以下のp値を有するバイオマーカー(53種のマーカー)を、コントロールからADを分類するクラスター分析のために使用した。(表13A(正に相関するバイオマーカー)および13B(約0.1のp値%を有する列挙したマーカーと負に相関するバイオマーカー)を参照のこと)。5%以下のp値を有する全てのバイオマーカー(表9A1〜9A2および表9B)を、全て、使用したコントロールに基づいてADとしてサンプルを分類するクラスター分析において使用した。上に記載したような抽出し正規化したデータの分析の結果を、実施例12および表13A〜13B(クラスター化されておらず、そして年齢をマッチングさせている正常コントロールに加えて神経変性の他の非AD形態(例えば、PDおよびPN)と比較した場合(すなわち、全てのコントロールと比較した場合)、有意に増加(13A)したか、または減少(13B)した、最も高いランクのバイオマーカーから最も低いランクのバイオマーカーの順にある)に開示する。表13A〜13Bに関して列は、左から右へ、バイオマーカー名、スコア(d)、変化倍数およびp値(%)である。実施例12に記載した通り、表9A1〜9A2および表9Bは、0.1%よりも大きく、かつ5%未満のp値を有するバイオマーカーについてのデータのさらなる分析を示す。
(実施例12)
この実施例は、健康な年齢をマッチングさせているコントロールおよび/または非ADである神経変性性の年齢をマッチングさせているコントロール(すなわち、非AD神経変性コントロール(パーキンソン病(PD)および末梢神経障害(PN))と比較して、ADと診断された個体において増加する(13A)かまたは減少する(13B)かのいずれかであるADバイオマーカーを同定するための方法を記載する。ADが神経変性疾患であり、そして適切なコントロール(ADに特有でありそして/または同じ年齢群において、神経変性の他の非AD(例えば、PDおよびPN)と区別可能である)および健康な年齢をマッチングさせているコントロールに対して減少するかまたは増加するかのいずれかであるバイオマーカーの同定に関して、ADに関連した神経変性のバイオマーカーパターンを同定することが有益であるので、この方法は、重要である。
先の実験(実施例1を参照のこと)は、以下のバイオマーカーのうちの任意の1種以上が ADの検出のために使用され得ることを決定した:GCSF;IFN−g;IGFBP−1;BMP−6;BMP−4;エオタキシン−2;IGFBP−2;TARC;RANTES;ANG;PARC;Acrp30;AgRP(ART);TIMP−1;TIMP−2;ICAM−1;TRAIL R3;uPAR;IGFBP−4;レプチン(OB);PDGF−BB;EGF;BDNF;NT−3;NAP−2;IL−lra;MSP−a;SCF;TGF−b3;TNF−b;MIP−Id;IL−3;FGF−6;IL−6R;sTNF RII;AXL;bFGF;FGF−4;CNTF;MCP−1;MIP−1b;TPO;VEGF−B;IL−8;FAS;EGF−R。実施例11に記載した実験条件および分析に基づいて、ADを検出するために有用なさらなるバイオマーカーを、同定した。表8からのバイオマーカーに関して測定された値を、調査し正規化した濃度によるサンプルの分類に基づく階層的クラスター化に供した。クラスター化分析に基づいて、上記タンパク質を、相関に基づく9クラスの類似性に分けた。5%よりも大きいp値(%)を有するバイオマーカーを、上記分析から排除した。上記分類の感度を、その実験に使用したADサンプルの総数によって除算したADクラスターにおけるADサンプルの数として計算する(この場合において、31/34=91%)。特異性を、その実験において使用したコントロールの総数によって除算したコントロールクラスターにおけるコントロールの数として計算する(この場合において、31/33=94%)。
表13A〜13Bは、実施例11に記載したように、バイオマーカーのリストを提供する。表9A1〜9A2および表9Bは、年齢をマッチングさせている正常コントロールに加えて神経変性の他の非AD形態(例えばPDおよびPN)と比較される場合(すなわち、全てのコントロールと比較される場合)にADにおいて有意に増加(9A1〜9A2)または減少(9B)するバイオマーカー(上に記載したような方法によってクラスター化した)のリストを、スコア値に基づく各クラスター内で最も高いランクのバイオマーカーから最も低いランクのバイオマーカーの順序で提供する。表9A〜9Bに関してその列は、左から右へ、:バイオマーカー名;スコア(d);変化倍数;q値(%)およびクラスター数である。マイクロアレイの有意性分析は、例えば、Tusherら、2001、PNAS、第98巻:5116において考察される。