JP2008543404A - 慢性静脈不全を処置するための下肢用の編物製圧縮性補装具 - Google Patents

Abstract

本発明の補装具は、足首から上方に延びる圧縮脚部分を備える。編目の段の構造は、補装具の周縁における肢の水平断面に対応する外形の周囲の弾力復元力の均一な分布を保証する。脚部分の編目構造及び寸法は、補装具が肢に装着されると、足首と膝との間に延びる領域（Ｒ）に治療のための圧縮圧力をかけるように選択される。上記圧縮領域の３分の１の中央部（ＲＣ）に作用する平均圧力Ｐｃは、当該領域の３分の１の遠位部（ＲＤ）に作用する平均圧力Ｐｂよりも、且つ当該領域の３分の１の近位部（ＲＰ）に作用する平均圧力Ｐｄよりも大きく、Ｐｃ、Ｐｂ及びＰｄは、Ｈｏｈｅｎｓｔｅｉｎモデルの位置ｃ、ｂ及びｄのそれぞれの高さに作用する圧力である。
【選択図】 図１

Description

本発明は、下肢の静脈不全の様々な症状に必要とされる「圧縮ストッキング」として包括的に知られている下肢用の圧縮性補装具に関する。

用語「ストッキング」は以下で使用されるが、本発明は、製品の１つの特定のタイプに限定されるものではなく、タイツ、片足用タイツ、ストッキング又は靴下の形態のいずれであってもよい片方又は両方の下肢用の種々の形態の圧縮性補装具に適用される。

このような補装具は、少なくとも脹脛の領域を含む、より広い領域にまたはより狭い領域にわたって下肢を圧縮することにより治療効果を得るように構成されている。この圧縮は、足首から上方向に向かって逓減的となる圧縮プロファイルを示す。

治療を目的とすることから、このような補装具はとりわけ、米国特許第６，２１６，４９５号（Ａ）（Couzan他）において提案されているストッキング又は靴下と異なるものである。上記特許は、慢性静脈不全（ＣＶＩ）等の病状を治療することを記載してはおらず、運動選手の生理機能に適応される、脚に沿った圧力勾配を提示しており、足の領域及び距骨の領域にかかる圧力は、脹脛の領域にかかる圧力よりも小さく、脹脛にかかる圧力は、「下方向に逓減的」である、すなわち、静脈不全の処置のための治療的ストッキングの通常のプロファイルとは反対のプロファイルを有している。

治療を目的とする圧縮補装具は、ＡＳＱＵＡＬシステムにおいて４つの圧縮クラス、すなわち、クラスＩ（足首において、１３ヘクトパスカル（ｈＰａ）〜２０ｈＰａ≒１０ミリメートル水銀（ｍｍＨｇ）〜１５ｍｍＨｇ）、クラスＩＩ（２０ｈＰａ〜２７ｈＰａ≒１５ｍｍＨｇ〜２０ｍｍＨｇ）、クラスＩＩＩ（２７ｈＰａ〜４８ｈＰａ≒２０ｍｍＨｇ〜３６ｍｍＨｇ）、及びクラスＩＶ（４８ｈＰａより大きい≒３６ｍｍＨｇより大きい）に分類される。

特に、圧縮についてモデル化して、圧縮刺激を付与する最近の器具を用いての静脈生理機能の研究により、圧縮効果はとりわけ、脹脛の筋組織腱膜ポンプの効率を高めることが示されている。「筋肉ポンプ」効果又は「脹脛の筋織腱膜ポンプ」効果の重要性は、脹脛の生理学的な筋肉収縮により静脈血を筋肉及び深静脈ネットワークに求心的に追いやる静脈血の還流について特に記載されており、慢性静脈不全はこの筋肉ポンプ効果の減退を特徴としている。