表9A1〜A2および表9Bに列挙されるバイオマーカーのうちの任意の1種以上は、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示した方法で用いられ得る。本明細書中で記載した通り、複数のAD診断バイオマーカーは、クラスター多様性について選択することによって、表9A1〜9A2および表9Bに開示したAD診断バイオマーカーから選択され得る。表9A1〜9A2および表9B(正の相関および負の相関の両方)に示した9個のクラスターの各々由来の最も高いランクのバイオマーカーは:BTC(クラスター0);SDF−1(クラスター1);MCP−2(クラスター2);IFN−γ(クラスター3);IGFBP−4(クラスター4);IGF−1SR(クラスター5);IL−8(クラスター6);GM−CSF(クラスター7);およびANG−2(クラスター8)である。いくつかの例において、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示した方法に使用するためのバイオマーカーは、BTC;SDF−1;MCP−2;IFN−γ;IGFBP−4;IGF−1SR;IL−8;GM−CSF;およびANG−2からなる群から選択される少なくとも1種のマーカー、または表13A〜13B由来の少なくとも1種のマーカーを含む。いくつかの例において、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示した方法に使用するためのさらなるバイオマーカーは、BTC;SDF−1;MCP−2;IFN−γ;IGFBP−4;IGF−1SR;IL−8;GM−CSF;およびANG−2のうちの1種以上と相関するバイオマーカー(すなわち、90%(r=0.9〜r=0.99)より大きい相関;および0.001〜0.05未満のP値を有するこのようなバイオマーカー)を含む。
いくつかの例において、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示した方法に使用するためのバイオマーカーは、BTC;SDF−1;MCP−2;IFN−γ;IGFBP−4;IGF−1SR;IL−8;GM−CSF;およびANG−2からなる群より選択される2種以上のマーカーを含む。いくつかの例において、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示した方法に使用するためのバイオマーカーは、BTC;SDF−1;MCP−2;IFN−γ;IGFBP−4;IGF−1SR;IL−8;GM−CSF;およびANG−2を含むマーカーを含む。他の例において、表9A1〜9A2および表9Bに示した1個以上のクラスター由来の上位2位、3位、4位、または5位のランクのバイオマーカーは、本明細書中に開示したような方法に使用するために選択される。
表10A1〜10A2および表10Bは、健康な年齢をマッチングさせているコントロールと比較される場合にADにおいて有意に増加(10A1〜10A2)または減少(10B)するバイオマーカーのリスト(クラスター化されておらず、そしてスコア値に基き、最も高いランクのバイオマーカーから最も低いランクのバイオマーカーの順にある)を提供する。表10A1〜10A2および表10B、表11A1〜11A2および表11B、および表12A〜12Bにおいて、その列は、左から右へ、バイオマーカー名、スコア(d);変化倍数;およびq値(%)である。表10A1〜10A2および表10Bに基づいて、健康な年齢をマッチングさせているコントロールと比較した場合にADにおいて有意に増加すると同定されたバイオマーカーとしては、(スコアに基づく下降順に):BTC;ANG−2;MIF;IGFBP−6;spg130;CTACK;IGFBP3;MIP−1a;TRAIL R4;IL−12 p40;AR;NT−4;VEGF−D;OSM;OST;IL−11;sTNF R1;I−TAC;エオタキシン;TECK;PIGF;bNGF;リンホタクチン;MIP−3b;HCC−4;ICAM−3;DTK;IL−1 RI;IGF−1 SR;GRO;GITR−Light;HGF;IL−1R4/ST;IL−2 Ra;ENA−78;およびFGF−9が挙げられるが、これらに限定されない。表10A1〜10A2および表10Bに基づいて、健康な年齢をマッチングさせているコントロールと比較した場合にADにおいて有意に減少すると同定されたバイオマーカーとしては、(スコアに基づく下降順に):MCP−2;M−CSF;MCP−3;MDC;MCP−4;IL−1b;IL−4;IL−1a;BLC;CK b8−1;IL−2;IL−15;MIP3a;MIG;SCF;IL−6;IL−16;エオタキシン−3;I−309;TGF−β;TGF−α;GDNF;LIGHT;SDF;IFG−I;フラクタルカイン;IL−5;Fit−3リガンド;GM−CSF;およびGCP−2が挙げられるが、これらに限定されない。表10A1〜10A2および表10Bに列挙したバイオマーカーのうちの任意の1種以上は、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示した方法に使用され得る。