欧州公開特許第１，２４０，８８０号（Stolk）は、この目的のために、ある高さにおける外形に沿って相対的に均一でない弾性を示す帯域を脹脛の領域に有し、特に、脹脛の領域の後面に局部的に小さい又は０である（すなわち、あまり変形可能でないか、又は変形不可能である）弾性の帯域を有し、下肢のこの領域に過剰な圧縮圧力を作用させるのに好適な圧縮補装具を提示している。目的は、主にこのような圧力が効果的である脹脛に、すなわち裏面に対して、水平面における全方向で均一とならない態様で圧縮を作用させることである。

実際には、このような補装具は、作製することが技術的に非常に困難であることが分かっている。その上、このような補装具は、使用の際に、弾性の小さい又は全く弾性のない帯域を脹脛の膨らみ領域に正確に位置づけること、及び所定位置に補装具を永続的に保持することが困難であり、患者の動きと補装具の脚に作用する圧力との複合的な影響を受けて肢に対して摺動してしまう。

米国特許第３，３８６，２７０号（Ａ）（Simmons）は、上記したのとは異なり、水平面において、特に脹脛のレベル即ち高さにおける外形の周囲に可能な限り均一な圧力をもたらそうとする圧縮補装具を記載している。この目的では、補装具は、より長い長さの弾性糸を含み、したがって局部的により変形可能である帯域を脹脛の領域の補装具の後面に有し、これにより、脹脛の体積に起因するより大きい変形を補償することを可能にするが、そうでなければ、この領域には過剰な圧縮圧力がかかるであろう。

本発明の目的の１つは、これまで提案されている補装具よりも良好にこの機能に適応する圧力補装具を用いて、脹脛の筋膜ポンプの効率を慢性静脈不全の病状に照らして高めることができる手段を提案することである。

本発明の出発点は、栄養障害を伴わない軽度又はさらには中程度の静脈不全を患っている場合に、逓減「原理」に従うため以外においては、足首に外圧をかける必要性がないという点にある。

ストッキングは最大圧力を足首に作用させて、足首から脹脛まで又は大腿まで圧力を逓減的に作用させる必要があるというような先入観は、起立性状況において、静脈内の圧力が足首から脹脛まで又は大腿まで逓減的であり、且つ、ストッキングによって作用する弾性圧力の影響を受けて表面又は深静脈の直径又は口径が小さくなるにつれて慢性静脈不全が起こるという概念に基づいている。しかしながら、特に圧縮をモデル化し圧縮刺激を与える最近の器具を用いた静脈生理機能の研究により、圧縮効果はむしろ、脹脛の筋膜ポンプの効率を高めることが示されている。

本発明は、上記米国特許第３，３８６，２７０号（Ａ）（Simmons）に特に開示されている一般的なタイプの補装具、すなわち、ストッキング、靴下又はタイツのタイプの編物製品の形態の、下肢用の圧縮補装具であって、足首から上方に延びる脚部分であって、補装具が下肢に装着されると、足首と膝との間に延びる脚の圧縮領域にわたって治療のための圧縮圧力が作用するように、且つ下肢の水平断面に対応する外形の周囲の補装具の周縁にわたって均一に弾性復元力を分布させるように選択される編目構造及び寸法を有する圧縮部分である脚部分を備える、下肢用の圧縮補装具を提供する。

本発明の特徴的な態様においては、脚部分の編目構造及び寸法は、補装具を肢に装着した際に、上記圧縮領域の３分の１の中央部に作用する平均圧力Ｐｃが、圧縮領域の３分の１の末端部にかかる平均圧力Ｐｂよりも、且つ圧縮領域の３分の１の近位部にかかる平均圧力Ｐｄよりも大きくなるようにさらに選択される。平均圧力は、下肢における任意の高さにおける外形の周囲に局部的にかかる圧縮圧力の平均値であり、Ｐｃ、Ｐｂ及びＰｄは、Ｈｏｈｅｎｓｔｅｉｎモデルのそれぞれの位置ｃ、ｂ及びｄの高さに作用する圧力である。

本発明の補装具は、足首における最大圧力に伴って逓減させるようにするものではなく、主に圧縮を作用させることが効果的である高さ（レベル）に、すなわち脹脛の高さにおいて圧縮を作用させることを特に可能にする。