表11A1〜11A2および表11Bは、年齢をマッチングさせている変性コントロールと比較した場合にADにおいて有意に増加(11A1〜11A2)または減少(11B)するバイオマーカーのリスト(クラスター化されておらず、そしてスコア値に基き、最も高いランクのバイオマーカーから最も低いランクのバイオマーカーの順にある)を提供する。表11A1〜11A2および表11Bに基づいて、年齢をマッチングさせている他の非AD神経変性コントロールと比較した場合にADにおいて有意に増加すると同定されたバイオマーカーとしては、(スコアに基づく下降順に):TRAIL R4;エオタキシン;IL−12 p40;BTC−I;MIF;OST;MIP−1a;sTNF R1;IL−11;リンホタクチン;NT−4;VEFG−D;HGF;IGFBP3;IGFBP−1;OSM;IL−1R1;PIGF;IGF−1 SR;CCL−28;IL−2 Ra;IL−12 p70;GRO;IGFBP−6;IL−17;CTACK;I−TAC;ICAM−3;ANG−2;MIP−3b;FGF−9;HCC−4;IL−1R4/ST;GITR;およびDTKが挙げられるが、これらに限定されない。表11A1〜11A2および表11Bに基づいて、年齢をマッチングさせている他の非AD神経変性コントロールと比較した場合にADにおいて有意に減少すると同定されたバイオマーカーとしては、(スコアに基づく下降順に):MCP−2;M−CSF;MCP−3;MDC;MCP−4;IL−1b;IL−4;IL−1a;BLC;CKb8−1;IL−2;IL−15;MIP3a;MIG;SCF;IL−6;IL−16;エオタキシン−3;I−309;TGF−β;TNF−α;GDNF;LIGHT;SDF−1;IFG−1;フラクタルカイン;IL−5;Fit−3リガンド;GM−CSF;およびGCP−2が挙げられるが、これらに限定されない。表11A1〜11A2および表11Bに列挙したバイオマーカーのうちの任意の1種以上は、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示した方法に使用され得る。
表12A〜12Bは、年齢をマッチングさせているコントロールを参照して、ADに加えて他のAD神経変性コントロールにおいて有意に増加(12A)または減少(12B)するバイオマーカーのリスト(クラスター化されておらず、そしてスコア値に基き、最も高いランクのバイオマーカーから最も低いランクのバイオマーカーの順にある)を提供する。表12A〜12Bに列挙したバイオマーカーのうちの任意の1種以上は、例えば、神経変性疾患(ADを含む)の診断において補助するため、または神経変性疾患を診断するためのような本明細書中に開示した方法に使用され得る。他の例において、表12A〜12Bに列挙した上位2位、3位、4位、または5位のランクのバイオマーカーは、本明細書中に開示したような方法に使用するために選択される。いくつかの例において、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示した方法に使用するためのさらなるバイオマーカーとしては、表12A〜12Bに列挙した上位2位、3位、4位、または5位のランクのバイオマーカーと相関するバイオマーカー(すなわち、90%(r=0.9〜r=0.99)より大きい相関;および0.001〜0.05未満のP値を有するこのようなバイオマーカー)が挙げられる。
当業者に理解されるように、実施例および表において本明細書中に開示したバイオマーカーは、望まれる測定の型に依存して、本明細書中に開示される方法に使用するために選択され得る。例えば、表7および/または表8に列挙したマーカーからなる群より選択されるマーカーのうちの任意の1種以上は、ADの診断において補助するため、またはADを診断するために使用され得る。いくつかの例において、表7および/または表8由来のバイオマーカーは、以下の判定基準に基づいて、本明細書中に開示される方法に使用するために選択され得る:90%(r=0.9〜r=0.99)より大きい相関;0.001〜0.05未満のP値;20%よりも大きい変化倍数;および1よりも大きいスコア(増加する(すなわち、正に相関する)マーカーについて)または1未満のスコア(減少する(すなわち、負に相関する)マーカーについて)。