また、患者の快適性及び補装具の治療効果の両方に関しては、膝下の止血作用を回避することが適切であり、また、このような止血作用は筋肉ポンプ効果を高めることを妨げるものである。

上記の補装具は、栄養障害を伴わない軽度又は中程度の慢性静脈不全の徴候に良好に適応する。

有利には、脚部分の編目構造及び寸法は、
３分の１の中央部にかかる平均圧力Ｐｃが、３分の１の末端部にかかる平均圧力Ｐｂの１．５〜２．５倍の範囲であるように、
３分の１の近位部にかかる平均圧力Ｐｄが、３分の１の末端部にかかる平均圧力Ｐｂよりも小さくなるように、
平均圧力Ｐｃが、２０ｍｍＨｇ以上であるように、また
平均圧力Ｐｄが、１５ｍｍＨｇ未満であるように
選択され得る。

次に、添付の図面を参照して実施形態を説明する。

唯一の添付の図面は、クラスＩ〜クラスＩＩの従来の圧縮ストッキングそれぞれについて、また本発明のストッキングについて、脚の種々の高さにおいて作用する圧縮圧力を測定した一連の圧力プロファイルを示す。

本発明の補装具は、足首から上方に延びていて、足首領域を含む脚部分を備える、靴下、ストッキング又はタイツのタイプの補装具である。脚部分は圧縮部分であり、その圧縮部分においては、補装具を脚に装着した場合に、脚に圧縮圧力が印加されるように編目構造、寸法等が選択されている。

編目は、従来の圧縮ストッキングのものと同様のタイプ、例えば、ウェフトロック編（weft-lock）、ストッキング、ピンチソーイング（pinched）、又はフロート編マイクロメッシュ（float micromesh）等のタイプ、すなわち編物技法の専門家にとって既知であるいかなる編目であってもよい。本発明の補装具を編むために選択される糸は、被覆されていないエラスタン、又は綿及びポリアミドに被覆されるエラスタン、又は綿を含まないポリアミドに被覆されるエラスタン、又は実際には、エラスタンの混合物及びエラストジエンの混合物（合成ゴムラテックス）であってもよい。

脚に装着された効果の下では、張力がかけられた即ち伸張された編物（テキスタイル）は、材料を構成する弾性繊維による復元力に起因する圧力を作用させる。高弾性率を示す（すなわち、強化された）材料による張力がかけられていない状態における製品の任意の寸法、すなわち任意の円形断面の場合、脚に補装具を装着することにより、より強力な復元力が生じ、これにより、脚の表面に作用する圧力のより大きい垂直成分によってより大きい圧縮が局部的に現れる。

編み方（ステッチ）や編み糸、また編み目の種々の段または並びは、大腿までの異なる高さにおいて、例えば、足首の高さにおいて、脹脛の始まりにおいて、脹脛に渡って、また膝裏において等大腿の上部までにおいて、大腿丈ストッキング又はタイツによって所定の圧力を印加するように画定される。これらの種々の圧力は、Ｈｏｈｅｎｓｔｅｉｎモデルのような計量テンプレートを参照して各圧縮クラスについて画定される。

任意の高さに対して、編み方（ステッチ）の並び（段）の構造は、弾性復元力がストッキングの周上即ち周縁にわたって、すなわち脚の水平断面に対応する外形に沿って均一に分布されることを保証する。外周へのこれらの弾性復元力の適用により、ラプラス方程式を適用してある位置における外形の局率半径に反比例する局部圧力がその位置に生じる。

本明細書において、用語「平均圧力」は、脚の任意の高さにおける外形の周囲に局部的に作用する圧縮圧力の平均値を示すのに用いられる。

図１は、脚見本（a reference leg）についてＨｏｈｅｎｓｔｅｉｎモデルにより決定される（脚の）種々の高さにおける、すなわち、
ｂ：足首の最小外周における、すなわち、地面からの高さｚ＝１２ｃｍにおける、
ｂ１：アキレス腱の始まりにおける、ｚ＝２０ｃｍにおける、
ｃ：脹脛の最大外周における、ｚ＝３１ｃｍにおける
ｄ：膝下における、ｚ＝３９ｃｍにおける
ｅ：膝裏にける、ｚ＝４５ｃｍにおける
ｆ：大腿の中央における、ｚ＝６０ｃｍにおける
ｇ：大腿の最上部における、ｚ＝７２ｃｍにおける
平均圧力の測定値を示す。

従来の補装具によれば、Ｈｏｈｅｎｓｔｅｉｎモデルの位置ｂの高さにおいて、すなわち、足首のレベルにおいて作用する圧力は、選択された圧縮クラス（Ｉ、ＩＩ、ＩＩＩ又はＩＶ）に対して規定される圧力であり、この圧力はまた、脚に作用する（理論的な）最大圧力の値に対応する。

図面において、特徴点は、クラスＩ（プロファイルＡ１）、クラスＩＩ（プロファイルＡ２）及びクラスＩＩＩ（プロファイルＡ３）の補装具、並びに本発明の補装具（プロファイルＩ）に対して測定された圧力プロファイルを示す。

これらのプロファイルは、基準テンプレートにおいて測定された圧力値から決定され、この圧力は、補装具によって局部的に生成される圧力を測定し、また、種々の計算及び表示のために、これは次に変換され且つ処理されることができる電気信号を送信する通常のセンサー（Ｓａｌｚｍａｎｎ又は他のタイプ）を用いて該圧力検出することができる。

足のレベル、すなわち高さ１２ｃｍ未満において作用する圧力は、本発明を説明するという観点においては意味あるものではない。本発明は、足首から上の脚に作用する圧力プロファイルにのみ適用される。

図面において見ることができるように、従来のストッキングは、足首（位置ｂ、高さｚ＝１２ｃｍ）から始まる逓減的なプロファイルをもたらし、最大圧力は脚の補装具によってその足首の位置に作用する。

これとは対照的に、本発明は、脹脛まで逓増的に始まり、次に脹脛より上で逓減的となって膝へと向かう新規な圧力プロファイルを提供する。

本質的に、圧縮が印加される領域Ｒは、位置ｂ（足首）から位置ｅ（膝下）まで延在し、３分の１の末端部（遠位部）ＲＤ、３分の１の中央部ＲＣ、及び３分の１の近位部ＲＰを含む（「３分の１」は必ずしも同じ寸法とは限らず、領域Ｒ内の３つの連続的な帯域に対応するものである）。

最大圧縮は末端（遠位）領域ＲＤにおける足首の高さではなく、脹脛の高さの中央領域ＲＣに作用するようにストッキングが構成される。

足首を含む遠位部は、このため、従来のストッキングよりもかなり小さい圧力（例えば、大きくとも圧力Ｐｂ＝１５ｍｍＨｇ）にさらさわれ、これにより、足首及び足の高さにおけるストッキングの装着し易さ及び快適性を著しく高める。

領域Ｒのこれとは反対側においては、近位領域ＲＰにおける圧力は同様に小さい圧力であり、このため、この領域では、例えば５ｍｍＨｇ〜１０ｍｍＨｇの範囲の、非医療用織物（テキスタイル）によって加えられる圧力に類似する圧力が加えられることにより、所定位置に補装具を保持するのを助けるに過ぎないが、患者を決して不快にさせることなく、特にこの高さにおける止血作用をもたらすことはない。

脚部分の編目構造及び寸法は、特に、補装具が脚に装着された場合に、位置ｃにおける平均圧力が位置ｂに作用する平均圧力の１．５〜２．５倍の範囲にあり、位置ｃにおける平均圧力が好ましくは２０ｍｍＨｇ以上であり、且つ位置ｄにおける平均圧力が１５ｍｍＨｇ未満であるように選択され得る。