他の例において、GCSF;IFN−g;IGFBP−1;BMP−6;BMP−4;エオタキシン−2;IGFBP−2;TARC;RANTES;ANG;PARC;Acrp30;AgRP(ART);TIMP−1;TIMP−2;ICAM−1;TRAIL R3;uPAR;IGFBP−4;レプチン(OB);PDGF−BB;EGF;BDNF;NT−3;NAP−2;IL−1ra;MSP−a;SCF;TGF−b3;TNF−b;MIP−1d;IL−3;FGF−6;IL−6R;sTNF RII;AXL;bFGF;FGF−4;CNTF;MCP−1;MIP−1b;TPO;VEGF−B;IL−8;FAS;およびEGF−Rからなる群より選択される1種以上のマーカーが、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本明細書中に開示した方法において使用され得る。他の例において、表12A〜12Bから選択される1種以上のバイオマーカーは、一般的な神経変性障害(ADを含む)の検出において補助するため、そして/または一般的に神経変性障害を診断するために使用され得るが、表9A1〜9A2および表9Bから選択される1種以上のバイオマーカーは、ADの診断において補助するためか、もしくはADを診断するためそして/またはADと他の非AD神経変性疾患とを区別するために使用され得る。他の例において、表10A1〜10A2および表10Bまたは表11A1〜11A2および表11B由来の1種以上のバイオマーカーは、ADの診断において補助するため、またはADを診断するために使用され得る。
上で同定されたバイオマーカーに加えて、さらなるバイオマーカーは、本明細書中に記載される方法および当該分野において公知である方法によって同定され得る。さらなるバイオマーカーの選択のためのパラメータは、以下の通りである:
90%よりも大きい(r=0.9〜r=0.99)相関;
0.001〜0.05未満のP値;
20%よりも大きい変化倍数;および
1よりも大きいスコア(増加するマーカーについて)または1未満のスコア(減少するマーカーについて)。
(実施例13)
この実施例は、有意であると2つの異なる実験(単一の回収施設および複数の回収施設)において同定された、ADの診断において補助するためまたはADを診断するためのバイオマーカーを提供する。
さらなるバイオマーカー、sTNF RII;MSP−α;uPAR;TPO;MIP−1β;VEGF−β;FAS;MCP−1;NAP−2;ICAM−1;TRAIL R3;PARC;ANG;IL−3;MIP−lδ;IFN−γ;IL−8;およびFGF−6を、実施例11〜12に記載したように正規化した単一の回収施設由来の実験(実施例1を参照のこと)および複数の試験施設実験(実施例11〜12)の両方において、有意であると同定した。これら18種のバイオマーカーのうちの2種(IFN−γおよびIL−8)をまた、それぞれ、クラスター3およびクラスター6由来の最も高いランクのバイオマーカーとして、表9A1〜9A2および表9Bに表す。したがって、ADの診断において補助するため、またはADを診断するための本発明の方法に使用するためのバイオマーカーは、IFN−γおよび/またはIL−8を含む。以下の2つのバイオマーカーがADの診断において補助するため、またはADを診断するための本発明の方法において正規化コントロールとして有用であることが、見出された:TGF−βおよびTGF−β3。したがって、例えば、ADの診断において補助するため、またはADを診断するためのような本発明の方法において使用するためのバイオマーカーは、正規化コントロールとしてTGF−βおよび/またはTGF−β3を含む。
(実施例14)
実施例14は、下で表14に示されるようなAD被験体のMMSEスコア(8〜28)と有意に相関することが見出されたバイオマーカーの同定を開示する。したがって、リンホタクチンおよびIL−11は、初期〜中程度のADの検出ならびにその疾患の病気分類および進行のために有用である。リンホタクチンおよび/またはIL−11は、単独か、または他のADバイオマーカー(本明細書中に開示した方法において本明細書中に記載したADバイオマーカーを含む)と一緒に使用され得る。したがって、ADを階層化するための方法およびADの進行をモニターするための方法が、本明細書中に提供され、これらの方法は、個体由来の生物学的流体サンプル(例えば、血漿)中のリンホタクチンおよび/またはIL−11の測定されたレベルをそのバイオマーカーの参照レベルと比較することを包含する。
理解を明確にする目的で本発明を説明および実施例によってある程度詳細に詳細が、当業者には明らかなように若干の変化および変更は可能である。したがって前記の記述および実施例は本発明の範囲を制限するものではない。