示される逓増−逓減プロファイルの例では、連続的な高さｂ、ｂ１、ｃ、ｄ及びｅで測定された圧力は、
Ｐｂ＝１５ｍｍＨｇ（ただし、従来のストッキングでは、この高さにおける圧力は、制限規定に従うクラスＩＩＩのストッキングの３６ｍｍＨｇと同程度である）、
Ｐｂ１＝３０ｍｍＨｇ、
Ｐｃ＝２８ｍｍＨｇ、
Ｐｄ＝８ｍｍＨｇ、
Ｐｅ＝５ｍｍＨｇ
である。

したがって、圧縮圧力が高さに伴い非常に迅速に増大し、この圧力が、脹脛領域（位置ｂ１及び位置ｃ）を含む安定状態域で最大値に達し、次に、近位領域で、従来のストッキングによって通常加えられる圧力未満の、非常に小さいか又は全く治療用ではない値にまで急激に減少することが見い出され得る。このため、快適性も近位領域の高さで増大する。

足首及び膝下の両方におけるこれらの小さい圧力は、弾性による静脈圧縮に関する補装具の処方を良好に改善し、それゆえ、長期間における処置の治療効率を著しく高めるものである。

クラスＩ〜クラスＩＩの従来の圧縮ストッキングそれぞれについて、また本発明のストッキングについて、脚の種々の高さにおいて作用する圧縮圧力を測定した一連の圧力プロファイルを示す。

Claims (5)

1. ストッキング、靴下又はタイツのタイプの編物製品の形態の、下肢用の圧縮補装具であって、
   該補装具を脚に装着した際に、足首と膝との間に延びる脚の圧縮領域（Ｒ）にわたって治療のための圧縮圧力が印加され、かつ、前記脚の水平断面に対応する外形の周囲の該補装具の周縁にわたって均一に弾性復元力を分布させるように選択される編目構造及び寸法を有する圧縮部分である、足首から上方に延在する脚部分を備え、
   該補装具は、該補装具が脚に装着されると、前記圧縮領域の３分の１の中央部（ＲＣ）に作用する平均圧力Ｐｃは、該圧縮領域の３分の１の末端部（ＲＤ）に作用する平均圧力Ｐｂより大きく、且つ該圧縮領域の３分の１の近位部（ＲＰ）に作用する平均圧力Ｐｄよりも大きくなるように前記脚部分の編目構造及び前記寸法が選択され、
   平均圧力は、前記脚の任意の高さにおける外形の周囲に局部的に作用する圧縮圧力の平均値であり、
   Ｐｃ、Ｐｂ及びＰｄは、Ｈｏｈｅｎｓｔｅｉｎモデルのそれぞれの位置ｃ、ｂ及びｄの高さにおいて作用する圧力であることを特徴とする、圧縮補装具。
2. 前記補装具が脚に装着された際に、前記圧縮領域の３分の１の中央部（ＲＣ）に作用する平均圧力Ｐｃが、前記圧縮領域の３分の１の末端部（ＲＤ）に作用する平均圧力Ｐｂの１．５ないし２．５倍の範囲であるように、前記脚部分の編目構造及び寸法が選択される、請求項１に記載の圧縮補装具。
3. 前記補装具が脚に装着された際に、前記圧縮領域の３分の１の近位部（ＲＰ）に作用する平均圧力Ｐｄが、前記圧縮領域の３分の１の末端部（ＲＤ）に作用する平均圧力Ｐｂよりも小さくなるように、前記脚部分の前記編目構造及び前記寸法が選択される、請求項１に記載の圧縮補装具。
4. 前記補装具が脚に装着された際に、前記圧縮領域の３分の１の中央部（ＲＣ）に作用する平均圧力Ｐｃが、２０ｍｍＨｇ以上であるように、前記脚部分の前記編目構造及び前記寸法が選択される、請求項１に記載の圧縮補装具。
5. 前記補装具が脚に装着された際に、前記圧縮領域の３分の１の近位部（ＲＰ）に作用する平均圧力Ｐｄが、１５ｍｍＨｇ未満であるように、前記脚部分の前記編目構造及び前記寸法が選択される、請求項１に記載の圧縮補装具。

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